説明

過加水分解活性を有する酵素を用いた過酸の生産

カルボン酸エステルからのペルオキシシカルボン酸の生産方法を提供する。より詳しくは、カルボン酸エステルを、過加水分解活性を有する酵素触媒の存在下で無機過酸化物(例えば過酸化水素)と反応させる。本発明のペルヒドロラーゼ触媒は、保存された構造的特徴に基づいて、炭水化物エステラーゼファミリー7(CE−7)に属するものに分類される。さらに、本明細書で説明される方法によって生産された過酸を含む殺菌製剤を提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2006年12月12日付けで出願された米国特許出願第11/638,635号の一部継続出願であり、これは、2005年12月13日付けで出願された米国仮出願第60/750,092号、および2006年10月20日付けで出願された米国仮出願第60/853,065号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、過酸の生合成、およびその場(in situ)での酵素触媒作用の分野に関する。具体的には、構造的には、セファロスポリンアセチル加水分解酵素(CAH;E.C.3.1.1.41)、およびアセチルキシランエステラーゼ(AXE;E.C.3.1.1.72)などを含む炭水化物エステラーゼのCE−7ファミリーに属するものとして同定されている酵素の過加水分解(perhydrolysis)活性を用いた過酸の生産方法を提供する。酵素的なプロセスによって、カルボン酸エステル基質から過カルボン酸が生産される。さらに、本明細書で説明される方法によって生産された過酸を含む消毒製剤を提供する。
【背景技術】
【0003】
過酸組成物は、有効な抗菌剤であることが報告されている。硬表面、肉製品、生きた植物組織、および医療用デバイスを、望ましくない微生物の増殖に関して清浄にする、消毒する、および/または衛生的にする方法が説明されている(特許文献1、2、3、4および5)。また過酸は、洗濯用洗剤用途用の漂白組成物を製造することにおいて有用であることも報告されている(特許文献6、7および8)。
【0004】
過酸は、カルボン酸と過酸化水素との化学反応によって製造することができる(非特許文献1を参照)。この反応は通常、濃硫酸のような強い無機酸によって触媒される。過酸化水素とカルボン酸との反応は平衡反応であり、過酸の生産では、過剰な濃度の過酸化物および/またはカルボン酸の使用、または水の除去が好ましい。この過酸を生産する化学反応には、以下のような数々の不利益がある:a)過酸を含む溶液を用いた場合、過酸の生産で好んで用いられる高濃度のカルボン酸が、望ましくない悪臭を発生させる可能性があること、2)過酸は、溶液中で経時的に不安定であることが多く、使用前の貯蔵中に溶液中の過酸の濃度が減少すること、および3)触媒として濃硫酸を使用するためにその製剤は強い酸性であることが多いこと。
【0005】
化学的な過酸の生産の上記不利益を克服する1つの方法は、強酸触媒の代わりに酵素触媒を用いることである。酵素触媒を使用ことによって、使用時および/または適用時の迅速な過酸の生産を可能にし、長期にわたる過酸溶液の貯蔵に伴う問題、および過酸濃度の変化を回避することができる。過酸化水素との直接の化学反応によって過酸を生産するのに一般的に用いられる酵素的な過酸の生産では、高濃度のカルボン酸は必要ではなく、酵素触媒による反応は、このような化学反応で一般的に用いられる濃度よりもよりかなり低い濃度でカルボン酸エステルを基質として使用することができる。このような酵素反応は広範なpHにわたり行うことができるが、所定pHでの酵素活性および安定性、ならびに、所定pHでの過加水分解に対する基質特異性に依存する。
【0006】
いくつかのエステラーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼは、アルキルエステルの加水分解を触媒してそれに対応するカルボン酸を生産する能力を有する(式1)。
【化1】

【0007】
またいくつかのエステラーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼは過加水分解活性も示し、アルキルエステルからの過酸の合成を触媒する(式2)。
【化2】

【0008】
非特許文献2は、加水分解酵素(リパーゼ、エステラーゼおよびプロテアーゼ)のアシル基質の過酸化水素での過加水分解を触媒し、ペルオキシカルボン酸を形成する能力を調査し、水系中では、過加水分解は極めて低い効率でしか進行しないことを報告している。さらに彼等は、リパーゼおよびエステラーゼは、過カルボン酸をそれに対応するカルボン酸および過酸化水素に分解することを見出した。さらに彼等は、プロテアーゼは、水中でカルボン酸エステルを分解しないばかりか、その過加水分解も触媒しないことも見出した。著者らは、エステラーゼ、リパーゼおよびプロテアーゼは、一般に、水性環境中で、オクタン酸メチル、およびトリオクタノインのような単純エステルの過加水分解を触媒するのに適していないと結論付けている。
【0009】
特許文献6は、洗濯用洗剤用途のための漂白組成物の生産を説明しており、この組成物は、漂白しようとする材料を、酸素を放出する無機過酸素化合物、アシルアルキルエステル、およびエステルを加水分解することができるエステラーゼまたはリパーゼを含む水溶液と接触させることによって生産される。
【0010】
特許文献8は、プロテアーゼ酵素、過酸化水素源、および好ましくは化学的に過加水分解されないエステル基質を用いた、水溶液中過酸のその場生成のための活性化された酸化剤系を説明している。さらに漂白方法および過酸の形成方法も開示されている。
【0011】
特許文献7は、1種またはそれ以上の特定のエステラーゼおよびリパーゼ、過酸化水素源、および漂白組成物に使用するのに適した官能化したエステル基質を含む水溶液中での過酸の生産を説明している。しかしながら、生産された過酸の濃度が、多くの商業的な消毒剤用途に使用するには不十分であることが多い。
【0012】
酵素触媒を用いて過酸をそれに対応するカルボン酸エステルから製造するためのよく知られた方法のほとんどが、様々な用途において有効な消毒作用を示す程十分に高い濃度で過酸を生産し、それらを蓄積するものではない。近年、消毒剤および/または商業的な漂白剤として使用するのに適した濃度で過酸(例えば過酢酸)をその場生成する数種のプロテアーゼおよびリパーゼの組み合わせが報告されている(共同所有の9および10を参照;参照により本明細書に組込まれる)。しかしながら、過酸をその場生産することができるさらなるペルヒドロラーゼ触媒を確認する必要が未だある。
【0013】
特許文献11は、2〜8個の炭素原子を有するアシル基を有するグリセロールエステルを加水分解することに対して高い特異性を有するエステルの加水分解酵素(「ジアセチナーゼ(diacetinase)」として説明されている)活性を有するバチルス・ズブチリス株(ATCC31954TM)を説明している。特許文献11には、この株のエステルの加水分解酵素活性が、グリセロールエステルを含めてカルボン酸エステルに対して加水分解酵素活性を有するということについて記載されていないし、考察も予測もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,545,047号
【特許文献2】米国特許第6,183,807号
【特許文献3】米国特許第6,518,307号
【特許文献4】米国公開特許公報第20030026846号
【特許文献5】米国特許第5,683,724号
【特許文献6】米国特許第3,974,082号
【特許文献7】米国特許第5,296,161号
【特許文献8】米国特許第5,364,554号
【特許文献9】米国特許出願第11/413,246号
【特許文献10】米国特許出願第11/588,523号
【特許文献11】米国特許第4,444,886号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Organic Peroxides,Daniel Swern編集,Vol.1,313〜516頁;Wiley Interscience,New York,1971
【非特許文献2】O.Kirk等(Biocatalysis,11:65−77(1994))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
解決すべき課題は、過酸を様々な消毒剤用途および/または漂白用途に使用するのに適した濃度で酵素的にその場生産させる方法を提供することである。好ましくは、過酸組成物を生産するのに用いられる基質は、比較的非毒性であり、且つ廉価のものであり、例えば、カルボン酸エステル、特にモノ、ジおよびトリアシルグリセロール(ここにおいてアシル基は1〜8個の炭素原子を有する)、加えてアセチル化糖である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題は、CE−7エステラーゼの構造的なファミリーに属する酵素(例えば、セファロスポリンCデアセチラーゼ[CAH]、およびアセチルキシランエステラーゼ[AXE])が、本発明のカルボン酸エステルを、(無機の過酸素源、例えば過酸化水素の存在下で)消毒剤および/または漂白剤として使用するのに十分な濃度で過酸に変換するために有意な過加水分解活性を示すという発見によって解決した。このような系は、高濃度の過酸素を必要とすることなく過酸を高濃度で生成するために効率性を達成している。
【0018】
ペルヒドロラーゼの具体的な例としては、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)(ATCC31954TM)、B.ズブチリスBE1010(PayneおよびJackson,J.Bacteriol.173:2278−2282(1991))、B.ズブチリスATCC6633TM(米国特許第6,465,233号)、B.ズブチリスATCC29233TM;B.リケニフォルミスATCC14580TM(Rey等,Genome Biol.,5(10):article 77(2004))、クロストリジウム・テルモセルム(Clostridium thermocellum)ATCC27405TM(Copeland等,GENBANK(R)ZP_00504991)、B.プミルスPS213(Degrassi等,Microbiology,146:1585−1591(2000))、およびサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)(GENBANK(R)AAB70869.1)が挙げられる。
【0019】
本明細書において説明されるそれぞれの本発明のペルヒドロラーゼは、保存された構造的特徴(すなわち保存されたシグネチャーモチーフ)を共通して保持しており、それに加えて、他のα/β−加水分解酵素(例えば市販のリパーゼ;比較例26および28を参照)と比較した場合、優れた過加水分解活性も保持しており、このために、この特有の酵素ファミリーは、過酸を消毒剤および/または漂白剤として使用するのに十分な濃度でその場生成するのに特に適したものとなっている。本発明の方法において有用な適切なペルヒドロラーゼは、炭水化物エステラーゼのCE−7ファミリー内で見出された保存されたシグネチャーモチーフによって同定することができる。
【0020】
本発明の一側面において、カルボン酸エステルからペルオキシカルボン酸を生産する方法が提供され、該方法は、以下を含む:
a)一式の反応成分を備えること、該成分は、以下を含む:
1)以下からなる群より選択されるカルボン酸エステル:
i)以下の構造を有するエステル:
【化3】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R2は、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH2CH2−O)nH、または(CH2CH(CH3)−O)nHであり、
そしてnは、1〜10である];および
ii)以下の構造を有するグリセリド:
【化4】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい)であり、R3およびR4はそれぞれ、HまたはR1C(O)である];および
iii)アセチル化単糖、アセチル化二糖およびアセチル化多糖からなる群より選択されるアセチル化糖;
2)過酸素源;および
3)過加水分解活性を有する酵素触媒、該酵素触媒は、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインした(aligned)場合、シグネチャーモチーフを含む酵素を含み、該シグネチャーモチーフは、以下を含む:
i)アミノ酸の位置118〜120におけるRGQモチーフ;
ii)アミノ酸の位置179〜183におけるGXGSGモチーフ;および
iii)アミノ酸の位置298〜299におけるHEモチーフ;ならびに
b)該反応成分を適切な水性反応条件下で組合わせることによって、ペルオキシカルボン酸を生産させること。
【0021】
本発明のその他の側面において、酵素的に生産されたペルオキシカルボン酸組成物を用いて硬表面または無生物を消毒する方法が提供され、ここにおいて該方法は、以下を含む:
a)一式の反応成分を備えること、該成分は、以下を含む:
1)以下からなる群より選択される基質:
i)以下の構造を有するエステル:
【化5】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R2は、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH2CH2−O)nH、または(CH2CH(CH3)−O)nHであり、
そしてnは、1〜10である];および
ii)以下の構造を有するグリセリド:
【化6】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシル、またはC1〜C4アルコキシ基で置換されていてもよい)であり、R3およびR4はそれぞれ、HまたはR1C(O)である];
iii)アセチル化単糖、アセチル化二糖、およびアセチル化多糖からなる群より選択されるアセチル化糖;
2)過酸素源;および
3)過加水分解活性を有する酵素触媒、該酵素触媒は、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインした場合、シグネチャーモチーフを含み、該シグネチャーモチーフは、以下を含む:
i)アミノ酸の位置118〜120におけるRGQモチーフ;
ii)アミノ酸の位置179〜183におけるGXGSGモチーフ;および
iii)アミノ酸の位置298〜299におけるHEモチーフ;および
b)該反応成分を適切な水性反応条件下で組合わせることによって、ペルオキシカルボン酸生成物を生成させること;
c)場合により、該ペルオキシカルボン酸生成物を希釈すること;ならびに
d)上記硬表面または無生物を、工程b)または工程c)で生産されたペルオキシカルボン酸と接触させることによって、上記表面または上記無生物を消毒すること。
【0022】
本発明のその他の側面において、系が提供され、ペルオキシカルボン酸を生成する系を含み、該系は、以下を含む:
a)以下からなる群より選択される基質:
1)以下の構造を有するエステル:
【化7】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシル、またはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R2は、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH2CH2−O)nH、または(CH2CH(CH3)−O)nHであり、
そしてnは、1〜10である];および
【0023】
2)以下の構造を有するグリセリド:
【化8】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R3およびR4はそれぞれ、HまたはR1C(O)である];および
3)アセチル化単糖、アセチル化二糖およびアセチル化多糖からなる群より選択されるアセチル化糖;および
b)過酸素源;ならびに
c)過加水分解活性を有する酵素触媒、該酵素触媒は、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインした場合、シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、該シグネチャーモチーフは、以下を含む:
i)アミノ酸の位置118〜120におけるRGQモチーフ;
ii)アミノ酸の位置179〜183におけるGXGSGモチーフ;および
iii)アミノ酸の位置298〜299におけるHEモチーフ。
【0024】
本発明のその他の側面において、製剤が提供され、ここにおいて該製剤は、以下を含む:
a)酵素触媒(該酵素触媒は、CE−7シグネチャーモチーフを有するペルヒドロラーゼ酵素を含む)、およびモノアセチン、ジアセチン、トリアセチンおよびそれらの混合物からなる群より選択されるカルボン酸エステルを含む第一の混合物;該第一の混合物は、場合により、無機または有機緩衝液、腐食抑制剤、浸潤剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるさらなる成分を含む;ならびに
b)過酸素源および水を含む第二の混合物(該第二の混合物は、場合により、キレート剤をさらに含む)。
【0025】
本発明のその他の側面において、製剤が提供され、該製剤は、以下を含む:
a)酵素触媒(CE−7シグネチャーモチーフを有するペルヒドロラーゼ酵素を含む)と、アセチル化単糖、アセチル化二糖、アセチル化多糖およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるアセチル化糖とを含む第一の混合物(該第一の混合物は、場合により、無機または有機緩衝液、腐食抑制剤および浸潤剤をさらに含む);ならびに
b)過酸素源および水を含む第二の混合物(該第二の混合物は、場合により、キレート剤を含む)。
【0026】
その他の側面において、上の第一および第二の混合物とを組合わせて、ペルオキシカルボン酸の生産を提供することができる。さらなる側面において、上の第一および第二の混合物とを組合わせて、消毒製剤を形成することができる。
【0027】
本発明のその他の側面は、katEにおける破壊とkatGにおける破壊とを含む組換えエシェリキア・コリ細胞であり、ここにおいて宿主細胞は、エシェリキア・コリUM2ではない。その他の側面において、katEにおける破壊とkatGにおける破壊とを含む組換えエシェリキア・コリ宿主細胞は、エシェリキア・コリ株MG1655から誘導される。その他の側面において、上記エシェリキア・コリ宿主細胞または株は、少なくとも1つのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を生産するか、またはそれらを含む。その他の側面において、前記酵素は、過酸化水素を用いるか、または生成することができる。
【0028】
本発明の方法で用いられる過加水分解活性を有する酵素触媒は、生存不能な全細胞、透過性の全細胞、微生物細胞抽出物、部分精製した酵素および精製した酵素の1つまたはそれ以上の細胞成分の形態であってもよい。このような酵素触媒は、固定化されていなくてもよいし、または固定化されていてもよく、固定化としては、これらに限定されないが、不溶性の固体化支持体中またはその表面への固定化、可溶性ポリマー(例えば、低分子量ポリエチレングリコール(PEG))への共有結合による結合、および中空繊維カートリッジ中での可溶性酵素として固定化が挙げられる。
【0029】
本発明のその他の側面において、硬表面または無生物上の微生物群の濃度を減少させる方法を提供し、本方法は、上記の方法によって生産された過酸組成物を、前記硬表面または無生物と接触させ、それにより生存可能な微生物集団の濃度の対数値が、少なくとも3、好ましくは少なくとも4、より好ましくは少なくとも5、および最も好ましくは少なくとも6減少させることによってなされる。さらなる側面において、上記の方法によって生産された過酸組成物は、場合により、処理しようとする表面または無生物と接触させる前に、所望の有効な濃度に希釈してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1A】本発明のペルヒドロラーゼのCLUSTALWアライメントである。これらペルヒドロラーゼはそれぞれ、構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7(CE−7)に属するものと分類されており、一定の保存されたドメインを共有する。いくつかの保存されたモチーフ(下線で示した)は、CE−7炭水化物エステラーゼについてのシグネチャーモチーフを一緒になって形成することが確認されている。また、さらなるモチーフ(LXD;配列番号2のアミノ酸残基267〜269)も下線で示したが、これはシグネチャーモチーフをさらに特徴付けるのに用いてもよい。
【図1B】図1Aの続きである。
【図1C】図1Bの続きである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
生物学的な配列の簡単な説明
以下の配列は、37C.F.R.1.821〜1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules)」)に準拠し、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(1998)、ならびに、欧州特許条約(EPC)および特許協力条約(PCT)の規則5.2および49.5(a−bis)ならびに細則208および実施細則の付属書Cに記載の配列表の要件に従う。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データで用いられる記号および様式は、37C.F.R.§1.822に記載されている規則に準拠する。
【0032】
配列表は、同封のコンパクトディスクに示す。37CFR1.52(e)に従って、配列表を含むコンパクトディスクの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
配列番号1は、バチルス・ズブチリスATCC31954TM由来のセファロスポリンCデアセチラーゼ(cah)のコード領域の核酸配列である。
【0034】
配列番号2は、バチルス・ズブチリスATCC31954TM由来のセファロスポリンCデアセチラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0035】
配列番号3および4は、pSW186、pSW187、pSW188およびpSW190を構築するためにバチルス・ズブチリス種由来のペルヒドロラーゼ遺伝子をPCRで増幅するために用いられるプライマーである。
【0036】
配列番号5は、B.ズブチリス亜種のズブチリス株168由来のセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0037】
配列番号6は、B.ズブチリス亜種のズブチリス株168由来のセファロスポリンCデアセチラーゼの推測のアミノ酸配列であり、B.ズブチリスBE1010由来のセファロスポリンCデアセチラーゼの推測のアミノ酸配列と同一である。
【0038】
配列番号7は、B.ズブチリスATCC6633TM由来のセファロスポリンアセチルエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0039】
配列番号8は、B.ズブチリスATCC6633TM由来のセファロスポリンアセチルエステラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0040】
配列番号9は、B.リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)ATCC14580TM由来のセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0041】
配列番号10は、B.リケニフォルミスATCC14580TM由来のセファロスポリンCデアセチラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0042】
配列番号11は、B.プミルス(Bacillus pumilus)PS213由来のアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0043】
配列番号12は、B.プミルスPS213由来のアセチルキシランエステラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0044】
配列番号13は、クロストリジウム・テルモセルムATCC27405TM由来のアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0045】
配列番号14は、クロストリジウム・テルモセルムATCC27405TM由来のアセチルキシランエステラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0046】
配列番号15は、サーモトガ・ネアポリタナ由来のアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0047】
配列番号16は、サーモトガ・ネアポリタナ由来のアセチルキシランエステラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0048】
配列番号17は、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritime)MSB8由来のアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0049】
配列番号18は、サーモトガ・マリティマMSB8由来のアセチルキシランエステラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0050】
配列番号19は、サーモアナエロバクテリウム属のJW/SL YS485由来のアセチルキシランエステラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0051】
配列番号20は、サーモアナエロバクテリウム属のJW/SL YS485由来のアセチルキシランエステラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0052】
配列番号21は、バチルス種NRRL B−14911由来のセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0053】
配列番号22は、バチルス種NRRL B−14911由来のセファロスポリンCデアセチラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0054】
配列番号23は、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125由来のセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の核酸の配列である。
【0055】
配列番号24は、バチルス・ハロデュランスC−125由来のセファロスポリンCデアセチラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0056】
配列番号25は、バチルス・クラウシ(Bacillus clausii)KSM−K16由来のセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の核酸配列である。
【0057】
配列番号26は、バチルス・クラウシKSM−K16由来のセファロスポリンCデアセチラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0058】
配列番号27および28は、pSW194およびpSW189を構築するためにバチルス・ズブチリス種由来のペルヒドロラーゼ遺伝子をPCRで増幅するために用いられるプライマーである。
【0059】
配列番号29は、pSW194にクローニングしたPCR産物の核酸配列である。
【0060】
配列番号30は、pSW189にクローニングしたPCR産物の核酸配列である。
【0061】
配列番号31は、pSW190にクローニングしたバチルス・ズブチリスATCC29233TMのセファロスポリンCデアセチラーゼ(cah)遺伝子の核酸配列である。
【0062】
配列番号32は、バチルス・ズブチリスATCC29233TMのセファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH)の推測のアミノ酸配列である。
【0063】
配列番号33および34は、pSW191を構築するために、バチルス・リケニフォルミスATCC14580TMのセファロスポリンCデアセチラーゼ遺伝子をPCRで増幅するために用いられるプライマーである。
【0064】
配列番号35および36は、pSW193を構築するために、クロストリジウム・テルモセルムATCC27405TMのアセチルキシランエステラーゼ遺伝子をPCRで増幅するために用いられるプライマーである。
【0065】
配列番号37および38は、pSW195を構築するために、バチルス・プミルスPS213のアセチルキシランエステラーゼのコード配列(GENBANK(R)AJ249957)をPCRで増幅するために用いられるプライマーである。
【0066】
配列番号39および40は、pSW196を構築するために、サーモトガ・ネアポリタナのアセチルキシランエステラーゼ遺伝子(GENBANK(R)58632)をPCRで増幅するために用いられるプライマーである。
【0067】
配列番号41は、プラスミドpSW196中のサーモトガ・ネアポリタナのアセチルキシランエステラーゼ遺伝子のコドンが最適化された型の核酸配列である。
【0068】
配列番号42は、カナマイシン耐性遺伝子の核酸配列である。
【0069】
配列番号43は、プラスミドpKD13の核酸配列である。
【0070】
配列番号44および45は、E.コリMG1655中で、katGカタラーゼ遺伝子に相同性を有する領域に隣接したカナマイシン遺伝子をコードするPCR産物を生成するのに用いられるプライマーである。この産物は、内因性katG遺伝子を破壊するために用いられた。
【0071】
配列番号46は、E.コリMG1655中でkatGカタラーゼ遺伝子に相同性を有する領域に隣接したカナマイシン耐性遺伝子をコードするPCR産物の核酸配列である。この産物は、内因性katG遺伝子を破壊するために用いられた。
【0072】
配列番号47は、E.コリMG1655中におけるkatGカタラーゼ遺伝子の核酸配列である。
【0073】
配列番号48は、E.コリMG1655におけるKatGカタラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0074】
配列番号49は、プラスミドpKD46の核酸配列である。
【0075】
配列番号50および51は、katG遺伝子の破壊を確認するのに用いられるプライマーである。
【0076】
配列番号52は、プラスミドpCP20の核酸配列である。
【0077】
配列番号53および54は、E.コリMG1655中でkatEカタラーゼ遺伝子に相同性を有する領域に隣接したカナマイシン遺伝子をコードするPCR産物を生成するのに用いられるプライマーである。この産物は、内因性katE遺伝子を破壊するために用いられた。
【0078】
配列番号55は、E.コリMG1655中で、katEカタラーゼ遺伝子に相同性を有する領域に隣接したカナマイシン耐性遺伝子をコードするPCR産物の核酸配列である。この産物は、内因性katE遺伝子を破壊するために用いられた。
【0079】
配列番号56は、E.コリMG1655中でのkatEカタラーゼ遺伝子の核酸配列である。
【0080】
配列番号57は、E.コリMG1655中でのkatEカタラーゼの推測のアミノ酸配列である。
【0081】
配列番号58および59は、1回のノックアウト株E.コリMG1655ΔkatE、および二重のノックアウト株E.コリMG1655ΔkatGΔkatEにおけるkatE遺伝子の破壊を確認するのに用いられるプライマーである(本明細書においてE.コリKLP18と称される)。
【0082】
配列番号60は、配列番号12に記載のアミノ酸配列をコードするバチルス・プミルスPS213のコドンが最適化された型の核酸配列である。
【0083】
配列番号61は、配列番号2のアミノ酸残基118〜299を取り囲む領域のアミノ酸配列である。
【0084】
発明の詳細な説明
上述した課題は、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属する酵素が、カルボン酸エステル基質を過酸に変換するのに有意な過加水分解活性を示すという発見によって解決した。消毒および/または漂白用途のために、この構造的に関連する酵素ファミリーを用いて、高い効率で過酸濃度を生成させることができる。
【0085】
この開示において、多数の用語および略語が用いられる。特に他の規定がない限り、以下の定義が適用される。
【0086】
本明細書で用いられる用語「〜を含む」は、述べられた特徴、整数、工程または構成要素が請求項で述べられるように存在することを意味するが、1つまたはそれ以上の他の特徴、整数、工程、構成要素またはそれらの群の存在もしくは付加を排除するものではない。
【0087】
本明細書で用いられる、本発明の成分もしくは反応物、または用いられた成分もしくは反応物の量を修飾する「約」という用語は、例えば、現実での濃縮物または使用溶液を作製するのに用いられる典型的な測定手順および液体の取り扱い手順を通して;これらの手順中での意図しないエラーを通して;本組成物を作製したり、または本方法を実施したりするのに用いられる成分の製造、源または純度の相違を通して発生し得る数量の変動を意味する。また用語「約」は、特定の最初の混合物から得られた組成物の種々の平衡状態に起因して相違する量も包含する。用語「約」で修飾されているかどうかにかかわらず、請求項は、その量の均等も含む。
【0088】
本明細書で用いられる用語「過酸」は、ペルオキシ酸(peroxyacid)、ペルオキシカルボン酸、ペルオキシ酸(peroxy acid)、過カルボン酸、およびペルオキソ酸(peroxoic acid)と同義である。
【0089】
本明細書で用いられる用語「過酢酸」は「PAA」のように略記され、ペルオキシ酢酸、エタンペルオキシ酸、およびCASレジストリ番号79−21−0の全てのその他の同義語と同義である。
【0090】
本明細書で用いられる用語「モノアセチン」は、グリセロールモノアセテート、グリセリンモノアセテート、およびグリセリルモノアセテートと同義である。
【0091】
本明細書で用いられる用語「ジアセチン」は、グリセロールジアセテート;グリセリンジアセテート、グリセリルジアセテート、およびCASレジストリ番号25395−31−7の全てのその他の同義語と同義である。
【0092】
本明細書で用いられる用語「トリアセチン」は、グリセリントリアセテート;グリセロールトリアセテート;グリセリルトリアセテート、1,2,3−トリアセトキシプロパン、1,2,3−プロパントリオールトリアセテート、およびCASレジストリ番号102−76−1の全てのその他の同義語と同義である。
【0093】
本明細書で用いられる用語「モノブチリン」は、グリセロールモノブチラート、グリセリンモノブチラート、およびグリセリルモノブチラートと同義である。
【0094】
本明細書で用いられる用語「ジブチリン」は、グリセロールジブチラート、およびグリセリルジブチラートと同義である。
【0095】
本明細書で用いられる用語「トリブチリン」は、グリセロールトリブチラート、1,2,3−トリブチリルグリセロール、およびCASレジストリ番号60−01−5の全てのその他の同義語と同義である。
【0096】
本明細書で用いられる用語「モノプロピオニン」は、グリセロールモノプロピオナート、グリセリンモノプロピオナート、およびグリセリルモノプロピオナートと同義である。
【0097】
本明細書で用いられる用語「ジプロピオニン」は、グリセロールジプロピオナート、およびグリセリルジプロピオナートと同義である。
【0098】
本明細書で用いられる用語「トリプロピオニン」は、グリセリルトリプロピオナート、グリセロールトリプロピオナート、1,2,3−トリプロピオニルグリセロール、およびCASレジストリ番号139−45−7の全てのその他の同義語と同義である。
【0099】
本明細書で用いられる用語「酢酸エチル」は、酢酸エーテル、アセトキシエタン、エチルエタノアート、酢酸エチルエステル、エタン酸エチルエステル、エチル酢酸エステル、およびCASレジストリ番号141−78−6の全てのその他の同義語と同義である。
【0100】
本明細書で用いられる用語「乳酸エチル」は、乳酸エチルエステル、およびCASレジストリ番号97−64−3の全てのその他の同義語と同義である。
【0101】
本明細書で用いられる用語「アセチル化糖」および「アセチル化糖」は、少なくとも1個のアセチル基を含む単糖、二糖および多糖を意味する。例えば、このようなものとして、これらに限定されないが、グルコースペンタアセテート、キシローステトラアセテート、アセチル化キシラン、アセチル化キシランフラグメント、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、およびトリ−O−アセチル−グルカールが挙げられる。
【0102】
本明細書で用いられる用語「適切な酵素反応混合物」、「過酸のその場生成に適した成分」、「適切な反応成分」および「適切な反応混合物水溶液」は、反応物および酵素触媒が接触するようになる材料および水を意味する。本発明により適切な反応混合物水溶液の成分が提供されており、当業者であれば当然ながら、本方法に適した成分の変動範囲について理解する。一実施態様において、適切な酵素反応混合物は、反応成分を組合わせた際に過酸をその場生産するものである。そのようなものとして、反応成分は、反応成分の1種またはそれ以上が使用まで別々になったままの多成分系として提供されてもよい。複数の活性成分を分離し、それらを組み合わせるための系および手段の設計は該分野でよく知られており、一般的には、個々の反応成分の物理的形状に依存することになる。例えば、複数の活性な流体(液体−液体)系は、典型的には、マルチチャンバー式のディスペンサーボトル、または2相系(米国特許公報第2005/0139608号;米国特許第5,398,846号;米国特許第5,624,634号;米国特許第6,391,840号;欧州特許第0807156号B1;米国特許公報第2005/0008526号;およびPCT公報番号WO00/11713A1)を使用しており、これらは例えば、反応性の流体を混合した際に望ましい漂白剤が生産されるようなある種の漂白用途で見られる。過酸を生成するのに用いられる多成分系のその他の形態としては、これらに限定されないが、1種またはそれ以上の固形成分、または固体−液体成分の組み合わせ、例えば粉末(例えば、多くの市販の漂白組成物、米国特許第5,116,575号)、多層錠(米国特許第6,210,639号)、複数のコンパートメントを有する水溶性のパケット(米国特許第6,995,125号)、および水を添加すると反応する固体の凝集体(米国特許第6,319,888号)として設計されたものが挙げられる。一実施態様において、2種の別々の混合物として製剤が提供され、この場合、これら2種の混合物を組合わせるとペルオキシカルボン酸消毒剤が生成する。その他の実施態様において、以下を含む製剤が提供される:
a)以下を含む第一の混合物:
i)ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素触媒、該酵素触媒は、CE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を含む;および
ii)カルボン酸エステル基質(上記第一の混合物は、場合により、無機または有機緩衝液、腐食抑制剤、浸潤剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択される成分を含む);ならびに
b)過酸素源および水を含む第二の混合物(該第二の混合物は、場合により、キレート剤を含む)。
【0103】
その他の実施態様において、第一の混合物中のカルボン酸エステルは、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。その他の実施態様において、第一の混合物中のカルボン酸エステルは、アセチル化糖である。その他の実施態様において、第一の混合物中のこのような酵素触媒は、粒子状の固体である。その他の実施態様において、第一の反応混合物は、固形錠剤または粉末である。
【0104】
本明細書で用いられる用語「過加水分解」は、過酸を形成することができる選択された基質と過酸化物との反応と定義される。典型的には、無機過酸化物は、触媒の存在下で選択された基質と反応して、過酸を生産する。本明細書で用いられる用語「化学的な過加水分解」は、基質(過酸前駆体)を過酸化水素源とを組合わせる過加水分解反応を含み、ここで過酸は素触媒の非存在下で生成される。
【0105】
本明細書で用いられる用語「ペルヒドロラーゼ活性」は、タンパク質の単位質量(例えばミリグラム)、乾燥細胞質量、または固定化触媒質量あたりの触媒活性を意味する。
【0106】
本明細書で用いられる「酵素活性の1単位」または「活性の1単位」または「U」は、特定の温度での1分あたりの1μmolの過酸生成物の生産に必要なペルヒドロラーゼ活性の量と定義される。
【0107】
本明細書で用いられる用語「酵素触媒」および「ペルヒドロラーゼ触媒」は、過加水分解活性を有する酵素を含む触媒を意味し、これは、微生物の全細胞、透過性の微生物細胞、微生物細胞抽出物、一部精製した酵素または精製酵素の1種またはそれ以上の細胞の成分の形態であってもよい。またこのような酵素触媒は、化学修飾されていてもよい(例えば、ペグ化、または架橋試薬との反応による)。またペルヒドロラーゼ触媒は、当業者によく知られた方法を用いて可溶性または不溶性支持体に固定化されていてもよい;例えば、Immobilization of Enzymes and Cells;Gordon F.Bickerstaff,編集者;ヒューマナ・プレス(Humana Press),トトワ,ニュージャージー州,米国;1997を参照。本明細書において説明されているように、本発明の過加水分解活性を有する酵素はいずれも、構造的に酵素の炭水化物ファミリーのうちエステラーゼファミリー7(CE−7ファミリー)に属するものである(Coutinho,P.M.,Henrissat,B.“Carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach” in Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering,H.J.Gilbert,G.Davies,B.HenrissatおよびB.Svensson編集(1999)The Royal Society of Chemistry,Cambridge,3〜12頁を参照)。
【0108】
CE−7ファミリーに属するものとしては、セファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH;E.C.3.1.1.41)、およびアセチルキシランエステラーゼ(AXE;E.C.3.1.1.72)が挙げられる。CE−7エステラーゼファミリーに属するものは、保存されたシグネチャーモチーフを共有する(Vincent等,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003))。CE−7シグネチャーモチーフおよび/または実質的に類似の構造を含むペルヒドロラーゼは、本発明で使用するのに適している。実質的に類似した生体分子を同定する手段は当該分野で公知である(例えば、配列アライメントプロトコール、核酸ハイブリダイゼーション、保存されたシグネチャーモチーフの存在など)。一側面において、このような本発明の方法における酵素触媒は、本明細書で示された配列と、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、その上さらにより好ましくは少なくとも90%の同一性、および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する実質的に類似した酵素を含む。また本発明は、本発明のCE−7炭水化物エステラーゼをコードする核酸分子も提供する。さらなる実施態様において、本発明の方法において有用なペルヒドロラーゼ触媒は、ストリンジェントな条件下で本発明の核酸分子のいずれか1種にハイブリダイズする核酸分子によってコードされている。
【0109】
本明細書で用いられる用語「セファロスポリンCデアセチラーゼ」および「セファロスポリンCアセチルヒドロラーゼ」は、セファロスポリンCや7−アミノセファロスポラン酸のようなセファロスポリンの脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.41)を意味する(Mitsushima等,上記)。本明細書において説明されているように、有意な過加水分解活性を有するセファロスポリンCデアセチラーゼが数種提供される。
【0110】
本明細書で用いられる「アセチルキシランエステラーゼ」は、アセチル化キシランおよびその他のアセチル化糖の脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.72;AXE)を意味する。本明細書において説明されているように、有意なペルヒドロラーゼ活性を有するアセチルキシランエステラーゼとして分類される数種の酵素が提供される。
【0111】
本明細書で用いられる用語「バチルス・ズブチリス(ATCC31954TM)」は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection;ATCC)に寄託された、国際寄託の受託番号ATCC31954TMを有する細菌細胞を意味する。バチルス・ズブチリスATCC31954TMは、2〜8個の炭素−アシル基を有するグリセロールエステル、特にジアセチンを加水分解することができるエステルヒドロラーゼ(「ジアセチナーゼ」)活性を有することが報告されている(米国特許第4,444,886号;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。本明細書において説明されているように、有意なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素はすでにB.ズブチリスATCC31954TMから単離されており、これは、配列番号2として示される。このようにして単離された酵素のアミノ酸配列は、GenBank(R)受託番号BAA01729.1によって提供されたセファロスポリンCデアセチラーゼと100%のアミノ酸同一性を有する。
【0112】
本明細書で用いられる用語「バチルス・ズブチリスBE1010」は、PayneおよびJackson(J.Bacteriol.173:2278−2282(1991))によって報告されているようなバチルス・ズブチリス株を意味する。バチルス・ズブチリスBE1010は、ズブチリシンおよび中性プロテアーゼをコードする遺伝子に染色体の欠失を有する、派生的なバチルス・ズブチリス亜種のズブチリス株BR151(ATCC33677TM)である。本明細書において説明されているように、有意なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素はすでにB.ズブチリスBE1010から単離されており、これは、配列番号6として示される。このようにして単離された酵素のアミノ酸配列は、バチルス・ズブチリス亜種のズブチリス株168で報告されているセファロスポリンCデアセチラーゼと100%のアミノ酸同一性を有する(Kunst等,上記)。
【0113】
本明細書で用いられる用語「バチルス・ズブチリスATCC29233TM」は、バチルス・ズブチリスアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された、国際寄託の受託番号ATCC31954TMを有する株を意味する。本明細書において説明されているように、有意なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素が単離され、B.ズブチリスATCC29233TMから配列が決定されており、これは、配列番号32として示される。
【0114】
本明細書で用いられる用語「クロストリジウム・テルモセルムATCC27405TM」は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された、国際寄託の受託番号ATCC27405TMを有するクロストリジウム・テルモセルム株を意味する。C.テルモセルムATCC27405TM由来のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号14として示される。
【0115】
本明細書で用いられる用語「バチルス・ズブチリスATCC6633TM」は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された、国際寄託の受託番号ATCC6633TMを有する細菌細胞を意味する。バチルス・ズブチリスATCC6633TMは、セファロスポリンのアセチルヒドロラーゼ活性を有することが報告されている(米国特許第6,465,233号)。B.ズブチリスATCC6633TM由来のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号8として示される。
【0116】
本明細書で用いられる用語「バチルス・リケニフォルミスATCC14580TM」は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託された、国際寄託の受託番号ATCC14580TMを有する細菌細胞を意味する。バチルス・リケニフォルミスATCC14580TMは、セファロスポリンのアセチルヒドロラーゼ活性を有することが報告されている。B.リケニフォルミスATCC14580TM由来のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号10として示される。
【0117】
本明細書で用いられる用語「バチルス・プミルスPS213」は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告されている細菌細胞を意味する(GENBANK(R)AJ249957)。バチルス・プミルスPS213由来のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号12として示される。
【0118】
本明細書で用いられる用語「サーモトガ・ネアポリタナ」は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有することが報告されているサーモトガ・ネアポリタナ株を意味する(GENBANK(R)58632)。サーモトガ・ネアポリタナ由来のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号16として示される。
【0119】
本明細書で用いられる「単離された核酸分子」および「単離された核酸フラグメント」は交換可能に用いられることになり、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAの高分子を意味し、場合により合成、非天然または改変されたヌクレオチド塩基を含む。DNAの高分子の形態の単離された核酸分子は、cDNA、ゲノムDNA、または合成DNAの1種またはそれ以上のセグメントで構成されていてもよい。
【0120】
用語「アミノ酸」は、タンパク質またはポリペプチドの基礎となる化学的な構造単位を意味する。本明細書において、特定のアミノ酸を示すのに以下の略語が用いられる:
【0121】
【表1】

【0122】
本明細書で用いられる「実質的に類似した」は、核酸分子において、1個またはそれ以上のヌクレオチド塩基における変化によって1個またはそれ以上のアミノ酸の付加、置換または欠失が起こるが、そのDNA配列によってコードされたタンパク質の機能特性(すなわち過加水分解活性)に影響を与えないことを意味する。また本明細書で用いられる「実質的に類似した」は、本明細書において報告された配列に対して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、その上さらにより好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有する酵素も意味しており、ここで、生じた酵素は本発明の機能特性(すなわち過加水分解活性)を保持する。また「実質的に類似した」は、ストリンジェントな条件下で本明細書において報告された核酸分子にハイブリダイズする核酸分子によってコードされた過加水分解活性を有する酵素を意味する場合もある。従って、当然ながら、本発明は、特定の例示された配列よりも多くのものを包含する。
【0123】
例えば、当該分野でよく知られているように、所定の部位で化学的に等価なアミノ酸の生産をもたらすが、コードされたタンパク質の機能特性に影響を与えない遺伝子の変更は一般的である。本発明の目的にとって、置換は、以下の5グループのうちいずれか1つの範囲内の変換と定義される:
1.小さい脂肪族の非極性またはわずかに極性を有する残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly);
2.極性の負電荷を有する残基およびそれらのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln;
3.極性の正電荷を有する残基:His、Arg、Lys;
4.大きい脂肪族の非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys);および
5.大きい芳香族残基:Phe、Tyr、Trp。
【0124】
従って、疎水性アミノ酸であるアミノ酸アラニンに対応するコドンが、その他のより低い疎水性の残基(例えば、グリシン)、またはより高い疎水性の残基(例えば、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)をコードするコドンで置換されていてもよい。同様に、ある負電荷を有する残基のその他の残基での置換(例えば、アスパラギン酸のグルタミン酸での置換)、またはある正電荷を有する残基のその他の残基での置換(例えば、リシンのアルギニンでの置換)が起こる変化もまた、機能的に等価な生成物を生産することが予測され得る。多くの場合において、タンパク質分子のN末端およびC末端部分の変更をもたらすヌクレオチドの変化もまた、タンパク質活性を変更しないと予測される。
【0125】
上記で提案の改変はそれぞれ、十分に当該分野における型どおりの技術の範囲内であり、コードされた生成物の生物活性が保持されているかどうかの決定も同様である。さらに当業者であれば当然ながら、実質的に類似した配列も本発明に包含される。一実施態様において、実質的に類似した配列は、ストリンジェントな条件下(0.1×SSC、0.1%SDS、65℃、および2×SSC、0.1%SDSで洗浄、続いて0.1×SSC、0.1%SDS、65℃で洗浄)で本明細書において例示された配列とハイブリダイズするそれらの能力によって定義される。一実施態様において、本発明は、ストリンジェントな条件下で本明細書において報告された核酸分子にハイブリダイズする単離された核酸分子によってコードされた、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を含む。その他の好ましい実施態様において、本発明は、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号31、配列番号41、および配列番号60からなる群より選択される核酸配列を有する核酸分子にハイブリダイズする単離された核酸分子によってコードされたペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を含む。
【0126】
本明細書で用いられるように、温度および溶液のイオン強度の適切な条件下で、第一の核酸分子の一本鎖がその他の核酸分子にアニールすることができる場合、その核酸分子はその他の核酸分子(例えばcDNA、ゲノムDNAまたはRNA)に「ハイブリダイゼーション可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件はよく知られており、Sambrook,J.およびRussell,D.,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版,コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press),コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor)(2001)で例が示されている。ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定するのは、温度およびイオン強度の条件である。ストリンジェンシー条件を調節して、中程度に類似した分子(例えば関連性の遠い生物由来の相同配列)から、高度に類似した分子(例えば密接に関連した生物由来の機能的な酵素を複製する遺伝子)をスクリーニングすることができる。典型的には、ハイブリダイゼーション後の洗浄がストリンジェンシー条件を決定する。好ましい条件の構成は、6×SSC、0.5%SDSを用いた室温で15分間の洗浄から開始して、続いて、2×SSC、0.5%SDSを用いた45℃で30分間の洗浄を繰り返し、続いて、0.2×SSC、0.5%SDSを用いた50℃で30分間の洗浄を2回繰り返す一連の洗浄を使用するものである。より好ましい構成は、より高い温度を使用するものであり、この場合、ただし、最後の0.2×SSC、0.5%SDSを用いた2回の30分間の洗浄の温度が、60℃に高められていることを除いて、洗浄が上記の洗浄と同一である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のその他の好ましい構成は、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃、および2×SSC、0.1%SDSで洗浄、続いて最後に本明細書において例示された配列を用いた0.1×SSC、0.1%SDS、65℃での洗浄である。
【0127】
ハイブリダイゼーションは、2種の核酸が相補配列を含むことが必要であるが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが生じる可能性がある。ハイブリダイゼーションする核酸にとって適切なストリンジェンシーは、核酸の長さ、および相補性の程度、当該分野で公知の可変値に依存する。2種のヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのためのTm値は大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的な安定性(より高いTmに対応する)は、以下の順番で低くなる:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNA。長さが100個より長いヌクレオチドのハイブリッドのために、Tmを計算する方程式が導かれている(SambrookおよびRussell,上記)。比較的短い核酸(すなわちオリゴヌクレオチド)とのハイブリダイゼーションのために、ミスマッチの位置がより高い重要性を持つようにになり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(SambrookおよびRussell,上記)。一形態において、ハイブリダイゼーション可能な核酸は、少なくとも約10個ヌクレオチドの長さを有する。好ましくは、ハイブリダイゼーション可能な核酸の最短の長さは、少なくとも約15個のヌクレオチドの長さ、より好ましくは少なくとも約20個のヌクレオチドの長さ、さらにより好ましくは少なくとも30個のヌクレオチドの長さ、さらにより好ましくは少なくとも300個のヌクレオチドの長さ、および最も好ましくは少なくとも800個のヌクレオチドの長さである。さらに当業者であれば、当然ながら、プローブの長さのような要素に応じて温度および洗浄溶液の塩濃度を調節することが可能である。
【0128】
本明細書で用いられる用語「同一性(%)」は、2種またはそれ以上のポリペプチド配列間、または2種またはそれ以上のポリヌクレオチド配列間の関係であり、例えば配列を比較することによって決定される。当業界において、「同一性」はまた、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列の関連性の程度も意味し、これは、場合によっては、このような配列のストリング間のマッチングによって決定されることもある。「同一性」および「類似性」は既知の方法によって容易に計算することができ、このような方法としては、これらに限定されないが、以下で説明されているものが挙げられる:Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.編集)オックスフォード・ユニバーシティ・プレス(Oxford University Press),ニューヨーク州(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.編集)アカデミック・プレス(Academic Press),ニューヨーク州(1993);Computer Analysis of Sequence Data,Part I(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.編集)ヒューマナ・プレス,ニュージャージー州(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.編集)アカデミックプレス(1987);およびSequence Analysis Primer(Gribskov,M.and Devereux,J.編集)ストックトン・プレス(Stockton Press),ニューヨーク州(1991)。同一性および類似性を決定する方法は、公に利用可能なコンピュータープログラムにおいて体系化されている。配列アライメントおよび同一性(%)の計算は、レーザージーンバイオインフォマティクスコンピューティングスィート(LASERGENE bioinformatics computing suite)のメガライン(Megalign)プログラム(DNASTAR社(DNASTAR Inc.),ウィスコンシン州マディソン)、ベクターNTI(Vector NTI)バージョン7.0のアラインX(AlignX)プログラム(インフォマックス社(Informax,Inc.),メリーランド州ベセスダ)、またはエンボス・オープン(EMBOSS Open)ソフトウェアスィート(EMBL−EBI;Rice等,Trends in Genetics 16(6)pp276?277(2000))を用いて行ってもよい。配列のマルチプルアライメントを用いて、アライメントのクラスタル(Clustal)法(すなわち、CLUSTALW;例えばバージョン1.83)(HigginsおよびSharp,CABIOS,5:151−153(1989);Higgins等,Nucleic Acids Res.22:4673−4680(1994);およびChenna等,Nucleic Acids Res 31(13):3497−500(2003)、これは、欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)を介して欧州分子生物学研究所(European Molecular Biology Laboratory)より入手可能)をデフォルトパラメーターを用いて行うことができる。CLUSTALWタンパク質アライメントにとって適切なパラメーターは、GAP存在ペナルティー=15、GAP伸長=0.2、マトリックス=Gonnet(例えば、Gonnet250)、タンパク質ENDGAP=−1、タンパク質GAPDIST=4、およびKTUPLE=1を含む。一実施態様において、迅速または遅いアライメントがデフォルト設定で用いられ、ここにおいて好ましくは遅いアライメントである。あるいは、KTUPLE=1、GAPペナルティー=10、GAP伸長=1、マトリックス=BLOSUM(例えばBLOSUM64)、ウィンドウ=5、および保存された上の対角(TOP DIAGONALS SAVED)=5も使用できるように、CLUSTALW法(バージョン1.83)を用いるパラメーターを改変してもよい。
【0129】
本発明の一形態において、適切な単離された核酸分子(本発明の単離されたポリヌクレオチド)は、本明細書において報告されたアミノ酸配列に、少なくとも約50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。本発明の適切な核酸分子は、上記の相同性を有するだけでなく、典型的には、約300〜約340個のアミノ酸、より好ましくは約310〜約330個のアミノ酸、および最も好ましくは約318個のアミノ酸を有するポリペプチドもコードする。
【0130】
本明細書で用いられる用語「シグネチャーモチーフ」、「CE−7シグネチャーモチーフ」および「診断モチーフ」は、定義された活性を有する酵素ファミリーの間で共通の保存された構造を意味する。このようなシグネチャーモチーフを用いて、定義された基質群に対して類似した酵素活性を有する構造的に関連する酵素のファミリーを特徴付けおよび/または同定することができる。シグネチャーモチーフは、単一の連続したアミノ酸配列でもよし、または一緒になってシグネチャーモチーフを形成する隣接していない保存されたモチーフのコレクションであってもよい。典型的には、保存されたモチーフは、アミノ酸配列で示される。本明細書において説明されているように、本発明のペルヒドロラーゼは、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属する。この酵素ファミリーは、シグネチャーモチーフの存在によって特徴付けることができる(Vincent等,上記)。本明細書において定義したように、CE−7エステラーゼに関するシグネチャーモチーフは、以下の3種の保存されたモチーフを含む(残基の位置は、参照配列の配列番号2に従って番号付けた):
【化9】

【0131】
アミノ酸残基180位におけるXaaは、典型的には、グリシン、またはアラニンである。触媒性の三つ組に属するアミノ酸残基は、太字で示す。
【0132】
CE−7炭水化物エステラーゼファミリー内の保存されたモチーフのさらなる解析によれば、追加の保存されたモチーフ(配列番号2のアミノ酸267〜269位におけるLXD)の存在が示され、これによって、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属するペルヒドロラーゼを特徴付けることが可能である(図1a〜c)。さらなる実施態様において、上記で特徴付けられたシグネチャーモチーフは、以下のように定義される第四の保存されたモチーフを含む:
【化10】

【0133】
アミノ酸残基268位におけるXaaは、典型的には、イソロイシン、バリン、またはメチオニンである。この第四のモチーフは、触媒性の三つ組(Ser181−Asp269−His298)に属するアスパラギン酸残基(太字)を含む。
【0134】
多数のよく知られたグローバルアライメントのアルゴリズム(すなわち配列解析ソフトウェア)を用いて、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を示す2種またはそれ以上のアミノ酸配列をアラインしてもよく、それにより、その酵素が本発明のシグネチャーモチーフで構成されるかどうかを決定することができる。このようにしてアラインした配列を参照配列(配列番号2)と比較して、シグネチャーモチーフの存在を決定することができる。一実施態様において、参照アミノ酸配列(本明細書で用いられるように、バチルス・ズブチリスATCC31954TM由来のペルヒドロラーゼ配列(配列番号2))を用いたCLUSTALアライメント(CLUSTALW)を用いて、CE−7エステラーゼファミリーに属するペルヒドロラーゼを同定することができる。保存されたアミノ酸残基の相対的な番号付けは、アラインした配列内のわずかな挿入または欠失(例えば、5個またはそれ未満のアミノ酸)を考慮に入れるために、参照アミノ酸配列における残基の番号付けに基づく。
【0135】
本発明のシグネチャーモチーフを含む配列を同定するのに使用可能なその他の適切なアルゴリズムの例(参照配列と比較する場合)としては、これらに限定されないが、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48,443−453(1970);グローバルアライメントツール)、およびスミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)(J.Mol.Biol.147:195−197(1981);ローカルアライメントツール)が挙げられる。一実施態様において、スミス−ウォーターマンアライメントは、デフォルトパラメーターを用いて実施される。適切なデフォルトパラメーターの例は、GAPオープンペナルティー=10、およびGAP伸長ペナルティー=0.5を用いたBLOSUM62スコア行列の使用を含む。
【0136】
本明細書において例示されたペルヒドロラーゼ間での全体の同一性(%)の比較から、配列番号2に対してわずか42%の同一性しか有さない酵素(シグネチャーモチーフを保持しているものの)が、有意なペルヒドロラーゼ活性を示し、構造的にCE−7炭水化物エステラーゼと分類されることが示される。一実施態様において、本発明のペルヒドロラーゼとしては、本発明のシグネチャーモチーフを含む酵素が挙げられ、さらに、配列番号2に対して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも42%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、その上さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、その上さらにより好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%の同一性を有する。
【0137】
あるいは、保存されたモチーフを取り囲む領域を含む連続したアミノ酸配列(すなわち、配列番号2のアミノ酸残基118〜299;配列番号63として別々に提供される)を用いて、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属するものを同定することもできる。その他の実施態様において、適切なペルヒドロラーゼは、ペルヒドロラーゼ活性を有するものであり、さらに、配列番号61に対して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有するものである。
【0138】
本明細書で用いられる「コドンの縮重」は、コードされたポリペプチドのアミノ酸配列に影響を与えることなくヌクレオチド配列の変化が可能な遺伝子コードの性質を意味する。従って、本発明は、本発明の微生物のポリペプチドをコードするアミノ酸配列の全部または相当部分をコードするあらゆる核酸分子に関する。当業者であれば、所定のアミノ酸を指定するためのヌクレオチドコドンの使用において特定の宿主細胞によって示される「コドンバイアス」のことをよく認識している。従って、宿主細胞における発現を改善するための遺伝子を合成する場合、そのコドンの使用頻度が宿主細胞の好ましいコドンの使用頻度に近くなるように遺伝子を設計することが望ましい。
【0139】
本明細書で用いられる「合成遺伝子」は、当業者によく知られた手法を用いて化学合成されたオリゴヌクレオチドのビルディングブロックから構築することができる。これらのビルディングブロックをライゲーションし、アニールして遺伝子のセグメントを形成することができ、続いてこれを酵素的に組み立てて遺伝子全体を構築することができる。「化学合成された」は、DNA配列に関する場合、ヌクレオチド成分がインビトロで構築されたことを意味する。十分に確立された手法を用いてDNAの手作業による化学合成を達成してもよいし、または多数の市販の機械のいずれか1種を用いて自動化学合成を行ってもよい。従って、このような遺伝子は、宿主細胞のコドンバイアスを反映するためのヌクレオチド配列の最適化に基づいて最適な遺伝子発現がなされるように適合させることができる。当業者であれば当然ながら、コドンの使用が、宿主にとって好ましいコドンに偏っている場合、成功する遺伝子発現の見込みについてよく理解している。好ましいコドンの決定は、配列情報が入手可能な宿主細胞から誘導された遺伝子の調査に基づいて行うことができる。
【0140】
本明細書で用いられる「遺伝子」は、特定のタンパク質を発現する核酸分子を意味し、これには、コード配列の前に存在する調節配列(5’の非コード配列)、およびコード配列の後に存在する調節配列(3’の非コード配列)も含まれる。「天然型の遺伝子」は、天然に見出されるような遺伝子(それら自身の調節配列も共に含む)を意味する。「キメラ遺伝子」は、天然に一緒に見出されない調節およびコード配列を含む非天然型遺伝子であるあらゆる遺伝子を意味する。従って、キメラ遺伝子は、異なる源から誘導された調節配列およびコード配列を含んでもよいし、または同じ源から誘導されたが、天然に見出されるものとは異なる形態で配置された調節配列およびコード配列を含んでもよい。「内因性遺伝子」は、生物のゲノム中でそれらの天然の位置に存在する天然型遺伝子を意味する。「外来」遺伝子は、通常では宿主生物中で見出されないが、遺伝子移入によって宿主生物に導入される遺伝子を意味する。外来遺伝子は、非天然型の生物に挿入された天然型遺伝子を含んでいてもよいし、またはキメラ遺伝子を含んでいてもよい。「導入遺伝子」は、形質転換法によってゲノムに導入された遺伝子である。
【0141】
本明細書で用いられる「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を意味する。「適切な調節配列」は、コード配列の上流(5’の非コード配列)、コード配列内、またはその下流(3’の非コード配列)に位置し、転写、RNAプロセシング、または連結したコード配列の安定性もしくは翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を意味する。調節配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、およびステム−ループ構造を含んでいてもよい。
【0142】
本明細書で用いられる「プロモーター」は、コード配列または機能的なRNAの発現を制御することができるDNA配列を意味する。一般に、コード配列は、プロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは、それらの全体が天然型遺伝子から誘導されたものでもよいし、または天然にに見出される異なるプロモーターから誘導された異なる要素で構成されていてもよいし、または合成DNAセグメントを含んでいてもよい。当業者であれば当然ながら、様々なプロモーターが、発生の様々な段階で、または様々な環境または生理学的条件に応答して、遺伝子の発現を指示する可能性がある。最も多くの場合遺伝子を発現させるプロモーターは、一般的に「構成的プロモーター」と称される。さらに、ほとんどの場合、調節配列の正確な境界は完全に決められていないため、異なる長さのDNAフラグメントが、同一なプロモーター活性を有する可能性があることが認識されている。
【0143】
本明細書で用いられるように、「3’の非コード配列」は、コード配列の下流に位置するDNA配列を意味し、このような配列としては、ポリアデニル化認識配列(一般的には、真核生物に限定される)、およびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を与えることができる調節シグナルをコードするその他の配列が挙げられる。ポリアデニル化シグナルは、一般的には、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸領域の付加(一般的には、真核生物に限定される)に影響を与えることを特徴とする。
【0144】
本明細書で用いられる用語「機能するように連結した」は、一方の機能が他方の影響を受けるように、単一の核酸分子へ核酸配列が連結していることを意味する。例えば、プロモーターがそのコード配列の発現に影響を与えることができる場合、そのプロモーターはコード配列と機能するように連結しており、すなわち、そのコード配列は、プロモーターの転写制御下にある。コード配列は、センス方向で調節配列に機能するように連結していてもよいし、またはアンチセンス方向で連結していてもよい。
【0145】
本明細書で用いられる用語「発現」は、本発明の核酸分子から誘導されたセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を意味する。また発現は、mRNAのポリペプチドへの翻訳も意味することもある。
【0146】
本明細書で用いられる「形質転換」は、宿主生物のゲノムに核酸分子が移入することによって、遺伝学的に安定な遺伝が起こることを意味する。本発明において、宿主細胞のゲノムは、染色体遺伝子、および染色体外(例えばプラスミド)遺伝子を含む。形質転換した核酸分子を含む宿主生物は、「トランスジェニック」または「組換え」または「形質転換した」生物と称される。
【0147】
本明細書で用いられる用語「プラスミド」、「ベクター」および「カセット」は、多くの場合において細胞の中心的な代謝の一部ではない遺伝子を有する染色体外因子を意味し、一般的には環状の二本鎖DNA分子の形態である。このような要素は、自律複製型の配列、ゲノムを統合させる配列、ファージまたはヌクレオチド配列であってもよく、直鎖状または環状でもよく、あらゆる源から誘導された一本鎖または二本鎖DNAまたはRNAでもよく、ここにおいて多数のヌクレオチド配列が結合するか、または組換えられて、選択された遺伝子産物のためのプロモーターフラグメントおよびDNA配列を適切な3’非翻訳配列と共に細胞に導入することができる特有の構造になる。「形質転換カセット」は、外来遺伝子を含み、外来遺伝子に加えて特定の宿主細胞の形質転換を容易にするエレメントを有する特定のベクターを意味する。「発現カセット」は、外来遺伝子を含み、外来遺伝子に加えてその遺伝子の外来宿主中での発現を強化することができるエレメントを有する特定のベクターを意味する。
【0148】
本明細書で用いられる用語「配列解析ソフトウェア」は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の解析に有用なあらゆるコンピューターアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを意味する。「配列解析ソフトウェア」は、市販のものでもよいし、または個別に開発したものでもよい。典型的な配列解析ソフトウェアとしては、これらに限定されないが、一連のGCGプログラム(ウィスコンシン・パッケージ・バージョン(Wisconsin Package Version)9.0、ジェネティックス・コンピューター・グループ(Genetics Computer Group)(GCG),ウィスコンシン州マディソン)、BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul等,J.Mol.Biol.215:403−410(1990)、およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.マディソン,ウィスコンシン州53715米国)、CLUSTALW(例えば、バージョン1.83;Thompson等,Nucleic Acids Research,22(22):4673−4680(1994)、およびスミス−ウォーターマン(Smith−Waterman)アルゴリズムを内包したFASTAプログラム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111−20.編集者:Suhai,Sandor.Publisher:プレナム(Plenum),ニューヨーク州ニューヨーク)、ベクターNTI(インフォマックス社,メリーランド州ベセスダ)、およびシーケンチャー(Sequencher)v.4.05が挙げられる。本願に関して、解析に配列解析ソフトウェアが用いられる場合、解析結果は、特に他の規定がない限り指定されたプログラムの「デフォルト値」に基づくこととする。本明細書で用いられる「デフォルト値」は、ソフトウェアの製造元によって設定されたあらゆる値またはパラメーターのセットを意味することとし、このようなデフォルト値は、最初に初期設定した際にソフトウェアでもともとローディングされるものである。
【0149】
本明細書で用いられる用語「生物学的な汚染物質」は、1種またはそれ以上の不要な、および/または病原性の生物学的な物体を意味し、例えば、これらに限定されないが、微生物、胞子、ウイルス、プリオン、およびそれらの混合物が挙げられる。本方法は、生存可能な生物学的な汚染物質の存在を減少および/または除去するのに有用な有効濃度の少なくとも1種の過カルボン酸を生産する。その他の好ましい実施態様において、微生物汚染物質は、生存可能な病原性の微生物である。
【0150】
本明細書で用いられる用語「〜を消毒する」は、生物学的な汚染物質を破壊したり、またはその増殖を予防したりするプロセスを意味する。本明細書で用いられる用語「消毒剤」は、生物学的な汚染物質を破壊したり、中和したり、またはその増殖を阻害することによって消毒作用を示す物質を意味する。典型的には、消毒剤は、無生物または表面を処理するのに用いられる。本明細書で用いられる用語「防腐剤」は、病気を運搬する微生物の増殖を阻害する化学物質を意味する。実施態様の一形態において、生物学的な汚染物質は、病原微生物である。
【0151】
本明細書で用いられる用語「殺ウイルス剤」は、ウイルスを阻害または破壊する物質を意味し、「viricide」と同義である。ウイルスを阻害または破壊する能力を示す物質は、「殺ウイルス」活性を有すると説明される。過酸は、殺ウイルス活性を有する可能性がある。本発明との使用に適する可能性がある当該分野で既知の典型的な代替の殺ウイルス剤としては、例えば、アルコール、エーテル、クロロホルム、ホルムアルデヒド、フェノール、ベータ−プロピオラクトン、ヨウ素、塩素、水銀塩、ヒドロキシルアミン、エチレンオキシド、エチレングリコール、第四級アンモニウム化合物、酵素、および洗剤が挙げられる。
【0152】
本明細書で用いられる用語「殺生剤」は、微生物を不活性化したり、または破壊する化学物質を意味し、典型的には広範囲抗菌スペクトルを有するものである。微生物を不活性化または破壊する能力を示す化学物質は、「殺菌」活性を有すると説明される。過酸は、殺菌活性を有する可能性がある。本発明で使用するのに適する可能性がある当業界既知の典型的な代替の殺生剤としては、例えば、塩素、二酸化塩素、クロロイソシアヌレート、次亜塩素酸塩、オゾン、アクロレイン、アミン、塩素化フェノール類、銅塩、有機硫黄化合物、および第四アンモニウム塩が挙げられる。
【0153】
本明細書で用いられるように、語句「最少殺菌濃度」は、特定の接触時間で、標的微生物の生存可能な集団において所望の致死的な回復不能の減少を引き起こす殺菌性の物質の最少濃度を意味する。この有効性は、処理後の生存可能な微生物におけるlog10の減少によって測定することができる。一側面において、標的とする生存可能な微生物における処理後の減少は、少なくとも3の対数減少値、より好ましくは少なくとも4の対数減少値、および最も好ましくは少なくとも5の対数減少値である。その他の形態において、殺菌性を示す最低限の濃度は、生存可能な微生物細胞において少なくとも6の対数減少値である。
【0154】
本明細書で用いられる用語「過酸素源」および「過酸素の源」は、水溶液中に入れた場合、約1mMまたはそれより高い濃度で過酸化水素を提供することができる化合物を意味し、例えば、これらに限定されないが、過酸化水素、過酸化水素付加物(例えば、尿素の過酸化水素付加物(カルバミドペルオキシド))、ペルボレート、およびペルカルボネートが挙げられる。本明細書において説明されているように、反応混合物水溶液中で過酸素化合物によって提供される過酸化水素の濃度は、反応成分を合わせた際に、最初のうちは少なくとも1mMまたはそれより高い濃度である。一実施態様において、反応混合物水溶液中の過酸化水素の濃度は、少なくとも10mMである。その他の実施態様において、反応混合物水溶液中の過酸化水素の濃度は、少なくとも100mMである。その他の実施態様において、反応混合物水溶液中の過酸化水素の濃度は、少なくとも200mMである。その他の実施態様において、反応混合物水溶液中の過酸化水素の濃度は、500mMまたはそれより高い濃度である。さらにその他の実施態様において、反応混合物水溶液中の過酸化水素の濃度は、1000mMまたはそれより高い濃度である。反応混合物水溶液中での過酸化水素と酵素基質(例えばトリグリセリド)とのモル比(H22:基質)は、約0.002〜20であってもよく、好ましくは約0.1〜10、最も好ましくは約0.5〜5である。
【0155】
酵素触媒によるカルボン酸エステルおよび過酸化水素からの過酸の製造に適した反応条件
本発明の一形態において、過加水分解活性を有する酵素触媒の存在下で、カルボン酸エステルと、無機過酸化物、これらに限定されないが過酸化水素、過ホウ酸ナトリウムまたは過炭酸ナトリウムとを反応させることによって過酸を含む水性混合物の製造方法を提供する。一実施態様において、このような酵素触媒は、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属する構造を有するペルヒドロラーゼを含む。その他の実施態様において、ペルヒドロラーゼ触媒は、構造的にセファロスポリンCデアセチラーゼと分類される。その他の実施態様において、ペルヒドロラーゼ触媒は、構造的にアセチルキシランエステラーゼと分類される。
【0156】
一実施態様において、ペルヒドロラーゼ触媒は、過加水分解活性を有する酵素を含み、ここにおいてシグネチャーモチーフは、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインした場合、以下を含む:
a)アミノ酸残基118〜120としてRGQモチーフ;
b)アミノ酸残基179〜183としてGXSQGモチーフ;および
c)アミノ酸残基298〜299としてHEモチーフ。
【0157】
さらなる実施態様において、シグネチャーモチーフはさらに、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインした場合、アミノ酸残基267〜269にLXDモチーフと定義された第四の保存されたモチーフを含む。
【0158】
その他の実施態様において、ペルヒドロラーゼ触媒は、本発明のシグネチャーモチーフを有する酵素を含み、および配列番号2に対して少なくとも40%のアミノ酸を有する。
【0159】
その他の実施態様において、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号32からなる群より選択されるペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を含む。
【0160】
その他の実施態様において、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号61と定義された連続したシグネチャーモチーフに対して少なくとも40%のアミノ酸同一性を有する酵素を含み、ここで、上述の保存されたモチーフ(例えばRGQ、GXSQGおよびHE、ならびに場合によりLXD)が保存されている。
【0161】
その他の実施態様において、ペルヒドロラーゼ触媒は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号31、配列番号41、および配列番号60からなる群より選択される核酸配列にハイブリダイズする核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を有する酵素を含む。
【0162】
その他の実施態様において、ペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する酵素を含み、該酵素は、シグネチャーモチーフが保存されており、ペルヒドロラーゼ活性が保持される限り、1個またはそれ以上の付加、欠失または置換を有していてもよい。
【0163】
適切なカルボン酸エステルは、以下からなる群より選択される式を有する:
a)以下の式で示されるエステル:
【化11】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシル、またはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R2は、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH2CH2−O)nH、または(CH2CH(CH3)−O)nHであり、
そしてnは、1〜10である];
b)以下の式で示されるグリセリド:
【化12】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシル、またはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R3およびR4はそれぞれ、HまたはR1C(O)である];ならびに
c)アセチル化単糖、二糖および多糖からなる群より選択されるアセチル化糖。
【0164】
その他の好ましい実施態様において、アセチル化糖としては、アセチル化単糖、二糖および多糖が挙げられる。その他の実施態様において、アセチル化糖は、アセチル化キシラン、アセチル化キシランのフラグメント、アセチル化キシロース(例えば、キシローステトラアセテート)、アセチル化グルコース(例えば、グルコースペンタアセテート)、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、およびトリ−O−アセチル−D−グルカール、およびアセチル化セルロースからなる群より選択される。その他の好ましい実施態様において、アセチル化糖は、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、およびトリ−O−アセチル−D−グルカール、およびアセチル化セルロースからなる群より選択される。そのようなものとして、アセチル化炭水化物は、本発明の方法を用いて(すなわち、過酸素源の存在下で)過カルボン酸を生成するのに適した基質の可能性がある。
【0165】
その他の形態において、カルボン酸エステルは、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、3−ヒドロキシ酪酸メチル、3−ヒドロキシ酪酸エチル、2−アセチルクエン酸トリエチル、グルコースペンタアセテート、グルコノラクトン、グリセリド(モノ、ジおよびトリグリセリド)、例えばモノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン(グリセリルジプロピオナート)、トリプロピオニン(1,2,3−トリプロピオニルグリセロール)、モノブチリン、ジブチリン(グリセリルジブチラート)、トリブチリン(1,2,3−トリブチリルグリセロール)、アセチル化糖、およびそれらの混合物からなる群より選択される。その他の形態において、カルボン酸エステル基質は、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、酢酸エチル、および乳酸エチルからなる群より選択される。さらにその他の形態において、カルボン酸エステル基質は、ジアセチン、トリアセチン、酢酸エチル、および乳酸エチルからなる群より選択される。好ましい形態において、カルボン酸エステルは、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチンおよびそれらの混合物からなる群より選択されるグリセリドである。
【0166】
カルボン酸エステルは、酵素触媒による過加水分解の際に所望の濃度の過酸を生産するのに十分な濃度で反応混合物中に存在する。カルボン酸エステルは反応混合物中において完全に可溶性でなくてもよいが、ペルヒドロラーゼ触媒によるエステルのそれに対応する過酸への変換を許容する程度の溶解性を有する。カルボン酸エステルは、反応混合物の0.05質量%〜40質量%の濃度で、好ましくは反応混合物の0.1質量%〜20質量%の濃度で、およびより好ましくは反応混合物の0.5質量%〜10質量%の濃度で反応混合物中に存在する。
【0167】
過酸素源としては、これらに限定されないが、過酸化水素、過酸化水素付加物(例えば、尿素の過酸化水素付加物(カルバミドペルオキシド))、ペルボレート、およびペルカルボネートが挙げられる。反応混合物中の過酸素化合物の濃度は、0.0033質量%〜約50質量%の範囲であってもよい、好ましくは0.033質量%〜約40質量%、より好ましくは0.33質量%〜約30質量%である。
【0168】
多くのペルヒドロラーゼ触媒(全細胞、透過性の全細胞、および部分精製した全細胞抽出物)は、カタラーゼ活性を有することが報告されている(EC1.11.1.6)。カタラーゼは、過酸化水素の酸素および水への変換を触媒する。一側面において、過加水分解触媒は、カタラーゼ活性がない。その他の側面において、カタラーゼ阻害剤は、反応混合物に添加される。カタラーゼ阻害剤の例としては、これらに限定されないが、アジ化ナトリウム、および硫酸ヒドロキシルアミンが挙げられる。当業者であれば、必要に応じてカタラーゼ阻害剤の濃度調節することができる。カタラーゼ阻害剤の濃度は、典型的には0.1mM〜約1M;好ましくは約1mM〜約50mM;より好ましくは約1mM〜約20mMの範囲である。一側面において、アジ化ナトリウム濃度は、典型的には約20mM〜約60mMの範囲であり、硫酸ヒドロキシルアミンの濃度は、典型的には約0.5mM〜約30mM、好ましくは約10mMである。
【0169】
その他の実施態様において、このような酵素触媒は、有意なカタラーゼ活性がないか、またはカタラーゼ活性が減少しているか、または除去されるように操作される。宿主細胞中でのカタラーゼ活性は、よく知られた技術を用いてカタラーゼ活性に反応可能な遺伝子の発現を破壊することによってダウンレギュレートしてもよいし、または除去してもよく、このような技術としては、これらに限定されないが、トランスポゾン変異誘発、RNAアンチセンス発現、標的化変異誘発、およびランダム変異誘発が挙げられる。その他の好ましい実施態様において、内因性カタラーゼ活性をコードする遺伝子は、ダウンレギュレートされるか、または破壊される(すなわちノックアウトされる)。本明細書で用いられるように、「破壊された」遺伝子は、そのように改変された遺伝子によってコードされたタンパク質の活性および/または機能がなくなってしまう遺伝子である。遺伝子を破壊する手段は当該分野で公知であり、例えば、これらに限定されないが、対応するタンパク質の活性および/または機能がなくなってしまうような遺伝子への挿入、欠失または突然変異が挙げられる。さらに好ましい実施態様において、生産宿主は、katG(配列番号47)、およびkatE(配列番号56)からなる群より選択される破壊されたカタラーゼ遺伝子を含むE.コリ生産宿主である。その他の実施態様において、生産宿主は、katG1およびkatEカタラーゼ遺伝子の両方のダウンレギュレーションおよび/または破壊を含むE.コリ株である。本発明においてkatGおよびkatEの二重のノックアウトを含むE.コリ株が提供される(実施例15を参照;E.コリ株KLP18)。
【0170】
構築されたカタラーゼ陰性のE.コリ株KLP18(katGおよびkatEの二重のノックアウト)(実施例15)は、発酵槽条件下で増殖させることによって決定したカタラーゼ陰性株UM2(E.coli Genetic Stock Center #7156,イェール大学(Yale University),コネチカット州ニューヘブン)と比較して(実施例17〜19)、ラージスケール(10Lおよびそれより大規模)でのペルヒドロラーゼ酵素の生産のための優れた宿主であることが示された。KLP18およびUM2の両方はカタラーゼ陰性株であるにもかかわらず、UM2は、多数の栄養要求を示すことがわかっており、従って高濃度の酵母抽出物およびペプトンを含む培地を必要とする。たとえ発酵のための強化培地を用いても、UM2の増殖は不十分であり、限定的な最大細胞密度(OD)にしかならない。それに対してKLP18は特殊な栄養必要条件を有さず、無機培地単独、または追加の酵母抽出物を含む培地でも高い細胞密度に増殖した(実施例20)。
【0171】
反応混合物水溶液中の触媒濃度は、触媒の特定の触媒活性に依存し、所望の反応速度が得られるように選択される。過加水分解反応中の触媒の質量は、典型的には、0.0005mg〜10mg/mL(総反応体積)の範囲であり、好ましくは0.010mg〜2.0mg/mLの範囲である。またこのような触媒は、当業者によく知られた方法を用いて、可溶性または不溶性支持体に固定化されていてもよい;例えば、Immobilization of Enzymes and Cells;Gordon F.Bickerstaff,編集者;ヒューマナ・プレス,トトワ,ニュージャージー州,米国;1997を参照。固定化触媒の使用により、その後の反応において触媒の回収および再利用が可能になる。このような酵素触媒は、微生物全細胞、透過性の微生物細胞、微生物細胞抽出物、部分精製した、または精製した酵素、およびそれらの混合物の形態であってもよい。
【0172】
一側面において、カルボン酸エステルの化学的な過加水分解と酵素的な過加水分解との組み合わせによって生成した過酸の濃度は、望ましいpHでの漂白または消毒にとって有効な濃度の過酸を提供するのに十分な濃度である。その他の側面において、本発明の方法は、所望の有効な濃度の過酸を生産するための酵素と酵素基質との組み合わせを提供し、ここにおいて、添加された酵素が存在しない場合、それよりも有意に低い濃度の過酸しか生産されない。場合によっては無機過酸化物と酵素基質との直接的な化学反応によって実質的な酵素基質の化学的な過加水分解が起こり得るが、望ましい用途において有効な濃度の過酸を提供し、さらに、反応混合物へ適切なペルヒドロラーゼ触媒を添加することによって達成される総過酸濃度の有意な増加を提供するのに十分な濃度の過酸が生成しない可能性がある。
【0173】
少なくとも1種のカルボン酸エステルの過加水分解によって生成した過酸の濃度(例えば過酢酸)は、過加水分解反応が開始してから10分以内、好ましくは5分以内に、少なくとも約20ppm、好ましくは少なくとも100ppm、より好ましくは少なくとも約200ppmの過酸、より好ましくは少なくとも300ppm、より好ましくは少なくとも500ppm、より好ましくは少なくとも700ppm、より好ましくは少なくとも約1000ppmの過酸、最も好ましくは少なくとも2000ppmの過酸の濃度である。過酸を含む生成物混合物は、場合により、水または主に水で構成される溶液で希釈してもよく、それにより所望のより低い濃度の過酸を含む混合物を生産することができる。一側面において、所望の濃度の過酸を生産するのに必要な反応時間は、約2時間以下、好ましくは約30分以下、より好ましくは約10分以下、および最も好ましくは約5分またはそれ未満である。その他の形態において、所定濃度の微生物集団で汚染された硬表面または無生物は、前記反応成分を約5分〜約168時間で組合わせること、または前記反応成分を約5分〜約48時間、または約5分間〜2時間で組合わせること、またはこれらの範囲に含まれるあらゆる時間間隔で組合わせることによって本明細書で説明される方法に従って形成された過酸と接触させる。
【0174】
反応温度は、このような酵素触媒活性の反応速度と安定性の両方が制御されるように選択される。反応温度は、反応混合物の凝固点(約0℃)のすぐ上の温度から、約75℃までの範囲であってよく、好ましい反応温度の範囲は約5℃〜約55℃である。
【0175】
過酸を含む最終的な反応混合物のpHは、約2〜約9、好ましくは約3〜約8、より好ましくは約5〜約8、さらにより好ましくは約6〜約8、およびその上さらにより好ましくは約6.5〜約7.5である。その他の実施態様において、反応混合物のpHは、酸性(pHが7未満)である。反応および最終的な反応混合物のpHは、場合により適切な緩衝剤の添加によって制御してもよく、このような緩衝剤としては、これらに限定されないが、ホスフェート、ピロホスフェート、ビカルボネート、アセテートまたはシトレートが挙げられる。緩衝剤の濃度は、用いられる場合、典型的には0.1mM〜1.0M、好ましくは1mM〜300mM、最も好ましくは10mM〜100mMである。
【0176】
その他の側面において、酵素的な過加水分解生成物は、所望の機能を提供するさらなる構成要素を含んでいてもよい。これらのさらなる成分としては、これらに限定されないが、緩衝剤、洗剤ビルダー、増粘剤、乳化剤、界面活性剤、湿潤剤、腐食抑制剤(例えば、ベンゾトリアゾール)、酵素安定剤、および過酸化物安定剤(例えば、金属イオンキレート剤)が挙げられる。さらなる成分の多くは洗剤産業においてよく知られている(例えば米国特許第5,932,532号を参照;参照により本発明に包含させる)。乳化剤の例としては、これらに限定されないが、ポリビニルアルコール、またはポリビニルピロリドンが挙げられる。増粘剤の例としては、これらに限定されないが、ラポナイト(LAPONITE(R))RD、コーンスターチ、PVP、カーボワックス(CARBOWAX(R))、カーボポール(CARBOPOL(R))、カボシル(CABOSIL(R))、ポリソルベート20、PVA、およびレシチンが挙げられる。緩衝系の例としては、これらに限定されないが、一塩基性リン酸ナトリウム/二塩基性リン酸ナトリウム;スルファミド酸/トリエタノールアミン;クエン酸/トリエタノールアミン;酒石酸/トリエタノールアミン;コハク酸/トリエタノールアミン;および酢酸/トリエタノールアミンが挙げられる。界面活性剤の例としては、これらに限定されないが、a)非イオン界面活性剤、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドのブロックコポリマー、エトキシ化またはプロポキシル化された直鎖状および分岐状の第一および第二アルコール、および脂肪族ホスフィン酸化物、b)カチオン性界面活性剤、例えば第四級アンモニウム化合物、具体的には、3個のC1〜C2アルキル基と結合した窒素原子にさらにC8〜C20アルキル基が結合した第四級アンモニウム化合物、c)アニオン性界面活性剤、例えばアルカンカルボン酸(例えば、C8〜C20脂肪酸)、アルキルホスホネート、アルカンスルホネート(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム「SDS」)、または直鎖状または分岐状のアルキルベンゼンスルホネート、アルケンスルホネート、およびd)両性および双極性イオン性界面活性剤、例えばアミノカルボン酸、アミノジカルボン酸、アルキルベタイン、およびそれらの混合物が挙げられる。さらなる成分として、芳香剤、色素、過酸化水素の安定剤(例えば、金属キレート化剤、例えば1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(デクエスト(DEQUEST(R))2010、ソルティア社(Solutia Inc.,ミズーリ州セントルイス)、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA))、ターピナル(TURPINAL(R))SL、デクエスト(R)0520、デクエスト(R)0531、酵素活性の安定剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、および洗剤ビルダーを含んでいてもよい。
【0177】
ペルヒドロラーゼ触媒を用いた過酸のその場生産
セファロスポリンCデアセチラーゼ(E.C.3.1.1.41;分類名は、ephalosporin C cetylydrolases;CAH)は、セファロスポリンC、7−アミノセファロスポラン酸、および7−(チオフェン−2−アセトアミド)セファロスポラン酸のようなセファロスポリンに結合したアセチルエステルを加水分解する能力を有する酵素である(Abbott,B.and Fukuda,D.,Appl.Microbiol.30(3):413−419(1975)。CAHは、炭水化物エステラーゼファミリー7と称されるより大きい構造的に関連する酵素のファミリーに属する(CE−7;Coutinho,P.M.,Henrissat,B.“Carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach” in Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering,H.J.Gilbert,G.Davies,B.HenrissatおよびB.Svensson編集(1999)The Royal Society of Chemistry,Cambridge,3〜12頁を参照)。
【0178】
CE−7ファミリーは、CAH、およびアセチルキシランエステラーゼ(AXE;E.C.3.1.1.72)の両方を含む。CE−7ファミリーは、共通の構造的なモチーフを共有しており、これらは典型的には、アセチル化キシロオリゴ糖およびセファロスポリンCの両方にエステル加水分解活性を示すという点で極めて珍しく、これから、CE−7ファミリーは、各種の小さい基質に対して多機能のデアセチラーゼ活性を有する単一のタンパク質クラスを示すことがわかる(Vincent等,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003))。Vincent等は、このファミリーに属するもののなかでも構造的な類似性を説明しており、CE−7ファミリーに特徴的なシグネチャーの配列モチーフを定義している。
【0179】
CE−7ファミリーに属するものは、植物、菌類(例えば、セファロスポリジウム・アクレモニウム(Cephalosporidium acremonium))、酵母(例えば、ロドスポリディウム・トルロイデス(Rhodosporidium toruloides)、ロドトルラ・グルティニス(Rhodotorula glutinis))、および細菌、例えばサーモアナエロバクテリウム属;ノルカルディア・ラクタムデュランス(Norcardia lactamdurans)、および様々な種類のバチルス属に見出される(Politino等,Appl.Environ.Microbiol.,63(12):4807−4811(1997);Sakai等,J.Ferment.Bioeng.85:53−57(1998);Lorenz,W.and Wiegel,J.,J.Bacteriol 179:5436−5441(1997);Cardoza等,Appl.Microbiol.Biotechnol.,54(3):406−412(2000);Mitshushima等,supra,Abbott,B.and Fukuda,D.,Appl.Microbiol.30(3):413−419(1975);Vincent等,supra,Takami等,NAR,28(21):4317−4331(2000);Rey等,Genome Biol.,5(10):article 77(2004);Degrassi等,Microbiology.,146:1585−1591(2000);米国特許第6,645,233号;米国特許第5,281,525号;米国特許第5,338,676号;およびWO99/03984。表1に、配列番号2に有意な相同性を有するCE−7炭水化物エステラーゼファミリーの非包括的な一覧を示す。
【0180】
【表2】

【0181】
本発明のペルヒドロラーゼは、全てCE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属するものである。Vincent等(上記)によって説明されているように、上記ファミリーに属するものは、このファミリーに特徴的な共通のシグネチャーモチーフを共有する。本発明のペルヒドロラーゼのCLUSTALWアライメントから、これらのものはいずれもCE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属することがわかる(図1a〜c)。表2に、本発明のペルヒドロラーゼの総体的なアミノ酸同一性(%)の量の比較を示す。
【0182】
【表3】

【0183】
総体的なアミノ酸同一性(%)に関してバリエーションが観察されるが(すなわち、クロストリジウム・テルモセルムATCC27405TMのペルヒドロラーゼ;配列番号14は、バチルス・ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼ;配列番号2と57%のアミノ酸同一性しか有せず、同様にサーモトガ・ネアポリタナのペルヒドロラーゼ(配列番号16)は、配列番号2と42%の同一性しか有さない)、本発明のペルヒドロラーゼ酵素はそれぞれ、CE−7シグネチャーモチーフを共有する。従って、本発明のペルヒドロラーゼ触媒は、構造的にCE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属するものとして分類される酵素である。本発明のペルヒドロラーゼ酵素はそれぞれ、CE−7シグネチャー(診断)モチーフを含む。
【0184】
Vincent等(上記)がCE−7エステラーゼの構造を解析したところ、そのファミリーの診断要素である数種の高度に保存されたモチーフが同定された。図1で示されるように、高度に保存されたモチーフ(図1で下線で示した;配列番号2に対して位置を番号付けた)は、Arg118−Gly119−Gln120(RGQ)、Gly179−Xaa180−Ser181−Gln182−Gly183(GXSQG)、およびHis298−Glu299(HE)を含む。加えて、図1は、シグネチャーモチーフをさらに特徴付けることに使用可能なさらなる高度に保存されたLys267−Xaa268−Asp269(LXD)モチーフも記載している。全ての番号付けは、参照配列(B.ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼ;配列番号2)の番号付けに対してなされている。
【0185】
一実施態様において、適切な過加水分解酵素は、CE−7シグネチャーモチーフの存在によって同定することができる(Vincent等,上記)。その他の好ましい実施態様において、CE−7シグネチャーモチーフを含むペルヒドロラーゼは、バチルス・ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼ(配列番号2;すなわち、相対的なアミノ酸位置の番号付けに用いられる参照配列)に対してCLUSTALWアライメントを用いて同定される。配列番号2のアミノ酸残基の番号付けのように、CE−7シグネチャーモチーフは、以下のように定義される3種の保存されたモチーフを含む:
【化13】

【0186】
典型的には、アミノ酸残基180位におけるXaaは、グリシンまたはアラニンである。触媒性の三つ組に属するアミノ酸残基は、太字で示す。
【0187】
CE−7炭水化物エステラーゼファミリー内の保存されたモチーフのさらなる解析から、さらにCE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属するペルヒドロラーゼを特徴付ける可能性がある、さらなる保存されたモチーフ(配列番号2のアミノ酸267〜269位におけるLXD)の存在が示される(図1a〜c)。さらなる実施態様において、上記で特徴付けられたシグネチャーモチーフは、以下のように定義される第四の保存されたモチーフを含む:
【化14】

【0188】
アミノ酸残基268位におけるXaaは、典型的には、イソロイシン、バリン、またはメチオニンである。第四のモチーフは、触媒性の三つ組に属するアスパラギン酸残基(太字)を含む(Ser181−Asp269−His298)。
【0189】
多数のよく知られたグローバルアライメントのアルゴリズム(すなわち配列解析ソフトウェア)を用いて、2種またはそれ以上のアミノ酸配列(ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を示す)をアラインしてもよく、それにより、本発明のシグネチャーモチーフの存在を決定することができる(例えば、CLUSTALW、またはNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.,48:443−45)。アラインした配列は、参照配列(配列番号2)と比較される。一実施態様において、参照アミノ酸配列(本明細書で用いられるように、バチルス・ズブチリスATCC31954TM由来のCAH配列(配列番号2))を用いた CLUSTALアライメント(CLUSTALW)を用いて、CE−7エステラーゼファミリーに属するペルヒドロラーゼを同定することができる。保存されたアミノ酸残基の相対的な番号付けは、並べられた配列内のわずかな挿入または欠失(5個またはそれ未満のアミノ酸)を考慮に入れるために、参照アミノ酸配列における残基の番号付けに基づく。
【0190】
本明細書において例示されたペルヒドロラーゼ間での全体の同一性(%)の比較から、配列番号2に対してわずか42%の同一性しか有さない酵素(シグネチャーモチーフを保持しているものの)は、有意なペルヒドロラーゼ活性を示し、構造的にCE−7炭水化物エステラーゼと分類されることが示される。一実施態様において、本発明のペルヒドロラーゼとしては、本発明のシグネチャーモチーフを含む酵素であって、配列番号2に対して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも42%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、その上さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、その上さらにより好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有するものが挙げられる。
【0191】
全ての本発明のペルヒドロラーゼは、表3で示したような上記のシグネチャーモチーフで構成される。
【0192】
【表4】

【0193】
あるいは、4種の保存されたモチーフ(RGQ、GXSQG、LXDおよびHE;配列番号2のアミノ酸残基118〜299)を含む連続したシグネチャーモチーフ(配列番号61)も、CE−7炭水化物エステラーゼを同定するための連続したシグネチャーモチーフとして使用できる(図1a〜c)。そのようなものとして、適切な酵素はペルヒドロラーゼ活性を有すると予想され、さらに、配列番号61に対して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有すると同定されたものでもよい(CE−7炭水化物エステラーゼに見出される4種の保存されたモチーフは、下線で示される)。
RGQQSSEDTSISLHGHALGWMTKGILDKDTYYYRGVYLDAVRALEVISSFDEVDETRIGVTGGSQGGGLTIAAAALSDIPKAAVADYPYLSNFERAIDVALEQPYLEINSFFRRNGSPETEVQAMKTLSYFDIMNLADRVKVPVLMSIGLIDKVTPPSTVFAAYNHLETEKELKVYRYFGHE (配列番号61)。
【0194】
表4に、連続したシグネチャー配列を用いた本発明のペルヒドロラーゼ活性を有するCE−7エステラーゼとの比較を示す。デフォルトパラメーターを用いたBLASTPを用いた。
【0195】
【表5】

【0196】
あるいは、1種またはそれ以上の本発明のペルヒドロラーゼの完全長に対するアミノ酸同一性(%)も使用可能である。従って、適切なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、配列番号2に対して、少なくとも40%、好ましくは少なくとも42%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、その上さらにより好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも95%のアミノ酸同一性を有する。さらなる実施態様において、適切なペルヒドロラーゼ触媒は、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0197】
また適切なペルヒドロラーゼ酵素は、本発明のペルヒドロラーゼ酵素(例えば、配列番号2、6、8、10、12、14、16および32)のいずれか1つに1個またはそれ以上の欠失、置換および/または挿入を有する酵素を含んでいてもよい。表3で示されるように、ペルヒドロラーゼ活性を有するCE−7炭水化物エステラーゼは、わずか42%の総体的なアミノ酸同一性しか共有しない。本発明の実施例で提供されたデータによれば、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属する追加のペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、酵素が保存されたシグネチャーモチーフを保持してさえいれば、それより低い同一性(%)しか有さないものでもよい。そのようなものとして、酵素内の相対的な位置に保存されたシグネチャーモチーフ(表2を参照)が存在してさえいれば、様々な多数の欠失、置換および/または挿入が存在していてもよい。
【0198】
加えて、それに対応する核酸配列内で見出された構造的な類似性に従って適切な酵素を同定することは、十分に当業者の技術的範囲内である。ハイブリダイゼーション技術を用いて、類似した遺伝子配列を同定することができる。従って、本発明の適切なペルヒドロラーゼ触媒は、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号31、配列番号41、および配列番号60からなる群より選択される核酸配列を有する核酸分子にハイブリダイズする核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を含む。
【0199】
本発明の方法によれば、水性反応条件下で、炭水化物エステラーゼのCE−7ファミリーに属する酵素のペルヒドロラーゼ活性を用いて、工業的に有用な、効果的な濃度の過酸がその場生産される。一実施態様において、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素はまた、構造的および機能的にセファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH)にも分類される。その他の実施態様において、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、構造的および機能的にアセチルキシランエステラーゼ(AXE)と分類される。
【0200】
このようにして生産された過酸はかなりの反応性を有し、一般的には、経時的に濃度を減少させる。そのようなものとして、特に液体製剤の場合、様々な反応成分を分離した状態に維持することが望ましい場合がある。一形態において、過酸化水素源は、基質またはペルヒドロラーゼ触媒のいずれかから分離されており、好ましくはその両方から分離されている。これは、様々な技術を用いて達成することができ、このような技術としては、これらに限定されないが、多数のコンパートメントを有するディスペンサーの使用(米国特許第4,585,150号)、および使用時にペルヒドロラーゼ触媒と無機過酸化物および本発明の基質とを物理的に合わせることによって、水性における酵素的な過加水分解反応を開始させることが挙げられる。ペルヒドロラーゼ触媒は、場合により、反応チャンバー本体内に固定化されていてもよいし、または処理の標的となる表面および/または物体と接触させる前に、過酸を含む反応生成物から分離(例えば、ろ過等)させてもよい。ペルヒドロラーゼ触媒は、液体マトリックス中に存在していてもよいし、または固体の形態(すなわち粉末化、錠剤)でもよいし、または固体マトリックス内に埋め込まれていてもよい(その後、酵素的な過加水分解反応を開始させるために基質と混合される)。さらなる側面において、ペルヒドロラーゼ触媒を、溶解可能な、または多孔性のパウチ内に収容してもよく、続いてこのパウチを、酵素的な過加水分解を開始させるために水性の基質マトリックスに添加してもよい。追加のさらなる側面において、このような酵素触媒を含む粉末を基質(例えばトリアセチン)に懸濁して、使用時に水中で過酸素源と混合する。
【0201】
過酸および過酸化水素の濃度を決定するためのHPLC分析方法
反応物および生産物を解析するために、本発明の方法において様々な分析方法を用いることができ、このような分析方法としては、これらに限定されないが、滴定、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、マススペクトロスコピー(MS)、キャピラリー電気泳動(CE)、U.Karst等(Anal.Chem.,69(17):3623−3627(1997))によって説明されている分析法、および本発明の実施例で説明されるような2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン)−6−スルホネート(ABTS)分析(S.Minning等,Analytica Chimica Acta 378:293−298(1999)、およびWO2004/058961A1)が挙げられる。
【0202】
過酸の最少殺菌濃度の決定
J.Gabrielson等(J.Microbiol.Methods 50:63−73(2002))によって説明されている方法を用いて、過酸または過酸化水素、および酵素基質の最少殺菌濃度(MBC)を決定することができる。この分析方法はXTT還元の阻害に基づいており、ここでXTT((2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル]−5−[(フェニルアミノ)カルボニル]−2H−テトラゾリウム、分子内塩、モノナトリウム塩)は、490nmまたは450nmで測定された光学密度(OD)の変化によって微生物の呼吸活性を指示する酸化還元色素である。しかしながら、消毒剤および防腐剤の活性の試験に利用可能な様々なその他の方法があり、例えば、これらに限定されないが、生存可能なプレートの計数、直接的な顕微鏡による計数、乾燥質量、濁度測定、吸光度および生物発光(例えば、Brock,Semour S.,Disinfection,Sterilization,and Preservation,第5版,リッピンコット・ウィリアムス&ウィルキンス(Lippincott Williams&Wilkins),フィラデルフィア,ペンシルベニア州,米国;2001を参照)が挙げられる。
【0203】
酵素的に製造された過酸組成物の使用
本発明に係る方法に従って製造した酵素触媒により生成した過酸は、様々な硬表面/無生物への用途において、微生物、真菌、プリオン関連およびウイルス汚染の濃度を減少させるために用いることができ、例えば、医療機器(例えば内視鏡)、テクスタイル(例えば、衣服、カーペット)、調理用の表面、食品保存および食品包装器具、食品の包装に用いられる材料、ニワトリの孵化場、および飼育施設、動物の囲い、および微生物および/または殺ウイルス活性を有する使用済みのプロセス水の汚染除去に用いることができる。酵素により生成した過酸をプリオンを不活性化するように設計された製剤(例えば、所定のプロテアーゼ)に用いて、追加の殺菌活性を提供してもよい。好ましい形態において、本発明の過酸組成物は、特に、オートクレーブ不可能な医療機器や食品包装装置のための消毒剤として有用である。過酸を含む製剤は、GRASまたは食品グレードの成分(酵素、酵素基質、過酸化水素、および緩衝液)を用いて調製してもよいために、酵素により生成した過酸はさらに、動物の死体、肉、果物および野菜の汚染除去のために、または加工食品の汚染除去のために用いてもよい。酵素により生成した過酸は、最終的な形態が、粉末、液体、ゲル、フィルム、固体またはエアロゾルである製品に組み込んでもよい。酵素により生成した過酸は、なお有効な汚染除去効果を示すような濃度に希釈してもよい。
【0204】
有効な濃度の過酸を含む組成物を用いて、生存可能な病原性の微生物汚染物質で汚染された(または汚染された疑いのある)表面および/または物体を、表面または物体と本発明の方法によって生産された生成物とを接触させることによって消毒することができる。本明細書で用いられる「〜を接触させること」は、病気を引き起こす物体での汚染の疑いのある表面または無生物を、有効な濃度の過酸を含む消毒組成物に洗浄し消毒するのに十分な期間接触させた状態に置くことを意味する。「〜接触させること」は、噴霧すること、処理すること、浸漬すること、フラッシングすること、その上またはその中に流し込むこと、混合すること、組み合わせること、ペイントすること、コーティングすること、塗布すること、付着させることによって、およびその他の方法で、有効な濃度の過酸を含む過酸溶液もしくは組成物、または有効な濃度の過酸を形成する溶液もしくは組成物と、ある濃度の微生物集団で汚染されている疑いのある表面または無生物とが接触するようにすることを含む。本消毒剤組成物は、洗浄および消毒作用の両方を提供するために、洗浄用組成物と組み合わせてもよい。あるいは、一つの組成物で洗浄および消毒作用の両方を提供するために、本製剤に洗剤(例えば、界面活性剤または洗剤)が含有されていてもよい。
【0205】
また、有効な濃度の過酸を含む組成物は、少なくとも1種の追加の抗菌剤、プリオン分解プロテアーゼ、殺ウイルス剤、殺胞子剤、または殺生剤の組み合わせを含んでいてもよい。これらの物質と特許請求された方法によって生産された過酸とを組み合わせることによって、病原微生物、胞子、ウイルス、菌類および/またはプリオンで汚染された表面および/または物体(または汚染された疑いのある)を洗浄および消毒するのに用いられる場合、効果向上および/または相乗効果を提供することができる。適切な抗菌剤としては、カルボン酸エステル(例えば、p−ヒドロキシアルキルベンゾエート、およびアルキルシンナメート)、スルホン酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸)、ヨード化合物もしくは活性なハロゲン化合物(例えば、元素のハロゲン、ハロゲン酸化物(例えば、NaOCl、HOCl、HOBr、ClO2)、ヨウ素、インターハロゲン化物(interhalide)(例えば、一塩化ヨウ素、二塩化ヨウ素、三塩化ヨウ素、四塩化ヨウ素、塩化臭素、一臭化ヨウ素、または二臭化ヨウ素)、ポリハロゲン化物、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸、次亜臭素酸塩、次亜臭素酸、クロロおよびブロモヒダントイン、二酸化塩素、および亜塩素酸ナトリウム)、有機過酸化物、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化アルキルベンゾイル、オゾン、一重項酸素発生剤、およびそれらの混合物、フェノール誘導体(例えば、o−フェニルフェノール、o−ベンジル−p−クロロフェノール、tert−アミルフェノール、およびC1〜C6アルキルヒドロキシベンゾエート)、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、およびそれらの混合物)、およびこのような抗菌剤の混合物が挙げられ、これらは、所望の程度の微生物からの保護を提供するのに十分な量である。抗菌剤の有効量としては、約0.001質量%〜約60質量%の抗菌剤、約0.01質量%〜約15質量%の抗菌剤、または約0.08質量%〜約2.5質量%の抗菌剤が挙げられる。
【0206】
一側面において、本発明の方法によって形成された過酸を用いて、それらをある場所の上に、および/またはその地点に塗布すると、生存可能な微生物汚染物質(例えば、生存可能な微生物集団)の濃度を減少させることができる。本明細書で用いられるように、本発明の「場所」は、消毒または漂白に適した標的の表面の一部または全部を含む。標的の表面としては、潜在的に微生物、ウイルス、菌類、プリオンまたはそれらの組み合わせで汚染される可能性があるあらゆる表面が挙げられる。非限定的な例としては、食品または飲料産業で見られる器具の表面(例えば、タンク、コンベヤー、床、ドレーン、クーラー、冷凍庫、器具の表面、壁、バルブ、ベルト、パイプ、ドレーン、ジョイント、裂け目、それらの組み合わせなど);建築物の表面(例えば、壁、床、および窓);食品以外の業界に関連するパイプおよびドレーン、例えば、水処理施設、プールおよび温泉場、ならびに発酵タンク;病院または動物病院の表面(例えば、壁、床、ベッド、器具(例えば、内視鏡)病院/動物病院またはその他の医療の場で着用される衣類、例えば衣類、洗浄具(scrub)、靴、およびその他の病院または動物病院の表面);レストランの表面;浴室の表面;トイレ;衣服、および靴;家禽、ウシ、乳牛、ヤギ、ウマおよびブタのような家畜のための納屋または家畜小屋の表面;家禽またはエビのための孵化場;および薬剤または生物薬剤の表面(例えば、薬剤または生物薬剤の製造器具、薬剤または生物薬剤の成分、薬剤または生物薬剤の賦形剤)が挙げられる。また、さらなる硬表面としては、食品、例えば牛肉、鶏肉、豚肉、野菜、果物、海産食物、それらの組み合わせなども挙げられる。また上記場所としては、水を吸収する材料、例えば感染したリネンまたはその他の布地も挙げられる。また上記場所としては、収穫された植物または植物製品も挙げられ、例えば、種、球茎、塊茎、果実および野菜、発芽させた植物、および特に作物の発芽させた植物、例えば、穀草、葉菜、およびサラダ用作物、根菜、豆類、ベリー系の果物、柑橘系の果物、および硬い果物が挙げられる。
【0207】
硬表面を有する材料の非限定的な例は、金属(例えば、鋼、ステンレス鋼、クロム、チタン、鉄、銅、真鍮、アルミニウムおよびそれらの合金)、無機物質(例えば、コンクリート)、ポリマーおよびプラスチック(例えば、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリラート、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン)、ポリ(アクリロニトリル、ブタジエン)、アクリロニトリルブタジエン;ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタラート;ならびに、ポリアミド、例えばナイロン)である。さらなる表面としては、レンガ、タイル、セラミック、磁器、木材、ビニル、リノリウム、およびカーペットが挙げられる。
【0208】
組換え微生物の発現
本発明の配列の遺伝子および遺伝子産物は、異種宿主細胞中で、具体的には微生物宿主の細胞中で生産してもよい。本発明の遺伝子および核酸分子を発現させるための好ましい異種宿主細胞は、真菌または細菌属内で見出すことができ、広範な温度、pH値および溶媒耐性にわたり成長する微生物宿主である。例えば、細菌、酵母および糸状菌のいずれかが、適切に本発明の核酸分子の発現の宿主となり得ることが考えられる。ペルヒドロラーゼは、細胞内、細胞外または細胞内と細胞外の両方の組み合わせで発現される可能性があり、ここにおいて細胞外で発現させる方が、細胞内発現によって生産されたタンパク質を回収する方法よりも、発酵産物からの所望のタンパク質の回収が容易になる。転写、翻訳およびタンパク質生合成装置は、細胞のバイオマスを生成するのに用いられる細胞供給材料と比較して不変のままであり;それにもかかわらず機能的な遺伝子は発現する。宿主株の例としては、これらに限定されないが、細菌、真菌または酵母種が挙げられ、例えば、アスペルギルス属、トリコデルマ属、サッカロミセス属、ピチア属、ファフィア(Phaffia)属、カンジダ、ハンセヌラ属、ヤロウイア属(Yarrowia)、サルモネラ属、バチルス属、アシネトバクター属、ジモモナス属、アグロバクテリウム属、エリスロバクター属(Erythrobacter)、クロロビウム属、クロマチウム属、フラボバクテリウム属、キトファガ属、ロドバクター属、ロドコッカス属、ストレプトマイセス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリア属、マイコバクテリウム属、デイノコッカス属、エシェリキア属、エルウィニア属、パントエア属、シュードモナス属、スフィンゴモナス属、メチロモナス属、メチロバクター属、メチロコッカス属、メチロサイナス属(Methylosinus)、メチロマイクロビウム属(Methylomicrobium)、メチロシスティス属(Methylocystis)、アルカリゲネス属、シネコシスティス属(Synechocystis)、シネココッカス属(Synechococcus)、アナベナ属、チオバチルス属、メタノバクテリウム属、クレブシエラ属、およびミクソコッカス属が挙げられる。一実施態様において、細菌の宿主株としては、エシェリキア属、バチルス属、およびシュードモナス属が挙げられる。その他の好ましい実施態様において、細菌の宿主細胞は、エシェリキア・コリである。
【0209】
大規模な微生物の増殖、および機能的な遺伝子の発現は、多様な簡単または複雑な炭水化物、有機酸、およびアルコール、または飽和炭化水素、例えばメタンまたは二酸化炭素を使用する可能性があり、光合成または化学的独立栄養の宿主の場合、窒素、リン、硫黄、酸素、炭素またはあらゆる微量栄養素(例えば低分子量の無機物質イオンなど)の形態および量を使用する可能性がある。増殖速度の調節は、特定の調節分子を培養に添加すること、または添加しないことによって影響を受ける可能性があり、これらは、典型的には栄養素またはエネルギー源とはされない。
【0210】
適切な宿主細胞の形質転換に有用なベクターまたはカセットは当該分野で公知である。典型的には、ベクターまたはカセットは、関連する遺伝子の転写および翻訳を作動させる配列、選択マーカー、および自律増殖させたり、または染色体を統合させたりする配列を含む。適切なベクターは、転写開始の制御を担う遺伝子の5’領域、および転写終結を制御するDNAフラグメントの3’領域を含む。両方の制御領域が、形質転換宿主細胞に相同な遺伝子、および/または生産宿主に対して天然型の遺伝子から誘導される場合が最も好ましいが、このような制御領域は、必ずしもそのようにして誘導されていなくてもよい。
【0211】
所望の宿主細胞中で本発明のセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域を発現させるのに有用な開始制御領域またはプロモーターは多数あり、当業者によく知られている。実質的には、これらの遺伝子を稼働させることができればどのようなプロモーターでも本発明に適しており、例えば、これらに限定されないが、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセスにおける発現に有用);AOX1(ピチア(Pichia)における発現に有用);およびlac、ara、tet、trp、lPL、lPR、T7、tacおよびtrc(エシェリキア・コリにおける発現に有用)、加えて、amy、apr、nprプロモーター、およびバチルスにおける発現に有用な様々なファージプロモーターが挙げられる。
【0212】
また、終結制御領域も、好ましい宿主細胞にとって天然型の様々な遺伝子から誘導することができる。一実施態様において、終結制御領域の含有は任意である。その他の実施態様において、キメラ遺伝子は、好ましい宿主細胞から誘導された終結制御領域を含む。
【0213】
工業的な生産
本発明のペルヒドロラーゼ触媒を生産するのに様々な培養方法を適用することができる。例えば、組換え微生物宿主からの過剰発現させた特定の遺伝子産物の大規模な生産は、バッチ式および連続培養法のどちらによっても生産することができる。
【0214】
典型的なバッチ式培養法は閉鎖系であり、ここで、培地組成は培養の開始時に設定され、培養工程中に人為的な変更を受けることはない。従って、培養工程の開始時に、培地に所望の生物または生物群を播種し、増殖させるか、または系に追加で何も添加しないで代謝活性を起こさせてもよい。しかしながら、「バッチ式」培養は、典型的には炭素源の添加に関してバッチ式なのであって、pHおよび酸素濃度のような要因を制御する試みがなされること多い。バッチ系において、系の代謝産物およびバイオマス組成は、培養が終わる時間まで絶えず変化する。バッチ内で、培養細胞は穏やかに静止状態のラグフェーズを経て高い対数増殖期になり、最終的に定常期になり、ここにおいて増殖速度は減少するか、または停止する。未処理の場合、定常期中の細胞は最終的には死滅すると予想される。いくつかの系において、対数期中の細胞が最終産物または中間体の生産の大部分を担うことが多い。その他の系において、静止または対数期後も生産が起こる可能性がある。
【0215】
標準的なバッチ系における変化形は、流加培養系である。本発明において、流加培養プロセスも適切であり、これは典型的なバッチ系を含むが、基質が培養が進行するにつれて段階的に添加される。流加培養系は、異化代謝産物の抑制が細胞の代謝を阻害しやすい場合に有用であり、ここにおいて、培地中に限定的な量の基質しか含まれていないことが望ましい。流加培養系における実際の基質濃度の測定は難しいため、pH、溶存酸素および排ガス(例えばCO2)の分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチ式および流加培養法は一般的で当業界公知であり、Thomas D.Brock in Biotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,第2版,Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA(1989)、およびDeshpande,Mukund V.,Appl.Biochem.Biotechnol.,36:227(1992)においてその例が見出される。
【0216】
また、連続培養を用いて、望ましい生成物の商業的な生産も達成することができる。連続培養は開放系であり、ここにおいてバイオリアクターに規定された培地が連続的に添加され、同時に等量の調整培地が処理のために除去される。一般的に、連続培養では、細胞が一定の高い液相密度に維持され、ここにおいて細胞は主として対数増殖期にある。あるいは、固定化細胞を用いて連続培養を実施してもよく、ここにおいて炭素および栄養素は連続的に添加され、有用な生成物、副産物または廃棄物は、細胞塊から連続的に除去される。細胞の固定化は、天然および/または合成材料で構成される多様な固体支持体を用いて行うことができる。
【0217】
連続または半連続培養によって、細胞増殖または最終産物の濃度に影響を与える1つの因子または多数の因子の調節が可能になる。例えば、1つ方法によれば、炭素源または窒素レベルのような制限される栄養素を固定化の比率で維持し、その他の全てのパラメーターの調節を可能にすると予想される。その他の系において、増殖に影響を与える多数の因子の連続的な変更が可能であり、一方で、細胞濃度(培地の濁度によって測定される)は一定に維持される。連続的な系では、定常状態での増殖状態が維持されるような努力がなされるため、培養中に培地が取り出されることによる細胞の損失は、細胞増殖速度に応じてバランスをとらなければならない。連続培養プロセスのための栄養素および増殖因子を調節する方法、加えて、生成物の生成速度を最大化する技術は、工業的な微生物学の業界においてよく知られており、上記のBrockによって様々な方法が詳述されている。
【0218】
本発明における発酵培地は、適切な炭素基質を含んでいなければならない。適切な基質としては、これらに限定されないが、単糖、例えばグルコース、およびフルクトース、二糖、例えばラクトース、またはスクロース、多糖、例えばスターチ、またはセルロース、またはそれらの混合物、および例えばチーズ乳清の浸透液、コーンスティープリカー、砂糖大根の糖蜜、および大麦の麦芽のような再生可能な供給材料由来の未精製の混合物が挙げられる。加えて、炭素基質は1個の炭素を含む基質であってもよく、例えば二酸化炭素、メタンまたはメタノール(例えば、宿主細胞がメチロトローフィックな微生物である場合)である。加えて、様々なカンジダ種がアラニンまたはオレイン酸を代謝すると予想される(Sulter等,Arch.Microbiol.,153:485−489(1990))。従って、本発明において利用される炭素源は多種多様の炭素を含む基質を包含し得ることが考えられ、生物の選択によってのみ限定されると予想される。
【0219】
本発明者らは、特に、引用した全ての参考文献の全内容を本開示に組み込む。さらに、量、濃度またはその他の値もしくはパラメーターが、範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値の列挙のいずれかとして与えられている場合、これは、あらゆる上限の範囲の限定もしくは好ましい値と、あらゆる下限の範囲の限定もしくは好ましい値とのあらゆる対から形成された全ての範囲を、範囲が別々に開示されているかどうかに関係なく具体的に開示しているものとする。本明細書において各種の数値が列挙されている場合、特に他の指定がない限り、その範囲は、それらの両端の値ならびに範囲内の全ての整数および分数を含むものとする。範囲が定義されている場合、本発明の範囲を列挙された特定の値に限定することは目的としない。
【0220】
一般的な方法
本発明の好ましい側面を実証するために、以下の実施例を示す。当業者であれば当然ながら、以下の実施例で開示された技術は、本発明者らによって本発明の実施において十分に機能することが発見された技術を示しており、従って、その実施にとって好ましいモードを構成するものとすることができる。しかしながら、当業者であれば当然ながら、本発明の開示に照して、開示された特定の実施態様に多くの変更をなすことができ、それでもなお本発明の本質および範囲から逸脱することなく同様のまたは類似した結果が得ることができる。
【0221】
全ての試薬および材料は、特に他の規定がない限り、ディフコ・ラボラトリーズ(DIFCO Laboratories,ミシガン州デトロイト)、ギブコ(GIBCO)/BRL(メリーランド州ゲイザースバーグ)、TCIアメリカ(TCI America,オレゴン州ポートランド)、ロシュ・ダイアグノスティックス社(Roche Diagnostics Corporation,インディアナ州インディアナポリス)、またはシグマ/アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company,ミズーリ州セントルイス)から得た。
【0222】
本明細書に記載の以下の略語は、以下に示すように測定、技術、特性または化合物の単位に相当する:「sec」または「s」は、秒を意味し、「min」は、分を意味し、「h」または「hr」は、時間を意味し、「μL」は、マイクロリットルを意味し、「mL」は、ミリリットルを意味し、「L」は、リットルを意味し、「mM」は、ミリモル濃度を意味し、「M」は、モル濃度を意味し、「mmol」は、ミリモルを意味し、「ppm」は、百万分率を意味し、「wt」は、質量を意味し、「wt%」は、質量パーセントを意味し、「g」は、グラムを意味し、「μg」は、マイクログラムを意味し、「g」は、重力を意味し、「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを意味し、「ddH2O」は、蒸留して脱イオンした水を意味し、「dcw」は、乾燥細胞質量を意味し、「ATCC」または「ATCC(R)」は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(バージニア州マナサス)を意味し、「U」は、ペルヒドロラーゼ活性の単位を意味し、「rpm」は、毎分回転数を意味し、および「EDTA」は、エチレンジアミン四酢酸を意味する。
【実施例】
【0223】
実施例1
バチルス・ズブチリスATCC31954TMの増殖および細胞抽出物の調製
5mLの栄養液体培地(ディフコ;0003−01−6)中にバチルス・ズブチリス(ATCC31954TM)の乾燥させた培養物を懸濁し、30℃で3日間インキュベートすることによって培養物を復活させた。インキュベートしてから3日目に、培養液のアリコートをトリプチケースソイ寒天培養プレート(ベクトン,ディッキンソン・アンド・カンパニー(Becton,Dickinson,and Company);ニュージャージー州フランクリンレイクス)上に線状に塗布し、35℃で24時間インキュベートした。1マイクロリットルの植菌ループ(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson);カタログ番号220215)に数個のシングルコロニーを掻き取り、50mLのラクトバチルスMRSブロス(ハーディ・ダイアグノスティクス(Hardy Diagnostics),カリフォルニア州サンタマリア;カタログ番号C5931)に移した。次に、この培養物を、30℃で、200rpmの撹拌速度で12時間増殖させた。増殖させてから12時間後に、2mLの培養液を、100mLのMRSブロスを含む500mLのバッフルなしの振盪フラスコに移し、30℃および200rpmで12〜14時間撹拌することによって増殖させた。その後細胞を、15,000×gで25分間、5℃での遠心分離によって採取し、得られた細胞のペーストを−80℃で保存した。
【0224】
細胞抽出物を調製するために、細胞のペースト0.9gを、ジチオスレイトール(1mM)およびEDTA(1mM)を含む0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中に25質量%(湿った細胞の質量)で懸濁した。細胞懸濁液を、16,000psiの作動圧力を有するフレンチプレスに2回通過させた。続いて未精製の抽出物を、20,000×gで遠心分離し、残滓を除去し、透明な細胞抽出物を作製し、これを総可溶性タンパク質について分析し(Bicinchoninic Acid Kit for Protein Determination,シグマ・アルドリッチ,シグマカタログ番号BCA1−KT)、続いて凍結させ、−80℃で保存した。
【0225】
実施例2
バチルス・ズブチリスATCC31954TMの半精製した細胞抽出物の過加水分解活性の決定
バチルス・ズブチリス(ATCC31954TM)細胞抽出物(1mLあたり10mgのタンパク質総量、実施例1で説明されているようにして調製した)の1.0mLのアリコートを、等しい体積の50mMリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈し、100,000分子量カットオフ(MWCO)のセントリコン(Centricon)メンブレンユニット(ミリポア社(Millipore Corp),マサチューセッツ州ベッドフォード)を通過させてろ過した。得られた1mLあたり1.5mgのタンパク質総量を含むろ液(半精製した細胞抽出物)を、総可溶性タンパク質(Bicinchoninic Acid Kit for Protein Determination、シグマカタログ番号BCA1−KT)について分析したところ、このろ液の分析は測定可能なカタラーゼ活性を示さなかった。
【0226】
50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中にトリアセチン(250mM)、過酸化水素(2.5M)、および0.100mLの半精製した細胞抽出物(0.15mgの総抽出物タンパク質)を含む1mLの反応混合物を25℃で混合した。添加された半精製した細胞抽出物の非存在下で、過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、半精製した細胞抽出物の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。
【0227】
反応混合物中の過酢酸の濃度の決定を、Karst等によって説明されている方法に従って行った。反応混合物のアリコート(0.250mL)を10分間および30分間で取り出し、ウルトラフリー(Ultrafree(R))MC−フィルターユニット(30,000の分画分子量(Normal Molecular Weight Limit;NMWL)、ミリポアカタログ番号UFC3LKT 00)を用いて、12,000rpm2分間遠心分離することによってろ過した;ろ過によってアリコートのタンパク質成分を除去して反応を止めた。得られたろ液のアリコート(0.100mL)を、0.300mLの脱イオン水を含む1.5mLのねじ蓋を有するHPLCバイアル(アジレント・テクノロジーズ(Agilent Technologies),カリフォルニア州パロアルト;番号5182−0715)に移し、続いて、アセトニトリル中の20mMのMTS(メチル−p−トリル−硫化物)0.100mLを添加し、バイアルの蓋を閉め、内容物を短時間で混合し、その後、遮光しながら約25℃で10分間インキュベートした。続いて各バイアルに、0.400mLのアセトニトリル、および0.100mLのトリフェニルホスフィンのアセトニトリル溶液(TPP、40mM)を添加し、バイアルの蓋を再度閉め、得られた溶液を混合し、遮光しながら約25℃で30分間インキュベートした。続いて各バイアルに、0.100mLの10mMのN,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET;HPLCの外部標準)を添加し、以下で説明されているようにして得られた溶液をHPLCで分析した。表5に、10分間および30分間で生産された過酢酸濃度を掲記した。
【0228】
HPLC方法
スペルコ・ディスカバリー(Supelco Discovery)C8カラム(10cm×4.0mm、5μm)(カタログ番号569422−U)w/プレカラムは、スペルコ・スペルガード・ディスカバリー(Supelco Supelguard Discovery)C8(シグマ−アルドリッチ;カタログ番号59590−U);10マイクロリットルの注入体積;CH3CN(シグマ−アルドリッチ;番号270717)および脱イオンH2Oを、1.0mL/分および周囲温度で用いた勾配法:
【0229】
【表6】

【0230】
【表7】

【0231】
実施例3
バチルス・ズブチリスATCC31954TM細胞抽出物の半精製した酵素の過加水分解活性
バチルス・ズブチリスATCC31954TMの増殖および抽出物製造を実施例1で説明されているようにして行った(ただしを未精製の抽出物は遠心分離しなかった)。未精製の抽出物を冷たい n−プロパノール(−20℃)を用いて分画した。氷浴中で無細胞抽出物を含むフラスコを15分間撹拌し、続いてn−プロパノール(−20℃)を40%(v/v)の濃度まで滴下して添加した(抽出物の凍結を防ぐため)。得られた抽出物/プロパノール混合物を氷浴中で30分間撹拌し、続いて、5℃で、12,000×gで10分間遠心分離し、上清をフラスコに戻し、氷浴に置いた。追加のn−プロパノール(−20℃)を上清に、60%(v/v)の濃度まで撹拌しながらゆっくり添加し、得られた混合物を氷浴中で30分間撹拌し、続いて、前述の通りに遠心分離した。この第二の分画からのペレットを 氷上で保存し、上清をフラスコに戻し、氷浴に置いた。冷たい n−プロパノールを上清に、80%(v/v)の濃度まで撹拌しながらゆっくり添加し、この混合物を30分間撹拌し、前述の通りに遠心分離した。60〜80%分画からのペレットを氷上で保存した。40〜60%(v/v)n−プロパノール分画および60〜80%(v/v)n−プロパノール分画からのペレットを、最小量の0.05Mリン酸緩衝液(pH6.5)中に溶解させ、得られた溶液を総可溶性タンパク質(Bicinchoninic Acid Kit for Protein Determination、カタログ番号BCA1−KT)について分析し、続いて凍結させ、−80℃で保存した。
【0232】
トリアセチン(250mM)、過酸化水素(1.0M)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の細胞抽出物の40〜60%(v/v)または60〜80%(v/v)n−プロパノール分画(上述の通りに製造された)のいずれかからの0.10mg/mL
の可溶性タンパク質総量を含む1mLの反応混合物を25℃で混合した。添加された半精製した酵素の非存在下で、過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、半精製した酵素を含む細胞抽出物のn−プロパノール分画の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。この反応混合物を、実施例2で説明した手順を用いて5分間および30分間で過酢酸について分析し、表6に、添加された酵素によって生産された過酢酸の濃度を掲記した。
【0233】
【表8】

【0234】
実施例4
バチルス・ズブチリスATCC31954TM細胞抽出物由来の過加水分解活性を有するセファロスポリンCデアセチラーゼの同定
実施例3で説明した40〜60%のn−プロパノール分画の0.1mLサンプル(総タンパク質500μg)を、等しい体積の2X非変性(天然型)サンプル緩衝液(インビトロジェン(Invitrogen))と共に室温で混合し、1.5mmの8〜16%トリス−グリシンポリアクリルアミドミニゲル(2Dゲル;インビトロジェン)の調製用サンプルウェルにローディングした。トリス−グリシンランニング緩衝液(インビトロジェン)を用いて天然型ゲル電気泳動を125Vで90分間稼働させた。電気泳動の後、ゲルをその場でのエステラーゼ活性分析用にpHインジケーター、ブロモチモールブルーを用いて調製した。ゲルを脱イオン水で10分間で2回洗浄し、機械的にゆっくり混合した。続いてゲルを10mMリン酸緩衝液を用いて10分間洗浄した。リン酸緩衝液を除去した後、665μLの飽和ブロモチモールブルー(水中)を含む10mMリン酸緩衝液50mLを、ゲルと10分間インキュベートし、続いて1mLの未希釈のトリアセチン(シグマ・アルドリッチ)を添加した。インキュベートから10分以内に、ゲル上にエステラーゼ活性を示す146kDaの位置に1つの黄色のバンドが現れた。
【0235】
エステラーゼ陽性のバンドをゲルから切り出し、50mLのポリプロピレン製のコニカルチューブ(ファルコン(Falcon))に移した。25mLの脱イオン水で穏やかに混合しながら洗浄した後、ゲル切片から黄色のブロモチモールブルー色素を除去した。続いてゲル切片を、穏やかに混合しながら、0.9mLの2Xノヴェックス(Novex)トリス−グリシンSDSサンプル緩衝液+100μLの10X NuPAGE還元剤(インビトロジェン)で30分間処理した。サンプル処理後、ゲル切片およびサンプル緩衝液を、湯浴を用いて85℃で5分間インキュベートした。続いてゲル切片をインキュベートチューブから取り出し、1.5mmの8〜16%トリス−グリシンミニゲルの単一の調製用ウェルに慎重に置いた。慎重に気泡を取り除き、スタッキングゲルと直接接触するようにした。続いてゲル切片を所定位置に固定し、続いて調製用ウェルに脱イオン水で調製した250〜300μLの温0.5%アガロース溶液を添加した。単一の分子マーカーレーンに、15μLのシーブルー(SeeBlue(R))プラス2で予備染色した分子量マ
ーカー(インビトロジェン)をローディングした。
【0236】
タンパク質がゲル切片からスラブゲルに電気溶離するように、ゲル切片の電気泳動を30Vで30分間稼働させた。続いて電圧を10分間にわたり30Vから125Vに徐々に上げ、引き続き125Vで90分間稼働させた。電気泳動の後、XCell IITMのブロッティングマニュアル(インビトロジェン)で説明されているようにしてゲル上で分解したタンパク質バンドをPVDFメンブレンにブロットし、ブロッティング緩衝液は、10mMのCAPS(pH11.0)であった。室温で、トランスファー装置のジャケット内で氷水を用いて、エレクトロブロッティング法を25Vで2時間行った。
【0237】
トランスファー後、プロブロット(ProBlot)染色溶液(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems),カリフォルニア州フォスターシティー)でPVDFメンブレンを1分間染色し、続いてメタノール:水(50:50)で脱色した。6種のタンパク質バンドを同定し、それぞれのN末端を配列解析した。GenBank(R)アミノ酸配列データベースのBlast検索後、エステラーゼ関連の配列相同性を有するバンドだけがバンド1と同定され、17のN末端アミノ酸のコールは、バチルス・ズブチリスのセファロスポリンCデアセチラーゼ(GENBANK(R)BAA01729;Mitsushima等,上記;米国特許第5,528,152号;および米国特許第5,338,676号)に100%のアミノ酸同一性を示した。
【0238】
実施例5
バチルス・ズブチリスATCC31954TMからのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
ゲノムDNAを、PUREGENE(R)DNA精製システムを用いて(ジェントラ・システムズ,ミネソタ州ミネアポリス)バチルス・ズブチリスATCC31954TMから単離した。配列番号3および配列番号4と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってそのゲノムDNAからペルヒドロラーゼ遺伝子を増幅した。pSW186と同定されたプラスミドを作製するために、得られた核酸生成物(配列番号1)を、pTrcHis2−TOPO(R)にサブクローニングした(インビトロジェン,カリフォルニア州カールスバッド)。さらにペルヒドロラーゼ遺伝子も、配列番号27および配列番号28と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってゲノムDNAから増幅した。得られた核酸生成物(配列番号29)を制限酵素PstIおよびXbaIで切断し、pUC19中のPstIとXbaI部位との間にサブクローニングしてpSW194として固定されたプラスミドを作成した。それぞれTOP10/pSW186、MG1655/pSW186、UM2/pSW186、KLP18/pSW186、TOP10/pSW194、MG1655/pSW194、UM2/pSW194、およびKLP18/pSW194と同定された株を作製するために、プラスミドpSW186およびpSW194を用いて、E.コリTOP10(インビトロジェン,カリフォルニア州カールスバッド)、E.コリMG1655(ATCC47076TM)、E.コリUM2(E.COLI GENETIC STOCK CENTER番号7156,イェール大学,コネチカット州ニューヘブン)、およびE.コリKLP18(実施例15を参照)を形質転換した。TOP10/pSW186、MG1655/pSW186、UM2/pSW186、KLP18/pSW186、TOP10/pSW194、MG1655/pSW194、UM2/pSW194、およびKLP18/pSW194を、LB培地中で37℃で振盪しながら、OD600nm=0.4〜0.5になるまで増殖させ、その時点でIPTGを最終濃度1mMまで添加し、インキュベートを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって採取し、SDS−PAGEを行い、ペルヒドロラーゼの発現を、20〜40%の総可溶性タンパク質で確認した。
【0239】
実施例6
バチルス・ズブチリスBE1010からのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
ゲノムDNAを、PUREGENE(R)DNA精製システムを用いて(ジェントラ・システムズ)バチルス・ズブチリスBE1010(PayneおよびJackson 1991 J.Bacteriol.173:2278−2282)から単離した。配列番号3および配列番号4と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってそのゲノムDNAからペルヒドロラーゼ遺伝子を増幅した。pSW187と同定されたプラスミドを作製するために、得られた核酸生成物(配列番号5)を、pTrcHis2−TOPO(R)(インビトロジェン)にサブクローニングした。
【0240】
さらにペルヒドロラーゼ遺伝子も、配列番号27および配列番号28と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってゲノムDNAから増幅した。pSW189と同定されたプラスミドを作製するために、得られた核酸生成物(配列番号30)を制限酵素PstIおよびXbaIで切断し、pUC19中のPstIとXbaI部位との間にサブクローニングした。それぞれTOP10/pSW187、MG1655/pSW187、UM2/pSW187、KLP18/pSW187、TOP10/pSW189、MG1655/pSW189、UM2/pSW189、およびKLP18/pSW19と同定された株を作製するために、プラスミドpSW187およびpSW189を用いて、E.コリTOP10(インビトロジェン)、E.コリMG1655(ATCC47076TM)、E.コリUM2(E.COLI GENETIC STOCK CENTER番号7156,イェール大学,コネチカット州ニューヘブン)、およびE.コリKLP18(実施例15を参照)を形質転換した。TOP10/pSW187、MG1655/pSW187、UM2/pSW187、KLP18/pSW187、TOP10/pSW189、MG1655/pSW189、UM2/pSW189、およびKLP18/pSW189を、LB培地中で37℃で振盪しながら、OD600nm=0.4〜0.5になるまで増殖させ、その時点でIPTGを、1mMの最終濃度まで添加し、インキュベートを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって採取し、SDS−PAGEを行い、ペルヒドロラーゼの発現を、20〜40%の総可溶性タンパク質で確認した。
【0241】
実施例7
バチルス・ズブチリスATCC6633TMからのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
ゲノムDNAを、PUREGENE(R)DNA精製システムを用いてバチルス・ズブチリスATCC6633TMから単離した。配列番号3および配列番号4と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってそのゲノムDNAからペルヒドロラーゼ遺伝子を増幅した。得られた核酸生成物(配列番号7)を、pTrcHis2−TOPO(R)にサブクローニングして、pSW188と同定されたプラスミドを作製した。それぞれMG1655/pSW188、およびUM2/pSW188と同定された株を作製するために、プラスミドpSW188を用いて、E.コリMG1655(ATCC47076TM)、およびE.コリUM2(E.COLI GENETIC STOCK CENTER番号7156,イェール大学,コネチカット州ニューヘブン)を形質転換した。MG1655/pSW188、およびUM2/pSW188を、LB培地中で37℃で振盪しながら、OD600nm=0.4〜0.5になるまで増殖させ、その時点でIPTGを、1mMの最終濃度まで添加し、インキュベートを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって採取し、SDS−PAGEを行い、ペルヒドロラーゼの発現を、20〜40%の総可溶性タンパク質で確認した。
【0242】
実施例8
バチルス・ズブチリスATCC29233TMからのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
ゲノムDNAを、PUREGENE(R)DNA精製システムを用いてバチルス・ズブチリスATCC29233TMから単離した。配列番号3および配列番号4と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってそのゲノムDNAからペルヒドロラーゼ遺伝子を増幅した。得られた核酸生成物(配列番号31)を、pTrcHis2−TOPO(R)にサブクローニングして、pSW190と同定されたプラスミドを作製した。それぞれMG1655/pSW190、UM2/pSW190、およびKLP18/pSW190と同定された株を作製するために、プラスミドpSW190を用いて、E.コリMG1655(ATCC47076TM)、E.コリUM2(E.COLI GENETIC STOCK CENTER番号7156,イェール大学,コネチカット州ニューヘブン)、およびE.コリKLP18(実施例15を参照)を形質転換した。MG1655/pSW190、UM2/pSW190、およびKLP18/pSW190を、LB培地中で37℃で振盪しながら、OD600nm=0.4〜0.5になるまで増殖させ、その時点でIPTGを、1mMの最終濃度まで添加し、インキュベートを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって採取し、SDS−PAGEを行い、ペルヒドロラーゼの発現を、20〜40%の総可溶性タンパク質で確認した。
【0243】
実施例9
バチルス・リケニフォルミスATCC14580TMからのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
ゲノムDNAを、PUREGENE(R)DNA精製システムを用いてバチルス・リケニフォルミスATCC14580TMから単離した。配列番号33および配列番号34と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってそのゲノムDNAからペルヒドロラーゼ遺伝子を増幅した。得られた核酸生成物(配列番号9)を、pTrcHis2−TOPO(R)にサブクローニングして、pSW191と同定されたプラスミドを作製した。それぞれMG1655/pSW191、UM2/pSW191、PIR1/pSW191、およびKLP18/pSW191と同定された株を作製するために、プラスミドpSW191を用いて、E.コリMG1655(ATCC47076TM)、E.コリUM2(E.COLI GENETIC STOCK CENTER番号7156,イェール大学,コネチカット州ニューヘブン)、E.コリPIR1(インビトロジェン,カリフォルニア州カールスバッド)、およびE.コリKLP18(実施例15を参照)を形質転換した。MG1655/pSW191、UM2/pSW191、PIR1/pSW191、およびKLP18/pSW191を、LB培地中で37℃で振盪しながら、OD600nm=0.4〜0.5になるまで増殖させ、その時点でIPTGを最終濃度1mMまで添加し、インキュベートを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって採取し、SDS−PAGEを行い、ペルヒドロラーゼの発現を、20〜40%の総可溶性タンパク質で確認した。
【0244】
実施例10
クロストリジウム・テルモセルムATCC27405TMからのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
ゲノムDNAを、PUREGENE(R)DNA精製システムを用いてクロストリジウム・テルモセルムATCC27405TMから単離した。配列番号35および配列番号36と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってそのゲノムDNAからペルヒドロラーゼ遺伝子を増幅した。得られた核酸生成物(配列番号13)を、pTrcHis2−TOPO(R)にサブクローニングして、pSW193と同定されたプラスミドを作製した。それぞれMG1655/pSW193、UM2/pSW193、およびKLP18/pSW193と同定された株を作製するために、プラスミドpSW193を用いて、E.コリMG1655(ATCC47076TM)、E.コリUM2(E.COLI GENETIC STOCK CENTER番号7156,イェール大学,コネチカット州ニューヘブン)、およびE.コリKLP18(実施例15を参照)を形質転換した。MG1655/pSW193、UM2/pSW193、およびKLP18/pSW193を、LB培地中で37℃で振盪しながら、OD600nm=0.4〜0.5になるまで増殖させ、その時点でIPTGを最終濃度1mMまで添加し、インキュベートを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって採取し、SDS−PAGEを行い、ペルヒドロラーゼの発現を、20〜40%の総可溶性タンパク質で確認した。
【0245】
実施例11
バチルス・プミルスPS213からのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
GENBANK(R)で報告されているようなB.プミルスPS213由来のアセチルキシランエステラーゼ(axe1)をコードする遺伝子(受託番号AJ249957)を、E.コリ(DNA2.0,カリフォルニア州メンローパーク)中での発現に関して最適化されたコドンを用いて合成した。続いて配列番号37および配列番号38と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってその遺伝子を増幅した。pSW195と同定されたプラスミドを作製するために、得られた核酸生成物(配列番号60)を、pTrcHis2−TOPO(R)にサブクローニングした(インビトロジェン,カリフォルニア州カールスバッド)。それぞれMG1655/pSW195、UM2/pSW195、およびKLP18/pSW195と同定された株を作製するために、プラスミドpSW195を用いて、E.コリMG1655(ATCC47076TM)、E.コリUM2(E.COLI GENETIC STOCK CENTER番号7156,イェール大学,コネチカット州ニューヘブン)、およびE.コリKLP18(実施例15を参照)を形質転換した。MG1655/pSW195、UM2/pSW195、およびKLP18/pSW195を、LB培地中で37℃で振盪しながら、OD600nm=0.4〜0.5になるまで増殖させ、その時点でIPTGを、1mMの最終濃度まで添加し、インキュベートを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって採取し、SDS−PAGEを行い、ペルヒドロラーゼの発現を、20〜40%の総可溶性タンパク質で確認した。
【0246】
実施例12
サーモトガ・ネアポリタナからのペルヒドロラーゼのクローニングおよび発現
GENBANK(R)で報告されているようなサーモトガ・ネアポリタナ由来のアセチルキシランエステラーゼをコードする遺伝子(受託番号58632)を、E.コリ(DNA2.0,カリフォルニア州メンローパーク)中での発現に関して最適化されたコドンを用いて合成した。続いて配列番号39および配列番号40と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってその遺伝子を増幅した。得られた核酸生成物(配列番号41)を、pTrcHis2−TOPO(R)にサブクローニングして、pSW196と同定されたプラスミドを作製した。それぞれMG1655/pSW196、UM2/pSW196、およびKLP18/pSW196と同定された株を作製するために、プラスミドpSW196を用いて、E.コリMG1655(ATCC47076TM)、E.コリUM2(E.COLI GENETIC STOCK CENTER番号7156,イェール大学,コネチカット州ニューヘブン)、およびE.コリKLP18(実施例15を参照)を形質転換した。MG1655/pSW196、UM2/pSW196、およびKLP18/pSW196を、LB培地中で37℃で振盪しながら、OD600nm=0.4〜0.5になるまで増殖させ、その時点でIPTGを、1mMの最終濃度まで添加し、インキュベートを2〜3時間続けた。細胞を遠心分離によって採取し、SDS−PAGEを行い、ペルヒドロラーゼの発現を、20〜40%の総可溶性タンパク質で確認した。
【0247】
実施例13
katGカタラーゼが破壊されたE.コリ株の構築
配列番号46と同定されたPCR産物を作製するために、配列番号44および配列番号45と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってカナマイシン耐性遺伝子(kan;配列番号42)をプラスミドpKD13(配列番号43)から増幅した。katG核酸配列は配列番号47として示され、それに対応するアミノ酸配列は配列番号48である。E.コリMG1655(ATCC47076TM)を、λ−レッドリコンビナーゼ遺伝子(DatsenkoおよびWanner,2000,PNAS USA 97:6640−6645)を含む温度感受性プラスミドpKD46(配列番号49)で形質転換し、LB−ampプレート上で30℃で24時間選択した。MG1655/pKD46を、PCR産物50〜500ngでエレクトロポレーション(バイオラッド・ジーン・パルサー(BioRad Gene Pulser)、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25uF)によって形質転換し、LB−kanプレート上で37℃で24時間選択した。数個のコロニーを、LB−kanプレート上に線状に塗布し、42℃で一晩インキュベートしてpKD46プラスミドを処理した。コロニーをチェックして、kanR/ampSの表現型を確認した。ゲノムDNAを、PUREGENE(R)DNA精製システムを用いて数個のコロニーから単離し、配列番号50および配列番号51と同定されたプライマーを用いたPCRによってチェックし、katG遺伝子の破壊を確認した。数種のkatGが破壊された株を、FLPリコンビナーゼを含む温度感受性プラスミドpCP20(配列番号52)で形質転換し、これを用いて、kan遺伝子を切り出し、LB−ampプレート上で37℃で24時間選択した。数個のコロニーを、LBプレート上に線状に塗布し、42℃で一晩インキュベートして、pCP20プラスミドを処理した。2つのコロニーをチェックして、kanS/ampSの表現型を確認し、MG1655KatG1、およびMG1655KatG2と命名した。
【0248】
実施例14
katEカタラーゼが破壊されたE.コリ株の構築
配列番号55と同定されたPCR産物を作製するために、配列番号53および配列番号54と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってカナマイシン耐性遺伝子(配列番号42)をプラスミドpKD13(配列番号43)から増幅した。katE 核酸配列は、配列番号56として与えられ、それに対応するアミノ酸配列は配列番号57である。E.コリMG1655(ATCC47076TM)を、λ−レッドリコンビナーゼ遺伝子を含む温度感受性プラスミドpKD46(配列番号49)で形質転換し、LB−ampプレート上で30℃で24時間選択した。MG1655/pKD46を、PCR産物50〜500ngでエレクトロポレーション(バイオラッド・ジーン・パルサー、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25uF)によって形質転換し、LB−kanプレート上で37℃で24時間選択した。数個のコロニーを、LB−kanプレート上に線状に塗布し、42℃で一晩インキュベートしてpKD46プラスミドをキュアした(cure)。コロニーをチェックして、kanR/ampSの表現型を確認した。ゲノムDNAを、PUREGENE DNA精製システムを用いて数個のコロニーから単離し、配列番号58および配列番号59と同定されたプライマーを用いたPCRによってチェックし、katE遺伝子の破壊を確認した。数個のkatEが破壊された株を、FLPリコンビナーゼを含む温度感受性プラスミドpCP20(配列番号52)で形質転換し、これを用いて、kan遺伝子を切り出し、LB−ampプレート上で37℃で24時間選択した。数個のコロニーを、LBプレート上に線状に塗布し、42℃で一晩インキュベートして、pCP20プラスミドをキュアした。2つのコロニーをチェックして、kanS/ampSの表現型を確認し、MG1655 KatE1、およびMG1655 KatE2と命名した。
【0249】
実施例15
katGカタラーゼおよびkatE カタラーゼが破壊されたE.コリ株(KLP18)の構築
配列番号55と同定されたPCR産物を作製するために、配列番号53および配列番号54と同定されたプライマーを用いたPCR(94℃で0.5分間、55℃で0.5分間、70℃で1分間、30サイクル)によってカナマイシン耐性遺伝子(配列番号42)をプラスミドpKD13(配列番号43)から増幅した。E.コリMG1655KatG1(実施例13)を、温度感受性プラスミドpKD46(配列番号49)で形質転換し、LB−ampプレート上で30℃で24時間選択した。MG1655KatG1/pKD46を、PCR産物50〜500ngでエレクトロポレーション(バイオラッド・ジーン・パルサー、0.2cmキュベット、2.5kV、200W、25uF)によって形質転換し、LB−kanプレート上で37℃で24時間選択した。数個のコロニーを、LB−kanプレート上に線状に塗布し、42℃で一晩インキュベートしてpKD46プラスミドをキュアした。コロニーをチェックして、kanR/ampSの表現型を確認した。ゲノムDNAを、PUREGENE(R)DNA精製システムを用いて数個のコロニーから単離し、配列番号58および配列番号59と同定されたプライマーを用いたPCRによってチェックし、katE遺伝子の破壊を確認した。数種のkatEが破壊された株(ΔkatE)を、FLPリコンビナーゼを含む温度感受性プラスミドpCP20(配列番号52)で形質転換し、これを用いて、kan遺伝子を切り出し、LB−ampプレート上で37℃で24時間選択した。数個のコロニーを、LBプレート上に線状に塗布し、42℃で一晩インキュベートして、pCP20プラスミドを処理した。2つのコロニーをチェックして、kanS/ampSの表現型を確認し、MG1655KatG1KatE18.1、およびMG1655KatG1KatE23と命名した。MG1655KatG1KatE18.1をE.コリKLP18と命名した。
【0250】
実施例16
ペルヒドロラーゼの分子量の推定
振盪フラスコでのE.コリKLP18、バチルス・ズブチリス、バチルス・リケニフォルミス、およびクロストリジウム・テルモセルム由来のペルヒドロラーゼ遺伝子を発現するE.コリMG1655のカタラーゼ二重ノックアウトの増殖によって得られた細胞ペレットを、ジチオスレイトール(1mM)を含む2.2mLの0.05Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁した。各細胞懸濁液を、16,000psi(〜110.3MPa)の作動圧力を有するフレンチプレスに2回通過させた。未精製の抽出物を、20,000×gで遠心分離し、残滓を除去し、透明な未精製の抽出物を作成し、これを総可溶性タンパク質について分析した(Bicinchoninic Acid Kit [BCA] for Protein Determination、シグマ・アルドリッチ、BCA1−KT)。
【0251】
総タンパク質20μgを含む透明化した未精製の抽出物(5μL)を、等しい体積の2X非変性(天然型)サンプル緩衝液(インビトロジェン)と共に室温で混合し、1.5mm×10ウェルの4〜12%トリス−グリシンポリアクリルアミドミニゲル(インビトロジェン)のサンプルウェルにローディングし、7.5μLのNATIVEMARKTM未染色タンパク質標準(インビトロジェン)を、2つの別のウェルにローディングした。トリス−グリシンランニング緩衝液(インビトロジェン)を用いて天然型ゲル電気泳動を125Vで105分間行った。電気泳動の後、ゲルをその場エステラーゼ活性分析用にpHインジケーター、ブロモチモールブルーを用いて調製した。
【0252】
ゲルを脱イオン水で10分間で2回洗浄し、機械的にゆっくり混合した。続いてゲルを10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて10分間洗浄し、機械的にゆっくり混合した。リン酸緩衝液を除去した後、400μLの飽和ブロモチモールブルー水溶液を含む10mMリン酸緩衝液(pH7.0)30mLを、ゲルと10分間インキュベートし、続いて1mLの未希釈のトリアセチン(テッセンデルロ・ファイン・ケミカルズ(Tessenderlo Fine Chemicals);英国スタッフォードシャー州)を添加した。インキュベートの2分以内に、活性なペルヒドロラーゼ酵素の部位において黄色のバンドが発現した。全てのB.ズブチリス種およびB.リケニフォルミスは、分子量216kDaの周辺に濃いバンドを示した。C.テルモセルムは、約432kDaに濃い主要な第一のバンド、および約576kDaに主要な第二のバンドを示し、これは、エステラーゼ活性を示す。ゲル中でバンドに隣接した位置にパンチで小さい穴を開けることによって全てのバンドをマークした。ゲルを脱イオン水で10分間で2回洗浄し、機械的にゆっくり混合し、エステラーゼ活性の色素を除去した。続いてゲルを機械的にゆっくり混合しながら10mMリン酸緩衝液を用いて10分間洗浄し、タンパク質の染色を行った。ゲルを覆うようにしてクーマシーブルー色素を添加した。5分間機械的にゆっくり混合した後、クーマシーブルーをデカントし、40mLの脱色剤(10%酢酸、30%メタノール、60%脱イオン水)で交換した。脱色後、活性な領域の分子量を推定した。表7に結果を要約する。
【0253】
【表9】

【0254】
実施例17
B.ズブチリスBE1010のペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW187の発酵
発酵槽用の種培養を、2Lの振盪フラスコにLBミラー(Miller)培地(ディフコ)を含む種培地0.5Lを入れることによって調製した。培地のpHを6.8に調整し、フラスコ中で滅菌した。滅菌後、アンピシリンストック溶液(25mg/mL)1mLを添加した。種培地に、20%グリセロール中のE.コリUM2/pSW187培養物1mLを植え付け、36℃、および300rpmで培養した。OD550が約1〜2になったら、種培養を、35℃で、KH2PO4(3.50g/L)、FeSO4七水和物(0.05g/L)、MgSO4七水和物(2.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.90g/L)、酵母抽出物(アンブレックス(Ambrex)695、5.0g/L)、バイオスプメックス(Biospumex)153K消泡剤(0.25mL/L,コグニス社(Cognis Corporation))、NaCl(1.0g/L)、CaCl2二水和物(10g/L)、およびNIT微量元素溶液(10mL/L)を含む培地8Lと共に、14Lの発酵槽(ブラウン(Braun))に移した。微量元素溶液は、クエン酸一水和物(10g/L)、MnSO4水和物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO4七水和物(0.5g/L)、ZnSO4七水和物(0.2g/L)、CuSO4五水和物(0.02g/L)、およびNaMoO4二水和物(0.02g/L)を含む。滅菌後の添加物は、流加培養溶液60g(以下を参照)、およびアンピシリンストック溶液(25mg/mL)16.0mLを含む。流加培養溶液は、60%w/wグルコース2.4kg、25g/Lの酵母抽出物0.6L、および50g/Lのバクト(Bacto)ペプトン(ディフコ)を含む。グルコース濃度が0.5g/L未満に減少したらグルコース供給を、最初は0.3g/分で開始して、次第に、毎時それぞれ0.35、0.40、0.47および0.53g/分に増加させた;その後速度を一定に保った。培地中のグルコース濃度をモニターし、濃度が0.1g/Lを超えたら、添加速度を低くするか、または一時的に止めた。OD550=7で、IPTG(0.5M)16mLを添加することによって誘導を開始した。温度を36℃に制御し、通気を2slpm(標準リットル/分)に400rpmで撹拌しながら固定した。pHを6.8に制御した;NH4OH(29%w/w)、およびH2SO4(20%w/v)をpHコントロールに用いた。ヘッドの圧力は、0.5barとした。IPTGを添加してから8時間後に細胞を遠心分離によって採取した。
【0255】
実施例18
B.ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW186、またはB.リケニフォルミスATCC14580TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW191の発酵
実施例17で説明されているようにして、B.ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW186、またはB.リケニフォルミスATCC14580TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW191を用いて種培養を製造した。発酵培地は、LBミラー(25g/L,ディフコ)であった。滅菌後の添加物は、グルコース溶液50g(50%w/w)、およびアンピシリンストック溶液(25mg/mL)16.0mLを含む。流加培養発酵のために、グルコース(50%w/w)を用いた。グルコース濃度が0.5g/L未満に減少したらグルコース供給を0.3g/分の一定速度で開始させた。培地中のグルコース濃度をモニターし、濃度が0.1g/Lを超えたら、添加速度を低くするか、または一時的に止めた。OD550=2で、IPTG(0.5M)16mLを添加することによって誘導を開始した。温度を36℃に制御し、通気を2slpmに400rpmで撹拌しながら固定した。pHを6.8に制御した;NH4OH(29%w/w)、およびH2SO4(20%w/v)をpHコントロールに用いた。ヘッドの圧力は、0.5barとした。IPTGを添加してから8時間後に細胞を遠心分離によって採取した。
【0256】
実施例19
B.ズブチリスBE1010のペルヒドロラーゼを発現するE.コリKLP18/PSW189、またはB.リケニフォルミスATCC14580TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリKLP18/PSW191の発酵
発酵槽用の種培養を、2Lの振盪フラスコに酵母抽出物(アンブレックス695、5.0g/L)、K2HPO4(10.0g/L)、KH2PO4(7.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.0g/L)、(NH42SO4(4.0g/L)、MgSO4七水和物(1.0g/L)、およびクエン酸鉄(III)アンモニウム(0.10g/L)を含む種培地0.5Lを入れることによって製造した。培地のpHを6.8に調整し、培地をフラスコ中で滅菌した。滅菌後の添加物は、グルコース(50質量%、10.0mL)、およびアンピシリン(25mg/mL)ストック溶液1mLを含む。種培地に、20%グリセロール中のE.コリKLP18/PSW189、またはKLP18/PSW191の培養物1mLを植え付け、35℃および300rpmで培養した。OD550が約1〜2になったら、種培養を、35℃で、KH2PO4(3.50g/L)、FeSO4七水和物(0.05g/L)、MgSO4七水和物(2.0g/L)、クエン酸ナトリウム二水和物(1.90g/L)、酵母抽出物(アンブレックス695、5.0g/L)、バイオスプメックス(Biospumex)153K消泡剤(0.25mL/L,コグニス社)、NaCl(1.0g/L)、CaCl2二水和物(10g/L)、およびNIT微量元素溶液(10mL/L)を含む培地8Lと共に14Lの発酵槽(ブラウン)に移した。微量元素溶液は、クエン酸一水和物(10g/L)、MnSO4水和物(2g/L)、NaCl(2g/L)、FeSO4七水和物(0.5g/L)、ZnSO4七水和物(0.2g/L)、CuSO4五水和物(0.02g/L)、およびNaMoO4二水和物(0.02g/L)を含む。滅菌後の添加物は、グルコース溶液(50%w/w、80.0g)、およびアンピシリン(25mg/mL)ストック溶液(16.00mL)を含む。グルコース溶液(50%w/w)を流加培養のために用いた。グルコース濃度が0.5g/Lに減少したら、グルコース供給を初めは1分あたり0.31gの供給量で開始させ、次第に、毎時それぞれ0.36、0.42、0.49、0.57、0.66、0.77、0.90、1.04、1.21、1.411.63g/分に増加させた;その後速度を一定に保った。培地中のグルコース濃度をモニターし、濃度が0.1g/Lを超えたら、供給速度を低くするか、または一時的に止めた。E.コリKLP18/PSW191の場合、OD550=80で、IPTG(0.5M)16mLを添加することによって誘導を開始し、一方で、E.コリKLP18/PSW189の場合、増殖がそれより遅く、OD550=56で誘導を開始した。溶存酸素(DO)濃度を25%の空気飽和状態に制御した。DOをまずはインペラーの撹拌速度によって(400〜1400rpm)制御し、その後は通気速度(2〜10slpm)によって制御した。pHを6.8に制御した。NH4OH(29%w/w)、およびH2SO4(20%w/v)をpHコントロールに用いた。ヘッドの圧力は、0.5barとした。IPTGを添加してから16時間後に細胞を遠心分離によって採取した。
【0257】
実施例20
ペルヒドロラーゼ生産の発酵宿主としてのE.コリKLP18、およびE.コリUM2
E.コリKLP18(実施例15)を用いて、実施例19で説明されている方法に従って複数の発酵液10L中で増殖させた形質転換体(実施例5、8、9および10)を作製した。これらの実験の最終的なODを、実施例17および18で説明されている発酵方法に従って行われた、これらの同じペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2形質転換体(実施例5、8、9および10)を生産した発酵液と比較した。表8に、宿主としてUM2およびKLP18の両方を用いた10Lの発酵実験が要約されており、UM2と比較してKLP18の優れた性能が実証された。
【0258】
【表10】

【0259】
実施例21
E.コリ形質転換体で発現されたバチルス・ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼの評価
実施例5で説明した3種の形質転換体E.コリTOP10/pSW186、E.コリMG1655/pSW186、およびE.コリUM2/pSW186を、アンピシリン(100μg/mL)を含むミラーLB液体培地(50mL;メディアテック社(Mediatech,Inc),バージニア州ハーンドン)を含むバッフルなしの振盪フラスコ中で、14〜16時間、35〜37℃、200rpmの撹拌で増殖させた。3種の形質転換体を一晩増殖させた後、それぞれの培養液を、アンピシリン(100μg/mL)を含む新しいミラーLB液体培地でそれぞれの培養液の1:100希釈液を調製することによって再度培養した。35〜37℃で3時間、200rpmの撹拌で増殖させた後、それぞれの培養を、最終濃度1mMにIPTGを添加することによって誘導した。同じ条件下でさらに3時間増殖させた後、それぞれの培養からの細胞のペーストを、5℃で、26,000×gで20分間遠心分離することによって採取した。それぞれの形質転換体の細胞抽出物を、実施例1で説明した手順に従って調製した(ただし、25質量%の湿潤した細胞懸濁液を製造するために用いた抽出緩衝液は、0.05Mリン酸カリウム(pH7.0)、および1mMのジチオスレイトールで構成された)。
【0260】
トリアセチン(250mM)、過酸化水素(1.0M)、および3種の50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の細胞抽出物(上述の通りに調製された)のいずれか1つからの総抽出物タンパク質50μgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。発現されたペルヒドロラーゼの非存在下でそれぞれの株によって生産された過酸のバックグラウンドレベルを決定するために、形質転換されていないE.コリTOP10、E.コリMG1655、およびE.コリUM2の抽出物から調製された総抽出物タンパク質50μgを用いて、コントロール反応の第二のセットを行った。実施例2で説明したKarst等の方法に従って反応混合物中の過酢酸の濃度を決定した(表9)。
【0261】
【表11】

【0262】
実施例22
バチルス・ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリTOP10/pSW186抽出物のの過加水分解活性
別々の1.0mLのトリアセチン過加水分解反応を、実施例21で説明されているようにしてE.コリTOP10/pSW186形質転換体抽出物を用いて行って、各反応で以下の反応物中の総タンパク質濃度:196μg/mL、98μg/mL、49μg/mL、25μg/mL、12.5μg/mL、6.25μg/mL、3.0μg/mL、または1.5μg/mLの総タンパク質濃度(表10)の1つが与えられた。
【0263】
【表12】

【0264】
実施例23
バチルス・ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW186抽出物の過加水分解活性
E.コリUM2/pSW186形質転換体の抽出物(抽出物1mLあたり20mgのタンパク質総量、実施例21で説明されているようにして調製した)を、pH6.5または7.5で、各反応において25℃で、トリアセチン(40mM、または100mM)、過酸化水素(40mM、または100mM)、およびリン酸緩衝液(Pi、100mM、200mMまたは300mM)中の総抽出物タンパク質(0.1mg/mL、または1.0mg/mL)を含む1.0mLの過加水分解反応で用いた(実施例21で説明されているようにして反応を行った)(表11)。
【0265】
【表13】

【0266】
実施例24
バチルス・ズブチリスBE1010から誘導されたE.コリ形質転換体で発現されたペルヒドロラーゼの評価
実施例6で説明したE.コリTOP10/pSW187、E.コリMG1655/pSW187、およびE.コリUM2/pSW187形質転換体を、アンピシリン(100μg/mL)を含むミラーLB液体培地(50mL;メディアテック社,バージニア州ハーンドン)を含むバッフルなしの振盪フラスコ中で、14〜16時間、35〜37℃で、200rpmの撹拌で増殖させた。3種の形質転換体を一晩増殖させた後、それぞれの培養液を、アンピシリン(100μg/mL)を含む新しいミラーLB液体培地でそれぞれの培養液の1:100希釈液を調製することによって再度培養した。35〜37℃で3時間、200rpmの撹拌で増殖させた後、それぞれの培養を、最終濃度1mMにIPTGを添加することによって誘導した。同じ条件下でさらに3時間増殖させた後、それぞれの培養からの細胞のペーストを、5℃で、26,000×gで20分間遠心分離することによって採取した。細胞抽出物を調製するために、実施例1で説明した手順を繰り返した(ただし、25質量%の湿潤した細胞懸濁液を調製するために用いた抽出緩衝液は、0.05Mリン酸カリウム(pH7.0)、および1mMのジチオスレイトールで構成された)。
【0267】
トリアセチン(250mM)、過酸化水素(1.0M)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の総抽出物タンパク質50μgを含む別々の1.0mLの反応を、25℃で、各形質転換体抽出物を用いて行った。過酸化水素を用いてトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。発現されたペルヒドロラーゼの非存在下でそれぞれの株によって生産された過酸のバックグラウンドレベルを決定するために、形質転換されていないE.コリTOP10、E.コリMG1655、およびE.コリUM2の抽出物から製造された総抽出物タンパク質50μgを用いて、コントロール反応の第二のセットを行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表12)を、実施例2で説明されているようにしてKarst等の方法に従って決定した。
【0268】
【表14】

【0269】
実施例25
E.コリ形質転換体で発現されたペルヒドロラーゼの評価
実施例5、6、7、8、9、10、18および19で説明されているようにして形質転換体を調製した。それぞれの形質転換体の細胞抽出物を、実施例1で説明した手順に従って調製した(ただし、25質量%の湿潤した細胞懸濁液を調製するために用いた抽出緩衝液は、0.05Mリン酸カリウム(pH7.0)、および1mMのジチオスレイトールで構成された)。
【0270】
トリアセチン(250mM)、過酸化水素(1.0M)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の細胞抽出物(上述の通りに製造された)からの総抽出物タンパク質50μgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。発現されたペルヒドロラーゼの非存在下でそれぞれの株によって生産された過酸のバックグラウンドレベルを決定するために、形質転換されていないE.コリTOP10、E.コリMG1655、E.コリUM2、およびE.コリKLP18の抽出物から調製された総抽出物タンパク質50μgを用いて、コントロール反応の第二のセットを行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表13)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0271】
【表15】

【0272】
【表16】

【0273】
実施例26(比較例)
市販のリパーゼの過加水分解に関する評価
トリアセチン(250mM)、過酸化水素(1.0M)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の市販のリパーゼ50μgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加されたリパーゼの非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、コントロール反応を市販のリパーゼを用いずに行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表14)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。市販のリパーゼは、シグマ/アルドリッチ・ケミカル社(ミズーリ州セントルイス)、バイオカタリティクス(BioCatalytics,カリフォルニア州パサデナ)、名糖産業株式会社(Meito Sangyo Co.)(日本国名古屋)、天野エンザイム(Amano Enzymes)(イリノイ州ロンバード)、ノボザイムズ(Novozymes)(ノースカロライナ州フランクリントン)、バレー・サーチ(Valley Research)(インディアナ州サウスベンド)、およびエンザイム・デベロップメント・コーポレーション(エンゼコ(ENZECO(R));ニューヨーク州ニューヨーク)から得た。
【0274】
【表17】

【0275】
【表18】

【0276】
実施例27
E.コリ形質転換体で発現されたペルヒドロラーゼの評価
ペルヒドロラーゼを発現する形質転換体の細胞抽出物を実施例21で説明した手順に従って製造した。トリアセチン(105mM)、過酸化水素(78mM)、および1mg、または50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の細胞抽出物(上述の通りに製造された)からの総抽出物タンパク質2mgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表15)を、実施例2で説明されているKarst等の方法に従って決定した。
【0277】
【表19】

【0278】
実施例28(比較例)
市販のリパーゼの過加水分解に関する評価
トリアセチン(105mM)、過酸化水素(78mM)および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の市販のリパーゼ1mgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加されたリパーゼの非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、コントロール反応を市販のリパーゼを用いずに行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表16)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0279】
【表20】

【0280】
実施例29
湿潤剤を用いた場合のB.ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼ活性
B.ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW186形質転換体の細胞抽出物を実施例21で説明した手順に従って調製した。トリアセチン(105mM)、過酸化水素(78mM)、浸潤剤 COLATERIC(R)MSC−NA(混合型の短鎖ナトリウムジプロピオナート;コロニアル・ケミカル社(Colonial Chemical Co.))、スルフィノール(SURFYNOL(R))2502(エトキシ化/プロポキシル化されたアセチレンベースの界面活性剤;エアープロダクツ・アンド・ケミカルズ(Air Products and Chemicals);ユトレヒト,オランダ)、スルフィノール(R)MD−20、シルウェット(SILWET(R))L7650(ポリアルキレンオキシドで改変されたポリジメチルシロキサン;ケムチュラ社(Chemtura Corp),コネチカット州ミドルバリー)、またはシルウェット(R)L8620;シロキサンベースの界面活性剤)、および50mMリン酸緩衝液(pH7.5)中の総抽出物タンパク質1mgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表17)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0281】
【表21】

【0282】
実施例30
湿潤剤を用いた場合のB.ズブチリスBE1010のペルヒドロラーゼ活性
B.ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW187形質転換体の細胞抽出物を実施例21で説明した手順に従って調製した。トリアセチン(105mM)、過酸化水素(78mM)、浸潤剤(プルロニック(PLURONIC(R))17R4(ポリオキシアルキレンエーテル界面活性剤;BASF、ニュージャージー州マウントオリーブ)、プルロニック(R)L43(二官能性のブロックコポリマー界面活性剤)、またはシルウェット(R)L7650)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の総抽出物タンパク質1mgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表18)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0283】
【表22】

【0284】
実施例31
潤滑剤およびキレート剤を用いた場合のペルヒドロラーゼ活性
B.ズブチリスBE1010のペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW187形質転換体の細胞抽出物を実施例21で説明した手順に従って調製した。トリアセチン(105mM)、過酸化水素(78mM)、浸潤剤(シルウェット(R)L7650)、キレート剤(ターピナル(R)SL;エチドロン酸;ソルティア社,ミズーリ州セントルイス)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の総抽出物タンパク質1mgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表19)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0285】
【表23】

【0286】
実施例32
浸潤剤、キレート剤、および腐食抑制剤を用いた場合のペルヒドロラーゼ活性
B.ズブチリスBE1010のペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW187形質転換体の細胞抽出物を実施例21で説明した手順に従って調製した。トリアセチン(105mM)過酸化水素(78mM)、浸潤剤(シルウェット(R)L7650)、キレート剤(ターピナル(R)SL)、腐食抑制剤(ベンゾトリアゾール)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の総抽出物タンパク質1mgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表20)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0287】
【表24】

【0288】
実施例33
固定化されたB.ズブチリスATCC31954TM、またはBE1010のペルヒドロラーゼを用いた過酢酸の生産
E.コリKMP/pSW189(B.ズブチリスBE1010のペルヒドロラーゼを発現する)、またはE.コリUM2/pSW186(B.ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼを発現する)のいずれかの抽出物(実施例21で説明されているようにして調製した)からの10mg/mLの総可溶性タンパク質を含む5.0mLの0.225Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)中のAMBERZYME(R)オキシラン酵素固定化用高分子支持体(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas),ペンシルベニア州フィラデルフィア)0.50gの懸濁液を、回転式プラットフォームで室温で24時間混合した。続いて上清を固定化酵素からデカントし、酵素を440mL量のリン酸緩衝液(50mM、pH6.5)で洗浄し、これと同じ緩衝液中で5℃で保管した。使用前に、この固定化酵素を真空ろ過で乾燥させた。
【0289】
トリアセチン(250mM)、過酸化水素(1.0M)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の1.5mg/mLまたは5.0mg/mlのいずれかの固定化されたペルヒドロラーゼ(上述の通りに製造された)を含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された固定化酵素の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、コントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表21)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0290】
【表25】

【0291】
実施例34
B.ズブチリス、B.リケニフォルミスおよびC.テルモセルム由来のペルヒドロラーゼを用いた、ジアセチン、トリアセチンおよびモノアセチンの混合物の過加水分解
ジアセチン(118mM)、トリアセチン(42mM)、およびモノアセチン(90mM)、過酸化水素(1.0M)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中のペルヒドロラーゼを含むE.コリUM2細胞抽出物(実施例21で説明されているようにして調製された)からの総抽出物タンパク質50μgの混合物を含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。発現されたペルヒドロラーゼの非存在下でE.コリ株によって生産された過酸のバックグラウンドレベルを決定するために、形質転換されていないE.コリUM2の抽出物から製造された総抽出物タンパク質50μgを用いて、第二のコントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表22)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0292】
【表26】

【0293】
実施例35
B.ズブチリスBE1010由来のペルヒドロラーゼを用いたジアセチン、トリアセチンおよびモノアセチンの混合物の過加水分解
ジアセチン(49.6mM)、トリアセチン(17.6mM)、およびモノアセチン(37.8mM)、過酸化水素(78mM)、および50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の細胞抽出物(実施例21で説明されているようにして調製された)からの総抽出物タンパク質1mgまたは2mgの混合物を含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表23)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0294】
【表27】

【0295】
実施例36
B.ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼによるアセチル化糖の過加水分解
B.ズブチリスATCC31954TMのペルヒドロラーゼを発現するE.コリUM2/pSW186形質転換体の細胞抽出物を実施例21で説明した手順に従って調製した。0.1Mのアセチル化糖(β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、またはトリ−O−アセチル−D−グルカール(アルドリッチ))、過酸化水素(100または500mM)、50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の総抽出物タンパク質2mgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表24)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0296】
【表28】

【0297】
実施例37
B.ズブチリスBE1010のペルヒドロラーゼによるアセチル化糖の過加水分解
B.ズブチリスBE1010のペルヒドロラーゼを発現するE.コリKLP18/pSW189形質転換体の細胞抽出物を実施例21で説明した手順に従って調製した。0.1Mのアセチル化糖(β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、またはトリ−O−アセチル−D−グルカール(アルドリッチ))、過酸化水素(100、または500mM)、50mMリン酸緩衝液(pH6.5)中の総抽出物タンパク質2mgを含む別個の1mLの反応を25℃で行った。添加された抽出物タンパク質の非存在下で過酸化水素によるトリアセチンの化学的な過加水分解によって生産された過酢酸の濃度を決定するために、総抽出物タンパク質溶液の代わりに50mMリン酸緩衝液(pH6.5)を用いることによってコントロール反応を行った。反応混合物中の過酢酸の濃度(表25)を、実施例2で説明したKarst等の方法に従って決定した。
【0298】
【表29】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸エステルからペルオキシカルボン酸を生産する方法であって、該方法は:
a)一式の反応成分を備えること、該成分は、以下を含む:
1)以下からなる群より選択されるカルボン酸エステル:
i)以下の構造を有するエステル:
【化1】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R2は、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH2CH2−O)nH、または(CH2CH(CH3)−O)nHであり、
そしてnは、1〜10である];および
ii)以下の構造を有するグリセリド:
【化2】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R3およびR4はそれぞれ、HまたはR1C(O)である];および
iii)アセチル化単糖、アセチル化二糖およびアセチル化多糖からなる群より選択されるアセチル化糖;
2)過酸素源;および
3)過加水分解活性を有する酵素触媒、該酵素触媒は、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインした場合、シグネチャーモチーフを含む酵素を含み、該シグネチャーモチーフは、以下を含む:
i)アミノ酸の位置118〜120におけるRGQモチーフ;
ii)アミノ酸の位置179〜183におけるGXGSGモチーフ;および
iii)アミノ酸の位置298〜299におけるHEモチーフ;ならびに
b)該反応成分を適切な水性反応条件下で組合わせることによって、ペルオキシカルボン酸を生産させること、
を含む、上記方法。
【請求項2】
酵素のシグネチャーモチーフが、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインした場合、アミノ酸の位置267〜269にLXDモチーフをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酵素が、配列番号2に対して少なくとも40%のアミノ酸同一性を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
酵素が、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列に1個またはそれ以上のアミノ酸を置換、欠失または付加することによって誘導されたペルヒドロラーゼ活性を有する実質的に類似した酵素である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
酵素が、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号31、配列番号41、および配列番号60からなる群より選択される核酸配列を有する核酸分子にハイブリダイズする該核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酵素が、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号32からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
酵素が、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号31、配列番号41、および配列番号60からなる群より選択される核酸配列を有する核酸分子によってコードされる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ペルオキシカルボン酸が、反応成分を組合わせてから約5分〜約2時間以内に少なくとも20ppmの濃度で生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アセチル化糖が、グルコースペンタアセテート、キシローステトラアセテート、アセチル化キシラン、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、およびトリ−O−アセチル−グルカールからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
生産されたペルオキシカルボン酸が、過酢酸、過プロピオン酸、過酪酸、過乳酸、過グリコール酸、過メトキシ酢酸、過β−ヒドロキシ酪酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
生産されたペルオキシカルボン酸が、過酢酸である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
酵素的に生産されたペルオキシカルボン酸組成物を用いて硬表面または無生物を消毒する方法であって、該方法は、以下:
a)一式の反応成分を備えること、該成分は、以下を含む:
1)以下からなる群より選択される基質:
i)以下の構造を有するエステル:
【化3】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R2は、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH2CH2−O)nH、または(CH2CH(CH3)−O)nHであり、およびnは、1〜10である];および
ii)以下の構造を有するグリセリド:
【化4】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R3およびR4はそれぞれ、HまたはR1C(O)であり;
iii)アセチル化単糖、アセチル化二糖、およびアセチル化多糖からなる群より選択されるアセチル化糖];
2)過酸素源;および
3)過加水分解活性を有する酵素触媒、該酵素触媒は、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2に対応させてアラインした場合、シグネチャーモチーフを含み、該シグネチャーモチーフは、以下を含む:
i)アミノ酸の位置118〜120におけるRGQモチーフ;
ii)アミノ酸の位置179〜183におけるGXGSGモチーフ;および
iii)アミノ酸の位置298〜299におけるHEモチーフ;
b)該反応成分を適切な水性反応条件下で組合わせることによって、ペルオキシカルボン酸生産物を生成させること;
c)場合により、該ペルオキシカルボン酸生成物を希釈すること;ならびに
d)前記硬表面または無生物を、工程b)または工程c)で生産されたペルオキシカルボン酸と接触させ、それにより、前記表面または前記無生物を消毒すること、
を含む、上記方法。
【請求項13】
酵素のシグネチャーモチーフが、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインした場合、アミノ酸の位置267〜269にLXDモチーフをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
酵素が、配列番号2に対して少なくとも40%のアミノ酸同一性を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
酵素が、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列に1個またはそれ以上のアミノ酸を置換、欠失または付加することによって誘導されたペルヒドロラーゼ活性を有する実質的に類似した酵素である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
酵素が、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号31、配列番号41、および配列番号60からなる群より選択される配列を有する核酸分子にハイブリダイズする該核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
酵素が、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号32からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
酵素が、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号31、配列番号41、および配列番号60からなる群より選択される核酸配列を有する核酸分子によってコードされる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ペルオキシカルボン酸が、反応成分を組合わせてから約5分〜約2時間以内に少なくとも20ppmの濃度で生産される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
アセチル化糖が、グルコースペンタアセテート、キシローステトラアセテート、アセチル化キシラン、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、およびトリ−O−アセチル−グルカールからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
生産されたペルオキシカルボン酸が、過酢酸、過プロピオン酸、過酪酸、過乳酸、過グリコール酸、過メトキシ酢酸、過β−ヒドロキシ酪酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
生産されたペルオキシカルボン酸が、過酢酸である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
硬表面または無生物が、タンク、コンベヤー、床、ドレーン、パイプ、クーラー、冷凍庫、器具の表面、壁、バルブ、ベルト、ジョイント、窓、水処理施設、プール、温泉場、発酵タンク、薬剤または生物薬剤の製造装置、薬剤または生物薬剤成分、薬剤または生物薬剤の添加剤、衣類、医療器具、歯科用器具、外科用器具、内視鏡、腹腔鏡、洗浄具、靴、料理用の表面、調理用の表面、浴室の表面、トイレ、家畜、ウシ、乳牛、ヤギ、ウマ、ブタ、牛肉、家禽、豚肉、野菜、果物、海産食物、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
グリセリド基質が、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
アセチル化糖が、グルコースペンタアセテート、キシローステトラアセテート、アセチル化キシラン、アセチル化キシランフラグメント、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、およびトリ−O−アセチル−グルカールからなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
生産されたペルオキシカルボン酸が、過酢酸、過プロピオン酸、過酪酸、過乳酸、過グリコール酸、過メトキシ酢酸、過β−ヒドロキシ酪酸、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項27】
生産されたペルオキシカルボン酸が、過酢酸である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
硬表面または無生物を、反応成分を合わせてから約5分〜約168時間以内に、工程b)または工程c)で生産されたペルオキシカルボン酸と接触させる、請求項12に記載の方法。
【請求項29】
硬表面または無生物を、反応成分を合わせてから約5分〜約48時間以内に、工程b)または工程c)で生産されたペルオキシカルボン酸と接触させる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
硬表面または無生物を、反応成分を合わせてから約5分〜約2時間以内に、工程b)または工程c)で生産されたペルオキシカルボン酸と接触させる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
硬表面または無生物上の生存可能な生物学的な汚染物質の濃度の対数値が、少なくとも3減少する、請求項12に記載の方法。
【請求項32】
硬表面または無生物上の生存可能な生物学的な汚染物質の濃度の対数値が、少なくとも5減少する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
酵素触媒が、微生物細胞、透過性微生物細胞、微生物細胞抽出物、部分精製酵素、および精製した酵素からなる群より選択される形態である、請求項1または請求項12に記載の方法。
【請求項34】
酵素触媒は、カタラーゼ活性が欠失している、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
酵素触媒が、カタラーゼ活性が欠失した組換えE.コリ株である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
組換えE.コリ株が、katE、katG、ならびにkatEおよびkatGの両方からなる群より選択される破壊された触媒遺伝子を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1に記載の方法によって生産された消毒剤または漂白組成物。
【請求項38】
ペルオキシカルボン酸を生成させる系であって、該系は、以下を含む:
a)以下からなる群より選択される基質:
1)以下の構造を有するエステル:
【化5】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R2は、C1〜C10の直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH2CH2−O)nH、または(CH2CH(CH3)−O)nHであり、
そしてnは、1〜10である];および
2)以下の構造を有するグリセリド:
【化6】

[式中、R1は、C1〜C7の直鎖または分岐鎖のアルキル(該アルキルは、場合により、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基で置換される)であり、R3およびR4はそれぞれ、HまたはR1C(O)である];および
3)アセチル化単糖、アセチル化二糖、およびアセチル化多糖からなる群より選択されるアセチル化糖;および
b)過酸素源;および
c)過加水分解活性を有する酵素触媒、該酵素触媒は、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2に対応させてアラインした場合、シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、該シグネチャーモチーフは、以下を含む:
i)アミノ酸の位置118〜120におけるRGQモチーフ;
ii)アミノ酸の位置179〜183におけるGXGSGモチーフ;および
iii)アミノ酸の位置298〜299におけるHEモチーフ。
【請求項39】
酵素のシグネチャーモチーフが、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインした場合、アミノ酸の位置267〜269にLXDモチーフをさらに含む、請求項38に記載のペルオキシカルボン酸を生成させる系。
【請求項40】
酵素が、配列番号2に対して少なくとも40%のアミノ酸同一性を含む、請求項39に記載のペルオキシカルボン酸を生成させる系。
【請求項41】
酵素が、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号32からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むか、または前記アミノ酸配列に1個またはそれ以上のアミノ酸を置換、欠失または付加することによって誘導されたペルヒドロラーゼ活性を有する実質的に類似した酵素である、請求項38または請求項37に記載のペルオキシカルボン酸を生成させる系。
【請求項42】
酵素が、ストリンジェントな条件下で、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号31、配列番号41、および配列番号60からなる群より選択される配列を有する核酸分子にハイブリダイズする該核酸分子によってコードされたアミノ酸配列を含む、請求項38に記載のペルオキシカルボン酸を生成させる系。
【請求項43】
酵素が、配列番号2、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、および配列番号32からなる群より選択される、請求項42に記載のペルオキシカルボン酸を生成させる系。
【請求項44】
酵素が、配列番号1、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号31、配列番号41、および配列番号60からなる群より選択される核酸配列を有する核酸分子によってコードされる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
反応成分のセットを水性反応条件下で組合わせると、過カルボン酸がその場生成する、請求項38に記載のペルオキシカルボン酸を生成させる系。
【請求項46】
反応成分が、1つまたはそれ以上のキレート剤、1つまたはそれ以上の湿潤剤、1つまたはそれ以上の腐食抑制剤、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される1つまたはそれ以上の成分をさらに含む、請求項38に記載のペルオキシカルボン酸を生成させる系。
【請求項47】
ペルオキシカルボン酸が、過酢酸である、請求項38に記載のペルオキシカルボン酸を生成させる系。
【請求項48】
反応成分が、キットで供給される、請求項38に記載のペルオキシカルボン酸を生成させる系。
【請求項49】
以下を含む製剤:
a)酵素触媒(酵素触媒は、CE−7シグネチャーモチーフを有するペルヒドロラーゼ酵素を含む)、およびモノアセチン、ジアセチン、トリアセチンおよびそれらの混合物からなる群より選択されるカルボン酸エステルを含む第一の混合物;該第一の混合物は、場合により、無機または有機緩衝液、腐食抑制剤、浸潤剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるさらなる成分を含む;ならびに
b)過酸素源および水を含む第二の混合物(該第二の混合物は、場合により、キレート剤をさらに含む)。
【請求項50】
酵素触媒が、固体粒子の形態である、請求項49に記載の製剤。
【請求項51】
製剤が、第一の混合物と第二の混合物とを別々に保管し、それらを組合わせる手段を含む、請求項49に記載の製剤。
【請求項52】
別々に保管するための手段は、単一の容器または2つの別個の容器中に、2つの別個の区画を含む容器を含む、請求項51に記載の製剤。
【請求項53】
第一の混合物が、水溶性のパケットに収容される、請求項51に記載の調合物。
【請求項54】
請求項49に記載の第一の混合物と第二の混合物とを組合わせてペルオキシカルボン酸を生産させることによって生成される消毒製剤。
【請求項55】
消毒製剤が、第一の混合物または第二の混合物に存在しない追加の量の水をさらに含む、請求項54に記載の消毒製剤。
【請求項56】
以下を含む製剤:
a)酵素触媒(CE−7シグネチャーモチーフを有するペルヒドロラーゼ酵素を含む)、およびアセチル化単糖、アセチル化二糖、アセチル化多糖およびそれらの組合わせからなる群より選択されるアセチル化糖を含む第一の混合物(該第一の混合物は、場合により、無機または有機緩衝液、腐食抑制剤および浸潤剤をさらに含む);ならびに
b)過酸素源および水を含む第二の混合物(該第二の混合物は、場合により、キレート剤を含む)。
【請求項57】
第一の混合物が、固形錠剤または散剤の形態である、請求項56に記載の製剤。
【請求項58】
製剤が、第一の混合物と第二の混合物とを別々に保管し、それらを組合わせる手段を含む、請求項56に記載の製剤。
【請求項59】
別々に保管するための手段は、単一の容器または2つの別個の容器中に、2つの別個の区画を含む容器を含む、請求項58に記載の製剤。
【請求項60】
第一の混合物が、水溶性のパケットに収容される、請求項59に記載の製剤。
【請求項61】
請求項56に記載の第一の混合物および第二の混合物とを組合わせ、それによりペルオキシカルボン酸を生産させることによって生成された消毒製剤。
【請求項62】
消毒製剤が、第一の混合物または第二の混合物に存在しない追加の量の水をさらに含む、請求項61に記載の消毒製剤。
【請求項63】
katEにおける破壊とkatGにおける破壊とを含む組換えエシェリキア・コリ細胞(ただし、該宿主細胞は、エシェリキア・コリUM2ではない)。
【請求項64】
細胞が、エシェリキア・コリ株MG1655から誘導される、請求項63に記載の組換えエシェリキア・コリ宿主細胞。
【請求項65】
過酸化水素を使用または生成することができる酵素をさらに含む、請求項64に記載の組換えエシェリキア・コリ宿主細胞。
【請求項66】
少なくとも1つのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素をさらに含む、請求項65に記載の組換えエシェリキア・コリ宿主細胞。
【請求項67】
少なくとも1つのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素が、CE−7炭水化物エステラーゼのシグネチャーモチーフを含む、請求項66に記載の組換えエシェリキア・コリ宿主細胞。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【公表番号】特表2010−512165(P2010−512165A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541293(P2009−541293)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/010644
【国際公開番号】WO2008/073139
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】