説明

過給機付きエンジンの吸気量検出装置

【課題】エアフローセンサにより検出される充填効率の検出値の跳ね上がりを抑制することができる過給機付きエンジンの吸気量検出装置を提供する。
【解決手段】本形態のエンジン1は、電動スーパーチャジャシステム(ESS)4を備えている。ESS4の過給度合いは、ECU6で自在に設定可能である。ESS4が非過給状態であるとき、エアフローセンサ(AFS)21の検出値には制限値Aが設定されることで、検出値の跳ね上がりを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機付きエンジンの吸気量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にエンジンの吸気通路には、エンジンの吸気量を検出するエアフローセンサ(以下、AFSという)が設置され、このAFSにより吸気量を検出する構成となっている。AFSを有するエンジンにおいては、自然吸気状態、すなわち非過給状態のときに吸気通路のスロットルバルブを全開にすると、吸気通路内に生じた空気の密度の粗密による脈動によりAFSの検出値が過大に検出されて、充填効率(以下、Ecという)の検出値に跳ね上がりが生ずる場合がある。この場合、Ecの検出値は実際のEcよりも大きな値となるため、Ecの検出値により定められる空燃比が過リッチの状態となったり、点火時期が過リタードの状態となったりし、非過給状態で運転するエンジンの性能を十分に発揮させることができなくなってしまう。
【0003】
また、排気等を利用した過給機付きエンジンにおいて、過給状態でエンジンを運転しているときは、過給された吸気により吸気通路内の空気の密度に粗密が生じにくくなり、スロットルバルブを全開にした場合でも脈動は生じにくいため、Ecの検出値に跳ね上がりは生じにくくなる。これらのことから、過給機による過給度合いに応じてAFSで検出された吸気量の検出値を補正する技術が知られている。このような技術の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0004】
ところで、近年、過給機として、バッテリーの電力により駆動される電動スーパーチャジャシステム(以下、ESSという)付きエンジンが知られるようになっている。ESS付きエンジンは、排気を利用した過給機と異なり、バッテリーの電力により動作するモータにより駆動されているため、エンジンの運転状況に応じて自在に過給度合いを設定することができる。
【0005】
このため、ESS付きエンジンでは、スロットルバルブを全開にすることによりインテークマニホールド(以下、インマニという)内の圧力が0mmHgになるまでは非過給状態とし、インマニ内の圧力が0mmHgとなった後も引き続きアクセルが踏み込まれている場合には過給状態とするように設定することが可能である。
【0006】
なお、ESSは、バッテリーの電力を用いて駆動されているため、バッテリーの残容量が少なくなったときには、バッテリー上がりなどを防止するために非過給状態でエンジンを運転する場合がある。さらに、ESSのモータの温度が上昇したときにも、モータを保護するために非過給状態でエンジンを運転する場合がある。このため、ESS付きエンジンでは、非過給状態でエンジンを運転しているときであっても、スロットルバルブを全開にして運転する場合がある。
【0007】
【特許文献1】特開平8−61135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したようにESS付きエンジンでは、非過給状態でエンジンを運転しているときであっても、スロットルバルブを全開にして運転する場合がある。しかしながら、上述した特許文献1に開示されるような従来の吸気量の検出値を補正する技術では、そもそも非過給状態でエンジンを運転しているときにスロットルバルブを全開にすることを想定していないため、非過給状態のときにスロットルバルブを全開にしたときに発生するEcの検出値の跳ね上がりを抑制することはできない。
【0009】
以上のことから、本発明は、AFSにより検出されるEcの検出値の跳ね上がりを抑制することができる過給機付きエンジンの吸気量検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する第1の発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置は、エンジンの吸気量を検出する吸気量検出手段と、前記エンジンの吸気を過給する過給機と、前記過給機の過給度合いを設定する過給設定手段と、該過給設定手段により前記過給機が非過給状態に設定されているとき、前記吸気量検出手段の検出値に第1の制限値を設定する制限値設定手段とを備えることを特徴とする。これにより、前記過給機が非過給状態のときにAFSにより検出されるEcの検出値の跳ね上がりを抑制することができる。
【0011】
上記の課題を解決する第2の発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置は、第1の発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置において、前記過給設定手段は、前記エンジンが搭載される車両の状態に応じて前記過給機の作動を許可する過給許可手段を備え、前記制限値設定手段は、前記過給許可手段で前記過給機の作動が不許可となり、かつ、前記エンジンの吸気通路に設けられたスロットルバルブを全開又はほぼ全開状態としたときに前記第1の制限値を設定することを特徴とする。これにより、特に、非過給状態のときにスロットルバルブを全開にしたとき生じるEcの検出値の跳ね上がりを抑制することができる。
【0012】
上記の課題を解決する第3の発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置は、第1の発明又は第2の発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置において、前記制限値設定手段は、前記過給設定手段により前記過給機が過給状態に設定されているとき、前記吸気量検出手段の検出値に前記第1の制限値より緩い制限値である第2の制限値を設定することを特徴とする。これにより、前記過給機が過給状態のときにAFSにより検出されるEcの検出値の跳ね上がりを抑制することができる。
【0013】
上記の課題を解決する第4の発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置は、第1の発明から第3の発明のいずれかひとつに係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置において、前記制限値設定手段は、前記第1の制限値になまし処理を施すことを特徴とする。これにより、前記第1の制限値を徐々に切替えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エアフローセンサにより検出される充填効率の検出値の跳ね上がりを抑制することができる過給機付きエンジンの吸気量検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置の一実施形態について、図を参照しながら説明する。
はじめに、本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置及びその周辺の装置構成について説明する。
図1は、本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置及びその周辺の装置構成図である。なお、図1中の後述する吸気通路2及びバイパス通路5内に記載された矢印は、吸気の流れの方向を示している。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る車両に搭載されるエンジン1は、燃料を燃焼させる燃焼室10と、燃料に点火する点火プラグ11と、燃焼室10における燃料の燃焼により上下動するピストン12と、燃焼室10に吸気を導入する吸気ポート13と、燃焼室10から排気を排出する排気ポート14と、ピストン12の下降時の吸気行程において開く吸気バルブ15と、ピストン12の上昇時の排気工程において開く排気バルブ16とにより構成されている。
【0017】
エンジン1の吸気ポート13には、吸気系側に設置される吸気通路2を複数の気筒におけるそれぞれの吸気ポートに分岐するインマニ8が接続されている。インマニ8には、燃料を噴射するインジェクタ17が設置されている。なお、本実施形態においては、インジェクタ17はインマニ8に設置したが、燃焼室10に設置することも可能である。また、エンジン1の排気ポート14には、複数の気筒におけるそれぞれの排気ポート14を排気系側に設置される排気通路3に集合させるエキゾーストマニホールド9が接続されている。
【0018】
吸気通路2には、最上流に吸気中の異物を取り除くエアクリーナ20が設置されている。エアクリーナ20の下流には、吸気量を検出するセンサであるAFS21が設置されている。吸気通路2のAFS21の下流には、ESS4が設置されている。ESS4は、吸気を過給するコンプレッサ部40と、コンプレッサ部40を駆動するモータを備えるモータ部41と、モータ部41のモータ本体や軸受や制御基板等(図示省略)の温度を検出するESS温度センサ42とにより構成されている。
【0019】
ESS4は、バッテリー(図示省略)から供給される電力によりモータ部41のモータを動作させてコンプレッサ部40を駆動する構成であるため、排気ガスを利用したターボチャージャとは異なり、エンジン1の運転状態や車両の状態に応じて、自在に過給度合いを設定すること可能である。なお、本実施形態においては過給機として、ESS4を用いる場合について説明するが、この他にも電磁クラッチ付きの機械式スーパーチャージャを用いることとしてもよい。
【0020】
吸気通路2のESS4の下流には、燃焼室10に供給される吸気量を調節するスロットルバルブ22が設置されている。なお、図1においては、スロットルバルブが全開の状態を示している。スロットルバルブ22には、スロットルバルブ22の開度を検出するスロットルバルブポジションセンサ23(以下、TPS23という)が設置されている。
【0021】
また、吸気通路2のAFS21とESS4との間と、吸気通路2のESS4とスロットルバルブ22との間には、吸気をESS4を経ずにスロットルバルブ22へバイパスさせるバイパス通路5が設置されている。バイパス通路5には、ESS4が停止している非過給状態のときには開き、ESS4が作動している過給状態のときには閉じるリード50を備えたリードバルブ51が設置されている。
【0022】
すなわち、リードバルブ51は、非過給状態のときにはリードバルブ51の上流側の気圧が高くなるためリード50が開いてスロットルバルブ22へ吸気をバイパスし、過給状態のときにはリードバルブ51の下流側の気圧が高くなるためリード50が閉じてリードバルブ51へ吸気をバイパスしないようになっている。なお、図1においては、リードバルブ51は、リード50が開いている状態を示している。
【0023】
吸気通路2のスロットルバルブ22の下流には、上述したようにインマニ8が接続されている。なお、排気系側の排気通路3には触媒等が設置されるが、本発明を説明するにあたっては、排気系についての説明を行う必要はないため、説明は省略する。
【0024】
また、本実施形態に係る車両は、エンジン1を始めとし車両に搭載されるESS4や各種の電装部品等を制御する汎用的な制御装置であるエレクトロニックコントロールドユニット6(以下、ECU6という)を備えている。そして、本実施形態においては、ECU6は、ESS4による過給度合いを過給ゼロから最大過給まで自在に設定することができるようになっている。すなわち、ECU6は、ESS4を自在に非過給状態又は過給状態に切換えることができる。
【0025】
ECU6には、上述した点火プラグ11、インジェクタ17、AFS21、ESS温度センサ42及びTPS23が信号線により接続されている。ECU6は、点火プラグ11の点火時期を制御し、インジェクタ17の燃料噴射量や燃料の噴射タイミング等を制御している。また、ECU6は、AFS21で検出した吸気量の検出値や、ESS温度センサ42で検出したモータ本体等の温度の検出値や、TPS23で検出したスロットルバルブ33の開度の検出値を取得している。そして、ECU6は、AFS21の吸器量の検出値からEcを得ている。
【0026】
さらに、ECU6は、バッテリーの残容量(図1中、BATT.で示す)やエンジンの回転数(図1中、RPM.で示す)やアクセル開度(図1中、ACCEL.で示す)等の種々の情報についても車内LANを利用したCAN通信により取得することが可能となっている。
【0027】
また、本実施形態に係るESS4搭載車両の場合には、ダッシュボード等にESS作動スイッチ7を設置し、ESS作動スイッチ7のオン又はオフをECU6において検出するようにして、ユーザがESS作動スイッチ7をオンにしたときにESS4の使用を許可し、ESS作動スイッチ7をオフにしたときにESSの4の使用を不許可とすることができるようになっている。
以上が本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置及びその周辺の装置構成である。
【0028】
次に、本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置の動作の手順について説明する。
図2は、本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置の動作の手順を示したフローチャートである。また、図3は、本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置におけるEc検出値の制限の様子を示した図である。
【0029】
図2に示すように、はじめに、ステップP10において、ECU6は、ESS作動スイッチ7がオフにされているか判断する。ECU6は、ESS作動スイッチ7がオフにされている場合、ステップP20を実行する。また、ECU6は、ESS作動スイッチ7がオンにされている場合、ステップ11を実行する。
【0030】
ステップP11において、ECU6は、バッテリーの残容量が所定値よりも低下しているか判断する。ECU6は、バッテリーの残容量が所定値よりも低下している場合、ステップP20を実行する。また、ECU6は、バッテリーの残容量が所定値よりも低下していない場合、ステップP12を実行する。なお、ステップP11におけるバッテリーの残容量の所定値は、エンジン1の始動時に必要な最低限の残容量等を考慮して設定する。
【0031】
ステップP12において、ECU6は、ESS温度センサ42の検出値からESS4のモータ等の温度が所定値よりも上昇しているか判断する。ECU6は、ESS4のモータ等の温度が上昇している場合、ステップP20を実施する。また、ECU6は、ESS4のモータ部41のモータ等の温度が上昇していない場合、ステップP20を実施する。なお、ステップP12における温度の所定値は、ESS4のモータ等が熱により損傷することを防ぐことができるように考慮して設定する。
【0032】
上述したステップP10〜12においてESS4による過給を不許可とすることを判断した場合、ステップP20において、ECU6は、ESS4による過給を不許可と設定する。ECU6は、ステップP20の実行後、ステップP21を実行する。
【0033】
また、上述したステップP10〜12においてESS4による過給を許可すると判断した場合、ステップ40において、ECU6は、ESS4による過給を許可する設定とする。ECU6は、ステップP40の実行後、ステップP41を実行する。
【0034】
次に、本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置におけるESS4による過給を不許可とした場合の動作の手順について説明する。
ステップP21において、ECU6は、ESS4による過給を停止する。ECU6は、ステップP21の実行後、ステップP22を実行する。
【0035】
ステップP22において、ECU6は、TPS23の検出値からスロットルバルブ22の開度が図3に示す所定値Aよりも大きいか判断する。ECU6は、スロットルバルブ22の開度が所定値Aよりも大きい場合、ステップP23を実行する。なお、所定値Aは、試験等の結果からエンジン1の種類等に応じて適宜決定し、ECU6に予め記憶させておく。
【0036】
ステップP23において、ECU6は、エンジン1の運転状態に応じてEcの制限値を非過給状態用のEc制限値マップから図3に示すEc制限値Aを選択する。なお、非過給状態用のEc制限値マップは、試験の結果等に基づきエンジン1の種類等に応じて適宜決定し、ECU6に予め記憶させておく。ECU6は、ステップP23の実行後、ステップP24を実行する。
【0037】
ステップP24において、ECU6は、Ec制限値のなまし処理を下記式(1)により実行する。ECU6は、ステップP24の実行後、ステップP25を実行する。
【数1】

【0038】
ここで、上記式(1)において、Ec制限値(今回)は、今回のEcの跳ね上がりを抑制するために用いるEcの制限値であり、Ec制限値(前回)は、前回のEcの跳ね上がりを抑制するために用いたEcの制限値である。また、FGAはフィードバックゲインを意味し、FGA≦1であり、FGAの値が大きいほどEc制限値(今回)にEc制限値(前回)が反映されるため、Ec制限値(今回)のなましの度合は大きくなる。
【0039】
ステップP25において、ECU6は、上記式(1)を用いて算出したEc制限値(今回)によりAFS21のEc検出値の制限値を設定する。ECU6は、ステップP25の実行後、処理を終了する。
【0040】
このように、ステップP22〜25における処理により、図3中矢印bで示すような非過給域におけるスロットルバルブ22全開時、すなわちインマニ8内の圧力が0mmHg近傍時のEcの検出値の跳ね上がりを、図3中矢印aで示すように抑制することができる。また、非過給域におけるスロットルバルブ22の開度に応じEc制限値を徐々にEc制限値Aに切替えることができる。なお、FGAを変更することにより、エンジン1の種類や運転状態に応じて切替の早さを適宜設定することが可能である。
【0041】
また、上述したステップP22において、ECU6は、スロットルバルブ22の開度が所定値Aよりも大きくない場合、ステップP30を実行する。
ステップP30において、ECU6は、AFS21によるEcの検出値に制限値を設定しない。ECU6は、ステップP30の実行後、処理を終了する。
【0042】
次に、本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置におけるESS4による過給を許可した場合の動作の手順について説明する。
ステップP41において、ECU6は、エンジン回転数やアクセル開度からESS4による過給が必要な運転領域であるか判断する。ECU6は、ESS4による過給が必要な運転領域である場合、ステップP42を実行する。また、ECU6は、ESS4による過給が必要な運転領域でない場合、上述したステップP21を実行する。
【0043】
ステップP42において、ECU6は、ESS4を作動させて過給を開始する。ECU6は、ステップP42の実行後、ステップP43を実行する。
ステップP43において、ECU6は、TPS23の検出値からスロットルバルブ22の開度が図3に示す所定値Bよりも大きいか判断する。ECU6は、スロットルバルブ22の開度が所定値Bよりも大きい場合、ステップP44を実行する。また、ECU6は、スロットルバルブ22の開度が所定値Bよりも大きくない場合、上述したステップP30を実行する。なお、所定値Bは、試験等の結果からエンジン1の種類等に応じて適宜決定し、ECU6に予め記憶させておく。
【0044】
ステップP44において、ECU6は、エンジン1の運転状態に応じてEcの制限値を過給状態用のEc制限値マップから図3に示すEc制限値Bを選択する。なお、過給状態用のEc制限値マップは、試験の結果等に基づきエンジン1の種類等に応じて適宜決定し、ECU6に予め記憶させておく。また、図3に示すように、Ec制限値Bは上述したEc制限値Aよりも緩くなるように、すなわち、「Ec制限値A<Ec制限値B」となるように設定する。ECU6は、ステップP44の実行後、ステップP45を実行する。
【0045】
ステップP45において、ECU6は、Ec制限値のなまし処理を下記式(2)により実行する。ECU6は、ステップP45の実行後、ステップP46を実行する。
【数2】

【0046】
ここで、上記式(2)において、Ec制限値(今回)は、今回のEcの跳ね上がりを抑制するために用いるEcの制限値であり、Ec制限値(前回)は、前回のEcの跳ね上がりを抑制するために用いたEcの制限値である。また、FGBはフィードバックゲインを意味し、FGB≦1であり、FGBの値が大きいほどEc制限値(今回)にEc制限値(前回)が反映されるため、Ec制限値(今回)のなましの度合は大きくなる。
【0047】
ステップP46において、ECU6は、上記式(2)を用いて算出したEc制限値(今回)によりAFS21のEc検出値の制限値を設定する。ECU6は、ステップP46の実行後、処理を終了する。
【0048】
このように、ステップP43〜46における処理により、過給域におけるEcの検出値の跳ね上がりを抑制することができる。また、過給域におけるスロットルバルブ22の開度に応じEc制限値を徐々にEc制限値Bに切替えることができる。なお、FGBを変更することにより、エンジン1の種類や運転状態に応じて切替の早さを適宜設定することが可能である。
以上が本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置の動作の手順である。
【0049】
以上説明したように、本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置によれば、AFS21により検出されるEcの検出値の跳ね上がりを抑制することができるため、空燃比の過リッチや点火時期の過リタード等を防止してエンジン1の性能を十分に発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、ECUにより自在に過給度合いを設定することが可能な過給機、例えば、電動スーパーチャジャシステム搭載車両において利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置及びその周辺の装置構成図である。
【図2】本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置の動作の手順を示したフローチャートである。
【図3】本発明に係る過給機付きエンジンの吸気量検出装置におけるEc検出値の制限の様子を示した図である。
【符号の説明】
【0052】
1 エンジン
2 吸気通路
3 排気通路
4 電動スーパーチャジャシステム(ESS)
5 バイパス通路
6 エレクトロニックコントロールドユニット(ECU)
7 ESS作動スイッチ
8 インテークマニホールド(インマニ)
9 エキゾーストマニホールド
10 燃焼室
11 点火プラグ
12 ピストン
13 吸気ポート
14 排気ポート
15 吸気バルブ
16 排気バルブ
17 インジェクタ
20 エアクリーナ
21 エアフローセンサ(AFS)
22 スロットルバルブ
23 スロットルバルブポジションセンサ(TPS)
40 コンプレッサ部
41 モータ部
42 ESS温度センサ
50 リード
51 リードバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの吸気量を検出する吸気量検出手段と、
前記エンジンの吸気を過給する過給機と、
前記過給機の過給度合いを設定する過給設定手段と、
該過給設定手段により前記過給機が非過給状態に設定されているとき、前記吸気量検出手段の検出値に第1の制限値を設定する制限値設定手段と
を備える
ことを特徴とする過給機付きエンジンの吸気量検出装置。
【請求項2】
前記過給設定手段は、前記エンジンが搭載される車両の状態に応じて前記過給機の作動を許可する過給許可手段を備え、
前記制限値設定手段は、前記過給許可手段で前記過給機の作動が不許可となり、かつ、前記エンジンの吸気通路に設けられたスロットルバルブを全開又はほぼ全開状態としたときに前記第1の制限値を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の過給機付きエンジンの吸気量検出装置。
【請求項3】
前記制限値設定手段は、前記過給設定手段により前記過給機が過給状態に設定されているとき、前記吸気量検出手段の検出値に前記第1の制限値より緩い制限値である第2の制限値を設定する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の過給機付きエンジンの吸気量検出装置。
【請求項4】
前記制限値設定手段は、前記第1の制限値になまし処理を施す
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の過給機付きエンジンの吸気量検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−101168(P2010−101168A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270436(P2008−270436)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】