説明

連続焼鈍炉における直火炉の配管構造、直火炉および連続焼鈍炉ならびに金属帯の製造方法

【課題】連続焼鈍炉における直火炉の配管構造として、熱処理材への異物の付着を的確に抑止できるとともに、設備投資のコストも低減できる、連続焼鈍炉における直火炉の配管構造を提供する。
【解決手段】連続焼鈍炉における直火炉20の配管構造として、直火加熱バーナー15の燃料ガス配管にフィルター2が設置されており、そのフィルター2の上流側は一般炭素鋼配管1で、フィルター2の下流側はSUS配管3となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続焼鈍炉における直火加熱バーナーを用いた加熱帯(直火炉)の配管構造、直火炉、連続焼鈍炉および金属帯の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、冷延鋼板、特に自動車用冷延鋼板は高い品質レベルが要求されており、連続焼鈍工程(連続焼鈍炉)では、欠陥の発生しにくい製造が必要となっている。
【0003】
一般的に、金属帯(例えば、鋼帯)の連続焼鈍炉は、加熱帯、均熱帯、冷却帯を備えており、加熱帯は、直火加熱バーナーを用いた加熱帯(直火炉)となっていることが多い(例えば、特許文献1)。
【0004】
そのような直火加熱バーナーを用いた加熱帯(直火炉)においては、通常、燃料ガスの配管として、一般炭素鋼配管(一般炭素鋼管を使用した配管)が用いられる。
【0005】
しかし、一般炭素鋼配管の場合、燃料ガスに含まれる不純物成分と反応・腐食して、異物が発生することがあり、その発生した異物が金属帯表面に黒く焼き付いてしまうことがある。その場合、金属帯の表面外観の悪さだけでなく、金属帯のプレス成形時に金型を傷付ける懸念もある。
【0006】
したがって、このような金属帯への異物の付着は、自動車用外板において最も厳格に管理されている。金属帯における異物付着部は製品として出荷できずカットされる。さらに、異物の付着位置によっては、異物付着部周辺も単重不足のためスクラップとなる場合もあり、製品歩留りの低下を引き起こす。
【0007】
このような金属帯への異物付着の対策として、一般炭素鋼配管の変わりに、SUS配管(ステンレス鋼管を使用した配管)を用いれば、燃料ガス配管が腐食することは無くなり、異物の発生・付着は抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−213624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記に示したように、連続焼鈍炉における直火炉の燃料ガス配管をSUS配管にするのは、一般炭素鋼配管と比較して、設備投資に多額のコストが掛かってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、連続焼鈍炉における直火炉の配管構造として、熱処理材(例えば、金属帯)への異物の付着を的確に抑止できるとともに、設備投資のコストも低減できる、連続焼鈍炉における直火炉の配管構造を提供する。また、該配管構造を有する直火炉、さらに該直火炉を有する連続焼鈍炉を提供するとともに、該連続焼鈍炉を用いて金属帯を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0012】
[1]連続焼鈍炉における直火炉の配管構造であって、直火加熱バーナーの配管にフィルターが設置されていることを特徴とする連続焼鈍炉における直火炉の配管構造。
【0013】
[2]前記フィルターの上流側は一般炭素鋼配管であり、前記フィルターの下流側はSUS配管であることを特徴とする前記[1]に記載の連続焼鈍炉における直火炉の配管構造。
【0014】
[3]前記フィルターの前後の配管をバイパス化させていることを特徴とする前記[1]または[2]に記載の連続焼鈍炉における直火炉の配管構造。
【0015】
[4]前記[1]〜[3]のいずれかに記載の配管構造を有する連続焼鈍炉における直火炉。
【0016】
[5]前記[4]に記載の直火炉を有する連続焼鈍炉。
【0017】
[6]前記[5]に記載の連続焼鈍炉を用いて金属帯を製造することを特徴とする金属帯の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明においては、連続焼鈍炉における直火炉の配管構造として、熱処理材(金属帯)への異物の付着を的確に抑止できるとともに、設備投資のコストも低減できるものとなっている。また、本発明における金属帯の製造方法によれば、高い表面品質が求められる自動車外板用鋼板を、優れた表面品質を維持し、高い歩留りで安定して製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態1を示す図である。
【図2】本発明の実施形態2を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
[実施形態1]
前述したように、従来、金属帯(例えば、鋼帯)の連続焼鈍炉の直火炉の燃料ガス配管は、炭素鋼配管であり、燃料ガスに含まれる不純物成分(主に硫黄)と炭素鋼配管が反応・腐食して、異物(主にFeS)が発生し、長期間にわたって堆積した異物がバーナー(直火加熱バーナー)に達し、金属帯に吹付けられる。
【0022】
これに対して、本発明の実施形態1においては、連続焼鈍炉の直火炉の燃料ガス配管が、図1に示すようになっている。
【0023】
すなわち、図1に示すように、この実施形態1における直火炉20では、各ゾーン(第1ゾーン4〜第8ゾーン11)に設置されている直火加熱バーナー15を用いて、炉内ロール13によって支持・搬送される金属帯12を加熱するに際して、直火加熱バーナー15の燃料ガス配管にフィルター(ストレーナー)2が設置されている。そして、フィルター2の上流側は一般炭素鋼配管1であり、フィルター2の下流側はSUS配管3となっている。
【0024】
このような配管構造とすることによって、フィルター2の上流側の一般炭素鋼配管1が燃料ガスに含まれる不純物成分と反応・腐食して、異物が発生しても、フィルター2によって、下流側への移動が防止され、直火加熱バーナー15に到達することが抑止される。
【0025】
なお、下流側への異物の移動抑制には、フィルター2は直火加熱バーナー15の直前の燃料ガス配管に設置するのが好ましく、直火加熱バーナー15の手前10m以内(直火加熱バーナーの上流側)に設置するのが好ましく、さらに、この距離を直火加熱バーナーの手前5m以内とすれば、より優れた効果が得られる。
【0026】
また、フィルター2の下流側のSUS配管3は、燃料ガスとの反応による腐食はなく、異物の発生源とはならない。したがって、金属帯への異物の付着を大幅に低減することができる。上記一般炭素鋼配管としては、例えば、配管用炭素鋼管(SGP)、圧力配管用炭素鋼鋼管(STPG)、高圧配管用炭素鋼鋼管(STS)、高温配管用炭素鋼管(STPT)等を用いることが可能である。また、上記SUS配管としては、SUS304、SUS309等を用いることが可能である。
【0027】
ここで、フィルター2のメッシュについては、#40メッシュ(約0.63mm四方)〜#120(約0.21mm四方)が好ましい。#120メッシュを超えると、目詰まりを起こし、燃料ガス流量の低下によるライン停止が懸念されるからである。
【0028】
また、フィルター2の材質については、燃料ガスとの反応による腐食を防止するために、ステンレス鋼、例えば、SUS304、SUS309等を用いることが好ましい。
【0029】
上記のようにして、この実施形態1においては、金属帯の連続焼鈍炉における直火炉20の配管構造として、金属帯への異物の付着を的確に抑止できるとともに、設備投資のコストも低減できるものとなっている。
【0030】
そして、このような直火炉の配管構造を備えた連続焼鈍炉を用いて金属帯の連続焼鈍を行うことによって、良好な表面性状の金属帯を製造することが可能となる。
【0031】
[実施形態2]
上記の実施形態1において、フィルター2の交換はライン停止時でなければ行うことができないため、通常はライン定期修理時に行う。
【0032】
一方、フィルター2はメッシュが細かいほど、金属帯12への異物の付着を減少させることができるが、目詰まりを起こすまでの期間が短くなる。目詰まりの発生が定期修理の間隔よりも短い場合には、フィルター2を交換するためのライン停止が必要になり、ライン稼働率の低下が懸念される。
【0033】
そこで、この実施形態2においては、上記のような場合に対応するために、図2に示すように、フィルター2の前後の配管をバイパス化させたものを使用するようにしている。
【0034】
すなわち、図2に示すように、フィルター2を並列に2台(フィルター2a、フィルター2b)設置し、切替弁16により切替可能として、一方のフィルター2aを使用中に他方のフィルター2bを不使用として操業し、使用中のフィルター2aが目詰まりを起こした場合には、切替弁16により、使用中のフィルター2aを不使用とし、不使用であったフィルター2bを使用するようにする。
【0035】
これによって、ライン操業を停止させることなく、目詰まりを起こしたフィルター2aを良好なフィルターと交換することが可能となる。
【0036】
また、特に図示していないが、目詰まりを起こしたフィルター2aの交換に際して、フィルター2aの前後の配管内はエアー置換を行えるようにすることで、安全にフィルター2aの交換を実施することができる。
【0037】
そして、図3は、図2に示したこの実施形態2におけるバイパス化させた配管構造を、図1に示した実施形態1に適用して構成された直火炉21を示すものである。ちなみに、図3では、図1における直火ゾーン(第1ゾーン4〜第8ゾーン11)の内、第3ゾーン6、第4ゾーン7、第7ゾーン10、第8ゾーン11に、バイパス化させた配管構造を適用している。なお、その他の構成は図1と同じである。
【0038】
このようにして、この実施形態2においては、バイパス化させた配管構造とすることによって、フィルター2に細かいメッシュのものを用いてフィルター2に目詰まりが発生した場合でも、ライン操業を停止させることなく、目詰まりしたフィルター2の交換が可能となる。
【0039】
なお、連続焼鈍炉については、特に図示していないが、ライン上流側から、直火炉、焼鈍炉(均熱炉)、冷却炉、過時効処理炉等を備えたもので、金属帯の熱処理を短時間で施す場合に有効な設備であり、とりわけ本発明における配管構造を有する直火炉を用いることにより、良好な表面性状の金属帯を製造することが可能である。また、連続焼鈍炉は、直火炉、焼鈍炉、冷却炉に加え、熱処理材(金属帯)の表面に表面処理(例えば、溶融亜鉛めっき、めっきの合金化処理等)を施す設備を備えたものを本発明に適用しても良く、その場合にも、同様に良好な表面性状の金属帯を製造することが可能である。
【実施例1】
【0040】
本発明の実施例1を以下に示す。
【0041】
本発明例として、前述の図1に示した本発明の実施形態1の直火炉20を備えた連続焼鈍炉を用いて、金属帯(自動車外板用鋼板)の連続焼鈍を行った。すなわち、本発明例では、直火加熱バーナー15の直前の燃料ガス配管にフィルター2が設置されており(直火加熱バーナーの手前5mの位置)、そのフィルター2の上流側は一般炭素鋼配管1で、フィルター2の下流側はSUS配管3となっている。
【0042】
その際に、フィルター2のメッシュを#40メッシュ(約0.63mm四方)とした場合を本発明例1とし、フィルター2のメッシュを#120(約0.21mm四方)とした場合を本発明例2とした。
【0043】
これに対して、従来例として、燃料ガス配管が全て一般炭素鋼配管である直火炉を備えた連続焼鈍炉を用いて、自動車外板用鋼板の連続焼鈍を行った。ちなみに、従来例では、燃料ガス配管にフィルターは設置されていない。
【0044】
図4は、従来例と本発明例1、2における異物格落率(連続焼鈍炉の直火炉における異物の付着により格落ちとなった自動車外板用鋼板の比率(スクラップ比率))を比較したものである。
【0045】
図4に示すように、従来例に比べて、本発明例1では異物格落率が約1/2に減少し、本発明例2では異物格落率が1/10以下に減少している。
【0046】
これによって、本発明の有効性が確認された。
【実施例2】
【0047】
本発明の実施例2を以下に示す。
【0048】
本発明例3として、前述の図3に示した本発明の実施形態2の直火炉21を備えた連続焼鈍炉を用いて、金属帯(自動車外板用鋼板)の連続焼鈍を行った。
【0049】
その際に、バイパス化した第3ゾーン6、第4ゾーン7、第7ゾーン10、第8ゾーン11のフィルター2(2a、2b)のメッシュを#120(約0.21mm四方)とし、バイパス化していない第1ゾーン4、第2ゾーン5、第5ゾーン8、第6ゾーン9のフィルター2のメッシュも#120(約0.21mm四方)とした。
【0050】
そして、第3ゾーン6、第4ゾーン7、第7ゾーン10、第8ゾーン11において、バイパス化したフィルター2(フィルター2aを使用、フィルター2bを不使用)によって操業したところ、定期修理(6週間)の間隔よりも短い期間(2週間)で、フィルター2aの目詰まりが発生したため、切替弁16により、フィルター2aを不使用、フィルター2bを使用の状態とすることによって、操業を停止させることなく、連続焼鈍を行うとともに、目詰まりを起こしたフィルター2aの交換を行った。
【0051】
その結果、この本発明例3では、異物格落率は0.12%となり、上述の実施例1における本発明例2と同等の効果が得られるとともに、フィルター交換のためのライン停止の必要がなくなり、ライン稼働率の低下を抑制することができた。
【0052】
これによって、より一層、本発明の有効性が確認された。
【符号の説明】
【0053】
1 炭素鋼配管
2 フィルター(ストレーナー)
2a、2b フィルター(ストレーナー)
3 SUS配管
4 直火炉第1ゾーン
5 直火炉第2ゾーン
6 直火炉第3ゾーン
7 直火炉第4ゾーン
8 直火炉第5ゾーン
9 直火炉第6ゾーン
10 直火炉第7ゾーン
11 直火炉第8ゾーン
12 金属帯
13 炉内ロール
15 直火加熱バーナー
16 切替弁
20 直火炉
21 直火炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続焼鈍炉における直火炉の配管構造であって、直火加熱バーナーの配管にフィルターが設置されていることを特徴とする連続焼鈍炉における直火炉の配管構造。
【請求項2】
前記フィルターの上流側は一般炭素鋼配管であり、前記フィルターの下流側はSUS配管であることを特徴とする請求項1に記載の連続焼鈍炉における直火炉の配管構造。
【請求項3】
前記フィルターの前後の配管をバイパス化させていることを特徴とする請求項1または2に記載の連続焼鈍炉における直火炉の配管構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の配管構造を有する連続焼鈍炉における直火炉。
【請求項5】
請求項4に記載の直火炉を有する連続焼鈍炉。
【請求項6】
請求項5に記載の連続焼鈍炉を用いて金属帯を製造することを特徴とする金属帯の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−106027(P2011−106027A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230165(P2010−230165)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】