説明

過給装置

【課題】エンジンから排出される排気ガスの流動方向で複数のターボチャージャを直列に配置した過給装置において、エンジンの低回転時でのターボラグを短縮し、且つその効率を向上させることができる過給装置を提供する。
【解決手段】本発明の過給装置Aは、エンジン3から排出される排気ガスの流動方向で複数のターボチャージャ(5、6)を直列に配置し、複数のターボチャージャ(5、6)の動作を逐次切り換える過給装置Aであって、複数のターボチャージャ(5、6)にそれぞれ空気を導入させる導管2と、導管2に設けられ複数のターボチャージャ(5、6)に対する空気の流動を切り換えるバルブ27と、を有するという構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排気ガスの運動エネルギーを利用してエンジンに空気を過給する過給装置に関わり、特に排気ガスの流動方向で複数のターボチャージャを直列に配置した過給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンから排出される排気ガスの運動エネルギーを利用して、エンジンに空気を過給するターボチャージャが用いられている。
ターボチャージャは、その内部に回転する翼であるインペラを備えており、このインペラとはタービンインペラとコンプレッサインペラを意味する。ターボチャージャ内に導入された排気ガスの流動によりタービンインペラが回転することで、タービンインペラと一体的に連結されたコンプレッサインペラが回転する。回転するコンプレッサインペラは外部から導入された空気を圧縮し、ターボチャージャがこの圧縮された空気をエンジンに供給することで、エンジンの性能を向上させることができる。
【0003】
インペラは排気ガスの流動によって回転するため、その回転には所定の排気ガス流量が必要である。したがって、インペラが停止しているときにスロットル操作を行う等によりエンジンの回転数を上げたとしても、即座にインペラは回転せず、インペラの回転には時間的遅れいわゆるターボラグが存在する。そして、このターボラグはインペラの重量に比例して長くなる。
例えば、大型で重いインペラを有するターボチャージャでは、多量の空気を供給できエンジンの高出力化が望めるが、インペラの重量のためターボラグは長くなる傾向にある。一方、小型で軽いインペラを有するターボチャージャでは、ターボラグを短縮できるが、供給できる空気量は少ない。
【0004】
そこで、特許文献1には、エンジンから排出される排気ガスの流動方向で複数のターボチャージャを直列に配置し、複数のターボチャージャの動作を逐次切り換える過給装置が開示されている。
特許文献1に開示された過給装置は、エンジンの低回転域に対応する小型のターボチャージャと、エンジンの高回転域に対応する大型のターボチャージャとを有している。エンジンの低回転時には、小型ターボチャージャにのみ排気ガスを導入させ、エンジンの出力・トルク性能の向上と共に、ターボラグを短縮しエンジンのレスポンス性能を向上させている。エンジンの回転数が上昇すれば、排気ガスの流動を小型ターボチャージャから大型ターボチャージャへ切り換え、高いエンジン出力を確保する。上記切換は逐次行われ、エンジンの低回転域から高回転域までの広い範囲に亘り、エンジンの性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−142214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示された過給装置では、複数のターボチャージャは外部から導入される空気の流動方向に関しても直列に配置されている。すなわち、外部から導入された空気は、大型ターボチャージャを通過した後に小型ターボチャージャに導入される。そのため、エンジンの低回転時でも大型ターボチャージャを所定の回転数まで回転させる必要があり、その結果ターボラグが長くなり、且つ空気の流動抵抗が増加し、結果として過給装置の効率が低下してしまうという課題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、エンジンから排出される排気ガスの流動方向で複数のターボチャージャを直列に配置した過給装置において、ターボラグを短縮し、且つその効率を向上させることができる過給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の過給装置は、エンジンから排出される排気ガスの流動方向で複数のターボチャージャが直列に配置され、複数のターボチャージャの動作が逐次切り換えられる過給装置であって、複数のターボチャージャにそれぞれ空気を導入させる導管と、導管に設けられ複数のターボチャージャに対する空気の流動を切り換えるバルブと、を有するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、空気が所定のターボチャージャに導入される前に、他のターボチャージャを通過しないことから、ターボラグが短縮され、且つ空気の流動抵抗が低くなる。
【0009】
また、本発明の過給装置は、バルブによる切り換えは漸次連続的に行われるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、複数のターボチャージャ間において、動作が切り換えられるときに生じる振動等を減少させることができる。
【0010】
また、本発明の過給装置は、バルブは逆止弁であるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、ターボチャージャによって圧縮された空気がバルブの設置箇所から漏出することを防止する。
【0011】
また、本発明の過給装置は、少なくとも1つのターボチャージャによって圧縮された空気を他のターボチャージャをバイパスさせてエンジンに導入させる第2導管と、第2導管を遮蔽する第2バルブと、を有するという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、少なくとも1つのターボチャージャによって圧縮された空気がエンジンに導入される前に、他のターボチャージャを通過しないことから、空気の流動抵抗が低くなる。
【0012】
また、本発明の過給装置は、第2バルブは逆止弁であるという構成を採用する。
このような構成を採用する本発明では、ターボチャージャによって圧縮された空気が第2バルブの設置箇所から漏出することを防止する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、エンジンの低回転時でのターボラグを短縮でき、且つターボチャージャに導入される空気の流動抵抗が低くなることから、過給装置の効率を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る過給装置Aが設けられた駆動系1の全体構成を示す概略図である。
【図2】本実施形態における切換バルブ27(空気バイパスバルブ28)の構成を示す概略図である。
【図3】本実施形態におけるエンジン3が低回転域にある場合の空気及び排気ガスの流動を示す概略図である。
【図4】本実施形態におけるエンジン3が高回転域にある場合の空気及び排気ガスの流動を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
まず、本実施形態に係る過給装置Aが設けられた駆動系1の全体構成を、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る過給装置Aが設けられた駆動系1の全体構成を示す概略図である。
【0016】
本実施形態に係る過給装置Aは、後述するエンジン3から導かれる排気ガスの運動エネルギーを利用して、エンジン3に圧縮された空気を供給する装置である。また、過給装置Aは、エンジン3等と共に車両における駆動系1を構成している。
図1に示すように、駆動系1は、車両の外部から過給装置A及びエンジン3に空気を導入する給気部(導管)2と、空気と燃料との混合気体を燃焼させて駆動力を得るエンジン3と、給気部2から供給される空気を圧縮してエンジン3に供給する過給装置Aと、エンジン3から排出される排気ガスを流動させる排気部4とを有している。
【0017】
給気部2は、空気を流動させる管である第1給気管21から第6給気管(第2導管)26までと、空気の流動方向を切り換える切換バルブ(バルブ、逆止弁)27と、後述する第1コンプレッサ52をバイパスしてエンジン3側に空気を流動させる空気バイパスバルブ(第2バルブ、逆止弁)28とを有している。切換バルブ27及び空気バイパスバルブ28は、不図示のアクチュエータにそれぞれ接続されている。
【0018】
エンジン3は、給気部2から供給された空気が導入される給気マニホールド31と、給気マニホールド31から供給された空気と燃料との混合気体を燃焼させるエンジンブロック32と、エンジンブロック32から排出された排気ガスが導入される排気マニホールド33と、不図示の燃料供給装置とを有している。
【0019】
過給装置Aは、エンジン3の低回転時に作動する第1ターボチャージャ5と、エンジン3の高回転時に作動する第2ターボチャージャ6とを備えている。
【0020】
第1ターボチャージャ5は、エンジン3が低回転域にあり、エンジン3から排出される排気ガスの流量が少ない場合でも作動できる、小型軽量のターボチャージャである。
第1ターボチャージャ5は、エンジン3から排出された排気ガスが導入される第1タービン51と、給気部2から供給された空気を圧縮する第1コンプレッサ52と、第1タービン51と第1コンプレッサ52とを互いに連結する第1軸受け部53とを有している。
【0021】
第1タービン51の内部には、排気ガスの流動によって回転する翼である第1タービンインペラ54が設けられ、第1コンプレッサ52の内部には、回転して空気を圧縮する翼である第1コンプレッサインペラ55が設けられている。第1タービンインペラ54と第1コンプレッサインペラ55とは、第1インペラ軸56を介して一体的に連結されており、第1インペラ軸56は、第1軸受け部53に回転自在に設けられている。
【0022】
第2ターボチャージャ6は、第1ターボチャージャ5よりも大型で、多量の空気を供給できるターボチャージャであり、その作動には第1ターボチャージャ5に比べ多量の排気ガスを必要とする。
第2ターボチャージャ6は、エンジン3から排出された排気ガスが導入される第2タービン61と、給気部2から供給された空気を圧縮する第2コンプレッサ62と、第2タービン61と第2コンプレッサ62とを互いに連結する第2軸受け部63とを有している。また、第2ターボチャージャ6は第1ターボチャージャ5と同様に、第2タービンインペラ64、第2コンプレッサインペラ65、及び第2インペラ軸66を有している。
【0023】
排気部4は、排気ガスを流動させる管である第1排気管41から第5排気管45までと、第1タービン51をバイパスさせて排気ガスを下流側に流動させる第1排気バイパスバルブ46と、第2タービン61をバイパスさせて排気ガスを下流側に流動させる第2排気バイパスバルブ47とを有している。第1排気バイパスバルブ46及び第2排気バイパスバルブ47は、不図示のアクチュエータにそれぞれ接続されている。
【0024】
次に、給気部2における管の接続構成を説明する。
第1給気管21の上流側は、車両の外部から導入した空気を濾過して粉塵等を除去する不図示のエアクリーナと接続されている。第1給気管21の下流側は分岐され、それぞれ第2給気管22及び第3給気管23に接続されている。
第2給気管22の上流側端部には切換バルブ27が設けられており、切換バルブ27は第2給気管22の上流側端部を完全に遮蔽することができる。第2給気管22の下流側は、第1コンプレッサ52における空気の導入口に接続されている。
第1コンプレッサ52における圧縮された空気の排出口には、第4給気管24が接続されている。第4給気管24の下流側は、エンジン3の排気マニホールド31に接続されている。
【0025】
第3給気管23の下流側は、第2コンプレッサ62における空気の導入口に接続されている。第2コンプレッサ62における圧縮された空気の排出口には、第5給気管25が接続されている。第5給気管25の下流側は、第2給気管22に接続されている。
第6給気管(第2導管)26は、第2給気管22と第4給気管24との間に設けられ、第1コンプレッサ52をバイパスする流路となっている。第6給気管26と第2給気管22との接続部は、第5給気管25と第2給気管22との接続部に対向している。第6給気管26の上流側端部には、空気バイパスバルブ28が設けられている。空気バイパスバルブ28は、第6給気管26の上流側端部を完全に遮蔽することができる。
【0026】
次に、排気部4における管の接続構成を説明する。
エンジン3の排気マニホールド33と第1タービン51における排気ガスの導入口とは、第1排気管41によって接続されている。第1タービン51における排気ガスの排出口と第2タービン61における排気ガスの導入口とは、第2排気管42によって接続されている。第2タービン61における排気ガスの排出口には、第3排気管43が接続され、第3排気管43の下流側は、不図示の排気ガス浄化装置や消音装置等に接続されている。
【0027】
第4排気管44は、第1排気管41と第2排気管42との間に設けられ、第1タービン51をバイパスする流路となっている。第5排気管45は、第2排気管42と第3排気管43との間に設けられ、第2タービン61をバイパスする流路となっている。
第4排気管44の上流側端部には第1排気バイパスバルブ46が設けられており、第1排気バイパスバルブ46は第4排気管44の上流側端部を完全に遮蔽することができる。第5排気管45の上流側端部には第2排気バイパスバルブ47が設けられており、第2排気バイパスバルブ47は第5排気管45の上流側端部を完全に遮蔽することができる。
【0028】
次に、切換バルブ27の構成を図2を参照して説明する。
図2は、本実施形態における切換バルブ27(空気バイパスバルブ28)の構成を示す概略図である。
切換バルブ27は、第2給気管22の上流側端部に設けられ、第2給気管22内を流動する空気の流量を調整するためのバルブである。
切換バルブ27は、第2給気管22内に形成される孔部22aに下流側から接触し、孔部22aを完全に遮蔽できる構造となっている。そのため、給気バルブ27の遮蔽時に下流側における空気の圧力が上流側より高くなった場合には、給気バルブ27は上流側に付勢されることで孔部22aに密着し、下流側から上流側への空気の漏出を防ぐことができる。
【0029】
なお、空気バイパスバルブ28も切換バルブ27と同様の構成を有している。空気バイパスバルブ28は、第6給気管26の上流側端部に設けられ、第6給気管26内に形成される孔部26aに下流側から接触し、孔部26aを完全に遮蔽できる構造となっている。
【0030】
続いて、本実施形態に係る過給装置Aが設けられた駆動系1の動作・作用を、図3及び図4を参照して説明する。
図3は、本実施形態におけるエンジン3が低回転域にある場合の空気及び排気ガスの流動を示す概略図である。図4は、本実施形態におけるエンジン3が高回転域にある場合の空気及び排気ガスの流動を示す概略図である。なお、図3及び図4において、白抜き矢印は空気の流動方向を、斜線入り矢印は排気ガスの流動方向を示している。
【0031】
以下、エンジン3の回転数をアイドリング状態から低回転域、次いで高回転域に上昇させた場合の駆動系1の動作を説明する。なお、アイドリング状態では、第1ターボチャージャ5のみが低速で作動しており、低回転域及び高回転域では、第1ターボチャージャ5及び第2ターボチャージャ6の少なくともいずれか一方が作動しているものとする。
【0032】
まず、エンジン3の回転数をアイドリング状態から低回転域に上昇させる。
図3に示すように、エンジン3がアイドリング状態にあるときは、切換バルブ27及び第2排気バイパスバルブ47は開位置に変位しており、空気バイパスバルブ28及び第1排気バイパスバルブ46は閉位置に変位している。
【0033】
スロットル操作等によりエンジン3の回転数を上昇させ、低回転域に到達させる。エンジン3の排気マニホールド33から排出された排気ガスは第1排気管41に導入され、また、第1排気バイパスバルブ46が閉位置に変位しているために、全ての排気ガスが第1タービン51に導入される。第1タービン51に導入された排気ガスは、第1タービンインペラ54を回転させる。その後、排気ガスは第1タービン51から第2排気管42に導入されるのであるが、第2排気バイパスバルブ47が開位置に変位しているため、排気ガスは第2タービン61をバイパスし、第5排気管45を介して第3排気管43に導入される。すなわち、排気ガスは第2タービン61に導入されず、第2タービンインペラ64は回転しない。第3排気管43に導入された排気ガスは、排気ガス浄化装置等を通過して車両の外部に放出される。
【0034】
第1給気管21を介して車両の外部から導入された空気は、切換バルブ27が開位置に変位しているために、第2給気管22及び第3給気管23のいずれにも流動できる。
前述の通り、第2タービンインペラ64は回転していないことから、第2コンプレッサインペラ65も回転しておらず、第2コンプレッサ62は第3給気管23内の空気を吸引しない。一方、第1タービンインペラ54が回転していることから、第1コンプレッサインペラも回転し、第1コンプレッサ52は第2給気管22内の空気を吸引する。
したがって、空気は第1給気管21から第2給気管22へ流入し、第1コンプレッサ52へ導入される。また、空気が第1コンプレッサ52へ導入される前に、第2コンプレッサ62を通過しないことから、空気の流動抵抗を低く抑えることができる。
【0035】
第1コンプレッサ52に導入された空気は、第1コンプレッサインペラ55の回転により圧縮され、圧縮された空気が第4給気管24内に流動する。ここで、第6給気管26は第4給気管24に接続しており、圧縮された空気は第6給気管26内にも流動可能であるが、空気バイパスバルブ28が閉位置に変位しているため、圧縮された空気は第6給気管26から第2給気管22へは流動しない。
なお、第2給気管22内における空気の圧力よりも第6給気管26内における空気の圧力が高いために、第6給気管26から第2給気管22への空気の漏出が発生しやすい状態にあるが、前述の通り空気バイパスバルブ28は逆止弁であるため、上記漏出を防ぐことができる。
【0036】
第1コンプレッサ52によって圧縮された空気は、第4給気管24及び給気マニホールド31を介してエンジン3のエンジンブロック32に導入される。エンジンブロック32内では、圧縮された空気と不図示の燃料供給装置から供給された燃料との混合気体が燃焼され、エンジン3が低回転域にある場合でも、エンジン3の出力・トルク等を向上させることができる。
以上で、エンジン3の回転数をアイドリング状態から低回転域に上昇させた場合の駆動系1の動作が終了する。
【0037】
次に、エンジン3の回転数を低回転域から高回転域に上昇させる。
スロットル操作等によりエンジン3の回転数を上昇させ、高回転域に到達させる。エンジン3の回転数上昇と共に、駆動系1に設けられたバルブ27、28、46、47を漸次連続的に変位させる。
すなわち、図4に示すように、切換バルブ27及び第2排気バイパスバルブ47を開位置から閉位置に次第に変位させ、空気バイパスバルブ28及び第1排気バイパスバルブ46を閉位置から開位置に次第に変位させる。なお、これらバルブの変位動作は、所定の時間を掛けて漸次行われる。
【0038】
第2排気バイパスバルブ47が閉位置に次第に変位することで、第2排気管42内を流動している排気ガスは、第2タービン61に導入される。エンジン3が高回転域にあるため、エンジン3から排出される排気ガス流量は増えており、排気ガスの流動により第2タービンインペラ64を回転させることができる。その後、排気ガスは第2タービン61から第3排気管43に導入され、排気ガス浄化装置等を通過して車両の外部に放出される。
また、第1排気バイパスバルブ46も開位置に次第に変位するため、第1排気管41内の排気ガスは第4排気管44に流動し、第1タービン51をバイパスして第2排気管42へ流動する。すなわち、排気ガスの運動エネルギーは第1タービンインペラ54を回転させるために使用されず、上記運動エネルギーは第2タービンインペラ64を回転させることに使用される。
【0039】
切換バルブ27が閉位置に次第に変位するため、第1給気管21内の空気は第3給気管23にのみ流動し、第2コンプレッサ62に導入される。第2コンプレッサ62に導入された空気は、第2コンプレッサインペラ65の回転により圧縮され、圧縮された空気は第5給気管25に流動する。
また、空気バイパスバルブ28も開位置に次第に変位するため、第5給気管25内の圧縮された空気は第6給気管26に流動し、第1コンプレッサ52をバイパスして第4給気管24に導入される。このように、圧縮された空気が第1コンプレッサ52を通過しないことから、圧縮された空気の流動抵抗を低く抑えることができる。
【0040】
なお、第2コンプレッサ62によって圧縮された空気は第2給気管22へ流入しており、第1給気管21内における空気の圧力よりも第2給気管22内における空気の圧力が高いために、第2給気管22から第1給気管21への空気の漏出が発生しやすい状態にある。もっとも、前述の通り切換バルブ27は逆止弁であるため、上記漏出を防ぐことができる。
【0041】
第2コンプレッサ62によって圧縮された空気は、第4給気管24及び給気マニホールド31を介してエンジン3のエンジンブロック32に導入される。第2ターボチャージャ6は第1ターボチャージャ5に比べ大型であり、多量の空気を供給できるため、エンジン3の出力・トルクをさらに向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態におけるバルブ27、28、46、47は所定の時間を掛けて漸次連続的に変位することから、第1ターボチャージャ5が作動している間に第2ターボチャージャ6が作動し始めることができる。そのため、動作切換時に発生しがちなエンジン3における出力・トルクの落ち込みを低減させることができ、動作切換時に生じる振動等を減少させることができる。
以上で、エンジン3の回転数を低回転域から高回転域に上昇させた場合の駆動系1の動作が終了する。
【0043】
なお、エンジン3の回転数を高回転域から低回転域に低下させた場合の駆動系1の動作は、上記動作を逆に行うものであるため、その説明を省略する。
【0044】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態によれば、エンジン3の低回転時でのターボラグを短縮でき、且つ第1ターボチャージャ5に導入される空気の流動抵抗が低くなることから、過給装置Aの効率を向上させることができるという効果がある。
【0045】
なお、前述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲においてプロセス条件や設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、第2給気管22の下流側に第1ターボチャージャ5が設けられ、第3給気管23の下流側に第2ターボチャージャ6が設けられていたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、第1ターボチャージャ5と第2ターボチャージャ6との設置位置を入れ換えてもよい。この場合は、例えばエンジン3の低回転域では、切換バルブ27は閉位置に変位させておき、第1給気管21内の空気を第3給気管23に導入させる。
【0047】
また、上記実施形態では、ターボチャージャとして第1ターボチャージャ5及び第2ターボチャージャ6の2基が設けられていたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、3基以上のターボチャージャが設けられていてもよい。
【0048】
なお、図1、図3及び図4の給気管及び排気管の途中において、それぞれ5カ所及び3カ所に配管の接続フランジを示したが、この接続フランジの配置位置及び個数は限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
A…過給装置、2…給気部(導管)、26…第6給気管(第2導管)、27…切換バルブ(バルブ、逆止弁)、28…空気バイパスバルブ(第2バルブ、逆止弁)、3…エンジン、5…第1ターボチャージャ、6…第2ターボチャージャ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから排出される排気ガスの流動方向で複数のターボチャージャが直列に配置され、前記複数のターボチャージャの動作が逐次切り換えられる過給装置であって、
前記複数のターボチャージャにそれぞれ空気を導入させる導管と、
前記導管に設けられ前記複数のターボチャージャに対する空気の流動を切り換えるバルブと、を有することを特徴とする過給装置。
【請求項2】
前記バルブによる切り換えは、漸次連続的に行われることを特徴とする請求項1に記載の過給装置。
【請求項3】
前記バルブは、逆止弁であることを特徴とする請求項1または2に記載の過給装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記ターボチャージャによって圧縮された空気を、他の前記ターボチャージャをバイパスさせて前記エンジンに導入させる第2導管と、
前記第2導管を遮蔽する第2バルブと、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の過給装置。
【請求項5】
前記第2バルブは、逆止弁であることを特徴とする請求項4に記載の過給装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−196584(P2010−196584A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42166(P2009−42166)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】