説明

運転者疲労度推定装置

【課題】車両の運転者疲労度推定の精度を高める。
【解決手段】車両の運転者の生体情報を取得し、車両の減速開始から停車までの制動期間内に変化した生体情報が、制動期間後に安定化するまでの時間である安定化時間に基づいて、運転者疲労度を推定する。安定化時間に基づいて疲労度を推定すれば、道路環境、交通環境、それらによる運転負荷の変化などによって推定値が影響されることはなく、疲労度を高い精度で推定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の運転者の疲労度を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転者の疲労度を推定する技術として特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の技術は、運転者への警報タイミングを制御する技術である。特許文献1では、運転者の運転状態、運転者の運転パターン、運転者の身体状態を検出している。運転者の身体状態は、ハンドル等に設けたセンサによって体温、発汗量、脈拍数などの生体情報を取得することによって検出している。
そして、特許文献1では、これらの検出結果に基づいて、運転者の疲労度・覚醒度・集中度を総合的に判定している。さらに、特許文献1では、この判定結果に基づいて、運転者の反応度を検出し、その検出結果に応じて運転者への警報タイミングを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−38911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した生体情報の値は、運転状況によってばらつくことがある。すなわち、道路環境、交通環境、それらによる運転負荷の変化などによって、生体情報の値がばらつくことがある。生体情報の値がばらつくと、疲労度推定の精度が悪化する。
本発明の目的は、疲労度推定の精度を高めることのできる運転者疲労度推定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る運転者疲労度推定装置では、生体情報取得部が取得した生体情報と、車両挙動検出部が検出した車両の減速状態とに基づき、車両の減速開始から停車するまでの期間である制動期間内に変化した生体情報が安定化するまでの時間である安定化時間に応じて、運転者の疲労度を推定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、減速開始から停車までの制動期間内に変化した生体情報が、制動期間後に安定化するまでの安定化時間に基づいて、運転者疲労度を推定する。この結果、疲労度推定の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態による運転者疲労度推定装置の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】車速の時間変化と、運転者の血圧値および脈波伝播速度の時間変化とを示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による運転者疲労度推定装置の処理例を示すフローチャートである。
【図4】図1の運転者疲労度推定装置において、警報を行う場合の構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】図3の動作において、警報を行う場合の処理例を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態による運転者疲労度推定装置の処理例を示すフローチャートである。
【図7】図6の動作において、警報を行う場合の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図では、他の図と同等部分は同一符号によって示している。
(第1の実施形態)
(構成)
図1は本発明の運転者疲労度推定装置の一構成例を示す機能ブロック図である。図1において、本例の運転者疲労度推定装置は、メインユニット1と、心電図センサ2と、脈波センサ3と、車両信号センサ4とを備えている。
心電図センサ2は、運転者の心電図信号を出力する。
脈波センサ3は、運転者の脈波信号を出力する。
車両信号センサ4は、運転者が運転する車両が出力する車両信号を検出する。
【0009】
心電図センサ2および脈波センサ3は、例えば、車両のステアリング表面に設置する。心電図センサ2は、検出した運転者の心電図信号を、左右手部接触面による3点誘導によって導出する。この心電図信号の取得には、例えば、特開2009−248637号公報に記載されている技術を用いる。また、脈波センサ3は、検出した運転者の脈波信号を、光電管脈波計による容積脈波によって導出する。この脈波信号の取得には、例えば、特開2003−146107号公報に記載されている技術を用いる。
【0010】
車両信号センサ4は、例えば、ブレーキペダルの踏力センサ41と車両状態判定装置42とを備えている。
踏力センサ41は、図示せぬブレーキペダルへの運転者による踏力を検出する。
車両状態判定装置42は、例えば、顔画像撮影カメラ、操舵角センサ、横Gセンサ、走行路撮影カメラ、の少なくとも1つを備えている。顔画像撮影カメラは、運転者の顔面を撮影する。操舵角センサは、ステアリングの操舵角を検出する。横Gセンサは、車両の横方向の加速度を検出する。走行路撮影カメラは、車両前方の走行路を撮影する。そして、車両状態判定装置42は、例えば、顔画像撮影カメラが撮影する運転者の顔面画像に基づいて運転状態を判定する。この顔面画像に基づく運転状態の判定には、例えば、特開平10−143669号公報に記載の技術を用いる。
【0011】
また、車両状態判定装置42は、例えば、操舵角センサが検出する操舵角信号に基づいて運転状態を判定する。この操舵角信号に基づく運転状態の判定には、例えば、特開平5−58192号公報に記載の技術を用いる。
さらに、車両状態判定装置42は、例えば、横Gセンサが検出する車両の横方向の加速度に基づいて居眠り運転状態を判定する。この車両の横方向の加速度に基づく居眠り運転状態の判定は、例えば、特開平10−143669号公報に記載の技術と特開平5−58192号公報に記載の技術とを組み合わせることによって実現する。すなわち、操舵角の変化を横Gに換算したり、車両と走行区分帯との距離変化を横Gに換算したりすることにより、居眠り運転状態を判定する。
【0012】
車両状態判定装置42が、走行路カメラが撮影する車両走行路の前方画像に基づいて居眠り運転状態を判定する場合、例えば、特開平5−69757号公報に記載の技術を用いる。
メインユニット1は、計算部11と、車両信号処理部12と、疲労度推定部13と、を備えている。計算部11は、運転者の心電図信号および脈波信号に基づいて血圧値などの計算を行う。車両信号処理部12は、車両信号センサ4が出力する車両信号に基づいて車両の挙動を検出する。疲労度推定部13は、車両の減速開始から停車するまでの期間である減速期間内において上昇した血圧値が安定化するまでの時間である安定化時間に基づき、該運転者の疲労度を推定する。計算部11、車両信号処理部12および疲労度推定部13は、図示せぬCPU(Central Processing Unit)が、図示せぬ記憶部に記憶されているプログラムを実行することによって実現できる。
【0013】
(計算部)
計算部11は、心電図センサおよび脈波センサが出力する信号を利用し、脈波伝搬時間法により、以下のような処理によって血圧値の計算を行う。ここで、心電図信号による心電波形のR波ピーク値を示す時刻Taは、心臓の拍出時点に対応し、脈波形の立上り点を示す時刻Tbは指先に脈波が到達した時点に対応する。このとき、Tb−Taは、脈波伝播時間TPATである。そして、計算部11は、血圧値BPと脈波伝播時間TPATとの関係式である式(1)から、血圧値BPを計算する。
BP=α1・TPAT+β1 …(1)
なお、上記の式(1)において、α1およびβ1は、運転者に特有の補正値である。α1およびβ1は、例えば、実験その他で予め設定しておく。
【0014】
(車両信号処理部)
車両信号処理部12は、車両信号センサ4の踏力センサ41が踏力を検出した場合に、車両状態判定装置42の判定結果に基づき、減速度を判定する。
(疲労度推定部)
本例では、疲労度推定部13は、計算部11が計算した血圧値と車両信号処理部12によって判定された減速度に基づき、安定化時間を算出する。安定化時間を算出する場合、疲労度推定部13は、血圧値の変化量を常に監視しておき、車両が減速し車速が零になった時点からタイマ動作を開始し、上記変化量が予め設定された変化量以下になった時点(すなわち安定状態期間に入った時点)でタイマ動作を停止することにより、安定化時間を算出する。
【0015】
また、疲労度推定部13は、タイマを用いずに、計算部11が計算する血圧値の変化量をメモリに順次記憶しておき、そのメモリの記憶内容に基づいて安定化時間を算出するようにしてもよい。その場合、疲労度推定部13は、メモリの記憶内容について、車両が減速し車速が零になった時点から、血圧値の変化量が予め設定された変化量以下になった時点(すなわち安定状態期間に入った時点)までの間を、安定化時間として算出する。
【0016】
そして、疲労度推定部13は、算出した安定化時間に基づき、運転者の疲労度を推定する。疲労度推定部13は、疲労度の推定において、安定化時間が長いほど、疲労度が大きいと推定する。なお、疲労度の推定は、例えば、次のように行う。すなわち、車両の制動期間に対応した基準安定化時間を設けておき、この基準安定化時間に対して、安定化時間がどのくらい長くなったかで疲労度の大きさを推定する。この基準安定化時間は、車両の減速度(減速開始から車速が零になるまでの時間)が大きくなる程長くなるように設定されている。
【0017】
図2は、運転者が運転する車両の速度(つまり車速)の時間変化と、その運転者の血圧値および脈波伝播速度の時間変化とを同時に示す図である。図2において、車速V[Km/h]は、一定の速度から低下し、零になっている。つまり、車速Vは、減速期間を経て、停止期間に移行している。本例では、車速Vが低下し始めた時刻t1から、車速Vが零になった時刻t2までの間が減速期間である。
【0018】
図2において、血圧値BP[mmHg]は、脈動しながら変化(上昇および下降)している。そして、血圧値BPは、車速Vの低下と共に上昇し、最大値となる。血圧値BPの最大値は、ブレーキペダルの踏力センサからの信号の入力時点から、血圧値BPが安定するまでの時点までの時間範囲内において計算する血圧値のうち、最大の値である。また、血圧値BPは、車速Vが零になった後、低下し始め、時刻t3以降は変化が少なくなっている。つまり、図2において、血圧値BPは、時刻t3以降は安定状態期間TBとなる。そして、車速Vが零になった時刻t2から、血圧値BPが安定状態期間TBに入るまでの間が安定化時間TAである。
【0019】
この安定化時間TAは、上昇した血圧値BPが正常値に戻るまでの時間である。すなわち、安定化時間とは、車両の減速開始から停車するまでの期間である制動期間内に変化した生体情報である血圧値BPが、安定化するまでの時間である。この安定化時間内において疲労度を推定すれば、道路環境、交通環境、それらによる運転負荷の変化などによって推定値が影響されることはなく、疲労度を高い精度で推定することができる。
【0020】
また、安定状態期間TBであることの判定、つまり安定状態であることの判定は、例えば、次のように行う。すなわち、運転開始前に、運転者の安静時の血圧値を予め測定するかまたは入力しておき、これを安定時血圧値とする。そして、一定時間内に計算した血圧値の平均値が安定時血圧値と等しい場合に「安定状態」とする。
なお、図2において、血圧値BPのピーク点を検出できれば、そのピーク点に達した時刻から安定状態期間TBに入るまでの時間を安定化時間としてもよい。
【0021】
図3を参照して、上述した運転者疲労度推定装置の処理例について説明する。図3において、最初に、メインユニット1の計算部11は、心電図センサ2および脈波センサ3の出力信号に基づいて血圧値などの計算処理を行う(ステップS11)。
次に、車両信号処理部12は、制動操作が行われたか判定する制動操作検出処理を行う(ステップS12)。制動操作が行われないと判定した場合、上記のステップS11に戻り、上記の処理を繰返す(ステップS13→S11)。
【0022】
一方、制動操作が行われたと判定した場合、疲労度推定部13は、安定化時間を計算する(ステップS13→S15)。この場合、疲労度推定部13は、車速が零になってから血圧値が安定化するまでの時間を安定化時間として計算する。疲労度推定部13は、計算した安定化時間に基づいて、運転者の疲労度を推定する(ステップS16)。疲労度の推定において、疲労度推定部13は、安定化時間が長いほど、疲労度が大きいと推定する。つまり、安定化時間∝疲労度である。
【0023】
また、疲労度推定部13は、車両信号センサ4が判定する減速度に応じて上記の推定式を補正してもよい。すなわち、減速度は、減速動作に対する運転者の負荷を示すものであり、減速度∝安定化時間の関係にある。よって、安定化時間/減速度∝疲労度の関係式によって、推定値を補正することができる。
その後、ステップS11に戻り、メインユニット1は、上記の処理を繰返す。
【0024】
(動作等)
本実施形態による運転者疲労度推定装置を備えた車両を運転者が運転する場合、心電図センサ2は運転者の心電図信号を出力する。また、脈波センサ3は運転者の脈波信号を出力する。メインユニット1の計算部11は、心電図センサ2が出力する心電図信号および脈波センサ3が出力する脈波信号を入力する。計算部11は、これら心電図信号および脈波信号に基づいて、運転者の生体情報である血圧値を取得する。
【0025】
また、メインユニット1の車両信号処理部12は、車両信号センサ4の踏力センサ41が運転者による踏力を検出した場合に、車両状態判定装置42の判定結果に基づき、減速度を判定する。メインユニット1の疲労度推定部13は、車両の減速開始から停車するまでの期間である制動期間内に変化した血圧値が、安定化するまでの時間である安定化時間に応じて、運転者の疲労度を推定する。
以上の処理によって、疲労度を高精度に推定することができる。
【0026】
(変形例1)
ところで、図4のように、上記の図1の構成に警報部5を追加した運転者疲労度推定装置としてもよい。この警報部5は、推定した疲労度が、予め設定したしきい値を超えた場合に、運転者に対して警報を出力する。警報部5が出力する警報は、スピーカから音声出力して運転者の聴覚を刺激するもの、ランプを点灯または点滅させて運転者の視覚を刺激するもの、バイブレータを振動させて運転者の触覚を刺激するもの、のいずれであっても良い。
【0027】
なお、この警報部5による警報の出力タイミングは、後述する安定化時間に応じて制御してもよい。例えば、安定化時間が一定値を超えたら(長くなったら)、警報の出力タイミングを早めてもよい。この場合、例えば、早期警報パターンを予め設定しておき、安定化時間が一定値を超えたら早期警報パターンに切り替える制御を行えばよい。
【0028】
疲労度推定値に基づいて警報を出力する場合の動作は、図5のようになる。すなわち、図3のステップS16によって推定した運転者疲労度について、予め設定したしきい値を超えたか判定する(ステップS17)。ステップS17の判定の結果、予め設定したしきい値を超えた場合、疲労度推定部13は警報信号を警報部5に出力する警報処理を行う(ステップS17→S18)。これにより、警報部5は運転者に対して警報を出力する。その後、ステップS11に戻り、メインユニット1は、上記の処理を繰返す。
ステップS17の判定の結果、予め設定したしきい値を超えていない場合、ステップS11に戻り、メインユニット1は、上記の処理を繰返す。
【0029】
(変形例2)
脈波伝播速度VPAT[m/s]も、血圧値BPと同様に変化する。このため、上記の血圧値BPの代わりに、脈波伝播速度VPATを用いることができる。血圧値BPと同様に、脈波伝播速度VPATは、時刻t3以降は安定状態期間TBとなる。そして、車速Vが零になった時刻t2から、脈波伝播速度VPATが安定状態期間TBに入るまでの間が安定化時間TAである。この安定化時間TAは、上昇した脈波伝播速度VPATが正常値に戻るまでの時間である。
【0030】
脈波伝播速度は、脈波伝播時間を、運転者の心臓から脈波観測点までの距離Lで割った数値である。この距離Lは、運転者情報として予め取得しておくか、または、シート位置センサの出力に基づいて推定する。シート位置センサは、運転者の搭乗状態を計測するセンサであり、例えば、特開2007−253809号公報に記載されている技術によって、距離Lを推定する。
【0031】
血圧値BPと脈波伝播速度VPATとの関係は、下記の式(2)で表すことができるので、上記のように脈波伝播速度VPATが取得できれば、血圧値BPを推定することができる。
BP=α2・VPAT+β2 …(2)
なお、上記の式(2)において、α2およびβ2は、運転者に特有の補正値である。α2およびβ2は、例えば、実験その他で予め設定しておく。
ところで、脈波伝播速度VPATではなく、脈波伝播時間を用いて運転者の疲労度を推定してもよい。すなわち、脈波伝播時間が短縮化し、この短縮化した脈波伝播時間が正常に戻るまでの安定化時間に基づき、運転者の疲労度を推定することができる。
【0032】
(変形例3)
ところで、上記の血圧値BPの代わりに、脈圧を用いることができる。すなわち、運転者から取得する脈圧が縮小化した後、正常な値に戻るまでの安定化時間に基づき、運転者の疲労度を推定することができる。本例では、指尖脈圧を用いる。脈圧(指尖脈圧)は血圧値と一定の相関があり、血圧値に比べて簡易に測定することができるので、運転者への負担が少ない疲労度推定が可能となる。
【0033】
(変形例4)
上記の血圧値BPの代わりに、心拍数を用いることができる。すなわち、運転者から取得する心拍数が増大した後、正常な値に戻るまでの安定化時間に基づき、運転者の疲労度を推定することができる。心拍数は血圧値と一定の相関があり、血圧値に比べて簡易に測定することができるので、運転者への負担が少ない疲労度推定が可能となる。
なお、本実施形態において、心電図センサ2および脈波センサ3並びに計算部11が生体情報取得部に対応し、車両信号センサ4および車両信号処理部12が車両挙動検出部に対応し、疲労度推定部13が疲労度推定部に対応する。
【0034】
(第1の実施形態の効果)
(1)運転者疲労度推定装置は、車両の減速開始から停車するまでの制動期間内に、生体情報取得部によって取得した運転者の生体情報が変化し、変化した生体情報が制動期間以降に安定化するまでの安定化時間に基づき、該運転者の疲労度を推定する。この安定化時間内において疲労度を推定すれば、道路環境、交通環境、それらによる運転負荷の変化などによって推定値が影響されることはなく、疲労度を高い精度で推定することができる。
【0035】
(2)運転者疲労度推定装置は、血圧値に基づいて疲労度を推定する。このことにより、疲労度推定精度の向上が可能となる。すなわち、疲労度との相関が最も高い血圧値が上昇し、それが低下して安定状態になるまでの安定化時間に基づいて疲労度を推定するので、運転者への負担が少ない疲労度推定が可能となる。
(3)運転者疲労度推定装置は、脈波伝播速度(または脈波伝播時間)に基づいて疲労度を推定する。このことにより、運転者への負担が少ない疲労度推定が可能となる。疲労度推定精度の向上が可能となる。すなわち、脈波伝播速度(または脈波伝播時間)は血圧値と高い相関があり、かつ、カフ無しで計測が可能なので、運転者への負担が少ない疲労度推定が可能となる。
【0036】
(4)運転者疲労度推定装置は、脈圧(指尖脈圧)に基づいて疲労度を推定する。このことにより、運転者への負担が少ない疲労度推定が可能となる。すなわち、脈圧(指尖脈圧)は血圧値と一定の相関があり、血圧値に比べて簡易に測定することができるので、運転者への負担が少ない疲労度推定が可能となる。
【0037】
(5)運転者疲労度推定装置は、心拍数に基づいて疲労度を推定する。このことにより、運転者への負担が少ない疲労度推定が可能となる。すなわち、心拍数は血圧値と一定の相関があり、血圧値に比べて簡易に測定することができるので、運転者への負担が少ない疲労度推定が可能となる。
(6)運転者疲労度推定装置は、基準安定化時間に対して安定化時間がどのくらい長くなったかで運転者の疲労度の大きさを推定する。このことにより、車両減速度にあった基準で判定するので、疲労度推定の精度がより向上する。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
(構成)
本実施形態の基本的な構成および処理内容は、第1の実施形態と同様である。
本実施形態の場合の処理例について図6を参照して説明する。図6において、最初に、メインユニット1の計算部11は、心電図センサ2および脈波センサ3の出力信号に基づいて血圧値などの計算処理を行う(ステップS11)。
次に、車両信号処理部12は、制動操作が行われたか判定する制動操作検出処理を行う(ステップS12)。制動操作が行われないと判定した場合、上記のステップS11に戻り、上記の処理を繰返す(ステップS13→S11)。
【0039】
一方、制動操作が行われたと判定した場合、車両信号処理部12において、減速度を分類する(ステップS13→S14)。そして、疲労度推定部13は、分類した減速度によって弁別し、車速が零になってから血圧値が安定化するまでの時間を安定化時間として計算する(ステップS15)。そして、疲労度推定部13は、減速度が一定値以下の制動操作のみに対応する安定化時間に基づいて、運転者の疲労度を推定する(ステップS16)。その後、ステップS11に戻り、メインユニット1は、上記の処理を繰返す。
以上の処理によって、疲労度推定精度を高め、運転者疲労度の誤認を防止することができ、運転者が実際には疲労していないにも関わらず警報が早期化するなどの煩わしさが減少する。
【0040】
ところで、疲労度推定値に基づいて警報を出力する場合の動作は、図7のようになる。すなわち、図6のステップS16によって推定した運転者疲労度について、予め設定したしきい値を超えたか判定する(ステップS17)。ステップS17の判定の結果、予め設定したしきい値を超えた場合、疲労度推定部13は警報信号を警報部5に出力する警報処理を行う(ステップS17→S18)。これにより、警報部5は運転者に対して警報を出力する。その後、ステップS11に戻り、メインユニット1は、上記の処理を繰返す。
ステップS17の判定の結果、予め設定したしきい値を超えていない場合、ステップS11に戻り、メインユニット1は、上記の処理を繰返す。
なお、上記の他の構成は、第1の実施形態の場合と同様である。
【0041】
(動作等)
本実施形態の動作は、基本的に第1の実施形態の場合と同様である。ただし、本実施形態の運転者疲労度推定装置は、第1の実施形態の場合と異なり、車両信号処理部12において、減速度を分類する。すなわち、車両信号センサ4は、車両状態判定装置42の判定結果により踏力センサ41からの入力それぞれに対して減速度を判定し、踏力センサ41の入力を分類する。そして、疲労度推定部13は、分類した減速度によって安定化時間を弁別し、減速度が一定値以下の制動操作のみから運転者の疲労度を推定する。これにより、一般的な信号などによる制動時の疲労度を推定し、緊急制動など疲労度変化以外の安定化時間の伸長要因が多い制動を除外することができる。このことで疲労度推定精度を高め、運転者疲労度の誤認を防止し、運転者が実際には疲労していないにも関わらず警報が早期化するなどの煩わしさを減少させることができる。
【0042】
(第2の実施形態の効果)
本実施形態は、第1の実施形態の効果に加えて以下の効果を有する。
(1)運転者疲労度推定装置は、減速度が一定値以下の制動操作のみから運転者疲労度を推定する。このことにより、制動による運転者負荷を除いた疲労度推定が可能となり、さらに疲労度推定精度を向上させることができる。したがって、一般的な信号などによる制動時の疲労度を推定し、緊急制動など疲労度変化以外の安定化時間の伸長要因が多い制動を除外することができる。このことで疲労度推定精度を高め、運転者疲労度の誤認を防止し、運転者が実際には疲労していないにも関わらず警報が早期化するなどの煩わしさを減少させることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 メインユニット
2 心電図センサ
3 脈波センサ
4 車両信号センサ
5 警報部
11 計算部
12 車両信号処理部
13 疲労度推定部
41 踏力センサ
42 車両状態判定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記車両の減速状態を検出する車両挙動検出部と、
前記生体情報取得部が取得した生体情報と、前記車両挙動検出部が検出した前記車両の減速状態とに基づき、前記車両の減速開始から停車するまでの期間である制動期間内に変化した前記生体情報が安定化するまでの時間である安定化時間に基づいて、該運転者の疲労度を推定する疲労度推定部とを備えたことを特徴とする運転者疲労度推定装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記生体情報取得部は、前記生体情報として、前記運転者の血圧値を取得し、
前記疲労度推定部は、前記制動期間内に上昇した血圧値が、正常な値に戻るまでの安定化時間に基づき、前記運転者の疲労度を推定することを特徴とする運転者疲労度推定装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記生体情報取得部は、前記生体情報として、前記運転者の脈波伝播速度を取得し、
前記疲労度推定部は、前記制動期間内に高速化した脈波伝播速度が、正常な値に戻るまでの安定化時間に基づき、前記運転者の疲労度を推定することを特徴とする運転者疲労度推定装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記生体情報取得部は、前記生体情報として、前記運転者の脈圧を取得し、
前記疲労度推定部は、前記制動期間内に縮小化した脈圧が、正常な値に戻るまでの安定化時間に基づき、前記運転者の疲労度を推定することを特徴とする運転者疲労度推定装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記生体情報取得部は、前記生体情報として、前記運転者の心拍数を取得し、
前記疲労度推定部は、前記制動期間内に増大した心拍数が、正常な値に戻るまでの安定化時間に基づき、前記運転者の疲労度を推定することを特徴とする運転者疲労度推定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項において、
前記車両挙動検出部は、前記車両の減速度が予め設定されている一定値以下となる制動操作を検出し、
前記疲労度推定部は、前記車両挙動検出部が、前記車両の減速度が予め設定されている一定値以下となる制動操作を検出した場合に、前記運転者の疲労度を推定することを特徴とする運転者疲労度推定装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項において、
前記疲労度推定部は、前記制動期間に対応して設定された基準安定化時間に対して、前記安定化時間が長い程、疲労度が大きくなると推定することを特徴とする運転者疲労度推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−22211(P2013−22211A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159310(P2011−159310)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】