説明

道路情報表示システム

【課題】 表示板の設置場所に応じて情報受信者にとって最適な情報を表示板自体が選択して迅速に表示することが可能となる道路情報表示システムを提供すること。
【解決手段】 走行車両から視認可能な場所に設置される複数の表示板と、表示板との間で相互通信可能な中央管理装置からなるシステムであって、表示板は、道路交通に必要な情報を表示する表示部と、表示板周辺の道路状況の情報を収集する情報収集部と、道路情報としての表示内容が記憶された記憶部と、収集された情報の中から提供すべき事象を判定する判定部と、判定された事象に対応する表示内容を記憶部から読み出して表示部に表示させる制御部と、収集された情報を中央管理装置へと送信し且つ中央管理装置から送信されてくる同種情報を受信する通信部とを備え、判定部は、情報収集部により収集された情報と通信部で受信される情報の両方に基づいて表示すべき情報を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路情報表示システムに関し、より詳しくは、表示板の設置場所に応じて情報受信者にとって最適な情報を選択して表示することができる道路情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドライバーに対して道路の異常状況(異常気象、自然災害、交通事故、イベントによる規制や渋滞等)に関する情報を提供するために、道路の側方や上方に道路の異常状況を知らせるための表示板が設置されている。
かかる従来の表示板としては、現地(表示板の設置地域)において、操作員が予め登録された表示内容を選択する操作を行うことによって、選択された表示内容を表示板に表示させるように構成されたものが存在している。
しかしながら、このような方式の表示板は、操作員が現地まで出向いて表示板を操作する必要があるため非常に面倒であり、また自然災害などによって交通が寸断された場合等には表示板の操作が行えなくなる場合があった。
【0003】
他方、上記したような従来の表示板において、いったん遠隔地にある中央管理装置にて情報を収集した後、当該中央管理装置から情報を送信することによって、予め登録された表示内容を遠隔操作にて表示するように構成されたものも存在している。
このような方式の表示板によれば、操作員が現地まで出向いて表示板を操作する必要が無いというメリットがある。
しかしながら、この方式では、表示板の設置地域から離れた場所にある中央管理装置から送信される情報に基づいて表示板の表示がなされるため、情報の遅れが生じ、表示されている情報の内容と現状とが合わなくなる場合があった。
また、自然災害による停電や通信線の不通によって、中央管理装置からの情報提供が行えなくなる場合もあった。
更に、表示板の数が多くなると、中央管理装置から各表示板に情報を送信するための指示操作が煩雑となるため、全ての表示板を迅速且つ適切に管理することが困難であった。
【0004】
また、上述した表示板とは別のタイプの表示板が下記特許文献1に開示されている。
この特許文献1に開示された表示板は、表示部と、センサ部と、表示制御部を有するものであって、センサ部は、地震動を検知して震度値等の計測信号を出力し、表示制御部は、記憶している道路情報信号の中から震度値に対応する道路情報信号を選択して表示部に表示するように構成されている。
【0005】
この開示技術では、表示板自体にセンサ部と表示制御部が設けられていることから、表示板自体において入手された情報に基づいて表示を行うことが可能である。
そのため、操作員の手動による操作や中央管理装置からの情報の送信に依存する必要がなく、上述した従来技術が抱える問題点の多くを解決することができる。
【0006】
しかしながら、この開示技術の表示板では、その表示板が設置されている地域で入手された情報のみに基づいて情報を表示するように構成されているため、離れた位置に生じた事象については表示板への表示内容に反映させることが全くできない。
そのため、例えば或る特定の地域において交通に障害を及ぼす事象が生じた場合、その地域内にある表示板ではその旨を表示して注意を喚起することはできるが、少し離れた地域の表示板にはその事象に関する情報が伝わらないため表示されない。その結果、ドライバーは、障害が生じている場所に接近するまでは、障害が生じていることを全く把握することができないという問題があった。
更には、入手できる情報が地震に関するものに限られているため、その他の道路の異常状況(台風、大雨、事故等)に対応することはできなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平8−263789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、表示板の設置場所において道路状況に関する情報を収集することができることにより、情報の遅れが生じず、最新の的確な情報を表示することが可能であるとともに、離れた位置に生じた事象についても表示内容に反映させることができ、表示板の数が多くても表示板の設置場所に応じて情報受信者にとって最適な情報を選択して迅速に表示することが可能となる道路情報表示システムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、道路を走行する車両から視認可能な場所に設置される複数の表示板と、該複数の表示板との間で相互通信可能な中央管理装置とからなる道路情報表示システムであって、前記表示板は、道路交通のために必要な情報を表示する表示部と、表示板周辺の道路状況に関する情報を収集する情報収集部と、道路情報として表示すべき表示内容が記憶された記憶部と、前記情報収集部により収集された情報の中から道路情報として提供すべき事象を判定する判定部と、該判定部にて判定された事象に対応する表示内容を前記記憶部から読み出して前記表示部に表示させる制御部と、前記情報収集部により収集された情報を中央管理装置へと送信するとともに該中央管理装置から送信されてくる同種の情報を受信する通信部とを備えており、前記判定部は、前記情報収集部により収集された情報と、前記通信部にて受信される中央管理装置から送信される情報の両方に基づいて表示すべき情報を判定することを特徴とする道路情報表示システムに関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記通信部は、前記情報収集部にて収集された情報を他の表示板へと送信するとともに該他の表示板から送信されてくる情報を受信し、前記判定部は、前記情報収集部により収集された情報と、前記中央管理装置から送信されてくる情報と、前記他の表示板から送信されてくる情報に基づいて表示すべき情報を判定することを特徴とする請求項1記載の道路情報表示システムに関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記情報収集部が、カメラ、センサ、GPSを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の道路情報表示システムに関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記カメラが、全方位カメラであることを特徴とする請求項3記載の道路情報表示システムに関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、太陽電池及び蓄電池を備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の道路情報表示システムに関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、各表示板が、当該表示板の設置場所において収集された情報と、他の表示板もしくは中央管理装置から送信されてきた情報に基づいて、表示すべき情報を自ら判定するように構成されているため、情報の遅れが生じることがなく、最新の情報を的確に表示することが可能であるとともに、離れた位置に生じた事象をも表示内容に反映させることができ、表示板の数が多くても表示板の設置場所に応じて情報受信者にとって最適な情報を迅速に表示することが可能となる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、表示板同士での情報のやり取りが可能となり、他の表示板にて収集された情報をも表示内容に反映させることができるようになるため、より一層的確な情報を提供することが可能となる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、3種類の異なる情報収集手段を備えることによって、様々な事象を1台の表示板で検知することができ、道路の異常状況を引き起こす多様な事象への対応が可能となる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、カメラが全方位カメラであることによって、カメラの駆動機構を設けることなく、1台のカメラで表示板周囲全体の画像情報を収集することができるため、情報収集機能が高い表示板を廉価に得ることが可能となる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、太陽電池及び蓄電池を備えていることによって、自己給電により動作することができ、商用電源の使用が困難な場所においても設置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る道路情報表示システムの好適な実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る道路情報表示システムの全体構成の概要を示すブロック図である。
本発明に係る道路情報表示システムは、図示のように、複数の表示板(1)と、1つの中央管理装置(2)とから構成されている。
表示板(1)は、道路を走行する車両から視認可能な場所、例えば道路脇や道路の上方に設置されるものであって、近傍位置にある表示板同士は相互に通信可能に構成されている。
【0020】
図2及び図3は表示板(1)の実施形態の一例を示す図であって、夫々(a)は正面図、(b)は側面図である。
先ず、ここで、図2及び図3に基づいて表示板(1)の外観的構成について説明する。尚、機能的構成については、図4に基づいて後程詳しく説明する。
【0021】
図2に示す表示板(1)は、固定式のものであって、地面(G)に差し込まれて立設された支柱(3)の上方に標識板(4)及びディスプレイ(5)が取り付けられ、ディスプレイ(5)の下方に操作盤(6)が取り付けられ、標識板(4)の上方には回転灯(7)が取り付けられた構造となっている。
標識板(4)は、予め定まった文字或いは図形が記載される部分であって、その内容については表示板(1)が設置される場所に応じて適宜変更することができる。図示例では、上方の標識板には「異常発生時 通行規制区間 始点」と記載され、下方の標識板には「通行規制について」の説明文が記載されている。
ディスプレイ(5)は、ドライバーに知らせるべき道路情報(道路の異常状況(異常気象、自然災害、交通事故、イベント等による規制や渋滞)に関する情報)を表示する部分であって、例えばLED等の発光体から構成されている。
【0022】
図3に示す表示板(1)は、可搬式のものであって、レベルアジャスタ(8)を介して地面(G)に載置された基台(9)上にディスプレイ(5)が設けられ、ディスプレイ(5)の裏面側に操作盤(6)が設けられた構造となっている。
ディスプレイ(5)は、固定式のものと同様に、ドライバーに知らせるべき道路情報を表示する部分であって、例えばLED等の発光体から構成されている。
【0023】
また、本発明においては、上記した表示板(1)に太陽電池パネル及び蓄電池(図示せず)を取り付けて自己給電を可能とする構成が好ましく採用できる。
【0024】
中央管理装置(2)は、表示板(1)とは離れた位置の建物内等に設けられており、複数の表示板(1)の夫々と相互に通信可能に構成されている。
【0025】
図4は、本発明に係る道路情報表示システムの表示板(1)及び中央管理装置(2)の構成を示すブロック図であり、図5は本発明に係る道路情報表示システムの作用を示すフローチャートである。
【0026】
表示板(1)は、道路交通のために必要な情報を表示する表示部(10)と、表示板周辺の道路状況に関する情報を収集する情報収集部(11)と、道路情報として表示すべき表示内容が記憶された記憶部(12)と、前記情報収集部により収集された情報の中から道路情報として提供すべき事象を判定する判定部(13)と、該判定部にて判定された事象に対応する表示内容を前記記憶部から読み出して表示部に表示させる制御部(14)と、前記情報収集部により収集された情報を中央管理装置(2)へと送信するとともに該中央管理装置から送信されてくる情報を受信する通信部(15)とを備えている。
【0027】
表示部(10)は、道路交通のために必要な情報をドライバーに見せるために表示する部分であって、上記図2及び図3の説明において挙げられたディスプレイ(5)がこれに相当する。
【0028】
情報収集部(11)は、カメラ(111)、GPS(112)、センサ(113)から構成されている。
本発明においては、これら3種類の情報収集手段を全て情報収集部(11)に具備させることが最も好ましいが、これらの1種又は2種のみを具備させるように構成することも可能である。
【0029】
カメラ(111)は、表示板(1)の設置場所から道路やその周囲の状況を撮影して、動画像情報を収集するものである。
カメラ(111)としては、獲得した動画像情報を無線LANのIPネットワーク等を使って直接送信することができるWebカメラが用いられ、より好ましくは全方位カメラが用いられる。
【0030】
全方位カメラは、死角のない360度の広視野角の動画像を撮影することができるカメラであり、円錐ミラー、球面ミラー、双曲面ミラー、放物面ミラー等の回転体ミラーを用いた公知のものを使用することができる。
本発明においては、特に双曲面ミラーを用いたものが好適に用いられ、より好ましくは例えば、特許第2939087号公報、特許第3523783号公報、特開2002−262157号公報の開示技術を利用した全方位カメラが用いられる。
【0031】
GPS(112)は、表示板(1)の設置場所を確定するための位置情報を収集するものであって、別途メモリに記憶されたデジタル道路地図の情報との組み合わせによって、自己の位置を検出することができる。
本発明においては、このようにして、多数の場所に設置された表示板(1)がそれぞれ自己の設置位置を検出することができるため、各表示板(1)の設置場所に応じて最適な情報を選択して表示することが可能となる。つまり、それぞれの表示板(1)について、設置場所に応じた表示内容の役割分担をさせることができるようになる。
【0032】
例えば、「この先渋滞」という表示内容では、実際には3km先が渋滞していたとしても、ドライバーは1km先が渋滞しているのか10km先が渋滞しているのかを判断することができず、結果として渋滞に巻き込まれてしまう可能性があるが、本発明では各表示板が自己の位置情報をもっているため、各表示板の設置場所に応じて、具体的に「10km先渋滞」、「5km先渋滞」、「1km先渋滞」といったような内容を表示することが可能となり、この表示を見たドライバーは渋滞場所の前で曲がる等することで渋滞に巻き込まれることを避けることができる。
【0033】
センサ(113)は、振動センサ、風力センサ、雨量センサ、速度センサ等の各種センサの中から1種類又は2種類以上のセンサを用いることができ、これらのセンサによって道路及びその周辺の状況に関する情報を収集する。
例えば、振動センサでは地震発生時における震度に関する情報、風力センサでは台風等の強風時における風力に関する情報、雨量センサでは大雨の際の雨量に関する情報、速度センサでは道路を走行する自動車の速度(事故や渋滞等に関係する)に関する情報等を収集することができる。
【0034】
記憶部(12)は、道路情報として表示すべき表示内容が予め登録(記憶)される部分であって、RAMやROM等の各種メモリから構成される。
道路情報として表示すべき表示内容とは、「○km先通行止め」、「○○地点事故発生」等の道路を走行するドライバーに提供すべき情報を知らせるものである。
【0035】
判定部(13)は、情報収集部(11)により収集された各種情報の中から道路情報として提供すべき事象を判定する。
道路情報として提供すべき事象とは、道路の異常状況(異常気象、自然災害、交通事故、イベント等による規制や渋滞)に関する事象であって、具体的には、通行の規制(通行止めや速度規制)が必要となる状況である。
判定部(13)は、例えば、情報収集部(11)を構成するカメラ(111)において収集された動画像情報の中から、道路上への落石の画像情報を抽出することによって、「落石」という道路情報として提供すべき事象があると判定する。或いは、風力センサにおいて収集された風力の情報から、一定値以上の風力情報を抽出することによって、「強風」という道路情報として提供すべき事象があると判定する。
【0036】
制御部(14)は、判定部(13)において判定された事象に対応する表示内容を記憶部(12)から読み出して表示部(10)に表示させる。
例えば、判定部(13)において「落石」という事象を判定した場合、制御部(14)は記憶部(12)に予め登録された表示内容の中から「落石注意」という表示内容を読み出して表示部(10)に表示させる。
【0037】
通信部(15)は、無線(151)、情報コンセント(152)、電話回線(153)等の通信回線と、これら通信回線による情報の送受信を制御する通信制御部(154)とから構成されており、TCP/IP方式等を利用した通信を行う。
【0038】
通信部(15)は、情報収集部(11)により収集された情報を中央管理装置(2)へと送信するとともに、中央管理装置(2)から送信されてくる同種の情報(他の表示板から集められた情報)を受信する。
また、通信部(15)は、近くにある他の表示板(1)に対しても当該情報を無線により送信することができるとともに、他の表示板(1)から送信されてくる同種の情報を受信することもできる。
尚、収集された情報の送信に当たっては、送信前に情報を公知の手法で圧縮することが好ましい。
【0039】
手動操作部(16)は、情報収集部(11)からの情報に基づくことなく、手動操作によって表示部(10)に道路情報を表示させるための操作を行う部分であり、上記図2及び図3の説明において挙げられた操作盤(5)がこれに相当する。
【0040】
中央管理装置(2)は、表示板(1)との間で情報の送受信を行うための通信部(21)と、MMI(マンマシンインターフェイス)(22)とを備えている。
MMI(22)は、キーボードやマウス等の入力手段、RAMやROM等のメモリ、CRTやLCD等のディスプレイ、CPU等を備えており、複数の表示板(1)から送信されてきた情報をメモリに蓄積し、適宜ディスプレイに表示することができる。
中央管理装置(2)の操作者は、蓄積された情報の中から、特定の表示板(1)に送信すべき情報を選択し、通信部(21)を介して当該特定の表示板(1)へと送信することができる。
【0041】
本発明に係る道路情報表示システムの大きな特徴は、各表示板(1)が、当該表示板(1)の情報収集部(11)により収集された情報(自己の位置情報を含む)に加えて、通信部(15)を介して受信される情報(中央管理装置(2)からの情報及び他の表示板からの情報)を総合的に考慮し、表示部(10)に表示するのに最適な情報を判定する機能、すなわち自律分散協調機能を有することにある。
【0042】
本発明において、この自律分散協調機能は、表示板(1)の判定部(13)の動作により実現される。
判定部(13)は、各種情報に対して表示すべき優先度を付与するための評価関数を備えており、この評価関数に基づいて各種情報に表示すべき優先度を与え、最も大きい優先度をもつ情報を表示部(10)に表示させる。
より具体的には、判定部(13)は、表示板(1)の情報収集部(11)により収集された情報と、通信部(15)を介して受信される中央管理装置(2)からの情報と、同じく通信部(15)を介して受信される他の表示板からの情報の夫々に対して、評価関数により優先度を付与し、それらの中で最も大きい優先度を判定し、この判定結果に基づいて表示部(10)への表示を行わせる。
【0043】
図6は、判定部(13)の動作の一例を示すフローチャートである。
例えば、当該判定部(13)が設けられている表示板(1)の情報収集部(11)により収集された情報を(A)、中央管理装置(2)から受信した情報を(B)、他の表示板から受信した情報を(C)とした場合を考える。
判定部(13)は、各情報(A,B,C)の優先度を評価関数に基づいて算出するとともに、算出された優先度を比較してそれらの中で最も大きい優先度を判定し、当該最も大きい優先度をもつ情報を選択して表示部(10)に表示させる。
【0044】
評価関数により算出される優先度は、ドライバーに知らせる緊急性或いは有益性の高さを表す指標である。
評価関数は、例えば「事象の種類」×「事象が起こった場所までの距離」という式で与えられる。尚、この式は本発明を分かりやすく説明するために単純化した例示の式であって、実際にはより複雑な式を用いることができる。
「事象の種類」は、大雨、強風、落石、津波、交通事故、道路陥没、渋滞、イベントによる交通規制等の道路交通に影響を及ぼす事象の種類であり、これらは表示板に設けられたカメラ(111)及びセンサ(113)により獲得される情報或いは予め分かっている情報(交通規制等)等に基づいて把握される。
「事象が起こった場所までの距離」は、上記のような事象が起こった場所と表示対象となる表示板との距離であり、これは表示板に設けられたGPS(112)により獲得される情報等に基づいて把握される。
【0045】
「事象の種類」は、各事象ごとにポイント値が予め設定される。
例えば、「大雨」という事象について、1時間当たりの降雨量に応じて表1のようにポイントを設定する。
【0046】
【表1】

【0047】
また、「落石」という事象について、例えば表2のようにポイントを設定する。
【0048】
【表2】

【0049】
また、「津波」という事象について、例えば表3のようにポイントを設定する。
【0050】
【表3】

【0051】
また、「イベントによる交通規制」という事象について、例えば表4のようにポイントを設定する。
【0052】
【表4】

【0053】
「事象が起こった場所までの距離」は、上記のような事象が観測された場所と表示対象となる表示板との距離であり、距離に応じて例えば表5のようにポイント値を設定する。
【0054】
【表5】

【0055】
ここで、ある表示板(1)の判定部(13)が、上記3種類の情報のうち、情報(A)として当該表示板の設置位置における大雨に関する情報、情報(B)として当該表示板から20km離れた位置の表示板が獲得し且つ中央管理装置から送信されてきた大雨に関する情報、情報(C)として当該表示板の3km先の地点における落石に関する情報を獲得した場合を考える。
この場合において、情報(A)として獲得された大雨に関する情報が「降雨量30mm、距離1km未満」であり、情報(B)として獲得された大雨に関する情報が「降雨量40mm、距離20km」であり、情報(C)として獲得された落石に関する情報が「落石により道路の大部分が塞がれており、距離3km」であったとすると、判定部(13)は、上記評価関数の式に基づいて、(A)の優先度を1×3=3、(B)の優先度を2×1=2、(C)の優先度を3×2=6と算出し、これらを比較して(C)の優先度が最も上と判定して選択し、「3km先落石通行止」という表示内容を表示部(10)に表示させる。
【0056】
他の例として、海沿いにある道路(α)に設置された第1の表示板と、第1の表示板から20km離れた内陸の別の道路(β)に設置された第2の表示板が存在していた場合を考える。
ここで、第1の表示板(1)の判定部(13)が、情報(A)として道路(α)地点において観測された津波に関する情報、情報(B)として中央管理装置から送信されてきた道路(β)地点における交通規制に関する情報、情報(C)として近傍の表示板から送信されてきた津波に関する情報を獲得したとする。
更に、第2の表示板(1)の判定部(13)が、情報(A)として道路(β)地点における交通規制に関する情報、情報(B)として中央管理装置から送信されてきた道路(α)地点で観測された津波に関する情報、情報(C)として近隣の表示板から送信されてきた交通規制に関する情報を獲得したとする。
【0057】
この場合、第1の表示板において、情報(A)として獲得された津波に関する情報が「高さ2.5m、距離1km未満」であり、情報(B)として獲得された交通規制に関する情報が「片側通行、距離20km」であり、情報(C)として獲得された津波に関する情報が「高さ1.5m、距離3km」であったとすると、第1の表示板の判定部(13)は、上記評価関数の式に基づいて、(A)の優先度を2×3=6、(B)の優先度を2×1=2、(C)の優先度を1×2=2と算出し、これらを比較して(A)の優先度が最も上と判定して選択し、「津波危険」という表示内容を表示部(10)に表示させる。
【0058】
一方、第2の表示板において、情報(A)として獲得された交通規制に関する情報が「片側通行、距離1km未満」であり、情報(B)として獲得された津波に関する情報が「高さ2.5m、距離20km」であり、情報(C)として獲得された交通規制に関する情報が「片側通行、距離3km」であったとすると、第2の表示板の判定部(13)は、上記評価関数の式に基づいて、(A)の優先度を2×3=6、(B)の優先度を2×1=2、(C)の優先度を2×2=4と算出し、これらを比較して(A)の優先度が最も上と判定して選択し、「この先1km未満 片側通行」という表示内容を表示部(10)に表示させる。
【0059】
上記したように、本発明に係るシステムでは、各表示板(1)がその設置場所に応じて、情報受信者(ドライバー)にとって最適な情報を自ら判断して迅速に且つ的確に表示することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、道路交通のために必要な情報の中から最適な情報を選択して、道路を走行するドライバーに対して提供することが可能な道路情報表示システムであり、交通事情の悪い地域等において特に利用可能性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係る道路情報表示システムの全体構成の概要を示すブロック図である。
【図2】表示板の実施形態の一例である固定式の表示板を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】表示板の実施形態の一例である可搬式の表示板を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図4】本発明に係る道路情報表示システムの表示板及び中央管理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る道路情報表示システムの作用を示すフローチャートである。
【図6】判定部の動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 表示板
2 中央管理装置
21 通信部
22 MMI(マンマシンインターフェイス)
3 支柱
4 標識板
5 ディスプレイ(表示部)
6 操作盤(手動操作部)
7 回転灯
8 レベルアジャスタ
9 基台
10 表示部
11 情報収集部
111 カメラ
112 GPS
113 センサ
12 記憶部
13 判定部
14 制御部
15 通信部
151 無線
152 情報コンセント
153 電話回線
154 通信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を走行する車両から視認可能な場所に設置される複数の表示板と、該複数の表示板との間で相互通信可能な中央管理装置とからなる道路情報表示システムであって、
前記表示板は、道路交通のために必要な情報を表示する表示部と、表示板周辺の道路状況に関する情報を収集する情報収集部と、道路情報として表示すべき表示内容が記憶された記憶部と、前記情報収集部により収集された情報の中から道路情報として提供すべき事象を判定する判定部と、該判定部にて判定された事象に対応する表示内容を前記記憶部から読み出して前記表示部に表示させる制御部と、前記情報収集部により収集された情報を中央管理装置へと送信するとともに該中央管理装置から送信されてくる同種情報を受信する通信部とを備えており、
前記判定部は、前記情報収集部により収集された情報と、前記通信部にて受信される中央管理装置から送信されてくる情報の両方に基づいて表示すべき情報を判定する
ことを特徴とする道路情報表示システム。
【請求項2】
前記通信部は、前記情報収集部にて収集された情報を他の表示板へと送信するとともに該他の表示板から送信されてくる情報を受信し、
前記判定部は、前記情報収集部により収集された情報と、前記中央管理装置から送信されてくる情報と、前記他の表示板から送信されてくる情報に基づいて表示すべき情報を判定する
ことを特徴とする請求項1記載の道路情報表示システム。
【請求項3】
前記情報収集部が、カメラ、センサ、GPSを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の道路情報表示システム。
【請求項4】
前記カメラが、全方位カメラであることを特徴とする請求項3記載の道路情報表示システム。
【請求項5】
太陽電池及び蓄電池を備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の道路情報表示システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−102430(P2007−102430A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290541(P2005−290541)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(597154966)学校法人高知工科大学 (141)
【Fターム(参考)】