説明

遮光性が付与された多機能光学シート

【課題】遮光性が付与された多機能光学シートを提供すること。
【解決手段】遮光性が付与された多機能光学シートは、ポリカーボネート、金属混合物及び顔料を含み、前記金属混合物は、クロム、鉄及びニッケルからなり、可視光線の透過率を高めるとともに、赤外線を遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光性が付与された多機能光学シートに関し、より詳しくはポリカーボネート、金属混合物及び顔料を含み、前記金属混合物はクロム、鉄及びニッケルからなり、可視光線の通過率が向上し、赤外線を遮断する遮光性が付与された多機能光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、天窓、建物の採光板、屋根材、キャノピー、建具や安全ガラス、プール、室内体育館の屋根、温室又は防音壁等の建築材にポリカーボネートシートがガラスの代用として広く用いられている。
【0003】
このようなポリカーボネートシートは、透明度及び強度と耐スクラッチ性に優れているため、ガラス繊維層の上部面及び下部面に形成され、ガラス繊維層の機械的強度を補完する役目をする。
【0004】
太陽光は大きく紫外線、可視光線、赤外線に分けられるが、紫外線が約6%、可視光線が約46%、赤外線が約48%と、おおよそ半分が採光には役立たず、熱作用を起こす赤外線が占めている。このような赤外線は、波長の長さによって近赤外線(0.75乃至3μm)、赤外線(3乃至25μm)、遠赤外線(25μm超過)に分類されるが、可視光線や紫外線に比べて強い熱作用を有していることが特徴であり、このため熱線ともいい、太陽や発熱体から室内空間に伝わる輻射熱は主に赤外線によるものである。
【0005】
しかし、従来の屋外構造物に用いられていたポリカーボネートシートは、赤外線の遮断率が低く、特に夏季に構造物の内部温度が上昇して熱膨張、収縮によるシートの屈曲現象が発生するという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するため、乳白色のポリカーボネートシートを利用したり、ポリカーボネートシートの一面に赤外線反射フィルムを積層したり、ポリカーボネートシートの一面に赤外線反射膜を塗布する等、断熱効果を得るために様々な方法が用いられている。
【0007】
しかし、乳白色のポリカーボネートシートを用いる場合には汚れやすく、外観が不潔になるという問題があり、ポリカーボネートシートの一面に赤外線反射フィルム乃至赤外線反射膜を形成する場合には、赤外線反射フィルム及び赤外線反射膜を形成するための別途の積層工程乃至蒸着工程が必要となり、生産性が低下するという問題があるだけでなく、赤外線反射膜の場合、剥がれやすく且つ磨耗するため、使用期間が短いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ポリカーボネートシートに別途の工程を通して赤外線反射フィルムや赤外線反射膜を形成しなくても赤外線の遮断に優れた効果を発揮するようにポリカーボネートと赤外線の遮断効果を表す金属混合物が配合されてなる遮光性が付与された多機能光学シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による遮光性が付与された多機能光学シートは、ポリカーボネート、金属混合物及び顔料を含む。
【0010】
前記可視光線の透過率が向上した遮光性が付与された多機能光学シートは、ポリカーボネート93.5乃至98.99重量部、金属混合物0.01乃至1.5重量部及び顔料1.0乃至5.0重量部を含むことが望ましい。
【0011】
さらに望ましくは、前記金属混合物は、クロム、鉄及びニッケルの混合物である。
【0012】
また、さらに望ましくは、前記金属混合物の粒子の大きさは1乃至5マイクロメータである。
【発明の効果】
【0013】
本発明による遮光性が付与された多機能光学シートは、ポリカーボネートと赤外線遮断効果のある金属混合物とを配合した後、1回の圧出で製造が可能になるため、工程の簡素化による生産性の向上に卓越した効果を示す。
【0014】
また、赤外線の遮断効果を表す金属混合物による赤外線反射効果に優れ、日陰効果が向上し、可視光線の透過率の向上により採光が向上し、熱膨張、収縮によるシートの屈曲現象防止に卓越した効果がある。
【0015】
また、シートの表面に別途の反射膜を蒸着させるのではなく、ポリカーボネートと赤外線の遮断効果のある金属混合物とを配合してなる組成物を圧出してシートを製造するため、シートの表面が剥がれたり、磨耗しやすい等の現象が発生せず、シートの使用可能期間を延長できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による遮光性が付与された多機能光学シートと従来に用いられていたポリカーボネートシートの赤外線透過率を示すグラフである。
【図2】本発明による遮光性が付与された多機能光学シートと従来のポリカーボネートシートの熱遮断効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の望ましい実施例と各成分の物性を詳細に説明するが、これは本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が発明を容易に実施できる程度で詳細に説明するためのものであり、これにより、本発明の技術的な思想及び範疇が限定されることを意味するものではない。
【0018】
本発明による遮光性が付与された多機能光学シートは、ポリカーボネート、金属混合物及び顔料を含んでなり、ポリカーボネート93.5乃至98.99重量部、金属混合物0.01乃至1.5重量部及び顔料1.0乃至5.0重量部を含んでなることが望ましい。
【0019】
前記ポリカーボネートは、93.5乃至98.99重量部が添加され、遮光性が付与された多機能光学シートの基材の役割をし、一般的にポリカーボネートシートの製造に用いられるものとして当業界において慣用的に用いられるものならば、どのようなものでも使用可能であり、特に限定しない。
【0020】
前記金属混合物は、0.01乃至1.5重量部が添加され、赤外線を遮断する役割をするが、前述した金属混合物はクロム、鉄及びニッケルの混合物であることがよく、クロム、鉄及びニッケルの混合比は1:1:1であることが望ましい。
【0021】
前記金属混合物は、赤外線、紫外線及び電磁波をよく反射する特性によって反射板として使用することができるが、本発明においてはこのような金属混合物をマイクロメータサイズで微粉砕してポリカーボネートと配合した。
【0022】
前記金属混合物の粒子は、大きさが1乃至5μmであることが望ましく、これは赤外線の遮断効果を高めると同時に、優れた可視光線透過率を得るための大きさで、金属混合物の粒子の大きさが1μm未満である場合には、赤外線遮断効率が落ち、5μmを超過する場合には赤外線遮断効率が上がる反面、可視光線透過率が低下することがある。
【0023】
一方、本発明による遮光性が付与された多機能光学シートが設けられる場所によって要求される日陰効果に違いがあることもあるが、この場合、金属混合物の含量を適切に調節すればよい。
【0024】
前記顔料は、1.0乃至5.0重量部が添加され、遮光性が付与された多機能光学シートに色を付ける着色剤の役割をするが、遮光性が付与された多機能光学シートが設置される場所別に要求される色によって、その種類と含量を適切に調節できる。
【0025】
本発明による遮光性が付与された多機能光学シートは、前述したポリカーボネート、金属混合物及び顔料を配合した後、1回の圧出工程を通して製造することができる。この時、ポリカーボネート93.5乃至98.99重量部、金属混合物0.01乃至1.5重量部及び顔料1.0乃至5.0重量部で配合することが望ましく、このような比率で配合する場合、最も優れた赤外線遮断率が表れる。
【0026】
一方、遮光性が付与された多機能光学シートは、10乃至15ミリメータの厚さを有するように形成されることが望ましい。
【0027】
[試験例]
【0028】
図1は、本発明の一実施例による遮光性が付与された多機能光学シートと従来のポリカーボネートシートの赤外線透過率を示すグラフである。ここで、遮光性が付与された多機能光学シートは、ポリカーボネート96重量部、2.5μmの粒子の大きさを有し、クロム、鉄及びニッケルが1:1:1で混合された金属混合物1重量部、顔料2.5重量部を配合して組成物を形成した後、この組成物をシリンダー温度が280℃で、ダイ温度が250℃である圧出機から圧出して15mmの厚さを有するように成形した。
【0029】
このように成形された遮光性が付与された多機能光学シートは、図1に示したように、大概700乃至1600nmの近赤外線の透過率が、従来のポリカーボネートシートの場合(約80%以上、B参照)より著しく低い20%程度に過ぎず(A参照)、近赤外線が約80%以上遮断された。
【0030】
また、図2は本発明による遮光性が付与された多機能光学シートと従来のポリカーボネートシートの熱遮断効果を示したグラフである。前述した方法で製造した遮光性が付与された多機能光学シートと従来のポリカーボネートシートを各々太陽光の下で温度変化試験機で試験した結果、遮光性が付与された多機能光学シートの方(C参照)が、従来のポリカーボネートシート(D参照)より内部温度を6乃至8℃程度下げられるため、熱遮断効果が大きいという結果を得た。
【0031】
このように、本発明による遮光性が付与された多機能光学シートは、内部にクロム、鉄及びニッケルの混合物の粒子が含有されており、従来のポリカーボネートシートに比べ赤外線遮断効果及び熱遮断効果が非常に優れていることがわかる。
【符号の説明】
【0032】
A 遮光性が付与された多機能光学シートの赤外線透過率を示すグラフ
B 従来ポリカーボネートシートの赤外線透過率を示したグラフ
C 遮光性が付与された多機能光学シートの熱遮断効果を示したグラフ
D 従来のポリカーボネートシートの熱遮断効果を示したグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート、金属混合物及び顔料を含む、遮光性が付与された多機能光学シート。
【請求項2】
前記遮光性が付与された多機能光学シートは、ポリカーボネート93.5乃至98.99重量部、金属混合物0.01乃至1.5重量部及び顔料1.0乃至1.5重量部を含む、請求項1に記載の遮光性が付与された多機能光学シート。
【請求項3】
前記金属混合物は、クロム、鉄及びニッケルの混合物である、請求項1に記載の遮光性が付与された多機能光学シート。
【請求項4】
前記金属混合物の粒子の大きさは1乃至5マイクロメータである、請求項1に記載の遮光性が付与された多機能光学シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−158975(P2012−158975A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233678(P2011−233678)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(511258226)エスポリテック カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】