説明

進路制御を支援する方法およびシステム

本発明は、特に路上または路外環境における自動車または船または飛行機の進路制御を支援する方法およびシステムに関する。進路制御支援は特に、(a)自動車の実際の未来進路を、自動車動作データに基づいて推定するとともに、光学的および/または音響的および/または触覚的に前記推定される実際の未来進路を運転者に示す段階と、(b)前記自動車の実際の現在進路を検出し、かつ前記検出される実際の現在進路の、所望の現在進路からの現在の偏差を推定するとともに、光学的および/または音響的および/または触覚的に前記推定される現在の偏差を前記運転者に示す段階との少なくとも一方の段階とによりなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に路上または路外環境における自動車または船または飛行機の進路制御を支援する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を安全に運転するためには、運転者は、主として道路を見渡して、往来を観察するとともに、事故を回避しなければならないことは周知である。しかしながら、特に現在の自動車の運転者は、しばしば道路から目を逸らせて自動車の車内に目を向けることを求められる。たとえば、運転者は、自動車を運転することと往来を監視することとに加えて、速度計、ラジオまたはナビゲーション表示を頻繁に直接凝視(直視)することを必要とし、そこに表示される情報を読み、かつ理解するとともに、これらおよびその他の装置を操作することができなければならない。
【0003】
道路から、たとえば自動車の車内に少しでも目を逸らせることは、路上環境の変化を察知する運転者の能力が低下するため、潜在的に危険な運転状況を引き起こす。路外に目を向けることは、車線維持能力の変動性の増大、車線はみ出し、空走時間の増加および事象の見逃し等の望ましくない安全上の結果を招く。
【0004】
【特許文献1】米国特許第5289185号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1065642号明細書
【特許文献3】米国特許第5802479号明細書
【特許文献4】米国特許第5844486号明細書
【特許文献5】米国特許第6466863号明細書
【特許文献6】米国特許第6542111号明細書
【特許文献7】米国特許第6675094号明細書
【特許文献8】米国特許第6665603号明細書
【特許文献9】米国特許第6792345号明細書
【非特許文献1】www.lasershow.se
【非特許文献2】http://www.tunnel-in-the-sky.tudelft.nl./pred.html
【非特許文献3】www.seeingmachines.comのシーイング・マシーンズ・フェイスラブ(Seeing Machines FaceLAB)
【発明の開示】
【0005】
本発明の一般的な目的は、前記の危険性をさらに低下させることができ、かつ特に自動車の運転の安全性をさらに高めることができる方法およびシステムを提供することにある。
【0006】
特に、本発明の目的は、特に路上または路外環境において自動車の進路制御を支援する方法およびシステムを提供することにある。
【0007】
これらの目的は、請求項1に記載の方法と請求項13に記載のシステムとによって達成される。
【0008】
この解決策の大きな利点は、この方法は、道路の代わりに、たとえばナビゲーションシステムにより経路が予め定められる場合に、路外用途にも用いられうるところにある。
【0009】
これらの解決策は、自動車の運転の安全性は、請求項1に記載の少なくとも1つの段階を有する進路制御支援方法が実施されると実質的に高まるという驚くべき発見に基づく。
【0010】
従属請求項には、本発明の有利な実施形態が開示されている。
【0011】
本発明のさらに他の詳細、特徴および利点は、図面を参照して、以下の本発明の好適かつ例証的な実施形態の説明において開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に、自動車を運転している運転者Dを有する自動車の車室C内の側面図が示されるとともに、本発明にしたがった、進路制御を支援するシステムの第1の実施形態が示されている。
【0013】
このシステムの主要な構成要素は、たとえばレーザー投射器の形態をとる表示装置20に接続される制御装置10と、運転者Dの頭部および/または眼の位置を検出する目視行動センサ30とである。
【0014】
前記制御装置10は、前記目視行動センサ30から頭部および/または眼の位置データを受けるとともに、自動車の速度および/またはヨーレートおよび/またはホイール角等を検出する少なくとも1個のセンサ(図示せず)により生成される自動車動作データを受けるために設けられる。特に前記制御装置10の主要な構成要素を、図4および10を参照して説明する。
【0015】
前記制御装置は、これらのデータを処理するとともに、表示装置20を制御して、自動車の推定される実際の未来進路および/または検出される実際の現在進路に基づく所望の現在進路からの自動車の推定される現在の偏差を運転者Dに対して表示するために設けられる。前記レーザー投射器20は、こうした画像を、たとえば自動車のフロントガラスのある一定の位置に投射するように配設かつ設置される。
【0016】
「表示装置」という用語は、本開示においては、運転者に対する視覚情報表示のあらゆる源を指すために用いられる。表示装置の例には、GPSに基づくナビゲーションおよび地図情報を表示するために用いられる従来のコンピュータ表示装置、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)または同様のもの、またはその他の電子装置、インストルメントパネル内の表示装置、ヘッドアップディスプレイ、発光ダイオード(LED)およびその他の投射表示装置が含まれる。ヘルメット取付け、バイザ取付け、眼鏡取付け表示装置も用いられうる。
【0017】
投射表示装置の一例は、カラー画像刺激を生じしめることができる、市販のダイオードレーザー(たとえば、非特許文献1を参照されたい)である。画像刺激は、像の印象が生じしめられるほど迅速に動き回る単一のレーザービームによって構成される。このビームは、モータ軸上において小型の鏡を有する2個の小型電磁モータ(xおよびy軸)によって制御される。赤色および/または青色および/または緑色レーザーを含めて、多数の異なるレーザーを用いることが有利である。しかしながら、多くの用途においては、講堂での発表のためのポインティング装置として一般に用いられるレーザー等の単純な低価格レーザーを使用すれば十分であり、自動車用等級のレーザーも用いられうる。
【0018】
最後に、本システムは、たとえばダッシュボードに取り付けられるカメラである視標追跡用目視行動センサ30、または頭部に取り付けられて運転者Dの凝視方向または凝視位置を検出するとともに、制御装置10に接続されるまた他のセンサを含む。
【0019】
図2にも、自動車を運転している運転者Dを有する自動車の車室C内の側面図が示されている。図2には、レーザー投射器の代わりに、図12および13を参照して以下により詳細に説明される2個の発光ダイオードアレー21a、21bが設けられる、本発明にしたがった進路制御支援システムの第2の実施形態が示されている。
【0020】
図3には、これもまた目視行動センサ31と制御装置11とからなる頭部取付けバイザ23により像が運転者Dに対して表示される、本発明の進路制御支援の第3の実施形態が示されている。
【0021】
図4には、本発明にしたがって自動車の未来進路を表示する第1の構成の構成要素のブロック図が示されている。第1の構成要素40は、運転者の頭部および/または眼の位置のデータを検出するために設けられる。第2の構成要素41は、たとえば自動車のヨーレートおよび/またはホイール角および/または速度のような自動車データを検出するために設けられる。第3の構成要素42は、前記検出された自動車データに基づいて進路予測を計算するために設けられる。運転者の頭部の位置および/または眼の位置のデータと前記計算された進路予測とに基づいて、第4の構成要素43は、表示パラメータを計算して、図6乃至10の1つにおいて開示されるところのディスプレイ表示44を達成し、かつ得るために設けられる。
【0022】
図5A、Bに、実際の未来進路との比較における所望の未来進路の略図が示されている。これらの図において、矢印1は、所望の未来進路を示し、矢印2は、実際の未来進路を示す。Efは、予見距離Tにおける所望の進路と未来進路との間の誤差である。Epは、現行の進路位置と所望の進路位置との間における誤差である。実線は、進路の境界を示す。
【0023】
図5Aに、実際の未来進路2が、適正な現行(現在)進路位置および遠方進路点における不適正な未来進路軌道とともに示されている。図5Bには、実際の未来進路2が、不適正な現行(現在)進路位置および遠方進路点における同様に不適正な未来進路軌道とともに示されている。
【0024】
未来進路軌道の制御には、自動車がどこに向かっているか(図5Aの矢印2)と該自動車はどこに向かうべきか(矢印1)とを比較する段階が含まれる。未来進路軌道を制御するために、運転者は、予見距離Tにおける自動車の実際の未来進路(矢印2)と所望の未来進路(矢印1)との相違(Ef)に基づいてステアリングの補正を行なう。運転者は、未来進路上において真水平面から約4度下かつ約1秒先の予見距離にある、遠方進路点と呼ばれる点を凝視することによって未来進路誤差Efを評価する。運転者に課せられる要求が増大するほど、凝視は、ますますこの未来進路領域に集中するようになる。未来進路への視線の集中は、交通環境負荷、二次タスク負荷、疲労および障害等の運転者の状態要素とともに強まる。運転者は、認識および計画タスクより自身の進路制御タスクの視覚的指標を優先させる。
【0025】
未来進路誤差の検出には遠方進路点が重要性であり、かつ運転が過酷になると運転者は遠方進路点をより一層優先させるようになるとすれば、未来進路誤差の検出において運転者を補助するシステムが有利であることになる。未来進路誤差をより容易に認識することができれば、ステアリングの補正がより良好になり、かつ進路制御が向上するとともに、運転者は、非常に過酷な状況において、目に見えるその他の事物および場所により自由に目を配ることができるため、認識および計画タスクをより優先させることができる。
【0026】
図6A、Bに、頭部取付け表示装置に組み込まれる未来進路軌道表示の一例が示されている。図6Aには、頭部取付け表示装置の眼鏡に組み込まれる表示が示されており、図6Bには、運転者が同じ情報を見たときの光景が示されている。運転者の凝視点Gは、十字形により示され、自動車の照準は、円形により示されている。
【0027】
図7に、運転者がフロントガラスを介して道路を見ているときに見える未来進路軌道表示の第1の実施形態が示されている。表示された線Lは、道路の境界線であり、マーキングMが運転者に対して表示される。
【0028】
図7Aに、直線路上を走行しているときの進路維持状況が示されており、図7Bに、左折に入ろうとしているときの進路維持状況が示されている。図7Cには、直線路に沿って走行しているときの進路逸脱状況が示されており、図7Dには、左折に入ろうとしているときの進路逸脱状況が示されている。
【0029】
図8および9に、それぞれ未来進路軌道表示の第2および第3の実施形態が示されており、この場合も運転者に対して表示される道路の境界線LとマーキングMとが示されている。これらの図には、それぞれ図7の場合と同じ直線路上および左折における進路維持および進路逸脱状況が示されているが、これらの図は、運転者に対して表示される異なる種類のマーキングMが用いられうることを明確にするためのものである。
【0030】
この図4乃至9を参照して説明された第1の構成は、以下のように、未来進路制御を支援するため、特にフィードバックを提供して未来進路軌道評価を支援するために用いられる:
【0031】
自動車、飛行機(特許文献1)、船、ロボット等の移動体の未来進路を示す表示が存在することは知られている(特許文献2、エンズレイら(Endsley et al.)1999年を参照されたい)。これらの表示は、多種多様にクイックニング表示、予測表示および予見表示と呼ばれている(ライアン(Lion)1993年;マサンら(Mathan et al.)1996年;非特許文献2を参照されたい)。表示のクイックニングとは、移動体の現行の状態を外挿するインジケータを追加することを意味する。クイックニング表示の最も注目すべき用途は、飛行計画を維持するためにはどこに向かって進むべきかを操縦者に教える、多くの近代的な民間航空会社のフライトディレクターである。しかしながら、現行の未来進路表示は、こうした表示を眼または頭部位置と関連づけないか、または遠方進路点における未来進路を表示するだけである。
【0032】
未来進路軌道の制御を支援するために、本発明にしたがった前記システムは、運転者に対して、自動車の実際の未来進路に関する予測情報を提供して、運転者が、自動車がどこに向かって進んでいるかと該運転者が実際に行きたい場所との間における相違を直接見ることができるようにし、すなわち誤差項をより明確にする。
【0033】
図6乃至9に、実際の未来進路が運転者に対してどのように表示されうるかの例が示されている。これらの表示には、理想的には、前記システムが、1)頭部位置および/または眼の位置(たとえば特許文献3、特許文献4または非特許文献3による)と、2)進路予測推定(たとえば特許文献5、特許文献6または特許文献7に記載のように計算される)と、3)情報を表示する手段の情報を得ることが必要になる。図4および10を参照されたい。図1乃至3に示された構成等のさまざまな構成が用いられうる。
【0034】
図4の第4の構成要素43は、図6乃至9に示されたような未来進路表示を表示するために必要とされる表示パラメータの計算を表す。自動車の実際の未来進路は、進路予測アルゴリズム(第3の構成要素42)を用いて計算され、図6乃至9に示されるような未来進路表示が表示される。頭部および/または眼の位置データと表示面の位置とを知ることにより、表示される情報が、図6乃至9に示されるように、外部環境に対して適正に配置される幾何学的計算を行なうことが可能になる。情報の表示は、たとえば自動車センサから速度情報が得られる場合は、未来進路点の距離(図5における距離T)において設定されうる。
【0035】
次に、現在進路制御を支援するために用いられる第2の構成を、図10乃至18と、図19のさらに他の開発実施形態とにおいて説明する。
【0036】
図10に、本発明にしたがって自動車の現在進路を表示するシステムの第2の構成の構成要素のブロック図が示されている。第1の構成要素50は、この場合も、運転者の頭部の位置データおよび/または眼の位置データを検出するために設けられる。第2の構成要素51は、車線追跡データを検出する車線追跡装置であり、第3の構成要素52は、自動車の速度を検出するために設けられる。これらの3個の構成要素50、51、52の出力信号に基づいて、幾何学的計算が第4の構成要素53によって実行されて、図11乃至17に示されるようなディスプレイ表示54が達成され、かつ得られる。
【0037】
図11に、作動および/または作動解除されて、車線維持表示が達成されるようになる1列の発光素子60の形態をとる表示の第1の実施形態が示されている。
【0038】
図11Aによれば、自動車は車線の中央に位置している。図11Bによれば、自動車は、車線から右方向に逸脱しようとしている。灰色の縞模様のLED61(たとえば緑色LED)は、目標状態を示し、黒いLED62(たとえば赤色LED)は、前記目標状態からの誤差の量を表す。目標状態LED61は、図11Aにおいて車線マーキングLと一致して並んでおり、誤差LED62の列の最後のLEDも、図11Bにおいて車線マーキングLと一致している。
【0039】
図12および13に、自動車のダッシュボードに設置される1対のLED素子マトリックス21a、21b(図2参照)の形態をとる表示の第2の実施形態が示されている。
【0040】
前記マトリックス対Aは、自動車が車線の中央に位置しているときにどのような表示が示されるかを示す。対BおよびCは、自動車が車線から左方向に逸脱していくときに黒いLED(たとえば赤色LED)の個数が増えていく段階を示す。灰色のマーキング(たとえば緑色LED)は、目標状態を表す。
【0041】
図13において、マトリックス対Aは、この場合も、自動車が車線の中央に位置しているときにどのような表示が示されるかを示す。対BおよびCは、自動車が車線から右方向に逸脱していくときに黒いLED(たとえば赤色LED)の個数が増えていく段階を示す。灰色のマーキング(たとえば緑色LED)は、目標状態を表す。
【0042】
図14に、立体マーキングを用いて車線維持情報を投影する表示の第3の実施形態が示されている。図14Aには、自動車が車線の中央に位置しているときに表示されるマーキングが示されている。自動車が車線から右方向に逸脱し始めると、図14Bにおいて、前記マーキングは、右側においてより大きくなるとともに、左側において消滅する。自動車は、図14Cにおいて、車線から左側に逸脱しようとしている。表示は、情報をフロントガラス上と内装面上とに投射することにより、路上の車線マーキングLと一致するように拡大されていることが注目される。これに代わる方法として、これらの同じマーキングは、頭部取付け表示装置上において表示されうる。また他の代案は、自動車が車線から逸脱し始めたときにのみ前記マーキングを表示することであり、その場合は、図14Aにおいては、いかなるマーキングもないことになる。
【0043】
図15に、音響を伴うとともに、目標状態を有する車線維持情報を投影する表示の第4の実施形態が示されている。図15Aに、自動車が車線の中央に位置しているときに表示される目標状態マーキングGMが示されている。自動車が車線から右方向に逸脱し始める(図15B)と、目標状態マーキングGMは、そのままで、追加の誤差マーキングEMが右側においてより大きくなる。さらにまた、目標マーキングGMは、左側において消滅する。自動車は、図15Cにおいて、車線から左側に逸脱しようとしている。自動車が車線からはみ出そうとすると、さらにまた、強さを増していく音響が、前記マーキングとともに生じる。本実施形態においては、車線マーキングLは、フロントガラス上に投射されない。これに代わる方法として、これらの同じマーキングは、頭部取付け表示装置上において表示されうる。
【0044】
図16に、移動するマーキングを有する車線維持情報を投影する表示の第5の実施形態が示されている。図16Aに、自動車が車線の中央に位置しているときに表示されるマーキングMが示されている。このマーキングMは、破線状をなすとともに、図16A、BおよびCにおいて、これらの破線が運転者の方へと移動しながら表示される。この移動は、周辺視の感応性と意味の理解力を高めうる。自動車が車線から右方向に逸脱し始める(図16B)と、マーキングMは、右側においてより大きくなるとともに、左側において消滅する。自動車は、図16Cにおいて、車線から左側に逸脱しようとしている。前記表示が、フロントガラス上と内装面上とに多少拡大されていることが注目される。これに代わる方法として、これらの同じマーキングMは、頭部取付け表示装置上において表示されうる。
【0045】
図17に、移動するマーキングと目標状態とを有する車線維持情報を投影する表示の第6の実施形態が示されている。図17Aに、自動車が車線の中央に位置しているときに表示される目標状態マーキングGMが示されている。このマーキングは、破線状をなすとともに、図17A、BおよびCにおいて、これらの破線が運転者の方へと移動しながら表示される。この移動は、周辺視の感応性と意味の理解力とを高めうる。自動車が車線から右方向に逸脱し始める(図17B)と、目標状態マーキングGMは、そのままで、追加の誤差マーキングEMが右側においてより大きくなる。さらにまた、目標マーキングGMは、左側において消滅する。自動車は、図17Cにおいて、車線から左側に逸脱しようとしている。前記表示が、フロントガラス上および内装面上にある程度拡張されていることが注目される。これに代わる方法として、これらの同じマーキングは、頭部取付け表示装置上において表示されうる。
【0046】
図18に、眼鏡取付け表示の一例が示されている。図18Aには、眼鏡上においてどのような表示がなされるかと凝視点Gの表示とが示されている。図18Bには、運転者が眼鏡を介して見る光景が示されており、マーキングM;GMは、前記光景の上に重ね合わされている。
【0047】
図19Aに、直線路環境における合成的な光信号の流れが示されている。自然のオプティックフローは、自然のフローと実質的に同じ速度、曲率および展開で移動する光学的移動ドットを投射することによって、自動車内へと継続する。
【0048】
図19Bに、カーブ環境における合成的な光信号の流れが示されている。自然のオプティックフローは、自然のフローと実質的に同じ速度、曲率および展開で移動する光学的移動ドットを投射することによって、自動車内へと継続する。
【0049】
図10乃至18を参照し、かつ図19に関してさらに他の開発実施形態において説明されたこの第2の構成は、以下のように、現在の進路制御を支援するために用いられる:
【0050】
一般に、現在の進路位置の制御は、主として周辺視覚によって達成される。周辺視覚は、凝視点(中心視)からの視角が約10度を超える視界部分である。周辺視覚は、移動、空間的配向、照明変化に特に敏感であり、かつ低照明において敏感になる。運転時において、運転者が自身の自動車の側方または自動車の近傍の車線標識を直視することは、まれである。むしろ、車線内における自動車の位置に関する情報は、周辺視覚を用いて取得される。現在の進路位置を制御する上で、運転者は、進路上における現在位置を進路上における所望の現在位置と比較するとともに、自動車を操縦して、誤差を補正する。運転者は、ほとんどの場合、現在位置を車線標識と比較しているが、自動車の近傍の物体に対して位置を調整することもできる。
【0051】
現在の進路位置を特定する情報へのアクセスは、我々の視覚系では必ずしも全面的にアクセス可能というわけではない。たとえば、運転者がラジオ等の情報システムを操作しているときは、周辺情報は、自動車の内装品によって妨害される。現在の進路誤差がより容易に認識可能になりうると、ステアリング補正が向上し、意図しない車線逸脱が潜在的に排除されうる。
【0052】
車線逸脱および脱輪事故は、事故の大きな部分を占めている。車線維持が困難になることは、多くの場合、車載装置(たとえばラジオ)の使用によって引き起こされる注意散漫の結果である。
【0053】
図10乃至19に示されるような車線維持情報の表示は、運転者が車線逸脱の結果を知覚する上で助けになる。前記車線維持情報の表示は、運転者が、表示または表示付近に目を向けていないときに、道路から眼を逸らさなくても、周辺視覚だけで情報を認識することができる程度に十分に単純である。情報は、情報の表示の方へと視線を移動させるとともに、然る後に前記情報を直視する必要がないような方法で表示される。前記情報は、周辺視覚を用いて情報を取得することができる程度に単純に、かつ大きく表示されなければならない。
【0054】
車線維持情報の表示には、図10および図1乃至3のように、車線追跡装置51と、頭部/視線位置センサ50と、情報表示手段54とを組み合わせたものが用いられる。車線追跡装置は、市販の製品である(特許文献8または特許文献9を参照されたい)。頭部位置および/または眼の位置に関する情報を提供する装置(たとえば特許文献3、特許文献4または非特許文献3)は、周知のシステムである。傾斜に関する情報は、該情報をグローバルポジショニングシステムと傾斜情報を含むデジタル地図とを用いるナビゲーションシステムから取得することによって追加されうる。
【0055】
情報を表示する表示装置の一例は、この場合も、レーザー投射表示装置である(図1参照)。情報を表示する装置のその他の例は、従来のコンピュータ表示装置、たとえば液晶ディスプレイ(LCD)または同様のもの、ヘッドアップディスプレイ、発光ダイオード(LED)、ヘルメット取付け表示装置、バイザ取付け表示装置および眼鏡取付け表示装置である。
【0056】
情報は、数多くの態様で作用して、たとえば図11乃至18に示されたように車線維持を支援するように設計されうる。図11、12および13に、車線逸脱が、表示されるLEDの個数の増加によってどのように表されるかが示されている。表示されるLEDの量および配置は、車線追跡装置によって記録される車線逸脱の量に対応する。白色または緑色(図11乃至13においては灰色)のいずれかによって表示される目標状態マーキングは、頭部位置および/または眼の位置の知識と車線内における自動車の位置の知識と車幅とから計算される。
【0057】
頭部および/または眼の位置の知識と、情報がその上に表示される面の形状の知識とにより、システムは、図11乃至18に示されるように、目標状態マーキングを連続する車線または道路標識と合致させて配置することが可能になる。いかなる頭部および/または眼の位置データの知識もなければ、着席位置、高さおよび頭部の移動の変動のため、こうした車線合致は不可能となる。車線維持情報は、図11の場合のように両側に、または図12乃至18の場合のように車線を逸脱する危険がある片側のみに表示されうる。
【0058】
目標状態マーキングは、図11乃至13、15、17および18に示された実施形態において表示される。しかし、前記マーキングが表示されずに誤差のみが表示されてもよい。これに代わる方法として、前記システムは、自動車が車線を逸脱しそうになったときのみ、または運転者が車内に目を向けているときのみ、または運転者が二次タスクを行なっているときのみ、または異なる運転状況(たとえば高速道路のみ)においてのみ車線維持誤差表示をスイッチオンしうる。運転者は、自身が希望するときにシステムをスイッチオフおよびスイッチオンすることができる。
【0059】
一般に、車線維持情報の表示では、照明の強さ、照明の密度、パターンの種類、音響、振動および動き等の数多くの知覚特性の値を増加させることができる。たとえば、目標状態からの逸脱が大きくなるにつれて、図12および13の実施形態に示されるLEDの個数または図14乃至18の実施形態に示されるマーキングの大きさと、その強さおよび/または色および/または音響のいずれもが増しうる。視覚情報の表示は、図15の実施形態に示されたように、音響と一緒に用いられうる。図14乃至17の実施形態に、情報提供の異なる形態が示されている。図16乃至18の実施形態には、マーキングに追加される移動標識が示されている。
【0060】
現行の進路位置の検出を支援するまた別の方法は、自動車の車内へと至る合成オプティックフローを追加することである。環境を介した運動によって創出される自然のオプティックフローは、自然のフローと実質的に同じ速度、曲率および展開で移動する光学的移動ドットを投射することによって、自動車内へと継続する。たとえば、レーザー投射器を用いて、自動車内において運転者に対して継続的なフローの光学的ドットを表示することもできる。
【0061】
内装上に投射される合成オプティックフローは、付加的な空間的配向情報として作用するとともに、現行の進路位置誤差(図5BにおけるEp)または横方向の変位に対する感応性を高める。このように自動車内においてオプティックフロー情報へのアクセスが増えることは、特に、運転者の眼が道路から逸れているときに有用である。たとえば、運転者が変速装置に目を向けているときは、車外環境は、運転者の網膜上にほとんど映らない。この付加的な合成の空間的配向情報を得ることにより、運転者は、オプティックフローにおいて横方向の変位を容易に察知することができる。このため、運転者は、道路から目を逸らせて車内タスクを行なう場合に通常的に起こるような車線内でのふらつきを起こすことなしに、より安定な進路を維持することが可能になる。
【0062】
これを達成しうる方法の一例は、図1に関連して説明されたレーザー投射器を使用することである。無作為に選択されるドットは、継続車外オプティックアレイをまねた態様で運転者Dの方へと移動する。現行のオプティックフローは、進路予測(前記のような)に用いられる情報等の自動車情報から推定されうるか、または前方監視カメラからのビデオ画像を用いて画像処理ソフトウェアにより推定されうる。合成オプティックフローの表示は、さらにまた、図7乃至18の実施形態に示された表示情報と組み合わせて用いられうる。
【0063】
また別の実施形態において、レーザー投射器(またはその他の表示装置)を用いて、車線維持是正処置を誘発する刺激を与えることもできる。これは、合成オプティックフローを誇張して、実際の曲率を上回る曲率をシミュレートすることによって行なわれる。たとえば、図19Bの湾曲した合成フローの線に、より大きい曲率を与えると、運転者は、自動車が実際より急な左折をしようとしているという印象を受ける。このより急な左折をしようとしているという印象は、補償的なステアリング反応を引き起こして、以って運転者は少し右に方向転換する。合成オプティックフローの誇張は、直線路環境においても等しく良好に作用する。誇張された合成フローを用いるシステムは、運転者のステアリングパターンの変化を誘発し、運転者は、それに気付くことなしに車線逸脱を補償する。このため、不注意または注意散漫な運転者が、より良好な車線維持性を達成することが可能になる。構成要素は、図10において概説されたものと同じである。合成フローの誇張は、自動車が車線から外れるにつれて漸増的に増大せしめられうる。
【0064】
目標状態が、たとえばGPSのようなナビゲーションシステムにより判断される場合は、本発明は路外用途にも用いられうる。この場合は、図10に示される車線追跡要素51は、ナビゲーションシステムにより判断される進路からの逸脱を評価する事前プログラム式評価装置に置き換えられる。
【0065】
要約すれば、自動車の進路制御は、運転者の未来進路誤差と現在進路誤差との評価から得られる情報によって導かれるステアリング補正の組合せである。本発明は、運転者に情報を提供して、好ましくは運転者により選択されうる組合せ状態または別個の状態でこれらのタスクのいずれをも向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明にしたがったシステムの第1の実施形態の略図である。
【図2】本発明にしたがったシステムの第2の実施形態の略図である。
【図3】本発明にしたがったシステムの第3の実施形態の略図である。
【図4】本発明にしたがった、自動車の未来進路を表示する第1の構成のシステムの構成要素のブロック図である。
【図5】実際の未来進路との比較における所望の未来進路の略図である。
【図6】頭部取付け表示装置に組み込まれる未来進路軌跡表示の例証図である。
【図7】未来進路軌跡表示の第1の実施形態の図である。
【図8】未来進路軌跡表示の第2の実施形態の図である。
【図9】未来進路軌跡表示の第3の実施形態の図である。
【図10】本発明にしたがった、自動車の現在進路を表示する第2の構成のシステムの構成要素のブロック図である。
【図11】自動車の現在進路を制御するための表示の第1の実施形態の図である。
【図12】自動車の現在進路を制御するための表示の第2の実施形態の図である。
【図13】自動車の現在進路を制御するための表示の第2の実施形態の図である。
【図14】自動車の現在進路を制御するための表示の第3の実施形態の図である。
【図15】自動車の現在進路を制御するための表示の第4の実施形態の図である。
【図16】自動車の現在進路を制御するための表示の第5の実施形態の図である。
【図17】自動車の現在進路を制御するための表示の第6の実施形態の図である。
【図18】自動車の現在進路を制御するための眼鏡取付け表示装置の例証図である。
【図19】自動車の現在進路を制御するための光信号の流れを示す略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)自動車の実際の未来進路を、自動車動作データに基づいて推定するとともに、光学的および/または音響的および/または触覚的に前記推定される実際の未来進路を運転者に示す段階と、
(b)前記自動車の実際の現在進路を検出し、かつ前記検出される実際の現在進路の、所望の現在進路からの現在の偏差を推定するとともに、光学的および/または音響的および/または触覚的に前記推定される現在の偏差を前記運転者に示す段階との少なくとも一方の段階とにより、特に自動車の進路制御を支援する方法。
【請求項2】
段階(a)は、前記実際の未来進路の、所望の未来進路からの未来の偏差の推定と、光学的および/または音響的および/または触覚的に前記進路の前記推定される未来偏差を前記運転者に示すこととからなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所望の現在進路および/または前記所望の未来進路は、実際の運転環境、特に路上の進路またはたとえばナビゲーションシステムにより確定される路外の進路の像によって与えられる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記運転者の頭部および/または眼の位置を判断するとともに、実際の運転環境、特に路上の進路またはたとえばナビゲーションシステムにより確定される路外の進路の像に光学的に関連させて、前記推定される実際の未来進路および/または前記推定される現在偏差を前記運転者に表示する段階からなる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記表示は、前記推定される実際の未来進路および/または前記推定される現在の偏差の像を実際の運転環境、特に路上の進路またはたとえばナビゲーションシステムにより確定される路外の進路の像に光学的に重ね合わせた形態で提供される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記表示は、実際の運転環境、特に路上の進路またはたとえばナビゲーションシステムにより確定される路外の進路の像の光学的な継続の形態で提供される請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記光学的な継続は、実際の運転環境における少なくとも1本の境界線の、運転者に対する光学的表示、特に光学的な線からなる請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光学的な継続および/または前記光学的表示は、それぞれレーザー装置によって三次元的に表示される請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記光学的な継続および/または前記光学的表示は、それぞれ複数個のLED素子装置の作動および/または作動解除によって表示される請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1本の境界線の前記光学的表示は、その強さおよび/または濃さおよび/またはコントラストおよび/または色に関して、自動車と前記境界線との間における距離の減少または増加に対応して光学的に増大または減衰せしめられる請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記実際の運転環境の前記光学的な継続は、前記運転者を取り巻く光学的な信号、標識および/またはパターンの二次元的または三次元的な流れの形態で提供される請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記進路制御は、目標が前記所望の未来進路および/または前記所望の現在進路の像により提供される照準装置の形態で提供され、前記推定される実際の未来進路および/または前記推定される現在偏差の表示は、前記運転者が前記自動車の操縦を行なうことを支援するために表示される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
特に自動車の進路制御を支援するとともに、特に請求項1乃至12の少なくとも1項に記載の方法を実行するシステムにおいて、
−前記自動車の実際の未来進路を自動車動作データに基づいて推定するとともに、前記推定される実際の未来進路を前記運転者に対して光学的および/または音響的および/または触覚的に表示するために設けられる第1の装置(40、41、42、43、44)と、
−前記自動車の前記実際の現在進路を検出し、かつ前記検出された実際の現在進路の、所望の現在進路からの現在偏差を推定するとともに、前記推定される現在偏差を前記運転者に対して光学的および/または音響的および/または触覚的に表示するために設けられる第2の装置(50、51、52、53、54)との少なくとも一方からなるシステム。
【請求項14】
前記第1の装置(40、41、42、43、44)は、前記実際の未来進路の、所望の未来進路からの未来偏差を推定するとともに、前記進路の前記推定される未来偏差を運転者に対して光学的および/または音響的および/または触覚的に表示する第1の装置からなる請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第1および/または第2の装置(40、41、42、43、44;50、51、52、53、54)は、前記運転者の頭部および/または眼の位置を判断する装置と、実際の運転環境、特に路上の進路またはたとえばナビゲーションシステムにより確定される路外の進路の像に光学的に関連させて、前記推定される実際の未来進路および/または前記推定される現在偏差を表示しうるように、表示装置を制御する制御装置とからなる請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記表示装置は、前記自動車の車内において二次元または三次元像を生じしめるレーザー投射器の形態で提供される請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記表示装置は、複数個のLED素子の形態で提供される請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
プログラム可能なマイクロコンピュータにおいて実行されると、請求項1乃至12の少なくとも1項に記載の方法を実行するようになっているコンピュータプログラム・コード手段からなるコンピュータプログラム。
【請求項19】
インターネットに接続されるコンピュータにおいて実行されると、請求項13にしたがったシステムまたは該システムの1個の構成要素にダウンロードされうるようになっている請求項18に記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
請求項18に記載のコンピュータプログラム・コード手段からなる、コンピュータ読取り可能媒体上において記憶されるコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2007−512636(P2007−512636A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541882(P2006−541882)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013632
【国際公開番号】WO2005/053991
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(502196511)ボルボ テクノロジー コーポレイション (52)
【Fターム(参考)】