説明

運転支援装置

【課題】本発明は、運転者の煩わしさの低減を図ることができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】本発明は、車両の運転者に対して車両周辺の障害物を回避するための運転支援を行う運転支援装置1であって、障害物を検出する障害物レーダ4と、運転者の運転操作を検出する運転操作検出部5と、障害物レーダ4の検出した障害物の車両に対するリスク度を算出するリスクマップ作成部13と、障害物レーダ4及び運転操作検出部5の検出結果に基づいて、運転者が障害物に対するリスク回避操作を行ったか否かを判定すると共に、リスク度の高さに応じて運転支援の内容を変更する支援判断部16と、を備え、支援判断部16は、運転者はリスク回避操作を行ったと判定した場合、当該障害物のリスク度が当該判定時点より高い段階における運転支援の内容を支援度の低い内容に変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野における技術文献として、特開平6−231400号公報が知られている。この公報には、車両を急減速させた際の車両減速度とアクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替え時間とに基づいて、先行車両と車両との間の適正車間距離を算出し、実際の車間距離が適正車間距離以下となった際に運転者に対して警告を行う装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−231400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した装置においては、運転者が個人的にどの程度の車間距離を適切と感じているのかまでは考慮しておらず、運転者が適正車間距離以下となることを認識して運転しているときにまで警告を行ってしまうため、運転者に煩わしさを感じさせる慮がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、運転者がリスク対象に対するリスク回避操作を行ったと判定した場合に、当該リスク対象のリスク度が当該判定時点より高い段階における運転支援の内容を支援度の低い内容に変更することで、運転者の煩わしさの低減を図ることができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の運転者に対して車両周辺のリスク対象を回避するための運転支援を行う運転支援装置であって、リスク対象を検出するリスク対象検出手段と、運転者の運転操作を検出する運転操作検出手段と、リスク対象検出手段及び運転操作検出手段の検出結果に基づいて、運転者がリスク対象に対するリスク回避操作を行ったか否かを判定する回避操作判定手段と、リスク対象検出手段の検出したリスク対象の車両に対するリスク度を算出するリスク度算出手段と、リスク度の高さに応じて運転支援の内容を変更する支援内容変更手段と、を備え、支援内容変更手段は、回避操作判定手段が運転者はリスク回避操作を行ったと判定した場合、当該リスク対象のリスク度が当該判定時点より高い段階における運転支援の内容を支援度の低い内容に変更することを特徴とする。ここで、運転支援の内容を支援度の低い内容に変更することには、支援中止という内容に変更することも含む。
【0007】
本発明に係る運転支援装置では、運転者がリスク対象に対するリスク回避操作を行った場合に、運転者はリスク対象を回避すべきものであると認識したと判断して、当該リスク対象のリスク度が当該判定時点より高い段階における運転支援の内容を支援度の低い内容に変更する。これによって、運転者がリスク対象を認識している場合にまで過剰に運転支援を介入させる事態を避けることができるので、運転者の煩わしさの低減を図ることができる。
【0008】
本発明の運転支援装置においては、回避操作判定手段は、運転支援に対する反応として運転者がリスク対象に対するリスク回避操作を行ったか否かを判定し、支援内容変更手段は、回避操作判定手段が運転支援に対する反応として運転者はリスク回避操作を行ったと判定した場合、当該リスク対象のリスク度が当該判定時点より高い段階における運転支援の内容を支援度の低い内容に変更することが好ましい。
この場合、運転支援に対する反応としてリスク回避操作を行ったか否かを判定することで、常にリスク認識操作に関する判定を行う場合と比べて障害物を回避するためのリスク認識操作と通常の運転操作とを誤認する可能性を小さくすることができ、運転支援装置の信頼性の向上を図ることができる。
【0009】
本発明の運転支援装置においては、リスク度算出手段は、車両がリスク対象に到達するまでの時間が小さくなるほどリスク度を高く算出することが好ましい。
車両がリスク対象に到達するまでの時間が小さくなるほど、リスク対象に衝突等する可能性が高くなるので、この場合にリスク度を高く算出することで、リスク度に応じた適切な内容の運転支援を行うことが可能になる。
【0010】
本発明の運転支援装置においては、回避操作判定手段は、運転操作検出手段の検出結果に基づいて、運転者がアクセル操作、ブレーキ操作、及びハンドル操作のうち少なくとも一つの操作を所定の操作量以上行ったと判定した場合、運転者がリスク回避操作を行ったと判定することが好ましい。
この発明によれば、運転者の操作からリスク回避操作が行われたか否かを直接判定することが可能となるので、車両の進路変更や減速を検出してから判定を行う場合と比べて迅速な判定処理が実現され、結果として運転支援装置における運転支援処理の迅速化を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運転者がリスク回避操作を行ったと判定した場合に、当該判定時点のリスク度よりリスク度の高い段階の運転支援の内容を支援度の低い内容に変更することで、運転者の煩わしさの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る運転支援装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】リスクマップを示す図である。
【図3】リスク度に応じた運転支援を説明するための図である。
【図4】図1の運転支援ECUの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る運転支援装置1は、車両走行時のリスクとなる障害物(リスク対象)を検出し、検出した障害物と車両とが衝突するまでの衝突余裕時間(TTC[Time To Collision])に応じた運転支援を運転者に提供するものである。
【0015】
運転支援装置1は、演算処理を行うCPU[Central Processing Unit]、記憶部となるROM[Read Only Memory]及びRAM[Random Access Memory]、入力信号回路、出力信号回路、電源回路等により構成され、装置を統括的に制御する運転支援ECU[Electric Control Unit]2を有している。運転支援ECU2は、白線認識カメラ3、障害物レーダ(リスク対象検出手段)4、運転操作検出部5、及び車速センサ6と電気的に接続されている。さらに、運転支援ECU2は、ヨーレートセンサ7、HMI[Human Machine Interface]8、及び車両制御部9と電気的に接続されている。
【0016】
白線認識カメラ3は、車両前方の白線の位置を認識するためのカメラである。白線認識カメラ3は、その光軸方向が車両の進行方向と一致するように車両の前方に取り付けられる。白線認識カメラ3は、走行している道路を十分に撮像可能な左右方向に広い撮像範囲を有している。白線認識カメラ3は、撮像した車両前方の画像及びこの画像から認識した白線の位置を白線認識情報として運転支援ECU2に送信する。
【0017】
障害物レーダ4は、電波を利用して車両周辺の障害物を検出するためのレーダである。障害物レーダ4は、車両前方に延びる扇状の検出範囲を有する前方レーダと、前方レーダの検出範囲より近距離で広角な扇状の検出範囲を有する前側方広角近距離レーダと、から構成されている。障害物レーダ4は、検出した障害物の位置や大きさ等を障害物情報として運転支援ECU2に送信する。
【0018】
運転操作検出部5は、運転者による車両の運転操作を検出するセンサである。運転操作検出部5は、例えば操舵角センサ、アクセルペダルセンサ、ブレーキペダルセンサ、及び方向指示操作検出センサ等により構成される。運転操作検出部5は、検出した運転者の運転操作を運転操作情報として運転支援ECU2に送信する。
【0019】
車速センサ6は、車両の車速を検出するセンサである。車速センサ6は、例えば車輪に取り付けられ、車輪の回転速度から車速を検出する。車速センサ6は、検出した車速を車速情報として運転支援ECU2に送信する。ヨーレートセンサ7は、車両のヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサ7は、例えば車体に取り付けられている。ヨーレートセンサ7は、検出した車両のヨーレートをヨーレート情報として運転支援ECU2に送信する。
【0020】
HMI8は、装置と運転者との間において情報をやり取りするためのインターフェイスである。HMI8は、運転者に情報提供するためのディスプレイパネル及びスピーカを備えている。HMI8は、運転支援ECU2から情報提供指令が送信された場合、運転支援として運転者に対する情報提供を行う。
【0021】
車両制御部9は、運転支援ECU2から送信された各種指令に応じて車両を制御するものである。車両制御部9は、運転支援ECU2から回避誘導指令が送信された場合、運転者に対する回避誘導を実施する。回避誘導とは、車両が障害物を回避する方向に車両のハンドル、ブレーキペダル、及びアクセルペダルを駆動させることで、運転者の回避運転を誘導する運転支援である。回避誘導時におけるハンドル等の駆動は、車両の走行に影響させない。また、車両制御部9は、運転支援ECU2から回避制御指令が送信された場合、車両の回避制御を行う。回避制御とは、車両制御部9が運転に介入して車両を強制的に停止又は進路変更させる運転支援である。
【0022】
運転支援ECU2は、逸脱余裕時間演算部11、衝突余裕時間演算部12、及びリスクマップ作成部(リスク度算出手段)13を有している。さらに、運転支援ECU2は、情報提供タイミング演算部14、車両制御目標値演算部15、及び支援判定部(回避操作判定手段、支援内容変更手段)16を有している。
【0023】
逸脱余裕時間演算部11は、各種情報に基づいて、走行中の車両が白線から逸脱するまでの時間である逸脱余裕時間を算出する。逸脱余裕時間演算部11は、白線認識カメラ3から送信された白線認識情報、運転操作検出部5から送信された運転操作情報、車速センサ6から送信された車速情報、及びヨーレートセンサ7から送信されたヨーレート情報に基づいて、従来の方法により逸脱余裕時間を算出する。逸脱余裕時間演算部11は、算出した逸脱余裕時間を逸脱余裕時間情報としてリスクマップ作成部13に送信する。
【0024】
衝突余裕時間演算部12は、各種情報に基づいて、走行中の車両が障害物に衝突するまでの時間である衝突余裕時間すなわちTTCを算出する。衝突余裕時間演算部12は、障害物レーダ4から送信された障害物情報、運転操作検出部5から送信された運転操作情報、車速センサ6から送信された車速情報、及びヨーレートセンサ7から送信されたヨーレート情報に基づいて、従来の方法によりTTCを算出する。衝突余裕時間演算部12は、算出したTTCをTTC情報としてリスクマップ作成部13に送信する。
【0025】
リスクマップ作成部13は、逸脱余裕時間演算部11から送信された逸脱余裕時間情報、衝突余裕時間演算部12から送信されたTTC情報、運転操作検出部5から送信された運転操作情報、車速センサ6から送信された車速情報、及びヨーレートセンサ7から送信されたヨーレート情報に基づいて、リスクマップを作成する。
【0026】
図2に示すように、リスクマップは、各障害物(柱L、対向車両N、及び先行車両M)と衝突するリスクが高くなる領域を楕円状の衝突リスク領域として表し、これらの衝突リスク領域を避けた車両の推奨進路を生成するためのマップである。衝突リスク領域は、各障害物に対するTTCから算出されたリスク度に応じて設定されている。リスク度は、衝突リスクを示す指標であり、TTCが小さいほどすなわち車両が障害物と衝突するまでの時間が少ないほど高い値となる。
【0027】
図2及び図3に示すように、衝突リスク領域は、リスク度に応じた複数の階層から構成されている。例えば電柱Lの衝突リスク領域は、低リスク度領域A、中リスク度領域B、及び高リスク度領域Cの3つの階層から構成されている。理解を容易にするためTTCを用いて各階層の区分を例示すると、低リスク度領域AはTTCが4.0秒以下の領域、中リスク度領域BはTTCが2.5秒以下の領域、高リスク度領域CはTTCが1.4秒以下の領域として設定される。なお、移動可能な対向車両等においては、衝突リスク領域は低リスク度領域A及び中リスク度領域Bから構成されている。これらの領域に車両が入り込んだ場合には、領域毎に異なる内容の運転支援が行われる(図3参照)。
【0028】
リスクマップ作成部13は、作成したリスクマップに基づいて、車両の推奨進路に関する演算処理を行い、推奨進路を走行する際の最適車速情報を生成する。リスクマップ作成部13は、生成した推奨進路情報及び最適車速情報を車両制御に用いる目標経路情報として車両制御目標値演算部15に送信する。また、リスクマップ作成部13は、作成したリスクマップをリスクマップ情報として情報提供タイミング演算部14及び車両制御目標値演算部15に送信する。
【0029】
図1に示すように、情報提供演算部14は、各種情報に基づいて、運転支援の一つである情報提供に関する演算を行う。具体的には、情報提供演算部14は、リスクマップ作成部13から送信されたリスクマップ情報、白線認識カメラ3から送信された白線認識情報、及び障害物レーダ4から送信された障害物情報に基づいて、情報提供としてHMI8のディスプレイパネルに表示する画像情報及びスピーカから出力する警報情報を生成する。情報提供演算部14は、生成した画像情報及び警報情報を支援判断部16に送信する。
【0030】
車両制御目標値演算部15は、リスクマップ作成部13から送信されたリスクマップ情報及び目標経路情報に基づいて、運転支援である回避誘導及び回避制御に関する制御目標値を定める。車両制御目標値演算部15は、回避誘導における制御目標値、すなわち運転者を誘導するための車両のハンドル、ブレーキペダル、及びアクセルペダルの駆動量及び駆動方向を算出する。
【0031】
また、車両制御目標値演算部15は、リスクマップ作成部13から送信されたリスクマップ情報及び目標経路情報に基づいて、回避制御における制御目標値、すなわち運転に介入する際の操舵制御、制動制御、及び加速制御の各目標値を算出する。車両制御目標値演算部15は、算出した回避誘導における制御目標値及び回避制御における制御目標値を制御目標値情報として支援判断部16に送信する。また、車両制御目標値演算部15は、リスクマップ作成部13から送信された目標経路情報を支援判断部16に送信する。
【0032】
支援判断部16は、各種情報に基づいて、運転支援の内容及び実行タイミングを判断する。運転支援の内容としては、支援度の異なる情報提供、回避誘導、回避制御がある。情報提供は、運転者に対する支援度が最も低く、HMI8を通じて運転者に障害物の情報を提供する。回避誘導は、運転者に対する支援度が情報提供の次に低く、車両が障害物を回避する方向に車両のハンドル、ブレーキペダル、及びアクセルペダルを駆動させることで、運転者の回避運転を誘導する。回避制御は、運転者に対する支援度が最も高く、運転に介入して車両を強制的に停止又は進路変更させる。
【0033】
また、支援判断部16は、運転操作検出部5から提供された運転操作情報に基づいて、運転者がリスク認識操作や回避操作を行ったか否かを判定する。リスク認識操作とは、運転者が衝突のおそれがあると認識した障害物から車両を遠ざけようとする操作である。支援判断部16は、運転者がアクセル操作、ブレーキ操作、ハンドル操作のうち少なくとも一つの操作を所定の操作量以上行った場合にリスク認識操作を行ったと判定する。なお、リスク認識操作には、踏み込んでいたアクセルペダルを放す操作も含まれる。また、操作量自体が所定の操作量に満たない場合であっても、ペダル操作による車両の加速度変化が所定値以上の場合や白線を跨いでレーンチェンジを行った場合にはリスク認識操作が行われたと判定するようにしてもよい。
【0034】
回避操作は、リスク認識操作と比べてより明確に障害物を避けようとする操作である。回避操作が行われたか否かの判定は、リスク認識操作の場合と同様に行われる。回避操作が行われたか否かの判定は、上述の他、車速が0になった場合、車両の進行方向が障害物から明らかに逸れた場合等に回避操作が行われたと判定してもよい。支援判断部16は、障害物毎に運転者がリスク認識操作や回避操作を行ったか否かの判定結果を記憶する。
【0035】
支援判断部16は、支援内容を情報提供として運転支援を行う必要があると判断した場合、情報提供演算部14で生成された画像情報及び警報情報を含む情報提供指令をHMI8に送信する。支援判断部16は、支援内容を回避誘導に変更して運転支援を行う必要があると判断した場合、車両制御目標値演算部15で生成された制御目標値情報を含む回避誘導指令を車両制御部9に送信する。また、支援判断部16は、支援内容を回避制御に変更して運転支援を行う必要があると判断した場合、車両制御部9に回避制御指令を送信する。
【0036】
続いて、上述した運転支援ECU2の動作について図面を参照して説明する。
【0037】
図4に示すように、運転支援ECU2では、まず、各種センサ類3〜7を通じて各種情報が取得される(ステップS1)。その後、障害物情報に基づき障害物が検出されたか否かが判定される(ステップS2)。障害物が検出されないと判定された場合は処理が終了され、所定時間経過後に再びステップS1から繰り返される。
【0038】
ステップS2で障害物が検出されたと判定された場合、各種情報に基づいてリスクマップの生成が行われる(ステップS3)。その後、生成したリスクマップに基づいて、車両が検出された障害物の低リスク度領域Aに進入したか否かが判定される(ステップS4)。車両が障害物の低リスク度領域Aに進入していないと判定された場合は処理が終了され、所定時間経過後に再びステップS1から繰り返される。
【0039】
ステップS4で車両が障害物の低リスク度領域Aに進入したと判定された場合、運転支援として情報提供が必要であると判断され、情報提供指令がHMI8に送信される(ステップS5)。HMI8では、障害物を強調表示した車両前方の画像をディスプレイパネルに表示すると共に警報音をスピーカから出力することで、運転者に対する情報提供を行う(図3参照)。なお、図3におけるディスプレイパネルの画像には、障害物として駐車車両J、先行車両M、歩行者H、対抗車両Nが示されている。
【0040】
ステップS6において、情報提供に対する反応として運転者が障害物に対するリスク認識操作を所定時間内に行ったか否かが判定される。運転者が障害物に対するリスク認識操作を行ったと判定された場合、車両が当該障害物の中リスク度領域Bに進入したか否かが判定される(ステップS7)。車両が障害物の中リスク度領域Bに進入したと判定された場合、目標経路情報、車速情報、及びヨーレート情報に基づき車両の位置が目標経路の許容範囲内であるか否かが判定される(ステップS8)。車両の位置が目標経路の許容範囲内であると判定された場合、ステップS10に移行する。
【0041】
ステップS7で車両の位置が目標経路の許容範囲内ではないと判定された場合、支援内容を回避誘導に変更して運転支援を行う必要があると判断され、回避誘導指令が車両制御部9に送信される(ステップS9)。車両制御部9では、回避誘導指令に基づいて、車両のハンドル、ブレーキペダル、及びアクセルペダルを駆動させることで運転者に対する回避誘導が行われる(図3参照)。
【0042】
一方、ステップS6で運転者のリスク認識操作が行われていないと判定された場合、ステップS10に移行する。これは、実際の運転操作においては、情報提供しても運転者が何の反応も示さない場合、運転者は障害物を認識した上でその方向へ運転している可能性が高いためである。なお、必要がある場合には、ステップS6で運転者のリスク認識操作が行われていないと判定された場合であってもステップS8に移行する態様としてもよい。
【0043】
ステップS10において、運転者が障害物に対する回避操作を所定時間内に行ったか否かが判定される。運転者が障害物に対する回避操作を行ったと判定された場合、運転者派当該障害物を認識しており、運転支援は不要と判断される。運転支援が不要と判断されると、支援内容を支援中止に変更して処理が終了され、所定時間経過後に再びステップS1から繰り返される。運転者が障害物に対する回避操作を行っていないと判定された場合、車両が当該障害物の高リスク度領域Cに進入したか否かが判定される(ステップS11)。車両が当該障害物の高リスク度領域Cに進入していないと判定された場合は処理が終了され、所定時間経過後に再びステップS1から繰り返される。
【0044】
ステップS11で車両が当該障害物の高リスク度領域Cに進入したと判定された場合、当該障害物に対する運転者のリスク認識操作の履歴及び回避誘導の実施の有無に基づいて、回避制御の運転支援は必要であるか否かが判断される。具体的には、ステップS6で当該障害物に対する運転者のリスク認識操作が行われていないと判定され、且つ、ステップS9で回避誘導制御が行われた場合、回避制御は必要であると判断される。一方、ステップS6で当該障害物に対する運転者のリスク認識操作が行われたと判定された場合には、回避制御は不要であると判断される。
【0045】
ステップS11で回避制御は不要であると判断された場合、処理が終了され、所定時間経過後に再びステップS1から繰り返される。回避制御は必要であると判断された場合、回避制御指令が車両制御部9に送信される(ステップS13)。車両制御部9では、回避制御指令に基づいて、運転に介入して車両の進路変更又は車両停止を行う回避制御が行われる(図3参照)。
【0046】
以上説明した運転支援装置1によれば、運転者が障害物に対するリスク認識操作や回避操作を行った場合に、運転者は障害物を回避すべきものであると認識したと判断して、当該リスク対象のリスク度が当該判定時点より高い段階すなわち高リスク度領域Cに車両が進入した場合における運転支援の内容を支援中止に変更する。これによって、運転者が障害物を認識している場合にまで過剰に運転支援を介入させる事態を避けることができるので、運転者の煩わしさの低減を図ることができる。
【0047】
また、この運転支援装置1では、情報提供に対する反応として運転者が障害物に対するリスク認識操作を行ったか否かを判定することで、常にリスク認識操作に関する判定を行う場合と比べて障害物を回避するためのリスク認識操作と通常の運転操作とを誤認する可能性を小さくすることができる。このことは、運転支援装置1の信頼性の向上に寄与する。
【0048】
さらに、この運転支援装置1では、車両が障害物に衝突するまでの時間であるTTCが小さくなるほど、リスク度を高く算出することで、障害物に衝突する可能性に応じた適切な内容の運転支援を行うことが可能になる。
【0049】
また、この運転支援装置1では、運転者がアクセル操作、ブレーキ操作、及びハンドル操作のうち少なくとも一つの操作を所定の操作量以上行ったと判定した場合に、運転者がリスク認識操作又は回避操作を行ったと判定することで、運転者の操作からリスク認識操作が行われたか否かを直接判定することが可能となるので、車両の進路変更や減速を検出してから判定を行う場合と比べて迅速な判定処理が実現され、結果として運転支援装置1における運転支援処理の迅速化を図ることができる。
【0050】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、車両と衝突する可能性のある障害物をリスク対象として説明したが、リスク対象は障害物に限られず、例えば車道付近の溝や道路の凹みをリスク対象として本発明を適用してもよい。
【0051】
また、運転者が障害物を認識していると判断された場合の運転支援の内容の変更は、支援中止という内容に変更する場合に限られず、運転支援の内容を支援度の低い内容に変更、例えば運転に介入する回避制御から運転に介入しない回避誘導に運転支援の内容を変更することで運転者の煩わしさの低減を図る態様であってもよい。ここで、運転支援の内容を支援度の低い内容に変更することには、元の情報提供と比べてスピーカの出力がより小さい情報提供に変更することや、元の回避誘導と比べてハンドル等の駆動がより小さな回避誘導に変更することが含まれる。
【0052】
また、情報提供等の運転支援を開始する前であっても、運転者が障害物に対するリスク認識操作を行ったと判定したときには、当該障害物のリスク度がその判定時点より高い段階における運転支援の内容を支援度の低い内容に変更する態様であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…運転支援装置、2…運転支援ECU、4…障害物レーダ(リスク対象検出手段)、5…運転操作検出部、13…リスクマップ作成部(リスク度算出手段)、16…支援判断部(回避操作判定手段、支援内容変更手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者に対して前記車両周辺のリスク対象を回避するための運転支援を行う運転支援装置であって、
前記リスク対象を検出するリスク対象検出手段と、
前記運転者の運転操作を検出する運転操作検出手段と、
前記リスク対象検出手段及び前記運転操作検出手段の検出結果に基づいて、前記運転者が前記リスク対象に対するリスク回避操作を行ったか否かを判定する回避操作判定手段と、
前記リスク対象検出手段の検出した前記リスク対象の前記車両に対するリスク度を算出するリスク度算出手段と、
前記リスク度の高さに応じて前記運転支援の内容を変更する支援内容変更手段と、を備え、
前記支援内容変更手段は、前記回避操作判定手段が前記運転者は前記リスク対象に対する前記リスク回避操作を行ったと判定した場合、当該リスク対象の前記リスク度が当該判定時点より高い段階における前記運転支援の内容を支援度の低い内容に変更することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記回避操作判定手段は、前記運転支援に対する反応として前記運転者が前記リスク対象に対する前記リスク回避操作を行ったか否かを判定し、
前記支援内容変更手段は、前記回避操作判定手段が前記運転支援に対する反応として前記運転者は前記リスク回避操作を行ったと判定した場合、当該リスク対象の前記リスク度が当該判定時点より高い段階における前記運転支援の内容を支援度の低い内容に変更することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記リスク度算出手段は、前記車両が前記リスク対象に到達するまでの時間が小さくなるほど前記リスク度を高く算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記回避操作判定手段は、前記運転操作検出手段の検出結果に基づいて、前記運転者がアクセル操作、ブレーキ操作、及びハンドル操作のうち少なくとも一つの操作を所定の操作量以上行ったと判定した場合、前記運転者がリスク回避操作を行ったと判定することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の運転支援装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−111132(P2011−111132A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272153(P2009−272153)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】