説明

遠隔アクチュエータを有する車両本体パネルラッチ

開閉可能な本体パネル(10)と、パネルを閉位置に保持するための旋回可能な解除レバーを備えるラッチを有する車両は、ラッチを遠隔的に解除するためのアクチュエータを備えている。アクチュエータは、ラッチの解除レバーに一端において連結されたロッド(12)を備えている。ロッド(12)の他端は、要素(30)に連結されており、該要素(30)は、本体パネルの孔内に装着された管状ソケット(14)内に摺動可能に受け入れられている。要素(30)は、本体パネルの外面を超えて突出しないように、ソケット(14)内の奥まった所に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉可能な本体パネルと、パネルを閉位置に保持するための旋回可能な解除レバーを有するラッチと、ラッチを遠隔的に解除するためのアクチュエータとを有する車両に関する。本発明は、トラクターのフードのラッチに対する特定用途を有するものである。
【背景技術】
【0002】
トラクターの(ボンネットとも呼ばれる)フードは、トラクターのシャーシ上のストライカーピンと相互作用する回転キャッチプレートを備えるラッチによって、閉鎖して保持されるようになっている。ラッチは、解除レバーを有している。この解除レバーは、フードを開け、キャッチプレートをストライカーピンから解除するために、旋回される必要がある。ラッチは、通常、解除レバーが車両オペレータによって直接アクセスされることができる位置に取り付けられておらず、フードを開けるためには、遠隔アクチュエータが必要である。
【0003】
これまでのところ、剛性ロッドが、ラッチの解除レバーに旋回可能に接続され、フードの孔を貫通するようになっている。ロッドの端には、ゴムボタンが装着されている。ゴムボタンは、押し下げられると、ロッドを移動させ、解除レバーを開位置に旋回させるようになっている。これによって、多くの最新式トラクターに設置される安価な遠隔ラッチアクチュエータがもたらされることになる。
【0004】
しかし、この簡単な設計の遠隔アクチュエータは、いくつかの欠点を抱かえている。フードから突出しているボタンは、オペレータと突き当たることがあると共に、トラクターの駆動時にフードを叩く枝と突き当たることがある。このような衝撃は、ボタン周辺のフード部分を変形させ、その結果、ロッドの位置ずれが生じることがある。ゴムボタンがフードから離れると、鋭利な金属縁が露出し、オペレータを傷つける可能性があり、またラッチを解除するのが困難になることがある。また、突出しているゴムボタンは、フードラッチが偶発的にまたは未熟者または子供によって解除されるおそれをもたらし、その結果、安全性の問題が生じる可能性がある。さらに他の問題は、ロッドおよび該ロッドが貫通する孔が製造公差のために正確に一直線に並んでいないことがあり、これによって、ラッチを解除することが困難になる可能性があることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述の問題の少なくともいくつかを軽減する遠隔ラッチ解除装置を有する車両本体パネルを提供することを意図している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、開閉可能な本体パネルと、パネルを閉位置に保持するための旋回可能な解除レバーを有するラッチと、ラッチを遠隔的に解除するためのアクチュエータであって、ラッチの解除レバーに第1の端において連結された力伝達部材を備える、アクチュエータと、を有する車両において、力伝達部材の他端は、要素に連結されており、該要素は、本体パネルの孔内に装着されたソケットの内孔内に摺動可能に受け入れられており、内孔は、両端が開いており、要素は、本体パネルの外面を超えて突出しないように、ソケット内の奥まった所に配置されていることを特徴とする、車両が提供されている。
【0007】
力伝達部材は、好ましくは、剛性ロッドであり、以下、簡単にロッドと呼ぶ。しかし、剛性ロッドの使用を妨げる妨害物が存在する場合、力伝達部材は、ボーデンケーブルの形態にあってもよい。
【0008】
本発明によれば、ラッチを解除するために、ロッドの端に接続された摺動可能な要素は、ロッドの端に装着された従来技術における突出ボタンと同じように、押し込まれる必要がある。しかし、本発明では、摺動可能な要素は、管状ソケット内の奥まった所に配置されており、偶発的に叩かれることがない。
【0009】
管状ソケットの内孔の少なくとも一部は、人の指が入らないほど狭くなっており、例えば、約1cm幅未満になっており、摺動可能な要素を押すためには、ソケットの孔内への適切なキーまたは薄い器具の挿入を必要とするようになっていると好ましい。これによって、パネルが権限のない者または未熟者によって開けられる可能性が低減されることになる。
【0010】
本明細書に用いられる「孔」という用語は、管状ソケットを通る内側通路を指しているが、この通路は、円断面を有している必要がないことに留意されたい。実際、孔は、ソケットの把持を可能にすると共に本体パネルの取付け中に回転を妨げる6角形の断面を有していると好ましい。
【0011】
好ましくは、摺動可能な要素は、ロッドがソケットの長軸に対して自在に旋回することができるように、構成されている。これによって、ロッドは、仮に該ロッドが本体パネルの変形または製造公差によってソケットの軸から位置ずれしていても、自在に移動することが可能になる。
【0012】
好都合なことに、ロッドのこのような旋回運動は、摺動可能な要素をロッドの端に剛性的に固定されたボールとして形成することによって、達成されることになる。しかし、代替的に、摺動可能な要素を球継手によってロッドの端に接続された円筒体とすることも可能である。
【0013】
ソケットは、有利には、フランジ状外端を有する雄ネジ付き管として形成されており、雌ネジ付きナットによって前記本体パネルに固定されており、本体パネルは、ナットとソケットのフランジ状端との間に挟まれているとよい。
【0014】
もし本体パネルがソケットが装着される領域において平坦でない場合、本体パネルの一方の側とソケットのフランジ状端との間および本体パネルの他方の側とナットとの間に、それぞれの形状適合シールワッシャーを設けることが可能である。
【0015】
本体パネルへのソケットの装着を助長するために、ソケットが装着される孔は、非円形であるとよく、ソケットおよびナットの一方は、パネルに対して回転しないように孔内に受け入れられる領域を有しているとよく、ソケットおよびナットの他方は、本体パネルをナットとソケットのフランジ状端との間にクランプするために、回転可能になっているとよい。
【0016】
摺動可能な要素の自由な運動を妨げる可能性がある埃がソケットの内孔に入るのを阻止するために、盲栓を設けることができる。盲栓は、必要に応じて、ヒンジによってソケットのフランジ状端に接続されていてもよい。
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明を例を挙げてさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を実施する遠隔アクチュエータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付の図面は、トラクターのフード10の一部を示している。突出している回転解除レバーを有する従来のラッチ(図示せず)が、フードの内部に取り付けられている。フードを開けるには、解除レバーが、フードの外側の点から遠隔的に旋回されねばならない。図面は、遠隔アクチュエータのみを示している。
【0020】
ロッド12が、図示されていない端において、ラッチの解除レバーに接続されている。ラッチを解除するには、ロッド12が、図示されているように、右側に移動されねばならない。先行技術では、ロッドは、フードの孔を通って外部に突出し、突出部にゴムボタンが装着されている。しかし、先に述べた理由から、このように突出しているゴムボタンは、多くの欠点を有しており、これらの欠点は、本発明の図示されている実施形態によって解消されることになる。
【0021】
管状ソケット14が、フード10に形成された孔内に取り付けられている。フードの孔を非円形にすることは、好ましいが、不可欠でない。ソケット14は、図示されているように、その左側に、フードの孔を貫通することができないフランジ状端16を有しており、ソケット14の残りは、孔内に挿入可能になっている。ソケット14は、そのフランジ状端16に隣接して、フードの孔と同じ断面を有する領域18を有している。もし孔が非円形の場合、この領域18がフードの孔内に係合したとき、ソケット14は、回転することができない。ソケット14の部分領域20には、雌ネジ付きナット22と係合する雄ネジが切られている。ソケット14をフードの孔を貫通させ、ナット12と螺合させることによって、ソケット14は、フード10にしっかりとクランプされることになる。
【0022】
ソケット14およびナット20が平坦なクランプ面を有しているので、フードが輪郭付けされることを可能とするために、形状適合ワッシャー23,25が、フードの両側に配置されている。ナット22は、適切なスパナと係合可能な孔24のような構成部を有しており、これによって、ソケット14に締め付けられ、形状適合ワッシャー23,25を押圧し、ソケット14をフード10に対してしっかりと保持することが可能となる。
【0023】
管状ソケット14の内孔28は、ロッド12の端に取り付けられたボール30を受け入れるようになっている。孔28の外端は、人の指が侵入できない狭窄ネック32を有している。ラッチを開錠するためにボール30およびロッド12を右側に押すには、指に代わって、キー34または他の細い器具が用いられねばならない。
【0024】
ボール30の球特性によって、孔28の軸に対するロッド12の位置ずれが遠隔アクチュエータを膠着させることがない。もし他の形態の摺動要素、例えば、円筒体が用いられた場合、この摺動可能な要素とロッド12との間の球継手を設けることによって、同じ利点を得ることができる。
【0025】
孔28が詰まるのを避けるために、孔28の外端を盲栓(図示せず)によって閉鎖することもできる。盲栓の偶発的な脱落を避けるために、盲栓は、ヒンジによって、ソケットのフランジ状端16にまたはフランジ状端16と形状適合ワッシャー23との間に介在させた追加的なワッシャーに、接続されていてもよい。
【0026】
添付の請求項に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、記載され、かつ図示されている本発明の好ましい実施形態に対して多くの修正がなされてもよいことは、当業者には明らかであろう。例えば、ソケットをフードに取り付けるために、ネジおよびナット構成が記載されているが、ソケットが片側からフードの孔内に押し込まれるようになっており、該ソケットに、孔の縁の背後に係合して孔内に保持される棘部が形成されていてもよい。このよう構成では、フードを孔の周囲に輪郭付けするのに、単一のワッシャーでも十分である。さらにロッドの端を受け入れる孔を有するソケットは、フードの外側ではなく、内側に取り付けられていてもよく、これによって、ソケットとナットとを効果的に取り換えることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な本体パネル(10)と、前記パネルを閉位置に保持するための旋回可能な解除レバーを有するラッチと、前記ラッチを遠隔的に解除するためのアクチュエータであって、前記ラッチの前記解除レバーに第1の端において連結された力伝達部材(12)を備える、アクチュエータとを有する車両において、前記力伝達部材(12)の他端は、要素(30)に連結されており、該要素(30)は、前記本体パネル(10)の孔内に装着されたソケット(14)の内孔内に摺動可能に受け入れられており、前記内孔は、両端が開いており、前記要素(30)は、前記本体パネル(10)の外面を超えて突出しないように、前記ソケット内の奥まった所に配置されていることを特徴とする、車両。
【請求項2】
前記力伝達部材は、剛性ロッド(12)であることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ソケットの前記内孔(28)の少なくとも一部は、人の指が前記力伝達部材(12)に接触することができないほど狭くなっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記摺動可能な要素(30)は、前記力伝達部材(12)が前記ソケット(14)の長軸に対して自在に旋回することを可能にするように構成されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の車両。
【請求項5】
前記摺動可能な要素は、前記力伝達部材(12)の端に剛性的に固定されたボール(30)の形態にあることを特徴とする、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記ソケット(14)は、フランジ状外端(16)を有する雄ネジ付き管として形成されており、雌ネジ付きナット(22)によって前記本体パネルに固定されており、前記本体パネル(10)は、前記ナット(22)と前記ソケット(14)の前記フランジ状端(16)との間に挟まれていることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の車両。
【請求項7】
2つの形状適合シールワッシャー(23,25)が設けられており、前記ワッシャーの1つ(23)は、前記本体パネル(10)と前記ソケット(14)の前記フランジ状端(16)との間に配置されており、前記ワッシャーの他の1つ(25)は、前記本体パネル(10)と前記ナット(22)との間に配置されていることを特徴とする、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記ソケットが装着される前記本体パネルの前記孔は、非円形であり、前記ナット(22)が締付けられるときに前記ソケット(14)が回転しないように、前記ソケット(14)の領域(18)に係合するようになっていることを特徴とする、請求項6または7に記載の車両。
【請求項9】
埃が前記ソケットの前記内孔に入るのを防ぐために、盲栓が設けられていることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の車両。
【請求項10】
前記盲栓は、ヒンジによって、前記ソケットに、または前記ソケットと前記本体パネルとの間に挟まれたワッシャーに接続されていることを特徴とする、請求項9に記載の車両。

【図1】
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【公表番号】特表2013−515887(P2013−515887A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546414(P2012−546414)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/070343
【国際公開番号】WO2011/080156
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(505271781)シーエヌエイチ・イタリア・ソシエタ・ペル・アチオニ (4)
【Fターム(参考)】