説明

遮熱シート及びそれを用いてなる車両用カーテン

【課題】車両用カーテン等の原材料として有利に用いられ得る、電波低反射性に優れた遮熱シートを提供する。
【解決手段】遮熱性と安全性(外部視認性)の観点から、遮光率が50〜80%の樹脂製網状シートを用い、被覆層との密着性向上のためにシートの表面処理を行った後、その少なくとも一方の面に、気相堆積法に従い、チタン、ケイ素又は銅のいずれかの膜を3〜45μg/cm2付着せしめることにより、目的とする電波低反射性に優れた遮熱シートを得た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮熱シートに係り、特に、自動車等の車両内において使用されるカーテン(車両用カーテン)を作製する際に、カーテン生地として好適に用いられ得る遮熱シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビル等の建築物や自動車においては、エアコンの消費電力削減等の観点から、室内や車内への入射光(太陽光)をカットし、室内等における温度上昇を抑制するための遮熱カーテンが広く用いられている。特に、オゾン層の破壊防止の観点から、エアコン等の冷媒としてフロン(フルオロカーボン類)の使用が禁止されている現在では、より優れた遮熱性を有する遮熱カーテンが望まれている。
【0003】
ここで、遮熱カーテンを作製する際には、通常、遮熱効果を発揮する各種材料が原材料として用いられるところ、本願出願人は、先に、遮熱カーテンの原材料としても用いられ得る遮熱シートを、特開2001−115252号公報(特許文献1)において提案している。そこにおいて提案した遮熱シートは、樹脂繊維からなる不織布と、該不織布の表側面に金属をスパッタリングすることにより形成した遮熱層とからなることを特徴とするものであって、シートの一方の面から入射する熱線は、その殆どが前記遮熱層において反射し、反射しなかった熱線も、その殆どが遮熱層に吸収されるため、シートの反対側の面には透過せず、熱を遮断する効果(遮熱効果)が効果的に発揮されるものとなっている。
【0004】
しかしながら、本発明者等が、特許文献1にて提案された遮熱シートを車両用カーテンの原材料として使用することについて鋭意、研究を進めたところ、かかる遮熱シートからなるカーテンを、自動車のバックウインドウにおいて、金属層たる遮熱層を窓側に向けて使用すると、一定の遮熱効果は得られるものの、(カーテン及び)バックウインドウを通じて外の景色を見ることが困難となり、視認性に劣るという問題があることが判明した。
【0005】
また、現在、多くの車両において、テレビ用電波等の各種電波を受信するためのアンテナがバックウインドウに貼付等されているところ、そのようなバックウインドウに特許文献1に記載の遮熱シートからなる車両用カーテンを使用すると、遮熱層によって電波が反射し、特に周波数領域が90MHz〜752MHzであるテレビ用電波を受信する際に、電波障害が発生する恐れがあるという問題を内在していることが、判明したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−115252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決すべき課題とするところは、車両用カーテン等の原材料として有利に用いられ得る、電波低反射性に優れた遮熱シートを提供することにある。また、本発明は、そのような遮熱シートからなる車両用カーテンを提供することをも、その解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、本発明は、そのような課題を有利に解決するために、樹脂製網状シートの少なくとも一方の面に、気相堆積法に従い、チタン、ケイ素又は銅を3〜45μg/cm2 付着せしめてなる遮熱シートを、その要旨とするものである。
【0009】
なお、そのような本発明に従う遮熱シートにおける好ましい態様の一つにおいては、前記気相堆積法がスパッタリング法である。
【0010】
また、本発明の遮熱シートにおける別の好ましい態様の一つにおいては、体積抵抗値が10MΩ以上である。
【0011】
さらに、本発明に係る遮熱シートにおける別の望ましい態様の一つにおいては、前記樹脂製網状シートが、親水性付与のための表面処理が施されたものである。
【0012】
一方、本発明は、上述の如き各態様の遮熱シートを用いてなる車両用カーテンをも、その要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明に従う遮熱シートにあっては、樹脂製網状シートの少なくとも一方の面に、所定量のチタン、ケイ素又は銅が、気相堆積法に従って付着せしめられてなるものであるところから、優れた遮熱性を有しつつ、電波低反射性にも優れたものとなっているのである。
【0014】
また、本発明に係る遮熱シートは、優れた遮熱性及び電波低反射性を兼ね備えたものであるところから、かかる遮熱シートからなる車両用カーテンにあっても、遮熱性及び電波低反射性に優れたものとなる。
【0015】
具体的には、樹脂製網状シートの一方の面に、所定量のチタン等からなる被覆層が設けられてなる本発明の車両用カーテンを、車両内において、被覆層が車両のバックウインドウに対向するように配置せしめられた場合、太陽光による熱線は被覆層によって効果的に反射されることから、車両用カーテンの表面温度及び車両内の温度の上昇が効果的に抑制される。また、被覆層は窓(バックウインドウ)に対向するように配置されることから、車両内からの外部視認性が保たれつつ、車両の外から車両内は見え難くなり、車両内のプライバシーを保護できるという利点がある。その一方、車両内に向けられた面にはチタン等からなる被覆層が設けられていないことから、樹脂製網状シートが有する色彩や模様がそのまま維持されるという利点をも有する。
【0016】
また、本発明に従う車両用カーテンにおいて、被覆層は、所定量のチタン等にて構成されているところから、電波の反射も効果的に抑制されるのであり、例えば、アンテナがバックウインドウに貼付等されている場合にも、かかるアンテナの電波受信は阻害されず、車両内におけるテレビ等の受信状態は良好なものとなるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例において、遮熱性の評価を行なう際の試験方法を模式的に示す説明図である。
【図2】実施例において、電波障害性の評価を行なう際の試験方法を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ところで、本発明に従う遮熱シートを作製するに際しては、先ず、基材たる樹脂製網状シートが準備される。ここで、かかる樹脂製網状シートを構成する樹脂としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、アクリル等の合成繊維を例示することが出来るが、本発明においては、特にポリエステル(中でもポリエチレンテレフタレート)が、耐熱性に優れることから有利に用いられる。
【0019】
また、それらの樹脂からなる網状シートの形態については、特に限定されるものではなく、平織状、編布状、メッシュ状等、何れの形態を呈するものであっても使用可能である。特に、織物シートが有利に用いられる。
【0020】
本発明において用いられる樹脂製網状シートの厚さは、通常、40〜1000μmである。また、網状シートが織物シートである場合、かかるシートを構成する樹脂糸としては、線径が20〜500μmのものが用いられる。
【0021】
なお、本発明に係る遮熱シートを、特に自動車用ロールブラインド等の車両用カーテンとして使用する場合には、遮熱性と安全性(外部視認性)の観点から、遮光率が50〜80%である樹脂製網状シートを用いることが好ましい。遮光率が50%未満の樹脂製網状シートを用いると、得られる遮熱シート(車両用カーテン)において十分な遮熱性が発揮されない恐れがあり、その一方、遮光率が80%を超えるシートでは、十分な外部視認性を確保することが困難となるからである。なお、樹脂製網状シートの遮光率とは、「カーテンの遮光性試験方法」:JIS−L−1055に準じて測定されるものを意味するものである。
【0022】
上述の如き樹脂製網状シートを用いて、本発明に従う遮熱シートを作製するに際しては、後述するチタン等からなる被覆層を形成する前に、樹脂製網状シートにおける少なくとも被覆層を形成せしめる面に対して、親水性を付与するための表面処理を施すことが好ましい。かかる表面処理を施すことにより、樹脂製網状シートと被覆層との間の密着性がより有利に向上せしめられるからである。親水性を付与するための表面処理としては、各種アンダーコート層の積層等による化学的処理の他、低圧プラズマ処理、大気圧プラズマ処理やUV処理等の物理的処理を例示することが出来る。尚、これら各処理を行なう際の種々の条件は、樹脂製網状シートを構成する樹脂の種類等に応じて、適宜に決定されることとなる。
【0023】
そして、上述してきた樹脂製網状シートの少なくとも一方の面に、気相堆積法に従って、チタン、ケイ素又は銅を3〜45μg/cm2 付着せしめることにより、本発明に従う遮熱シートが作製されるのである。
【0024】
即ち、樹脂製網状シートの少なくとも一方の面に、所定量のチタン、ケイ素又は銅からなる被覆層が形成せしめられていることにより、本発明に従う遮熱シートは、優れた遮熱性を発揮すると共に、電波低反射性においても優れたものとなっているのである。
【0025】
ここで、チタン、ケイ素又は銅の付着量が少なすぎると、十分な遮熱性が発揮され得ない恐れがあり、その一方、付着量が多すぎると、電波反射性が高まる恐れがあるところから、本発明において、チタン、ケイ素又は銅の付着量は、3〜45μg/cm2 の範囲内とされる。
【0026】
なお、本発明においては、樹脂製網状シートの少なくとも一方の面に、チタン、ケイ素又は銅が所定量(3〜45μg/cm2 )付着せしめられていれば良く、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、その他の金属等を含んでいても良い。例えば、後述するスパッタリング法においてケイ素を付着せしめるに際して、ターゲットとしてB(ホウ素)やP(リン)等の成分を含有するものを用いた場合、得られる被覆層も、ターゲットに含まれるB、P等を含むものとなる。
【0027】
チタン、ケイ素又は銅からなる被覆層を形成せしめる際の気相堆積法としては、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等を用いることが出来るが、それら各手法の中でも、得られる被覆層の耐久性に優れているという観点から、スパッタリング法が特に有利に用いられる。
【0028】
スパッタリング法としては、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法等を、用いることが出来る。スパッタリング法は、一般に行なわれているDC電源によるマグネトロンスパッタリング法で可能であるが、AC電源やパルス電源によるスパッタリングを行なうことにより、スパッタリングが長期に亘って安定し、また、高出力の印加が可能となる。なお、米国のBOC社のC−MAG、独国のライボルト社、アルデンヌ社のツインマグ(デュアルマグ)によっても、本発明の被覆層を形成することが可能である。
【0029】
なお、気相堆積法を用いた被覆層の形成は、バッチ方式、或いはロール・ツー・ロール方式の何れにおいても可能であるが、生産性に優れ、製造コストを低く抑えることが出来るロール・ツー・ロール方式が有利に採用される。
【0030】
また、スパッタリング法によってケイ素からなる被覆層を形成せしめるに際しては、ターゲットとして、ケイ素を主成分とするものであって、その他の成分として、B、P、Ge、Al、Ni、Cr、Tiのうちの少なくとも一種以上を15重量%以下の割合において含有するものが、有利に用いられる。即ち、ケイ素は導電性に乏しく、通常のDC電源によるスパッタリングが不可能であるところ、上記の元素をケイ素に添加し、導電性が付与されたものをターゲットとして用いることによって、DC電源を用いたスパッタリングにおいてもケイ素からなる被覆層の形成が可能ならしめられるのである。
【0031】
そして、以上の如くして得られた遮熱シートにあっては、遮熱性及び電波低反射性が非常に優れたものとなっているのである。具体的には、所定量のチタン、ケイ素又は銅からなる被覆層が設けられていることによって、優れた遮熱効果を発揮すると共に、シートの電気抵抗(体積抵抗値)が10MΩ(1.0×107 Ω)以上となることから、電波低反射性においても優れたものとなっているのである。従って、かかる遮熱シートを用いて、従来と同様の手法に従って車両用カーテンを作製した場合、得られた車両用カーテンは、優れた遮熱性を発揮すると共に、TV電波等の受信にも悪影響を与えない、電波低反射性に優れたものとなるのである。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明の実施例を幾つか示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には、上述の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであることが、理解されるべきである。
【0033】
なお、以下の実施例及び比較例において、ケイ素からなる被覆層を後述するスパッタリング法にて形成せしめるに際しては、ターゲットとして、純度が5Nでppm単位のB(ホウ素)を含むものを用いた。
【0034】
また、以下の実施例及び比較例おいて得られた遮熱シート及び車両用カーテンについては、以下の各手法に従って、特性を測定乃至は評価した。なお、測定結果及び評価結果は、下記の各表に示す。
【0035】
−チタン、ケイ素又は銅の付着量の測定−
得られた遮熱シートを試料として用いて、蛍光X線法に従って測定した。
【0036】
−遮熱性の評価−
図1に示すように、光源たる赤外線ランプ(出力:500W)から25cm離れた位置に、試料(車両用カーテンから10cm角にて切り出したもの)を、ランプの照射方向に対して垂直に配置する一方、試料の後ろ側(赤外線ランプに面していない側)であって試料の中心から3cm離れた位置に、温度センサを配置した。しかる後、赤外線ランプを点灯し、点灯から5分経過した後の温度を測定した。尚、測定は、気温23.3℃、相対湿度41%の雰囲気下において行なった。そして、測定結果を以下の基準に従って評価した。
○:測定温度が、スパッタリング未加工の試料(比較例1)についての測定温度より 低く、その差が0.5℃以上であった。
×:測定温度が、スパッタリング未加工の試料(比較例1)についての測定温度より 低いものの、その差は0.5℃未満であった。
【0037】
−電気抵抗の測定−
得られた遮熱シートを試料として用いて、「熱硬化性プラスチック一般試験法」:JIS−K−6911に準じて、電気抵抗を測定した。具体的には、株式会社エーディーシー製のレジスティビティ・チェンバ(型名:12702A)内に試料を載置し、主電極(φ50)及びガード電極(外径:φ80、内径:φ70)を取り付け、同社のデジタル・エレクトロメータ(型名:8252)を用いて、被覆層の体積抵抗値(Ω)を測定した。
【0038】
−電波障害性の評価−
図2に模式的に示すように、バックウインドウにアンテナを有する自動車において、バックウインドウのガラス面から10mm離れた位置に、遮熱性カーテン(縦:60cm×横:150cm)を配置した。かかる状態において、TV電波を受信し、その受信画像について、以下の基準に従って評価した。
○:受信したTV画像に、乱れ等は認められなかった。
×:受信したTV画像に、途切れや乱れ等が認められた。
【0039】
−遮光率の測定−
作製した車両用カーテンについて、「カーテンの遮光性試験方法」:JIS−L−1055に準じて、測定した。
【0040】
遮熱シートの基材たる樹脂製網状シートを、以下のようにして作製した。即ち、経糸としてポリエチレンテレフタレートからなる75デニール/24フィラメントのセミダル黒原着糸を用いて、トリコット編機により、密度がウエール:30本、コース:40本、目付:85g/m2 の樹脂製網状シートを得た。なお、得られたシートの厚さは200μmであった。
【0041】
−実施例1−
得られた樹脂製網状シートを乾燥させた後、スパッタリング装置のチャンバ内にセットし、チャンバ内を一度、真空度:7×10-3Paまで排気した。次いで、チャンバ内にアルゴンガスを導入して、チャンバ内の圧力を2.0Paに調整し、直流電流を400W印加して、プリスパッタリングを20分間実施した。その後、シャッターを開けて、シートの一方の面にスパッタリングを実施してチタンを3μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0042】
−実施例2−
実施例1と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施してチタンを20μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0043】
−実施例3−
実施例1と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施してチタンを40μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0044】
−比較例1−
樹脂製網状シートをそのまま車両用カーテンに加工した。
【0045】
−比較例2−
実施例1と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施してチタンを1μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0046】
−比較例3−
実施例1と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施してチタンを50μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0047】
【表1】

【0048】
かかる表1の結果から明らかなように、本発明に従う遮熱シートを用いて得られる車両用カーテン(実施例1〜実施例3)にあっては、優れた遮熱性と共に、優れた電波低反射性をも発揮することが認められた。一方、チタンの付着量が本発明より少ない比較例2に係る車両用カーテンは、遮熱性が十分なものではなく、また、チタンの付着量が本発明より多い比較例3に係る車両用カーテンにおいては、TV電波の受信時に電波障害が認められた。
【0049】
−実施例4−
得られた樹脂製網状シートを乾燥させた後、スパッタリング装置のチャンバ内にセットし、チャンバ内を一度、真空度:7×10-3Paまで排気した。次いで、チャンバ内にアルゴンガスを導入して、チャンバ内の圧力を2.0Paに調整し、直流電流を400W印加して、プリスパッタリングを20分間実施した。その後、シャッターを開けて、シートの一方の面にスパッタリングを実施してケイ素を10μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0050】
−実施例5−
実施例4と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施してケイ素を40μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0051】
−比較例4−
実施例4と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施してケイ素を1μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0052】
−比較例5−
実施例4と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施してケイ素を50μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0053】
【表2】

【0054】
かかる表2の結果から明らかなように、本発明に従う遮熱シートを用いて得られる車両用カーテン(実施例4、実施例5)にあっては、優れた遮熱性と共に、優れた電波低反射性をも発揮することが認められた。一方、ケイ素の付着量が本発明より少ない比較例4に係る車両用カーテンは、遮熱性が十分なものではなく、また、ケイ素の付着量が本発明より多い比較例5に係る車両用カーテンにおいては、TV電波の受信時に電波障害が認められた。
【0055】
−実施例6−
得られた樹脂製網状シートを乾燥させた後、スパッタリング装置のチャンバ内にセットし、チャンバ内を一度、真空度:7×10-3Paまで排気した。次いで、チャンバ内にアルゴンガスを導入して、チャンバ内の圧力を2.0Paに調整し、直流電流を400W印加して、プリスパッタリングを20分間実施した。その後、シャッターを開けて、シートの一方の面にスパッタリングを実施して銅を20μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0056】
−実施例7−
実施例6と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施して銅を40μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0057】
−比較例6−
実施例6と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施して銅を1μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0058】
−比較例7−
実施例6と同様の手法に従って、シートの一方の面にスパッタリングを実施して銅を52μg/cm2 付着せしめることにより、遮熱シートを得た。そして、得られた遮熱シートを、車両用カーテンに加工した。
【0059】
【表3】

【0060】
かかる表3の結果から明らかなように、本発明に従う遮熱シートを用いて得られる車両用カーテン(実施例6、実施例7)にあっては、優れた遮熱性と共に、優れた電波低反射性をも発揮することが認められた。一方、銅の付着量が本発明より少ない比較例6に係る車両用カーテンは、遮熱性が十分なものではなく、また、銅の付着量が本発明より多い比較例7に係る車両用カーテンにおいては、TV電波の受信時に電波障害が認められたのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製網状シートの少なくとも一方の面に、気相堆積法に従い、チタン、ケイ素又は銅を3〜45μg/cm2 付着せしめてなる遮熱シート。
【請求項2】
前記気相堆積法がスパッタリング法である請求項1に記載の遮熱シート。
【請求項3】
体積抵抗値が10MΩ以上である請求項1又は請求項2に記載の遮熱シート。
【請求項4】
前記樹脂製網状シートが、親水性付与のための表面処理が施されたものである請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の遮熱シート。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の遮熱シートを用いてなる車両用カーテン。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−105994(P2011−105994A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262676(P2009−262676)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(591158335)株式会社鈴寅 (20)
【Fターム(参考)】