説明

運動案内装置、駆動装置

【課題】製造が容易で、品質不良が少なく、製造コストを軽減した構成を得る。
【解決手段】運動案内装置は、長手方向に転動体転走面を有する軌道部材と、転動体転走面に対向する負荷転動体転走面と、負荷転動体転走面と平行な無負荷転動体転走路とを有する移動部材と、転動体転走面と負荷転動体転走面とで構成される負荷転動体転走路に転動自在に配設される複数の転動体とを備える。移動部材の端部には、負荷転動体転走路と無負荷転動体転走路とをつなぐ方向転換路を有する蓋部17が設置され、蓋部17は、蓋本体部18と、軌道部材に対して隙間なく摺接するように設置されるシール部材15と、移動部材における蓋部の設置面を塞ぐパッキン部材16とを備え、蓋本体部18、シール部材15及びパッキン部材16は2色成形により成形され、シール部材15と不連続に形成されるパッキン部材16を少なくとも1つ備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動案内装置及び駆動装置に係り、特に、シール部材やパッキン部材を備える運動案内装置及び駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、リニアガイド等といった運動案内装置や、ボールねじ等といった駆動装置が知られている。これらのうち、運動案内装置は、長手方向に転動体転走面を有する軌道部材と、前記転動体転走面に対向する負荷転動体転走面と、当該負荷転動体転走面と平行な無負荷転動体転走路とを有する移動部材と、前記転動体転走面と前記負荷転動体転走面とで構成される負荷転動体転走路に転動自在に配設される複数の転動体と、を備えることにより、軌道部材に対する移動部材の相対的な直線運動が自在とされた装置である。また、駆動装置は、長手方向に螺旋状をした転動体転走面を有する軸部材と、前記転動体転走面に対向する螺旋状をした負荷転動体転走面と、前記軸部材と平行な無負荷転動体転走路を有する可動部材と、前記転動体転走面と前記負荷転動体転走面とで構成される負荷転動体転走路に転動自在に配設される複数の転動体と、を備えることにより、軸部材に対する可動部材の相対的な回転運動が自在とされた装置である。
【0003】
この種の装置では、軌道部材と移動部材、あるいは軸部材と可動部材との間に配設される複数の転動体が繰り返し転がり運動を行うことになるので、これら装置の構成部材には繰り返し接触応力が加わることとなっている。そのため、この種の装置を構成する部材には、疲労寿命や耐摩耗性に優れた金属材料や樹脂材料等が採用されている。また、この種の装置は、精度の高い案内運動や駆動動作が求められ、さらに、あらゆる環境下で安定して使用できることが求められるため、例えば、軌道部材と移動部材、あるいは軸部材と可動部材との間にシール部材を設置することで防塵性を高めたり、あるいは構成部品の間に存在する隙間を塞ぐパッキン部材を設置することで構成部品間の密閉性を高めたりすることが行われていた。
【0004】
なお、上述したシール部材やパッキン部材を備える駆動装置を開示する先行技術文献として、例えば下記特許文献1が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−335657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したシール部材やパッキン部材は、例えばリニアガイドに用いられる場合には移動ブロックの構成部品であるエンドプレートに取り付けられているが、これら従来のシール部材やパッキン部材は、エンドプレートとは別部材として製造され、組み立てられるものであった。そこで、エンドプレートとシール部材やパッキン部材を一体化して製造できれば、部品点数の削減や製造工程の減少につながるので、製造コストを削減できるというメリットを得られることとなる。
【0007】
しかしながら、エンドプレートとシール部材やパッキン部材を一体化して製造するには、製造技術上の制約を考慮した部材形状を採用しなければならず、また、金型を用いて樹脂材料を成形するに際しては、樹脂材料の冷却時の収縮率や金型内での油流れ等を考慮して、適切な製品形状を設計しなければならない。すでに、本出願人は、エンドプレート等の部品とシール部材やパッキン部材とを2色成形技術を用いて一体化して製造し、一部品として提供することを提案していたが、さらに本発明者らは、2色成形技術を用いて一体成形されたエンドプレートとシール部材及びパッキン部材を量産化するにあたり、鋭意努力の結果、製造が容易であり、品質不良が少なく、製造コストを軽減することのできる製品形状を実現するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、2色成形技術によってエンドプレート等の部品とシール部材やパッキン部材とを一体化された部品として量産化するに当たり、製造が容易であり、品質不良が少なく、製造コストを軽減することのできる形状を有した製品の提供を目的として成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明に係る運動案内装置は、長手方向に転動体転走面を有する軌道部材と、前記転動体転走面に対向する負荷転動体転走面と、当該負荷転動体転走面と平行な無負荷転動体転走路とを有する移動部材と、前記転動体転走面と前記負荷転動体転走面とで構成される負荷転動体転走路に転動自在に配設される複数の転動体と、を備える運動案内装置であって、前記移動部材の端部には、前記負荷転動体転走路と前記無負荷転動体転走路とをつなぐ方向転換路を有する蓋部が設置されており、前記蓋部は、蓋本体部と、前記軌道部材に対して隙間なく摺接するように設置されるシール部材と、前記移動部材における前記蓋部の設置面を塞ぐパッキン部材と、を備えるとともに、前記蓋本体部、前記シール部材、及び前記パッキン部材は、2色成形により成形されており、さらに、前記シール部材と不連続に形成される前記パッキン部材を少なくとも1つ備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係る駆動装置は、長手方向に螺旋状をした転動体転走面を有する軸部材と、前記転動体転走面に対向する螺旋状をした負荷転動体転走面と、前記軸部材と平行な無負荷転動体転走路を有する可動部材と、前記転動体転走面と前記負荷転動体転走面とで構成される負荷転動体転走路に転動自在に配設される複数の転動体と、を備える駆動装置であって、前記可動部材には、負荷転動体転走路と無負荷転動体転走路とをつなぐ循環部が蓋部に設置されており、前記蓋部は、蓋本体部と、前記軸部材に対して隙間なく摺接するように設置されるシール部材と、前記可動部材における前記蓋部の設置面を塞ぐパッキン部材と、を備えるとともに、前記蓋本体部、前記シール部材、及び前記パッキン部材は、2色成形により成形されており、さらに、前記シール部材と不連続に形成される前記パッキン部材を少なくとも1つ備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2色成形技術によってエンドプレート等の部品とシール部材やパッキン部材とを一体化された部品として量産化するに際して、製造が容易であり、品質不良が少なく、製造コストを軽減することのできる形状を有する製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係るリニアガイド装置の一形態を例示する外観斜視図である。
【図2】図1で示したリニアガイド装置が備える無限循環路を説明するための断面図である。
【図3】本実施形態に係る蓋部の外観形状を示す外観斜視図であり、特に、反移動ブロック側の面を示している。
【図4】本実施形態に係る蓋部の外観形状を示す外観斜視図であり、特に、移動ブロック側の面を示している。
【図5】エンドシール15及びパッキン部材16を蓋部17から取り除いて蓋本体部18のみにした状態の外観斜視図であり、特に、反移動ブロック側の面を示している。
【図6】エンドシール15及びパッキン部材16を蓋部17から取り除いて蓋本体部18のみにした状態の外観斜視図であり、特に、移動ブロック側の面を示している。
【図7】蓋部17から蓋本体部18を取り除いてエンドシール15及びパッキン部材16のみにした状態の外観斜視図であり、特に、反移動ブロック側から見た状態を示している。
【図8】蓋部17から蓋本体部18を取り除いてエンドシール15及びパッキン部材16のみにした状態の外観斜視図であり、特に、移動ブロック側から見た状態を示している。
【図9】本実施形態に係る凸形状を示す図であり、図中の分図(a)は、パッキン部材16の移動ブロック側の面を示しており、分図(b)は、分図(a)中のA−A断面を示している。
【図10】本実施形態に係る駆動装置としてのボールねじ装置の構成を説明するための部分破断斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係る運動案内装置としてのリニアガイド装置10の全体構成について説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るリニアガイド装置の一形態を例示する外観斜視図である。また、図2は、図1で示したリニアガイド装置が備える無限循環路を説明するための断面図である。
【0015】
本実施形態に係る運動案内装置としてのリニアガイド装置10は、軌道部材としての軌道レール11と、軌道レール11に多数の転動体として設置されるボール12…を介してスライド可能に取り付けられた移動部材としての移動ブロック13とを備えている。軌道レール11には、取付手段としてのボルトを軌道レール11の上面から下面に通すことで、軌道レール11をベースに取り付けるためのボルト孔11bが等間隔で形成されており、このボルト孔11bを利用することで、軌道レール11が基準面に固定設置できるようになっている。また、軌道レール11は、その長手方向と直交する断面が概略矩形状に形成された長尺の部材であり、その表面(上面及び両側面)には、ボール12…が転がる際の軌道になる軌道面としての転動体転走面11a…が軌道レール11の全長に亘って形成されている。
【0016】
軌道レール11については、直線的に伸びるように形成されることもあるし、曲線的に伸びるように形成されることもある。また、図1及び図2において例示する転動体転走面11a…の本数は左右で2条ずつ合計4条設けられているが、その条数はリニアガイド装置10の用途等に応じて任意に変更することができる。
【0017】
一方、移動ブロック13には、転動体転走面11a…とそれぞれ対応する位置に軌道面としての負荷転動体転走面13a…が設けられている。軌道レール11の転動体転走面11a…と移動ブロック13の負荷転動体転走面13a…とによって負荷転動体転走路22…が形成され、複数のボール12…が挟まれている。また、移動ブロック13には、各転動体転走面11a…と平行に伸びる4条の無負荷転動体転走路23…がその内部に形成されている。
【0018】
さらに、移動ブロックの移動方向の両端部には、一対の蓋部17,17が設置されている。この一対の蓋部17,17には、それぞれに方向転換路25が設けられている。この方向転換路25は、無負荷転動体転走路23…の端と負荷転動体転走路22…の端とを結ぶことができるように構成されている。したがって、1つの負荷転動体転走路22及び無負荷転動体転走路23と、それらを結ぶ一対の方向転換路25,25との組み合わせによって、1つの無限循環路が構成されている(図2参照)。
【0019】
そして、複数のボール12…が、負荷転動体転走路22と無負荷転動体転走路23と一対の方向転換路25,25とから構成される無限循環路に無限循環可能に設置されることにより、移動ブロック13が軌道レール11に対して相対的に往復運動可能となっている。
【0020】
また、一対の蓋部17,17のそれぞれには、一対の方向転換路25,25の外側において移動ブロック13と軌道レール11との隙間を塞ぐように、シール部材としての一対のエンドシール15,15が設置されている。このエンドシール15は、軌道レール11との接触箇所にリップ部を備えることができ、このリップ部もしくはエンドシール15自体が軌道レール11に対して隙間なく摺接することで、リニアガイド装置10に対して防塵効果を付与することができるようになっている。
【0021】
さらに、移動ブロック13と一対の蓋部17,17との間には、図1及び図2では図示を省略したパッキン部材が挟み込まれている。この不図示のパッキン部材は、移動ブロック13における蓋部17の設置面を塞ぐ機能を発揮しており、移動ブロック13と蓋部17の間に存在する隙間を塞ぐことで、移動ブロック13と蓋部17との密閉性を高める役割を果たしている。
【0022】
以上、本実施形態に係るリニアガイド装置10の全体構成について説明したが、本実施形態において特徴的な構成は、蓋部17に対して一体的に成形されたエンドシール15及びパッキン部材の形状にある。そこで、次に、蓋部17に対して一体的に成形されるエンドシール15及びパッキン部材の形状について、図3〜図8を用いて詳細に説明を行うこととする。
【0023】
ここで、図3及び図4は、本実施形態に係る蓋部の外観形状を示す外観斜視図であり、図3が反移動ブロック側の面を示しており、図4が移動ブロック側の面を示している。また、図5及び図6は、エンドシール15及びパッキン部材16を蓋部17から取り除いて蓋本体部18のみにした状態の外観斜視図であり、図5が反移動ブロック側の面を示しており、図6が移動ブロック側の面を示している。さらに、図7及び図8は、蓋部17から蓋本体部18を取り除いてエンドシール15及びパッキン部材16のみにした状態の外観斜視図であり、図7が反移動ブロック側から見た状態を示しており、図8が移動ブロック側から見た状態を示している。なお、詳細は後述するが、本実施形態の蓋部17については、蓋本体部18、エンドシール15及びパッキン部材16が2色成形によって一体的に成形されているので、各部材を分割することはできず、常には図3及び図4の状態となっている。すなわち、図5〜図8は、説明の便宜のために描かれた分解図である。
【0024】
図3及び図4に示すように、本実施形態の蓋部17は、蓋本体部18と、シール部材としてのエンドシール15と、パッキン部材16とによって構成されており、これら3つの部材は、2色成形によって一体的に成形がなされている。
【0025】
蓋本体部18は、蓋部17の外郭形状を構成する部材であり、移動ブロック13の両端に取り付けられる部材である。したがって、蓋本体部18には、複数のボルト取付孔18aが形成されており、移動ブロック13への確実な取り付けが可能となっている。また、蓋本体部18には、エンドシール15とパッキン部材16が成形される位置に凹部18bが形成されている。したがって、この凹部18bに対してエンドシール15とパッキン部材16が嵌り込むように成形されることで、蓋本体部18、エンドシール15及びパッキン部材16という3つの部材の安定した一体化が図られている。
【0026】
本実施形態のシール部材であるエンドシール15は、軌道レール11に対して隙間なく摺接するように設置される部材である。したがって、軌道レール11に対して移動ブロック13が相対的な直線移動を行う際には、移動ブロック13とともに直線移動するエンドシール15が軌道レール11に常に接触し、軌道レール11と移動ブロック13の間の隙間を塞ぐように構成されている。このエンドシール15が機能することにより、例えば外部からの塵芥等が移動ブロック13内に侵入することを防止している。
【0027】
本実施形態のパッキン部材16は、移動ブロック13に対して蓋部17が取り付けられる際に、移動ブロック13と蓋本体部18との間に挟み込まれる部材である。つまり、パッキン部材16は、移動ブロック13における蓋部17の設置面を塞ぐ部材として機能しており、移動ブロック13と蓋部17との接合箇所の密閉度を高める役割を担っている。特に、移動ブロック13内部には、複数のボール12が無限循環路内で転がり運動を繰り返しており、また、オイルやグリス等の潤滑剤が付与されている。このような移動ブロック内に存在している潤滑剤等が蓋部17との設置面の隙間から漏れださないようにするために、パッキン部材16が機能している。
【0028】
以上のように、蓋本体部18、エンドシール15及びパッキン部材16という3つの部材が2色成形によって一体的に成形されて構成される蓋部17であるが、本実施形態に係る蓋部17は、さらなる有意な形態的特徴を有している。
【0029】
まず、本実施形態に係る蓋部17にあっては、エンドシール15とパッキン部材16の形成される範囲が、最小限の範囲に限定されている。したがって、エンドシール15とパッキン部材16とは、移動ブロック13の移動方向から見たときに、重畳する面積が少なくなるようになっている。その結果、本実施形態の蓋部17では、エンドシール15と不連続に形成されるパッキン部材を少なくとも1つ備える構成となっている(図7及び図8に詳しく描かれている。)。かかる構成は、2色成形時における成形品質の向上を図る観点から採用された構成である。すなわち、本実施形態に係る蓋部17を2色成形する場合には、一次側となる蓋本体部18を成形した後に、二次側となるエンドシール15とパッキン部材16を成形することとなるが、二次側の成形部材の範囲(体積)が大きいと、冷却時のひけ等で歪が生じ易く、金型の成形や成形時の制御が非常に困難となる。そこで、二次側の成形部材の形成範囲(体積)を最小限にとどめることにより、成形時の材料の形状予測が容易となり、好適な金型設計が可能となったのである。また、エンドシール15とパッキン部材16の形成範囲を最小限としたことで、材料コストの削減にもつながり、製造コストの削減効果も得ることができた。
【0030】
また、本実施形態に係る蓋部17にあっては、蓋本体部18とエンドシール15との接続形状にも優位な特徴がある。上述したように、エンドシール15は、移動ブロック13が軌道レール11に対して相対的に直線移動する際に、常に軌道レール11と隙間なく接触して摺動抵抗を受けることになるので、エンドシール15は蓋本体部18に対して確実に一体成形されている必要がある。そこで、本実施形態では、蓋本体部18に対して複数の貫通孔18cを形成しておき、一方で、エンドシール15は、蓋本体部18が有する複数の貫通孔18cを導通する柱状形状15cを有するように成形される。また、複数の貫通孔18cの先端部分は、径寸法が広く形成されているので、その箇所に二次側として成形される柱状形状15cには、先端部分の径寸法が広くなった抜け止め形状15c’が形成されることとなる。このような抜け止め形状15c’を有する柱状形状15cと、このような柱状形状15cが嵌り込む貫通孔18cとの作用によって、蓋本体部18に対するエンドシール15の確実な一体化が実現されることとなる。
【0031】
なお、本実施形態では、エンドシール15に対して抜け止め形状15c’を有する柱状形状15cを形成したが、この柱状形状については、パッキン部材16に対して形成してもよい。
【0032】
また、本実施形態で例示した抜け止め形状15c’を有する柱状形状15cは、円柱形状として成形されていたが、本発明の柱状形状及び抜け止め形状の形態については、本実施形態と同様の作用効果を発揮できるものであれば、どの様なものであってもよい。すなわち、本発明の柱状形状は、長手方向における一部の箇所で幅方向の径寸法が異なるように抜け止め形状が形成されていればよく、例えば、径寸法が広くなった抜け止め形状15c’が形成される位置は、柱状形状15cの先端部分以外の位置(例えば、柱状形状15cの中間位置など)であってもよいし、また例えば、柱状形状全体が円錐形状で形成されることで、柱状形状全体として抜け止め形状を形成するものであってもよい。
【0033】
以上、蓋本体部18とエンドシール15との確実な固定状態を実現するための構成として、複数の貫通孔18cと抜け止め形状15c’を有する柱状形状15cとの組み合わせを説明したが、本実施形態では、蓋本体部18に対するエンドシール15及びパッキン部材16のズレ止めのために、さらなる構成が付加されている。すなわち、蓋本体部18には、上述した複数の貫通孔18cの他に、さらに複数の係止穴18dが形成されており、一方、エンドシール15及びパッキン部材16には、複数の係止穴18dに嵌り込む係止部材15d,16dが形成されている。本実施形態の蓋本体部18に形成された係止穴18dは、蓋本体部18を貫通するように形成してもよいし、貫通せずに、蓋本体部18の表面から部材の途中位置まで形成されていてもよい。このような係止穴18dに対して、エンドシール15が有する円柱状の係止部材15dやパッキン部材16が有する円柱状の係止部材16dが嵌り込むことによって、蓋本体部18に対するエンドシール15及びパッキン部材16の確実なズレ止めが実現されることとなる。
【0034】
以上の構成により、本実施形態に係るエンドシール15は、抜け止め形状15c’を有する柱状形状15cと係止部材15dという2つの形状の作用によって、蓋本体部18に対する確実な固定状態が維持されることとなる。また、本実施形態に係るパッキン部材16は、係止部材16dの作用によって確実な位置決めとズレ止めが成された上で、移動ブロック13と蓋本体部18とに挟み込まれることになるので、パッキン部材16は常に好適な位置で挟まれることとなり、パッキン部材としての機能を確実に発揮することが可能となる。したがって、製造が容易であり、品質不良が少なく、製造コストを軽減することのできる形状を有する運動案内装置を提供することができる。
【0035】
なお、本実施形態に係るパッキン部材16には、移動ブロック13との当接面側に凸形状16aが形成されている。この凸形状16aを図9にて詳細に示す。なお、図9において、分図(a)は、パッキン部材16のうち、エンドシール15と不連続に形成されるパッキン部材16の移動ブロック側の面を示しており、分図(b)は、分図(a)中のA−A断面を示している。本実施形態に係る凸形状16aは、パッキン部材16が移動ブロック13に設置される際の蓋部17の密閉性を高めるために機能する形状であり、パッキン部材16が移動ブロック13と蓋部17との間に挟み込まれた際に、凸形状16aが押し潰されることで移動ブロック13と蓋部17との間の隙間が確実に閉塞されることとなる。かかる作用によって、本実施形態に係るパッキン部材16の機能をさらに高める効果が発揮されている。
【0036】
以上、本発明に係る運動案内装置がリニアガイド装置10として構成される場合について、図1〜図9を用いて説明を行った。ただし、本発明は、リニアガイド装置等の運動案内装置だけではなく、ボールねじ装置等の駆動装置に対しても適用可能である。そこで、次に、本発明を適用可能な駆動装置であるボールねじ装置の形態例を、図10を用いて説明する。
【0037】
図10は、本実施形態に係る駆動装置としてのボールねじ装置の構成を説明するための部分破断斜視図である。本実施形態に係る駆動装置としてのボールねじ装置40は、表面に螺旋状をした転動体転走面42を有する軸部材としてのねじ軸41と、ねじ軸41が有する転動体転走面42と対向する螺旋状の負荷転動体転走面42を有する可動部材としてのナット部材51と、ねじ軸41とナット部材51との間に介装される複数の転動体としてのボール61とを備えている。
【0038】
ねじ軸41は、軸線方向に延びて形成される部材であり、このねじ軸41に組み付けられたナット部材51が相対的な回転運動をしながらねじ軸41の軸線方向に沿って往復運動できるようになっている。また、ねじ軸41の外表面には螺旋状の転動体転走面42が形成されており、複数のボール61が転動体転走面42内で負荷を受けながら転動自在となっている。
【0039】
ナット部材51は、中央部に配置されたナット本体部53と、このナット本体部53の両端に配置された蓋部としての一対のエンドキャップ54,54とを備えている。ナット本体部53は、軸線方向に貫通するねじ軸貫通孔55を有しており、このねじ軸貫通孔55に上述したねじ軸41が導通可能となっている。ねじ軸貫通孔55の内周面には、ねじ軸41に形成された螺旋状をした転動体転走面42に対向する螺旋状の負荷転動体転走面52が形成されており、これら転動体転走面42と負荷転動体転走面52とによって、負荷転動体転走路56が構成される。
【0040】
また、ナット部材51には、ナット本体部53を貫通する無負荷転動体転走路57と、一対のエンドキャップ54,54のそれぞれに形成された循環部としての方向転換路58が形成されており、この方向転換路58が負荷転動体転走路56と無負荷転動体転走路57の端部をつなぐことにより、負荷転動体転走路56、無負荷転動体転走路57および一対の方向転換路58,58によって形成される無限循環路が構成されている。
【0041】
そして、本実施形態に係るボールねじ装置40では、無限循環路内に複数のボール61が配設されているので、ねじ軸41に対してナット部材51が相対的な回転運動を行うことにより、ねじ軸41に対するナット部材51の相対的な往復運動が可能となっている。
【0042】
このようなボールねじ装置40において、本実施形態に係る蓋部としてのエンドキャップ54には、軸部材であるねじ軸41に対して隙間なく摺接するように設置されるシール部材54bと、可動部材であるナット部材51との設置面を塞ぐ不図示のパッキン部材とが設置されている。そして、このようなエンドキャップ54に対してシール部材54bとパッキン部材(不図示)とを2色成形により一体成形するとともに、図3〜図9で説明した特徴的な形態を付加することにより、製造が容易であり、品質不良が少なく、製造コストを軽減することのできるボールねじ装置40を提供することが可能となる。
【0043】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0044】
例えば、図1〜図8で例示したシール部材はエンドシール15であったが、本発明を適用可能なシール部材はこれに限られず、サイドシールやインナシール、ダブルシール、あるいはスクレーパなどと呼ばれるシール部材全般に対して適用可能である。
【0045】
また、上述したリニアガイド装置10やボールねじ装置40は、転動体としてボール12,61を用いたものであったが、ローラやコロなどの他の転動体を用いた運動案内装置や駆動装置に対して本発明を適用することも可能である。
【0046】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0047】
10 リニアガイド装置、11 軌道レール、11a 転動体転走面、11b ボルト孔、12 ボール、13 移動ブロック、13a 負荷転動体転走面、15 エンドシール、15c 柱状形状、15c’ 抜け止め形状、15d 係止部材、16 パッキン部材、16a 凸形状、16d 係止部材、17 蓋部、18 蓋本体部、18a ボルト取付孔、18b 凹部、18c 貫通孔、18d 係止穴、22 負荷転動体転走路、23 無負荷転動体転走路、25 方向転換路、40 ボールねじ装置、41 ねじ軸、51 ナット部材、52 負荷転動体転走面、53 ナット本体部、54 エンドキャップ、54b シール部材、55 ねじ軸貫通孔、56 負荷転動体転走路、57 無負荷転動体転走路、58 方向転換路、61 ボール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に転動体転走面を有する軌道部材と、
前記転動体転走面に対向する負荷転動体転走面と、当該負荷転動体転走面と平行な無負荷転動体転走路とを有する移動部材と、
前記転動体転走面と前記負荷転動体転走面とで構成される負荷転動体転走路に転動自在に配設される複数の転動体と、
を備える運動案内装置であって、
前記移動部材の端部には、前記負荷転動体転走路と前記無負荷転動体転走路とをつなぐ方向転換路を有する蓋部が設置されており、
前記蓋部は、
蓋本体部と、
前記軌道部材に対して隙間なく摺接するように設置されるシール部材と、
前記移動部材における前記蓋部の設置面を塞ぐパッキン部材と、
を備えるとともに、前記蓋本体部、前記シール部材、及び前記パッキン部材は、2色成形により成形されており、さらに、
前記シール部材と不連続に形成される前記パッキン部材を少なくとも1つ備えることを特徴とする運動案内装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運動案内装置において、
前記蓋本体部は、前記シール部材又は前記パッキン部材が成形される位置に凹部を有しており、当該凹部に対して前記シール部材又は前記パッキン部材が嵌り込むように成形されることを特徴とする運動案内装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運動案内装置において、
前記蓋本体部には、複数の貫通孔が形成され、
前記シール部材及び前記パッキン部材の少なくとも一方は、前記複数の貫通孔を導通する柱状形状を有して構成されており、さらに、
前記柱状形状は、長手方向における一部の箇所で幅方向の径寸法が異なるように形成されることで、抜け止め形状を有して形成されていることを特徴とする運動案内装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の運動案内装置において、
前記蓋本体部には、複数の係止穴が形成されており、
前記シール部材及び前記パッキン部材の少なくとも一方は、前記複数の係止穴に嵌り込む係止部材を有して形成されていることを特徴とする運動案内装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の運動案内装置において、
前記パッキン部材には、前記移動部材に設置される際の前記蓋部の密閉性を高めるために凸形状が形成されていることを特徴とする運動案内装置。
【請求項6】
長手方向に螺旋状をした転動体転走面を有する軸部材と、
前記転動体転走面に対向する螺旋状をした負荷転動体転走面と、前記軸部材と平行な無負荷転動体転走路を有する可動部材と、
前記転動体転走面と前記負荷転動体転走面とで構成される負荷転動体転走路に転動自在に配設される複数の転動体と、
を備える駆動装置であって、
前記可動部材には、負荷転動体転走路と無負荷転動体転走路とをつなぐ循環部が蓋部に設置されており、
前記蓋部は、
蓋本体部と、
前記軸部材に対して隙間なく摺接するように設置されるシール部材と、
前記可動部材における前記蓋部の設置面を塞ぐパッキン部材と、
を備えるとともに、前記蓋本体部、前記シール部材、及び前記パッキン部材は、2色成形により成形されており、さらに、
前記シール部材と不連続に形成される前記パッキン部材を少なくとも1つ備えることを特徴とする駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−19465(P2013−19465A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153097(P2011−153097)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】