説明

通気性シート、吸着ユニットへの作業対象物の吸着方法、およびセラミックコンデンサの製造方法

【課題】 厚さ方向の通気性が良好であり、かつ付着した異物を視認し易い通気性シートを提供する。
【解決手段】 通気性シート4は、厚さ方向に通気性を有する。通気性シート4は、厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔12が形成された樹脂フィルム9と、樹脂フィルム9の内部に分散された白色粒子10および/または樹脂フィルム9の主面4b上に配置された白色層と、を備える。複数のストレート孔12の径は20μm以下である。通気性シート4における少なくとも一方の主面4bの白色度は、70以上である。通気性シート4によれば、付着した異物を容易に視認できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性シートに関する。本発明はまた、吸着ユニットへの作業対象物の吸着方法に関する。本発明はまた、セラミックコンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、パソコン等の電子機器には、セラミックコンデンサが用いられている。セラミックコンデンサは、誘電体の作用を利用した蓄電素子であり、電圧が印加されることにより、印加された電圧に応じた電荷を蓄えることができる。セラミックコンデンサは、例えば、電源電圧を安定させる平滑回路、回路を保護するバックアップ回路、または電源回路等におけるノイズを取り除いて所望の信号のみを抽出するカップリング素子等のフィルターに用いられている。
【0003】
セラミックコンデンサの一般的な製造方法は、下記のとおりである。まず、チタン酸バリウム等の高誘電率のセラミックス粉体と、バインダーおよび有機溶剤とを混合してスラリーを調製する。次に、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の剥離フィルム上にスラリーを塗布し、乾燥させてセラミックグリーンシートを作製する。次に、スクリーン印刷によって、セラミックグリーンシート上に導電体ペーストを印刷し、電極パターンを形成する。次に、電極パターンが形成されたセラミックグリーンシートを、積み重ね、加熱圧着し、裁断することにより、チップ化する。最後に、チップ化されたセラミックグリーンシートを焼結して、セラミックコンデンサを得る。
【0004】
上記のセラミックコンデンサの製造方法では、セラミックグリーンシートの搬送を要する。セラミックグリーンシートの搬送には、金属性の吸着ヘッドを用いた吸着固定搬送が主に採用されていた。しかし、金属性の吸着ヘッドを用いた吸着固定搬送では、金属性の吸着ヘッドがセラミックグリーンシートに接触することにより、セラミックグリーンシートの表面(主面)に微小な傷がついたり、汚れが付着したりして、製造されるセラミックコンデンサの品質が低下することがあった。これを避けるために、セラミックグリーンシートと金属ヘッドとの間に通気性のある吸着用シート(例えば、特許文献1の超高分子量ポリエチレンからなる多孔質樹脂シート(UHMWPEシート))を挟むことが行われていた。
【0005】
セラミックコンデンサの小型・高容量化が進んでおり、セラミックグリーンシートの薄層化が進んでいる。現在では、厚さが1〜2μm程度のセラミックグリーンシートが開発されている。セラミックグリーンシートの薄層化が進むと、セラミックグリーンシート自身が通気性を持つようになり、セラミックグリーンシートの吸着が困難になる。また、セラミックグリーンシートの薄層化が進むと、セラミックグリーンシートと離型フィルムとの間のファンデルワールス力が大きくなり、これに由来する引力によりセラミックグリーンシートの剥離が困難になる。これらの問題を解消するためには、吸着用シートの通気性を高めることが望ましい。
【0006】
ところで、シートの通気性を向上させるためには、通気経路の容積を大きくして通気抵抗を減らす手法が一般的である。例えば、多孔質シートの場合、その孔径および/または気孔率を大きくすることでシートの通気性が向上する。しかし、多孔質シートを吸着用シートに用いる場合、孔径を大きくすると、セラミックグリーンシートが吸着用シート表面の孔に吸い込まれ易くなり、セラミックグリーンシートの変形および積層不良が誘発される。一方、気孔率を大きくすると、セラミックグリーンシートの吸着時に吸着用シートが変形し易くなり、セラミックグリーンシートの変形および積層不良が誘発される。変形および積層不良の問題は、薄膜化されたセラミックグリーンシートで特に起き易い。特許文献2では、吸着用シートにおいて、厚さ方向に直線状に貫通するストレート孔を形成することにより、通気性を確保するための孔の径(開口径)を小さく保ちながら、通気性を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−26981号公報
【特許文献2】特開2011−171728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
セラミックグリーンシートを搬送する工程では、粉塵等の黒色系(黒、緑等)の異物がセラミックグリーンシートに付着することがある。セラミックグリーンシートに付着した異物が吸着用シートに付着すると、吸着用シートの通気性が低下し、セラミックグリーンシートを固定吸着し難くなる。また、吸着用シートに異物が付着した状態で吸着用シートによりセラミックグリーンシートが吸着されると、セラミックグリーンシートに異物が押しつけられて、セラミックグリーンシートに傷(凹凸)が生じることがあった。このような傷は製造されるセラミックコンデンサの品質を低下させるものであり(例えば、誘電率が局所的に変動する)、セラミックグリーンシートが薄層化している現在においては、このような傷がつくことを特に避けるべきである。
【0009】
特許文献2に記載されている吸着用シートは透明であった。吸着ヘッドの色が黒色系であることもあり、この場合に透明な吸着用シートに付着した異物(特に黒色系の異物)を視認することは難しく、当該吸着用シートから異物を除去することは難しかった。また、セラミックグリーンシートの吸い込みを抑制でき、通気性が高く、かつ自身に付着した異物を容易に視認できる吸着用シートは、従来は存在しなかった。
【0010】
また、被濾過液体を濾過するための濾過膜、エアフィルタ用の濾材、ベントフィルタ−用の通気膜等についても、通気性が高く、付着した異物を容易に視認できることが望まれることがある。
【0011】
こうした事情の下、本発明は、良好な通気性を有し、かつ、付着した異物を視認し易い通気性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
厚さ方向に通気性を有する通気性シートであって、
前記厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔が形成された樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの内部に分散された白色粒子および/または前記樹脂フィルムの主面上に配置された白色層と、を備え、
前記複数のストレート孔の径は20μm以下であり、
当該通気性シートにおける少なくとも一方の主面のJIS P8123に準拠して測定した白色度は、70以上である、
通気性シート、
を提供する。
【0013】
本発明は、その別の側面から、
吸着ユニットの吸着面に、前記吸着面との直接の接触を防ぎ、厚さ方向に通気性を有する吸着用シートを介して作業対象物を吸着させる吸着工程を含み、
前記吸着用シートは、当該吸着用シートにおける第1の主面が前記吸着面に対向し、当該吸着用シートの第2の主面が前記作業対象物に対向するように配置され、
前記吸着用シートは、前記厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔が形成された樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの内部に分散された白色粒子および/または前記第2の主面に配置された白色層と、を備え、
前記複数のストレート孔の径は20μm以下であり、
前記吸着用シートの厚さ方向の通気度は、JIS P8117に準拠して測定したガーレー数にして10秒/100mL以下であり、前記吸着用シートにおける前記第2の主面のJIS P8123に準拠して測定した白色度は70以上である、
吸着ユニットへの作業対象物の吸着方法、
を提供する。
【0014】
本発明は、さらにその別の側面から、
離型フィルム上に形成されたセラミックグリーンシートを、吸着ユニットの吸着面に、前記セラミックグリーンシートと前記吸着面との直接の接触を防ぎ、厚さ方向に通気性を有する吸着用シートを介して吸着させて前記離型フィルムから剥離する剥離工程と、
剥離した前記セラミックグリーンシートを、前記吸着面に吸着させたまま搬送し、搬送先で他のセラミックグリーンシートと積層する積層工程と、
前記剥離工程および前記積層工程を複数回繰り返して得られた前記セラミックグリーンシートの積層体を焼成する焼成工程と、を含み、
前記剥離工程および前記積層工程において、前記吸着用シートは、当該吸着用シートにおける第1の主面が前記吸着面に対向し、当該吸着用シートの第2の主面が前記セラミックグリーンシートに対向するように配置され、
前記吸着用シートは、前記厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔が形成された樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの内部に分散された白色粒子および/または前記第2の主面に配置された白色層と、を備え、
前記複数のストレート孔の径は20μm以下であり、
前記吸着用シートの厚さ方向の通気度は、JIS P8117に準拠して測定したガーレー数にして10秒/100mL以下であり、前記吸着用シートにおける前記第2の主面のJIS P8123に準拠して測定した白色度は70以上である、セラミックコンデンサの製造方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る通気性シートでは、樹脂フィルムにおける厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔が形成され、ストレート孔の径が20μm以下である。このような通気性シートを吸着用シートとして用いれば、当該吸着用シートの主面に存在する孔(開口)への作業対象物の吸い込みが抑制されながら、当該作業対象物が効率よく吸着される。
【0016】
さらに、本発明に係る通気性シートでは、樹脂フィルムの内部に白色粒子が分散しており、および/または樹脂フィルムの主面上に白色層が配置されており、通気性シートにおける少なくとも一方の主面のJIS P8123に準拠して測定した白色度が70以上である。このような通気性シートを吸着用シートとして用いた場合、吸着用シートにおける白色度が70以上である側の主面が作業対象物(例えばセラミックグリーンシート)側となるように吸着用シートを配置すれば、この主面に付着した異物(特に黒色系の異物)を視認し易い。
【0017】
また、本発明の通気性シートは、被濾過液体を濾過するための濾過膜、エアフィルタ用の濾材またはベントフィルタ−用の通気膜にも好適に利用できる。
【0018】
また、本発明に係る吸着ユニットへの作業対象物の吸着方法で用いる吸着用シートにはストレート孔が形成され、この吸着用シートの通気度は10秒/100mL以下であるので、この吸着方法によれば、作業対象物の吸い込みを抑制しながら、作業対象物を効率よく吸着できる。また、この吸着方法で使用する吸着用シートにおける第2の主面の白色度は70以上であり、第2の主面に付着した異物を視認し易いため、容易に異物を除去できる。したがって、第2の主面に付着した異物によって作業対象物が傷つくおそれが低減する。
【0019】
また、本発明に係るセラミックコンデンサの製造方法で用いる吸着用シートにはストレート孔が形成され、この吸着用シートの通気度は10秒/100mL以下であるので、この製造方法によれば、セラミックグリーンシートの吸い込みを抑制しながら、セラミックグリーンシートを効率よく吸着できる。また、この製造方法で使用する吸着用シートにおける第2の主面の白色度は70以上であり、第2の主面に付着した異物を視認し易いため、容易に異物を除去できる。したがって、第2の主面に付着した異物によってセラミックグリーンシートが傷つき、セラミックコンデンサの品質が低下するおそれが低減する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第一実施形態に係る吸着用シートを用いた、吸着ユニットへの作業対象物の吸着方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】第一実施形態に係る吸着用シートの斜視図である。
【図3】図2に示す吸着用シートの平面図である。
【図4】図2に示す吸着用シートの断面図である。
【図5A】セラミックコンデンサの製造方法の一例における剥離工程を示す模式図である。
【図5B】セラミックコンデンサの製造方法の一例における積層工程を示す模式図である。
【図5C】セラミックコンデンサの製造方法の一例における焼成工程を示す模式図である。
【図6】第二実施形態に係る吸着用シートの斜視図である。
【図7】図6に示す吸着用シートの平面図である。
【図8】図6に示す吸着用シートの断面図である。
【図9】サンプルAの主面のSEM像である。
【図10】サンプルCの主面のSEM像である。
【図11】サンプルHの主面のSEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(第一実施形態)
第一実施形態では、通気性シートを吸着用シートとして用いた形態を説明する。以下、本実施形態に係る吸着用シートを用いた、吸着ユニットへの作業対象物の吸着方法を説明する。図1に示す吸着工程では、吸着ユニット14に作業対象物15(例えば、セラミックグリーンシート)が吸着される。吸着ユニット14の吸着面13には、図1に示す吸着用シート4が配置され、作業対象物15は、吸着用シート4を介して吸着面13に吸着される。具体的には、吸着用シート4は、吸着用シート4の第1の主面4aが吸着面13に対向し(接し)、吸着用シート4の第2の主面4bが作業対象物15に対向する(接する)ように配置される。吸着ユニット14は、吸着ユニット14に吸引力を発生させるポンプ(図示せず)に接続されている。図1に示す吸着ユニット14の吸着面13には複数の孔16が形成されており、孔16によって、吸着ユニット14の吸着面13に吸引力が発生する。第2の主面4bの白色度は高いので、第2の主面4bに異物が付着したとしても、付着した異物は容易に視認される(詳細は後述)。なお、典型的には、吸着ユニット14における孔16が形成されている範囲L1は、作業対象物15の範囲L2よりも狭い。
【0023】
図2に、本発明の第一実施形態に係る吸着用シート4を示す。吸着用シート4は、厚さ方向に通気性を有するシートであり、樹脂フィルム9と、樹脂フィルム9の内部に分散された白色粒子10とを備えている。吸着用シート4を、厚さ方向に沿って観察したときの平面図を図3に示す。また、吸着用シート4を、厚さ方向に平行な断面で切断した断面図を図4に示す。
【0024】
吸着用シート4における一方の主面(第2の主面4b)のJIS P8123に準拠して測定した白色度は、70以上であり、75以上が好ましく、80以上がより好ましい。吸着用シート4における第2の主面4bの白色度は、吸着用シート4における白色粒子10の含有量および粒子径により調整できる。
【0025】
吸着用シート4の可視光透過率を低くすると、異物の発見が容易になる。この観点から、吸着用シート4の厚さ方向の可視光透過率は60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。
【0026】
吸着用シート4の厚さ方向の通気度は、JIS P8117に準拠して測定したガーレー数にして例えば10秒/100mL以下であり、3秒/100mL以下が好ましい。吸着用シート4の通気度は、樹脂フィルム9におけるストレート孔12(詳細は後述)の径およびストレート孔12の密度(面密度)により調整できる。
【0027】
作業対象物15と吸着用シート4との摩擦により作業対象物15が吸着用シート4の厚さ方向に垂直な方向にずれることを防ぐ観点、および作業対象物15の表面に微小な傷がつくことを避ける観点からは、吸着用シート4は平滑なシートであることが好ましい。この観点から、JIS B0601に準拠して測定したときの、吸着用シート4の表面(第2の主面4b)における算術平均粗さRaは1.0μm以下が好ましく、0.6μm以下がより好ましく、例えば0.07〜1.0μmである。最大高さRmaxは2.0μm以下が好ましく、1.5μm以下がより好ましく、例えば0.1〜2.0μmである。
【0028】
樹脂フィルム9は、高分子樹脂からなるフィルムである。樹脂フィルム9の寸法は特に限定されないが、樹脂フィルム9の厚さは例えば10〜200μmである。
【0029】
樹脂フィルム9は非多孔質のフィルムであり、樹脂フィルム9には厚さ方向に直線状に貫通する多数のストレート孔12が形成されている。樹脂フィルム9は、厚さ方向に通気性を有する。なお、非多孔質とは、当該ストレート孔12以外に、厚さ方向の通気経路となる孔を有さないことを言う。樹脂フィルム9は、典型的には、当該ストレート孔12を除いて無孔のフィルムである。
【0030】
樹脂フィルム9のストレート孔12の径(開口径)は20μm以下である。これにより、吸着用シート4の第2の主面4bに存在する孔(開口)への作業対象物15の吸い込みが抑制される。ストレート孔12の径が20μmを超えると、第2の主面4bに存在するストレート孔12への作業対象物15の吸い込みが生じ易い。また、吸い込みが起こらないまでも、作業対象物15の表面に開口の跡がつくことで、作業対象物15の厚さにバラツキが生じ易い。作業対象物15がセラミックグリーンシートである場合、シートの厚さのバラツキは、積層工程におけるセラミックグリーンシートの積層不良の発生につながる。ストレート孔12の径は10μm以下が好ましい。このような微細なストレート孔12は、例えば、イオンビーム照射およびエッチングにより形成できる。ストレート孔12の径(開口径)の下限は、吸着用シート4の通気度がJIS P8117に準拠して測定したガーレー数にして10秒/100mL以下となるように定めることができる。当該下限は、例えば、0.8μmである。
【0031】
ストレート孔12の平面視(吸着用シート4の厚さ方向に沿って観察したときの)の形状は特に限定されず、その開口形状としては、円形および不定形が例示される。樹脂フィルム9において、ストレート孔12の平面視の開口形状は円形である。また、ストレート孔12の断面形状(厚さ方向に平行な断面におけるストレート孔12の形状)も特に限定されず、長方形、台形、中央が窪んだ形状が例示される。樹脂フィルム9において、ストレート孔12の断面形状は長方形である。ストレート孔12の立体形状としては、円柱型、円錐台型、砂時計型(2つの円錐台が組み合わさった形状であって、各々の面積が小さい側の底面が接続された形状)が例示される。樹脂フィルム9において、ストレート孔12の立体形状は円柱型である。
【0032】
ストレート孔12の軸線は、通常、樹脂フィルム9の主面に垂直な方向に延びている。当該ストレート孔12が樹脂フィルム9の厚さ方向に貫通する(当該ストレート孔12によって、樹脂フィルム9の厚さ方向の通気が確保される)限り、主面に垂直な方向から傾いていてもよい。また、2つ以上のストレート孔12が接続されていてもよい。
【0033】
樹脂フィルム9を構成する材料は特に限定されない。樹脂フィルム9は、例えば、イオンビーム照射およびエッチングによって上記ストレート孔12が形成される材料から構成される。このような材料は、例えば、アルカリ物質および/または酸化剤を含んだエッチング処理液により分解される(加水分解性および/または酸化分解性を有する)材料である。アルカリ物質は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムである。酸化剤は、例えば、亜塩素酸およびその塩、次亜塩素酸およびその塩、過酸化水素、過マンガン酸カリウムである。
【0034】
樹脂フィルム9の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)およびポリフッ化ビニリデン(PVdF)から選ばれる少なくとも1種の材料から選択される。これらの樹脂は、アルカリ物質および/または酸化剤を含んだエッチング処理液により分解される材料である。PIは、次亜塩素酸ナトリウムを主成分として含むエッチング処理液により分解される。その他の樹脂は、水酸化ナトリウムを主成分として含むエッチング処理液により分解される。
【0035】
樹脂フィルム9の材料としては、PETが好ましい。PETによって樹脂フィルム9を構成すれば、当該樹脂フィルム9の第2の主面4bが平滑となり、作業対象物15を吸着用シート4により吸着する際に作業対象物15の変形を抑制できる。具体的には、PETによって樹脂フィルム9を構成すれば、JIS B0601に準拠して測定したときの、(白色粒子10を省略した場合の)樹脂フィルム9における表面の表面粗さRaを0.05μm程度に、最大高さRmaxを0.1μm程度にできる。UHMWPEシートでは、表面の表面粗さRaは0.5μm程度であり、最大高さRmaxは15μm程度であることを考慮すると、定量的にもPETは樹脂フィルム9の好適な材料であり、PETからなる樹脂フィルム9を用いた吸着用シート4は作業対象物15の吸着に適していると言える。また、PETから構成される樹脂フィルム9の厚み精度は、シート厚が12.5〜100μmの範囲で、±2μm程度とすることができる。この厚み精度は、表面を平滑に調整したUHMWPE多孔質シートにおける厚み精度(±5μm)に比べて、非常に優れている。
【0036】
樹脂フィルム9の気孔率は特に限定されない。作業対象物15の吸着時における吸着用シート4の変形を抑制する観点からは、40%以下が好ましく、30%以下がより好ましい。樹脂フィルム9の気孔率がこのように低い場合においても、その通気経路を構成するストレート孔12の形状により、樹脂フィルム9(すなわち吸着用シート4)は非常に高い通気性を有する。
【0037】
樹脂フィルム9の一方の面(第2の主面4b)に、当該面の離型性を向上させるコーティングが施されていてもよい。コーティングは、例えば、フッ素化合物等、表面の摩擦係数を低下させる作用を有する化合物のコーティングである。これにより、吸着ユニット14からの作業対象物15(セラミックグリーンシート)の離型性が向上する。
【0038】
樹脂フィルム9の一方の面(第2の主面4b)に、当該面におけるストレート孔12の開口が露出するように、粘着剤が配置されていてもよい。粘着剤の種類は特に限定されない。ストレート孔12の開口は、樹脂フィルム9の通気度に関する上記規定が満たされる限り、少なくともその一部が露出していればよい。
【0039】
本実施形態では、白色粒子10は樹脂フィルム9の内部において分散している。白色粒子10が分散した樹脂フィルム9の具体例として、テレフタル酸とエチレングリコールからなるPETポリマー溶液に酸化チタン粒子を分散させることにより作製された白色PETが挙げられる。
【0040】
白色粒子10の粒子径は特に限定されないが、大き過ぎると吸着用シート4の色が白くなり難い(つまり、白色度が高くなり難い)。他方、小さ過ぎると、吸着用シート4の強度が過剰に低下するおそれがある。これらを考慮すると、白色粒子10の粒子径の範囲は例えば300nm〜5μmであり、500nm〜5μmが好ましく、500nm〜2μmがより好ましい。白色粒子10の粒子径がストレート孔12の開口径よりも小さいと、白色粒子10が開口を塞ぐことがなく、通気性が確保され易い。
【0041】
また、白色粒子10の含有量も特に限定されないが、高過ぎると吸着用シート4の第2の主面4bにおける表面粗さが大きくなり過ぎることがある。他方、低過ぎると吸着用シート4の色が白くなり難い。これらを考慮すると、吸着用シート4全体の重量を基準としたときの白色粒子10の含有量は例えば1〜10重量%であり、3〜8重量%が好ましく、3〜5重量%がより好ましい。
【0042】
白色粒子10を構成する粒子としては、無機粒子(無機物からなる粒子)が挙げられ、具体的には酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、酸化ケイ素粒子、アルミナ粒子等が挙げられる。特に、酸化チタン粒子を用いると、吸着用シート4の耐候性が向上し、吸着用シート4の白色度が長期にわたって維持される。
【0043】
従来は、吸着用シートとして多孔質UHMWPEシートが使用されていた。しかし、多孔質シートでは、通気経路となる孔の形状が不規則であり、通気経路に沿って常に変化しているとともに、孔同士が複雑に接続している。このため、樹脂フィルム9のストレート孔12の径と同じ孔径を有する多孔質シートでは、当該樹脂フィルム9に比べて著しく通気抵抗が高く、通気性が悪くなる。これに加えて、多孔質シートは、当該シートの厚さ方向だけではなく平面方向への通気性も有するため、吸着用シートとして使用した際に、いわゆる吸着力の横漏れが発生する。通気性が低く、横漏れが発生する吸着用シートを使用すると、セラミックグリーンシート等の作業対象物を吸着するために大きな吸引圧力が必要になるとともに、吸着用シートの場所によって吸着力が変化する(吸着用シートの端部で特に吸着力が低下する)ため、吸着時に作業対象物の変形が発生し易い。
【0044】
これに対して、樹脂フィルム9では、通気経路となるストレート孔12の貫通方向は樹脂フィルム9の厚さ方向であり、ストレート孔12の形状も通気経路上でほぼ変化しない。吸着用シート4は、このような樹脂フィルム9を有するため、厚さ方向の通気抵抗が非常に低く、良好な通気性を有するとともに、横漏れのないシートとなる。
【0045】
さらに、吸着用シート4の白色度は70以上であるので、付着した異物(特に、黒色、緑色等の黒色系の異物)を視認し易い。すなわち、本実施形態に係る吸着用シート4によれば、良好な通気性を確保できるとともに、付着した異物を容易に視認できる。
【0046】
次に、吸着用シート4を用いたセラミックコンデンサの製造方法の一例を説明する。この製造方法は、離型フィルム上に形成されたセラミックグリーンシートを、吸着ユニットの吸着面に、上記の吸着用シートを介して吸着させて離型フィルムから剥離する剥離工程と、剥離したセラミックグリーンシートを、吸着面に吸着させたまま搬送し、搬送先で他のセラミックグリーンシートと積層する積層工程と、剥離工程および積層工程を複数回繰り返して得られたセラミックグリーンシートの積層体を焼成する焼成工程と、を含む。ここで、剥離工程および積層工程において、吸着用シートが、上記の第1の主面が吸着面に対向し、上記の第2の主面がセラミックグリーンシートに対向するように配置されている限り、各工程の詳細は特に限定されず、公知の方法に従えばよい。
【0047】
図5A〜図5Cを参照しながら、セラミックコンデンサの製造方法の一例を説明する。
【0048】
図5Aに示す剥離工程では、離型フィルム21上に形成されたセラミックグリーンシート22(図5Aの(1)参照)を、吸着ユニット14の吸着面13に吸着させて、離型フィルム21から剥離する(図5Aの(2),(3)参照)。吸着面13の表面には、上述した吸着用シート4が配置されており、セラミックグリーンシート22は、吸着用シート4を介して吸着面13に吸着される。
【0049】
図5Bに示す積層工程では、剥離工程において剥離したセラミックグリーンシート22を、吸着面13に吸着させたまま搬送し、搬送先で他のセラミックグリーンシート22と積層する(図5Bの(1)〜(3)参照)。
【0050】
図5Cに示す焼成工程では、図5Aに示す剥離工程および図5Bに示す積層工程を複数回繰り返して得られたセラミックグリーンシート22の積層体23を焼成して(図5C中のSは焼成することを示している)、焼成体24を得る。その後、焼成体24に電極を配置する工程等を経て、セラミックコンデンサが得られる。図5Cでは、図を分かり易くするために、積層体23を構成する層の数を8層としているが、実際には、剥離工程および積層工程を繰り返すことによって、より多くのセラミックグリーンシート22が積層されてもよい。
【0051】
剥離工程および積層工程では、吸着用シート4は、吸着用シート4における第1の主面4aが吸着面13に対向し(接し)、吸着用シート4の第2の主面4bがセラミックグリーンシート22に対向する(接する)ように配置される。第2の主面4bの白色度は高いので、第2の主面4bに異物が付着したとしても、付着した異物は容易に視認される。
【0052】
本実施形態のセラミックコンデンサの製造方法における剥離工程、積層工程および焼成工程の詳細は、公知のセラミックコンデンサの製造方法に従えばよい。また、本実施形態のセラミックコンデンサの製造方法は、必要に応じ、剥離工程、積層工程および焼成工程以外の任意の工程を含んでいてもよい。
【0053】
(第二実施形態)
図6に、本発明の第二実施形態に係る通気性シートである吸着用シート104を示す。図6に示す吸着用シート104は、樹脂フィルム109と、白色層131とを備えている。吸着用シート104を、厚さ方向に沿って観察したときの平面図を図7に示す。また、吸着用シート104を、厚さ方向に平行な断面で切断した断面図を図8に示す。
【0054】
樹脂フィルム109は、内部において白色粒子が分散していないこと以外は樹脂フィルム9と同様のフィルムである。樹脂フィルム109には、ストレート孔12と同様のストレート孔112が形成されている。
【0055】
白色層131は白色粒子10の材料と同様の材料からなる層であり、吸着用シート104の主面上の一方(図6における第2の主面104b)に配置されている。白色層131は、例えば予め形成した白色粒子110(白色粒子10の材料と同様の材料からなる白色粒子)をコーティングして形成することができる。白色層131は、スパッタリング法、蒸着法、CVD法等の薄膜形成プロセスにより形成することもできる。薄膜形成プロセスによれば、白色層131(すなわち第2の主面104b)を平滑にできる。この場合、第2の主面104bの表面粗さ算術平均粗さRaを0.3〜0.5μmに、最大高さRmaxを0.4〜0.6μmにできる。また、白色層131の厚さは、白色度が70以上であれば特に制限されないが、例えば0.025〜1μmであり、0.05〜0.1μmが好ましい。
【0056】
また、本実施形態では、樹脂フィルム109と白色層131との間に下地層132が介在している。下地層132は、樹脂フィルム109および白色層131に接触している。下地層132は、吸着用シート104の光透過性を低下させるための層である。下地層132層が存在する場合は、厚さ方向の可視光透過率を例えば10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下にできる。ただし、吸着用シート104の白色度が70以上である限り、下地層132を省略してもよい。
【0057】
下地層132を構成する材料は、例えば、金属、金属炭化物、金属窒化物、金属酸化物および金属フッ化物から選ばれる少なくとも1つから選択すればよい。好適な下地層132としては、アルミナ層が挙げられる。下地層132がアルミナ層である場合は、コストの観点、耐熱性および絶縁性の観点、製造(スパッタリング)の容易さの観点、ならびに取り扱いの容易さの観点で有利である。
【0058】
白色層131および下地層132を形成する方法は特に限定されない。下地層132としてアルミナ層を形成する場合は、例えば樹脂フィルム109上にアルミナをスパッタリング、蒸着(真空蒸着)その他の薄膜形成プロセスにより堆積させればよい。また、下地層132を形成する場合は、下地層132上に白色層131を形成する。白色層131を形成する方法は特に限定されないが、蒸着により白色層131を形成すればよい。蒸着により堆積させる白色層131の例は、酸化チタンからなる層である。また、下地層132を形成しない場合に比べると、下地層132を形成する場合は、白色層132を堆積させ易くなる。すなわち、厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔であって径が20μm以下であるストレート孔が形成された樹脂フィルムを準備する工程と、スパッタリングによりこの樹脂フィルム上に下地層を堆積させる工程と、下地層上に白色層を堆積させる工程と、を備える吸着用シートの製造方法によれば、好適に吸着用シートを作製できる。なお、樹脂フィルムを準備する工程に代えて、樹脂基材を準備する工程と、イオンビーム照射およびエッチングによって樹脂基材を厚さ方向に貫通するように延びる複数のストレート孔を形成する工程とを採用することもできる。
【0059】
下地層を形成しない場合、厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔であって径が20μm以下であるストレート孔が形成された樹脂フィルムを準備する工程と、樹脂フィルム上に白色層を堆積させる工程と、を備える吸着用シートの製造方法によって、吸着用シートを作製できる。この場合、白色層を蒸着(真空蒸着)、塗布等により樹脂フィルム上に形成すればよい。このようにすれば、白色層を備えるとともに、樹脂フィルムと白色層が直接接し、樹脂フィルムと白色層との2層からなる吸着用シートを好適に得ることができる。下地層を形成せず、樹脂フィルムと白色層との2層からなる吸着用シートを作製することによって、材料費の削減および製造工程の削減が可能となる。
【0060】
本実施形態では、吸着用シート104の主面のうち、白色層131が形成されている側とは反対側の主面である第1の主面104aが、吸着面13に対向すべき主面であり、白色層131が形成されている側の主面である第2の主面104bが、作業対象物15(セラミックグリーンシート22)に対向すべき主面である。第2の主面104bは白色層131により構成されている。
【0061】
なお、第一実施形態および第二実施形態では、通気性シートを吸着用シートとして用いた例を説明したが、上述の通気性シートは、被濾過液体を濾過するための濾過膜、エアフィルタ用の濾材、ベントフィルタ−用の通気膜等、他の用途にも適用できる。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
実施例1では、図2〜図4に示す第一実施形態の吸着用シート4と同様のサンプルを作製した。
【0063】
まず、白色粒子が内部に分散したシート(三菱樹脂株式会社製、W−100)を準備した。このシートは、厚さが25μmのPETフィルムに、粒径が1.0μmの酸化チタン(白色粒子)を、シート全体の重量を基準として3.0重量%含有させた無孔のシートである。
【0064】
次に、イオンビーム照射およびエッチングにより、このシートにストレート孔を形成した。得られたストレート孔の径は1.0μm(φ1.0μ)であり、ストレート孔の形成後のシートの気孔率は4.7%であった。イオンビーム照射において用いたイオンビームのイオン種はXe、加速電圧は560MeV、照射密度は6.0×106ion/cm2、真空度は10-3Paオーダである。エッチングにおいて用いたエッチング液は、0.5Mで約60℃のNaOH溶液である。このようにしてサンプルAを作製した。
【0065】
(実施例2)
エッチングの条件を変更したこと以外は実施例1と同様にしてサンプルBを作製した。サンプルBの作製におけるエッチングにおいて用いたエッチング液は、0.1〜1.0Mで50〜80℃のNaOH溶液であり、処理時間を30〜180分とした。サンプルBでは、ストレート孔はφ3.0μであり、ストレート孔を形成後のシートの気孔率は42%であった。
【0066】
(実施例3)
実施例3では、図6〜図8に示す第二実施形態の吸着用シート104と同様のサンプルを作製した。
【0067】
まず、φ5.0μのストレート孔が形成された、気孔率が7.9%の非多孔質のPIフィルムを準備した。次に、このPIフィルムの表面に、スパッタリングによりアルミナ層を形成した。スパッタリングは、酸素を含むガス雰囲気中で実施した。スパッタリングでは、スパッタ蒸着装置(ULVC(株式会社アルバック)社製、SMH−2306RE)を用い、真空度を1Pa、電圧を500Vとし、スパッタリングの時間を2分間に設定した。
【0068】
次に、アルミナ層の表面に、真空蒸着により白色の酸化チタン層を形成した。真空蒸着にはスパッタ蒸着装置(ULVC社製、SMH−2306RE)を用い、真空度を1.0×10-3Pa以下に設定した。このようにして、サンプルCを作製した。
【0069】
(比較例1)
酸化チタンが内部に分散していないこと以外は実施例1で用いたPETフィルムと同様の無孔のPETフィルムをサンプルDとした。
【0070】
(比較例2)
ストレート孔が形成されていないこと以外は実施例3で準備したPIフィルムと同様の無孔のPIフィルムをサンプルEとした。
【0071】
(比較例3)
実施例3で準備した、ストレート孔が形成された非多孔質のPIフィルムをサンプルFとした。
【0072】
(比較例4)
実施例3で作製したPIフィルムの表面に実施例3と同様のアルミナ層を形成して得た非多孔質のフィルムをサンプルGとした。なお、このアルミナ層の厚さは非常に薄く、第二実施形態で述べた白色層を構成するものではない。
【0073】
(比較例5)
厚さが200μm、平均孔径が20μmのUHMWPE多孔質シート(日東電工社製、サンマップLCT5320S)をサンプルHとした。
【0074】
(比較例6)
一般的なコピー用紙はサンプルIとした。
【0075】
サンプルA〜Iにつき、白色度、可視光透過率(厚さ方向の可視光透過率)、孔径、ガーレー通気度(厚さ方向のガーレー通気度)、および表面(第2の主面、以下同じ)の表面粗さを下記のように測定した。
【0076】
[白色度]
白色度は、色差計(日本電色工業株式会社製、ND−1001DP)を用いて、JISP 8123に準拠した測定によりハンター白度を求めた。
【0077】
[可視光透過率]
可視光透過率は、分光光度計(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製、U−4100)を用い、300〜2700nmの波長域について測定した。
【0078】
[孔径]
各サンプルの表面をSEM(JEOL社(日本電子株式会社)製、JSM−6510LV)により撮像し、得られたSEM像に基づいて各サンプルの表面における孔径を測定した。
【0079】
[通気度]
通気度としてガーレー数を評価した。ガーレー数は、JIS P8117に準拠して、ガーレー式デンソメーター(安田精機製作所製)または王研式透気度試験装置(旭精工製、EG02−S)を用いて求めた。
【0080】
[表面粗さ]
表面粗さは、触針式表面粗さ計(株式会社東京精密製品、サーフコム550A)を用いて測定した。測定条件は、先端径R250μm、速度0.3mm/sec、測定長4mmとした。表面粗さとしては、算術平均粗さRaおよび最大高さRmaxを測定した。
【0081】
上記のように測定した、サンプルA〜Iの白色度、可視光透過率、孔径、ガーレー通気度、および表面粗さを表1にまとめて記載する。また、サンプルA、サンプルC、サンプルHの表面のSEM像を図9〜11に示す。なお、図9および図10のSEM像は倍率を5000倍に設定して撮像したものであり、図11のSEM像は倍率を100倍に設定して撮像したものである。
【0082】
【表1】

【0083】
表1に示すように、サンプルAの表面の白色度は77.1、サンプルBの表面の白色度は73.8、サンプルCの表面の白色度は75.1であった。すなわち、サンプルA〜Cでは、表面の白色度が70以上であるため、吸着用シートとして用いた場合に当該吸着用シートの表面に付着した黒色系の異物を視認し易い。
【0084】
サンプルAにおけるストレート孔の径は1.0μm、サンプルBにおけるストレート孔の径は3.0μm、サンプルCにおけるストレート孔の径は5.0μmであった。また、サンプルAのガーレー通気度は8.79sec/100mL、サンプルBのガーレー通気度は2.47sec/100mL、サンプルCのガーレー通気度は3.59sec/100mLであった。すなわち、サンプルA〜Cでは、孔径が20μm以下でありかつガーレー通気度が10sec/100mL以下であるため、吸着用シートとして用いた場合に作業対象物の吸い込みを抑制しつつ、当該作業対象物を効率よく吸着できる。
【0085】
他方、サンプルD〜Gでは、表面の白色度が70未満であるため、サンプルD〜Gを吸着用シートとして用いた場合に当該吸着用シートに付着した黒色系の異物を視認することは困難である。また、サンプルD〜EおよびサンプルH〜Iでは、ガーレー通気度が10sec/100mLよりも大きいため、作業対象物を効率よく吸着することは困難である。
【符号の説明】
【0086】
4,104 吸着用シート
4a,104a 第1の主面
4b,104b 第2の主面
9,109 樹脂フィルム
10,110 白色粒子
12,112 ストレート孔
13 吸着面
14 吸着ユニット
15 作業対象物
16 孔
21 離型フィルム
22 セラミックグリーンシート
23 積層体
24 焼成体
131 白色層
132 下地層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に通気性を有する通気性シートであって、
前記厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔が形成された樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルムの内部に分散された白色粒子および/または前記樹脂フィルムの主面上に配置された白色層と、を備え、
前記複数のストレート孔の径は20μm以下であり、
当該通気性シートにおける少なくとも一方の主面のJIS P8123に準拠して測定した白色度は、70以上である、
通気性シート。
【請求項2】
前記厚さ方向の可視光透過率が60%以下である、請求項1に記載の通気性シート。
【請求項3】
前記白色層を備えるとともに、前記樹脂フィルムと前記白色層との間に介在し、前記白色層に接する下地層をさらに備える、請求項1または2に記載の通気性シート。
【請求項4】
前記下地層は、アルミナを蒸着することにより形成されたアルミナ層である、請求項3に記載の通気性シート。
【請求項5】
前記白色粒子および/または前記白色層は、無機物からなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の通気性シート。
【請求項6】
前記白色粒子および/または前記白色層は、酸化チタンからなる、請求項5に記載の通気性シート。
【請求項7】
酸化チタンを蒸着することにより形成された前記白色層を備える、請求項6に記載の通気性シート。
【請求項8】
前記樹脂フィルムが、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンナフタレートおよびポリフッ化ビニリデンから選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の通気性シート。
【請求項9】
当該通気性シートの厚さ方向の通気度は、JIS P8117に準拠して測定したガーレー数にして10秒/100mL以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の通気性シート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の通気性シートを備えた、吸着用シート。
【請求項11】
被濾過液体を濾過するための濾過膜であって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の通気性シートを備えた、濾過膜。
【請求項12】
エアフィルタ用の濾材であって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の通気性シートを備えた、濾材。
【請求項13】
ベントフィルタ−用の通気膜であって、請求項1〜9のいずれか一項に記載の通気性シートを備えた、通気膜。
【請求項14】
吸着ユニットの吸着面に、前記吸着面との直接の接触を防ぎ、厚さ方向に通気性を有する吸着用シートを介して作業対象物を吸着させる吸着工程を含み、
前記吸着用シートは、当該吸着用シートにおける第1の主面が前記吸着面に対向し、当該吸着用シートの第2の主面が前記作業対象物に対向するように配置され、
前記吸着用シートは、前記厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔が形成された樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの内部に分散された白色粒子および/または前記第2の主面に配置された白色層と、を備え、
前記複数のストレート孔の径は20μm以下であり、
前記吸着用シートの厚さ方向の通気度は、JIS P8117に準拠して測定したガーレー数にして10秒/100mL以下であり、前記吸着用シートにおける前記第2の主面のJIS P8123に準拠して測定した白色度は70以上である、
吸着ユニットへの作業対象物の吸着方法。
【請求項15】
離型フィルム上に形成されたセラミックグリーンシートを、吸着ユニットの吸着面に、前記セラミックグリーンシートと前記吸着面との直接の接触を防ぎ、厚さ方向に通気性を有する吸着用シートを介して吸着させて前記離型フィルムから剥離する剥離工程と、
剥離した前記セラミックグリーンシートを、前記吸着面に吸着させたまま搬送し、搬送先で他のセラミックグリーンシートと積層する積層工程と、
前記剥離工程および前記積層工程を複数回繰り返して得られた前記セラミックグリーンシートの積層体を焼成する焼成工程と、を含み、
前記剥離工程および前記積層工程において、前記吸着用シートは、当該吸着用シートにおける第1の主面が前記吸着面に対向し、当該吸着用シートの第2の主面が前記セラミックグリーンシートに対向するように配置され、
前記吸着用シートは、前記厚さ方向に直線状に貫通する複数のストレート孔が形成された樹脂フィルムと、前記樹脂フィルムの内部に分散された白色粒子および/または前記第2の主面に配置された白色層と、を備え、
前記複数のストレート孔の径は20μm以下であり、
前記吸着用シートの厚さ方向の通気度は、JIS P8117に準拠して測定したガーレー数にして10秒/100mL以下であり、前記吸着用シートにおける前記第2の主面のJIS P8123に準拠して測定した白色度は70以上である、セラミックコンデンサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−108066(P2013−108066A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−234116(P2012−234116)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】