説明

遠隔映像監視システム

【課題】従来は、検出した不審物体等の強調表示をカメラ映像に透過表示させた際に視認性が十分でなく、1つの表示画面に複数の映像をタイル状に並べて表示した際にカメラの実際の(地理的な)位置関係が分かり難く、さらに、使用するカメラに距離画像撮影可能なカメラを用いた場合にはそれらの映像或いは不審物体を検出する際に設定する検知領域を効果的に表示できないという問題があった。
【解決手段】距離に応じて右眼用画像と左眼用画像の水平差距離を調整し、右眼用画像を表示するときは液晶シャッター眼鏡の左眼を閉じ、左眼用画像を表示するときは液晶シャッター眼鏡の右眼を閉じるように液晶シャッター眼鏡に赤外線信号を照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCCTV(Closed Circuit Tel-Vision)システムに関わり、特に、パソコン(PC:Personal Computer)等のコンピュータを使用した監視端末の操作画面を3D(3次元)化するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCTVシステム運用者は、パソコン等のコンピュータを使用したCCTV操作画面では、遠隔に設置されたカメラからの映像、及びカメラの向き等を制御するためのGUI(Graphical User Interface)を、2次元(2D)的に表示し使用していた。
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、モニタカメラの使用が不可能な状況、即ち、視覚の得られない現場においても、3次元立体処理されたコンピュータグラィックス画像を視覚によりリアルタイムに確認しながら、土木作業や建設作業を行うことが記載されている。
また例えば、特許文献2や特許文献3には、本発明に関連する他の技術として、カメラで撮像した監視対象の映像モニタ表示に、3次元リアルタイムシミュレーションによる監視対象のグラフィック表示を併用し、前記監視対象のグラフィック表示による画像と、前記監視対象の映像モニタ表示による画像が同一の態様で表示されるように構成したことを特徴とするモニタ画像処理方法が記載されている。
また、特許文献4には、操作部2のMPU23は、記憶手段25の3次元表示処理部25aaの手順にしたがって表示手段21にカメラ1の方位を3次元で表わすカメラ画像を表示する遠隔操作カメラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3809542号公報
【特許文献2】特開2003−271993号公報
【特許文献3】特開平9−9110号公報
【特許文献4】特開2003−158662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の3D液晶テレビ等の3D化普及を受けて、将来的にCCTV操作画面を立体視化する要望が見込まれている。しかしながら、遠隔映像監視システムの基本性能としては、映像の解像度や同時表示数が重要であり、それらを犠牲にして、全ての映像を3D撮影可能な監視カメラで撮影して立体視を提供することは、あまり現実的ではない。一方で、従来の遠隔映像監視システムは、それらを操作、閲覧、或いは初期設定する上で、取り扱いが難しい部分が多々あり、改良が望まれていた。例えば、その1つとして、カメラ制御GUI、各種アラーム、或いは画像処理で検出した不審物体等の強調表示を、カメラ映像に透過表示させた際に、それらが元のカメラ映像に溶け込んでしまい、視認性が十分でないという問題があった。また、1つの表示画面に複数のカメラからの映像をタイル状に並べて表示した際に、カメラの実際の(地理的な)位置関係が分かり難いといった問題があった。またさらに、使用するカメラの一部に距離画像撮影可能なカメラを用いた場合、それらの映像或いは不審物体を検出する際に設定する検知領域を効果的に(立体視可能に)表示することができないという問題があった。
本発明は、3D表示装置に、右目用画像と左目用画像を表示し、両眼視差或いは輻輳を利用してCCTV操作画面の立体視(3D)を可能とし、操作性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明の遠隔映像監視システムは、監視視野内を撮像する複数のカメラと、前記複数のカメラが撮像した画像を符号化してネットワークに出力するエンコーダと、前記エンコーダの出力画像を前記ネットワークを介して受信し、受信した前記画像を表示するモニタを有する操作端末とを備えた遠隔映像監視システムであって、前記操作端末は、前記モニタに前記受信した前記画像を3次元表示するソフトウェア手段と、液晶シャッター眼鏡に赤外線信号を送信する赤外線通信端末を有し、前記ソフトウェア手段は、右眼用画像を表示するときは液晶シャッター眼鏡の左眼を閉じ、左眼用画像を表示するときは液晶シャッター眼鏡の右眼を閉じるように液晶シャッター眼鏡に赤外線信号を送信するものである。
また、上記発明の遠隔映像監視システムにおいて、前記ソフトウェア手段は、距離に応じて右眼用画像と左眼用画像の水平差距離を調整して前記モニタに画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、CCTV操作画面を3D化し立体的に見ることができ、運用者等にCCTV操作画面の奥行感/臨場感を提供できる。またCCTVシステム等における人が立ち入ることのできない災害現場や事故現場等の監視では、CCTV操作画面に表示される画像に、奥行が表現できるので、災害現場や事故現場等での距離感も提供することでき、運用者等はより迅速な対応或いは処置の指示等を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の遠隔映像監視システムの一実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】液晶シャッター方式の立体視の原理を説明するための図である。
【図3】本発明の遠隔映像監視システムの一実施例の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明における操作端末40の操作画面の一実施例を示す図である。
【図5】本発明における操作端末40の画像処理部43の一実施例の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明では、立体視(3D)の方式としてはさまざまものがあるが、液晶シャッター方式の場合で説明する。
CCTV操作画面用のディスプレイに「右目用画像」「左目用画像」を交互に映し、右目用画像のときは、運用者の3D眼鏡の左目を液晶シャッターで閉じることで、右目だけに右目用の画像を表示させ、左目用画像のときは、左目だけに左目用の画像を表示させる。
CCTV操作画面ソフトウェアでは、右目用画像と左目用画像を作り、右目用画像と左目用画像を左右にずらして表示させる。右目用画像と左目用画像の差が大きいほど、立体的(近く)に見えるため、この差の値は調整可能とする。
また、3D眼鏡の液晶シャッターと右目用画像/左目用画像の表示は同期させる必要がある。液晶ディスプレイ側には赤外線等の発信器を使用し、3D眼鏡にて同期信号を受信し、同期させる。
以上のことより、CCTV操作画面にて表示される右目用画像/左目用画像を液晶シャッター眼鏡を掛けて見ることにより、立体視(3D)化が可能となる。
【実施例1】
【0009】
以下、本発明の一実施例を図1と図2によって説明する。図1は、本発明の実施例1に係る遠隔映像監視システムの構成を示すブロック図である。1はCCTVカメラ、2はエンコーダ、3はIPネットワーク、4はCCTV操作画面を備える操作端末、5は赤外線等発信器、6は赤外線等の同期信号、7は液晶シャッター眼鏡である。CCTVカメラ1及びエンコーダ2は、夫々複数備えられることもある。本発明の遠隔映像監視システムは、CCTVカメラ1、エンコーダ2、及び操作端末4で構成される。
【0010】
図1において、操作端末4は、ハードウェアとしては、一般的なパソコンであるが、CCTV操作画面ソフトウェアが導入されている。CCTV操作画面ソフトウェアは、右目用画像と左目用画像を作り、交互に表示させる機能を有する。右目用画像と左目用画像の表示は、液晶シャッター眼鏡7と同期させる必要がある。このため、赤外線等発信器5は、赤外線等による同期信号6を発信する。液晶シャッター眼鏡7では、赤外線等発信器5から発信された同期信号6を受信し、CCTV操作画面4で表示された右目用画像と左目用画像の表示と同期させる(液晶シャッター眼鏡7の赤外線受信部及びシャッター機構は、公知の技術であり、図示しない。)。
【0011】
図2は、液晶シャッター方式の立体視の原理を説明するための図である。図1と同一のものには同一の符号をつけ説明を省く。21は操作端末4のCCTV操作画面、22は液晶シャッター眼鏡7を装着した視聴者、23は視聴者22の右眼、24は視聴者22の左眼、25は右眼用画像、26は左眼用画像、27は右眼用画像25と左眼用画像26の間の距離、28は視聴者22が立体で見える場所である。
図2において、CCTV操作画面21には、右目用画像25と左目用画像26を作り、時間的に交互に表示させ(例えば、1フィールド毎、或いは1フレーム毎)、視聴者22が液晶シャッター眼鏡7で右目用画像25が表示されているときには左目を閉じ、左目用画像26が表示されているのときには右目を閉じることで、右目用画像25と左目用画像26のクロスした点28において、立体的に画像をみることができるものである。
右目用画像25と左目用画像26の水平距離27が広がるほど画像が近くに見える。
【実施例2】
【0012】
図3及び図4によって、本発明の実施例2を説明する。図3は、本発明の実施例2に係る遠隔映像監視システムの構成を示すブロック図である。1−1〜1−4はCCTVカメラ、2−1〜2−4はエンコーダ、40は操作端末である。他の構成は、図1と同様であるので説明を省略する。また、操作端末40において、41は少なくとも120KHzのフレームレートで操作画面401を表示可能な液晶ディスプレー、42は操作手段としてのマウス、43は画像処理部、44はIPネットワーク3を介して、エンコーダ2−1〜2−4と通信する通信部、45はCCTV操作画面ソフトソフトウェアを実行するためのCPU及びメモリ等からなるソフトソフトウェア実行手段である。
【0013】
図4は、本実施例2における操作端末40の操作画面の一実施例を示す図である。本例では、CCTV操作画面41は4等分され、夫々の画面領域41−1〜41−4に4台のCCTVカメラ1−1〜1−4からの映像11−1〜11−4がそれぞれ表示される。またマウス42のポインタ42aも表示され、ポインタ42aを含んでいる画面領域41−3は自動的に選択状態となり、その画面領域41−3にはカメラ操作ボタン46a〜46hが表示される。
カメラ操作ボタン46a〜46hは、選択状態の領域(長方形)の4隅及び上下左右に夫々配置され、マウス42で押されたときにそのボタンに対応する方向にカメラの撮影方向を変化させる。また、CCTVカメラ1−1の付近に設置されエンコーダ2−1に接続されたセンサー9−1(図示せず)が反応し、通信部44がその信号を受信したことによって、該当する画面領域41−1に、「アラーム発生」というアラーム表示47が表示される。
このアラーム表示47をマウス42で押すと、アラームの詳細が表示される。
【0014】
実施例2の特徴として、CCTVカメラ1−1〜1−4の映像11−1〜11−4は、立体視化せず、ポインタ42a、カメラ操作ボタン46a〜46h、アラーム表示47等のGUI部品のみ、立体視化を行う、つまり右目用画像と左目用画像とで異なる映像を用意するものである。
【0015】
図5は、本実施例2における操作端末40の画像処理部43の一実施例の構成を示すブロック図である。画像処理部43は、フレームバッファ431a,431bと、グラフィックコントローラ432と、HDMIインタフェース433とを有する。
フレームバッファ431a,431bは、次に表示すべき右目用画像と左目用画像をそれぞれ保持するメモリである。HDMIインタフェース433は、フレームバッファ431a,431bから右目用画像及び左目用画像を交互に読み出して液晶ディスプレー41に向けて出力する。好ましくは、HDMI ver.1.4に規定された3D映像信号のフォーマットで出力する。
グラフィックコントローラ432は、複数のレイヤ映像及びテクスチャ画像(以下、映像等という)を格納するメモリ51と、CCTV操作画面ソフトウェア等から出力される映像11−1〜11−4等を高速に取り込んで、メモリ51等に転送するビットブリット部52と、ビットブリット(Bitlit)部52に取り込まれた映像を縮小して任意のレイヤに書き込むスケーリング・フィルタ部53と、複数のレイヤの映像等からAND,OR、透過等の合成処理を行いフレームバッファ431a,431bに書き出すマルチレイヤ合成部54と、テクスチャオブジェクトを任意の奥行きの平面に描画(テクスチャマッピング)する3D描画部55とを備える。また、より好ましくは、テクスチャオブジェクトとして任意の奥行きの平面に描画するテクスチャマッピング部(図示しない)や、MPEGハードウェアデコータ56や、線や面の描画を行う2D描画部(図示しない)を備える。
【0016】
次に本実施例2におけるCCTV操作画面ソフトウェア45の特徴的な動作を説明する。
本例ではメモリ51はレイヤ3つ分を保持可能とし、第1レイヤは非立体視の映像等に、第2レイヤは立体視における右目用画像に、第3レイヤは立体視における左目用画像に夫々用いる。そしてマルチレイヤ合成部54は、第1レイヤと第2レイヤを合成してフレームバッファ431aに書き込み、第1レイヤと第3レイヤを合成してフレームバッファ431bに書き込む動作をする。
CCTV操作画面ソフトウェア45は、映像11−1〜11−4を画像処理部43のグラフィックコントローラ432に出力すると共にそれらの画面上での表示位置情報及び縮小率を指定する。表示位置情報は、画面上の上下左右のほか、奥ゆき方向の位置(Z値)を含み、立体視をしない場合はZ値に0を指定する。グラフィックコントローラ432は、Z値に0が指定されて出力された映像11−1〜11−4を、指定された表示位置及び縮小率でもって第1レイヤに書き込む。
【0017】
CCTV操作画面ソフトウェア45は、GUI部品が液晶ディスプレー41から飛び出して見えるようにするため、GUI部品の画像データ(テクスチャ)及びZ値が0でない表示位置情報をグラフィックコントローラ432に出力する。このときの画像データとしては、輪郭が明瞭なものを用い、Z値としては、手前側を負とすると、複数のGUI部品(例えば、ポインタ42aと、ポインタ42aで操作可能な全GUI部品)に共通の負の値を用いる。
グラフィックコントローラ432は、GUI部品の画像データを、第2レイヤと第3レイヤとに、Z値から一意に決まる左右方向ズレ量を与えて描画する。
このように、固定のズレ量を与えるだけなので、視覚で感じられる奥ゆき(飛び出し)量が、画面の中央部と辺縁部で若干異なるが、特に問題にはならない。
【0018】
本実施例2によれば、一般的なグラフィックコントローラを用いても処理量を大きく増加させること無く、GUI部品の立体視を行うことができ、それら部品の視認性を向上させることができる。また液晶シャッター眼鏡を装着していない人にとっても、CCTVカメラの映像が2重に見えることは無く、監視業務に影響がない。
【実施例3】
【0019】
本実施例3では、実施例2に加えて、液晶ディスプレー41を4分割又はそれ以上(9、16、…)に分割して、複数のカメラからの映像をタイル状に並べて表示する際に、各映像に異なる奥行き量を与えて立体視可能に表示するものである。
各映像に異なる奥行き量としては、CCTV操作端末40が設置されている場所から、各カメラ1−1〜1−4の実際の(地理的な)位置までの距離に応じた量を与えれば、距離が遠いほど映像が視覚的にも遠くに(奥行きがあるように)見せることが出来る。また、映像を取得してからの経過時間に応じた量を与えれば、時間が経つほど映像が遠ざかっていくように見せることが出来る。また映像に与えられる各種のランク(重要度、アラーム発生頻度等)に応じた量を与えれば、注目すべき映像ほど手前に見せる事ができる。
【0020】
上述の実施例1〜実施例3によれば、CCTV操作画面を3D化し立体的に見ることができ、運用者等にCCTV操作画面の奥行感/臨場感を提供できる。またCCTVシステム等における人が立ち入ることのできない災害現場・事故現場等の監視では、CCTV操作画面に表示される画像に、奥行が表現できるので、災害現場・事故現場等の監視において、災害現場・事故現場等までの距離感も提供することでき、運用者等はより迅速な対応・処置の指示等を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0021】
1、1−1〜1−4:CCTVカメラ、 2、2−1〜2−4:エンコーダ、 3:IPネットワーク、 4:操作端末、 5:赤外線等発信器、 6:赤外線等の同期信号、 7:液晶シャッター眼鏡(3D眼鏡)、 11−1〜11−4:映像、 21:CCTV操作画面、 22:視聴者、 23:右眼、 24:左眼、 25:右眼用画像、 26:左眼用画像、 27:右眼用画像と左眼用画像の間の距離、 28:視聴者が立体で見える場所、 40:操作端末、 41:液晶ディスプレー、 41−1〜41−4:画面領域、 42:マウス、 42a:ポインタ、 43:画像処理部、 44:通信部、 45:ソフトソフトウェア実行手段、 46a〜46h:カメラ操作ボタン、 47:アラーム表示、 431a,431b:フレームバッファ、 432:グラフィックコントローラ、 433:HDMIインタフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視視野内を撮像する複数のカメラと、前記複数のカメラが撮像した画像を符号化してネットワークに出力するエンコーダと、前記エンコーダの出力画像を前記ネットワークを介して受信し、受信した前記画像を表示するモニタを有する操作端末とを備えた遠隔映像監視システムであって、
前記操作端末は、前記モニタに前記受信した前記画像を3次元表示するソフトウェア手段と、液晶シャッター眼鏡に赤外線信号を送信する赤外線通信端末を有し、
前記ソフトウェア手段は、右眼用画像を表示するときは液晶シャッター眼鏡の左眼を閉じ、左眼用画像を表示するときは液晶シャッター眼鏡の右眼を閉じるように液晶シャッター眼鏡に赤外線信号を送信することを特徴とする遠隔映像監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−65010(P2012−65010A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205484(P2010−205484)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】