説明

遊星歯車回転支持装置

【課題】遊星歯車回転支持装置で、1対のラジアルニードル軸受17a、17a同士の間に組み込まれるスペーサ13bに関して、軽量化と低コスト化との両立を図れる構造を実現する。
【解決手段】
上記スペーサ13bを、主円筒部19と、この主円筒部19の軸方向両端部から径方向内方に向けて折れ曲がった内向鍔部20a、20bとにより構成する。これにより、上記スペーサ13bを断面略コ字形とし、軸方向中間部の径方向に関する厚さH19を、軸方向両端部の径方向に関する厚さH20に比べて小さくする。又、この様な構成を有する上記スペーサ13bを、深絞り加工により形成する。これにより、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用自動変速機やトランスアスクルを構成する遊星歯車装置に組み込まれる遊星歯車を、キャリアに対して回転自在に支持する為の遊星歯車回転支持装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速機を構成する遊星歯車装置として従来から、図4〜5に示す様な構造が広く知られている。この従来から知られた遊星歯車装置は、外周面に歯1aを形成した太陽歯車1と、この太陽歯車1と同心に配置され、内周面に歯2aを形成したリング歯車2との間に、複数個(一般的には3〜4個)の遊星歯車3、3を、円周方向に関して等間隔に配置している。そして、これら複数個の遊星歯車3、3の外周面に形成した歯3aを、上記両歯1a、2aに噛合させている。
【0003】
上記複数個の遊星歯車3、3は、それぞれ支持軸4の周囲に、それぞれ複数本のニードル5、5を介して回転自在に支持している。これら各支持軸4の基端部(図5の左端部)は、上記太陽歯車1を中心として回転自在なキャリア6に支持固定している。図示の例では、この太陽歯車1を円筒状に形成すると共に、このキャリア6を断面L字形で全体を円環状に形成している。そして、このキャリア6の径方向内端部を構成する円筒部7を、回転軸8の外周面にスプライン係合させている。上記太陽歯車1は、この回転軸8の周囲に、この回転軸8に対する回転自在に支持している。又、上記リング歯車2は、上記太陽歯車1及びキャリア6及び回転軸8の周囲に、これら各部材1、6、8に対する回転自在に支持している。
【0004】
又、上記各支持軸4の先端部(図5の右端部)は、円輪状に形成された連結板9に結合固定する事により、これら各支持軸4の先端部同士を連結している。又、図5に示した構造の場合、支持軸4の外周面で、上記キャリア6と上記連結板9との間部分には、複列の(実際には軸方向に連続した)内輪軌道10、10を形成している。一方、遊星歯車3の内周面には、複列の(実際には軸方向に連続した)外輪軌道11、11を形成している。そして、これら各外輪軌道11、11と上記各内輪軌道10、10との間に、それぞれ前記各ニードル5、5から成るラジアルニードル軸受12、12を設けて、上記遊星歯車3を、上記支持軸4の中間部周囲で連結板9とキャリア6との間部分に、回転自在に支持している。
【0005】
又、図示の構造の場合には、上記各ラジアルニードル軸受12、12を、所謂総ころ型としている。この為、これら各ラジアルニードル軸受12、12を構成する上記各ニードル5、5のスキュー防止を図る為、これら両ラジアルニードル軸受12、12の間部分に、円環状のスペーサ13を配置して、上記各ニードル5、5の軸方向端面を案内する様にしている。この様なスペーサ13としては、例えば特許文献1〜2等に記載される様に、鋼製或いは合成樹脂製で、削り出し加工や打ち抜き成型(プレス加工)等により形成されたものが従来から使用されている。
【0006】
上述の様な遊星歯車3及び支持軸4等を含んで構成する遊星歯車装置は、前記回転軸8を駆動軸又は従動軸とし、上記太陽歯車1又は上記リング歯車2の中心を従動軸又は駆動軸に結合する。そして、何れの歯車1、2、3を回転自在とし、何れの歯車1、2、3を回転不能とするかを切り換える事により、上記駆動軸と従動軸との間の変速並びに回転方向の変換を行なう。この様な遊星歯車装置自体の構成及び作用は、従来から周知であり、本発明の要旨とも関係しないから、全体構造の図示並びに詳しい説明は省略する。
【0007】
ところで、近年、自動車の低燃費化の一環として、自動変速装置を多段化及び小型化する事が考えられている。そして、上記図5に示した様な遊星歯車3を、軸方向に2個連続させた如き形状を有する遊星歯車を使用する事が考えられ、例えばラビニオ(Ravineaux )式の遊星歯車装置に使用されている(特許文献2〜3等参照)。図6は、この様なラビニオ式の遊星歯車装置に組み込まれる回転支持装置を示している。この図6に示した遊星歯車14は、小径且つ幅広で、外周面の軸方向両半部には、軸方向中間部を境に1対の歯14a、14bを、それぞれ形成している。これら両歯14a、14bにはそれぞれ、図示しない別の歯車の歯を噛合させる。
【0008】
又、図示の構造の場合、上記遊星歯車14の内周面と支持軸15の外周面との間に配置するニードル16、16の列を複列とし、更にこれら各ニードル16、16の軸方向寸法を小さく抑えている。この理由は、軸方向寸法の大きい遊星歯車14に合わせて、この遊星歯車14を回転自在に支持する為のラジアルニードル軸受、更には、このラジアルニードル軸受を構成する各ニードルの軸方向寸法までも大きくしてしまうと、これら各ニードルにスキューが発生し易くなる為である。又、図示の場合には、1対のラジアルニードル軸受17、17を所謂総ころ型としている為、上記各ニードル16、16の軸方向端面を案内する為に、上記両ラジアルニードル軸受17、17の間部分に、前記図5に示したスペーサ13に比べて軸方向寸法の大きい、スペーサ13aを配置している。
【0009】
これに対して、図7に示す構造の場合には、遊星歯車14の内周面と支持軸15の外周面との間に複列に配置された各ニードル16、16を、保持器18、18により保持する構成(C&R型式)を採用している。この為、これら各保持器18、18により、上記各ニードル16、16のスキュー防止を図る事ができる。但し、この様な構成を採用した場合にも、これら各ニードル16、16と上記各保持器18、18とから成る、1対のラジアルニードル軸受17a、17aの間部分には、軸方向寸法の大きいスペーサ13aを配置している。この理由の第一は、上記両ラジアルニードル軸受17a、17aの間隔を確保して、上記遊星歯車14の支持部の剛性(特にモーメント剛性)を確保する為である。又、上記理由の第二は、軸方向寸法の大きい上記支持軸15が、運転時に、弓状に弾性変形し易くなる為である。特に、変形量が大きくなるこの支持軸15の軸方向中央部では、この支持軸15の外周面と上記遊星歯車14の内周面との間の径方向寸法が、上記各ニードル16、16の直径よりも小さくなる可能性がある。この為、上記支持軸15の軸方向中央側に上記各ニードル16、16が入り込む(変位する)事を阻止し、フレーキング等の損傷が生じる事を防止する為に、上記スペーサ13aを設けている。
【0010】
ところが、上述の様に、軸方向寸法の大きいスペーサを使用する場合には、以下の様な不都合を生じる。即ち、軸方向寸法の小さいスペーサを造る為に行なわれている加工方法のうち、比較的安価に実施できる打ち抜き成形では、軸方向寸法の大きいスペーサを造る事自体が難しく、特にスペーサの径方向に関する厚さを小さく(薄肉)にする事は難しい。又、削り出し加工により、軸方向寸法の大きいスペーサを造る場合には、スペーサの径方向に関する厚さを小さくする事は可能であるが、工数が多くなるだけでなく、材料の歩留まりも悪くなり、コストが著しく嵩んでしまう。この為、図8に示す様に、従来から使用されているスペーサ13aの径方向に関する厚さH13a は、全長に亙り厚肉となり、重量が嵩むと言う不都合が生じていた。この様にスペーサの重量が嵩むと、遊星歯車の慣性トルクが大きくなり、延いては遊星歯車装置の動力性能の低下を招き、好ましくない。
【0011】
【特許文献1】特開2005−16710号公報
【特許文献2】特開2005−325992号公報
【特許文献3】特開平9−32892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の遊星歯車回転支持装置は、上述の様な事情に鑑み、スペーサの軽量化と、更には低コスト化とを図れる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の遊星歯車回転支持装置は、キャリアと、支持軸と、遊星歯車と、1対のラジアルニードル軸受と、スペーサとを備える。
このうちの支持軸は、その軸方向端部を、上記キャリアに支持固定されている。
又、上記遊星歯車は、上記支持軸の軸方向中間部周囲に、回転自在に配置されている。
又、上記両ラジアルニードル軸受は、上記支持軸の外周面と上記遊星歯車の内周面との間の円筒状空間内に、互いに軸方向に離隔した状態で配置され、この遊星歯車を上記支持軸に対し回転自在に支持している。
又、上記スペーサは、上記円筒状空間内で、上記両ラジアルニードル軸受の間部分に配置されている。
特に、請求項1に記載した遊星歯車回転支持装置にあっては、上記スペーサは、円筒状の本体部と、この本体部の軸方向両端部から径方向内方に向けて折れ曲がった折れ曲がり部(折り返された折り返し部も含む。本明細書及び特許請求の範囲全体で同じ。)とを有する。そして、上記スペーサの軸方向中間部の径方向に関する厚さを、軸方向両端部の径方向に関する厚さに比べて小さくしている。
尚、上記各ラジアルニードル軸受としては、保持器を備えた所謂C&R(ケージ・アンド・ローラ)の構成を採用しても、或いは、保持器を備えない所謂総ころ型の構成を採用しても良い。
【0014】
上述した請求項1に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した様に、上記スペーサを、深絞り加工により形成する。
又、上述した請求項1〜2に記載した発明を実施する場合に好ましくは、例えば請求項3に記載した様に、上記スペーサの表面硬さを、Hv674〜832の範囲内に規制する。
又、上述した請求項1〜3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、例えば請求項4に記載した様に、上記スペーサの軸方向寸法を、上記各ラジアルニードル軸受を構成する各ニードルの軸方向寸法よりも大きくする。
【発明の効果】
【0015】
上述の様に構成する本発明の遊星歯車回転支持装置に組み込まれるスペーサは、軸方向両端部の径方向に関する厚さに比べて、軸方向中間部の径方向に関する厚さを小さくしている。この為、全長に亙り径方向に関する厚さの大きい、従来構造のスペーサに比べて、軽量化を図れる。特に、上述の様な構成を有するスペーサは、金属製の板材(円板状のブランク)に、深絞り加工を施す事により、削り出し加工等を採用した場合に比べて、安価に形成する事ができる。この為、軸方向寸法の大きいスペーサを造る為のコストの低減を図る事もできる。従って、本発明によれば、軸方向寸法の大きいスペーサの、軽量化と低コスト化との両立を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[実施の形態の第1例]
図1〜2は、請求項1〜4に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の特徴は、1対のラジアルニードル軸受17a、17aの間部分に設けられるスペーサ13bに関して、軽量化と低コスト化とを図るべく、このスペーサ13bの構造を工夫した点にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図7に示した構造と同様である為、重複する図示並びに説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
【0017】
本例の場合、図1〜2に示す様に、遊星歯車14の内周面と支持軸15の外周面との間の円筒状空間内に、互いに軸方向に離隔した状態で配置した上記1対のラジアルニードル軸受17a、17aの間部分に、上記スペーサ13bを配置している。本例に使用するこのスペーサ13bは、鋼製で、主円筒部19と、この主円筒部19の軸方向両端部から径方向内方に向けて、ほぼ直角に折れ曲がった、内向フランジ状の内向鍔部20a、20bとから成る。又、組み付け状態で、上記主円筒部19は、上記遊星歯車14の内周面に内嵌支持されている。一方、上記両内向鍔部20a、20bは、それぞれの外側面を上記各ラジアルニードル軸受17a、17aを構成する各保持器18、18のリム部の外側面に、当接若しくは近接対向させている。
【0018】
尚、本例に使用する上記スペーサ13bの軸方向寸法L13b は、前記図6〜8に示した従来構造のスペーサ13aの軸方向寸法L13a と同じ(L13b =L13a )としている。又、上記両内向鍔部20a、20b部分に於ける径方向に関する厚さH20は、上記従来構造のスペーサ13aの径方向に関する厚さH13a と同じとしている(H20=H13a )。又、本例の場合、上記主円筒部19の径方向に関する厚さH19は、上記両内向鍔部20a、20bの径方向に関する厚さH20の約1/3としている。
【0019】
上述の様な構成を有する本例の場合、上記スペーサ13bを断面略コ字形として、このスペーサ13bの軸方向中間部を肉抜き凹部としている為、全長に亙り径方向に関する厚さが大きい、従来構造のスペーサ13a(図6〜8参照)に比べて、軽量化を図れる。具体的には、本例のスペーサ13bの場合には、上記従来構造のスペーサ13aと同じ材料製とした場合に、このスペーサ13aの重量の約60%を軽量化できる(従来構造のスペーサ13aの重量の約40%にできる)。
【0020】
又、本例の場合、上記スペーサ13bの軸方向寸法L13b を、上記各ラジアルニードル軸受17a、17aを構成する各ニードル16、16の軸方向寸法L16よりも大きくしている(L13b >L16)。即ち、上記遊星歯車14の軸方向寸法(全長)L14に対して、比較的重量の嵩む上記各ニードル16、16の軸方向寸法L16が占める割合を減らすと共に、これら各ニードル16、16に比べて軽量に構成できる上記スペーサ13bの軸方向寸法L13b が占める割合を大きくしている。これにより、回転支持装置全体の軽量化を図っている。
【0021】
又、本例の場合、上記スペーサ13bの表面硬さを、Hv674〜832の範囲内に規制している。これにより、このスペーサ13bに、必要とする強度及び剛性を確保しつつ、運転時に、上記各保持器18、18のリム部外側面と互いに滑り接触する、上記両内向鍔部20a、20bの外側面に、著しい摩耗が生じる事を防止している。尚、上記表面硬さがHv674未満の場合には、摩耗防止機能が不十分となる。これに対して、上記表面硬さがHv832を越えると、上記スペーサ13bの熱処理に要するコストが嵩むだけでなく、上記内向鍔部20a、20bの加工が難しくなり、この面からもコストが嵩む。
【0022】
又、本例の場合、上述の様な構成を有する上記スペーサ13bを、金属製の板材(円盤状のブランク)に、ダイスとパンチとの組み合わせを使用した、深絞り加工により形成している。加工工程の1例を簡単に説明すると、先ず、円板状のブランクを、パンチによりダイスに設けた有底円形の受孔内に押し込む事で、有底円筒状の第一中間素材を得る。次に、この第一中間素材に底抜き加工を施して第二中間素材とする。これにより、この第二中間素材の軸方向一端側に、径方向内方に向けて折れ曲がった内向鍔部20aが形成される。最後に、この第二中間素材の軸方向他端側に内向鍔部20bを形成し、トリミング加工等を施して形状を整え、本発明のスペーサ13bとして完成する。
【0023】
上述の様に、上記スペーサ13bを深絞り加工により形成すれば、削り出し加工等を採用した場合に比べて、材料の歩留りを向上できると共に、工数を少なく(特に加工時間を短縮)できる為、コストの低減を図れる。又、上記スペーサ13bの軸方向両端面と前記両保持器18、18のリム部との摺接面積を確保して、この摺接部の摩耗を抑えられる。更に、上述の様な深絞り加工によれば、例えば上記ブランクの厚さ(肉厚)を規制する事で、完成状態のスペーサ13bの径方向に関する厚さを規制できる為、このスペーサ13bの軽量化を図る事が容易になる。従って、本例の場合には、軸方向寸法の大きいスペーサ13bの軽量化と低コスト化との両立を図れる。
【0024】
尚、スペーサ13bとして、軸方向寸法L13b が10〜30mm、内向鍔部20a、20bの径方向に関する厚さH20が1.5〜3.5mm、同じく内向鍔部20a、20bの内径が10〜21mmの範囲内に収まるものであれば、シェル型ニードル軸受用の外輪として使用される、所謂シェルカップをそのまま代用する事ができる。この様に、別の用途に使用されているシェルカップを、特別な設計変更等を行なわずに代用できれば、更なるコスト低減を図れる。
【0025】
尚、前記図1〜2には、この様なシェルカップをそのまま使用した例を示している為、一方の内向鍔部20aの肉厚と、他方の内向鍔部20bの肉厚とが異なっている。但し、上述の様にスペーサとして使用する場合には、内径側に他の部材を挿入する必要がない為、上記両内向鍔部20a、20bは共に、前記遊星歯車14の内径側に挿入する以前に形成する事ができる。
【0026】
[実施の形態の第2例]
図3は、やはり請求項1〜4に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、スペーサ13cの軸方向両端部に、折り返し筒部21a、21bを形成している。これら両折り返し筒部21a、21bは、主円筒部19の軸方向両端部を径方向内方に向けて、180度折り返す事により形成している。又、上記両折り返し筒部21a、21b部分に於ける径方向に関する厚さH21は、上記主円筒部19の径方向に関する厚さH19のほぼ2倍(H21=2H19)で、前述した実施の形態の第1例の内向鍔部20a、20bの径方向に関する厚さH20よりも小さくしている(H21<H20)。
【0027】
本例の場合には、上述の様な構成を有する折り返し筒部21a、21bを形成する事により、これら両折り返し筒部20a、20bの内周面と、支持軸15(図1、6、7参照)の外周面との間の径方向に関する隙間を大きく確保する様にしている。この為、上記スペーサ13cの内径側を通過する潤滑油の流量を多くして、ラジアルニードル軸受17a、17a(図1、7参照)に供給できる潤滑油の量を多くしている。
【0028】
又、この様な構成を有する本例のスペーサ13cの場合には、前記従来構造のスペーサ13aと同じ材料製とした場合に、このスペーサ13aの重量の約50%を軽量化できる(従来構造のスペーサ13aの重量の約50%にできる)。
尚、本例の場合にも、一方の折り返し筒部21aの厚さと、他方の折り返し筒部21bの厚さとが異なるものを使用しているが、前述した実施の形態の第1例の場合と同様に、所謂シェルカップをそのまま使用した結果、生じたものである。
その他の部分の構成及び作用は上述した実施の形態の第1例と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
前述した実施の形態の第1例を示す図1に於いて、支持軸15に形成された通油孔22には、1対のラジアルニードル軸受17a、17aの内径側に向けてのみ、分岐孔23、23が形成されているが、スペーサ13b(13c)の内径側に向けて分岐孔を設ける事もできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、回転支持装置の断面図。
【図2】同じくスペーサを取り出して、このスペーサの中心軸を通る仮想平面で切断した場合の部分断面図。
【図3】同第2例を示す、図2と同様の図。
【図4】従来構造の遊星歯車装置の第1例を示す略側面図。
【図5】図4の拡大A−A断面図。
【図6】従来構造の第2例を示す図5と同様の図。
【図7】同3例を示す、図5と同様の図。
【図8】同じく、図2と同様の図。
【符号の説明】
【0031】
1 太陽歯車
1a 歯
2 リング歯車
2a 歯
3 遊星歯車
3a 歯
4 支持軸
5 ニードル
6 キャリア
7 円筒部
8 回転軸
9 連結板
10 内輪軌道
11 外輪軌道
12 ラジアルニードル軸受
13、13a〜13c スペーサ
14 遊星歯車
14a、14b 歯
15 支持軸
16 ニードル
17、17a ラジアルニードル軸受
18 保持器
19 主円筒部
20a、20b 内向鍔部
21a、21b 折り返し筒部
22 通油孔
23 分岐孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアと、このキャリアに支持固定された支持軸と、この支持軸の軸方向中間部周囲に配置された遊星歯車と、これら支持軸の外周面と遊星歯車の内周面との間の円筒状空間内に、互いに軸方向に離隔した状態で配置された1対のラジアルニードル軸受と、この円筒状空間内で、これら両ラジアルニードル軸受の間部分に配置されたスペーサとを備えた遊星歯車回転支持装置であって、このスペーサが、円筒状の本体部と、この本体部の軸方向両端部から径方向内方に向けて折れ曲がった折れ曲がり部とを有し、軸方向中間部の径方向に関する厚さが、軸方向両端部の径方向に関する厚さに比べて小さい事を特徴とする遊星歯車回転支持装置。
【請求項2】
スペーサが、深絞り加工により形成されたものである、請求項1に記載した遊星歯車回転支持装置。
【請求項3】
スペーサの表面硬さが、Hv674〜832の範囲内に規制されている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した遊星歯車回転支持装置。
【請求項4】
スペーサの軸方向寸法が、ラジアルニードル軸受を構成する各ニードルの軸方向寸法よりも大きい、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した遊星歯車回転支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−101725(P2008−101725A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−285738(P2006−285738)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】