説明

運転支援装置

【課題】運転者に運転操作の傾向を報知する。
【解決手段】運転支援装置1は、車両の走行状態および運転操作が警告すべき状態に到達すると、警告機能13によって警告のメッセージを表示する。さらに、運転支援装置1は、診断項目に関する評価結果を算出する診断評価機能14を備える。診断項目に関する評価結果は、記号あるいは数値として表示装置20およびスピーカ等出力装置30から運転者へ報知される。さらに、アドバイス機能15は、評価結果に応じてアドバイスのメッセージを選択し、表示装置20から運転者に報知する。この構成によると、運転者は警告に至る前に診断評価結果、またはアドバイスのメッセージによって、自らの運転操作が望ましくないことを知ることができる。この結果、運転者が必要とする情報を適時に提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転操作を支援するための情報を提供する運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の運転者に対して、危険運転、燃費悪化運転を通知するシステムが提案されている。この種のシステムの中には、走行時の車両の挙動を記録し、走行後に解析してアドバイスを提示することによって、運転者に注意を促すものがある。しかし、このシステムでは、走行後に解析、アドバイスを実施しても、どこをどのような操作で走行していた時のアドバイスなのかを思い出すことが困難である。このため、運転者が自らの運転操作を改善することが困難であるという課題がある。
【0003】
また、この種のシステムの中には、走行時に規定値から外れた操作を実施すると警告を発生することによって、運転者に注意を促すものがある。しかし、このシステムでは運転者が走行中に行ってしまった操作に対する警告をするだけで警告時以外の操作改善方法が提案されていない。例えば、警告を要するほどの状況に至る前の予兆的な操作を改善するように運転者に通知を与えることができないという問題点があった。
【0004】
例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−284049号公報
【特許文献2】特開2008−163781号公報
【特許文献3】特開2004−171060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)受信機の測位データに基づいて、車両の速度、加速度、アイドリング時間が所定の警告条件に該当するかを判定し、警告メッセージをディスプレイに表示させている。しかし、警告は、運転操作の結果としての走行状態が警告すべき状態に到達した場合に実施されており、そのような警告状態に至る前の運転操作を運転者に認識させることができない。例えば、運転者の運転操作のくせのような運転傾向を運転者に認識させることができないため、警告を受けた運転者は自ら警告の原因を探し、改善する必要があった。
【0007】
特許文献2の技術は、運転者毎に燃費を算出して、燃費の増減に基づき運転者にアドバイスを報知する。しかし、この技術においても、アドバイスが発せられる状態に至るまえの運転操作を運転者に認識させることができない。
【0008】
特許文献3の技術は、運転属性と運転状況に応じてアドバイス内容とタイミングとを決定し、運転者にアドバイスが提供される。このため、運転者に対して、何に気をつけて運転すれば良いのかを知らせることで、運転を支援することができる。しかし、この技術では、データベースに蓄積されている情報を検索して運転属性と運転状況に合ったものを出力するのみである。このため、運転者個々の運転傾向を考慮して何に注意して走行したらよいのかを意識付けさせることが難しいと考えられる。
【0009】
さらに、従来技術では、走行状態が一定の水準を越えた時にだけ警告またはアドバイスが提供される。このため、運転者が自主的に自己の運転操作を確認し、より安全運転、省燃費運転に心がけようとした時に、運転者は十分な情報を得られないという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、警告に至る前から運転者が自らの運転操作を改善するために有用な情報を提供し、望ましい運転操作を促すことができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑み、運転者に運転操作の傾向を知らせることができる運転支援装置を提供することを他の目的とする。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑み、運転者に対して、運転操作の傾向を改善するように促すことができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、上記問題点に鑑み、過去の運転操作の傾向に基づいて、改善するべき運転操作を運転者に認識させることができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用することができる。請求項1に記載の発明は、車両の走行状態を示す走行データを取得する入力装置(50)と、予め定めた診断項目に関連する走行データを評価し、運転者による運転操作の傾向を示す傾向情報を求める制御手段(11、14、15)と、傾向情報を運転者に報知する報知手段(20、30)とを備えることを特徴とする運転支援装置という技術的手段を採用する。この発明によると、警告に至る前から、運転者に対して運転者の運転操作の傾向を報知することができる。この結果、運転者が自らの運転操作を改善するために有用な情報を警告に至る前から提供することができ、望ましい運転操作を促すことができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、制御手段は、傾向情報として、走行データの評価結果を求める診断評価手段(14)を備え、報知手段(20、30)は、評価結果を視覚的におよび/または聴覚的に運転者に報知するという技術的手段を採用する。この発明によると、運転者の運転操作の傾向を、評価結果によって報知することができる。評価結果は、例えば数値として、あるいは評価結果を段階的に示す記号として報知することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、制御手段は、評価結果に基づいて、運転者に対するアドバイスのメッセージを生成するアドバイス手段(15)を備え、報知手段(20、30)は、メッセージを視覚的におよび/または聴覚的に運転者に報知するという技術的手段を採用する。この発明によると、傾向情報をアドバイスのメッセージによって報知することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明は、制御手段(11、14、15)は、車両の運行開始時に特定の診断項目を報知手段(20、30)によって報知する運行開始時制御手段(15a、101)と、車両の運行開始後に、当該特定の診断項目とともに、当該特定の診断項目に関する傾向情報を、報知手段(20、30)によって報知する運行開始後制御手段(15b、15c、102、103)とを備えるという技術的手段を採用する。この発明によると、車両の運行開始時に評価の対象となる診断項目を運転者に知らせることができ、その後の運行中および/または運行後にも診断項目とともに、評価結果を報知することで、運転者の注意を引きやすい態様により運転者に自らの運転傾向を報知することができる。この結果、運転者に対して、運転操作の傾向を改善するように促すことができる
請求項5に記載の発明は、過去の運行において取得された傾向情報を含む過去傾向情報を蓄積する記憶装置(16、17)をさらに備え、運行開始後制御手段(102、103、221−229)は、過去の運行において取得された過去傾向情報と、今回の運行において取得された傾向情報とに基づいて、特定の診断項目の傾向情報の変化を求め、報知手段(20、30)によって報知する手段(221−229)を備えるという技術的手段を採用する。この発明によると、過去の運行と、今回の運行との間の運転傾向の変化を報知することができる。これにより、運転者に対して、特定の診断項目の運転傾向を改善するために有用な情報を提供することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、運行開始後制御手段(102、103、221−229)は、特定の診断項目の傾向情報の変化を、改善、維持、または悪化のいずれかとして求める手段(224−228)を備えるという技術的手段を採用する。この発明によると、特定の診断項目の傾向情報の変化を、運転者が理解し易い態様で報知することができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、運行開始時制御手段(101、201−207)は、過去傾向情報に基づいて、改善すべき診断項目を特定し、当該診断項目を特定の診断項目として、報知手段(20、30)によって報知する手段(201−207)を備えるという技術的手段を採用する。この発明によると、過去の運行で得られた過去傾向情報に基づいて、特定の診断項目を自動的に設定することができる。これにより、運転者に対して、過去の運行における運転傾向を改善するために有用な情報を、自動的に設定し、提供することができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、制御手段(11、14、15)は、今回の運行において得られた傾向情報に基づいて、今回の運行の全体における運転者による運転操作の傾向を示す総合傾向情報を求め、車両の運行後に報知手段(20、30)によって総合傾向情報を報知する運行後制御手段(232−236)を備えるという技術的手段を採用する。この発明によると、車両の運行後に、今回の運行の全体における総合的な傾向情報を報知することができる。このため、運転者に対して、今回の運行の総合的な評価を提示することができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、走行データが所定の閾値に到達すると警告情報を求める警告手段(13)をさらに備え、報知手段(20、30)は、傾向情報に加えて、または代えて、警告情報を報知するという技術的手段を採用する。この発明によると、警告すべき状況が生じると警告情報が運転者に報知されるとともに、警告にまでは至らない状況においても、傾向情報が運転者に報知されるため、運転者には望ましい運転を遂行するための有用な情報を提供することができる。
【0022】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号は、ひとつの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用した第1実施形態の運転支援装置1の構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。
【図3】第1実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。
【図4】第1実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図8】第1実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図9】第1実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図10】第1実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図11】第1実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図12】第1実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図13】第1実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図14】第1実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図15】第1実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図16】診断項目とメッセージとの対応関係を示す分類図である。
【図17】本発明を適用した第2実施形態の運転支援装置1の構成を示すブロック図である。
【図18】第2実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。
【図19】第2実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。
【図20】第2実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。
【図21】第2実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。
【図22】第2実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図23】第2実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図24】第2実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【図25】第2実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明を適用した運転支援装置の第1実施形態を説明する。図1は、運転支援装置1の構成を示すブロック図である。図2は、運転支援装置1の処理の概略を示すフローチャートである。図3は、アドバイスの対象となる評価項目を抽出し、メッセージを報知する処理を示すフローチャートである。図4は、診断項目を評価し、評価結果を表示する処理を示すフローチャートである。図5は、診断項目を総合評価し、総合評価結果を表示する処理を示すフローチャートである。図6は、警告処理を示すフローチャートである。図7ないし図15は、表示例を示す平面図である。図16は、診断項目と、メッセージとの対応関係を示す分類図である。
【0025】
図1において、運転支援装置1は、車両に搭載されている。車両は、任意の事業所に属してその運行管理下におかれるトラック等とすることができる。また、運転支援装置1は、車両に搭載された運行管理装置の一部、あるいはナビゲーション装置の一部として構成されることができる。運転支援装置1は、安全運転省燃費運転支援装置とも呼ばれる。
【0026】
運転支援装置1は、いわゆるマイクロコンピュータとして構成された制御装置10と、インターフェース装置としての表示装置20および出力装置30と、主として地図データを記憶した記憶装置40と、複数のセンサ、GPS受信機などを含む入力装置50とを有する。
【0027】
制御装置10は、プログラムによって所定の制御機能を提供する制御手段11を備えている。制御手段11には、後述する複数の機能を提供するための手段が含まれている。制御手段11は、運転者への報知情報の更新タイミングを検出する更新タイミング検出機能12を有する。この機能は、処理タイミングの到来を検出する処理タイミング検出手段を提供する。制御手段11は、運転者による車両の運転操作を含む車両の走行状態を示す走行データが警告すべき所定の閾値に到達したか否かを判定し、警告すべき状態に到達すると警告情報を求めて、警告報知を実施する警告機能13を有する。この機能は、走行状態に関する警告を実施する警告手段を提供する。
【0028】
制御手段11は、診断項目に関連する車両の走行データを評価し、運転操作の傾向を示す傾向情報としての評価結果を求め、評価結果を出力する診断評価機能14を有する。この機能が、診断項目に関する走行データの評価結果を求める診断評価手段を提供する。制御手段11は、評価結果に基づいてアドバイスのメッセージを生成するアドバイス機能15を有する。この機能は、評価結果に基づいてアドバイスのメッセージを生成する手段、あるいは予め定められた複数のメッセージから適切なメッセージを選択するアドバイス手段を提供する。
【0029】
制御装置10は、さらに、警告およびアドバイスのメッセージ、診断項目の評価結果の履歴、警告すべき状態に到達したか否かなどの判断に使用する複数の判定閾値を含む一覧表を記憶した記憶手段16を含むことができる。記憶手段16には、運転操作の評価結果の履歴として、今回の運行、例えば今日の運行における過去の評価結果、および、前回の運行、例えば昨日の運行における過去の評価結果を蓄積して記憶している。
【0030】
表示装置20と、出力装置30とは、情報を視覚的に、さらには聴覚的に運転者に報知する報知手段を提供している。表示装置20は、液晶表示装置などの画像表示装置である。出力装置30は、警告音を発生するブザー、および音声による警告、アドバイスを出力するためのスピーカを含む。報知手段として、表示装置20または出力装置30のいずれか一方だけを採用してもよい。
【0031】
記憶装置40に記憶された地図データには、地図を表示するためのデータに加えて、交差点情報、高速道路と一般道路との区別などを示す道路種別情報、道路の勾配情報、自車の走行している位置を示す位置情報、道路の幅員を示す幅員情報、および道路区間を示すリンク情報などを含むことができる。
【0032】
入力装置50は、運転者による車両の運転操作を含む車両の走行状態を示す走行データを取得し、入力する。入力装置50には、車両の状態を検出する複数のセンサと、車両の状態を示す信号を提供する車載機器、および車両に関する情報を取得する情報取得装置とを含むことができる。例えば、センサには、車速を検出する車速センサ、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ、車両の加速度を示すGセンサなどを含むことができる。また、車載機器には、ブレーキの操作を示すブレーキ信号を提供するブレーキ制御装置、ウインカーの操作を示すウインカー信号を提供するウインカースイッチなどを含むことができる。また、情報取得装置には、GPS受信機、VICS受信機などを含むことができる。
【0033】
図2において、車両の運行開始から運行終了までの運転支援装置1の処理流れが示されている。まず、車両の運行開始時にステップ101が実行される。ステップ101では、運転支援装置1は、運転時に注意すべき特定の診断項目を画像表示および/または音声によって出力する。これによって運転者は、診断項目となっている運転操作を知ることができ、それら運転操作を運転中にも意識することができる。ここで、表示される特定の診断項目を設定する構成として、運転者が属する事業所の管理権限者が設定できる構成、あるいは前日の運行における評価結果に基づいて自動的に選択され設定される構成を採用することができる。
【0034】
ステップ102では、運行中にメッセージまたは評価結果が出力される。走行中には、運転操作が閾値から外れたときに警告を発するだけでなく、運転傾向からアドバイスのメッセージと、運転傾向を示す評価結果を画像表示もしくは音声にて定期的に出力する。これにより、運転者は確認したい時に、診断項目に対する評価を確認できる。この結果、運転者がどのような運転操作をするように心がけたらよいかを支援する仕組みを実現することができる。
【0035】
ステップ103では、一日の運行が終了したときに、今日一日の運転操作を総括して表示する。この処理により、運行開始時に表示された特定の診断項目に対して望ましい運転操作を実施できたか否か、さらには運行中に運転支援装置1から提供されたアドバイスに対して注意を払うことができ、それに従った望ましい運転操作ができていたかを振り返ることができる。また、一日の運行の結果である運行記録を出力する。
【0036】
例えば、図12のように、一日の運行開始時に、「課題:平地のエンジン回転数」といった、その日に注意すべき特定の診断項目が表示される。また、一日の運行中、および運行終了時にも、図12の表示が提供されることで、運転者は一日の運行結果を振り返ることができる。さらに、図12のように、「課題:平地のエンジン回転数」という診断項目に対する評価結果が100点満点評価の点数として表示される。図15のように、「ハンドル操作」という診断項目に対する評価結果が記号によって表示されてもよい。また、図15下段のように、「アイドリング」という診断項目に対する評価結果が5段階評価の点数として表示されてもよい。なお、「アイドリング」は、連続アイドリング検出時間を示し、アイドリングストップ操作の励行を促す指標である。
【0037】
このような支援装置によると、運転者の記憶が新しいうちに、運転操作の改善支援が可能である。また、短期間と長期間の両面から運転操作の傾向についてアドバイスを提供することが可能である。また、具体的に評価結果を表示することで、運転者の運転操作を改善しようとする意識の向上を図ることができる。
【0038】
図3において、運行中に実行される処理の一部が示されている。この処理では、アドバイスを提供する対象項目が抽出され、アドバイスの報知出力が実行される。更新タイミング検出機能を提供するステップ111により所定時間の経過、もしくは所定距離の走行を検出する。所定時間、もしくは所定距離に到達するまでは後続の処理を保留する。所定時間の経過、もしくは所定距離の走行が検出されると、ステップ112に進む。
【0039】
ステップ112では、診断項目ごとに診断シーンを検出し、その結果を取得する。ここでは、運転操作を診断するべき予め定められた条件が満たされているか否かを判断することによって、運転操作を診断するべき診断シーン(走行状態)に置かれているか否かが判断される。この診断シーンに応じて、診断対象となる運転状態と、閾値とを選定することができる。
【0040】
例えば、診断シーンの一例として、車速、エンジン回転数、あるいはGセンサの情報に基づいて、車両が加速している加速シーンを検出することができる。また、高速道路を走行している時の車速のふらつきから速度変動シーンを検出することができる。また、地図データのリンク情報、位置情報、車線数情報、幅員情報から交差点シーンを検出することができる。さらにウインカー信号、車速、Gセンサ等の情報を用いて交差点シーンを検出することもできる。
【0041】
ステップ113では、ステップ112で取得された診断シーンにおける走行データが予め定められた条件に従って評価され、運転操作に対して診断を実施する。ここでは、診断シーン毎に運転操作を含む走行データが採点される。採点は、運転操作の絶対値、あるいは望ましい運転操作との差として実施することができる。さらに、採点された点数の平均値、あるいは診断用閾値(基準値)に対する超過分の積算値などを評価結果として用いることができる。この実施形態では、望ましい運転操作が高い点数の評価結果を獲得するように設定されている。また、予め定められたアドバイスのメッセージに関連する運転操作がなされているか否かが判定される。この結果を利用して、アドバイスを出力することが可能となる。制御装置10は、評価結果を記憶装置に記憶する。この結果、過去の運転操作の評価結果を保持することができ、瞬間的に生じた運転操作の評価結果だけでなく、評価結果の推移をみることができる。
【0042】
例えば、前回更新時から今回更新時までの走行から検出された診断シーンに基づいて、各診断シーンに関連する診断項目を特定し、当該診断項目に関連する走行データに対して評価を実施する。例えば、車速、エンジン回転数、アイドリング時間、速度ムラ、ブレーキ操作(減速操作)、ウインカー点灯タイミング、旋回、加速等の診断項目それぞれに対して、それらと関連付けられた走行データの評価を実施する。
【0043】
例えば、運転者が車両を停車させようとするときに、アクセルを早めに離して惰性走行を実施して、最後にフットブレーキを使用するような穏やかな運転操作をした場合と、停車位置の直前ぎりぎりまでアクセルを踏み続けた後、すぐにフットブレーキを踏むような激しい運転操作をした場合では、加速度、すなわち減速度に差が表れる。そこで、Gセンサにより得られる減速度、車速、ブレーキ信号等の走行データを評価し、運転者の運転操作がどのような操作であったかを評価し、それが穏やかな運転操作と、激しい運転操作とのいずれに属するかを評価することができる。このときに記憶手段16に記憶された閾値が用いられる。このような評価の結果、激しい運転操作がなされていると評価される場合には、燃料が噴射されないアクセルを離した状態での走行を推奨するアドバイスのメッセージを出力することが可能となる。
【0044】
また、交差点の右折時に十分徐行できているかといった評価を、地図データのリンク情報、車速、Gセンサ情報などの走行データに基づいて実施することができる。この場合、交差点での徐行を推奨するアドバイスのメッセージを出力することができる。また、ウインカーは適切なタイミングで出されているかを、地図のリンク情報、車速、Gセンサ情報などの走行データに基づいて実施することができる。この場合、「もう少し早くウインカーを点灯してください」あるいは「ウインカー点灯は意思表示になります」といったアドバイスのメッセージを表示することができる。
【0045】
ステップ114では、前回更新時の診断項目毎の評価結果が取得される。前回の評価結果は、制御装置10の記憶手段16から取得することができる。
【0046】
ステップ115では、評価項目毎に、今回評価結果と前回評価結果との差が求められ、差に応じて処理が分岐される。差が0の場合、すなわち今回と前回とで評価結果に変化がない場合、ステップ116に進む。差が負の場合、すなわち今回と前回とで評価結果が低下している場合、ステップ118に進む。差が正の場合、すなわち今回と前回とで評価結果が向上している場合、ステップ120に進む。
【0047】
ステップ116では、今回の評価結果が閾値TH1を下回っているか否かが判断される。今回の評価結果が閾値TH1を下回っている場合、今回の運転操作が望ましくないものであると判断できる。
【0048】
そこで、ステップ117に進み、当該診断項目をアドバイス対象として抽出する。一方、今回の評価結果が閾値TH1以上である場合には、アドバイス対象としては抽出されない。なお、閾値TH1は、診断項目毎に設定され、アドバイスを出力するべき最高の評価結果の点数に対応させることができる。よって、評価結果の点数が閾値を下回るとアドバイスの対象とされる。
【0049】
ステップ118では、今回の評価結果が閾値TH1を下回っているか否かが判断される。同時に、ステップ118では、差の絶対値が閾値TH2を下回っているか否かが判断される。今回の評価結果が閾値TH1を下回っている場合、今回の運転操作が望ましくないものであると判断できる。また、差の絶対値が閾値TH2を下回っている場合、運転操作が急激に望ましくない状態へと変化していると判断できる。
【0050】
ステップ118でいずれかの条件が満たされると、ステップ119に進み、当該診断項目をアドバイス対象として抽出する。一方、今回の評価結果が閾値TH1以上であり、かつ差の絶対値が閾値TH2以上である場合には、アドバイス対象としては抽出されない。なお、閾値TH2は、診断項目毎に設定され、運転操作の悪化を明確に示すか、あるいは運転者に改善を推奨するべき最小の評価結果の点数差に対応させることができる。
【0051】
ステップ120では、今回の評価結果が閾値TH3を上回っているか否かが判断される。同時に、ステップ120では、差の絶対値が閾値TH2を上回っているか否かが判断される。今回の評価結果が閾値TH3を上回っている場合、今回の運転操作がかなり望ましいものであると判断できる。また、差の絶対値が閾値TH2を上回っている場合、運転操作が急激に望ましい状態へと変化していると判断できる。
【0052】
ステップ120でいずれかの条件が満たされると、ステップ121に進み、当該診断項目を賞賛対象として抽出する。ここでは、運転操作が一定程度以上に望ましい状態になっていると判断できるから、運転者を褒めるために賞賛対象として抽出する。一方、今回の評価結果が閾値TH3以下であり、かつ差の絶対値が閾値TH2以下である場合には、賞賛対象としては抽出されない。なお、閾値TH3は、診断項目毎に設定され、賞賛のメッセージを出力するべき最低の評価結果の点数に対応させることができる。
【0053】
さらに、ステップ117、119、121では、抽出した診断項目に対応するアドバイスまたは賞賛のメッセージを制御装置10のアドバイス生成機能により取得し、表示装置20および/または出力装置30から出力する。例えば、診断項目が速度診断ならば車速、ウインカー点灯診断ならば右左折前ウインカー点灯時間など、各診断項目において監視されている情報の種別に応じて、アドバイスのメッセージが決定される。
【0054】
図16は、アドバイスのメッセージの一例を示している。なお、アドバイスのメッセージと、賞賛のメッセージとの表示処理および音声処理においては、種々の優先条件などを設定して出力することができる。例えば、評価結果が上がったものを褒めるために賞賛のメッセージを優先するか、評価結果が下がったものを報知し改善を促すためにアドバイスのメッセージを優先するか、さらには、継続して評価結果が低いものを優先するためにそのアドバイスのメッセージを優先するかは、運転者もしくは事業所の指導者が設定した順序に従うものとすることができる。
【0055】
アドバイスのメッセージは、表示装置20の予め定められた表示領域に表示されるか、あるいは他の表示から切り換えて表示される。例えば、後述する図7ないし図15の表示と並べて、または切り換えて表示することができる。さらに、後述する警告のメッセージと並べて、または切り換えて表示することができる。
【0056】
以上に述べた処理により、所定期間もしくは所定距離の間における走行データから運転者の運転操作の傾向、言い換えると癖が評価される。そして、安全運転、省燃費運転の観点から予め定められた閾値から外れる運転操作が検出される。このような運転操作に対しては、現状の望ましくない運転操作の内容を含むか、または望ましい運転操作の内容を含み、警告には該当しない程度の柔らかい表現により表されたメッセージが生成される。このメッセージは、運転者の運転操作の傾向を示す傾向情報でもある。メッセージは、文字または図形の表示によって視覚的に、さらには、メッセージを読み上げる音声によって聴覚的に運転者に報知される。これにより、現状の望ましくない運転操作を運転者に認識させることができる。
【0057】
図4において、診断項目を評価し、評価結果を数値として報知する処理が示されている。図4の処理により、安全診断、省燃費診断の各項目の評価結果が視覚的に、かつ聴覚的に報知される。この評価結果は、運転者による運転操作の傾向を示す傾向情報である。ステップ131では、更新タイミング検出機能により更新タイミングが検出されたか否かが判断される。ステップ131は、前述のステップ111と同様の処理である。ステップ132では、診断項目ごとに診断シーンを検出し、その結果を取得する。ステップ132は、前述のステップ112と同様の処理である。ステップ133では、ステップ132で取得された診断シーンにおける運転操作に対して予め定められた条件に従って診断を実施する。ステップ133の処理は、前述のステップ113と同様の処理である。ステップ131−133の処理により、運転傾向アドバイスが生成されるのと同期して、診断項目毎の評価結果が取得される。ステップ134では、運転傾向アドバイスにより診断項目毎に評価した結果を表示する。ここでは、対象となっている診断項目のすべてを表示してもよいし、複数の診断項目のうちの選択された一部の診断項目だけを表示してもよい。例えば、前回のアドバイス実施時(表示更新時)の診断項目毎評価と比較し、悪化していたもの、もしくは、所定のレベルを超えていないもののみ表示してもよい。
【0058】
このステップ134の処理では、図7ないし図10の表示例に示されるように、診断項目毎の評価結果を、数値または記号によって表示することができる。例えば、図7では、安全運転に関連する診断項目のうち、速度、加減速度、右左折操作、旋回走行操作といった4項目について、評価結果を記号によって表示している。ここでは、優秀を二重丸、良好を丸、要改善を三角で表示している。図8の表示例では、安全運転に関連する診断項目のうち、速度、加減速度(G)、ウインカー(矢印記号)、ハンドル操作(記号)といった4項目について、評価結果を5段階評価の数値として表示している。図9の表示例では、省燃費運転(エコ)に関連する診断項目のうち、エンジン回転数(記号)、波状運転(波状記号)、アイドリングストップ操作(記号)、ブレーキ操作(記号)といった4項目について、評価結果を5段階評価の数値として表示している。図10の表示例では、省燃費運転(エコ)に関連する診断項目のうち、エンジン回転数(Eg回)、波状運転(ムラ)、アイドリングストップ操作(アイドル)、ブレーキ操作(減速)といった4項目について、評価結果を5段階評価の数値として表示している。評価結果を記号によって表示している。ここでは、優秀を二重丸、良好を丸、要改善を三角で表示している。
【0059】
ステップ134の処理では、図11ないし図14の表示例に示されるように、診断項目毎の評価結果を、好ましくない診断項目が存在することを報知するために、当該診断項目だけを目立たせて表示することができる。例えば、図11ないし図13の表示例では、複数の診断項目のうち、評価結果が低い診断項目としてのウインカーだけの表示欄が反転表示され、注意が促される。また、図14の表示例のように、診断項目に対応する複数の図形のうち、評価結果が低い診断項目に対応する図形だけを表示させるようにしてもよい。
【0060】
図5において、診断項目を総合評価し、結果を数値として表示する処理が示されている。この処理により、複数の診断項目の評価結果を総合的に評価した総合評価結果と、その推移とが表示される。総合評価結果の更新と、その推移状況の更新とは、運転傾向アドバイスが実施される時に実施される。ステップ141では、更新タイミング検出機能により更新タイミングが検出されたか否かが判断される。ステップ141は、前述のステップ111と同様の処理である。ステップ142では、制御装置10の記憶メモリもしくは記憶媒体である記憶手段16から、過去の総合評価結果を取得する。この過去の総合評価としては、運転者自身の最高記録や、運転者が属する事業所としての目標値を設定しておくことができる。ステップ143では、前述のステップ113またはステップ133の処理の結果得られた評価結果を、今回の評価結果として取得する。ステップ144では、現在の運行中に得られた複数の診断項目の評価結果の平均値を今回の総合評価として求める。また、ステップ144では、今回の運行における今回の総合評価と対比しうる過去の運行における総合評価を求める。ここでは、記憶されていた過去の運行の総合評価推移データに基づいて、今回の運行開始からの運行時間と同じ運行時間が経過した時点での総合評価結果を過去の運行の総合評価として求める。なお、総合評価を求める手法としては、平均値処理に代えて、加重平均処理、積算処理など種々の代替的な処理を採用することができる。次に、ステップ145では、過去の運行における総合評価結果と、現在の運行における総合評価結果とを表示する。
【0061】
ステップ145の処理では、図7ないし図15の表示例に示されるように、少なくとも今回の運行における総合評価結果が表示される。例えば、図7ないし図10、および図13の表示例では、棒グラフと数値とによって今回の総合評価結果が表示される。さらに、図7、図8、および図13の表示例では、棒グラフにおける目盛り表示によって過去の運行における総合評価結果が表示されている。例えば、図13には、過去の総合評価結果が「70%」であり、今回の総合評価結果が「40%」であることが表示されている。これら図7、図8、および図13における過去の運行における総合評価結果は、運転者自らの最高記録、あるいは運転者が属する事業所の目標値とすることができる。また、図9の表示例では、総合評価結果の増減を示す矢印記号によって過去の運行における総合評価結果の推移が表示されている。また、図11、図12、図14および図15の表示例では、今回の運行における総合評価結果だけが、「65」、「73」、「85」といった点数として表示されている。なお、図15における右半部上段の「3.10」は連続運転時間を示す表示である。
【0062】
図3ないし図5の処理によると、走行データが警告すべき状況に至る前から、運転者に対して運転者の運転操作の傾向を報知することができる。この結果、運転者が自らの運転操作を改善するために有用な情報を、警告に至る前から提供することができ、望ましい運転操作を促すことができる。
【0063】
図6において、警告処理が示されている。この実施形態では、上述の処理によるアドバイスのメッセージ報知に加えて、さらに警告のメッセージを提供することによる警告報知が実施される。ここでは、警告のメッセージが警告情報として求められるが、所定の警告灯を点灯するための信号、あるいは所定の警告記号を表示するための信号を警告情報としてもよい。ステップ151では、車両の走行データを取得する。例えば、走行データとして、車速、エンジン回転数、加速度、アイドリング時間などが取得される。ステップ152では、地図データに基づいて、現在車両が走行中の道路に関する情報を取得する。例えば、道路の勾配、車線数、道路種別といった情報が得られる。ステップ153では、現在車両が置かれている状況を判定し、決定する。例えば、車線幅が広い高速道路を巡航中であるとか、車線幅が狭い市街地を渋滞に遭遇しながら走行中であるといった診断シーンが特定される。
【0064】
次に、ステップ154では、診断シーン毎に予め設定された閾値と、車両の走行データとを比較し、走行データが閾値を越える場合には警告メッセージを表示するとともに、音声としても提供する。このステップ154の処理は、診断項目毎に実施される。
【0065】
例えば、ステップ155では、診断項目毎の閾値を、制御装置10の記憶手段16に記憶された一覧表から取得する。ステップ156では、走行データが閾値を越えるか否かを判定し、警告状態を検出する。車両が警告を提供すべき走行状態にあると判定されると、ステップ157において警告のメッセージを表示し、音声としても提供する。警告のメッセージの表示は、常時表示されているアドバイスのメッセージと並べて、あるいは切り換えて表示される。
【0066】
なお、ステップ156での処理は、警告すべき状態が所定時間、あるいは所定回数連続した場合に、ステップ157に進むように設定してもよい。例えば、初回の警告状態検出からの連続検出時間、あるいは積算検出時間といった時間的な要素と、閾値からの超過度合いといった警告必要度といった観点からも警告すべき状況に到達しているか否かを判定してもよい。また、1回目の警告から所定時間経過しても運転操作の改善が見られなかった場合は、再度警告を実施し、警告停止条件を満たすまで警告を継続してもよい。ステップ157の処理では、図16に例示された警告のメッセージが提示される。
【0067】
以上に説明したこの実施形態によると、所定期間もしくは所定距離内に検出された警告には至らないが危険な運転操作や燃費悪化につながる運転操作に対して運転操作の項目ごとの評価を画面表示する。これにより、運転者に自己の運転操作の望ましくない点を認識させることができ、安全運転、省燃費運転の操作技術の向上を支援することができる。また、過去の運行に対する総合評価推移と、現時点の走行の総合評価推移を比較表示し、過去の記録よりもさらに安全運転、省燃費運転となるように意識付ける情報を提供する。
【0068】
この実施形態では、定期更新される運転傾向アドバイスおよび診断項目別の評価結果の表示を提供することにより、警告だけでは認識できない運転者の癖が分かる。運転者は気づいていなかった癖を改善するようにアドバイスされるため、運転者の運転技術の向上が期待できる。また、診断項目別に評価が上がった場合には、操作が改善された旨、もしくは技術向上がみられた旨を運転者に通知し、自身の運転操作が良い方向に向かっていることを教えることが可能となる。さらに、診断項目別に評価を表示することにより、アドバイスされた項目以外にも他操作が良い評価ならばそのまま継続すればよいし、望ましくない場合は注意するように運転者が自分で認識することが可能となる。そのため、多くの診断項目の運転傾向評価結果が良い方向へ改善され、運転レベルの底上げが期待される。
【0069】
また、総合評価推移を表示することで、現在の運行の評価全体が向上しているのか否かを示すことができるとともに、過去の総合評価推移として自身の最高記録や事業所としての目標値も同時に表示し、記録を更新したいという心理に働きかけ、気負うことなく安全運転、省燃費運転に取り組むことが期待される。
【0070】
また、地図を含めた位置情報と車両の走行データとを取得することで、車両が置かれている走行シーン毎の診断が可能となり、よりきめ細かなアドバイスによる技術向上が期待される。
【0071】
上記の各機能により、警告にはならないが危険な運転につながるおそれがある、もしくは燃費悪化運転につながるおそれがある運転操作を、運転傾向アドバイスとして運転者に通知する。また、アドバイスされていない項目でも表示部より診断項目別に評価結果を確認することができる。このため、運転者が自身の運転操作の癖を認識するようになる。結果として、警告を出さない運転ではなく、癖を改善する運転を意識させることができ、運転者の運転技術を向上させながら安全かつ省燃費な運行をすることが可能となる。
【0072】
(第2実施形態)
以下、本発明を適用した運転支援装置の第2実施形態を説明する。この実施形態では、第1実施形態に説明した構成および機能に加えて、以下に説明する構成および機能を追加的に備える。図17は、本発明を適用した第2実施形態の運転支援装置1の構成を示すブロック図である。図18ないし図21は、第2実施形態の運転支援装置1の処理を示すフローチャートである。図22ないし図25は、第2実施形態の運転支援装置1による表示例を示す平面図である。
【0073】
図17において、制御手段11は、過去の評価結果に基づいて、今後評価される対象事項としての項目及びシーンを示すアドバイスのメッセージを生成する運行開始時アドバイス機能15aを有する。この機能は、評価結果に基づいて運行開始時に提示されるアドバイスのメッセージを生成する手段、あるいは予め定められた複数のメッセージから適切なメッセージを選択する運行開始時アドバイス手段を提供する。運行開始時には、車両の運行を開始する前の事務所における期間、および運行を開始するために車両に搭乗した後の一定期間が含まれる。運行開始時アドバイス機能15aは、車両の運行開始時に特定の診断項目を報知手段20、30によって報知する運行開始時制御手段を提供している。運行開始時制御手段は、後述する記憶装置に蓄積された過去傾向情報に基づいて、改善すべき診断項目を特定し、当該診断項目を特定の診断項目として、報知手段20、30によって報知する。
【0074】
制御手段11は、さらに、運行中アドバイス機能15bを有する。この運行中アドバイス機能15bは、運行開始時アドバイス機能15aによって提示された対象事項に関する今回の運行における評価結果に基づいて、対象事項を改善するためのアドバイスのメッセージを生成する。運行中アドバイス機能15bは、運行中にアドバイスを提示する。この機能は、今回の評価結果に基づいて、運行開始時に提示された対象事項のアドバイスのメッセージを生成する手段、あるいは予め定められた複数のメッセージから適切なメッセージを選択する運行中アドバイス手段を提供する。
【0075】
制御手段11は、さらに、運行後アドバイス機能15cを有する。この運行後アドバイス機能15cは、上述の運行中アドバイス機能15bと同じ機能に加えて、さらに、今回の運行による評価結果の全体を総合的に評価し、今回の運行の総合的な評価の点数を提示する。例えば、評価結果の平均値が提示される。運行後アドバイス機能15cは、今回の運行において得られた傾向情報に基づいて、今回の運行の全体における運転者による運転操作の傾向を示す総合傾向情報を求め、車両の運行後に報知手段20、30によって総合傾向情報を報知する運行後制御手段を提供している。
【0076】
運行中アドバイス機能15bと運行後アドバイス機能15cとは、いずれも運行開始後アドバイス機能を提供している。運行中アドバイス機能15bと運行後アドバイス機能15cとのいずれかは、車両の運行開始後に、特定の診断項目とともに、特定の診断項目に関する傾向情報を、報知手段20、30によって報知する運行開始後制御手段を提供している。運行開始後制御手段は、過去の運行において取得された過去傾向情報と、今回の運行において取得された傾向情報とに基づいて、特定の診断項目の傾向情報の変化を求め、報知手段20、30によって報知する。運行開始後制御手段は、特定の診断項目の傾向情報の変化を、改善、維持、または悪化のいずれかとして求める。
【0077】
制御手段11は、さらに、評価結果を記憶手段16に記憶するための評価結果蓄積機能17を備える。記憶手段16は、前回までの運行における評価結果を記憶するために評価結果データベースでもある。評価結果は、診断項目毎に、かつ診断シーン毎に記憶される。評価結果蓄積機能17と記憶手段16とは、過去の運行において取得された傾向情報を含む過去傾向情報を蓄積する記憶装置を提供している。
【0078】
運行開始時アドバイス機能15aは、運行開始時アドバイス決定プログラムを実行する。運行開始時アドバイス機能15aは、評価結果データベース16のデータに基づいて、運行開始時アドバイスを決定する。運行開始時アドバイス機能15aは、運転者が運行を始める前に、運行開始時アドバイスを表示および音声により運転者に提示する。例えば、車両のエンジンが起動された直後に運行開始時アドバイスを提示する。また、運転者が所属する組織の事務所において、運転者に対して運行開始時アドバイスを提示してもよい。運行開始時アドバイス機能15aは、安全運転、あるいは省燃費運転などの目的のために改善することが望ましい運転操作を運転者に認識させる。言い換えると、過去の運転操作の傾向を改善することを運転者に意識付けする。
【0079】
さらに、運行中アドバイス機能15bは、運行中に車両から取得した車速、エンジン回転、ブレーキ操作、ウインカー操作、加速度センサから得られる加減速度情報、傾斜データ等の走行データからドライバーの運転操作の傾向を項目毎に評価する。運行中アドバイス機能15bは、運行開始時アドバイス機能15aによって運転者に対して提示された対象事項に関する運転操作の傾向を評価する。運行中アドバイス機能15bは、運行開始時アドバイス機能15aによって提示された対象項目に関する過去の評価結果と、今回の運行における対象項目に関する評価結果とを比較し、対象項目に関する改善状況を表示および音声により運転者に提示する。また、運行中アドバイス機能15bは、所定期間もしくは所定距離の運行中に得られた対象項目に関する評価結果を画面表示する。これらによって、運転者に自己の運転操作を振り返ることを促す。また、運転者に芳しくない運転操作を認識させる。
【0080】
また、運行後アドバイス機能15cは、運行終了時に、運行開始時からの評価結果をドライバーに提供する。これにより、過去の評価結果から決定された運行開始時アドバイスに関する評価結果と、今回の運行によって得られた評価結果とによって、今回の運行を振り返ることができる。このため、運転者には、より安全運転、省燃費運転となるように運転者を意識付ける情報が提供される。また、評価結果は、評価結果データベース16に蓄積されるので、次回以降の運行にも今回の評価結果と過去の評価結果とを反映することができる。
【0081】
図18において、運行開始時アドバイス機能15aのための処理が図示されている。この処理は、図2のステップ101で実行される。この処理は、運行開始時アドバイス決定処理とも呼ばれる。
【0082】
ステップ201では、評価結果データベース16に蓄積されている評価結果から、過去の一定期間分の評価結果を取得する。ここでは、診断項目毎の評価結果と、診断シーン毎の評価結果とを取得するものとする。例えば、過去1週間分の評価結果を取得する。
【0083】
ステップ202では、ステップ201で取得した評価結果を基に、診断項目毎に、評価結果の平均値を求める。評価結果は、正規化された点数とすることができ、例えば5段階評価によって1から5の点数として与えられる。例えば、ひとつの診断項目に属する複数の点数の平均値が求められる。この平均処理は、複数の診断項目に関して行われる。この結果、複数の診断項目のそれぞれについて平均値が求められる。ステップ203では、ステップ202で求められた平均値に基づいて、最低の診断項目を決定し、対象項目に設定する。この結果、評価結果の平均値が最も低い診断項目が、運行開始時アドバイスの対象としての対象項目とされる。
【0084】
ステップ204では、対象項目に属する複数の運転シーンに関して、運転シーン毎に評価結果の平均値を求める。この結果、運行開始時アドバイスの対象として選択された対象項目に所属する複数の運転シーン別の評価結果の平均値が求められる。すなわち、対象項目をさらに細分化する運転シーン毎の平均値が求められる。ステップ205では、評価結果の平均値が最も低い運転シーンを、運行開始時アドバイスの対象シーンとする。
【0085】
ステップ206では、対象項目と、対象シーンとに基づいて、運行開始時アドバイスのメッセージを決定する。この結果、少なくとも対象項目とされた特定の診断項目が、運転開始時に運転者に対して報知される。ここで、運行開始時アドバイスのメッセージは、最低の診断項目の改善を促すように、当該最低の診断項目に属する最低の運転シーンを参考にしながら、予め定められた規則に従って決定される。これによって、重要視される診断項目の改善を促すことができる。ステップ207では、運行開始時アドバイスのメッセージが出力される。
【0086】
図22は、運行開始時アドバイス機能15aによって提示されるメッセージの一例を示している。ここでは、「穏やかなアクセルを心がけましょう」というメッセージ20aが表示されている。表示装置20には、「許容EG回転数:1200rpm」という数値目標を与えるメッセージ20bも併記して表示される。この例では、ステップ203において「急操作」という診断項目が対象項目として選定されている。さらに、ステップ205では、「急加速」あるいは「加速」という運転シーンが対象シーンとして選定されている。よって、メッセージ20aには、対象項目から特定される「穏やか」という望ましい運転操作を示す言葉と、対象シーンから特定される「アクセル」という運転操作装置を示す言葉とが入れられている。これにより、運転者は、運行の開始時において、「穏やかにアクセルを操作すべきである」という意識付けを与えられる。
【0087】
図19において、評価結果蓄積機能17のための処理が図示されている。評価結果の蓄積処理は、運転シーン毎に実施される第1部分と、診断項目毎に実施される第2部分とを有している。運転シーン毎の評価と、評価結果の記憶とは、予め定められた複数の運転シーンのうちのいずれかが検出される都度、実施される。一方、診断項目毎の評価と、評価結果の記憶とは、表示画面を更新する更新時(更新タイミングともいう)に合わせて実施される。更新タイミングは、所定時間もしくは所定距離走行した時に到来する。
【0088】
ステップ211では、運転シーンが検出されたか否かを判定する。運転シーンが検出された場合のみ、ステップ212が実行される。ステップ212では、検出された運転シーンの評価結果を評価結果データベース16に記憶する。ある診断項目のある運転シーンを検出すると、その運転シーンにおいて実施された運転方法を、その運転シーンにおける車速、加速度、車両の操作装置の操作状態などのセンサ情報を基に、評価し、評価結果に対応した点数を付与する。例えば、最悪を1とし、最良を5として、5段階の点数が付与される。
【0089】
ステップ213では、更新タイミングを検出する。更新タイミングが到来した場合にのみ、後続のステップ214−216の処理を実行する。ステップ214−216の処理では、前回更新時から今回更新時までの走行から検出された複数の運転シーンの評価結果より、複数の診断項目のそれぞれについて、例えば、診断項目としては、車速、エンジン回転数、アイドリング時間、速度ムラ、ブレーキ操作(減速操作)、ウィンカー点灯タイミング、旋回、加速等を挙げることができる。そして、診断項目毎の最新の評価結果を評価結果データベース16に記憶する。ステップ214−216では、複数の診断項目のそれぞれについて、以下に述べる処理を行う。
【0090】
ステップ214では、ひとつの診断項目に属する運転シーンの前回更新時から今回更新時までの間に検出された評価結果を取得する。ステップ215では、ステップ214で取得された評価結果の平均値が求められる。この平均値は、当該診断項目に関する評価結果とみることができる。ステップ216では、ステップ215で求められた評価結果を、診断項目の評価結果として評価結果データベース16に記憶する。
【0091】
この処理により、評価結果データベース16には、複数の運転シーンのそれぞれに関する評価結果を示す複数の点数と、複数の診断項目のそれぞれに関する評価結果を示す複数の点数とが記憶され、蓄積される。
【0092】
ここで、診断項目のすべてまたはほとんどは、大分類あるいは改善対象項目とも呼びうる事項である。診断項目のすべてまたはほとんどは、その項目を改善することによって運転者あるいは車両が属する組織に何らかの利益をもたらすものである。ひとつの診断項目には、ひとつまたは複数の運転シーンが属している。よって、運転シーンは、小分類あるいは運転状態とも呼びうる事項である。運転シーンは、診断項目を、車両の運転状態ごとに細分化して評価することを可能としている。ひとつまたは複数の診断項目は、他の診断項目に属する運転シーンとなることもある。また、ひとつまたは複数の運転シーンは、同時に、診断項目となることもある。よって、診断項目と運転シーンとは、何らかの属性に基づいて必ずしも明確に区別できるものではない。この実施形態においては、予め定められた複数の診断項目および予め定められた複数の運転シーンが取り扱われる。これら診断項目と運転シーンとは、それらを区別することなくひとつの名称、例えば、診断項目とも呼ぶことができる。
【0093】
例えば、「車速」という診断項目には、走行環境を示す運転シーンを含むことができる。例えば、「車速」という診断項目に属する運転シーンには、「高速道路」および「一般道」といった道路種別を用いることができる。また、「車速」という診断項目に属する運転シーンには、「郊外道路」および「市街地道路」といった走行地域を用いることができる。これらのうち、「高速道路」は診断項目にもなりうる。また、「ウインカー操作」という診断項目に属する運転シーンには、「交差点」および「車線変更」といった道路形状を用いることができる。
【0094】
それぞれの運転シーンは、例えば以下のようにして、車両の状態を示す情報に基づいて検出することができる。例えば、車両が加速している加速シーンは、車速、エンジン回転数、Gセンサの出力などの情報から検出することができる。また、車両が高速道路を走行している時に速度が変動している速度変動シーンは、車速のふらつきから検出することができる。また、車両が交差点を走行しようとするまたは車両が交差点を通過中である交差点シーンは、地図データのリンク情報、位置情報、車線数幅員情報から検出することができる。
【0095】
さらに、運転シーンにおける運転操作は、車両の状態、操作装置の操作状態などを示す情報に基づいて評価することができる。例えば、交差点シーンの良否は、ウインカー操作時期と交差点通過時期との関係、車速、Gセンサの出力等の情報を用いて、安全で効率的な運転が実行されているか否かを評価することができる。
【0096】
例えば、「減速」もしくは「制動停止」という運転シーンにおいては、車両を停車させようとするときに運転者がアクセルペダルから足を早めに離して惰性走行を実施した後に、停車直前の最後になってフットブレーキを使用した場合と、ぎりぎりまでアクセルを踏み続けた後、直後にフットブレーキを使用した場合とでは、加速度(減速度)に差が出る。このような車両挙動の差を、Gセンサから得られる減速度、車速、ブレーキ信号等の情報を元に検出し、望ましい車両挙動あるいは運転操作が実施されているか否かを評価する。例えば、燃料が噴射されないアクセルペダルから足を離した状態での走行を推奨する場合、そのような運転操作との差が小さいときに高い点数を付与し、差が大きいときに小さい点数を付与する。また、このような評価に基づいてアドバイスのメッセージを選択することによって、望ましい運転操作を推奨するアドバイスを実施することが可能となる。他の例として、「ウインカー操作」という診断項目に関しては、「交差点」あるいは「車線変更」の運転シーンにおいて、ウインカーが適切なタイミングで出されているか否かを評価する。例えば、地図のリンク情報、車速、Gセンサの出力などの情報から、車両の操舵時期に対するウインカー操作の時期の適切さを評価することができる。また、「交差点」という運転シーンにおいては、地図のリンク情報、車速、Gセンサの出力などの情報から、交差点の右左折時の徐行の度合いを評価することができる。
【0097】
図20において、運行中アドバイス機能15bのための処理が図示されている。この処理は、図2のステップ102で実行される。以下の説明では、運行開始時アドバイス機能15aによって決定された対象項目に関する傾向情報として、アドバイスのメッセージを設定する場合を説明する。これに代えて、運行開始時アドバイス機能15aによって決定された対象シーンに関するアドバイスのメッセージを設定してもよい。この処理では、運行開始時アドバイス機能15aによって決定された対象項目に関する、今回の運行での評価結果を算出し、この今回の運行における評価結果と、過去の運行における評価結果との差、すなわち評価結果の変化を運転者に対して数値またはメッセージによって提示する。これにより、過去の運行からの改善状況を運転者に知らせることができる。言い換えると、過去の運行において取得された過去の運転の傾向を示す情報と、今回の運行において取得された今回の運転の傾向を示す情報とに基づいて、特定の診断項目の傾向情報の変化を求め、それを運転者に報知する。
【0098】
ステップ221では、運行開始時アドバイス機能15aによって決定された対象項目を示す情報と共に、過去の評価結果(得点等)を取得する。ステップ222では、運行開始時アドバイス機能15aによって決定された対象項目に属する運転シーンの、今回の運行を開始してから現在までの評価結果を取得する。ステップ223では、取得された運転シーンの評価結果の平均値を求める。この平均値は、対象項目の平均的な評価結果を示すものとみなすことができる。
【0099】
ステップ224では、過去の運行における対象項目の評価結果と、今回の運行における対象項目の評価結果との差Xを、「X=過去評価−今回評価」を演算することによって求める。ステップ225では、差Xに応じてステップ226-228のいずれかに分岐する。差Xが改善を示している場合、すなわち「X≦TH4」である場合、ステップ226に進む。差Xが維持を示している場合、すなわち「TH4<X<TH5」である場合、ステップ227に進む。差Xが悪化を示している場合、すなわち「TH5≦<X」である場合、ステップ228に進む。ステップ226では、改善されていることに相当するアドバイスのメッセージを設定する。ステップ227では、維持されていることに相当するアドバイスのメッセージを設定する。ステップ228では、悪化していることに相当するアドバイスのメッセージを設定する。ステップ229では、ステップ226−228で設定されたメッセージを出力する。
【0100】
図23は、運行中アドバイス機能15bによって提示されるメッセージの一例を示している。ここでは、メッセージは記号によって表示されている。メッセージには、対象項目に基づいて設定された「穏やかなアクセルを心がけましょう」というメッセージ20aに対応して、アクセルを示す記号20cと、良否を示す記号20dとが表示されている。
【0101】
図24は、良否を示す記号20dの例を示している。笑い顔をモチーフとした図形は、過去の傾向より改善されていることを示す。この図形は、ステップ226において設定される。怒り顔をモチーフとした図形は、過去の傾向と(ほぼ)同じ、または改善されていないことを示す。この図形は、ステップ227において設定されている。呆れ顔をモチーフとした図形は、過去の傾向より悪いことを示す。この図形は、ステップ228において設定されている。
【0102】
図21において、運行後アドバイス機能15cのための処理が図示されている。この処理は、図2のステップ103で実行される。運行後アドバイス機能15cにおいては、運行開始時アドバイス機能15aによって決定された対象項目または対象シーンに関する評価を出力するとともに、今回の運行の全般における評価結果を総合的に評価した総合評価を出力し、記憶する。言い換えると、今回の運行の全体における運転者による運転操作の傾向を示す総合傾向情報を求め、当該総合傾向情報を報知する。
【0103】
ステップ231では、図20の処理におけるステップ221-229を実行する。これにより、対象項目または対象シーンの評価結果に基づき、改善、維持、悪化のいずれかに相当するメッセージが出力される。
【0104】
図25は、ステップ231により表示されるメッセージの一例を示している。「穏やかなアクセル操作ができていました」というメッセージ20eは、ステップ226で設定される改善に相当するメッセージである。
【0105】
ステップ232では、今回の運行において得られた評価結果を評価結果データベース16から取得する。今回の運行開始から運行終了までに検出されたすべての運転シーンのすべての評価結果が取得される。よって、通常は、複数の点数が取得される。ステップ233では、取得した複数の点数に基づいて、診断項目毎の平均値である項目別平均を求める。次に、ステップ234では、複数の診断項目のそれぞれについて求められた複数の項目別平均から、全診断項目の平均値を求める。この平均値は、総合平均と呼びうる値である。総合平均は、今回の運行の全体を通じた評価結果を示している。
【0106】
ステップ235では、総合平均を総合評価として出力し、表示する。これにより、運転者または管理者は、今回の運行の総合的な評価結果を知ることができる。ステップ236では、総合平均を総合評価として評価結果データベース16に記憶する。
【0107】
ステップ233およびステップ234において、今回の運行において検出された運転シーンの数が一定値より少ない診断項目については、総合平均を求める処理から除いてもよい。これにより、異常な評価結果が総合評価に反映されることを回避することができる。
【0108】
以上に説明したこの実施形態によると、運行を始める前、もしくは初期に、運転者に対してアドバイスを与えることができる。このアドバイスは、一般的な省燃費運転、あるいは安全運転につながるアドバイスにとどまらない。アドバイスは、運転者の過去の運行に基づく評価結果から抽出された、改善すべき運転傾向を指摘する。これにより、運転者に自己の操作を認識させ、自ら気をつけて操作させることができる。これにより省燃費運転、あるいは安全運転を促進することができる。
【0109】
この実施形態では、運行開始時の意識付けだけでなく、運行を開始した後も、運行開始時に意識付けした項目に関して運転操作の改善がなされているか否かを示す情報を運転者に提供する。これにより、運転者は、車両内で運転操作が改善されたか否かを確認することができる。ここで、運行開始後は、運行中から運行後にわたる期間のうちのいずれかの時期、または期間とすることができる。また、運行終了時に今回の運行を通して過去の運行傾向を改善できたか否かを確認することもできる。これにより、リアルタイムに近い状況でアドバイスを提供することができる。この結果、省燃費運転、あるいは安全運転に向けた運転者のモチベーションが向上することが期待できる。
【0110】
また、運行中に刻々と評価を行い、アドバイスを提供するから、運転者が継続的に自己の運転操作の改善すべき点を認識できる。このため、評価結果の記録を更新したいという心理に働きかけることができる。この結果、運転者は、必要以上に気負うことなく、省燃費運転、あるいは安全運転に取り組むことができる。従って、運転者の運転技術向上だけでなく、運転者のモチベーションの向上、および維持を図ることを期待できる。
【0111】
また、運行後には、今回の運行における運転操作の総合的な評価を示す情報が運転者に提供される。このため、運転者に対して、総合的な運転操作を改善するために有用な情報を提供することができる。
【0112】
さらに評価結果データベース16にデータが蓄積される。このデータは、車内以外での運転教育に活用することが期待される。例えば、過去の運行の評価結果と今回の運行の評価結果とを比較する用途に利用できる。また、データをグラフ化することにより改善効果の確認をする用途に利用できる。
【0113】
この実施形態によると、運転者が日常的にクセとして行っている運転操作を改善する意識付けをすることができ、運転者の運転技術を向上させながら、省燃費、あるいは安全に貢献する運転を促すことが可能となる。
【0114】
(他の実施形態)
本発明の技術的範囲は、上述した実施形態にのみ限定されるものではない。上述した実施形態は、本発明の技術的範囲内で、多様な変形、改良、または拡張を伴うことができる。本発明は、少なくとも次のような変形、改良または拡張を伴う実施形態を包含する。
【0115】
例えば、運転傾向アドバイスはエンジンを始動してからの一定期間内など、運転操作における目立つ操作と関連して運転者が思い出しやすい時期にだけ実施してもよい。例えば、エンジンを始動してから10分といった定期に実施される。この10分間に検出された走行シーンに基づいて、最も危険な運転操作、燃費を悪化させる運転操作に対してアドバイスを生成する。対象とする期間を限定することにより、運転者の記憶が鮮明な走行場面において、アドバイスを提供することが可能となり、運転者に技術向上を促すことが可能となる。
【0116】
また、運転傾向に基づいて提供されるアドバイスだけでなく、安全運転、あるいは省燃費運転を教示する手段として、リアルタイムに実施される警告の提供を実現することにより、危険な運転操作、もしくは過度な燃費悪化運転操作を即座に運転者に知らせることができ、運転を改善できる。
【0117】
上記実施形態では、運行中アドバイス機能15bは、過去の評価結果に対する差を表示した。これに代えて、対象項目の最新の評価結果に基づいて選択されたアドバイスのメッセージを表示してもよい。また、メッセージに代えて、もしくは、メッセージに加えて、運行中アドバイス機能15bは、対象項目の最新の評価結果を表示してもよい。最新の評価結果は、前回更新時から今回更新時までの評価結果を用いることができる。
【0118】
上記実施形態では、評価が最も悪い診断項目または運転シーンに基づいて、それを改善するための運行開始時アドバイスを決定している。また、上記実施形態では、対象項目の改善、維持、悪化のそれぞれについてアドバイスを決定している。このような構成に代えて、評価が良いものを褒めるように運行開始時アドバイスを決定してもよい。また、運行中アドバイスの決定および出力には、優先順位を設けてもよい。たとえば、評価結果が改善された診断項目または運転シーンを褒めることを優先するように設定してもよい。また、評価結果が悪化した診断項目または運転シーンの改善を促すことを優先してもよい。さらに、継続して低評価の診断項目または運転シーンの改善を促すことを優先してもよい。これらの優先順序は、運転者が設定できるように構成することができる。また、運転者または車両が属する組織の指導者によって設定できるように構成することもできる。
【0119】
上記実施形態に代えて、運行中アドバイス機能15bと、運行後アドバイス機能15cとのいずれか一方のみを備える構成を採用してもよい。また、運行後アドバイス機能15cを備える構成においては、ステップ231の処理を削除することができる。
【0120】
上記実施形態に代えて、運転開始時には、アドバイスのメッセージを報知することなく、対象項目のみを報知するように構成してもよい。上記実施形態に代えて、運転開始時のアドバイスの対象とする対象項目は、運行開始時アドバイス決定プログラムを使用することなく、車両の管理者が設定してもよい。また、過去の運行での点数と、今回の運行での点数とを比較する構成に代えて、目標点数と、今回の運行での点数とを比較して、対象項目における改善の達成度合いを表示してもよい。また、装置には、運転傾向アドバイスを再度読み上げること、あるいはサイド表示することを要求するためのスイッチを設けてもよい。これにより、アドバイスの聞き逃しの防止、対象項目の再確認が可能となる。また、評価結果を算出する処理において、平均的に評価の低い診断項目、または運転シーンに対しては、評価をさらに下げるように重み付け係数を付加してもよい。これにより、評価結果が低い診断項目または運転シーンが対象項目または対象シーンとして選定される可能性を高めることができる。この結果、重点的に改善を図ることができる。また、運行前アドバイス機能15aにおいて、前回の評価結果だけに基づいて対象項目または対象シーンを決定してもよい。また、評価結果を付与する処理において、組織の管理者が重要視する項目またはシーン、あるいは運転者が重要視する項目またはシーンに対して、評価をさらに下げるように重み付け係数を付加してもよい。これにより、重要視される項目またはシーンの改善を促進することができる。また、全診断項目をまとめて総合評価を求める処理に代えて、診断項目を安全診断項目と省燃費診断項目とに分類し、安全診断項目の総合評価と、省燃費診断項目の総合評価とを別々に求めてもよい。これにより、分類された診断項目のいずれが苦手なのかを運転者に認識させることができる。また、運転者にアドバイスを与える際に、今回の運行の中での前回の評価時からの変化を求め、運転者に対して提示してもよい。例えば、運行中アドバイス機能15bにおいて、前回の更新タイミングと、今回の更新タイミングとの間で、改善されたのか、悪化したのか、変化していないのかを運転者に対して提示してもよい。これにより、時々刻々の改善度合いの変化を示すことができる。
【符号の説明】
【0121】
1 運転支援装置
10 制御装置
20 表示装置
30 出力装置
40 記憶装置
50 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態を示す走行データを取得する入力装置(50)と、
予め定めた診断項目に関連する走行データを評価し、運転者による運転操作の傾向を示す傾向情報を求める制御手段(11、14、15)と、
前記傾向情報を運転者に報知する報知手段(20、30)とを備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記傾向情報として、前記走行データの評価結果を求める診断評価手段(14)を備え、
前記報知手段(20、30)は、前記評価結果を視覚的におよび/または聴覚的に運転者に報知することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記評価結果に基づいて、運転者に対するアドバイスのメッセージを生成するアドバイス手段(15)を備え、
前記報知手段(20、30)は、前記メッセージを視覚的におよび/または聴覚的に運転者に報知することを特徴とする請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記制御手段(11、14、15)は、
車両の運行開始時に特定の診断項目を前記報知手段(20、30)によって報知する運行開始時制御手段(15a、101)と、
車両の運行開始後に、当該特定の診断項目とともに、当該特定の診断項目に関する前記傾向情報を、前記報知手段(20、30)によって報知する運行開始後制御手段(15b、15c、102、103)とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
過去の運行において取得された前記傾向情報を含む過去傾向情報を蓄積する記憶装置(16、17)をさらに備え、
前記運行開始後制御手段(102、103、221−229)は、
過去の運行において取得された前記過去傾向情報と、今回の運行において取得された前記傾向情報とに基づいて、前記特定の診断項目の傾向情報の変化を求め、前記報知手段(20、30)によって報知する手段(221−229)を備えることを特徴とする請求項4に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記運行開始後制御手段(102、103、221−229)は、
前記特定の診断項目の傾向情報の変化を、改善、維持、または悪化のいずれかとして求める手段(224−228)を備えることを備えることを特徴とする請求項5に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記運行開始時制御手段(101、201−207)は、
前記過去傾向情報に基づいて、改善すべき診断項目を特定し、当該診断項目を前記特定の診断項目として、前記報知手段(20、30)によって報知する手段(201−207)を備えることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記制御手段(11、14、15)は、
今回の運行において得られた前記傾向情報に基づいて、今回の運行の全体における運転者による運転操作の傾向を示す総合傾向情報を求め、前記車両の運行後に前記報知手段(20、30)によって前記総合傾向情報を報知する運行後制御手段(232−236)を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項9】
前記走行データが所定の閾値に到達すると警告情報を求める警告手段(13)をさらに備え、
前記報知手段(20、30)は、前記傾向情報に加えて、または代えて、前記警告情報を報知することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の運転支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2010−231776(P2010−231776A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44540(P2010−44540)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】