説明

運動持久力増強効果を有する機能性コーヒー

【課題】 コーヒーの代表的成分であるカフェインの効能をより発揮させて運動機能の向上及び疲労回復機能を有する機能性コーヒーを提供する。
【解決手段】カフェイン100〜300mgとタウリン1〜3gを含む缶コーヒーを調製する。該コーヒーを運動選手に1日2本朝・夕に摂取させ、2週間継続したところ、乳酸の蓄積の減少と、T/C(テストステロン/コルチゾール)比の増加が認められ、疲労の回復および運動能力の向上に有効であることが示された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動持久力増強及び疲労回復機能の高められたコーヒーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、美味しくかつ健康に良い成分を含有する食品、機能性食品の開発がめざましく、多くの製品が販売されている。
コーヒーについては、本来含有する成分を効果が認められる量まで増量した機能性コーヒーが出現している。この中では、整腸効果が期待できるオリゴ糖や抗酸化性を有するクロロゲン酸を使用した製品が代表的なものである。
【0003】
しかし、コーヒーといえば、その代表的な成分としてカフェインであることが知られており、ドリップ・コーヒー1杯には約110mg含まれ、これが古来から「眠気ざまし」として利用されてきた。
【0004】
カフェインは、通常、100〜200mgを摂取すると、集中力の増大・維持、眠気の消失、疲労感の減少に効果があるといわれる。
係るカフェインの効能を用いて、これを含有した市販品には、眠気防止剤、強壮ドリンク、滋養強壮保健薬等があり、眠気防止剤には1回分で200mgのカフェインが含有されている。強壮ドリンクの含有量は50mgである。(非特許文献1)
【0005】
カフェインは医薬上の分類では、強心薬であり、用量は1回100〜300mg、1日2〜3回で、眠気、倦怠感、腎性浮腫、血管拡張、脳圧亢進性頭痛に適用される。(非特許文献1)
【0006】
カフェインには、このような効果が認められるところではあるが、コーヒーに多く含まれるこのカフェインの機能をより高めるとともに、その他の機能性の高められたコーヒーを得るために鋭意努力して研究を重ねた結果、タウリンに注目した。
【0007】
タウリンは、たこ、イカ、しじみ、あさり、かき等の魚介類に多く含まれる成分で、アミノ酸の1種である。体の各部位の働きを正常に戻す作用がある。主な効果は動脈硬化予防、解毒作用、心臓機能を高める、疲労の原因のもととなる乳酸の蓄積を抑制する等がある。
【0008】
医薬上の分類では強心薬・肝疾患治療薬で1回分1g、1日3回の投与で肝細胞賦活と胆汁酸分泌促進の両面から、肝機能を改善する。
適応として、うっ血性心不全、高ビリルビン血症における肝機能の改善である。(非特許文献2)
【0009】
このカフェインとタウリンとを成分とした飲料その他の組成物に関しては、これまでに提案がされている。
すなわち、特表2005−527234「飲料組成物及び飲料の製造方法」では「グルコース、フルクトース、ガラナ、及びタウリンを含む飲料組成物であって、生理学的な活性量でフラボノイドを含む樹皮又は種子抽出物を更に含むことを特徴とする飲料組成物」にカフェインその他を含むことが開示されている(特許文献1)。
【0010】
また、特表2006−503896「身体能力向上のための組成物」では「 ケルセチン及びビタミンB3、あるいはケルセチン及びビタミンCを中心にタウリン又はカフェインを含む組成物であって、身体的な能力を向上させる」ことが開示されている。
【0011】
さらに、特開2007−153816「疲労改善剤組成物」では「既存のビタミン含有保険薬に配合されているタウリン、ビタミンB類及びカフェインの有する疲労改善作用を増強し、安全で有効な疲労改善用組成物」を開示している。
【0012】
しかしながら、これらの組成物では、カフェインとタウリンのみを用いてその効能を発揮しようとするものではない。カフェインやタウリンは、単糖類やビタミン類を主とした組み合わせの中でその1部分として用いられているものである。特に、カフェインとタウリンとの組み合わせによって運動機能を向上させる効能については全く開示がされていなかった。
【0013】
そこで、小動物を利用した基礎実験として、マウスにカフェイン単独、タウリン単独及びカフェインとタウリンの併用を投与し、トレッドミルを使用し、走行距離と乳酸量を測定して解析すると、2週間投与するとカフェインとタウリン併用では走行距離は、それぞれ単独投与の場合に比較してカフェインとタウリンの相加効果が認められ、かつ蓄積される乳酸をより有意に減少させていた。(非特許文献3)
【0014】
これはタウリンを2週間投与することで、カフェイン投与で蓄積される乳酸をより有意に減少させることにより、持久力を増強させる機序が考えられ、両者の併用による効果と考えられた。
【0015】
【非特許文献1】カフェインの科学 栗原 久著 学会出版センター 2004年
【非特許文献2】今日の治療薬 株式会社 南江堂 1997年
【非特許文献3】カフェインとタウリン併用による持久力および乳酸に及ぼす影響 臨床スポーツ医学 第32巻 第2号 今川貴彦、松本健、小原直、鈴木教郎、山本雅之、今川重彦 2006年2月
【0016】
【特許文献1】特表2005−527234
【特許文献2】特表2006−503896
【特許文献3】特開2007−153816
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、カフェインを多く含むコーヒーにカフェインを増量しこれとタウリンとを併用して運動機能の向上及び疲労回復機能のあるコーヒーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
ヒトによる実験等を通して鋭意努力した結果、ヒトにおいてもカフェインとタウリンの併用により運動機能が著しく向上することが確認できた。
【0019】
係る知見に基づいて完成した本発明は、カフェイン100〜300mgとタウリン1〜3gを含むことを特徴とするコーヒーである。
【発明の効果】
【0020】
本発明による機能性コーヒーによれば、コーヒーという嗜好品として、日常的に、手軽に用いられ、知らず知らずのうちに、運動持久力の向上、疲労回復を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のコーヒーでは、カフェインは300mgとし、タウリンは3gとすることが最適といえるが、カフェインが100〜300mg、タウリンが1〜3gであれば運動持久力の向上と疲労回復機能を得ることができる。
【実施例】
【0022】
本発明によるヒトへの効果については以下のように検証をした。
まず、投与期間はマウスの場合と同様に2週間とし、摂取量はマウスへの投与量から算出された有効量とドーピングに抵触しない限度量から決定した。
すなわち、運動選手にカフェイン300mgおよびタウリン3g入りの缶コーヒーを1日2本朝・夕に摂取し、2週間継続する。
【0023】
被験者は、大学水泳部員12名と大学フットサル部員30名とし、水泳部員では200m競泳、フットサル部では400m走タイムにより測定をしてその結果を図1及び図2とし、さらにその測定結果を様々な面から解析をおこなって図3から図8として表した。
【0024】
なお、得られたデータは、平均±標準偏差で表示をし、Student‘t’testを用いて解析し、5%水準をもって有意と判断した。
【0025】
まず、水泳部員の200m競泳では、図1の通り、当該カフェインとタウリン入りの缶コーヒーを1週間投与した場合(A、1)と2週間投与した場合(A、2)は、カフェインのみ投与した場合(B、1とB、2)と比較して、タイム(S)は短縮傾向を示した。
【0026】
次に、フットサル部員の400m走では、図2の通り、当該カフェインとタウリン入りのコーヒー缶を投与されたグループ(A)は、特に2週間目では、カフェイン単独を投与されたグループ(B)に比較して、有意にタイム(S)の短縮が認められた。
【0027】
このような測定結果について様々な面から解析を行った。
(1)乳酸
疲労蓄積物質とされる乳酸は、図3の通り、平均値で比較してみるとカフェイン単独群(B)では変化がみられないが、カフェインとタウリン併用群(A)では、2週目で有意に低下し、両群間で有意差を認めた。
【0028】
(2)Testosterone/cortisol(テストステロン/コルチゾール)比
疲労回復度を表すというtestosterone/cortisol(テストステロン/コルチゾール)(T/C)比(T/C比が高いほど疲労回復している)は、図4の通り、カフェイン単独群(B)では低下したが、カフェインとタウリン併用群(A)では1、2週間ともに有意に増加し、変化量でみると両群間に1、2週間目ともに有意差を認めた。これはtestosterone(テストステロン)の変化に比べcortisol(コルチゾール)が1、2週目ともに有意に低下したためと考えられる。(データ表示せず)
【0029】
(3)酸素摂取量
運動能力を表す酸素摂取量では、図5の通り、変化量でみると2週間投与の場合では、カフェイン単独群(B)では低下したのに比べ、カフェインとタウリン併用群(A)では有意に増加した。
【0030】
(4)体組成の観点からの解析
両群ともに皮下脂肪(全身・体幹・両脚・両腕)は低下し、骨格筋(全身・体幹・両脚・両腕)は増加した。特にカフェイン単独群では皮下脂肪は有意に低下し、骨格筋は有意に増加した。
【0031】
(5)血算・生化学のパラメーターから副作用は、正常範囲内の変動であり、特記すべきものは認められなかった。
【0032】
(6)精神面からの解析をPOMSにより行ったが、図6、7及び8の通り、カフェイン単独群(B)では、混乱・抑うつ・疲労のスコアを増加させる傾向にあったが、カフェインとタウリン併用群(A)では全く逆に混乱・抑うつ・疲労を低下させる傾向が認められた。
【0033】
以上要約すると、カフェインとタウリンを併用すると、乳酸の蓄積を減少させ、T/C比の増加が示すように疲労を回復させ、酸素摂取量を増加させることにより運動能力を向上させて持久力を増強させることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】カフェインとタウリンの200m競泳タイムに及ぼす影響を示すグラフ
【図2】同400m走タイムに及ぼす影響を示すグラフ
【図3】カフェインとタウリンの乳酸濃度に及ぼす影響を解析したグラフ
【図4】同疲労回復(T/C比)に及ぼす影響を解析したグラフ
【図5】同酸素摂取量に及ぼす影響を解析したグラフ
【図6】同精神面の混乱に及ぼす影響を解析したグラフ
【図7】同精神面の抑うつに及ぼす影響を解析したグラフ
【図8】同精神面の疲労に及ぼす影響を解析したグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフェイン100〜300mgとタウリン1〜3gを含むことを特徴とする運動持久力増強及び疲労回復効果を有する機能性コーヒー

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−106253(P2009−106253A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−284890(P2007−284890)
【出願日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(591079498)株式会社ユニカフェ (7)
【Fターム(参考)】