説明

運転周波数を有するタッチセンサ、タッチセンサ上の接触を検知する方法、運転周波数を有する音響ベースシステム、および音響基板を使用する方法

タッチスクリーンシステム(105)などの、音響ベースシステムが提供される。本システムは、基板へ動作可能な形で結合された、音響基板(125)および音響変換器(135)を含んでいる。変換器(135)は、システムの運転周波数と等しい、高次の奇数共鳴周波数を示す。変換器の厚みを増し、その結果、より長持ちさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、音響タッチセンサ技術、および、さらに言えば、圧電素子の、高次周波数を利用する音響タッチセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサは、コンピュータおよび他の電子システムのための、透明または不透明な入力装置である。名前が示すように、タッチセンサは、ユーザの指、またはスタイラス、または他の装置からの接触により作動する。一般に、タッチスクリーン(すなわち、透明基板を有するタッチセンサ)は、接触ディスプレイシステムを作成するよう、陰極線管(CRT)モニターおよび液晶ディスプレイなどのディスプレイ装置と併せて使用される。これらのシステムは、レストラン注文入力システム、産業用処理制御アプリケーション、インタラクティブな博物館展示、情報公開キオスク、ポケットベル、携帯電話、携帯情報端末、およびテレビゲームなどの市販のアプリケーションで、ますます盛んに使われている。
【0003】
現在用いられている主要なタッチ技術は、抵抗技術、容量技術、赤外線技術、および音響技術である。これらの技術を取り入れたタッチスクリーンは、競争価格での性能の高度な基準を実現している。全ては、特定の位置座標に関連する何らかの機能を順番に実行するホストコンピュータへ、接触位置の座標を伝えることにより、接触に応答する透明な装置である。もちろん、各々に、相対的な長所および短所がある。
【0004】
音響タッチスクリーン(超音波タッチスクリーンとしても知られている)は、他のタッチ技術と効果的に競争してきた。これは、音響タッチスクリーンが、主に、長持ちする接触表面を備える一方で、高透明性かつ高分解能のタッチ性能で、過酷なアプリケーションを操作する能力を有することに起因している。
【0005】
音響タッチスクリーンシステムは、タッチスクリーン(すなわち、透明な基板を備えたタッチセンサ)、コントローラ、およびタッチスクリーンとコントローラとを結合するリード線を含んでいる。通常、タッチスクリーンは、音波が伝搬する接触感知基板を含んでいる。基板表面に触れると、基板を横切って伝搬する波エネルギーの少なくとも一部分が吸収されることになる。電子回路は、タッチスクリーンに、概念的に、かつ目に見えない形で重ねられた、XY座標システム内の吸収位置を特定するために用いられる。本質的には、これは、波が初めに伝搬され8時間、さらに、接触による波の吸収が引き起こされる時間を記録することにより達成される。その後、これらの時間の差は、基板を通る波の既知の速度と共に、接触の正確な位置の決定に用いることができる。
【0006】
普及型の音響タッチスクリーンは、レイリータイプの音波(この用語は疑似レイリー波を含むことを意図している)を使用している。レイリー波タッチスクリーンに関連する説明に役立つ開示には、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18がある。ラム波または剪断波など、他のタイプの音波、または、異なるタイプの音波の組合せ(レイリー波に関係する組合せを含む)を用いる音響タッチスクリーンも知られている。これらの技術の説明に役立つ開示には、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献28がある。上の引用された特許は、参照により本出願に組み込まれる。
【0007】
レイリー波の吸収を通して接触を感知する音響タッチスクリーンは、商業的な成功が実証された。レイリー波を用いる製品の成功は、主に、レイリー波により示される2つの特性に起因する。第1に、レイリー波は、他の音波より接触に敏感である。第2に、レイリー波は、いかなる単純な均質ガラス基板の表面でも、伝搬可能な表面波である。しかしながら、レイリー波タッチスクリーンは、油や水などの、伝搬波からエネルギーを吸収する液体汚染物質に対する感度を増大させてしまう。
【0008】
レイリー波が、商品において最も一般に用いられる一方で、水平に偏波した剪断波を用いるタッチスクリーンも当技術分野で周知である。水平に偏波した剪断波の使用は、水、および他の液体汚染物質が存在するとき、音響タッチスクリーン動作のロバスト性を大いに高める。これは、レイリー波と異なり、水平に偏波した剪断波が、汚染物質により吸収される上下方向の運動成分を全く有しないという事実に起因している。したがって、波の吸収は、波放射よりも、むしろ粘性減衰により生ずることになる。指は、水滴などの汚染物質より粘性があるので、タッチスクリーンを、より低い粘性接触を拒絶するよう構成し、それにより、高粘性の有効な指の接触を受け入れながらも、汚染を拒絶することができる。したがって、特定のタッチスクリーンアプリケーションに対しては、汚染物質ノイズ耐性は水平に偏波した剪断波の重要な利点である。
【0009】
いかなるタイプの音響技術が使用されても、音響タッチスクリーンは、1つの形式から他の形式へエネルギーを変換する要素である、変換器を含んでいる。例えば、送信変換器は、関連する電子回路からのトーンバーストを受け、その後、基板を横切って音波パケットを放出する。受信変換器は、基板から送信された音波パケットを受信し、関連する電子回路へ、処理のために送信される電子信号を生成する。各タイプの変換器は、電子信号および機械的振動を変換する、圧電素子を含んでいる。市販の圧電素子は、最も一般的には、鉛ジルコニウムチタニウム(PZT)および変性されたチタン酸鉛などの、強誘電性圧電セラミックから製造されている。また、通常高価であるが、ニオブ酸リチウムなどの単結晶圧電材料も、タッチスクリーン変換器用の圧電素子の構成に使用可能である。
【0010】
最も商業的に生産された圧電素子は圧力モード圧電素子である。しかしながら、変換器が水平に偏波した剪断波を送受信するためのものなら、剪断モード圧電素子が必要である。図1Aおよび図1Bは、圧電素子振動に対する時間系列を概略的に示す:図1Aは圧力モード圧電素子に対する時間系列を示しており、図1Bは剪断モード圧電素子に対する系列を示している。図1Aでは、圧力モード圧電素子は、静止位置10から開始する。その後、それは電気信号を受信し、それにより、位置12へ膨張する。圧電素子が完全に膨張した位置12に達した後、それは、静止位置14に向かって収縮する。それは、静止位置14を過ぎ、完全に収縮した位置16に達するまで収縮し続ける。最終的に、完全に収縮した位置16に達した後、それは、静止位置18に戻り、こうしてサイクルが完了する。圧電素子の、この振動的な収縮/膨張運動により、一連の振動サイクルを通して、音波が発生する。図1Bでは、剪断モード圧電素子は、静止位置20から開始する。その後、それは電気信号を受信し、それにより、位置22へ剪断する。圧電素子が完全に剪断した位置22に達した後、それは、静止位置24に向かって逆方向に剪断することになる。それは、静止位置24を過ぎ、完全に剪断した位置26に達するまで剪断し続ける。最終的に、完全に剪断した位置26に達した後、それは、静止位置28に戻り、こうしてサイクルが完了する。圧電素子の、この振動的な剪断運動により、一連の振動サイクルを通して、音波が発生する。
【0011】
要するに、音響タッチスクリーンは、単なるバンドパスフィルタシステムである。換言すれば、多くの異なる周波数信号がタッチスクリーンへ入力される場合、タッチスクリーンはそれらの信号の特定の1つのみを出力することになる。この特定の信号は、タッチスクリーンの運転周波数として知られている、特定周波数を有していることになる。例えば、1〜10MHzの間の(1、2、3などの)一連の信号が特定のタッチスクリーンへ入力される場合、タッチスクリーンは、それらの周波数のうちの1つ(例えば、5MHz)の信号のみを出力することになる。この周波数(運転周波数)は、タッチスクリーンの基板の材料(それは、基板を貫通する信号の速度を決定する)、およびタッチスクリーンの反射アレイの反射要素間の間隔(間隔は、信号の波長の整数倍数でなければならない)で決定される。上記に基づき、タッチスクリーンの他の要素は、運転周波数で使われるよう設計される。従来は、関連する電子機器が、この運転周波数でのトーンバーストにより、タッチスクリーンを駆動し、音波が生成され、この運転周波数で伝搬し、かつ受信され、さらに、関連する電子機器が、この運転周波数で受信した電子信号を処理する。
【0012】
市販の音響タッチスクリーンシステムは、通常、およそ5MHzの運転周波数を有するよう設計されている。音波の減衰率は、周波数の増加に伴い、急激に大きくなる。より高い運転周波数については、PDAや、携帯電話などで見られるような小型のタッチスクリーンには役立つこともあろうが、例えば、10MHzの運転周波数では、最大伝搬距離が大きく減少することになり、商業関心のある多くのアプリケーションに対しては、タッチスクリーンのサイズをあまりに小さく制限してしまうことになる。他方、遥かに低い運転周波数の使用は、より大きな音響波長、およびより強力な回折効果、さらに良好に方向付けられた音響ビームの減少を導いてしまう。これは、反射アレイ境界をさらに広くする必要があることを意味する。結局、より低い運転周波数の使用は、接触位置の分解能を低下させることになる。したがって、およそ5MHzの運転周波数が商業規格とされている。
【0013】
一般に、圧電素子は、確実に合格水準の効率を得るために、タッチスクリーンシステムの運転周波数で共鳴するように設計されている。従来の音響タッチスクリーン圧電素子では、圧電素子の基本の、または1次の厚さモード共鳴は、タッチスクリーンシステムの運転周波数に、少なくともほぼ一致する。この条件は、圧電素子の厚さが、圧電材料内でのバルク波の波長の半分であることを要するのと等価である。これは、図2に示されており、ここでは、1次厚さ共鳴モードに対する、圧電素子の厚さTが示されている。この共鳴条件は、公式T=λ/2=V/(2f)=N/fに従って、圧電素子の厚さを決定する。ここで、Tは圧電素子の厚さ、λは圧電材料内での当該バルク波の波長、Vは圧電材料内での当該バルク波の音速、および、fは圧電素子の共鳴周波数である。便宜上、圧電素子のメーカーは、多くの場合、周波数定数Nを、当該圧電材料内での音速の半分に定義している。
【0014】
一般に、タッチスクリーン基板においてレイリー波を生成するよう設計された変換器は、圧力モード圧電素子を必要とする。圧力モード圧電素子では、当該バルク波は、バルク圧力波である。標準的PZT材料では、圧力モード振動に対する周波数定数は、通常N=2000m*Hz付近である。したがって、およそ5MHzの標準的タッチスクリーン運転周波数では、これは、圧力モード圧電素子に対して、圧電素子の厚さがおよそT=400μmとなる。圧電セラミック材料のこうした薄いスラブは、かなり脆く、容易に壊れてしまうが、タッチスクリーンアセンブリでは、適切な注意および取り扱いが与えられるなら、深刻な問題を起こすことなく、規定どおりに製造され、使用されている。
【特許文献1】米国特許第4,642,423号明細書
【特許文献2】米国特許第4,645,870号明細書
【特許文献3】米国特許第4,700,176号明細書
【特許文献4】米国特許第4,746,914号明細書
【特許文献5】米国特許第4,791,416号明細書
【特許文献6】米国特許第Re33,151号明細書
【特許文献7】米国特許第4,825,212号明細書
【特許文献8】米国特許第4,859,996号明細書
【特許文献9】米国特許第4,880,665号明細書
【特許文献10】米国特許第4,644,100号明細書
【特許文献11】米国特許第5,739,479号明細書
【特許文献12】米国特許第5,708,461号明細書
【特許文献13】米国特許第5,854,450号明細書
【特許文献14】米国特許第5,986,224号明細書
【特許文献15】米国特許第6,091,406号明細書
【特許文献16】米国特許第6,225,985号明細書
【特許文献17】米国特許第6,236,691号明細書
【特許文献18】米国特許第6,441,809号明細書
【特許文献19】米国特許第5,591,945号明細書
【特許文献20】米国特許第5,854,450号明細書
【特許文献21】米国特許第5,072,427号明細書
【特許文献22】米国特許第5,162,618号明細書
【特許文献23】米国特許第5,177,327号明細書
【特許文献24】米国特許第5,329,070号明細書
【特許文献25】米国特許第5,573,077号明細書
【特許文献26】米国特許第6,087,599号明細書
【特許文献27】米国特許第5,260,521号明細書
【特許文献28】米国特許第5,856,820号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、剪断モード圧電素子では、状況は非常に異なる。タッチスクリーン基板内で水平に偏波した剪断波を生成するよう設計された変換器は、一般に剪断モード圧電素子を必要とする。剪断モード圧電素子では、関連する音速は、圧電材料内でのバルク剪断波の速度である。圧縮波に対して剪断波の速度は著しく遅いので、剪断モード振動での標準的PZT周波数定数は、およそN=900m*Hzである。これは、対応する圧力モード圧電素子の厚さの半分未満である、およそT=180μmの圧電素子の厚さとなってしまう。
【0016】
スラブの破断強さは、その厚さの二乗で変化する。したがって、180/400≒0.20であるので、厚さ180μmの剪断モード圧電要素は、厚さ400μmの圧力モードピエゾを破壊するのに必要な力の、およそ1/5で壊れてしまうことになる。結果として、5MHzの圧力モードPZT圧電素子は、通常の圧電素子製造および変換器アセンブリでは十分な強度を有しているが、遥かに弱い5MHz剪断モードPZT圧電素子は、これらの目的には脆すぎることになる。したがって、ニオブ酸リチウム剪断モード圧電素子は、PZT要素より高価ではあるが、PZT要素より良好な強度特性を提供する。
【0017】
所与の周波数に対して、ニオブ酸リチウム圧電素子は、対応するPZT圧電素子より幾分厚くて強い。それにもかかわらず、5MHzの剪断モードのニオブ酸リチウム圧電素子は、なお、非常に脆い。さらに重要なことだが、単結晶ニオブ酸リチウムは、PZTおよびチタン酸鉛のような強誘電体セラミック製品より、高価な圧電材料である。加えて、PZTは、ニオブ酸リチウムより大きな圧電結合定数を有している。したがって、脆さの問題がなければ、タッチスクリーンアプリケーションにおいて、PZT剪断モード圧電素子は、ニオブ酸リチウム圧電素子より有益であろう。
【0018】
タッチスクリーンを備えたハンドヘルドコンピュータのための、新規アプリケーションが開発されたので、より小さなサイズの、より高い運転周波数での、したがって、より薄い圧電素子を備えた、より小さな音響タッチスクリーンのための市場機会が存在することになる。これは、圧力モードPZT圧電素子に対してさえ、脆さの問題を引き起こすことになる。
【0019】
音響タッチセンサプリケーションは、ディスプレイ正面に配置された、透明なタッチスクリーンに限定される必要はない。様々なサイズおよび形状の不透明なセンサを、企図することが可能である。例えば、ロボットのアプリケーションでは、衝突検出は、タッチセンサを伴うロボットの露出表面にタイルを張ることにより、提供可能であろう。薄いPZT圧電素子の脆さにより、こうした音響タッチセンサシステムに対する運転周波数の選択において、所望されない規制が必要となる。
【0020】
したがって、音響変換器、特に剪断モード変換器をより厚くして、結果的に、より長持ちすることができるよう、設計を改善することが非常に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の第1態様に従う、運転周波数を有する音響タッチセンサが提供されている。タッチセンサは、タッチスクリーン、タッチパッド、および接触を感知し得るロボット技術を含む(しかし、これらに限定されない)、接触を感知する能力を要する技術において使用可能である。音響センサは、透明または不透明な接触感知基板、および、例えば、ウェッジ、エッジ、またはグレーティング変換器として、動作可能な形で基板と結合された、少なくとも1つの圧電素子を含んでいる。圧電素子は、音響タッチセンサの運転周波数とほとんど等しい、高次の奇数共鳴周波数(例えば、3次、5次、7次など)により特徴付けられる。本発明は、必ずしも、それらの最も広い態様に限定されるわけではないが、高次の奇数共鳴周波数の使用により、圧電素子の厚さを増加させることが可能であり、それにより、その耐久性が増大することになる。
【0022】
圧電素子は、電気エネルギーを音響エネルギーへ変換する(逆もまた同様)、いかなるタイプの材料でも構成可能である。例えば、圧電素子は、チタンジルコン酸鉛(PZT)またはチタン酸鉛などのセラミック材料を含むことができる。また、圧電素子は、ニオブ酸リチウムなどの単結晶圧電材料も含むことができる。圧電素子は、タッチセンサ基板内で水平に偏波した音響剪断波(例えば、ラブ波、ゼロ次の水平偏波剪断(ZOHPS)波、または高次の水平偏波剪断(HOHPS)波)を送受信するために、剪断モード圧電素子として、または、タッチセンサ基板内で縦成分を伴う波(例えば、レイリーおよびラム波)を送受信するために、圧力モード圧電素子として動作可能である。しかしながら、タッチセンサの運転周波数に等しい基本共鳴周波数を有するように設計されている場合、これらのタイプの材料は、製造するには薄すぎることになるので、剪断モード圧電セラミック材料を用いる際には、高次の共鳴周波数を使用することにより、さらに重要な有益な効果がもたらされることになる。
【0023】
好適な実施例では、2つの音響変換器が存在する。圧電素子の1つは送信圧電素子であり、さらに他方は、接触を感知する基板へ動作可能な形で結合され、さらに、同様に運転周波数とほぼ等しい、高次の奇数共鳴周波数を示す受信圧電素子である。好適な実施例では、タッチセンサは、少なくとも1組の経路に沿って音波を送受信する、送受信アセンブリをさらに含んでいる。すでに議論した圧電素子を含む送受信アセンブリ内の圧電素子は、音響センサの運転周波数とほぼ等しい、高次の奇数共鳴周波数により特徴付けることができる。
【0024】
本発明の第2態様によれば、運転周波数を有するタッチセンサ上の、接触を感知する方法が提供されている。この方法は、基本波共鳴周波数、および、高次の共鳴周波数を有する音波を生成し、さらに音響基板を横切って音波を送信する、運転周波数と実質的に等しい、高次の共鳴周波数で動作するタッチセンサを提供することである。この方法は、基板からの音波を受信し、基板が触られたか否かを判定するために、それを高次の共鳴周波数で処理することをさらに含んでいる。音波は、水平に偏波した音響剪断波(例えば、ラブ波、ZOHPS波、またはHOHPS波)であってもよいし、または、縦成分を伴う波(例えば、レイリー波またはラム波)であってもよい。
【0025】
本発明の第3態様では、運転周波数を有する音響ベースシステムが提供されている。このシステムは、音響基板、および、基板へ動作可能な形で結合された圧電素子を含んでおり、圧電素子は運転周波数とほぼ等しい高次の奇数共鳴周波数を有している。このシステムは、タッチセンサに関して上述された多くの同じ特徴を有することが出来るが、これはタッチセンサ技術に限定されず、むしろ、表面に沿って伝搬する音波を送受信することが望ましい、他のタイプの技術へ適用可能である。
【0026】
本発明の第4態様によれば、運転周波数を有する音響基板を使用する方法が提供されている。この方法は、音響基板を提供すること、基本波共鳴周波数、および、高次の共鳴周波数を有する音波を生成し、音響基板を横切って音波を送信する、基本波共鳴周波数、および、実質的に運転周波数と等しい、高次の共鳴周波数で動作する、基板へ結合された圧電要素を含む変換器を提供することである。この方法は、基板からの音波を受信すること、および、高次の共鳴周波数で音波を処理することをさらに含んでいる。本方法は、タッチセンサ技術に限定されることなく、タッチセンサ方法に関して上述された多くの同じ特徴を有することが可能である。
【0027】
図面は、本発明の好適な実施例の設計およびユーティリティを示しており、同様の要素が共通の参照数字によって示されている。本発明の利点および目的をより良く理解するために、この好適な実施例を示した添付図面が参照されるべきである。しかしながら、図面は、本発明の1つの実施例のみを表しており、さらに、その範囲を限定するものとして考えられるべきではない。この仮出願により、本発明は、添付図面の使用を通して、追加的特異性により、および詳細に、記述され、かつ説明されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図3および図4を参照すると、ここでは本発明の好適な実施例に従って構成された、タッチスクリーンシステム100が説明されている。一般に、タッチスクリーンシステム100は、タッチスクリーン105(すなわち、透明な基板を備えたタッチセンサ)、コントローラ110、およびタッチスクリーン105とコントローラ110とを結合するリード線111を含んでいる。タッチスクリーン105およびコントローラ110は、組み合わせることにより、ディスプレイ装置115と連動して使用されるタッチスクリーンシステムを構成する。タッチスクリーンシステム100は運転周波数を有しており、さらに、1つ以上が接触の存在に変調された音響信号を、タッチスクリーン105を横切って送信することにより、タッチスクリーン105上での接触に応答するよう構成されている。コントローラ110は、接触が起こったタッチスクリーン105上の位置を特定するよう変調された信号を、順番に使用する。接触が有効であると、コントローラ110が識別した場合は、接触位置をホストコンピュータ(図示せず)に伝え、その後、ホストコンピュータは、例えばグラフィックスなどの適切な情報を、ディスプレイ装置115上に表示するために、対応するコンピュータ機能を実行する。
【0029】
ディスプレイ装置115は、観察者に適切な情報を表示する、いかなる装置の形式も採ることができる。例えば、図示された実施例では、ディスプレイ装置115は、陰極線管(CRT)の形式を採っており、表示される情報は、例えば、ユーザがオプションを選択可能なアイコン、またはメニュー、またはディレクトリなどのグラフィックスの場合がある。図示された実施例では、タッチスクリーン105は、ディスプレイ装置115上に前面板として取り付けられている。代替的に、タッチスクリーン105は、ディスプレイ装置115の以前から存在する前面板上に配置可能であり、または、タッチスクリーン105は、例えばタブレットなどのように、ディスプレイ装置115から離れて配置可能である。
【0030】
いかなるイベントであれ、グラフィックス、または他の情報は、タッチスクリーン105の特定領域を触る形式を取ることができるオペレータのコマンドに応じて、ディスプレイ装置115上のディスプレイを用いて命令可能である。代替的実施例では、グラフィックス、または他の情報の表示が必要ない時などは、ディスプレイ装置115を使用する必要はない。
【0031】
CRT前面板上、または別のパネル上に取り付けられているにせよ、タッチスクリーン105は、ユーザにより接触可能な表面130を備えた基板125、および、その基板表面130上へ配置された送受信アセンブリ120を含んでいる。表面130に触わる行為は、その接触により、若干の音波エネルギーを吸収させ、それにより、接触領域を通る表面波の伝搬に乱れを発生させる。この乱れは、基板表面130を覆う、目に見えないXYグレーティングを形成する、1つ以上の経路に沿って方向づけられた波動エネルギーの中断または減少(すなわち、波の振幅における一時的な下落)として明示される。こうした乱れの検出および解析は、接触領域のXおよびY座標を特定するのに役立ち、その情報は、順番に、コントローラ110からの出力を決定する。
【0032】
この目標に対して、コントローラ110は、音波エネルギーの乱れを誘発した接触が検出されると、電気信号へ変換され、さらに、コントローラ110へフィードバックし、接触位置は、乱れを誘発するために使用される接触圧力と同様に、コントローラ110により特定され、さらに、接触位置および接触圧力を示す情報を含む制御信号に変換されるよう、予め決められた手順で、送受信アセンブリ120を動作させる。その機能の実行に際して、コントローラは、実行されると、当該信号の制御および処理に必要なステップを実行する、ソフトウェアを含んでいる。しかしながら、コントローラはコンピュータを有している必要はないものの、ハードウェアまたはファームウェアにおいて完全に実行可能であることに留意しなければならない。
【0033】
送受信アセンブリ120は、1組の送信または入力変換器135(1)、135(2)、および、1組の受信または出力変換器135(3)、135(4)、および4つの反射アレイ140(1)〜(4)を含んでいる。送信変換器135(1)、135(2)、および受信変換器135(3)、135(4)の双方は、例えば、基板表面130への効率的な電気機械的結合を生じさせるアクリルなどの、より低速度材料のプリズムに取り付けられた、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛セラミック(また、チタン酸鉛セラミックも使用可能)などの適当な材料で構成された圧電変換器である。送信変換器135(1)、135(2)は、以下のタイプのいずれかの1つの波を送信するよう構成可能である:(1)ZOHPS波、およびHOHPS波、およびラブ波を含む、水平に偏波した剪断波;および、(2)レイリー状の波およびラム波を含む、縦成分を伴う音波。受信変換器135(3)、135(4)は、送信変換器135(1)、135(2)が送信するよう構成可能となる、いずれかのタイプの波を受信するよう構成可能である。図示された実施例では、変換器135は剪断モード変換器である。しかしながら、変換器135は、本発明により教示された原則から逸脱することなく、圧力モード変換器であってもよいことに留意すべきである。図4に示されたように、変換器135は異なる要素である。しかしながら、単一の変換器が、送信変換器および受信変換器の両方として機能可能であることに留意すべきである。変換器135の特定構造は、以下で詳細に説明される。
【0034】
送信変換器135(1)、135(2)は、音響信号が生成され、かつ基板表面130を横切って送信されるように、コントローラ110の制御の下で動作する。これは、リード線141(1)、141(2)を経由して、基板表面130を横切る信号を、順番に機械エネルギーへ変換する(音波のバースト)、それぞれの送信変換器135(1)、135(2)へ、電気入力ファイヤリング信号を印加することにより達成される。音波は、反射アレイ140(1)、140(2)を通って、軸145(1)、145(2)に沿って伝搬し、基板表面130の反対側にある反射アレイ140(3)、140(4)へ基板表面130を横切って反射される。その後、波は、反射アレイ140(3)、140(4)により、軸145(3)、145(4)に沿って、受信変換器135(3)、135(4)へ反射され、リード線141(3)、141(4)を経由して、接触情報を含む出力信号として電気エネルギーへ逆変換される。位置特性は、基板表面130内での既知の音波の速度および経路、波の開始時間、および波内の乱れが受信変換器135(3)、135(4)のいずれかに到達した時間を用いて決定される。
【0035】
今しがた説明した方法では、図4に表されたように、表面130には、予め決められた経路に閉じ込められる音響表面波のバーストの交差経路の多様性を含む、目に見えない覆われたグレーティングが提供されている。一方の一連の経路pは、接触のY座標情報を提供するよう、ディスプレイ面130の垂直または短軸に平行に配置され、一方、第2の一連の交差経路pは、接触のX座標情報を提供するよう、表面130の水平または長軸に平行に配置されている。タッチスクリーン上の接触位置の座標を決定するこのアーキテクチャの使用に関するさらなる詳細は、米国特許第4,644,100号明細書(これは、参照により、すでに本願明細書に組み込まれている)で説明されている。
【0036】
上述されたように、また、当技術分野で周知であるように、反射アレイ140は、所望される運転周波数を決定するよう、入念に設計されなければならない。特に、反射アレイ140の反射要素の伝搬軸145に沿う間隔は、高精度に音響波長の整数倍でなければならない。タッチスクリーンの運転周波数は、反射アレイ140の検査、および音波速度の測定値から容易に決定される。
【0037】
基板表面130上の成分、および接触位置を決定するために、それらがどのように作動するかを説明したので、以下では、基板125自体の構造についての議論となる。基板125は、水平に偏波した様々な剪断波の1つ以上に対応するよう構成可能である。例えば、図5A〜図5Cは、3つのタイプの水平に偏波した剪断波を示している:それぞれ、ゼロ次の水平に偏波した剪段(ZOHPS)波、高次の水平に偏波した剪断(HOHPS)波、およびラブ波である。各場合とも、粒子運動は水平面内である。これらのタイプの剪断波は、その波動振幅深度プロフィールが異なっている。
【0038】
例えば、図5Aに示したZOHPSは、最低次の剪断平面波であり、その振幅は、深度に依存しない。このZOHPS波を用いるタッチスクリーンは、米国特許第5,177,327号明細書、および米国特許第5,329,070号明細書で説明されており、これらは、参照により、本願明細書に組み込まれる。レイリー波を利用する音響タッチスクリーンとは異なり、ZOHPS波タッチスクリーンは、接触表面が完全に水面下に没することを含んで、高レベルの水質汚染があるときでさえ、接触位置を適切に再現可能である。
【0039】
図5Bに示したHOHPS波は、n≧1の剪断平面波モードであり、ここで、nはゼロ振幅のノード平面の数である。図5Bでは、HOHPSは、深度に伴い正弦波的に変化する波の振幅を示しており、上面および底面の間に、ゼロ振幅の2つのノード平面(すなわち、n=2)を有している。5MHz付近の運転周波数では、モード分離問題により、ZOHPSの使用は、およそ1mmの厚さもないガラス基板に制限されている。他の運転周波数では、基板の最大厚みは、例えば、10MHzの運転周波数では、ほぼ1/2mmの厚さなど、選択された運転周波数において逆スケーリングされない。5MHz付近の運転周波数では、ZOHPSモードの代わりにHOHPSモードを使用することにより、タッチスクリーンの設計者は、ガラス基板の厚さを、少なくとも2mm〜3mmまで増加させることが可能で、さらに、モード混合問題も回避可能である。
【0040】
図5Cに示したラブ波は、基板の一方の表面での波動エネルギーより、他方の表面でのエネルギーが実質的に小さい、水平に偏波した剪断波である。レイリー波のように、ラブ波は、接触表面へ拘束され、さらに、深度に伴い指数関数の形で減衰する。しかしながら、レイリー波と異なり、ラブ波は、均質な媒体には存在しない。数学的には、ラブ波に対応する最も簡単な基板は、より速いバルク剪断波速度を示す、半無限媒体に接着された、有限の厚さの表層である。事実上、半無限媒体は、波の振幅の多くの指数減衰長を含み得る程度に厚いなら、有限の厚さを有する層であってもよい。例えば、図6に示す基板125は、(1)一般に、剪断波に対応する、硬く、かつ傷がつきにくい材料で構成された外部薄板150;(2)適当な重合体で構成された中間重合体シート155;および、(3)剪断波に対応する、低音響減衰を有する材料で構成された硬いプレート160、を含んでいる。これらの3つの層は、多層基板を形成する積層処理を使用して、一緒に接着される。
【0041】
ラブ波基板は、タッチスクリーンの運転周波数のための周波数の関数として、ラブ波グループ速度の低周波数分散を有するよう設計されるのが好ましい。ラブ波に対応する基板の製造に関するさらなる詳細は、参照により本願明細書に明白に組み込まれる、米国特許第5,329,070号明細書、および米国特許第5,591,954号明細書、および米国特許出願第09/972,788号で開示されている。
【0042】
音響基板125のために可能な様々な構造を考察したので、以下では、変換器135の構造について議論する。各変換器135は、圧電素子165を含み、基板125を通してラブ波を伝搬させるために、様々に構成可能である。図7A〜図7Cに示したように、例えば、変換器135は、ウェッジ、エッジ、またはグレーティング変換器として構成可能である。図7Aは、圧電素子165が取り付けられるウェッジ170を含むのでこう呼ばれているウェッジ変換器135(a)を示しており、ウェッジは、順番に基板表面130上に取り付けられている。電気信号が圧電素子165へ送られると、電気信号は、ウェッジ形のベース170を通して基板125へ伝搬される音波に変換され、その後、それは、矢印によって示されるように、基板125を通して水平に伝搬される。図7Bは、圧電素子165が基板125のエッジ175に取り付けられるので、こう呼ばれている、エッジ変換器135(b)を示している。電気信号が圧電素子165に送られると、電気信号は、矢印によって示されるように、基板125を通して水平に伝搬される音波に変換される。図7Cは、基板表面130に取り付けられたグレーティング180を含むので、こう呼ばれている、グレーティング変換器135(c)を示している。圧電素子165は、基板表面130の反対側の、基板125の他方の側部上に取り付けられている。電気信号が圧電素子165に送られると、電気信号は、基板125を通してグレーティング180へ伝搬されるバルク音波に変換され、その後、それは、矢印によって示されるように、基板125を通して水平に伝搬される。
【0043】
ここで図8を参照すると、以下では、変換器135は、ウェッジ変換器としてさらに詳細に説明される。ウェッジ170は、プラスチックで構成されているのが好ましく、さらに、斜辺側部185、および、ウェッジ勾配角θの反対側の側部190を含んでいる。圧電素子165は、ウェッジ170の反対側190に取り付けられる。変換器135は斜辺側部185で基板表面130に取り付けられる、すなわち、変換器135は、基板125へ動作可能な形で接続される。圧電素子165は、剪断波モード素子である。送信モードでは、圧電素子165は、ウェッジ170材料内へバルク剪断波を発する。ウェッジ角θは、標準の方法で、ウェッジ170材料のバルク剪断(すなわち、横向きの)波速V、およびラブ波位相速度Vに関連している:cos(θ)=V/V.この関係を示す非限定の例として、例えば、薄板150が厚さ100ミクロンのホウケイ酸ガラス、重合体板155が厚さ32ミクロンのポリスチレン板、およびプレート160が厚さ3mmのソーダ石灰ガラス板である、3層基板125の実施例を考える。この基板125内でのラブ波位相速度は、5.53MHzにおいておよそ3.13mm/μsecである。ウェッジ170材料内でのバルク剪断波速度は、この値より小さくなければならない。例えば、ダウプラスチックス(Dow Plastics)により製造された、Styron(登録商標)666ポリスチレンから構成されるウェッジ170は、およそ1.15mm/μsecの剪断波速度を有している。したがって、この基板125のための適当なウェッジ170は、θ≒Arccos[1.15/3.13]≒68°のウェッジ勾配角で構成されるべきである。
【0044】
上述のように、従来の剪断モード圧電素子は、通常、比較的高価であるが、強固なニオブ酸リチウムで製造されている。チタンジルコン酸鉛およびチタン酸鉛のような、さほど高価でないが、より脆いセラミック材料を使用可能となるように、圧電素子165は、その圧電素子165により生成された音波の高次の共鳴周波数うちの少なくとも1つ、好ましくは高次の奇数共鳴周波数のうちの1つ、さらに好ましくは3次の共鳴周波数が、実質的にシステム100の運転周波数と等しくなるように設計されている。次数が2n+1であるときは、圧電素子は、(2n+1)次調波ピエゾと呼ばれる。したがって、例えば、次数が3であるときは、圧電素子は3次調波ピエゾである。また、基本の、または最低の共鳴は、1次調波と呼ばれてもよい。これは、中央に全く運動しない、1つのノード平面を有している。本実施例で使用される共鳴は、3つのノード平面を有している。ノード平面の数は、共鳴の調波次数である。
【0045】
従来の剪断モード圧電変換器と、3次調波圧電変換器との違いは、図9Aおよび図9Bに示されている。図9Aは、基本の、または最低の共鳴周波数圧電素子(1次調波圧電素子として知られている)の深度に対する速度プロフィールを示しており、また、図9Bは3次調波圧電素子に対するプロフィールを示す。1次〜3次調波は、圧電素子の厚さの式を、T=(3λ)/2=(3V)/(2f)=(3N)/fに変更する。余分の3というファクターは、圧電変換器を遥かに厚くできることを意味し、それにより、より安いチタンジルコン酸鉛セラミックおよびチタン酸鉛セラミックが使用可能となる。
【0046】
電子的には、(2n+1)次調波の圧電素子は、電気的に直列接続された2n+1個の1次調波の圧電要素と同等なものとして考えることができる。換言すれば、調波次数は、また、高次調波の圧電要素を形成するために、概念的に互いの上に積み重ねられた、基本モードの圧電素子の数である。例えば、図9Cは、直列の3つの1次調波の圧電素子として、3次調波の圧電素子の場合を示している。3次調波の圧電変換器の中央の第3番目では、トーンバーストから印加された電場は、3次調波共鳴の所望の剪断運動を励起するために必要とされる位相から180°外れており、補助に代えて、変換器の残りからの剪断モード励振の半分の能動的キャンセレーションが存在することを示唆する。しかしながら、驚くべきことに、しかも以下で詳細述べられるように、PZTによりに製造された、こうした変換器の実績は、1次調波のニオブ酸リチウム圧電変換器よりもかなり良好である。
【0047】
議論が奇数次調波の圧電素子の動作に集中したので、当然ながら、調波次数が偶数であるとき何が起こるかという疑問を持つであろう。この場合、材料は、逆位相で励起される材料間の、厳密に50−50に分割され、したがって、印加された電子信号と剪断振動モードとの間には、いかなるネット電気機械的結合も存在しない。したがって、偶数次数の調波よりも、むしろ奇数次数の調波を使用するのが好適である。
【0048】
この現象の実績は、図10に示すように、テストシステム200を使用して実験的に証明されている。テストシステム200は、200μmのガラスの薄板210、および、その薄板210がその上に取り付けられた、32μmのポリスチレンフィルムの層215、および、そのポリスチレンフィルム215がその上に取り付けられた、厚さ3mmのガラス板220を有する、ラブ波に対応する3層基板205を含んでいる。このテストシステムは、2mm×14mmの長方形のジルコニウムチタニウム鉛(PZT)スラブで形成された圧電素子230、およびその圧電素子230がその上に取り付けられたウェッジ235さらに含んでいる。ウェッジ235は、アクリルで構成されており、基板205内で水平に伝搬するラブ波に対して、そのアクリル内のバルク剪断波の干渉性屈折に対応するように設計されたウェッジ角を有している。送受信圧電素子230は、ほぼ200mmだけ離れている。
【0049】
システム200を用いて、以下の実験が行われた。5.53MHzで5つの無線周波数(RF)サイクル長トーンバースト、および公称10Vの振幅は、50Ωの出力インピーダンスを伴う関数発生器により生成された。この信号は、変換器225(1)を励起させた。受信変換器225(2)は、50Ωの負荷インピーダンスに設定された、オシロスコープ入力へ接続された。ラブ波パルスによる信号は、以下のラブ波の吸収特性により特定された:水による影響を受けず、指による接触を感知し、ラミネート加工された基板の背面に接触するいかなる材料も感知せず、および既知のラブ波グループ速度と一致する遅延時間を有する。ラブ波信号の最大のピークトゥピーク電圧が測定された。以下に説明される測定では、観察される中で最も大きい振幅信号は、実際に、所望されるラブ波パルスであった。測定は、圧電素子230の3次調波共鳴周波数で実行された。
【0050】
比較のために、実験は、従来設計のニオブ酸リチウム圧電素子を、その基本的共鳴周波数で使用して行われた。結果は、図11の表に与えられている。この表に示されているように、3次調波PZT圧電素子を用いて構成された変換器の対から観察される信号だけでなく、従来の1次調波ニオブ酸リチウム圧電素子(47mV)のためのものより大きい(69mV)信号も存在した。したがって、電子的にさえ、3次調波PZT圧電素子は、ニオブ酸リチウム圧電素子への興味をそそる代替手段であり得る。したがって、システム100の運転周波数に等しい3次調波周波数を有する、PZTおよびチタン酸鉛セラミック圧電変換器は、剪断モード1次調波ニオブ酸リチウム圧電変換器よりも、安く、かつ効率的である。さらに、3次調波セラミック圧電素子は、1次調波セラミック圧電素子よりも厚く製造可能なので、過去において、セラミック要素上のニオブ酸リチウム要素の選択を導いた、脆さの問題は存在しない。
【0051】
図12および図13は、0MHz〜20MHzまで取られる、インピーダンスおよび位相の曲線の形式で、PZTおよびニオブ酸リチウム3次調波圧電素子の、それぞれの周波数応答を示している。曲線は、それぞれの圧電素子に対する、最初の5つの奇数次調波(すなわち、1次、3次、5次、7次、および9次)を示している。すでに議論したように、偶数調波に対するネットの電気機械的結合は存在しないので、偶数調波は、曲線上に示されていない。曲線から見てとれるように、次数が2n+1増加するにつれ、部分(事実上、印加された振動電圧へ結合された圧電素子材料の部分)は1/(2n+1)減少するので、高次奇数調波は次第に弱くなる。3次調波が運転周波数で十分な機械的強度を提供するときは、これは好適な調波である。さらなる機械的強度が必要な場合は、高次奇数調波が役立つ。例えば、5次および7次の共鳴周波数が、さらに厚くできる圧電変換器の製造に使用可能である。
【0052】
図13は、PZTおよびニオブ酸リチウム圧電素子の双方に対して、奇数調波が観測される周波数を詳細に説明している。この図から見てとれるように、2つのタイプの要素は、同じ動作を示しており、すなわち、奇数調波は、両方のタイプに対して本質的に同じ周波数で起こる。図12および図13の曲線は、2つのタイプの要素間の、重要な違いを示している。4.61MHzでは、ニオブ酸リチウム圧電素子は、垂直なスパイクとして、図13のニオブ酸リチウムインピーダンス曲線で表される、所望される剪断方向に対して垂直な剪断運動を示している。わずかに低い周波数は、誤偏波を伴う剪断波のための、より遅い剪断波速度に起因している。また、1次調波用に設計されたニオブ酸リチウム圧電素子は、主な1次調波共鳴の僅かに下方に、こうした寄生的誤偏波モードを有している。この誤方向剪断共鳴は、図12のPZTインピーダンス曲線には存在しておらず、従って、ニオブ酸リチウム圧電素子と異なり、PZT圧電素子は、レイリー様寄生的モードを生成しないことを示している。したがって、実験観測により、従来のニオブ酸リチウム圧電素子より優れた、3次調波PZT剪断モード圧電素子の別の利点が明らかにされている:PZT圧電素子は、―3次調波が両方のタイプの要素で用いられるときでさえ―変換器の、縦成分を伴う音波への厄介な結合を排除する。
【0053】
現在の音響タッチスクリーン製品に標準的な、ほぼ5MHzの運転周波数に対する、3次調波圧電素子の使用は、剪断モード圧電素子に関連する脆さの問題を解決するものである。ハンドヘルドコンピュータアプリケーションでの、より小さなタッチスクリーンのための新興成長市場は、より高い運転周波数を用いるよう動機づけられており、その結果、圧力モードPZT圧電素子に対してさえ、脆さの問題を生じさせている。この理由で、3次調波圧力モード圧電素子の使用も、タッチスクリーン技術に適切である。
【0054】
上の議論は、音響タッチスクリーンシステム100に関する文脈で詳しく説明されてきたが、それは、音響ベースのシステムのより一般的な設定にも適用される。これには、他のタイプのタッチセンサ(例えば、不透明タッチパッド、または接触感知ロボットシェルなど)、または、表面に沿って伝搬する音波を送受信することが所望されるあらゆる超音波装置も含まれる。非破壊テストアプリケーションと同様に、感知表面を備えた様々なセンサが、推測可能である。実際、音響タッチスクリーンシステム100は、音響ベースシステムの特別なケースであるに過ぎず、そこにおいては、音響基板125は、タッチスクリーン105で作動するよう明確に設計されている。したがって、この議論は、その最も広い態様において、より一般的な設定での適用として考察されるべきである。
【0055】
本発明の特定の実施例が示され、さらに説明されてきたが、上の議論は、本発明をこれらの実施例に限定することを意図するものではないと理解されるべきである。当技術分野の通常の技術者であるなら、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更と修正が実行可能であることを理解するであろう。したがって、本発明は、請求項により定義されたように、本発明の趣旨および範囲内に含まれる代替物、変更物、および同等物をカバーすることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1A】従来技術の圧力モード圧電素子に対する、圧電素子振動の時間系列である。
【図1B】従来技術の剪断モード圧電素子に対する、圧電素子振動の時間系列である。
【図2】最低次の共鳴で励起された、典型的圧電素子に対する速度対深度の関係を示す図である。
【図3】本発明の1つの実施例に従って構成された、音響タッチスクリーンシステムを示す図である。
【図4】図3のシステムで使用する、タッチセンサの平面図である。
【図5A】図4のタッチセンサで使用する基板などの、タッチスクリーン基板を通して伝搬可能な、あるタイプの水平に偏波した剪断波を示す図である。
【図5B】図4のタッチセンサで使用する基板などの、タッチスクリーン基板を通して伝搬可能な、他のタイプの水平に偏波した剪断波を示す図である。
【図5C】図4のタッチセンサで使用する基板などの、タッチスクリーン基板を通して伝搬可能な、さらに他のタイプの水平に偏波した剪断波を示す図である。
【図6】図4のタッチセンサで使用する基板の、1つの好適な実施例の側面図である。
【図7A】図4のタッチセンサで使用する基板内部で、水平に偏波した剪断波を送受信するのに使用可能な、あるタイプの変換器を示す図である。
【図7B】図4のタッチセンサで使用する基板内部で、水平に偏波した剪断波を送受信するのに使用可能な、他のタイプの変換器を示す図である。
【図7C】図4のタッチセンサで使用する基板内部で、水平に偏波した剪断波を送受信するのに使用可能な、さらに他のタイプの変換器を示す図である。
【図8】図4のタッチセンサ内で使用される基板上に取り付けられた、3次調波変換器の、1つの好適な実施例の側面図である。
【図9A】図4のタッチセンサ内で使用される変換器内の、圧電素子の音響的動作を示す略図である。
【図9B】図4のタッチセンサ内で使用される変換器内の、圧電素子の音響的動作を示す略図である。
【図9C】図4のタッチセンサ内で使用される変換器内の、圧電素子の音響的動作を示す略図である。
【図10】図8の変換器の特性のテストに使用する、テストシステムの側面図である。
【図11】ニオブ酸リチウム1次調波圧電要素の動作を、図8の変換器の圧電素子の動作と比較した表である。
【図12】変換器の圧電要素が特にPZT材料で構成された、図8の変換器の周波数応答プロットである。
【図13】変換器の圧電要素が特にニオブ酸リチウム材料で構成された、図8の変換器の周波数応答プロットである。
【図14】図12および図13それぞれの変換器の、奇数に付番された調波における周波数の解説図である。
【符号の説明】
【0057】
100 タッチスクリーンシステム、105 タッチスクリーン、110 コントローラ、111 リード線、115 ディスプレイ装置、120 送受信アセンブリ、125 基板、130 基板表面、135 変換器、140 反射アレイ、145 伝搬軸。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転周波数を有するタッチセンサであって、
接触感知基板と、
基板へ操作可能な形で結合され、運転周波数とほぼ等しい、高次奇数共鳴周波数を含む音響変換器とを含んでいるタッチセンサ。
【請求項2】
高次共鳴周波数が、3次、5次、および7次の共鳴周波数で構成された周波数から選択される、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
音響変換器が、圧電素子を含んでいる、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
音響変換器が、剪断モード音響変換器である、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項5】
音響変換器が、基板内で水平に偏波した音響剪断波を送受信するよう構成される、請求項4に記載のタッチセンサ。
【請求項6】
剪断波が、ラブ波、ゼロ次水平偏波剪断(ZOHPS)波、または高次水平偏波剪断(HOHPS)波、またはその任意の組合せである、請求項5に記載のタッチセンサ。
【請求項7】
音響変換器が、圧力モード変換器である、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項8】
音響変換器が、基板内で縦成分を有する音波を送受信するよう構成されている、請求項7に記載のタッチセンサ。
【請求項9】
音波が、レイリー波、ラム波、またはその組合せである、請求項8に記載のタッチセンサ。
【請求項10】
少なくとも1組の平行な経路に沿って音波を送受信するための基板へ、動作可能な形で結合された、音響の送受信アセンブリをさらに含んでいる、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項11】
基板が、不透明である、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項12】
基板が、透明である、請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項13】
タッチセンサ上の接触を感知する方法であって、
音響変換器により、音響基板を横切って、音響変換器の、高次奇数共鳴周波数とほぼ等しい周波数を含んでいる音波を送信することと、
基板から音波を受信することと、
基板に触れたか否かを決定するために、高次奇数共鳴周波数で音波を処理することとを含んでいる方法。
【請求項14】
音響変換器が、圧電素子を含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
触られた基板上の位置を決定するために、高次奇数共鳴周波数で音波を処理することをさらに含んでいる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
運転周波数を有する音響ベースシステムであって、
表面を有し、さらに、表面に対して平行な音波を伝搬するよう構成された音響基板と、
運転周波数とほぼ等しい、高次奇数共鳴周波数により特徴付けられ、基板へ動作可能な形で結合される圧電素子とを含んでいる音響ベースシステム。
【請求項17】
高次共鳴周波数が、3次、5次、および7次の共鳴周波数で構成された周波数から選択される、請求項16に記載の音響ベースシステム。
【請求項18】
圧電素子が、剪断モード変換器である、請求項16に記載の音響ベースシステム。
【請求項19】
圧電素子が、基板における水平に偏波した音響剪断波を送受信するよう構成されている、請求項16に記載の音響ベースシステム。
【請求項20】
圧電素子が、圧力モード変換器である、請求項16に記載の音響ベースシステム。
【請求項21】
圧電素子が、基板内で縦成分を有する波を送受信するよう構成されている、請求項16に記載の音響ベースシステム。
【請求項22】
音響基板を使用する方法であって、
圧電素子により、音響基板の表面に平行に、圧電素子の、高次奇数共鳴周波数とほぼ等しい周波数を有する音波を送信することと、
基板から音波を受信することと、
高次奇数共鳴周波数で音波を処理することとを含んでいる方法。
【請求項23】
基板に触れたか否かを決定するために、音波が処理される、請求項22に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−524817(P2006−524817A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508839(P2006−508839)
【出願日】平成16年2月25日(2004.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/005694
【国際公開番号】WO2004/079559
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(399034633)エロ・タッチシステムズ・インコーポレイテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】Elo TouchSystems,Inc.
【Fターム(参考)】