説明

遷移金属イオン錯体、その製造方法及び重合体の製造方法

【課題】遷移金属イオン錯体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】式(1)


(式中、Mは元素の周期律表の第4族元素を表し、Aは元素の周期律表の第14族元素を表し、Dは元素の周期律表の第16族元素を表し、Cpはシクロペンタジエニル型アニオン骨格を有する基を表し、Eは対アニオンを表し、R−Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、炭化水素で置換されたシリル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又は炭化水素で置換されたアミノ基を表し、Xはアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す。)で示される遷移金属イオン錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遷移金属イオン錯体、その製造方法、(メタ)アクリル酸エステル重合体又はオレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第4族遷移金属錯体を用いた(メタ)アクリル酸エステルの重合用触媒は近年注目されている(例えば非特許文献1参照)。これら第4族遷移金属錯体を重合用触媒成分として用いることで(メタ)アクリル酸エステルの重合において、生成ポリ(メタ)アクリル酸エステルの分子量並びに立体規則性が制御できることが報告されている(例えば非特許文献2参照)。これらの中で、シクロペンタジエンとアミンが元素の周期律表の第14族元素によって架橋された配位子を有する第4族遷移金属錯体のエノラート錯体を用いるとメタアクリル酸エステルの重合がリビング的に、また、シンジオ選択的に進行することが報告されている(例えば非特許文献3参照)。
【0003】
一方、シクロペンタジエンとフェノールが元素の周期律表の第14族元素によって架橋された配位子を有する第4族遷移金属錯体はオレフィン重合用触媒として知られている(例えば特許文献1参照)。かかる第4族遷移金属錯体をオレフィン重合用触媒として利用する際には通常、有機アルミニウム化合物やアルミノキサンを共触媒成分として用いることが必要である。
【特許文献1】特開平9−87313号公報
【非特許文献1】Organometallics 2007,26,187.
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.2004,126,4897.
【非特許文献3】Macromolecules 2004,37,3092.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる状況において、本発明は、オレフィン及び(メタ)アクリル酸エステルの重合用触媒として利用することが可能な新規な遷移金属イオン錯体を提供しようとするものである。また該遷移金属イオン錯体を重合用触媒として用いたオレフィン重合体の製造方法及び(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、オレフィン又は(メタ)アクリル酸エステルの重合用触媒として利用することが可能な、遷移金属イオン錯体を見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記[1]〜[4]を提供するものである。
[1]:
式(1)

(式中、Mは元素の周期律表の第4族元素を表し、Aは元素の周期律表の第14族元素を表し、Dは元素の周期律表の第16族元素を表し、Cpはシクロペンタジエニル型アニオン骨格を有する基を表し、Eは対アニオンを表し、R、R、R、R、R及びRは同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたアミノ基を表し、
ここで、R〜Rにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又は炭化水素は、ハロゲン原子で置換されていてもよい、
とRは結合して環を形成していてもよく、RとR、RとR、RとRは、それぞれ任意に結合して環を形成していてもよく、
は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、
ここで、Xにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で示される遷移金属イオン錯体。
[2]:
式(2)

(式中、M、A、D、Cp、R〜R及びXは前記と同じ意味を表し、
は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、
ここで、Xにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で示される遷移金属錯体と下記化合物(B1)〜(B3)からなる群から選ばれる1種以上のホウ素化合物とを接触させることを特徴とする遷移金属イオン錯体の製造方法。
(B1)式 BQ
(B2)式 G(BQで表されるホウ素化合物;
(B3)式 (L−H)(BQで表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基又は2置換アミノ基を表し、Gは無機又は有機のカチオンを表し、Lは中性ルイス塩基を表す。);

[3]
該遷移金属イオン錯体存在下、オレフィンを重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法;
[4]
該遷移金属イオン錯体存在下、(メタ)アクリル酸エステルを重合させることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明により得られる遷移金属イオン錯体は、例えば、オレフィンの重合反応の触媒として有用である。また、本発明の遷移金属錯体を触媒とすることで(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
前記式(1)で示される遷移金属イオン錯体(以下、遷移金属イオン錯体(1)と略す。)において、Cpで示されるシクロペンタジエニル型アニオン骨格を有する基としては、例えば、置換もしくは無置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基等が挙げられる。
具体的には、シクロぺンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、エチルシクロぺンタジエニル基、n−プロピルシクロペンタジエニル基、イソプロピルシクロペンタジエニル基、n−ブチルシクロペンタジエニル基、sec−ブチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロぺンタジエニル基、テトラヒドロインデニル基、オクタヒドロフルオレニル基、フェニルシクロぺンタジエニル基、トリメチルシリルシクロぺンタジエニル基、tert−ブチルジメチルシリルシクロぺンタジエニル基などの置換もしくは無置換のシクロペンタジエニル基、
インデニル基、メチルインデニル基、ジメチルインデニル基、エチルインデニル基、n−プロピルインデニル基、イソプロピルインデニル基、n−ブチルインデニル基、sec−ブチルインデニル基、tert−ブチルインデニル基、フェニルインデニル基などの置換もしくは無置換のインデニル基が挙げられ、
好ましくはシクロペンタジエニル基、メチルシクロペンタジエニル基、ジメチルシクロペンタジエニル基、トリメチルシクロペンタジエニル基、テトラメチルシクロペンタジエニル基、tert−ブチルシクロペンタジエニル基などが挙げられる。
【0009】
遷移金属イオン錯体(1)において、Aで示される元素の周期律表の第14族元素としては、例えば、炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子などが例示され、好ましくは炭素原子、ケイ素原子が挙げられる。
【0010】
遷移金属イオン錯体(1)において、Dで示される元素の周期律表の第16族元素としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、セレン原子などが例示され、好ましくは酸素原子が例示される。
【0011】
遷移金属イオン錯体(1)においてMで示される元素の周期律表の第4族元素としては、例えば、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子などが例示され、好ましくはチタン原子が挙げられる。
【0012】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが例示され、好ましくは塩素原子が挙げられる。
【0013】
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、炭素原子数1〜20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、及びn−エイコシル基が例示され、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、アミル基等が挙げられる。
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、ハロゲン置換炭素原子数1〜20のアルキル基の具体例としては、これらのアルキル基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0014】
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、炭素原子数6〜20のアリール基の具体例としては、フェニル基、2−トリル基、3−トリル基、4−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,4−キシリル基、3,5−キシリル基、2,3,4−トリメチルフェニル基、2,3,5−トリメチルフェニル基、2,3,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,3,4,6−テトラメチルフェニル基、2,3,5,6−テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、sec−ブチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、n−ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n−ヘキシルフェニル基、n−オクチルフェニル基、n−デシルフェニル基、n−ドデシルフェニル基、n−テトラデシルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基などが例示され、好ましはフェニル基が挙げられる。
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、ハロゲン置換炭素原子数6〜20のアリール基の具体例としては、これらのアリール基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0015】
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいて、炭素原子数7〜20のアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、(2−メチルフェニル)メチル基、(3−メチルフェニル)メチル基、(4−メチルフェニル)メチル基、(2,3−ジメチルフェニル)メチル基、(2,4−ジメチルフェニル)メチル基、(2,5−ジメチルフェニル)メチル基、(2,6−ジメチルフェニル)メチル基、(3,4−ジメチルフェニル)メチル基、(4,6−ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n−プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n−ブチルフェニル)メチル基、(sec−ブチルフェニル)メチル基、(tert−ブチルフェニル)メチル基、(n−ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n−ヘキシルフェニル)メチル基、(n−オクチルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、(n−デシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基などが例示され、好ましくはベンジル基が挙げられる。
置換基R、R、R、R、R、R、X及びXにおいてハロゲン置換炭素原子数7〜20のアラルキル基の具体例としてはこれらのアラルキル基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0016】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、炭化水素で置換されたシリル基の炭化水素としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などの炭素原子数1〜10のアルキル基、フェニル基などのアリール基などが例示される。かかる炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基の具体例としては、メチルシリル基、エチルシリル基、フェニルシリル基などの炭素原子数1〜20の一置換シリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、ジフェニルシリル基などの炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換された二置換シリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ−n−プロピルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリ−n−ブチルシリル基、トリ−sec−ブチルシリル基、トリ−tert−ブチルシリル基、トリ−イソブチルシリル基、tert−ブチル−ジメチルシリル基、トリ−n−ペンチルシリル基、トリ−n−ヘキシルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基などの炭素原子数1〜20の炭化水素基で置換された三置換シリル基などが例示され、好ましくはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。
これらの置換シリル基を構成する炭化水素基としては、上記のような炭化水素基のほかにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換された炭化水素基が例示される。
【0017】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、炭素原子数1〜20のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、n−エイコシルオキシ基などが例示され、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
ハロゲン置換炭素原子数1〜20のアルコキシ基の具体例としては、これらのアルコキシ基が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0018】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2,3−ジメチルフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、2,5−ジメチルフェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、3,4−ジメチルフェノキシ基、3,5−ジメチルフェノキシ基、2,3,4−トリメチルフェノキシ基、2,3,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,6−トリメチルフェノキシ基、2,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基、3,4,5−トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5−テトラメチルフェノキシ基、2,3,4,6−テトラメチルフェノキシ基、2,3,5,6−テトラメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n−プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n−ブチルフェノキシ基、sec−ブチルフェノキシ基、tert−ブチルフェノキシ基、n−ヘキシルフェノキシ基、n−オクチルフェノキシ基、n−デシルフェノキシ基、n−テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基などの炭素原子数6〜20のアリールオキシ基などが例示される。
ハロゲン置換炭素原子数6〜20のアリールオキシ基の具体例としては、上記炭素原子数6〜20のアリールオキシ基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0019】
置換基R、R、R、R、R及びRおいて、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基の具体例としては、ベンジルオキシ基、(2−メチルフェニル)メトキシ基、(3−メチルフェニル)メトキシ基、(4−メチルフェニル)メトキシ基、(2,3−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,6−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4−ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5−ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6−トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5−トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n−プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n−ブチルフェニル)メトキシ基、(sec−ブチルフェニル)メトキシ基、(tert−ブチルフェニル)メトキシ基、(n−ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n−オクチルフェニル)メトキシ基、(n−デシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基などが例示され、好ましくはベンジルオキシ基が挙げられる。
ハロゲン置換炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基の具体例としては、これらのアラルキルオキシ基がフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されたものが例示される。
【0020】
置換基R、R、R、R、R及びRにおいて、炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたアミノ基とは、2つの炭化水素基で置換されたアミノ基であって、ここで炭化水素としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などの炭素原子数1〜20のアルキル基、フェニル基などのアリール基などが例示され、これらの置換基は互いに結合して環を形成していてもよい。かかる炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジ−tert−ブチルアミノ基、ジ−イソブチルアミノ基、tert−ブチルイソプロピルアミノ基、ジ−n−ヘキシルアミノ基、ジ−n−オクチルアミノ基、ジ−n−デシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビストリメチルシリルアミノ基、ビス−tert−ブチルジメチルシリルアミノ基、ピロリル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、カルバゾリル基、ジヒドロインドリル基、ジヒドロイソインドリル基などが例示され、好ましくはジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ピロリジニル基、ピペリジニル基等が挙げられる。
これらの置換アミノ基を構成する炭化水素としては、上記のような炭化水素のほかにフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換された炭化水素基が例示される。
【0021】
とRは結合して環を形成していてもよく、R、R、R及びRのうち置換位置が隣接する2つの置換基は、任意に結合して環を形成していてもよい。
【0022】
とRが結合して形成される環、及び、R、R、R及びRのうち置換位置が隣接する2つの置換基が結合して形成される環としては、炭素原子数1〜20の炭化水素で置換された、飽和もしくは不飽和の炭化水素環などが例示される。その具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが例示される。
【0023】
Eにおいて、対アニオンとは、Mで示される元素の周期律表の第4族元素のカチオンを安定化させることができるアニオンであり、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のホウ素化合物が挙げられる。
【0024】
本発明の遷移金属イオン錯体(1)としては、例えば、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]
【0025】
[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]
【0026】
[ジメチルシリレン(インデニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]
【0027】
[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]
【0028】
[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]
【0029】
[ジメチルシリレン(インデニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]
などが挙げられ、ジメチルシリレンをジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンに変更した化合物、シクロペンタジエニルをメチルシクロペンタジエニル、2,4−ジメチルシクロペンタジエニル、3,4−ジメチルシクロペンタジエニル、2,3,4−トリメチルシクロペンタジエニルに変更した化合物、チタニウムをジルコニウム、ハフニウムに変更した化合物も同様に例示される。
好ましくは、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]、[ジエチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート]、[ジエチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート]が挙げられる。
【0030】
遷移金属イオン錯体(1)は、前記式(2)で示される遷移金属錯体(以下、遷移金属錯体(2)と略す。)と前記化合物(B1)〜(B3)からなる群から選ばれる1種以上のホウ素化合物(以下、化合物(B)と略す。)とを接触させることにより製造することができる。
【0031】
遷移金属錯体(2)としては、例えば、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム
【0032】
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム
【0033】
ジメチルシリレン(インデニル)(2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3,5−ジメチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−フェニル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチルジメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−トリメチルシリル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−メトキシ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム、ジメチルシリレン(インデニル)(3−tert−ブチル−5−クロロ−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム
などが挙げられ、ジメチルシリレンをジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、イソプロピリデン、ジフェニルメチレンに変更した化合物、シクロペンタジエニルをメチルシクロペンタジエニル、2,4−ジメチルシクロペンタジエニル、3,4−ジメチルシクロペンタジエニル、2,3,4−トリメチルシクロペンタジエニルに変更した化合物、ジメチルチタニウムをジフェニルチタニウム、ジベンジルチタニウムに変更した化合物、チタニウムをジルコニウム、ハフニウムに変更した化合物も同様に例示される。
【0034】
遷移金属錯体(2)と化合物(B)を反応させる方法においては、通常、溶媒に遷移金属イオン錯体(2)を加えた後、化合物(B)を加えることによって行うことができる。
【0035】
化合物(B)の使用量は、遷移金属錯体(2)1モルあたり、通常、0.5〜5モルの範囲であり、好ましくは0.7〜1.5モルである。
【0036】
反応温度は、通常、−100℃から溶媒の沸点までであり、好ましくは−80℃から60℃の範囲である。
【0037】
反応は、通常、反応に対して不活性な溶媒中で行われる。かかる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒といった非プロトン性溶媒などが例示される。かかる溶媒はそれぞれ単独もしくは2種以上を混合して用いられ、その使用量は、遷移金属錯体(2)1重量部あたり、通常、1〜200重量部、好ましくは3〜50重量部である。
【0038】
反応終了後、得られた反応混合物から通常の方法、例えば、生成した沈殿を濾別後、濾液を濃縮して遷移金属イオン錯体(1)を析出させた後、これを濾取する方法などによって目的の遷移金属イオン錯体(1)を得ることができる。
【0039】
遷移金属錯体(2)は、例えば、公知のジハロゲン化チタン錯体(例えば、特許文献1参照)から公知の技術に従って、アルキルリチウム化合物、あるいはアルキルマグネシウム化合物との反応により得ることができる。
【0040】
遷移金属イオン錯体(1)の製造に用いられる化合物(B)とは、下記(B1)〜(B3)からなる群から選ばれる1種以上のホウ素化合物である。
(B1):式 BQで表されるホウ素化合物、
(B2):式 G(BQで表されるホウ素化合物、
(B3):式 (L−H)(BQで表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基又は二置換アミノ基を表し、Gは無機又は有機のカチオンを表し、Lは中性ルイス塩基を表す。)
【0041】
(B1):式BQで表されるホウ素化合物において、Bは3価の原子価状態のホウ素原子である。Q〜Qは、好ましくは、それぞれ独立にハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基、炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基、炭素原子数1〜20の置換シリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基又は炭素原子数2〜20の2置換アミノ基であり、より好ましくは、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20の炭化水素基又は炭素原子数1〜20のハロゲン化炭化水素基である。
【0042】
(B1):式BQで表されるホウ素化合物としては、例えば、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等があげられ、好ましくは、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0043】
(B2):式G(BQで表されるホウ素化合物において、Gは無機又は有機のカチオンであり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q〜Qは上記の(B1)におけるQ〜Qと同様である。
【0044】
(B2):G(BQで表されるホウ素化合物において、無機のカチオンであるGには、例えば、フェロセニウムカチオン、アルキル置換フェロセニウムカチオン、銀陽イオンなどが、有機のカチオンであるGには、例えば、トリフェニルメチルカチオンなどが挙げられる。また、(BQとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,2,4−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボレ−ト、テトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0045】
(B2):式G(BQで表されるホウ素化合物としては、例えば、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、銀テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルメチルテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレートなどをあげることができ、好ましくは、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0046】
(B3):式(L−H)(BQで表されるホウ素化合物において、Lは中性ルイス塩基であり、(L−H)はブレンステッド酸であり、Bは3価の原子価状態のホウ素原子であり、Q〜Qは上記の(B1)におけるQ〜Qと同様である。
【0047】
(B3):式(L−H)(BQで表されるホウ素化合物において、(L−H)には、例えば、トリアルキル置換アンモニウム、N,N−ジアルキルアニリニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアリールホスホニウムなどがあげられ、(BQには、前述と同様のものが挙げられる。
【0048】
(B3):式(L−H)(BQで表されるホウ素化合物としては、例えば、トリエチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジイソプロピルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどをあげることができ、好ましくは、トリ(ノルマルブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどである。
【0049】
化合物(B)としては、通常、(B1):式BQで表されるホウ素化合物、(B2):式G(BQで表されるホウ素化合物又は(B3):式(L−H)(BQで表されるホウ素化合物のいずれかを用いる、あるいは、(B1)、(B2)又は(B3)で表されるホウ素化合物の任意の2つ以上の混合物を用いることができる
【0050】
遷移金属イオン錯体(1)は、他の共触媒成分と接触させることなしで単独でオレフィン重合用触媒として用いることができる。
【0051】
遷移金属イオン錯体(1)は、他の共触媒成分と接触させることなしで単独で(メタ)アクリル酸エステル重合用触媒として用いることができる。
【0052】
〔オレフィン重合体の製造方法〕
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、遷移金属イオン錯体(1)の存在下、オレフィンを重合するものである。
【0053】
重合に使用するオレフィンとしては、鎖状オレフィン、環状オレフィン等を用いることができ、1種類のオレフィンを用いて単独重合を行ってもよく、2種類以上のオレフィンを用いて共重合を行ってもよい。通常、該オレフィンとしては、炭素原子数2〜20のオレフィンが用いられる。
【0054】
鎖状オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、5−メチル−1−ヘキセン、3,3−ジメチル−1−ペンテンなどの炭素原子数3〜20のα−オレフィン;1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,7−ノナジエン、1,8−ノナジエン、1,8−デカジエン、1,9−デカジエン、1,12−テトラデカジエン、1,13−テトラデカジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3−エチル−1,4−ヘキサジエン、3−エチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,5−ヘキサジエンなどの非共役ジエン;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエンなどの共役ジエンなどを挙げることができる。
【0055】
環状オレフィンとしては、脂環族化合物として、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、トリシクロデセン、トリシクロウンデセン、ペンタシクロペンタデセン、ペンタシクロヘキサデセン、8−メチルテトラシクロドデセン、8−エチルテトラシクロドデセンなどのモノオレフィン;5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、1,5−シクロオクタジエン、7−メチル−2,5−ノルボルナジエン、7−エチル−2,5−ノルボルナジエン、7−プロピル−2,5−ノルボルナジエン、7−ブチル−2,5−ノルボルナジエン、7−ペンチル−2,5−ノルボルナジエン、7−ヘキシル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−メチルエチル−2,5−ノルボルナジエン、7−クロロ−2,5−ノルボルナジエン、7−ブロモ−2,5−ノルボルナジエン、7−フルオロ−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジクロロ−2,5−ノルボルナジエン、1−メチル−2,5−ノルボルナジエン、1−エチル−2,5−ノルボルナジエン、1−プロピル−2,5−ノルボルナジエン、1−ブチル−2,5−ノルボルナジエン、1−クロロ−2,5−ノルボルナジエン、1−ブロモ−2,5−ノルボルナジエン、5,8−エンドメチレンヘキサヒドロナフタレン、ビニルシクロヘキセンなどの非共役ジエン;1,3−シクロオクタジエン、1,3−シクロヘキサジエンなどの共役ジエンなどをあげることができる。また、芳香族化合物として、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。
【0056】
オレフィンの共重合を行う場合のオレフィンの組み合わせとしては、例えば、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/プロピレン/1−ブテン、エチレン/プロピレン/1−ヘキセン、プロピレン/1−ブテン、プロピレン/1−ヘキセンなどの鎖状オレフィン/鎖状オレフィンの組み合わせ;エチレン/ビニルシクロヘキサン、エチレン/ノルボルネン、エチレン/テトラシクロドデセン、エチレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン、プロピレン/ビニルシクロヘキサン、プロピレン/ノルボルネン、プロピレン/テトラシクロドデセン、プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン、エチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの鎖状オレフィン/環状オレフィンの組み合わせなどをあげることができる。
【0057】
重合の開始方法は、特に限定されるものではないが、例えば、遷移金属イオン錯体(1)の溶液にオレフィンを加えて重合を開始させる方法、予め遷移金属錯体(2)と化合物(B)を接触させておいた溶液に、オレフィンを加えて重合を開始させる方法、又は、化合物(B)とオレフィンを予め接触させておいた溶液に、遷移金属錯体(2)を加えて重合を開始させる方法が挙げられる。
【0058】
各触媒成分の使用量としては、化合物(B)/遷移金属錯体(2)のモル比は、通常0.1〜100、好ましくは0.5〜10、より好ましくは0.8〜2である。
【0059】
各触媒成分を溶液状態で使う場合の濃度については、遷移金属錯体(2)の濃度は、通常0.0001〜5ミリモル/リットル、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットルであり、化合物(B)の濃度は、通常0.0001〜5ミリモル/リットル、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットルである。
【0060】
重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族炭化水素(ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン等)、エーテル(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、又はハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)を溶媒として用いる溶媒重合又はスラリー重合、ガス状のモノマー中での気相重合等が可能であり、連続式重合又は回分式重合のどちらでも可能である。
【0061】
重合温度は、−50℃〜300℃の範囲を採り得るが、特に、−20℃〜250℃の範囲が好ましい。重合圧力は、常圧〜90MPaが好ましい。重合時間は、一般的に、目的とする重合体の種類、反応装置によって適宜決定されるが、1分間〜20時間の範囲を採ることができる。また、本発明は重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加することもできる。
【0062】
〔(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法〕
本発明の(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法は、遷移金属イオン錯体(1)の存在下、(メタ)アクリル酸エステルを重合するものである。
【0063】
重合に使用する(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アリルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル化合物、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル化合物が挙げられる。
【0064】
これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は単独で重合させることもできるが、2種類以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物を共重合させることもできる。2種類以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物を共重合させる方法は特に限定されないが、例えば、2種類以上の(メタ)アクリル酸エステルが同時に存在する条件で重合を開始させてランダム共重合体を得る方法、1番目の(メタ)アクリル酸エステルをあらかじめ重合させておいてから、2番目以降の(メタ)アクリル酸エステルを加えることによりブロック共重合体を得る方法が挙げられる。
【0065】
重合の開始方法は、特に限定されるものではないが、例えば、遷移金属イオン錯体(1)の溶液に(メタ)アクリル酸エステルを加えて重合を開始させる方法、予め遷移金属錯体(2)と化合物(B)を接触させておいた溶液に、(メタ)アクリル酸エステルを加えて重合を開始させる方法、又は、化合物(B)と(メタ)アクリル酸エステルを予め接触させておいた溶液に、遷移金属錯体(2)を加えて重合を開始させる方法が挙げられる。
【0066】
各触媒成分の使用量としては、化合物(B)/遷移金属錯体(2)のモル比は、通常0.1〜100、好ましくは0.5〜10、より好ましくは0.8〜2である。
【0067】
各触媒成分を溶液状態で使う場合の濃度については、遷移金属錯体(2)の濃度は、通常0.0001〜5ミリモル/リットル、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットルであり、化合物(B)の濃度は、通常0.0001〜5ミリモル/リットル、好ましくは、0.001〜1ミリモル/リットルである。
【0068】
重合方法は、特に限定されるものではないが、例えば、脂肪族炭化水素(ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン等)、エーテル(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等)、又はハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)を溶媒として用いる溶媒重合又はスラリー重合が可能であり、連続式重合又は回分式重合のどちらでも可能である。
【0069】
重合温度は、−80℃〜150℃の範囲を採り得るが、特に、−30℃〜100℃の範囲が好ましい。重合時間は、一般的に、目的とする重合体の種類、反応装置によって適宜決定されるが、例えば1秒間〜24時間の範囲を採ることができる。
【0070】
重合反応は窒素やアルゴンのような不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスや(メタ)アクリル酸エステルモノマーは十分に乾燥し、水分を含まないことが、効率よく高重合体を得るために重要である。
【0071】
得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体は、金属触媒成分を含むが、重合度が高い場合はその金属触媒成分の含有量は小さいため、除去しなくてもよい。除去する必要がある場合は、水や希塩酸等で(メタ)アクリル酸エステル重合体を洗浄することにより金属触媒成分を除去した後、乾燥することにより(メタ)アクリル酸エステル重合体を得ることができる。
【0072】
得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体は、フィルムや繊維、発泡体シート及び各種成形体として用いることができる。また、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体を他の重合体への添加剤として用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明を実験例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実験例に限定されるものではない。
【0074】
<遷移金属イオン錯体の製造>
物性測定は次の方法で行った。
(1)プロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)
装置:日本電子社製 EX270、又は、Bruker社製 DPX−300
試料セル:5mmφチューブ
測定溶媒:toluene−d
試料濃度:10mg/0.5mL(toluene−d
測定温度:室温(約25℃)
測定パラメータ:5mmφプローブ、MENUF NON、OBNUC 1H、積算回数16回
パルス角度:45度
繰り返し時間:ACQTM 3秒、PD 4秒
内部標準:toluene−d(2.09ppm)
【0075】
[実験例1]
「[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート](以下、イオン錯体(A)と記す。)の合成」
窒素下、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム(以下、チタン錯体(A)と記す。)(12.6mg、0.03mmol)と、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(15.4mg、0.03mmol)とをトルエン−d(0.6mL)を溶媒として混合した。室温で1時間攪拌した後、イオン錯体(A)の測定をプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)により行った。
H−NMR(toluene−d、δppm)):0.22(s、3H、SiMe)、0.30(s、3H、SiMe)、0.75(br s、3H、B−Me)、1.22(s、3H、Ti−Me)、1.27(s、9H、Ar−tBu)、1.31(s、3H、CMe)、1.50(s、3H、CMe)、1.72(s、6H、CMe)、2.15(s、3H、Ar−Me)、6.97(s、1H、Ar−H)、7.05(s、1H、Ar−H)
【0076】
[実験例2]
「[ジエチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][トリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート](以下、イオン錯体(B)と記す。)の合成」
窒素下、ジエチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム(以下、チタン錯体(B)と記す。)(13.4mg、0.03mmol)と、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(15.4mg、0.03mmol)とをトルエン−d(0.6mL)を溶媒として混合した。室温で1時間攪拌した後、イオン錯体(B)の測定をプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)により行った。
H−NMR(toluene−d、δppm)):0.68−0.95(m、10H、SiEt)、0.76(br s、3H、B−Me)、1.20(s、3H、Ti−Me)、1.29(s、9H、Ar−tBu)、1.32(s、3H、CMe)、1.52(s、3H、CMe)、1.70(s、3H、CMe)、1.77(s、3H、CMe)、2.15(s、3H、Ar−Me)、6.97(s、1H、Ar−H)、7.07(s、1H、Ar−H)
【0077】
[実験例3]
「[ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)メチルチタニウムカチオン][テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート](以下、イオン錯体(C)と記す。)の合成」
窒素下、チタン錯体(A)(16.7mg、0.04mmol)と、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(36.9mg、0.04mmol)とをトルエン−d(0.8mL)を溶媒として混合した。室温で1時間攪拌した後、イオン錯体(C)を不溶性の濃褐色オイルとして得た。トルエン−d可溶成分として1,1,1−トリフェニルエタンが観測され、イオン錯体(C)の生成が示唆された。
【0078】
[実験例4]
「イオン錯体(C)の合成」
窒素下、チタン錯体(A)(16.7mg、0.04mmol)と、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(32.0mg、0.04mmol)とをトルエン−d(0.8mL)を溶媒として混合した。室温で1時間攪拌した後、イオン錯体(C)を不溶性の濃褐色オイルとして得た。
【0079】
[実験例5]
「イオン錯体(A)の合成」
窒素下、チタン錯体(A)(209.3mg、0.50mmol)と、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(256.0mg、0.50mmol)とをトルエン(10.5mL)を溶媒として混合した。室温で1時間攪拌した後、溶媒を減圧下で留去した。ペンタンを加えた後、濾取することによりイオン錯体(A)をオレンジ色固体として得た。(249.1mg、収率53.5%)
H−NMR(toluene−d、δppm)):0.22(s、3H、SiMe)、0.30(s、3H、SiMe)、0.75(br s、3H、B−Me)、1.22(s、3H、Ti−Me)、1.27(s、9H、Ar−tBu)、1.31(s、3H、CMe)、1.50(s、3H、CMe)、1.72(s、6H、CMe)、2.15(s、3H、Ar−Me)、6.97(s、1H、Ar−H)、7.05(s、1H、Ar−H)
【0080】
<オレフィン重合体の製造方法>
【0081】
分子量及び分子量分布の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって次の方法で行った。
装置:HLC−8120GPC(RI)
カラム:TSKgel、GMH HR−M
流量:0.5mL/min
測定温度:40℃
移動相:THF
標準物質:ポリスチレン
【0082】
[実験例6]
「エチレンの重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(184.5mg、0.20mmol)、チタン錯体(A)(83.7mg、0.20mmol)をトルエン(5mL)中で10分間攪拌した。ここに、トルエン(95mL)を加えて、オートクレーブに仕込んだ。ここに、エチレンを0.2MPaになるように加えて重合を開始し、30℃で重合を続けた。10分間重合を行い、メタノール(15mL)を加えて重合を停止した。塩酸のメタノール溶液(5wt%)(25mL)及びメタノール(500mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。真空乾燥(80℃、重量が一定になるまで)することにより白色固体としてポリエチレンを得た(6.32g)。
[実験例7]
「プロピレンの重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(184.5mg、0.20mmol)、チタン錯体(A)(83.7mg、0.20mmol)をトルエン(5mL)中で10分間攪拌し触媒溶液を得た。窒素下、オートクレーブに、トルエン(90mL)を加えて、0℃でプロピレンを0.2MPaになるように加圧し安定化させた。ここに、前記触媒溶液を仕込み重合を開始させた。オートクレーブを氷浴で冷やしながら1時間重合を続けた。メタノール(15mL)を加えて重合を停止した。塩酸のメタノール溶液(5wt%)(25mL)及びメタノール(500mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。真空乾燥(80℃、重量が一定になるまで)することによりゴム状のポリプロピレンを得た(28.18g)。
【0083】
[実験例8]
「1−ヘキセンの重合」
窒素下、室温でイオン錯体(A)(46.5mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、1−ヘキセン(0.83g、9.89mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で3時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.5mL)を加えて重合を停止した。メタノール(136mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより粘性オイルとしてポリ(1−ヘキセン)を得た(0.61g、収率73.1%)。得られたポリ(1−ヘキセン)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=12,200、Mw/Mn=1.76であった。
【0084】
[実験例9]
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(A)(20.9mg、0.05mmol)をトルエン(5mL)中で10分間攪拌した。ここに、1−ヘキセン(0.85g、10.08mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で3時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(2.4mL)を加えて重合を停止した。メタノール(73mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより粘性オイルとしてポリ(1−ヘキセン)を得た(0.78g、収率91.9%)。得られたポリ(1−ヘキセン)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=14,900、Mw/Mn=1.81であった。
【0085】
[実験例10]
窒素下、室温でトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(25.6mg、0.05mmol)、チタン錯体(A)(20.9mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、1−ヘキセン(0.85g、10.13mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で3時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.5mL)を加えて重合を停止した。メタノール(135.7mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより粘性オイルとしてポリ(1−ヘキセン)を得た(0.58g、収率68.4%)。得られたポリ(1−ヘキセン)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=14,600、Mw/Mn=1.86であった。
【0086】
[実験例11]
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(B)(22.3mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、1−ヘキセン(1.69g、20.04mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で1時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.6mL)を加えて重合を停止した。メタノール(137mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより粘性オイルとしてポリ(1−ヘキセン)を得た(1.63g、収率96.6%)。得られたポリ(1−ヘキセン)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=24,500、Mw/Mn=1.90であった。
【0087】
[実験例12]
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、ジメチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジメチルチタニウム(17.3mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で5分間攪拌した。ここに、1−ヘキセン(0.84g、9.99mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で6時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.6mL)を加えて重合を停止した。メタノール(136mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより粘性オイルとしてポリ(1−ヘキセン)を得た(0.75g、収率88.6%)。得られたポリ(1−ヘキセン)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=3,710、Mw/Mn=1.59であった。
【0088】
[実験例13]
「1−オクテンの重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(B)(22.3mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、1−オクテン(2.25g、20.01mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で1時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.6mL)を加えて重合を停止した。メタノール(137mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより粘性オイルとしてポリ(1−オクテン)を得た(2.23g、収率99.5%)。得られたポリ(1−オクテン)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=30,500、Mw/Mn=1.95であった。
【0089】
[実験例14]
「スチレンの重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(A)(20.9mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、スチレン(1.04g、9.94mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で10分重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.5mL)を加えて重合を停止した。メタノール(135mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより淡黄色固体としてポリスチレンを得た(0.79g、収率76.3%)。得られたポリスチレンは、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=6,500、Mw/Mn=3.77であった。
【0090】
[実験例15]
「1−ヘキセン/スチレンの共重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(A)(20.9mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、スチレン(1.06g、10.19mmol)及び1−ヘキセン(0.84g、10.01mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で10分重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.5mL)を加えて重合を停止した。重合停止時の1−ヘキセン転化率は91%、スチレンの転化率は99%であった。メタノール(136mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより淡黄色固体として1−ヘキセン/スチレン共重合体を得た(1.16g、収率60.9%)。得られたポリマーは、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=3,450、Mw/Mn=2.19であった。
【0091】
[実験例16]
「ノルボルネンの重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(A)(20.9mg、0.05mmol)をトルエン(6mL)中で10分間攪拌した。ここに、ノルボルネン(0.94g、10.04mmol)のトルエン(3mL)溶液を一気に加えて重合を開始した。室温で30分重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.6mL)を加えて重合を停止した。メタノール(137mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより淡黄色固体としてポリノルボルネンを得た(14.3mg、収率1.5%)。得られたポリノルボルネンは、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=1,610、Mw/Mn=1.54であった。
【0092】
[実験例17]
「1−ヘキセン/ノルボルネンの重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(A)(20.9mg、0.05mmol)をトルエン(6mL)中で10分間攪拌した。ここに、ノルボルネン(0.94g、10.02mmol)のトルエン(3mL)溶液及び1−ヘキセン(0.86g、10.19mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で30分重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.5mL)を加えて重合を停止した。重合停止時の1−ヘキセン転化率は61%、ノルボルネンの転化率は35%であった。メタノール(136mL)を加えて1時間攪拌した後、上澄みを除去することによりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより黄色固体として1−ヘキセン/ノルボルネン共重合体を得た(0.23g、収率12.7%)。得られたポリマーは、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=3,400、Mw/Mn=1.75であった。
【0093】
<アクリル酸エステル重合体の製造方法>
【0094】
分子量及び分子量分布の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって次の方法で行った。
装置:HLC−8120GPC(RI)
カラム:TSKgel、GMH HR−M
流量:0.5mL/min
測定温度:40℃
移動相:THF
標準物質:ポリスチレン
【0095】
立体規則性の測定はプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)によって公知の文献(例えば、Organometallics 2007,26,187−195)に従って行った。
装置:日本電子社製 EX270、又は、Bruker社製 DPX−300
試料セル:5mmΦチューブ
測定溶媒:CDCl
試料濃度:30mg/0.5mL(CDCl
測定温度:室温(約25℃)
測定パラメータ:5mmΦプローブ、MENUF NON、OBNUC H、積算回数16回
パルス角度:45度
繰り返し時間:ACQTM 3秒、PD 4秒
内部標準:CDCl(7.26ppm)
【0096】
[実験例18]
「メチルメタクリレートの重合」
窒素下、室温でイオン錯体(A)(46.5mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、メチルメタクリレート(1.01g、10.06mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で6時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.6mL)を加えて重合を停止した。メタノール(137mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより白色固体としてポリ(メチルメタクリレート)を得た(0.92g、収率91.0%)。得られたポリ(メチルメタクリレート)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=18,100、Mw/Mn=1.12、立体規則性rr/mr/mm=68.1/29.2/2.7であった。
【0097】
[実験例19]
窒素下、室温でトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(15.4mg、0.03mmol)、チタン錯体(A)(12.6mg、0.03mmol)をトルエン(6mL)中で10分間攪拌した。ここに、メチルメタクリレート(1.18g、11.79mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で6時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(6.0mL)を加えて重合を停止した。メタノール(120mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより白色固体としてポリ(メチルメタクリレート)を得た(0.89g、収率75.4%)。得られたポリ(メチルメタクリレート)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=54,800、Mw/Mn=1.13、立体規則性rr/mr/mm=70.9/27.6/1.5であった。
【0098】
[実験例20]
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(A)(20.9mg、0.05mmol)をトルエン(11mL)中で10分間攪拌し、40℃に昇温した。ここに、メチルメタクリレート(0.99g、9.89mmol)を一気に加えて重合を開始した。40℃で3時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(5.4mL)を加えて重合を停止した。メタノール(163mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより白色固体としてポリ(メチルメタクリレート)を得た(0.93g、収率93.5%)。得られたポリ(メチルメタクリレート)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=18,700、Mw/Mn=1.12、立体規則性rr/mr/mm=67.9/28.9/3.2であった。
【0099】
[実験例21]
窒素下、室温でN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(40.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(A)(20.9mg、0.05mmol)をトルエン(11mL)中で10分間攪拌し、40℃に昇温した。ここに、メチルメタクリレート(0.99g、9.89mmol)を一気に加えて重合を開始した。40℃で3時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(5.4mL)を加えて重合を停止した。メタノール(162mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより白色固体としてポリ(メチルメタクリレート)を得た(0.88g、収率89.3%)。得られたポリ(メチルメタクリレート)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=17,900、Mw/Mn=1.14、立体規則性rr/mr/mm=68.3/28.5/3.2であった。
【0100】
[実験例22]
窒素下、室温でトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(25.6mg、0.05mmol)、ジメチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジベンジルチタニウム(28.5mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、メチルメタクリレート(1.01g、10.08mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で6時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.6mL)を加えて重合を停止した。メタノール(137mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより淡黄色固体としてポリ(メチルメタクリレート)を得た(0.85g、収率84.1%)。得られたポリ(メチルメタクリレート)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=36,700、Mw/Mn=1.30、立体規則性rr/mr/mm=68.4/28.8/2.8であった。
【0101】
[実験例23]
窒素下、室温でトリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(25.6mg、0.05mmol)、ジエチルシリレン(2,3,4,5−テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)ジベンジルチタニウム(29.9mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、メチルメタクリレート(1.01g、10.09mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で6時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.6mL)を加えて重合を停止した。メタノール(137mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより淡黄色固体としてポリ(メチルメタクリレート)を得た(0.89g、収率88.4%)。得られたポリ(メチルメタクリレート)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=41,000、Mw/Mn=1.33、立体規則性rr/mr/mm=71.2/26.7/2.1であった。
【0102】
[実験例24]
「シクロヘキシルメタクリレートの重合」
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(A)(20.9mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、シクロヘキシルメタクリレート(1.68g、9.99mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で6時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.6mL)を加えて重合を停止した。メタノール(137mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより淡黄色固体としてポリ(シクロヘキシルメタクリレート)を得た(1.49g、収率88.4%)。得られたポリ(シクロヘキシルメタクリレート)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=25,500、Mw/Mn=1.11であった。
【0103】
[実験例25]
窒素下、室温でトリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(46.1mg、0.05mmol)、チタン錯体(B)(22.3mg、0.05mmol)をトルエン(9mL)中で10分間攪拌した。ここに、シクロヘキシルメタクリレート(1.69g、10.04mmol)を一気に加えて重合を開始した。室温で6時間重合を行い、塩酸のメタノール溶液(5wt%)(4.6mL)を加えて重合を停止した。メタノール(137mL)を加えて1時間攪拌した後、濾過によりポリマーを得た。得られたポリマーを真空乾燥(80℃、3時間)することにより淡黄色固体としてポリ(シクロヘキシルメタクリレート)を得た(1.36g、収率80.7%)。得られたポリ(シクロヘキシルメタクリレート)は、ポリスチレン換算重量平均分子量Mw=28,900、Mw/Mn=1.16であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、Mは元素の周期律表の第4族元素を表し、Aは元素の周期律表の第14族元素を表し、Dは元素の周期律表の第16族元素を表し、Cpはシクロペンタジエニル型アニオン骨格を有する基を表し、Eは対アニオンを表し、R、R、R、R、R及びRは同一又は相異なり、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基、炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたシリル基、炭素原子数1〜20のアルコキシ基、炭素原子数6〜20のアリールオキシ基、炭素原子数7〜20のアラルキルオキシ基又は炭素原子数1〜20の炭化水素で置換されたアミノ基を表し、
ここで、R〜Rにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基又は炭化水素は、ハロゲン原子で置換されていてもよい、
とRは結合して環を形成していてもよく、RとR、RとR、RとRは、それぞれ任意に結合して環を形成していてもよく、
は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、又は炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、
ここで、Xにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で示される遷移金属イオン錯体。
【請求項2】
Dが酸素原子である請求項1に記載の遷移金属イオン錯体。
【請求項3】
Mがチタン原子である請求項1又は2に記載の遷移金属イオン錯体。
【請求項4】
がアルキル基である請求項1から3のいずれか一項に記載の遷移金属イオン錯体。
【請求項5】
Eがホウ素化合物である請求項1から4のいずれか一項に記載の遷移金属イオン錯体。
【請求項6】
Eがトリス(ペンタフルオロフェニル)メチルボレート又はテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである請求項1から4のいずれか一項に記載の遷移金属イオン錯体。
【請求項7】
Cpが置換もしくは無置換のシクロペンタジエニル基である請求項1から6のいずれか一項に記載の遷移金属イオン錯体。
【請求項8】
式(2)

(式中、M、A、D、Cp、R〜R及びXは請求項1に記載されたのと同じ意味を表し、
は炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数7〜20のアラルキル基を表し、
ここで、Xにおいて、アルキル基、アリール基、アラルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で示される遷移金属錯体と下記化合物(B1)〜(B3)からなる群から選ばれる1種以上のホウ素化合物とを接触させることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の遷移金属イオン錯体の製造方法。
(B1)式 BQ
(B2)式 G(BQで表されるホウ素化合物;
(B3)式 (L−H)(BQで表されるホウ素化合物
(式中、Bは3価の原子価状態のホウ素原子を表し、Q、Q、Q及びQはそれぞれ独立にハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、置換シリル基、アルコキシ基又は2置換アミノ基を表し、Gは無機又は有機のカチオンを表し、Lは中性ルイス塩基を表す。)
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の遷移金属イオン錯体存在下、オレフィンを重合させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の遷移金属イオン錯体存在下、(メタ)アクリル酸エステルを重合させることを特徴とする(メタ)アクリル酸エステル重合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−67757(P2009−67757A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240619(P2007−240619)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】