説明

道路標示

【課題】上を通過する車両に振動を与えて運転手の注意を喚起することで、車両速度を抑制する効果を奏する道路標示を提供する。
【解決手段】所定形状の標示材片2を、道路の車両進行方向と幅方向に交互に間隔を開けて多数配置して標示部21を形成し、この標示部21に幅方向に沿った直線状の隙間を形成させる。道路の幅方向に沿って直線状の隙間を形成させるので、道路面に接地している車両のタイヤが標示材片2に乗り上げるときの衝撃と、標示材片2に乗り上げたタイヤが道路面1へ降りて接地するときの衝撃によって車両に連続的な振動を与え、運転手に通常と異なる路面状態を感じさせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上を通過する車両に振動を与えて運転手の注意を喚起することで、車両速度を抑制する効果を奏する道路標示を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に音や振動を与えることで、車両速度を抑制させる手段については種々の発明が開示されている。
【0003】
例えば特許文献1には、道路表面に縦断方向に1波長が5〜50mの範囲内にある波形形状を有する舗装面を設けてなる車両の走行速度抑制用舗装体が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−030206号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の如き車両速度抑制手段は、舗装面を5〜50mもの大きな波長の波形形状に形成するので、施工が難しく容易に設けることができないという問題点があった。
【0006】
そこで本発明は、運転手の注意喚起のための振動を車両にあたえ、かつ施工が容易な道路標示を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路標示は、所定形状の標示材片が、道路の車両進行方向および該車両進行方向と交差する幅方向に交互に間隔を開けて多数配置されると共に、車両進行方向の前後に隣り合う標示材片の間の隙間が前記幅方向に並ぶように前記標示材片が配置されることによって、前記標示部の幅方向に沿って直線状の隙間が形成されてなる標示部が形成されることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る道路標示によれば、所定形状の標示材片を、道路の車両進行方向と幅方向に交互に間隔を開けて多数配置して標示部を形成するので、あらかじめ所定形状に形成した標示材片を道路上に配置して接着などで固定すれば標示部を形成できるため、施工を容易に行うことができる。また、所定形状の標示材片を、道路の車両進行方向の前後に交互に間隔を開けて配置するので、道路面に接地している車両のタイヤが標示材片に乗り上げるときの衝撃と、標示材片に乗り上げたタイヤが道路面へ降りて接地するときの衝撃によって車両に連続的な振動を与えるので、運転者へ通常と異なる路面状態を感じさせて車両速度を抑制させる。また、標示材片とタイヤとの接触によって車両に振動を与えるので、ハンプ体のように大きな厚みを持つ標示体とタイヤが接触するときのように大きな音を生じさせないため、道路周辺への騒音を増大させることがない。また、標示材片とタイヤとの接触によって車両に振動を与えるので、ハンプ体のように大きな厚みを持つ標示体とタイヤが接触するときのように大きな衝撃を生じさせないため、バイクや自転車などの二輪車両が通過するような場合でも、車両の姿勢を不安定にしたり転倒させたりすることがない。また、車両進行方向の前後に隣り合う標示材片の間の隙間が道路の幅方向に並ぶように標示材片を配置して、幅方向に沿った直線状の隙間を標示部に形成するので、道路のどの位置を車両が通過しても標示材片を乗り越えたタイヤがこの直線状の隙間に接地して衝撃を受けるので、車両に確実に振動を与えることができる。また、標示材片を、道路の車両進行方向および該車両進行方向と交差する幅方向に交互に間隔を開けて多数配置して標示部を形成するので、雨などが降ったときでも標示部状の水が標示材片の間の隙間を通って車両進行方向と幅方向の両方向に流れ出すので、標示部内に水が溜まることがない。
【0009】
また前記の標示部を車両進行方向に複数設け、各標示部の間隔を各標示材片の前後の間隔より大きくすれば、車両が標示部上を通過する際に与えられる振動が不連続的に複数回与えられるので、車両の運転手に振動をより強く意識させることができ好ましい。
【0010】
また、標示材片の色調の明度を、マンセル値で5.0以上、6.5未満の範囲とすれば、通常のアスファルト舗装を施した道路の路面に対する標示材片の色調が、視認可能だが目立ちすぎない程度の明るさとなるので、路面上の標示材片が人の目に強く認識されることがなく、道路標識を設けることによって施工場所周辺の景観を壊してしまうという問題が生じないので好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る道路標識によれば、施工が容易であり、かつ運転手の注意喚起のための振動を確実に車両に与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図1は本発明に係る道路標識の実施の一形態を示す平面図であり、図2はその拡大図であり、図3は本発明に係る道路標識の施工の流れを示す断面図であり、図4は本発明に係る標示材片の形状と配置の実施の一形態を示す平面図である。
【0013】
図面において、1は道路面である。道路面1はアスファルトコンクリートを用いた舗装面が一般的であるが、これに限るものではなく、セメントコンクリートを用いたコンクリート舗装面や、顔料を混入したカラー舗装面などにも用いることができる。
【0014】
2は標示材片である。標示材片2は、道路の車両進行方向およびそれと交差する幅方向に交互に間隔を開けて多数配置されて標示部21を形成している。また標示部21において、車両進行方向の前後に隣り合う標示材片2の間の隙間が道路の幅方向に並ぶように標示材片2を配置しており、標示部21の幅方向に沿って直線状の隙間22を形成している。このように標示部21に直線状の隙間22を形成することで、道路を通行する車両が標示部21の上を通過するときに、道路面1に接地している車両のタイヤが標示材片2に乗り上げるときと、標示材片2に乗り上げたタイヤが道路面1へ降りて接地するときに、タイヤに衝撃が与えられるので、車両に連続的な振動が与えられる。また、前記の標示材片の前後の間隔より大きな間隔をあけて、標示部21を車両進行方向に複数設けており、車両が標示部21の上を通過するときに与えられる振動が不連続的に複数回与えられる。
【0015】
標示材片2は所定形状に形成されたシート状の形状をしており、その厚みは1mm〜6mm程度とすることが好ましい。厚みが1mm以下であれば標示材片2の上を車両が乗り越える際に十分な振動を与えることができない。また厚みが6mm以上であれば、標示材片2の上を車両が乗り越える際に生じる音が大きくなるので、標示材片2を施工した場所の周辺の騒音を大きくしてしまうという問題が生じる場合がある。
【0016】
また標示材片2の大きさは、道路の車両進行方向の大きさが30mm〜200mm程度とすることが好ましい。30mm以下であれば標示材辺2の強度が低下してタイヤなどとの接触によって標示材辺2が破損しやすくなる。また、200mm以上であれば、車両に与える振動の周期が大きくなるので、車両の運転者への注意喚起が弱まるという問題が生じる場合がある。
【0017】
また、標示材片の道路車両進行方向の大きさと、直線状の隙間22の大きさを同じにすれば、車両のタイヤが標示材片2に乗り上げるときと、標示材片2に乗り上げたタイヤが道路面1へ降りて接地するときの衝撃の周期が同じになるので、ドライバーに連続的な振動を感じさせることができる。また、交互に間隔を開けて配置された標示材片2は、その一部が連結していてもよいし、分離していてもよい。
【0018】
標示材片2にはほぼ全表面にわたって微少のガラスビーズ25が埋設されており、ガラスビーズ25が車両のヘッドライトなどから入射した光が再帰反射させるため、標示材片2の表面は光反射性を有している。
【0019】
図3は本発明に係る道路標識の施工の流れの一形態を示す断面図である。
(イ)は標示材片2の施工前の部材の状態を示している。標示材片2はガラスビーズ25を埋め込まれた基材23から構成され、この基材23が交互に間隔を開けた施工時の配置の状態で裏面側の離型紙4と表面側の施工用シート3に挟み込まれた状態となっている。基材23の裏面には接着剤層24が薄く形成され離型紙4に貼り付けられている。また、施工用シート3はシート材31の裏面に低粘着剤層32が設けられており、施工用シート3はこの低粘着剤層32の粘着力によって前記の標示材片2の基材23の表面に貼り付けられている。
【0020】
図3(ロ)(ハ)は標示材片2の施工時の状態を示している。最初に標示材片2の裏面に貼り付けられた離型紙4を剥がす。標示材片2が施工用シート3に貼り付けられた状態で道路面1に標示材片2の裏面を押しつけ接着剤層24によって仮貼着する。この後、施工用シート3を標示材片2の表面から剥がすことによって、標示材片2を道路面1に容易に配置することができる。このとき、施工用シート3の低粘着剤層32と基材23との粘着力を、道路面1と接着剤層24との接着力よりも小さくすることで、施工用シート3を容易に標示材片2の表面から剥がすことができる。この状態で、標示材片2の表面から火炎などによって加熱すれば、接着剤層24が分解または燃焼するとともに、基材23が溶融して道路面1に溶着され、図3(ニ)の如き状態となる。基材23の材質は、従来の道路標示において路面に溶着されるものであればよく、例えばロジン系樹脂や石油樹脂からなるホットメルト対応のものを用いることができる。また、接着剤層24に用いる接着剤の材質は、火炎による加熱で分解または燃焼するものであればよく、その分解性のよさからエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)を利用した接着剤を好適に用いることができる。
【0021】
また、標示材片2の道路面1への固定において、基材23自体を加熱溶着させるのではなく、接着剤層24の接着力で貼着固定させる場合、施行後の状態は図3(ハ)の如き状態となる。このような場合は、基材23の材料として、ロジン系樹脂や石油樹脂、またはエポキシ樹脂やポリエステル樹脂、アクリル系合成樹脂、ウレタン系合成樹脂など、各種合成樹脂を用いることができる。また、接着剤層24に使用される接着剤としては、ホットメルトタイプの接着剤を利用でき、アクリル系のものを好適に利用できるが、特にその種類は限定されるものではなく、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、エチレン酢ビ共重合体、オレフィン系の如きものを主成分とするものを使用できる。
【0022】
また、図3では、所定形状に形成した標示材片2を施工時の配置となるよう交互に間隔を開けた状態で離型紙4と施工用シート3に挟み込んだ部材を用いた施工方法を示しているが、施工方法はこれに限るものではない。例えば標示部21の施工予定の道路面1において、標示材片2の間の隙間となる部分にあらかじめテープなどでマスキングを施し、その上から道路標示用塗料によって塗装を行った後、マスキングを除去して標示材片2を形成するという方法を用いることもできる。この方法においては、ガラスビーズ25はあらかじめ道路標示用塗料に混入しておいてもよいし、塗装した塗装面が硬化する前にその上からガラスビーズ25を散布し付着させて固定させてもよい。また、この方法において用いる塗料は一般的に道路標示に用いるものなら特に限定せずに用いることができるが、施行後の標示材片2の耐久性や厚みなどの仕上がりが良いため加熱溶融式のものを好適に用いることができる。また、マスキングに用いる部材もテープ状のものやシート状、プレート状のものなどを用いることができるが、前記の加熱溶融式の道路標示用塗料を用いる場合は耐熱性のよい材質のものを選ぶ必要があり、金属製プレートを好適に用いることができる。
【0023】
本実施形態では標示材片2の形状を正方形としているが、これに限定されるものではなく、図4に示すように、円形や長方形などとしてもよく、これ以外の形状を選択または組み合わせても良い。
【0024】
また、本実施形態では標示材片2の色調を、マンセル値で明度が5である「2007年度D版 塗料用標準色色見本」(社団法人日本塗料工業会)のD52−50Lに近似したものとしている。通常、人間の目には背景色に対して、0.5以上の明度差がある色調の色を視認可能であり、2.0以上の明度差がある色調を明確に視認する傾向がある。一般的なアスファルトコンクリートを用いた舗装を施した道路面の色調はマンセル値で明度が4.5程度であるので、標示材片2の色調を5.0以上6.5未満とすることで、標示材片2を視認可能だが目立ち過ぎない程度の色調とすることができる。これよりアスファルトコンクリートを用いた舗装面へ標示する標示材片2の色調は、観光地や景観が保護されることが望ましい地区ではマンセル値で明度が5.0以上、6.5未満程度の任意の色を選択することが好ましく、また道路標示が目立つ方が望ましい場合などは、明度が6.5以上の任意の色を選択することが好ましいといえるが、標示材片2の色調はこれに限るものではなく、施工の状況と目的に応じて各種の色調を選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る道路標識の実施の一形態を示す平面図である。
【図2】図1の拡大図である。
【図3】本発明に係る道路標識の施工の流れを示す断面図である。
【図4】本発明に係る標示材片の形状と配置の実施の一形態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 道路面
2 標示材片
21 標示部
22 直線状の隙間
23 基材
24 感熱型接着剤層
25 ガラスビーズ
26 粘着剤
3 施工用シート
31 シート材
32 低粘着剤層
4 離型紙


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定形状の標示材片が、道路の車両進行方向および該車両進行方向と交差する幅方向に交互に間隔を開けて多数配置されると共に、車両進行方向の前後に隣り合う標示材片の間の隙間が前記幅方向に並ぶように前記標示材片が配置されることによって、前記標示部の幅方向に沿って直線状の隙間が形成されてなる標示部が形成されることを特徴とする道路標示。
【請求項2】
前記標示部が車両進行方向に複数設けられ、各標示部の間隔が前記標示部の各標示材片の前後の間隔より大きくなされていることを特徴とする請求項1に記載の道路標示
【請求項3】
前記標示材片の色調の明度が、マンセル値で5.0以上、6.5未満の範囲にあることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の道路標示。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−270316(P2009−270316A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120874(P2008−120874)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】