説明

過給機付き内燃機関及びその制御方法

【課題】サージを抑制するための制御において、吸入空気量や過給圧を適切な状態に保ちながら、コンプレッサのサージを確実且つ効果的に抑制しつつ、このサージを抑制するための制御を終了して通常の過給制御に復帰したときでも、吸入空気量や過給圧の急激な変化を回避できる過給機付き内燃機関及びその制御方法を提供する。
【解決手段】コンプレッサ12aを迂回するバイパス通路16に設けたバイパスバルブ16aを流量調整可能に形成し、吸入空気流量Vi又は前記コンプレッサ12aを通過する全体の空気流量Vaを求め、空気流量Vi又はVaでサージ状態に入ることがないコンプレッサ12aの出口側の圧力Poの上限値Pocを算出し、コンプレッサ12aの出口側に設けた圧力センサ23の検出値Pomが上限値Pocを超えないように、バイパスバルブ16aの弁開度を制御して、コンプレッサ12aの下流の圧力Poを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気通路に過給機のコンプレッサを備え、このコンプレッサの上流側の吸気通路と下流側の吸気通路との間を連結するバイパス通路と、このバイパス通路に弁開度を制御できるバイパスバルブを備えた過給機付き内燃機関及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機付き内燃機関の中には、コンプレッサにおけるサージの発生を防止するために、コンプレッサの上流側の吸気管と下流側の吸気管との間を連結して迂回するバイパス通路を設け、このバイパス通路にバイパスバルブを備えた過給機付き内燃機関がある。
【0003】
この過給機付き内燃機関では、コンプレッサにサージが発生した場合に、このバイパスバルブを開いて、コンプレッサの下流側の空気をバイパス通路経由でコンプレッサの上流側に還流させて、コンプレッサの下流側の圧力を低下させると共に、コンプレッサを通過する空気流量を増加させている。これにより、コンプレッサの運転条件をサージ発生条件から外すことができるので、サージの発生を防ぐことができる。
【0004】
このバイパスバルブの制御は、この内燃機関を搭載した車両の急減速等の状態になって、コンプレッサにサージが発生した場合に、エンジン回転速度、燃料噴射量、吸入空気量、過給圧力等の情報に基づいて、予め定めた時間と弁開度でバイパスバルブの制御を行っている。
【0005】
その一つに、測量センサで計測した吸入空気量と、ターボ回転数センサで計測したターボ回転数と、バイパスバルブの開度とから、バイパス通路内を通過する空気流量と圧力比を算出し、この算出した空気流量と圧力比から空気流量と圧力比とサージの発生領域との関係から、サージの発生の有無を判定し、サージ発生が見込まれる時は、バイパスバルブの開度を開き、見込まれない場合は、開度を閉じてバイパス通路の通過空気量を抑制する過給制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
また、電動過給機のサージングが起こっている場合に、バイパスバルブを適度に開弁し、加圧された吸入空気の一部を還流して、サージングを解消するエンジンの過給装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
しかしながら、従来のバイパスバルブを開弁した後、予め定められた時間が経過したらバイパスバルブを閉弁する制御を行う場合には、コンプレッサでサージが発生する状況が解消されていないにもかかわらず、バイパスバルブが閉弁されて、再び、サージを発生させる懸念が生じるという問題がある。
【0008】
また、従来のサージを抑制するための制御では、バイパスバルブを開弁した後の吸入空気量や過給圧等は制御していないため、バイパスバルブを閉弁して通常運転に戻る時に吸入空気量や過給圧が不足する場合が生じるという問題がある。
【0009】
更に、バイパスバルブの開閉動作が大きい場合には、内燃機関の吸気側の圧力が急激に変化にして吸入空気量の変動が生じるので、これが排気ガス制御やエンジンの出力制御に対する外乱となってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−207506号公報
【特許文献2】特開2007−92682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、サージを抑制するための制御において、バイパスバルブの弁開度を、コンプレッサの下流の圧力を目標値になるように制御することで、吸入空気量や過給圧を適切な状態に保ちながら、コンプレッサのサージを確実且つ効果的に抑制しつつ、このサージを抑制するための制御を終了して通常の過給制御に復帰したときでも、吸入空気量や過給圧の急激な変化を回避できる過給機付き内燃機関及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の過給機付き内燃機関は、過給機のコンプレッサを迂回するバイパス通路と、該バイパス通路に流量調整可能に形成して設けたバイパスバルブと、該バイパスバルブを制御する制御装置を備えた過給機付きエンジンにおいて、前記制御装置が、吸入空気流量又は前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を求め、該空気流量でサージ状態に入ることがない前記コンプレッサの出口側の圧力の上限値を算出し、前記コンプレッサの前記出口側に設けた圧力センサの検出値が前記上限値を超えないように、前記バイパスバルブの弁開度を制御して、前記コンプレッサの下流の圧力を調整するように構成される。
【0013】
この構成によれば、サージの発生を抑制するサージ抑制制御において、サージ防止制御に入っても、継続して弁開度を制御してコンプレッサの下流側の圧力を調整しつづけるので、シリンダ内への吸気量や過給圧を適切な状態に保ちながら、このサージ抑制制御を完了するまでの間、サージの発生を確実に且つ効果的に抑制することができる。また、過給圧を適切な値に保つことができるので、通常運転に速やかに復帰することができる。更に、サージ防止制御時に、適切な空気流量を還流させることで、エンジン出力等への影響を小さく抑えることができる。
【0014】
上記の過給機付き内燃機関において、前記制御装置が、前記バイパス通路を通過する還流空気流量を、前記バイパスバルブの弁開度と前記コンプレッサの出口圧力と前記コンプレッサの入口圧力と前記コンプレッサの出口側の空気温度から算出し、該還流空気流量を前記吸入空気量に加えて、前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を算出するように構成すると、容易に空気流量を算出できる。
【0015】
または、上記の過給機付き内燃機関において、前記制御装置が、前記バイパス通路を通過する還流空気流量を、前記バイパスバルブの弁開度と前記バイパスバルブの入口圧力と前記バイパスバルブの出口圧力と前記バイパスバルブの入口側の空気温度から算出し、該還流空気流量を前記吸入空気量に加えて、前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を算出するように構成すると、容易に空気流量を算出できる。
【0016】
そして、上記の目的を達成するための過給機付き内燃機関の制御方法は、過給機のコンプレッサを迂回するバイパス通路を流れる還流空気流量を、前記バイパス通路に設けたバイパスバルブで流量調整する過給機付きエンジンの制御方法において、吸入した空気流量又は前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を求め、該空気流量でサージ状態に入ることがない前記コンプレッサの出口側の圧力の上限値を算出し、前記コンプレッサの前記出口側に設けた圧力センサの検出値が前記上限値を超えないように、前記バイパスバルブの弁開度を制御して、前記コンプレッサの下流の圧力を調整することを特徴とする方法である。
【0017】
この方法によれば、サージの発生を抑制するサージ抑制制御において、サージ防止制御に入っても、継続して弁開度を制御してコンプレッサの下流側の圧力を調整しつづけるので、シリンダ内への吸気量や過給圧を適切な状態に保ちながら、このサージ抑制制御を完了するまでの間、サージの発生を確実に且つ効果的に抑制することができる。また、過給圧を適切な値に保つことができるので、通常運転に速やかに復帰することができる。更に、サージ防止制御時に、適切な空気流量を還流させることで、エンジン出力等への影響を小さく抑えることができる。
【0018】
上記の過給機付き内燃機関の制御方法において、前記バイパス通路を通過する還流空気流量を、前記バイパスバルブの弁開度と前記コンプレッサの出口圧力と前記コンプレッサの入口圧力と前記コンプレッサの出口側の空気温度から算出し、該還流空気流量を前記吸入空気量に加えて、前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を算出するようにすると、容易に空気流量を算出できる。
【0019】
又は、上記の過給機付き内燃機関の制御方法において、前記バイパス通路を通過する還流空気流量を、前記バイパスバルブの弁開度と前記バイパスバルブの入口圧力と前記バイパスバルブの出口圧力と前記バイパスバルブの入口側の空気温度から算出し、この還流空気流量を前記吸入空気量に加えて、前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を算出するようにすると、容易に空気流量を算出できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る過給機付き内燃機関及びその制御方法によれば、コンプレッサのサージ発生を防止するためのサージ防止制御をバイパスバルブの制御で行っている時に、サージ防止制御に入っても、継続して弁開度を制御してコンプレッサの下流側の圧力を調整しつづけるので、シリンダ内への吸気量や過給圧を適切な状態に保つことができ、サージ抑制制御を完了するまでの間、サージの発生を確実に且つ効果的に抑制することができる。また、過給圧を適切な値に保つことができるので、通常運転に速やかに復帰することができる。更に、サージ防止制御時に、適切な空気流量を還流させることで、エンジン出力等への影響を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態の過給機付き内燃機関の構成を示した図である。
【図2】本発明に係る第2の実施の形態の過給機付き内燃機関の構成を示した図である。
【図3】コンプレッサを通過する全体の空気流量を用いた場合の制御方法を説明するための図である。
【図4】吸入空気流量を用いた場合の制御方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態の過給機付き内燃機関とその制御方法について、図面を参照しながら説明する。なお、ここでは、ターボ式過給機を例にして説明するが、本発明は、これに限定されることなく、機械式過給機にも適用できる。
【0023】
図1に示すように、本発明に係る第1の実施の形態の過給機付き内燃機関(過給機付きエンジン)10は、エンジン本体(E)11とターボ式過給機12を備え、吸気通路13にターボ式過給機12のコンプレッサ(C)12aが設けられ、排気通路14にターボ式過給機12のタービン(T)12bが設けられている。また、EGR通路15が設けられ、このEGR通路15にEGR弁15aが設けられている。
【0024】
そして、吸気通路13には、コンプレッサ12aを迂回するバイパス通路16が、コンプレッサ12aの上流側の吸気通路13から分岐し、コンプレッサ12aの下流側の吸気通路13に合流して形成される。このバイパス通路16には、弁開度を制御できて通過する空気の流量を調整できるバイパスバルブ16aが設けられている。更に、インタークーラ(I/C)17がバイパス通路16の合流部分16bよりもエンジン本体11側の吸気通路13に設けられる。
【0025】
また、このバイパスバルブ16aを制御する制御装置20aが設けられるが、この制御装置20aは、通常は、エンジン10の全体を制御する、エンジンコントロールユニットと呼ばれる制御装置(ECU)20に組み込まれて構成される。また、更に、コンプレッサ12aの入口側(上流側)に第1圧力センサ21と第1温度センサ22を、出口側(下流側)に第2圧力センサ23と第2温度センサ24を設けて、その検出値を制御装置20aに入力するように構成する。
【0026】
なお、本発明に直接関係しない、エアクリーナ、吸気絞り弁、EGRクーラ、排気ガス浄化装置、排気絞り弁、消音装置等も設けられるが、説明を簡略化するために図示しない。
【0027】
次に、上記の構成の第1の実施の形態の過給機付き内燃機関10の制御方法について説明する。この制御方法では、コンプレッサ12aが運転中にサージを発生しないように、サージの発生が予想されるエンジンの運転領域では、サージの発生を抑制するためにサージ抑制制御を行う。
【0028】
このサージ抑制制御では、コンプレッサ12aの出口側の第2圧力センサ23の検出値Pomに基づいてバイパスバルブ16aの弁開度を制御して,コンプレッサ12aの下流側の圧力Poを調整する。このサージ抑制制御においては、コンプレッサ12aを通過する空気流量(質量)Waを求め、この空気流量Waでサージ状態に入ることがないコンプレッサ12aの出口圧力Poの上限値Pocを算出する。そして、コンプレッサ12aの出口側に設けた第2圧力センサ23の検出値Pomが、この上限値Pocを超えないように、バイパスバルブ16aの弁開度を制御する。
【0029】
より詳細に説明すると、マスエアフローセンサ(図示しない)等により直接測定されるか、シリンダの状態等から推定される吸入空気流量(質量)Wisから、この吸入空気が、コンプレッサ12aを通過する時の空気流量(質量)Wiを算出する。
【0030】
更に、バイパスバルブ16aを通過する標準状態に換算された還流空気流量(質量)Wbを求める。この還流空気流量Wbは、バイパスバルブ16aの弁開度と、コンプレッサ12aの出口側の第2圧力センサ23で検出される出口圧力Pomと、コンプレッサ12aの入口側の第1圧力センサ21で検出される入口圧力Pimの圧力比(Pim÷Pom)と、コンプレッサ12aの出口側の第2温度センサ24で検出される出口温度Tom)とから算出することができる。
【0031】
この算出では、予め実験等で求めておいたマップデータ等を使用して、バイパスバルブ16aの弁開度(有効開口面積)Aと、コンプレッサ12aの出口圧力Pomと入口圧力Pimの圧力比(Pim÷Pom)とから、バイパスバルブ16aを通過する流量パラメータを算出して、圧力補正と温度補正を行い、バイパスバルブ16aを通過する還流空気流量Wbを求める。
【0032】
この還流空気流量Wbの算出に際して実際に使用する式の例としては、f()を実験結果を用いたマップ(関数)として、Wb=A×(Pom÷(Tom)1/2)×f(Pim÷Pom)となる。但し、マップに有効開口面積Aの軸を持たせたり、温度や圧力の数値を含ませたり、また、計算精度を上げるための工夫がなされる。
【0033】
また、この還流空気流量Wbは、バイパスバルブ16aの弁開度と、バイパスバルブ16aの入口圧力Pbimと出口圧力Pbomの圧力比(Pbom÷Pbim)と、バイパスバルブ16aの入口温度Tbimとから、Wb=A×(Pbim÷(Tbim)1/2)×f(Pbom÷Pbim)で算出することもできる。この場合は、図示していないが、バイパスバルブ16aの入口側(エンジン本体11側)に入口圧力センサと入口温度センサを、バイパスバルブ16aの出口側に、出口圧力センサを設ける。
【0034】
この還流空気流量Wbを吸入空気量Wiに加えて、コンプレッサを通過する全体の空気流量Waを算出する。つまり、Wa=Wi+Wbとする。
【0035】
図3は、全体の空気流量Waを用いた場合の制御を示す図であり、横軸は流量パラメータWを示す。この流量パラメータWの計算式はマップをどのように作成するかによって変わるが、例えば、コンプレッサ12aの空気流量Wcと、コンプレッサ12aの入口温度Timとコンプレッサ12aの入口圧力Pimとから、W=Wc×(Tim)1/2÷Pimとなる。
【0036】
このサージ抑制制御では、予め、コンプレッサ12aのサージ発生条件を示すサージ発生ライン(実線)に対して、バイパスバルブ16aやコンプレッサ16a等の応答性等も加味して、サージ防止制御をおこなうためのサージ防止制御(点線)ラインを設定しておく。
【0037】
ここで、上記で算出したコンプレッサ12aを通過する全体の空気流量Waに対して、設定したサージ防止ライン(点線)が、サージの発生を余裕を持って防止できる圧力比Rp(=Po/Pi)の値を示す。この圧力比Rpの値が得られたら、コンプレッサ12aの第1圧力センサ21で検出された入口圧力Pimを用いてコンプレッサ12aの出口圧力Po(=Rp×Pim)を求めると、この出口圧力Poがサージを防止するための出口圧力Poの上限値Pocとなる。
【0038】
この上限値Pocを目標値として、コンプレッサ12aの出口側の第2圧力センサ23で検出される出口圧力Pomがこの目標値(上限値)Pocを超えないように、バイパスバルブ16aの弁開度を制御する。この制御は、バイパスバルブ16aの弁開度の制御で出口圧力Pomを目標値Poc以下(Pom≦Poc)に保つ制御であり、フィードバック制御等の周知の制御方法を使用することができる。
【0039】
なお、バイパス通路16を通過する還流空気流量Wbを正確に把握できない場合は、吸入空気量Wiで代用してもよい。この吸入空気量Wiは、バイパス通路16を通過する空気がバイパスバルブ16aを逆流しない限りは、コンプレッサ12aを通過する空気流量Waより少ない流量となる。言い換えれば、空気流量Waは、吸入空気量Wiよりも多い流量(Wi≦Wa)となる。
【0040】
この場合は、図4に示したように、吸入空気流量Wiを用いてサージ防止制御を行う。なお、横軸は流量パラメータWを示す。この場合は、図4のマップ上では、推定される空気流量Waは吸入空気量Wiよりも多い流量となるので、実際の作動点Xは、吸入空気流量Wiより右側のサージが発生しない側に存在することになる。従って、空気流量Waで上限値Pocを設定するマップと同じマップを使用した場合は、同じ吸入空気流量Wiで設定される上限値Pociは、空気流量Waで設定される上限値Pocよりも低くなり(Poci≦Poc)、安全側の制御となる。
【0041】
但し、吸入空気流量Wiとコンプレッサ12aを通過する空気流量Waの差(Wa−Wi)が大きくなると、サージが発生しない不必要な状況でバイパスバルブ16aを開けて流量調整することになるので、コンプレッサ12aを通過する空気流量Waを把握して、この空気流量Waで上限値Pocを設定することが望ましい。
【0042】
次に、図2に示すような、第2の実施の形態の過給機付き内燃機関10Aについて説明する。この過給機付き内燃機関10Aは、インタークーラ(I/C)17がバイパス通路16の合流部分16bよりもコンプレッサ12a側の吸気通路13に設けられている点で、第1の実施の形態の過給機付き内燃機関10とは異なる。第2の実施の形態の過給機付き内燃機関10Aのその他の機器の構成は、図2に示すように、第1の実施の形態の過給機付き内燃機関10と同じである。この構成では、インタークーラ17の容量の影響でバイパスバルブ16aを操作したときの圧力制御の応答が遅くなるという欠点があるが、しかし、その一方で、バイパスバルブ16aを開けたときにバイパス通路16を通過して循環する空気をインタークーラ17で冷却できるという利点がある。
【0043】
この第2の実施の形態の過給機付き内燃機関10Aにおける制御方法では、上記の第1の実施の形態の過給機付き内燃機関10の制御方法と同じ方法を用いてもよいが、第1の実施の形態の過給機付き内燃機関10の制御方法において、コンプレッサ12aの出口側の出口圧力Pomと出口側の空気温度Toの代わりに、インタークーラ17の出口側の出口圧力Pomiと出口側の空気温度Toiを使用することもできる。
【0044】
上記の構成の過給機付き内燃機関10、10A及びその制御方法によれば、コンプレッサ12aのサージ発生を防止するためのサージ防止制御をバイパスバルブ16aの制御で行っている時に、サージ防止制御に入っても、継続してバイパスバルブ16aの弁開度を制御してコンプレッサ12aの下流側の圧力Poを調整しつづけるので、シリンダ内への吸気量や過給圧を適切な状態に保つことができ、サージ抑制制御を完了するまでの間、サージの発生を確実に且つ効果的に抑制することができる。
【0045】
また、このサージ抑制制御を完了するまでの間、コンプレッサ12aにおけるサージの発生を確実に且つ効果的に抑制することができる。また、過給圧を適切な値に保つことができるので、通常運転に速やかに復帰することができる。更に、サージ防止制御時に、適切な還流空気流量Vbを還流させることで、エンジン出力等への影響を小さく抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の過給付き内燃機関及びその制御方法によれば、上記のようなコンプレッサ12aのサージの発生を防止できると共に、サージ抑制制御を完了するまでの間、サージの発生を確実に且つ効果的に抑制することができ、更に、過給圧を適切な値に保つことができるので、通常運転に速やかに復帰することができ、その上、サージ防止制御時に、適切な還流空気流量を還流させることで、エンジン出力等への影響を小さく抑えることができるので、自動車搭載の内燃機関などに利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 過給機付き内燃機関
11 エンジン本体(E)
12 ターボ式過給機(過給機)
12a コンプレッサ(C)
12b タービン(T)
13 吸気通路
16 バイパス通路
16a バイパスバルブ
17 インタークーラ
20 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機のコンプレッサを迂回するバイパス通路と、該バイパス通路に流量調整可能に形成して設けたバイパスバルブと、該バイパスバルブを制御する制御装置を備えた過給機付きエンジンにおいて、
前記制御装置が、吸入空気流量又は前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を求め、該空気流量でサージ状態に入ることがない前記コンプレッサの出口側の圧力の上限値を算出し、前記コンプレッサの前記出口側に設けた圧力センサの検出値が前記上限値を超えないように、前記バイパスバルブの弁開度を制御して、前記コンプレッサの下流の圧力を調整することを特徴とする過給機付き内燃機関。
【請求項2】
前記制御装置が、前記バイパス通路を通過する還流空気流量を、前記バイパスバルブの弁開度と前記コンプレッサの出口圧力と前記コンプレッサの入口圧力と前記コンプレッサの出口側の空気温度から算出し、該還流空気流量を前記吸入空気量に加えて、前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を算出することを特徴とする請求項1記載の過給機付き内燃機関。
【請求項3】
前記制御装置が、前記バイパス通路を通過する還流空気流量を、前記バイパスバルブの弁開度と前記バイパスバルブの入口圧力と前記バイパスバルブの出口圧力と前記バイパスバルブの入口側の空気温度から算出し、該還流空気流量を前記吸入空気量に加えて、前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を算出することを特徴とする請求項1記載の過給機付き内燃機関。
【請求項4】
過給機のコンプレッサを迂回するバイパス通路を流れる還流空気流量を、前記バイパス通路に設けたバイパスバルブで流量調整する過給機付きエンジンの制御方法において、
吸入した空気流量又は前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を求め、該空気流量でサージ状態に入ることがない前記コンプレッサの出口側の圧力の上限値を算出し、前記コンプレッサの前記出口側に設けた圧力センサの検出値が前記上限値を超えないように、前記バイパスバルブの弁開度を制御して、前記コンプレッサの下流の圧力を調整することを特徴とする過給機付き内燃機関の制御方法。
【請求項5】
前記バイパス通路を通過する還流空気流量を、前記バイパスバルブの弁開度と前記コンプレッサの出口圧力と前記コンプレッサの入口圧力と前記コンプレッサの出口側の空気温度から算出し、該還流空気流量を前記吸入空気量に加えて、前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を算出することを特徴とする請求項4記載の過給機付き内燃機関の制御方法。
【請求項6】
前記バイパス通路を通過する還流空気流量を、前記バイパスバルブの弁開度と前記バイパスバルブの入口圧力と前記バイパスバルブの出口圧力と前記バイパスバルブの入口側の空気温度から算出し、この還流空気流量を前記吸入空気量に加えて、前記コンプレッサを通過する全体の空気流量を算出することを特徴とする請求項4記載の過給機付き内燃機関の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180746(P2012−180746A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42299(P2011−42299)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】