説明

遠隔地機器操作システム、その子局、および遠隔地機器操作方法

【課題】山間地などの遠隔地に設けられた機器を、既設の設備を活用することにより、緊急時においても迅速かつ確実に操作することができる遠隔地機器操作システムを提供する。
【解決手段】操作対象機器11を中央設備12に設けられた処理装置13を介して中央設備12外から操作する遠隔地機器操作システムであって、中央設備12に設けられた親局15と、子局17に設けられた収集装置18と、通信回線MLとからなるテレメータを活用し、子局17に設けた携帯電話とのインタフェース装置21により、携帯電話端末22から発信された操作対象機器11に対する操作信号を受信し、これを、テレメータにより送信する信号に変換して中央設備12に送信し、処理装置13を介して遠隔操作できるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作対象機器を中央設備に設けられた処理装置を介して中央設備外から操作する遠隔地機器操作システム、その子局、および遠隔地機器操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の影響と考えられる気候の変化が見られ、台風や地震、集中豪雨等により予想を上回る被害に見舞われている。こうした自然災害に対する様々な取り組みや設備の導入は進められてはいるものの、平野部が少なくかつ地震の多い日本では、土砂崩れによるライフラインの寸断や急激な出水による孤立・遭難などの被害が目立つようになった。中でも道路の寸断は人と物の移動を妨げてしまうため、緊急時の体制や迅速な一次対応がとれず、被害をさらに大きくしてしまったケースも少なくない。
【0003】
特に、災害時の被害が大きいとされる山間部にダムは位置しており、常時(24時間)有人管理を行っているダムは年々減少傾向にある。そのため、緊急時の体制をとる場合などは操作員がダムに到着して設備、装置に必要な操作を開始するまでに数時間要するケースは稀ではなく、道路が寸断されれば辿り着けないことになり、対応の遅れが下流域に住む住民の生命を危険にさらしてしまうリスクを有していることになる。
【0004】
一方、平野部のみならず山間部にも様々なデータを観測・計測するための遠隔監視設備が設置されており、それに関する特許提案もなされている(例えば、特許文献1参照)。これらの遠隔監視設備は、無人化で運用され防災に大きく寄与している。
【特許文献1】特開2007−47878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、山間地などでは、遠隔地の各種データを観測・計測する遠隔監視設備であるテレメータを用いて、中央設備から警報設備等を操作する遠隔地機器操作システムが設置されている。そこで、台風接近などで災害発生の恐れがあるような緊急時においては、テレメータを用いた遠隔地機器操作システムにより、通信手段が無い山間地などの遠隔地に設けられた機器を迅速かつ確実に操作できることが望まれている。
【0006】
しかし、テレメータは、低速の接点情報を伝送する等、専用の通信手段を用いていることや、既定の伝送内容に限定されていることから、緊急時に現地で点検中の操作員が、中央設備へ緊急に情報を追加、又は割り込み伝送し、警報設備等を操作したいにも拘わらず対応出来ない問題があった。
【0007】
本発明の目的は、山間地などの遠隔地に設けられた機器を、緊急時においても既設のテレメータを活用することにより、迅速かつ確実に操作することができる遠隔地機器操作システム、その子局、および遠隔地機器操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る遠隔地機器操作システムは、中央設備に設けられた親局と、中央設備外に設けられた子局と、通信回線とからなり、前記子局の情報収集手段が収集する前記中央設備が必要とする情報を前記通信回線を介して前記親局に送信するテレメータを備え、前記親局から受信する前記情報により操作対象機器を前記中央設備に設けられた処理装置を介して中央設備外から操作する遠隔地機器操作システムであって、携帯電話端末と、前記情報収集手段に接続され、前記携帯電話端末と無線通信し、前記携帯電話端末から前記中央設備に向けて発信された前記操作対象機器に関する前記情報を受信し、受信した前記情報を前記テレメータにより送信する信号に変換して前記子局から親局を経て処理装置に送信させるインタフェース装置とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明では、前記携帯電話端末は、この携帯電話端末のキーボタンから入力された情報を前記インタフェース装置に送信する。
【0010】
また、本発明では、前記インタフェース装置は、予め特定された前記携帯電話端末との間で対向通信可能に構成され、受信した信号が、前記特定された携帯電話端末からの信号かを識別し、前記特定された携帯電話端末からの信号で有る場合、この信号をテレメータにより送信する信号に変換処理して前記情報収集手段へ出力し、前記親局へ送信させている。
【0011】
また、本発明では、前記インタフェース装置は、外部の前記携帯電話端末とプレストークモードで通信可能な内部携帯電話端末を有し、前記外部の携帯電話端末が予め登録された電話番号であればその外部の携帯電話端末を前記内部携帯電話端末に接続し、この外部の携帯電話端末から前記内部携帯電話端末へ送信された情報を、テレメータにより送信する信号に変換処理して前記情報収集手段へ出力し、前記親局へ送信させる構成でもよい。
【0012】
また、本発明では、前記インタフェース装置は、前記携帯電話端末から送信された前記情報を受信した場合、割り込み信号を前記情報収集手段へ送信し、前記情報収集手段は、前記割り込み信号を受信した場合、通常のテレメータ情報の送信を中断し、その受信した情報をテレメータが送信する信号に変換して前記親局へ送信する構成でもよい。
【0013】
また、本発明では、前記収集装置、又は前記親局は、前記携帯電話端末から送信された前記情報を監視し、所定の基準から外れた異常な観測値で有った場合、その観測値に基づき操作対象となる機器への操作信号に変換する構成にするとよい。
【0014】
また、本発明の子局は、中央設備に設けられた親局に対し、中央設備外に設けられ、情報収集手段を有し、この情報収集手段が収集する前記中央設備が必要とする情報を、通信回線を介して前記親局に送信するテレメータを構成する子局であって、前記情報収集手段に接続され、外部に設けられた携帯電話端末と無線通信し、前記携帯電話端末から前記中央設備に向けて発信された操作対象機器に関する情報を受信し、受信した前記情報を前記テレメータにより送信する信号に変換して前記親局に送信させるインタフェース装置を備え、前記親局に送信した前記情報により操作対象機器を前記中央設備に設けられた処理装置を介して中央設備外から操作する遠隔地機器操作システムを構成する。
【0015】
さらに、本発明の遠隔地機器操作方法は、中央設備に設けられた親局と、中央設備外に設けられた子局と、通信回線とからなるテレメータを用い、前記子局の情報収集手段が収集する前記中央設備が必要とする情報を、前記通信回線を介して前記親局に送信し、前記親局から受信する前記情報により、操作対象機器を前記中央設備に設けられた処理装置を介して中央設備外から操作する遠隔地機器操作方法であって、前記情報収集手段に接続されたインタフェース装置により、外部の携帯電話端末と無線通信し、前記携帯電話端末から前記中央設備に向けて発信された前記操作対象機器に関する前記情報を受信し、受信した前記情報を前記テレメータにより送信する信号に変換して前記子局から親局を経て処理装置に送信させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各種データの観測・計測のために設置されているテレメータ等の既設設備を活用することにより、緊急時において、山間地などの遠隔地に設けられた機器の操作にあたり、操作員が現地に到着する前の段階で、迅速かつ確実に操作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る遠隔地機器操作システムの一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1はこの実施の形態の全体構成を示している。操作対象機器(装置を含む)11a〜n(以下、必要が無い限り機器11と略す。)は、山間部などの遠隔地に設けられ、例えば、ダム施設におけるゲートや河口部の水門はじめそれらの警報設備、及びその補機類等である。中央設備12は、これら機器11を運用、管理するものであり、機器11に対する操作を含む監視制御を行うための処理装置13を有する。処理装置13は、通信回線CLを介して操作信号や警報信号を送信して機器11を操作、制御する。この処理装置13は、コンピュータにより構成されており、周辺機器14として表示・記録、操作データ等の入力を行う端末機器やプリンタ、通信機器などを有する。
【0019】
また、この中央設備12には、各種情報の観測・収集に用いられ、テレメータと呼ばれる遠隔監視システムの親局15が設けられ、処理装置13に接続されている。
【0020】
親局15との間でデータ授受を行う子局17A〜17N(以下、必要が無い限り子局17と略す。)は、中央設備12外の、例えば、前記ダム施設に関係する河川の流域などに広範囲にわたって機器11と連携した情報を伝送する為に複数個所設けられる。それぞれの子局17は、親局15へ送信する情報としてセンサ装置(図示せず。)等に依って計測、取得されたモニタ信号等の計測情報を収集する収集装置18を備える。収集装置18は、収集した計測情報をテレメータ形式の信号(テレメータ情報と呼ぶ。)にして通信回線MLを介して親局15へ送信する。
【0021】
すなわち、子局17は、その設置地点における各種の計測情報など、中央設備12が必要とする情報を通信回線MLにより送信する機能を少なくとも有する。また、子局17は、通信回線MLを介して、中央設備12から応答信号、警報信号等を受信し、その周辺に警報を発報したりする機能等を備える場合もある。
【0022】
通信回線MLは、無線回線、専用線、WAN等のネットワーク等が使用され、この通信回線を介して信号を送受信する通信手段は、親局15、収集装置18に含まれる。言い換えれば、ここでのテレメータとは、親局15と、収集装置18と、通信回線MLとを備える遠隔監視システムである。
【0023】
テレメータや警報信号等の情報伝送方法については、例えば、国土交通省の仕様、放流警報装置標準仕様書(国電通仕第27号)、テレメータ装置標準仕様書(国電通仕第21号)に従ったものが用いられる。
【0024】
テレメータ情報は、通信回線MLを介して収集装置18から中央設備12の親局15を経て処理装置13に送られ、処理装置13は、受信したテレメータ情報を判読する。そして所定のプログラムによりそのテレメータ情報、言い換えればモニタ信号に対応する機器(装置)11へ通信回線CLを介して警報信号や制御信号を送信して操作する。
【0025】
この実施の形態では、平野部や山間部、河川沿いなどに設置されるテレメータの設備を擁する子局17に、携帯電話端末22からの遠隔操作信号を受信・中継できる機能を設けている。すなわち、台風や地震,集中豪雨などの災害により、ダムや水門の迅速な操作が必要であっても現場への到着が困難で操作員が緊急時等に直接機器や施設の操作が行えない場合に携帯電話端末22から設備の操作信号を発信できるように構成した。
【0026】
通常、処理装置13は、テレメータ情報を元に所定のプログラムにより操作対象機器の動作手順や起動・停止等を制御・操作する。この実施の形態では、モニタ信号は、処理装置13に操作を促すものが含まれる。例えば、ダム施設の水位情報として、危険水位を超えるデータが入力されれば、中央設備12側で水位情報に対応するゲートを開くと判断し、機器11として対応するその子局17が設置されているダム施設のゲートを開く操作をする様な場合である。
【0027】
また、計測情報には、モニタ信号の他に、操作信号として扱われるものも含まれる場合もあり、予め、収集装置18が収集するデータ項目の1つとして設定されることもある。例えば、センサ装置で計測したモニタデータにより強制的にゲートを開くコマンド、即ち操作信号である。この場合、処理装置13は、受信する操作信号、コマンドを実行する制御信号を当該機器11へ向けて通信回線CLを介して送信する。
【0028】
本実施の形態の子局17には、それぞれインタフェース装置21が設けられており、このインタフェース装置21は、外部の携帯電話端末22から操作員によって入力され、発信された、操作対象機器11に対する情報、例えば、緊急に水門を閉鎖する操作信号を、アンテナ24を介して受信する。そして、受信した情報(操作信号)を、テレメータにより送信する信号(テレメータ信号形式)に変換して収集装置18に渡すインタフェース機能を有する。インタフェース装置21を介して情報、又は操作信号を受信した収集装置18は、テレメータ機能により親局15へ中継・転送し、中央設備12にて目的の制御を対応する機器11に実行する。
【0029】
携帯電話端末22から送信される信号は緊急時であることを考慮すると必要な情報のみにて構成されることが望ましいと同時に、高いセキュリティが要求されるため[セキュリティ番号1+制御番号+セキュリティ番号2]や[個人識別番号+定周期更新セキュリティID番号+制御番号]などの構成とする。
【0030】
子局17に設けたインタフェース装置21は、携帯電話で使用する周波数帯の信号を受信するアンテナ24とテレメータ収集装置18とのインタフェース機能を持っており、常時信号受信可能な状態にされている。収集装置18は、緊急の情報、操作信号が入力された場合は、通常行っている正/定時のデータ収集・送信動作とは別に、インタフェース装置21からの割り込み、追加等を示す制御信号を収集装置18へ送信して随時親局15向けに携帯電話端末22からの受信信号をテレメータ情報にして転送することができる構成とする。
【0031】
インタフェース装置21は、例えば、携帯電話端末22の送信するキャリヤを受信し、リンクが確立されると割り込み待機状態になる。そして、キーボタン等から入力された予め設定された緊急の情報、操作信号を受信すると、割り込み信号を収集装置18へ出力する。収集装置18は、割り込み信号が入力されると、受信した緊急の情報、操作信号をテレメータ情報(信号)に変換して、割り込みを通知する信号と共に親局15へ送信する。
【0032】
なお、インタフェース装置21は、割り込み信号を送信しないで携帯電話端末22から受信したデータを親局15へ送信するものでも良い。この場合、携帯電話端末22からデータを受信しない場合には、収集装置18は、インタフェース装置21からのデータを「無し」、としたモニタ信号をテレメータ情報として親局15送信する。もし、データを受信した場合は、そのデータに対応した所定の操作を処理装置13が実行する。
【0033】
本実施の形態では操作信号を扱うので、受信信号を確実に親局へ中継・転送する高い信頼性が求められる。このため、信号送信についてはサイクリック伝送などを用いるとよい。また、収集装置18は、親局15へ送信したデータに対応する応答信号を親局15から受信した場合、それが携帯電話端末22から受信したテレメータ情報に係わるものであれば、インタフェース装置21へ転送する。
【0034】
中央設備12では、親局15により、収集装置18から受信した伝送信号、即ちテレメータ情報から携帯電話端末22からの情報、操作信号を抽出し、処理装置13により操作対象機器11へ予め定められた手順、入出力条件で動作する様に制御信号を送信する。
【0035】
なお、携帯電話端末22から発信された信号を複数子局17の各収集装置18で受信し、それぞれが親局15へ中継・転送することがある。このため、操作対象機器11の遠隔操作の内容が複数定義されている場合は、親局15で抽出した制御信号が一致するか判定し、不一致の場合は親局15から発信者へ再発信要求をする。または親局15側にて受信順位に優先度を付けるなどの機能を設定する。また、親局15での受信履歴は装置本体もしくはプリンタなどに記録保存するものとする。
【0036】
操作対象機器11は、親局15からの操作信号に基づく処理装置13からの制御信号により動作する機能を有する。緊急時の遠隔操作は発信者側に複雑さ、煩雑さを課してはならないため、1回の発信信号により一次対応として必要な制御機能を組み込むことが望ましい。例えば、ダムの場合は、「制御信号 ⇒ サイレン鳴動 → 固定メッセージ放送 → ゲート動作」、また、防潮水門の場合は「制御信号 ⇒ サイレン鳴動 → 固定メッセージ放送 → 水門全閉動作」というような一連の動作が行われるように処理装置13を設定する。
【0037】
操作対象機器11は、処理装置13を介して、親局15に対して制御結果(制御の開始/終了)を返送する。返送された制御結果は、通信回線MLを介して更に子局17の収集装置18のインタフェース装置21に転送され、そこから携帯電話端末22向けに簡易的な信号を発信できる機能を設ける。即ち、応答信号を携帯電話端末22へ転送することにより、発信者に対して処理が行われたことを伝えることができる。
【0038】
これらの結果、施設の運用管理者がすぐに現場へ辿り着けないような状況下でも迅速な一次対応を行うことができ、また、一般住民の生命・生活・財産を守るという意味において施設自体の多目的化を図ることができ、地域への密着性や有意性を大いに高める結果となる。
【0039】
上記インタフェース装置21の具体的構成としては、その設置場所がダム施設に関係する河川の流域のような、携帯電話基地局の電波が到達しない山中等にあることから、携帯電話のダミー基地局として機能する設備を用いる。以下、図2で示すように、ダミー基地局21Aとして説明する。このダミー基地局21Aは、アンテナ24を有する送受信部25、端末識別部26、疑似応答部27、ダイヤルトーン(以下、DT)処理部28、及びテレメータインタフェース(以下、TMIF)部29を有する。
【0040】
そして、このダミー基地局21Aは、その収容範囲内に位置する携帯電話端末22Aを擬似的に収容する。また、このダミー基地局21Aは、本来通信が途絶した限定的な地域内での通信のため、携帯電話端末22Aと行う通信は、対向通信(2者間のみでの通信)に限定される。このため、ダミー基地局21Aは、一般の携帯電話基地局が行うような、端末がセル間を移動する場合のハンドオーバ処理(基地局の切り替え処理)、交換処理は不要である。すなわち、ダミー基地局21Aは、簡易な通信制御を行うだけで良い。
【0041】
送受信部25は、アンテナ24を介して携帯電話用端末22Aとの間で無線通信を行う。端末識別部26は、予め特定された携帯電話端末の電話番号等を登録記憶しており、送受信部25で受信した携帯電話端末22Aが、予め特定された、例えば、ダム施設の操作員等が使用するものかどうかを判別する。疑似応答部27は、携帯電話端末と一般的な携帯電話基地局との間で通常行われる端末の収容、無線接続・収容処理のみを模擬的に行うもので、電話網との接続は行わない。
【0042】
すなわち、この疑似応答部27は、携帯電話システムでの制御チャネルの制御動作を実施する。DT処理部28は、携帯電話端末22Aとダミー基地局21Aとが無線接続された(収容処理された)状態で、携帯電話端末22Aのキーボタンが押された場合、そのダイヤルトーン信号(DTMF:キーボタン信号)を判読する。TMIF部29は、そのダイヤルトーン信号の組合せから、あらかじめ定めた緊急情報に変換して生成した観測信号、すなわち、テレメータが送信する形式の信号を子局17の収集装置18に設けられたデータIO部31へ出力する。
【0043】
以下、図3のフローチャートを参照してダミー基地局21Aを中心とした動作を具体的に説明する。図3において、ダミー基地局21Aに設けた疑似応答部27は、BCCH(報知チャネル)により、通常の基地局からセル内に存在する端末へ報知すべき情報と同様の情報(模擬基地局信号)を、送受信部25からアンテナ24を介して送信する(ステップs1)。
【0044】
ダム施設の操作員等が所持している携帯電話端末22Aは、この情報を受信する(ステップs2)と、ダミー基地局21Aとの間の無線通信が可能になり、基地局とのリンクを確立する。言い換えればダミー基地局21Aへ収容可能になるため、所定の携帯電話接続処理に係わるプロトコルに従って接続要求信号を送信する。この接続要求信号のキャリヤを受信した端末識別部26は、登録された電話番号と一致した場合(ステップs3:Yes)、当該携帯電話端末22Aを仮収容する(ステップs4)。
【0045】
ダム施設の操作員は、ダムへ流入量が増え、緊急に放流が必要と判断した場合、この操作員が遠隔地に位置していても、携帯電話端末22Aから操作対象機器11を操作することができる。すなわち、携帯電話端末22Aにより、例えば、「110119」の様な予め設定しておいた所定の呼び出し電話番号を入力して発呼(アクセス処理)を行う。疑似応答部14は、このアクセスが有った場合(ステップs5:Yes)、疑似接続を行う(ステップs6)。そして、操作員からの緊急情報を待ち受ける。携帯電話端末22Aは、疑似接続に対応するダミー基地局21Aからのアンサートーンの状態を判読してキーボタンが入力可能になったことを知ることが出来る。
【0046】
この場合、もし必要で有れば、疑似応答部27は、図示しない音声ガイダンス信号生成手段により、キーボタン操作を促すか、更に、緊急情報の種類に対応してどのボタンを入力するかを指示するガイダンス音声を生成して携帯電話端末22Aへ返送しても良い。
【0047】
DT処理部28は、携帯電話端末22Aとダミー基地局とが無線接続(収容処理をしている)中に、携帯電話端末22Aのキーボタン操作によるダイヤルトーン信号(DTMF:キーボタン信号)を判読してTMIF部29へ出力(ステップs7)する。TMIF部29は、そのダイヤルトーン信号の組合せから、あらかじめ定めた緊急情報に変換して生成した観測信号を収集装置18に設けたデータIO部31へ出力する(ステップs8)。例えば、操作対象機器11であるダム施設のゲートを開ける指示する場合であれば、「*100」の様なキーボタン信号が操作員によって携帯電話端末22Aへ入力される。
【0048】
収集装置18は、データIO部31により入力した観測信号(操作信号)を、テレメータ情報として中央設備12の親局15へ送信する。親局15は、この観測信号を更に解読して処理装置13に渡す。この信号が、ダム施設のゲートを開ける指示するコマンドの様な操作信号であった場合、図示しないダムの制御システムへこの操作信号(観測信号)が転送され、ダム施設のゲートを開ける操作が行われる。
【0049】
また、コマンドでなく、計測情報、モニタ信号に相当するデータを操作信号として機能させることも可能である。例えば、ダム施設のゲートの危険水位が2mに対し、操作員が現地で観測した水位が通常のテレメータデータの収集タイミング(時間間隔)では検出できない速さで2.5mに急上昇している場合、緊急に2.5mの水位を、例えば、「d2.5m」の様なキーボタン操作により携帯電話端末22へ入力して中央設備12へ通知する場合も同様に緊急操作が可能である。
【0050】
携帯電話端末22からの水位データを受信したインタフェース装置21は、割り込み信号を収集装置18へ送信する。収集装置18は割り込み処理を行い、通常のテレメータ情報に代わり、入力された水位2.5mのデータをテレメータ情報として親局15へ送信する。処理装置13は、この割り込み送信されたテレメータ情報を親局15から受信し、ゲートを開くことが必要と判断すると直ちにダム施設のゲート開放の操作を行う。
【0051】
更に、モニタ信号のデータを操作信号に変換する機能を備えるテレメータを構成しても良い。テレメータの収集装置18又は親局15には、計測情報であるモニタ信号の異常値を判定してアラーム信号を生成して出力するアラーム出力手段を備えるものがある。本実施の形態のテレメータでは、インタフェース装置21からの割り込み信号を受信した場合、アラーム出力手段は、アラーム信号を発生する代わりに当該モニタ信号を予め設定した操作信号に変換して出力する操作信号送出機能(図示せず)を備えるものとする。
【0052】
即ち、上記の水位を通知する場合、収集装置18は、インタフェース装置21から「d2.5m」を受信した場合、割り込み処理を行うと共に、「d2.5m」から危険値2m以上の水位で有ることを判読し、アラーム信号を出力する代わりに操作信号「*100」を生成して親局15へ送出する。更に親局15を介して操作信号「*100」を受信した処理装置13は、ゲートを開放する制御信号を出力する。
【0053】
また、上記のアラーム出力手段は、詳細説明は省略するが親局15に設けられても良く、同様にゲートを開く操作が行われる。
【0054】
以上の様なゲートを開く操作が終了した時点で、中央設備12の処理装置13から操作信号に対する応答信号が収集装置18へテレメータ(親局15と通信回線ML)を介して返送され、更にインタフェース装置21を介して携帯電話端末22Aへ伝えられる。インタフェース装置21は、処理装置13からの応答信号から、例えば、所定の断続音のトーン信号を生成して電話端末22Aへ送信する。
【0055】
操作員が、携帯電話端末22Aを操作して電話接続を切断(オフフック)して現場を立ち去ると、ダミー基地局21Aの送受信部25ではキャリヤが継続して受信できなくなり(ステップs9:No)、疑似応答部27は、受信断と判定して仮収容を解除する(ステップs10)。
【0056】
このように、ダミー基地局21Aとして機能するインタフェース装置21は、予め特定された携帯電話端末22Aとの間で対向通信可能に構成されており、送受信部25により受信した信号が、端末識別部26により特定された携帯電話端末22Aからの緊急情報として設定された操作信号と識別されると、この操作信号をDT処理部28により判読し、インタフェース(TMIF)部29により、テレメータによって送信可能な信号に変換処理し、収集装置18に出力する。そして、収集装置18から親局15に送信され、処理装置13を経て機器11を操作する。すなわち、ダミー基地局21Aがダイヤルトーン信号の緊急信号を受信して、テレメータの送信信号に変換生成するので、構成が容易、小型になる効果がある。
【0057】
なお、上記実施の形態の変形例として、疑似接続が終了すると、疑似応答部27がパケット送受信処理を行い、そして、DT処理部28は、予め携帯電話端末22Aの画面にWeb表示をし、操作員がキーボタンを押すことによってWeb画面に入力された緊急情報を解読するようにしてもよい。この変形例の場合、DT処理部28に代わってWeb処理部を設ければよい。また、図3のステップs7,s8における「DT信号」を「Web信号」と読み替えればよい。
【0058】
次に、図4で示す実施の形態を説明する。この実施の形態では、子局17に設けられるインタフェース装置21として、外部携帯電話端末22Bとプレストークモードで通信可能な内部携帯電話端末41を有するプレストーク部21Bを用いている。このプレストーク部21Bは、外部携帯電話端末22Bからの電波を、アダプタ42を介して受信する。アダプタ42は、受信した電波に含まれる端末の識別情報である電話番号が、予め登録された電話番号であればその外部携帯電話端末22Bを内部携帯電話端末41に接続する。DT−TM変換部43は、プレストーク時、外部携帯電話端末22Bから内部携帯電話端末41に送信されるトーン信号(外部携帯電話端末22Bのキーボタンから入力される)を所定の緊急信号や操作信号を、テレメータが送信する信号に変換する変換インタフェースである。
【0059】
プレストーク部21Bは、外部携帯電話端末22Bから内部携帯電話端末41にプレストーク送信された情報、データの信号を、DT−TM変換部43によって、テレメータで送信する形式の信号に変換処理して、収集装置18に設けられたデータIO部31へ出力する。
【0060】
ここで、外部携帯電話端末22Bと内部携帯電話端末41とは、対向するプレストーク通話を行う端末である。また、アダプタ42は、携帯電話端末22B,41間を中継接続するもので、従来PHS電話システムで用いられているものと同様なものである。
【0061】
図5は、図4で示したプレストーク部21Bの処理手順を説明するフローチャートである。図5において、アダプタ42は、模擬的な基地局信号を送信している(ステップs11)。ダム施設の操作員などが、外部携帯電話端末22Bを操作して、プレストークモードになるコマンドを入力すると、アダプタ42との間で、プレストークモードになるネゴシエーションが実施され、プレストーク信号がアダプタ42へ送信される。アダプタ42は、プレストーク信号を受信する(ステップs12)と、予め登録された電話番号であった場合(ステップs13:Yes)、外部携帯電話端末22Bと内部携帯電話端末41とをリンク接続し(ステップs14)、プレストーク通信が設定される。
【0062】
内部携帯電話端末41は、リンク接続後は、外部携帯電話端末22Bから入力されるプレストーク送信される信号を受信し、図3で示した実施の形態と同様の処理(s7〜s9)を実行する。すなわち、DT−TM変換部43により外部携帯電話端末22Bから入力される緊急情報を所定の観測情報(信号)に変換して収集装置18へ出力する。また、アダプタ42は、外部携帯電話端末22Bからのキャリヤが受信できなくなると(ステップs9がNo)両携帯電話端末の間のリンクを解除する(ステップs15)。
【0063】
なお、プレストーク信号を受信後、DT−TM変換部43は、必要に応じて、プレストーク信号を内部携帯電話端末41へ送信して、所定の確認メッセージを外部携帯電話端末22Bへ送信するように構成してもよい。この、確認メッセージは、受信したダイヤルトーン信号を解読した結果を合成音声信号にして、例えば「入力数字は、イチ、サン、ロクですね。」の様に復唱すると、操作員の操作確認が実施できる効果がある。
【0064】
このように、上述の各実施の形態では、ダム施設、水門等の運用管理や河川監視に必要となる“データの収集”や“注意喚起”を主目的としたテレメータ設備を利用して、携帯電話により遠隔地にある機器・装置などの制御(操作)を行うための信号中継機能を備えることで、災害などの緊急時に不測の事態で必要な体制がとれない場合でも、ダムからの放流や水門の開/閉など施設の遠隔制御(操作)を行うことができ、一般住民の生活・生命・財産を守るための迅速な一次対応を行うことが可能となる。また機能の融合によってテレメータ設備を含む施設全体の有意性を高め、かつコスト縮減にも寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る遠隔地操作システムの基本概念を説明する図である。
【図2】本発明の遠隔地操作システムの一実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図3】同上一実施の形態を説明するフローチャートである。
【図4】本発明の遠隔地操作システムの他の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【図5】同上他の実施の形態を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
11 (操作対象)機器
12 中央設備
13 処理装置
15 親局
17 子局
18 収集装置
21 インタフェース装置
21A ダミー基地局
21B プレストーク部
22,22A,22B, 携帯電話端末
ML、CL 通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央設備に設けられた親局と、中央設備外に設けられた子局と、通信回線とからなり、前記子局の情報収集手段が収集する前記中央設備が必要とする情報を前記通信回線を介して前記親局に送信するテレメータを備え、前記親局から受信する前記情報により操作対象機器を前記中央設備に設けられた処理装置を介して中央設備外から操作する遠隔地機器操作システムであって、
携帯電話端末と、
前記情報収集手段に接続され、前記携帯電話端末と無線通信し、前記携帯電話端末から前記中央設備に向けて発信された前記操作対象機器に関する前記情報を受信し、受信した前記情報を前記テレメータにより送信する信号に変換して前記子局から親局を経て処理装置に送信させるインタフェース装置と
を備えたことを特徴とする遠隔地機器操作システム。
【請求項2】
前記携帯電話端末は、この携帯電話端末のキーボタンから入力された情報を前記インタフェース装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の遠隔地機器操作システム。
【請求項3】
前記インタフェース装置は、予め特定された前記携帯電話端末との間で対向通信可能に構成され、受信した信号が、前記特定された携帯電話端末からの信号かを識別し、前記特定された携帯電話端末からの信号で有る場合、この信号をテレメータにより送信する信号に変換処理して前記情報収集手段へ出力し、前記親局へ送信させることを特徴とする請求項1に記載の遠隔地機器操作システム。
【請求項4】
前記インタフェース装置は、外部の前記携帯電話端末とプレストークモードで通信可能な内部携帯電話端末を有し、前記外部の携帯電話端末が予め登録された電話番号であればその外部の携帯電話端末を前記内部携帯電話端末に接続し、この外部の携帯電話端末から前記内部携帯電話端末へ送信された情報を、テレメータにより送信する信号に変換処理して前記情報収集手段へ出力し、前記親局へ送信させることを特徴とする請求項1に記載の遠隔地機器操作システム。
【請求項5】
前記インタフェース装置は、前記携帯電話端末から送信された前記情報を受信した場合、割り込み信号を前記情報収集手段へ送信し、前記情報収集手段は、前記割り込み信号を受信した場合、通常のテレメータ情報の送信を中断し、その受信した情報をテレメータが送信する信号に変換して前記親局へ送信することを特徴とする請求項1に記載の遠隔地機器操作システム。
【請求項6】
前記収集装置、又は前記親局は、前記携帯電話端末から送信された前記情報を監視し、所定の基準から外れた異常な観測値で有った場合、その観測値に基づき操作対象となる機器への操作信号に変換することを特徴とする請求項5記載の遠隔地機器操作システム。
【請求項7】
中央設備に設けられた親局に対し、中央設備外に設けられ、情報収集手段を有し、この情報収集手段が収集する前記中央設備が必要とする情報を、通信回線を介して前記親局に送信するテレメータを構成する子局であって、
前記情報収集手段に接続され、外部に設けられた携帯電話端末と無線通信し、前記携帯電話端末から前記中央設備に向けて発信された操作対象機器に関する情報を受信し、受信した前記情報を前記テレメータにより送信する信号に変換して前記親局に送信させるインタフェース装置を備え、
前記親局に送信した前記情報により操作対象機器を前記中央設備に設けられた処理装置を介して中央設備外から操作する遠隔地機器操作システムを構成する子局。
【請求項8】
前記インタフェース装置は、予め特定された前記携帯電話端末との間で対向通信可能に構成され、受信した信号が、前記特定された携帯電話端末からの信号かを識別し、前記特定された携帯電話端末からの信号で有る場合、この信号をテレメータにより送信する信号に変換処理して前記情報収集手段へ出力し、前記親局へ送信させることを特徴とする請求項7に記載の子局。
【請求項9】
前記インタフェース装置は、外部の前記携帯電話端末とプレストークモードで通信可能な内部携帯電話端末を有し、前記外部の携帯電話端末が予め登録された電話番号であればその外部の携帯電話端末を前記内部携帯電話端末に接続し、この外部の携帯電話端末から前記内部携帯電話端末へ送信された情報を、テレメータにより送信する信号に変換処理して前記情報収集手段へ出力し、前記親局へ送信させることを特徴とする請求項7に記載の子局。
【請求項10】
前記インタフェース装置は、前記携帯電話端末から送信された前記情報を受信した場合、割り込み信号を前記情報収集手段へ送信し、前記情報収集手段は、前記割り込み信号を受信した場合、通常のテレメータ情報の送信を中断し、その受信した情報をテレメータが送信する信号に変換して前記親局へ送信することを特徴とする請求項7に記載の子局。
【請求項11】
前記収集装置は、前記携帯電話端末から送信された前記情報を監視し、所定の基準から外れた異常な観測値で有った場合、その観測値に基づき操作対象となる機器への操作信号に変換することを特徴とする請求項7に記載の子局。
【請求項12】
中央設備に設けられた親局と、中央設備外に設けられた子局と、通信回線とからなるテレメータを用い、前記子局の情報収集手段が収集する前記中央設備が必要とする情報を、前記通信回線を介して前記親局に送信し、前記親局から受信する前記情報により、操作対象機器を前記中央設備に設けられた処理装置を介して中央設備外から操作する遠隔地機器操作方法であって、
前記情報収集手段に接続されたインタフェース装置により、外部の携帯電話端末と無線通信し、前記携帯電話端末から前記中央設備に向けて発信された前記操作対象機器に関する前記情報を受信し、受信した前記情報を前記テレメータにより送信する信号に変換して前記子局から親局を経て処理装置に送信させる
ことを特徴とする遠隔地機器操作方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−57044(P2010−57044A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221566(P2008−221566)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】