説明

運転室のドア

【課題】高コスト化を招くことなく視界性を向上させることができる運転室のドアを提供する。
【解決手段】筐体1に乗降口5を開閉自在に覆って取り付けられて窓用開口12が形成されたドアパネル部材11と、窓用開口12の一端側を覆って固定して設けられる固定窓部材21と、窓用開口12の他端側を覆って固定窓部材22とともに窓用開口12の全面を閉塞する閉塞位置、および、固定窓部材11と内外に重なって窓用開口12の他端側の一部を開放させる開放位置の間を移動自在に設けられた可動窓部材22と、ドアパネル部材11を開閉操作するための操作部材30とからドア10を構成している。そして、操作部材30を固定窓部材21に取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に運転室を形成する筐体に取り付けられ、筐体に形成された乗降口を開閉する運転室のドアに関する。特に詳細には、乗降口を開閉自在に取り付けられるドアパネルに形成された窓用開口に開閉窓を設ける形態の運転室のドアに関する。
【背景技術】
【0002】
図10にこのような運転室のドアの従来形態を示している。このドア110は、運転室104を形成するキャビン(筐体)101の乗降口105を覆う金属製のドアパネル111に矩形状の窓用開口112を形成し、上下に2枚のガラス板121,122を保持したサッシ123を窓用開口112の内縁に沿って取り付けて構成されている。サッシ123は、下部ガラス板(固定窓部材)121を固定保持しているとともに上部ガラス板(可動窓部材)122を上下移動自在に保持しており、両ガラス板121,122およびサッシ123は、窓用開口112の上部を開閉可能な開閉窓120を構成している。このように金属製のドアパネル111に透明のガラス板121,122が組み付けられると、運転室104内に搭乗した運転者はドア越しに外部を視認可能になる。また、ドア110には、ドアパネル111の開閉操作を行わせるためのハンドル機構(操作部材)130が設けられる。このようなドアは、例えば特許文献1に開示されており、建設機械や農業用機械などに供される。
【0003】
【特許文献1】特開平4−353129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建設機械や農業用機械においては運転室104内から外部への視界が全周的に開かれていることが望まれる。また、ドア110に開閉窓120が備えられるときには、機能上、窓を開けたときの窓用開口112の開放面積ができる限り大きくなるように設定されることが好ましい。この開放面積は、窓用開口112の幅(上部ガラス板122の移動方向に対して直交する方向の長さ)A′と、上部ガラス板122の上下移動可能量B′とにより規定される。しかしながら、従来の形態では、ハンドル機構130が、ドアパネル111において窓用開口112の幅方向外側を上下に延びる柱部113に取り付けられていた。このため、金属材で成形される部位である柱部113には、少なくともハンドル機構130の取付部位周辺において、ハンドル機構130の取り付けに必要なスペース(幅C′)が確保されていた。
【0005】
ここで、図10に示すように、窓用開口112を単純な矩形状に形成して開閉窓120の構造の簡素化を図ると、柱部113の幅C′が上下に渡って大きくなり、窓用開口112の幅A′がその分小さくなる。したがって、柱部113が邪魔になり、運転室104内から外部への視界に死角が増えるおそれがある。
【0006】
また、柱部113に対してハンドル機構130の取付部位周辺のみ取り付けに必要な幅C′を確保し、ハンドル機構130を取り囲うように窓用開口112′(図10二点鎖線参照)を形成すると、窓用開口112′の幅が部分的に広がって視界が開かれる一方、サッシやガラス板を複雑な形状に成形しなければならず、開閉窓の加工作業や組付作業が煩雑になって高コスト化を招くおそれがある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、高コスト化を招くことなく視界性を向上させることができる運転室のドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的達成のため、本発明に係る運転室のドアは、内部に運転室を形成する筐体に取り付けられ、筐体に形成されて運転室の内部と外部を連通させる乗降口を覆って開閉する運転室のドアであって、筐体に乗降口を開閉自在に覆って取り付けられて略矩形状の窓用開口が形成されたドアパネル部材と、窓用開口の一端側を覆って固定して設けられる固定窓部材と、窓用開口の他端側を覆って固定窓部材とともに窓用開口の全面を閉塞する閉塞位置、および、固定窓部材と内外に重なって窓用開口の他端側の一部を開放させる開放位置の間を移動自在に設けられた可動窓部材と、ドアパネル部材を開閉操作するための操作部材とから構成しており、さらに、操作部材を固定窓部材に取り付けている。
【0009】
また、可動窓部材が閉塞位置にあるときにおいて可動窓部材の一端辺縁から可動窓部材の移動方向に所定間隔だけ離れた位置に操作部材を配置し、可動窓部材から、可動窓部材の一端部のうち操作部材と移動方向に対向する部分を切り欠き、可動窓部材に切り欠かれた領域の輪郭の一部をなして一端辺縁に繋がる切欠辺縁を設け、可動窓部材が開放位置にあるときに切欠辺縁を操作部材に近接対向させ、可動窓部材の移動可能量が上記所定間隔よりも長く設定することが好ましい。このとき、固定窓部材の他端部のうち、可動窓部材の切欠辺縁と移動方向に対向する部分に、可動窓部材が閉塞位置にあるときに切欠辺縁に重なる延出辺縁を設けることが好ましい。さらに、切欠辺縁を操作部材の外形輪郭に整合させる形状に形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る運転室のドアによると、操作部材が固定窓部材に取り付けられるため、ドアパネル部材において窓用開口の外部に確保する必要のあったスペースを縮小することができる。これに伴って、窓用開口の面積を大きくすることができ、運転室内から外部への視界性を向上させることができる。このように、窓用開口の形状を従来形態のように複雑にしなくても視界性が向上されるため、固定窓部材や可動窓部材を単純な形状に形成することができるようになり、加工作業や組付作業が簡単に行われて高コスト化を抑えることができる。
【0011】
また、可動窓部材が閉塞位置にあるときにおいて可動窓部材の一端辺縁から可動窓部材の移動方向に所定間隔だけ離れた位置に操作部材を配置し、可動窓部材から、可動窓部材の一端部のうち操作部材と移動方向に対向する部分を切り欠き、可動窓部材に切り欠かれた領域の輪郭の一部をなして一端辺縁に繋がる切欠辺縁を設け、可動窓部材が開放位置にあるときに切欠辺縁を操作部材に近接対向させると、可動窓部材の下端辺縁が操作部材に干渉させずに操作部材の上端よりも下方まで移動させることができるようになる。すなわち、可動窓部材が開放位置にあるときの窓用開口の開放面積をより大きく確保することができるようになる。
【0012】
このとき、固定窓部材の他端部のうち、可動窓部材の切欠辺縁と移動方向に対向する部分に、可動窓部材が閉塞位置にあるときに切欠辺縁に重なる延出辺縁を設けることにより、可動窓部材が閉塞位置にあるときに可動窓部材から切り欠かれた領域に対応する部分が閉塞され、窓用開口の全面を閉塞することができる。
【0013】
このとき、可動窓部材から切り欠かれた領域が無用に大きい場合には、可動窓部材が開放位置にあるときに、可動窓部材の他端辺縁から固定窓部材の延出辺縁の突出量が大きくなり、窓用開口の開口面積が小さくなるおそれがある。ここで、切欠辺縁を操作部材の外形輪郭に沿う形状に形成することにより、閉塞位置から開放位置までの上下移動可能量を確保したままで切り欠かれた領域をコンパクトにすることができる。これに伴って延出辺縁の突出量を小さくすることができるため、開放位置にあるときの窓用開口の開放面積をより大きく確保することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1に、第1構成例のドア10を設けたミニショベル50の左側面図を示しており、以降では、図中の矢印U、矢印Fおよび矢印Lの方向をそれぞれ上方、前方および左方として説明している。ミニショベル50は、車体51上に旋回台52を有し、旋回台52上にキャビン1およびエンジン54を有して構成されている。旋回台52は車体51に対して水平旋回可能に設けられ、また、キャビン1の前部には屈伸動可能な作業機55が枢結されている。
【0015】
図2に示すように、キャビン1は、金属材から成形されて前後および右側部に開口を形成するフレーム2と、ガラス等から成形されてこれらの開口を覆って取り付けられる複数の透明パネル3とから構成されており、内部に運転室4を形成する。さらに、フレーム2により形成される左側部の開口が乗降口5になっている。キャビン1には、この乗降口5を開閉するドア10が取り付けられる。ドア10は、外形が乗降口5に整合する形状に成形された金属製のドアパネル11と、ドアパネル11に形成された窓用開口12を開閉する開閉窓20と、ドアパネル11の開閉操作を行うためのハンドル機構30とを有して構成されている。
【0016】
ドアパネル11は、上下に離間して前後に平行に延びる上端辺縁11aおよび下端辺縁11bと、前後に離間して上下に平行に延びる前端辺縁11cおよび後端辺縁11dと、下端辺縁11bから後端辺縁11dに向けて上後方に延びる下後端斜辺縁11eとを有し、このドアパネル11の辺縁に沿って窓用開口12が形成されている。このため、ドアパネル11は枠状になっており、ドアパネル11における窓用開口12の外部領域には、前端辺縁11cおよび窓用開口12の前端内縁12cの間を上下に延びる前端柱部11hと、後端辺縁11dおよび窓用開口12の後端内縁12dの間を上下に延びる後端柱部11iとが形成されている。ドアパネル11は、後端柱部11iを上下のヒンジ機構15,15を介してフレーム2に揺動自在に連結することにより、キャビン1に対して乗降口5を開閉自在に覆って取り付けられる。
【0017】
開閉窓20は、窓用開口12の内縁に沿って取り付けられる枠状のサッシ23と、それぞれサッシ23に保持されてサッシ23の枠内に設けられた固定ガラス板21および可動ガラス板22とからなる。
【0018】
サッシ23は、窓用開口12の内縁に当接させてビス締結等の固定手段によりドアパネル11に固定される。図3に示すように、固定ガラス板21は、サッシ23の枠内下部にゴムシール26aを介して固定されて保持されており、窓用開口12の下部を常に閉塞するように配設されている。可動ガラス板22は、固定ガラス板21に対して上方且つ運転室4に対して外側(左側)に配置され、サッシ23の枠内上部にグラスランチャンネルシール26bを介して保持されて上下にスライド移動自在に配設されている。以降では、このように矢印Lにより規定された左右方向を、運転室4に対する内外方向として説明することもある。サッシ23の前枠体23cと後枠体23dは、可動ガラス板22のスライド移動を案内するために上下に平行に延びており、また、固定ガラス板21を保持する内側レール23hと、可動ガラス板22を保持する外側レール23iとが、内外に並んで設けられている。この内側レール23hには、固定ガラス板21に上方から当接させて規制部材24aが設けられており、固定ガラス板21の上下移動が規制されるようになっている。また、外側レール23iにも同様に規制部材24bが設けられ、可動ガラス板22の下端が載置支持されることによって可動ガラス板22の下方への移動が規制されるようになっている。
【0019】
このように、可動ガラス板22は、上端辺縁22aを上枠体23aに収容させた閉塞位置(図2実線参照)と、下端が規制部材24bに支持されて下方への移動が規制された開放位置(図2二点鎖線参照)との間で、サッシ23の枠内を内側レール23i,23iに沿って上下にスライド移動自在になっている。可動ガラス板22が閉塞位置にあるときには、可動ガラス板22の下端部と固定ガラス板21の上端部とが内外に重なり、可動ガラス板22が窓用開口12の上部を閉塞し、両ガラス板21,22が窓用開口12の全面を閉塞する。
【0020】
開閉窓20には、可動ガラス板22の上端辺縁22aが前枠体23aに収容された状態(可動ガラス板22が閉塞位置にある状態)を保持するための窓開閉機構25が備えられている。この窓閉塞機構25は、従来知られるものであり、例えば可動ガラス板22の運転室内側面の上端部であって前後中央部に取り付けられたフックと、ドアパネル11の上端に取り付けられて被係止具とから構成され、運転室4内でフックの係止および解除操作を行わせることができるようになっている。
【0021】
また、可動ガラス板22が開放位置にあるときには、可動ガラス板22の上端辺縁22aが上枠体23aから離間して窓用開口12の上部が開放される。可動ガラス板22が開放位置にあるときにおける窓用開口12の開放部分の上下長さBは、可動ガラス板22の上端辺縁22aが固定ガラス板21の上端辺縁21aよりも上方に位置している限りにおいて、可動ガラス板22の上下移動可能量(閉塞位置から開放位置までの移動量)にほぼ等しくなる。
【0022】
また、ハンドル機構30は、ヒンジ機構15,15に対して逆側(すなわち、ドア10の前部)に配設され、固定ガラス板21の前端部に取り付けられている。固定ガラス板21の前端部には、図6に示すようにハンドル機構30を取り付けるための複数の取付孔21eが形成されている。
【0023】
図4,図5に示すように、ハンドル機構30は、固定ガラス板21の外面に取り付けられる外側リテーナ31と、固定ガラス板21の内面に取り付けられる内側リテーナ32とから構成される。また、外側リテーナ31と固定ガラス板21の間には、外側パッキン33が介設され、内側リテーナ32と固定ガラス板21の間には、内側パッキン34が介設される。外側リテーナ31、内側リテーナ32、外側パッキン33および内側パッキン34は略矩形平板状に形成されている。外側リテーナ31には、固定ガラス板21に取り付けられたときに内側に延びる複数のボス部31aが形成され、外側パッキン33、内側パッキン34および内側リテーナ32には、ボス部31aと対向される位置に取付孔32a,33a,34aが形成されている。また、内側リテーナ32には、開閉レバー41、ロッド連結レバー42、ドア閉用ロック43、ドア開用ロック44、ロッド45,46、ドア開閉操作用室内ハンドル47、ロック解除用室内レバー48からなるロック機構40が取り付けられており、このロック機構40がハンドル機構30に対して一体に構成されている。
【0024】
ハンドル機構30の組付時には、まず、外側リテーナ31のボス部31aを外側パッキン33の取付孔33aに挿入するとともに、ボス部31aに円筒状のスペーサ35を挿入する。そして、外周側にスペーサ35を嵌合させたボス部31aを固定ガラス板21の取付孔21eに挿入し、ボス部31aを内側パッキン34の取付孔34aに挿入するとともに、内側リテーナ32を内側パッキン34に当接させた状態にして取付孔32aからボルト36をボス部31aに螺挿する。これにより、外側リテーナ31および外側パッキン32の組と、内側リテーナ33および内側パッキン34の組とが締結固定される。そして、外側開閉ハンドル49が、固定ガラス板21に取り付けられた外側リテーナ31に取り付けられる。この外側開閉ハンドル49により、開閉レバー41を作動操作することができ、これにより、ドア閉用ロック43およびドア開用ロック44のロック操作を行うことができるように構成されている。
【0025】
なお、外側パッキン33、内側パッキン34およびスペーサ35は、ゴム材や樹脂材等から成形されている。このため、ボス部31aにボルトを螺挿することにより外側リテーナ31および内側リテーナ32が固定ガラス板21を介して締結される構造であっても、固定ガラス板21が保護されて損傷が生じない。
【0026】
このようにハンドル機構30が、窓用開口12を閉塞して設けられる固定ガラス板21に取り付けられると、ドアパネル11において窓用開口12に対して前方の外部領域をなす前端柱部11hの前後幅Cは、強度上最低限の幅が確保されていればよくなり、従来形態のようにハンドル機構30に係るレイアウト上の制約がなくなる。
【0027】
このため、図10に示す従来の形態と比べるとわかるように、本構成例では、前端柱部11hの前後幅Cをより短く設定しており、窓用開口12をその分前方に拡大させて前後幅Aをより大きく設定している。したがって、運転室2内から左方外部への視界性を向上させることができる。また、窓用開口12やサッシ23を前端柱部11hに設けられたハンドル機構30を取り囲うように凹んだ部分を有した複雑な形状に成形せず、上記のように単純な形状に形成して簡単に視界を確保することができるようになり、開閉窓20の加工や組み付けが簡単になってドア10の高コスト化を避けることができる。
【0028】
なお、本構成例では、固定ガラス板21の内外にハンドル機構30の構成部材が取り付けられるため、可動ガラス板22は、下端部をハンドル機構30の構成部材と干渉させないように開放位置が設定されている必要がある。すなわち、可動ガラス板22の上下移動可能量は、可動ガラス板22が閉塞位置にあるときにおける下端辺縁22bとハンドル機構30の上端との上下間隔Dの制約を受けるおそれがある。また、本構成例では、固定ガラス板21が可動ガラス板22に対して内側に配設されるとともに可動ガラス板22の運転室内側面に窓閉塞機構25の構成部材が取り付けられるため、可動ガラス板22は、窓閉塞機構25の構成部材を固定ガラス板21の上端辺縁21aと干渉させないように開放位置が設定されている必要がある。
【0029】
ここで、図2,図6に示すように、可動ガラス板22は、ハンドル機構30と上下に対向する下端部かつ前端部が切り欠かれており、下端辺縁22bおよび前端辺縁22cに繋がって切り欠かれた領域22Aの輪郭の一部をなす切欠辺縁22Bを有している。本構成例では、可動ガラス板22から切り欠かれた領域22Aの形状が三角形になっており、切欠辺縁22Bが前端辺縁22cから下端辺縁22bに向けて斜め下後方に延びている。
【0030】
固定ガラス板21は、可動ガラス板22における切り欠かれた領域22Aに対応する部分と上下に対向する上端部かつ前端部に、上方に延出する延出部21Aを有しており、上端辺縁21aおよび前端辺縁21cに繋がって延出部21Aの輪郭をなす延出辺縁21Bを有している。延出部21Aは、可動ガラス板22から切り欠かれた領域22Aに対応する形状に形成される。本構成例では、延出部21Aが三角形状に形成され、延出辺縁21Bが、前端辺縁21cを上端辺縁21aに対してさらに上方に延長させた延長辺縁21Baと、延長辺縁21Baの上端から斜め下後方に延びて上端辺縁21aに繋がる斜辺縁21Bbとからなる。
【0031】
可動ガラス板22が閉塞位置にあるときには、固定ガラス板21の上端辺縁21aと可動ガラス板22の下端辺縁22bとが内外に重ねられ、固定ガラス板21の延出部21Aにより可動ガラス板22から切り欠かれた領域22Aに対応する部分が閉塞されて可動ガラス板22の切欠辺縁21Bと固定ガラス板21の斜辺縁21Bbとが内外に重ねられる。なお、可動ガラス板22が閉塞位置にあるときに雨水等が運転室2内に侵入しないように、可動ガラス板22の下端辺縁22bおよび切欠辺縁22Bには、ゴム材等からなるシール部材24が下側から嵌合して取り付けられており、固定ガラス板21との間に内外方向に形成される隙間がこのシール材26で閉塞される。
【0032】
可動ガラス板22が開放位置にあるときには、切欠辺縁22Bがハンドル機構30に近接対向される。なお、切欠辺縁22Bの下端かつ後端(すなわち、下端辺縁22bの前端、切り欠かれた領域22Aの下端かつ後端)がハンドル機構30の外形輪郭後端に対して後方に位置しているため、このように切欠辺縁22Bを近接させることによって、可動ガラス板22の下端辺縁22bをハンドル機構30の上端に対して下方に位置させることができ、ハンドル機構30の一部が可動ガラス板22から切り欠かれた領域22Aに対応する部分に重ねられる。したがって、下端辺縁22bがハンドル機構30と干渉することなくハンドル機構30の上端よりも下方に移動させることができ、可動ガラス板22の上下移動可能量Bが上下間隔Dよりも大きく設定される。
【0033】
また、このとき、可動ガラス板22の上端辺縁22aは、固定ガラス板21に形成された延出部21Aの上端部に対して下方に位置しており、固定ガラス板21の上端辺縁21aに対して所定長さEだけ上方に位置している。そして、可動ガラス板22の上端部において前後中央部に取り付けられる窓閉塞機構25の構成部材も、前端部に形成された延出部21Aの上端に対して下方に位置し、固定ガラス板21の上端辺縁21aに近接対向される。
【0034】
このように、可動ガラス板22においてハンドル機構30と上下に対向する部分を切り欠き、可動ガラス板22を開放位置に位置させるときに切欠辺縁22Bをハンドル機構30に近接対向させることにより、下端辺縁22bをハンドル機構30と干渉せることなくハンドル機構30の上端よりも下方に移動させることができる。これにより、固定ガラス板21にハンドル機構30を取り付ける形態において、可動ガラス板22の上下移動可能量Bをより大きく確保することができ、可動ガラス板22が開放位置にあるときにおける窓用開口12の開放部分の面積をより大きく確保することができる。
【0035】
また、可動ガラス板22が閉塞位置にあるときには、可動ガラス22から切り欠かれた領域22Aに対応する部分を閉塞させる必要がある。このように切り欠かれた領域22Aに対応する部分を閉塞するために固定ガラス板21に延出部21Aを形成し、この延出部21Aが固定ガラス板21に切り欠かれた領域22Aに対応する部分の形状になっている。これにより、可動ガラス板22が開放位置にあるときには、可動ガラス板22の上端辺縁22aから上方に突出する部分の面積を極力小さくすることができ、可動ガラス板22が開放位置にあるときにおける窓用開口12の開放部分の面積をより大きく確保することができるようになる。
【0036】
また、可動ガラス板22の切り欠かれた領域を閉塞するために延出部22Aを形成しているが、窓閉塞機構25がこの延出部21Aとの対向位置からオフセットされた前後中央部に取り付けられているため、窓閉塞機構25の構成部材を延出部21Aとの干渉を避けて可動ガラス板22を下方に移動させることができ、上下移動可能量Bを大きく確保することができる。なお、延出部21Aが固定ガラス板22の前端部から上方に延出されているため、可動ガラス板22を開放位置に位置させたときに延出部21Aが可動ガラス板22の上端辺縁22aから上方に突出されても、運転者にとって危険にならず問題なく実用に供することができる。
【0037】
次に、図7を参照して第2実施例のドア210について説明するが、上記の第1構成例と同一の部材については同一の符号を付して重複説明を省略する。本構成例のドア210は、乗降口がキャビンの右側部に形成されており、この乗降口およびドアパネル211の下部221Aが前方に屈曲された形状になっている。窓用開口212はドアパネル211の辺縁に沿った形状に形成され、ドアパネル211は枠状になっている。また、開閉窓220を構成するサッシ223は、この窓用開口212の内縁に沿って取り付けられている。固定ガラス板221は、サッシ223の枠内下部に固定して保持され、可動ガラス板222は、サッシ223の枠内上部に上下にスライド移動自在に保持されている。可動ガラス板222を上下にスライドさせるため、サッシ223の前枠体223cと後枠体223dは、上下に平行に延びている。
【0038】
上記の通り、ドアパネル211、窓用開口212およびサッシ223は、下部が前方に屈曲されており、ハンドル機構30は、固定ガラス221において可動ガラス板222のスライド移動を案内する前枠体223cの下方に位置して設けられている。可動ガラス板222には、ハンドル機構30と上下に対向される下端部かつ前端部が切り欠かれており、前方に向かうにしたがって上方への切り欠き量が大きくなっている。また、固定ガラス板221には、可動ガラス板222が閉塞位置にあるときに切り欠かれた領域を閉塞するための延出部221Aが設けられている。
【0039】
このように構成されるため、可動ガラス板222が開放位置に位置した場合、可動ガラス板222の下端部のうち、切り欠き量の大きい前端部をハンドル機構30に近接対向させることができる。このため、可動ガラス板222の下端辺縁222bをハンドル機構30の上端に対してより大きく下方に移動させることができ、第1構成例と比べて、上下間隔Dと上下移動可能量Bの差をより大きくとることができる。
【0040】
なお、可動ガラス板222の下方への移動を規制する規制部材は、所定位置で可動ガラス板222の移動を規制することができればどのようにして設けられていてもよく、本構成例の規制部材224bのように、固定ガラス板221の外側面に取り付けてもよい。なお、可動ガラス板222は、後端部が切り欠かれている。これは、サッシ223の下部が前方に屈曲される形態において、前端部の切り欠き辺縁222Bをハンドル機構30に対向させるためにサッシの屈曲部分まで下方に移動させたときに、前端部とサッシとの干渉を避けるためである。結果、固定ガラス板21の上端部はU字状になっており、前後中央部が凹んでいる。可動ガラス板22が開放位置にあるとき、窓閉塞機構25の構成部材は、この凹んだ部分に近接対向され、延出部221Aの上端よりも下方に位置している。このため、窓閉塞機構25の構成部材をより下方に位置させることができるようになり、可動ガラス板222の上下移動可能量を大きく確保することができる。
【0041】
次に、図8を参照して第3構成例のドア310について説明する。本構成例のドア310は、窓用開口312の前後幅A、ドアパネル311の外形形状は第1構成例と同様であるが、窓用開口312を矩形状にしており、これに合わせてサッシ223が矩形枠状に成形されている。なお、窓閉塞機構25およびハンドル機構30の取付位置は第1構成例と同様になっているとともに、可動ガラス板22の下端部、固定ガラス板321の上端部には、第1構成例と同様に切欠辺縁22A、延出部21Aおよび延出辺縁21Bが形成され、可動ガラス板22の上下移動可能量も第1構成例と同様になっている。すなわち、可動ガラス板22が開放位置にあるとき、可動ガラス板22の切欠辺縁22Aがハンドル機構30に近接対向されるとともに、窓閉塞機構25の構成部材が固定ガラス板22の延出部21Aよりも下方に位置されている。このように窓用開口312を形成することにより、開閉窓320を構成する部材の加工や組み付けがより簡単になり、コストをさらに低減することができる。
【0042】
次に、図9を参照して第4構成例のドア410について説明する。本構成例のドア410は、ドアパネル311、窓用開口312、サッシ323、窓開閉機構25およびハンドル機構30が第3構成例と同様である。なお、固定ガラス板421および可動ガラス板422も、上端辺縁421a,422aから下端辺縁421b,422bまでの長さは、第3構成例と同様に設定されている。
【0043】
本構成例では、可動ガラス板422から切り欠かれた領域422Aの形状が台形状になっており、切欠辺縁422Bが、下端辺縁421bから斜め下後方に延びる斜辺縁421Baと、斜辺縁421Baから前方に上端辺縁422aおよび下端辺縁422bと平行に延びるオフセット辺縁422Bbとからなる。このオフセット辺縁422Bbは、ハンドル機構30の外形輪郭の上部に沿った形状になっている。また、本構成例の下端辺縁422bから前端辺縁422cの下端部までの長さは、第1,第3構成例よりも短くなっている。なお、斜辺縁421Bbの下端かつ後端は、第1,第3構成例の切欠辺縁422Bの下端かつ後端と同位置にあり、斜辺縁421Baの勾配は、第1,第3構成例の切欠辺縁22Bの勾配と等しくなっている。
【0044】
また、固定ガラス板421の延出部421Aも台形状に形成され、延出辺縁421Bは、前端辺縁421cを上端辺縁421aに対してさらに上方に延長させた延長辺縁421Baと、延長辺縁421Baの上端から後方に上端辺縁421aと平行に延びるオフセット辺縁421Bbと、オフセット辺縁421Bbの後端から斜め下後方に延びて上端辺縁421aに繋がる斜辺縁421Bcとからなる。上端辺縁421bから延長辺縁421Baの上端までの長さは、第1構成例において説明した所定長さEに設定されており、第1,第3構成例よりも短くなっている。
【0045】
可動ガラス板421が閉塞位置にあるときには、固定ガラス板421の上端辺縁421a、斜辺縁421Bcおよびオフセット辺縁421Bbと、可動ガラス板422の下端辺縁422b、斜辺縁422Baおよびオフセット辺縁422Bbとが内外に重なるが、重なっている部分の上下長さδは、前後に渡って均一で第1,第3構成例と等しい。
【0046】
また、本構成例の可動ガラス板421の上下移動可能量Bは、斜辺縁421Bbの下端かつ後端が切欠辺縁422Bの下端かつ後端と同位置にあって、斜辺縁421Baの勾配が切欠辺縁422Bの勾配と等しいため、第3構成例と等しく設定されており、可動ガラス板421が開放位置にあるときに窓用開口312の開放部分の上下移動可能量は第1,第3構成例と等しくなる。なお、可動ガラス板421の切欠辺縁422Bは、ハンドル機構30の外形輪郭に沿った形状になっており、可動ガラス板421が開放位置にあるときに、オフセット辺縁422Bbがハンドル機構30の外形輪郭の上端部に沿って近接対向される。
【0047】
このように可動ガラス板421が開放位置にあるときには、第1構成例と同様に、可動ガラス板422の上端辺縁422aが固定ガラス板421の上端辺縁421aよりも所定長さEだけ上方に位置する。そして、延出部421Aを区画形成するオフセット辺縁421Bbは、可動ガラス板422の上端辺縁422aと同じ高さにあって上方に突出されない。また、窓閉塞機構25の構成部材が固定ガラス板22の延出部21Aよりも下方に位置され、上端辺縁421aに近接対向される。
【0048】
このように、本構成例のドア410は、可動ガラス板422の切欠辺縁422Bがハンドル機構30の外形輪郭の一部に沿った形状になっているため、可動ガラス板422をハンドル機構30に近接対向させたときに切欠辺縁422Bをハンドル機構30の外形輪郭に沿わせることができ、切り欠かれた領域422Aに対応する部分に無駄なくハンドル機構30を位置させることができる。同時に、固定ガラス板421の延出部421Aの上方への延出量が無用に大きくならず、可動ガラス板422が開放位置にあるときに可動ガラス板422の上端辺縁422から上方に突出する面積を小さくすることができ、開放面積をより確保することができる。なお、この延出量を、可動ガラス板422が開放位置にあるときに、可動ガラス板422の上端辺縁と固定ガラス板421の上端辺縁の上下間隔以下に設定することにより、本構成例のように延出部421Aが可動ガラス板422から突出しなくなる。
【0049】
これまで、本発明に係る運転室のドアの実施形態を説明したが、本発明は、上記構成に限られない。乗降口の形状、ドアパネルの形状は上記のものに限られない。また、窓用開口やサッシの形状も上記のものに限られず、一方のガラス板をスライドさせる範囲内において枠体が平行に延びているのであれば、どのような形状に形成してもよい。また、サッシの枠内において下部に配設されるガラス板を固定側としたが上下は逆でもよい。なお、ハンドル機構30の操作性や開閉窓20の操作性を鑑みると、上記構成例のように枠内下部に配設されるガラス板を固定側とすることが好ましい。また、上下にスライドさせる形態に限らず、これに直交する方向(前後や左右)にスライドさせる形態としてもよい。
【0050】
ドアパネルがヒンジ機構を介してキャビンに取り付けられて乗降口を開閉させる形態としたが、ドアパネルをスライドさせることにより乗降口を開閉させる形態としてもよい。また、運転室のドアをミニショベルに設けるとしたが、ローダやコンバインなど、他の建設機械や農業用機械にも同様にして適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る運転室のドアを設けた油圧式ミニショベルの左側面図である。
【図2】第1構成例のドアが取り付けられたキャビンの左側面図である。
【図3】図2に示す矢印III−III方向に沿って示す開閉窓の断面図である。
【図4】ハンドル機構の分解斜視図である。
【図5】図2に示す矢印V−V方向に沿って示すハンドル機構の断面図である。
【図6】第1構成例のドアにおいて、可動ガラス板が閉塞位置にあるときの固定ガラスおよび可動ガラス板の位置関係を示す開閉窓の左側面図である。
【図7】第2構成例のドアの右側面図である。
【図8】第3構成例のドアが取り付けられたキャビンの左側面図である。
【図9】第4構成例のドアが取り付けられたキャビンの左側面図である。
【図10】従来形態のドアが取り付けられたキャビンの左側面図である。
【符号の説明】
【0052】
1 キャビン(筐体)
4 運転室
5 乗降口
10 ドア
11 ドアパネル
12 窓用開口
20 開閉窓
21 固定ガラス板(固定窓部材)
22 可動ガラス板(可動窓部材)
23 サッシ
30 ハンドル機構(操作部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に運転室を形成する筐体に取り付けられ、前記筐体に形成されて前記運転室の内部と外部を連通させる乗降口を開閉する運転室のドアであって、
前記筐体に前記乗降口を開閉自在に取り付けられるとともに、略矩形状の窓用開口が形成されたドアパネル部材と、
前記窓用開口の一端側を覆って固定して設けられる固定窓部材と、
前記窓用開口の他端側を覆って前記固定窓部材とともに前記窓用開口の全面を閉塞する閉塞位置、および、前記固定窓部材と内外に重なって前記窓用開口の他端側の一部を開放させる開放位置の間で移動可能に設けられた可動窓部材と、
前記ドアパネル部材を開閉操作するための操作部材とから構成されており、
前記操作部材が前記固定窓部材に取り付けられることを特徴とする運転室のドア。
【請求項2】
前記可動窓部材が前記閉塞位置にあるときに、前記操作部材は、前記可動窓部材の一端辺縁から前記可動窓部材の移動方向に所定間隔だけ離れた位置に配置され、
前記可動窓部材は、一端部のうち前記操作部材と前記移動方向に対向する部分が切り欠かれ、切り欠かれた領域の輪郭の一部をなして前記一端辺縁に繋がる切欠辺縁を有し、
前記可動窓部材が前記開放位置にあるときに前記切欠辺縁が前記操作部材に近接対向され、前記可動窓部材の移動可能量が前記所定間隔よりも長く設定されることを特徴とする請求項1に記載の運転室のドア。
【請求項3】
前記固定窓部材は、他端部のうち前記切欠辺縁と前記移動方向に対向する部分に、前記可動窓部材が前記閉塞位置にあるときに前記切欠辺縁に重なる延出辺縁を有していることを特徴とする請求項2に記載の運転室のドア。
【請求項4】
前記所定領域は、前記切欠辺縁を前記操作部材の外形輪郭に整合させる形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の運転室のドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−49777(P2008−49777A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226601(P2006−226601)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(392017129)共和産業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】