説明

運行支援装置

【課題】従来の輸送車両には、運転士に対して次の停車場を知らせたり、速度超過を警告したりする注意喚起のための機能を持った装置がない。また、注意喚起のための装置を取り付けるには大掛かりな車両改造が必要となる。さらには、トンネルや地下などのGPS信号が届かない場所では当該装置が機能しないという問題があった。
【解決手段】GPSアンテナ41で受信したGPS信号から現在位置の緯度、経度の情報を得て現在位置を検出する。演算部45は、現在位置と停車予定の場所との間の距離を算出し、当該距離とメモリカード44の情報を用いて停車を促す警告を発する決定をする。GPS信号が受信できない場合は、タイマ43から得た経過時間とメモリカード44の情報を用い停車を促す警告を発する決定をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送車両の運転士等に運行情報を適時に提供して、安全性と確実性の高い運行業務の実現を支援する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常輸送車両は、定められた時刻表に則って定められた始発点と終着点を持つ路線に沿って運行して、複数の駅で途中停車を繰り返している。しかし、全ての輸送車両が全ての駅で停車するのではなく、特急列車や急行列車など予め決められた特定の駅のみに停車する輸送車両も存在する。このため輸送車両の運転士は、途中停車すべき駅を間違えないように注意を払わなくてはならない。しかし現実には、運転士の不注意から停車駅を間違えるという事態が発生することがあり、運転士の注意を喚起する有効な方法は何ら提案されていないのが現状である。
【0003】
特許文献1には、車両位置を測位する手段と、予め設定された起点からの距離を算出する手段とを備えた車両位置算出装置が示されている。これは、鉄道車両の位置をGPS(Grobal Positioning System)の信号から特定し、位置情報を加工して運転士にナビゲーションを提供するものである。
【特許文献1】特開2005−186651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1による車両位置算出装置は、運転士に対して次の停車すべき駅を知らせたり、速度超過を警告したりする注意喚起のための機能がなく、装置を取り付けるためには大掛かりな車両改造を必要とする。さらには、トンネルや地下などのGPS信号が届かない場所では機能しないといった問題がある。
【0005】
そこで本願発明の目的は、GPS信号が届かない場所であっても運転士に対して注意を喚起することができ、設置のための車両改造が不要である携帯型の運行支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、本発明の運行支援装置は、始発点と終着点を持つ路線における輸送車両の運行に用いられ、予め定められた停車点及び前記終着点に到着する前に前記停車点及び前記終着点への停車を促す警告を発する運行支援装置であって、前記輸送車両の現在位置を検出する車両位置検出部と、前記警告を発する場所及びタイミングを特定するために必要なデータを保持する記憶部と、前記輸送車両の前記始発点、終着点及び停車点の各点間の運行時間を計測する計時部と、前記車両位置検出部で検出した前記輸送車両の現在位置と前記警告を発する場所とを比較して、前記現在位置が前記警告を発する場所であれば前記警告を発する決定をすると共に、前記車両位置検出部で現在位置を検出できない場合は、前記計時部が計測した運行時間と前記記憶部が保持するタイミングとを比較して、前記運行時間が前記警告を発するタイミングであれば前記警告を発する決定をする演算部と、前記演算部が決定した警告を出力する出力部と、を具備するものである。
【0007】
ここで前記記憶部に保持される情報は、前記終着点及び停車点の緯度と経度と、前記始発点、終着点及び停車点の各点間の距離及び各点間の所要時間と、前記停車を促す警告を発する区間と、を含むようにしてもよい。
【0008】
ここで前記車両位置検出部は、更に前記輸送車両の速度を検出し、前記記憶部は、更に前記路線の制限速度のデータを保持し、前記演算部は、更に車両の速度が前記制限速度を超えているときに制限速度超過の警告を発する決定をするようにしてもよい。
【0009】
ここで前記車両位置検出部は、GPSアンテナとGPSレシーバとからなり、前記GPSレシーバは、前記GPSアンテナが受信したGPS信号から少なくとも緯度と経度と速度を算出するようにしてもよい。
【0010】
ここで前記計時部と前記演算部と前記出力部とをパーソナルデジタルアシスタント(PDA)を用いて実現してもよい。
【0011】
ここで前記記憶部はメモリカードとしてもよい。
【0012】
ここで電源としての電池を更に具備し、前記車両位置検出部、前記記憶部、前記演算部、前記計時部及び出力部を一体に構成してもよい。
【0013】
ここで前記輸送車両は鉄道車両としてもよい。
【0014】
この課題を解決するために、本発明の運行支援方法は、始発点と終着点を持つ路線における輸送車両の運行に用いられ、予め定められた停車点及び前記終着点に到着する前に前記停車点及び前記終着点に停車を促す警告を発する運行支援方法であって、前記輸送車両の現在位置を検出し、前記警告を発する場所及びタイミングを特定し、前記輸送車両の前記始発点、終着点及び停車点の各点間の運行時間を計測し、前記検出された現在位置と前記特定された警告を発する場所とを比較して、前記現在位置が前記警告を発する場所であれば前記警告を発すると共に、前記輸送車両の現在位置が検出できない場合は、前記運行時間と前記タイミングとを比較し、前記運行時間が前記警告を発するタイミングであれば警告を発するものである。
【0015】
ここで更に前記輸送車両の速度を検出し、制限速度を超える場合は制限速度超過の警告を発するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
このような特徴を有する本願発明によれば、GPS信号の位置情報を用いて車両の現在位置を正確に確定して、運行に必要な警告や案内を運転士に適時に提供することができる。仮にGPS信号が届かない場所であっても、タイマからの運行時間を用いることで同様の案内や警告を適時に、また確実に提供することができる。またこのことによって、停車駅の通過や制限速度の超過など、運転士の不注意による運行上のトラブルを回避することができ、安全な運行を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施の形態では、鉄道輸送を例にとって、本願発明の運行支援装置の構成及びその動作を説明する。
【0018】
[鉄道路線について]
まず、図1と図2を用いて、本実施の形態における鉄道路線について説明する。図1は、鉄道路線を模式的に示した図である。本図において駅1は始発点である始発駅、駅4は終着点である終着駅を示しており、その他は途中停車する駅である。鉄道路線はこのように、始発駅と終着駅とを持つ路線内で途中停車点である駅を複数持っている。
【0019】
図2は、駅1と駅2の間を表す図である。駅1と駅2との間には列車の運転士に停車を促す警告を発する注意の喚起区間が3つ決められている。図2では第1、第2、第3喚起区間10、11、12が注意の喚起区間として示されている。これら喚起区間の長さとその数は任意に設定することが可能であるが、本実施の形態では、第1から第3の3つの喚起区間を設定する。尚、このような喚起区間は駅1と駅2の間に限らず全ての停車駅間で設けられている。
【0020】
本実施の形態においては、各喚起区間を次のように設定する。第1喚起区間10は前駅寄りのホーム端の手前1000メートルから手前400メートルの間の区間である。第2喚起区間11は前駅寄りのホーム端の手前400メートルから当該ホーム端まで区間であり、前駅寄りのホーム端の手前400メートルの地点は列車の制動を開始する地点でもある。第3喚起区間12は前駅寄りのホーム端から列車の停車位置における運転席までの区間である。本実施の形態では、このように各喚起区間を設定しているが、各喚起区間は自由に設定することができ、必ずしも連続している必要はない。
【0021】
このように喚起区間が設けられた駅間で、駅1を出発した列車が第1喚起区間10に到達すると、後に説明する本実施の形態の運行支援装置が、停車を促す警告を運転士に発して注意を喚起する。さらに第2、第3喚起区間11、12で次々に別の警告を発することで運転士に停車に関する注意を確実に喚起する。
【0022】
[運行支援装置の構成について]
続いて図3、4を用いて、本実施の形態における運行支援装置の構成を説明する。図3の運行支援装置30はその本体にタッチパネル31と音声出力部であるスピーカ32とを備えている。タッチパネル31はグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)が用いられ、運転士に視覚的な情報を表示する表示部である。またタッチパネル31の画面に触れることでボタン操作を行い、必要な情報を入力する入力部ともなっている。スピーカ32はタッチパネル31の表示内容と連動して、あるいは独立に運転士に警告音又は音声による案内を提供する。
【0023】
図4は、運行支援装置30の構成を示す図である。GPSアンテナ41はGPS衛星からの電波を受信するアンテナであり、GPSレシーバ42はGPSアンテナ41で受信した電波から緯度情報、経度情報、速度情報と高度情報とを得て、それら情報を一定時間間隔で出力するものである。GPSアンテナ41とGPSレシーバ42とは車両位置検出部を構成している。タイマ43は運行に関する経過時間を出力する計時部である。メモリカード44は路線及び列車種別に属する情報を含むファイルを格納している記憶部であり、その情報は路線内の駅名、駅間の直線距離及び所要時間、列車種別と種別ごとの停車駅名、各停車駅に対応した喚起区間や、区間内の制限速度などである。
【0024】
演算部45はCPUなどの演算装置とメモリで構成されており、GPSレシーバ42、タイマ43、メモリカード44及び後述する入力部からの情報を用いて本装置固有のプログラム演算を行い運行支援のための情報に変換して、後述する出力部に出力するものである。出力部には表示部であるモニタ46と音声出力部であるスピーカ32がある。モニタ46は停車駅名や、停車指示などの案内を視覚的に運転士に提供するものであり、スピーカ32はモニタ46の表示内容と連動あるいは独立して音声による案内を運転士に提供する。入力ボタン47は路線名や列車種別など、予め決まっている事柄に対して選択をする入力部である。本実施の形態においてはモニタ46と入力ボタン47はタッチパネル31として一体のものになっている。充電池48は上述のGPSアンテナ41から入力ボタン47の各部を駆動するための電源であり、運行支援装置30の長時間にわたる携帯を可能にする。
【0025】
[運行支援装置の動作について]
図5A、5Bは運行支援装置30の動作を示すフロー図である。このフロー図を用いて、図1、2の路線における運行支援装置30の動作について、順を追って説明する。
【0026】
まず始発駅である駅1において、当該列車の路線名と普通、急行などの列車種別をタッチパネル31の入力ボタン47を介して運行支援装置30に入力し初期設定を行なう(S50)。初期設定が完了すると、演算部45は当該路線の当該列車種別に属する情報を持つ駅間情報ファイル70をメモリカード44から読み込む(S51)。
【0027】
図6は、メモリカード44に保持される駅間情報ファイル70が含む情報を示している。ファイル名は駅1と駅2の間の情報であることを示し、当該列車の次の停車駅が駅2であることを示している。続いて両駅間の直線距離と所要時間が示されており、第1から第3喚起区間が駅2までの直線距離と駅1からの経過時間で示されている。さらに駅2までの直線距離を用いてその直線距離に相当する区間の制限速度が示されていて、最後に駅1と駅2の経度と緯度の情報も示されている。メモリカード44には、このような情報が路線の別と列車種別に従属して、停車駅間ごとに複数のファイルに分けて格納されており、駅間情報のデータベースが構築されている。
【0028】
図5Aにおいて、S51で演算部45が駅間情報ファイル70を読み込むと、演算部45は、GPSレシーバ42からの信号に緯度、経度の情報である位置データが含まれているかどうかを確認する(S52)。位置データが含まれていれば、演算部45はタイマ43を始動させて、駅間所要時間の計時を始める(S53)。これと同時に、演算部45はモニタ46に次の停車駅を表示し(S54)、この表示を確認した運転士は列車を始発駅である駅1より列車を発車させる。演算部45は、S54の動作を経ることで列車が走行を開始したと判断し、列車走行中の処理に移る。一方、位置データが含まれていなかった場合は、タッチパネル31に出発確認ボタンを表示する(S55)。表示された出発確認ボタンが押されれば、S53の処理を経てS54の処理に移るが、押されなければS52の処理へ帰る(S56)。つまり、GPSレシーバ42からの信号に位置データが含まれていれば自動的に次の停車駅の案内がタッチパネルに表示され、以後の処理へ移ってゆくが、位置データが含まれていなければ、運転士が出発確認ボタンを押すまで次の停車駅の案内がタッチパネルに表示されず、以後の処理に進むことができない。
【0029】
S54の処理を経て列車が走行を開始すると、演算部45はGPSレシーバ42からの信号に位置データが含まれているかどうかを判断する(S57)。位置データが含まれていれば現在位置の緯度と経度を得て(S58)、S51で読み込んだ駅間情報ファイル70の駅2の緯度と経度の情報から現在位置と駅2との直線距離を算出し(S59)、次の処理に移る。位置データが含まれていなければ、S53からの経過時間をタイマ43から得て(S60)、次の処理に移る。
【0030】
S59で得られた直線距離またはS60で得られた経過時間が、駅間情報ファイル70の第1喚起区間に該当するかどうかを判定する(S61)。第1喚起区間に該当すれば運転士に対して停車を促す注意喚起を行なう(S62)。当該区間に該当しなければS57に帰って同様の処理を繰り返す。
【0031】
S62の注意喚起が終了すると、GPSレシーバ42からの信号を確認し、緯度、経度の情報が含まれていれば列車の現在位置を検出し、緯度及び経度の情報が含まれていなければ、S53からの経過時間をタイマ43から取得する(S63)。次に、得られた列車の現在位置が駅間情報ファイル70における駅2の緯度、経度と一致するか、もしくはS52からの経過時間が駅間情報ファイル70における駅間所要時間に一致するかを確かめて、列車の駅での停止を確認する(S64)。駅での停止が確認できなければS63の処理に帰って処理を繰り返すが、確認できれば当該停車駅が終着駅であるかどうかを判断する(S65)。終着駅でなければ、駅間情報ファイル70の次の駅間情報ファイルを読み込んでタイマをリセットし(S66)、S52の処理に帰る。終着駅であると判断されれば一連の処理を終了する。
【0032】
[第1から第3喚起区間の注意喚起について]
図7を用いて、上記S62の注意喚起について詳細に説明する。S61で列車の現在位置が第1喚起区間10にあると判断されると、第1喚起を実行する(S70)。
【0033】
第1喚起の一例を図8に示す。図8はタッチパネル31が第1喚起を行なっている状態を示している。タッチパネル31の上段には現在の速度とGPSの受信状態と次の停車駅までの距離が表示されている。中段には次の停車駅名、下段には第1喚起の確認ボタンが表示されている。第1喚起はタッチパネル31の確認ボタンの表示とスピーカ32からの警告音や音声案内によって行なわれ、運転士がタッチパネル31の確認ボタンを押すと第1喚起が終了する。
【0034】
図7に戻って、S70で第1喚起が行なわれると、タッチパネルの確認ボタンが押されたかどうかを判断する(S71)。確認ボタンが押されていれば、確認ボタンが表示されていた場所に確認済みの表示をする(S76)。確認ボタンが押されていない場合、第1喚起が継続される。続いてGPSレシーバ42からの信号を確認し緯度、経度の情報が含まれていれば、その情報を用いて列車の現在位置を検出し、緯度及び経度の情報が含まれていなければ、S53からの経過時間をタイマ43から取得する(S72)。S72で得た情報と駅間情報ファイル70の第2喚起区間11の情報を比較して、現在第2喚起区間11にいるかどうかを判断する(S73)。第2喚起区間11にいると判断されれば第2喚起を実行する(S74)。第2喚起区間11は制動を開始する地点でもあるため、第1喚起よりも強い警告をタッチパネル31による表示とスピーカ32からの警告音や制動を促す音声案内によって行なう。第2喚起区間11に入っていない場合はS72の処理へ帰る。第2喚起が実行されると、図8と同様の内容がタッチパネルに表示されるので、確認ボタンが押されたかどうかを判断する(S75)。確認ボタンが押されていればS76の処理に移る。続いてGPSレシーバ42からの信号を確認し緯度、経度の情報が含まれていれば、その情報を用いて列車の現在位置を検出し、緯度及び経度の情報が含まれていなければ、S53からの経過時間をタイマ43から取得する(S77)。
【0035】
S75で確認ボタンが押されていなければ、S72と同様の処理をして(S78)、現在位置が未だ第2喚起区間11にあるかどうかを判断する(S79)。未だ第2喚起区間11であればS74の処理に帰って第2喚起を引き続き実行する。第2喚起区間11でなければS77の処理に移る。
【0036】
S77で取得した現在の位置又は経過時間と駅間情報ファイル70の第3喚起区間12の情報とを比較して、現在位置が第3喚起区間12にあるかどうかを判断する(S80)。第3喚起区間12になければS77の処理へ戻るが、この区間内にある場合は第3喚起を実行して(S81)、S63の処理へ進む。第3喚起では運転士による確認ボタンの操作は行なわず、タッチパネル31の表示とスピーカ32からの警告音や停車駅への到着を知らせる音声案内による喚起のみが行なわれ、停車駅での列車の停止が確認されると第3喚起は終了する。
【0037】
[速度超過の警告について]
上記のような動作を行なう本実施の形態の運行支援装置において、列車の速度超過を警告する方法を、図9を用いて説明する。尚、以下に説明する速度超過を警告するための処理は、上述の処理とは独立して行なわれるものである。
【0038】
図9は、速度超過を警告するための、処理のループを示したものである。GPSレシーバ42から緯度、経度及び速度の情報を得て、現在の速度が0を超えるかどうかを判断する(S90)。速度が0を超えていなければS90の動作は繰り返し行なわれるが、0を超えていれば、駅2までの直線距離を算出する(S91)。S91で得た駅2までの直線距離が、駅間情報ファイル70の制限速度に関する情報のどの区間に該当するのかを判断して、現在位置での制限速度を得る(S92)。例えば駅2までの直線距離が7000メートル(m)であった場合、駅間情報ファイル70の制限速度の区間で「7424−3024m」の欄にある時速110kmが制限速度となる。こうして得られた制限速度とGPSレシーバ42から得た速度を比較して、現在の速度が制限速度を超えているかどうかを判断する(S93)。超えていなければS90に帰るが、超えていれば速度超過の警告をタッチパネル31に表示すると同時に、音声による警告も行なう(S94)。警告を行なった後はS90に帰って同じ処理を繰り返し、速度超過が継続していれば再度S94で警告をし、速度超過が解消されていれば警告は行なわれない。このように処理することで適時に速度超過の警告を行なうことができる。
【0039】
以上に説明したような運行支援装置によって、運転士に対して、停車駅や速度超過に関する注意喚起を適時に行なうことができる。本実施の形態の運行支援装置はGPS信号を基に得た列車の現在位置によって注意喚起を行なっているが、路線内のトンネルや地下や高架などによってGPS信号が受信できず緯度、経度の情報が得られなくても、タイマの経過時間を用いて同様の注意喚起を適時に行なうことができる。またこれに加えて、本運行支援装置の電源は充電池であるので、車両本体からの電源供給を必要とせず携帯が可能であり、本装置を設置するための車両改造を全く必要としない。
【0040】
尚、本実施の形態において上述した喚起区間は、第1から第3喚起区間に限定するものではなく、任意に設定することができる。また、各喚起区間は駅への停車を促す警告や案内を行なったが、特別に減速を必要とする場所や、特定の注意を促す必要のある場所の手前に新たに喚起区間を設けて、各場所への注意を促す警告や案内をすることができる。
【0041】
本実施の形態では、図8で示したようにタッチパネルを用いて表示と入力を行なったが表示専用のディスプレーと入力専用のボタンを別に設けても本実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、記憶部としてメモリカードを用いたが、記憶部はROMやハードディスクなどの他の記憶媒体であってもよい。さらに、本実施の形態のタッチパネル31とタイマ43と演算部45とをパーソナルデジタルアシスタント機器(PDA)を用いて実現することもできる。
【0042】
本実施の形態において、第1喚起に対して運転が確認ボタンを押すと、第2喚起を省略して第3喚起をする例を示したが、第2喚起は必ずしも省略する必要はなく、第1から第3喚起の全てを行なっても良い。また、図6に示したファイルの内容は本実施の形態に限定されるものではなく、喚起区間の数や制限速度の区間の数を任意に変えられることはもちろん、複数の駅間の情報を1つのファイルに保持していても良い。
【0043】
本実施の形態において、GPS信号から得た緯度、経度、速度のデータと地上の各地点の実際の緯度、経度や列車の速度との間にはわずかであるが誤差を含んでおり、また列車の出発、到着時間や駅間の所要時間、停止位置なども誤差を含んでいるので、本実施の形態の運行支援装置の動作はこれらの誤差を加味して行なっていることはいうまでもない。
【0044】
最後に、本実施の形態では鉄道輸送を例にとって説明したが、本願発明は鉄道輸送に限るものではない。鉄道輸送と同様に、例えば高速バスや路線バスやいくつかのターミナルを経由しながら荷物の集配を行なうトラック便のように、始発点と終着点を持つ路線で、路線内での停車点が予め定められているような運輸事業に広く用いることができ、本実施の形態で説明したものと同様の効果を得ることができる。また、本願発明の運行支援装置は、環状の路線においても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】鉄道路線を表した模式図である。
【図2】駅間と喚起区間を示した模式図である。
【図3】本発明の実施の形態における運行支援装置の斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態における運行支援装置の構成図である。
【図5A】本発明の実施の形態における運行支援装置の処理のフロー図である。
【図5B】本発明の実施の形態における運行支援装置の処理のフロー図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるファイルデータの内容を示した図である。
【図7】本発明の実施の形態における運行支援装置の処理のうち、喚起動作を示したフロー図である。
【図8】本発明の実施の形態における喚起動作のタッチパネルの表示内容を示した図である。
【図9】本発明の実施の形態における速度超過の警告のフロー図である。
【符号の説明】
【0046】
1〜4 駅
10 第1喚起区間
11 第2喚起区間
12 第3喚起区間
30 運行支援装置
31 タッチパネル
32 スピーカ
41 GPSアンテナ
42 GPSレシーバ
43 タイマ
44 メモリカード
45 演算部
46 モニタ
47 入力ボタン
48 充電池
70 駅間情報ファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
始発点と終着点を持つ路線における輸送車両の運行に用いられ、予め定められた停車点及び前記終着点に到着する前に前記停車点及び前記終着点への停車を促す警告を発する運行支援装置であって、
前記輸送車両の現在位置を検出する車両位置検出部と、
前記警告を発する場所及びタイミングを特定するために必要なデータを保持する記憶部と、
前記輸送車両の前記始発点、終着点及び停車点の各点間の運行時間を計測する計時部と、
前記車両位置検出部で検出した前記輸送車両の現在位置と前記警告を発する場所とを比較して、前記現在位置が前記警告を発する場所であれば前記警告を発する決定をすると共に、前記車両位置検出部で現在位置を検出できない場合は、前記計時部が計測した運行時間と前記記憶部が保持するタイミングとを比較して、前記運行時間が前記警告を発するタイミングであれば前記警告を発する決定をする演算部と、
前記演算部が決定した警告を出力する出力部と、を具備する運行支援装置。
【請求項2】
前記記憶部に保持される情報は、
前記終着点及び停車点の緯度と経度と、
前記始発点、終着点及び停車点の各点間の距離及び各点間の所要時間と、
前記停車を促す警告を発する区間と、を含む請求項1に記載の運行支援装置。
【請求項3】
前記車両位置検出部は、更に前記輸送車両の速度を検出し、
前記記憶部は、更に前記路線の制限速度のデータを保持し、
前記演算部は、更に車両の速度が前記制限速度を超えているときに制限速度超過の警告を発する決定をする請求項1又は2に記載の運行支援装置。
【請求項4】
前記車両位置検出部は、GPSアンテナとGPSレシーバとからなり、
前記GPSレシーバは、前記GPSアンテナが受信したGPS信号から少なくとも緯度と経度と速度を算出するものである請求項1から3のいずれかに記載の運行支援装置。
【請求項5】
前記計時部と前記演算部と前記出力部とをパーソナルデジタルアシスタント(PDA)を用いて実現したものである請求項1から4のいずれかに記載の運行支援装置。
【請求項6】
前記記憶部はメモリカードである請求項1から5のいずれかに記載の運行支援装置。
【請求項7】
電源としての電池を更に具備し、前記車両位置検出部、前記記憶部、前記演算部、前記計時部及び出力部を一体に構成した請求項1から6のいずれかに記載の運行支援装置。
【請求項8】
前記輸送車両は鉄道車両である請求項1から7のいずれかに記載の運行支援装置。
【請求項9】
始発点と終着点を持つ路線における輸送車両の運行に用いられ、予め定められた停車点及び前記終着点に到着する前に前記停車点及び前記終着点に停車を促す警告を発する運行支援方法であって、
前記輸送車両の現在位置を検出し、
前記警告を発する場所及びタイミングを特定し、
前記輸送車両の前記始発点、終着点及び停車点の各点間の運行時間を計測し、
前記検出された現在位置と前記特定された警告を発する場所とを比較して、前記現在位置が前記警告を発する場所であれば前記警告を発すると共に、前記輸送車両の現在位置が検出できない場合は、前記運行時間と前記タイミングとを比較し、前記運行時間が前記警告を発するタイミングであれば警告を発する運行支援方法。
【請求項10】
更に前記輸送車両の速度を検出し、
制限速度を超える場合は制限速度超過の警告を発する請求項9に記載の運行支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−237897(P2007−237897A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−62450(P2006−62450)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(505190013)近鉄車両エンジニアリング株式会社 (4)
【Fターム(参考)】