説明

遷移金属化合物、オレフィン重合用触媒、およびポリオレフィンの製造方法

【課題】 マクロモノマーとして利用可能なポリオレフィンを製造することができるオレフィン重合用触媒を提供する。
【解決手段】 遷移金属化合物(A)(例えば、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチレンインデニル)ジリコニウムジクロリド)、遷移金属化合物(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物(B)および有機アルミニウム化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する遷移金属化合物、その遷移金属化合物を用いることを特徴とするオレフィン重合用触媒、およびポリオレフィンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンの成形加工性を改良する手法として、(イ)従来のチーグラー触媒を用いた多段重合法により分子量分布を広げる方法(例えば、特許文献1〜3参照)、(ロ)伝統的なCr系触媒を用いて長鎖分岐を有するポリエチレンを製造する方法、(ハ)特定のメタロセン触媒を用いてエチレンを重合し、長鎖分岐を有するポリエチレンを製造する方法(例えば、特許文献4参照)、(ニ)特定のメタロセン触媒を用いてエチレンとマクロモノマーを完全に共重合させ、長鎖分岐を有するポリエチレンを製造する方法(例えば、特許文献5参照)、(ホ)エチレン・マクロモノマー共重合体に線状ポリエチレンをブレンドする方法(例えば、特許文献6参照)などが提案されている。しかし、(イ)、(ロ)および(ハ)の方法で得られるポリエチレンの成型加工性は未だ十分ではない。また、(イ)および(ロ)の方法で得られるポリエチレンに関しては、分子量分布が広がることにより、機械強度が低下するという問題点がある。さらに、(ニ)および(ホ)の方法で得られるポリエチレンに関しては、粒子形状に問題があり、スラリー法プロセスで製造することが困難である。
【0003】
一方、オレフィンの重合によりポリオレフィンを製造する方法として、遷移金属化合物および有機金属化合物の組み合わせからなる触媒系を用いることはすでに知られており、メタロセンとメチルアルミノキサンを用いたメタロセン触媒が、オレフィン系重合体を製造する際に、高い活性を示すことを開示している(例えば、特許文献7参照)。
【0004】
メタロセン触媒は、メタロセン化合物の構造を変えることで、その重合性能が大きく変化させることが可能であり、得られるポリマーの性質をコントロールすることが可能であるため、様々なメタロセン化合物が合成され、オレフィン重合用触媒の構成成分として用いる検討が行われている(例えば、非特許文献1参照)。たとえば、シクロペンタジエニル基とインデニル基をイソプロピレン架橋で結合したジルコニウム錯体を用いた分岐状ポリエチレンの製造方法に関する技術が開示されている(特許文献8参照)。また、シクロペンタジエニル基の特定部位に置換基を有する錯体をオレフィン重合触媒に用いた技術が開示されている(特許文献9〜11参照)。さらに、特定の部位に置換基を有するインデニル基を用いた錯体をオレフィン重合触媒に用いた技術が開示されている(特許文献12参照)。
【0005】
メタロセン触媒の助触媒成分についても検討が行われており、メチルアルミノキサンに代わる助触媒として、有機カチオンでイオン交換した粘土化合物が開示され、スラリー重合プロセスでの高い重合活性と良好なモルフォロジーを有するポリマーの製造が行われている(例えば、特許文献13〜15参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平2−53811号公報
【特許文献2】特開平2−132109号公報
【特許文献3】特開平10−182742号公報
【特許文献4】米国特許第5,272,236号明細書
【特許文献5】特表平8−502303号公報
【特許文献6】特表2001−511212号公報
【特許文献7】特開昭58−19309号公報
【特許文献8】特開平05−43619号公報
【特許文献9】特許第3192186号公報
【特許文献10】特許第33205384号公報
【特許文献11】特許第3537234号公報
【特許文献12】特許第3717542号公報
【特許文献13】特開平7−224106号公報
【特許文献14】特開平10−324708号公報
【特許文献15】特開平11−335408号公報
【非特許文献1】Chem.Rev.,100,1205(2000).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ポリオレフィンを効率よく製造することが可能な遷移金属化合物、オレフィン重合触媒を提供すること、およびそれを用いるポリオレフィンの製造方法を提供することにある。特に、マクロモノマーとして有用なポリオレフィンを効率よく製造することが可能なオレフィン重合触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討の結果、新規な遷移金属化合物をオレフィン重合用触媒の構成成分として用い、これに遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物、および有機アルミニウム化合物を組み合わせることで、マクロモノマーとして有用なポリオレフィンを効率よく製造することが可能なオレフィン重合触媒を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、一般式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。)で表される遷移金属化合物(A)、並びに遷移金属化合物(A)、遷移金属化合物(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物(B)および有機アルミニウム化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒を提供するものである。さらに本発明は、該オレフィン重合用触媒を用いてオレフィン重合を行うことを特徴とするポリオレフィンの製造方法を提供するものである。
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0013】
一般式(1)で表される遷移金属化合物は、(置換)シクロペンタジエニル基と7−位に置換基を有する置換インデニル基をケイ素原子で架橋した配位子を有することを特徴とする。
【0014】
一般式(1)中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xはそれぞれ独立して水素原子、又は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基やそれらの異性体置換基、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ビフェニレニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などの炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、又はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基などの炭素数1〜20のアルコキシ基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などの炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基、又はトリメチルシリル基、トリtert−ブチルシリル基、ジtert−ブチルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基などの炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、又はメトキシメチレン基、エトキシメチレン基などの炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、又はジメチルアミノメチレン基、ジエチルアミノメチレン基などの炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基、又はトリメチルシリルメチレン基、tert−ブチルジメチルシリルメチレン基などの炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基やそれらの異性体置換基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などの炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、又はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基などの炭素数1〜20のアルコキシ基、又はトリメチルシリル基、トリtert−ブチルシリル基、ジtert−ブチルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基などの炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、又はメトキシメチレン基、エトキシメチレン基などの炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、又はジメチルアミノメチレン基、ジエチルアミノメチレン基などの炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基、又はトリメチルシリルメチレン基、tert−ブチルジメチルシリルメチレン基などの炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。Rは、それぞれ独立して水素原子、又は塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基やそれらの異性体置換基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などの炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、又はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基などの炭素数1〜20のアルコキシ基、又はトリメチルシリル基、トリtert−ブチルシリル基、ジtert−ブチルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基などの炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、又はメトキシメチレン基、エトキシメチレン基などの炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、又はジメチルアミノメチレン基、ジエチルアミノメチレン基などの炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基、又はトリメチルシリルメチレン基、tert−ブチルジメチルシリルメチレン基などの炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。Rは、それぞれ独立して水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基やそれらの異性体置換基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニレニル基などの炭素数1〜20の炭化水素基、又はジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などの炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、又はメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソプロポキシ基、フェノキシ基などの炭素数1〜20のアルコキシ基、又はトリメチルシリル基、トリtert−ブチルシリル基、ジtert−ブチルメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、フェニルジメチルシリル基などの炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、又はメトキシメチレン基、エトキシメチレン基などの炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、又はジメチルアミノメチレン基、ジエチルアミノメチレン基などの炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基、又はトリメチルシリルメチレン基、tert−ブチルジメチルシリルメチレン基などの炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。
【0015】
本発明の一般式(1)で表される遷移金属化合物の合成方法として、1)7−位に置換基を有する置換インデンをリチオ化した後、2)ジクロロケイ素化合物と反応させ、3)さらにシクロペンタジエニルリチウムと反応さえることで配位子の合成を行い、4)この配位子をリチオ化、ZrClと反応させる方法などを挙げることができるが、この方法に限定するものではない。
【0016】
本発明に用いる一般式(1)で表される遷移金属化合物の具体的な例として、次に挙げる化合物を例示することができる。遷移金属化合物(A)の具体例として、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(7−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(7−エチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(7−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−メトキシ−7−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−ジメチルアミノ−7−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2−トリメチルシリル−7−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(7−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(7−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4−イソプロピル−7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4−フェニル−7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4−メトキシ−7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4−ジメチルアミノ−7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(4−トリメチルシリル−7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(3,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(シクロペンタジエニル)(2,3,4,7−テトラメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(3,4−ビス(トリメチルシリル)シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(4−フェニル−7−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物、ジルコニウム原子をチタン原子、ハフニウム原子に変えた化合物や上記遷移金属化合物のジクロロ体をジメチル体、ジエチル体、ジヒドロ体、ジフェニル体、ジベンジル体に変えた化合物などを例示することができるが、これらに限定するものではない。
【0017】
遷移金属化合物(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物(B)は、本発明におけるオレフィン重合用触媒の構成成分の一つであり、一般式(1)で表される遷移金属化合物(A)および有機アルミニウム化合物(C)と共に用いられる。
【0018】
遷移金属化合物(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物(B)とは、遷移金属化合物(A)、または遷移金属化合物(A)と有機アルミニウム化合物(C)との反応生成物と反応することにより、カチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物を示している。生成したカチオン性遷移金属化合物は、オレフィンを重合することが可能な重合活性種として作用する。遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物は、重合活性種を形成した後、生成したカチオン性遷移金属化合物に対して弱く配位または相互作用するものの、該活性種と直接反応しない化合物を提供する化合物であることが望ましい。
【0019】
遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物(B)として、変性粘土化合物が好ましいが、これらに限定されるものではない。変性粘度化合物は、粘土化合物を有機化合物処理することにより得られる。用いる粘土化合物はカチオン交換能を有するものが好ましい。
【0020】
用いる粘土化合物は、微結晶状のケイ酸塩を主成分とする微粒子である。粘土化合物の大部分は、その構造上の特色として層状構造を成しており、層の中に種々の大きさの負電荷を有する。これらの粘土化合物は、一般に層電荷の大きさで、パイロフィライト、カオリナイト、ディッカイトおよびタルク群(化学式当たりの負電荷がおよそ0)、スメクタイト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.25〜0.6)、バーミキュライト群(化学式当たりの負電荷がおよそ0.6〜0.9)、雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ1)、脆雲母群(化学式当たりの負電荷がおよそ2)に分類されている。ここで示した各群には、それぞれ種々の粘土化合物が含まれるが、スメクタイト群に属する粘土化合物としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。また、これらの粘土化合物は天然に存在するが、人工合成により不純物の少ないものを得ることができる。本発明においては、ここに示した天然の粘土化合物および人工合成により得られる粘土化合物のすべてが使用可能であり、また、上記に例示がないものでも粘土化合物の定義に属するものはすべて用いることができる。さらに、上記粘土化合物は複数混合して用いることもできる。
【0021】
有機化合物処理された変性粘土化合物は、粘土化合物層間に有機イオンを導入し、イオン複合体を形成する。有機化合物処理で用いられる有機化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0022】
[Ry−1H][A] (2)
一般式(2)中、[Ry−1H]はカチオンであり、Hはプロトンであり、Mは周期表の第15族または第16族から選ばれる元素であり、Rは炭素数1〜30の炭化水素基であり、Rは各々独立して水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基であり、yは、Mが第15族元素の時y=3であり、Mが第16族元素の時y=2であり、[A]はアニオンであり、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、過塩素酸イオン、シュウ酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオンまたはヘキサフルオロリン酸イオンを用いることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、aおよびbは電荷が釣り合うように選ばれた整数である。
【0023】
式(2)中のMは、窒素原子、酸素原子、硫黄原子またはリン原子を例示することができる。RおよびRの炭素数1〜30の炭化水素基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、ネオヘキシル基、2,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、4−メチル−2−ペンチル、3,3−ジメチル−2−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、2,3−ジメチル−2−ブチル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、1,5−ジメチルヘキシル基、1−メチルヘプチル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2−(1−シクロヘキセニル)エチル基、n−ノニル基、n−デシル基、イソデシル基、ゲラニル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基、n−ヘンエイコシル基、n−ドコシル基、n−トリコシル基、オレイル基、ベヘニル基、フェニル基、を例示することができる。
【0024】
式(2)で表される化合物のうち、Mが窒素原子であるものとしては、メチルアミン塩酸塩、エチルアミン塩酸塩、n−プロピルアミン塩酸塩、イソプロピルアミン塩酸塩、n−ブチルアミン塩酸塩、イソブチルアミン塩酸塩、tert−ブチルアミン塩酸塩、n−ペンチルアミン塩酸塩、イソペンチルアミン塩酸塩、2−メチルブチルアミン塩酸塩、ネオペンチルアミン塩酸塩、tert−ペンチルアミン塩酸塩、n−ヘキシルアミン塩酸塩、イソヘキシルアミン塩酸塩、n−ヘプチルアミン塩酸塩、n−オクチルアミン塩酸塩、n−ノニルアミン塩酸塩、n−デシルアミン塩酸塩、n−ウンデシルアミン塩酸塩、n−ドデシルアミン塩酸塩、n−テトラデシルアミン塩酸塩、n−ヘキサデシルアミン塩酸塩、n−オクタデシルアミン塩酸塩、アリルアミン塩酸塩、シクロペンチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩、ジエチルアミン塩酸塩、ジアリルアミン塩酸塩、トリメチルアミン塩酸塩、トリ−n−ブチルアミン塩酸塩、トリアリルアミン塩酸塩、ヘキシルアミン塩酸塩、2−アミノヘプタン塩酸塩、3−アミノヘプタン塩酸塩、n−ヘプチルアミン塩酸塩、1,5−ジメチルヘキシルアミン塩酸塩、1−メチルヘプチルアミン塩酸塩、n−オクチルアミン塩酸塩、tert−オクチルアミン塩酸塩、ノニルアミン塩酸塩、デシルアミン塩酸塩、ウンデシルアミン塩酸塩、ドデシルアミン塩酸塩、トリデシルアミン塩酸塩、テトラデシルアミン塩酸塩、ペンタデシルアミン塩酸塩、ヘキサデシルアミン塩酸塩、ヘプタデシルアミン塩酸塩、オクタデシルアミン塩酸塩、ノナデシルアミン塩酸塩、シクロヘキシルアミン塩酸塩、シクロヘプチルアミン塩酸塩、2−メチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、3−メチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、4−メチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、シクロドデシルアミン塩酸塩、2−(1−シクロヘキセニル)エチルアミン塩酸塩、ゲラニルアミン塩酸塩、N−メチルヘキシルアミン塩酸塩、ジヘキシルアミン塩酸塩、ビス(2−エチルヘキシル)アミン塩酸塩、ジオクチルアミン塩酸塩、ジデシルアミン塩酸塩、N−メチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、N−エチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、N−イソプロピルシクロヘキシルアミン塩酸塩、N−tert−ブチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、N−アリルシクロヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルオクチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルウンデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルドデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−テトラデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−ヘキサデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−オクタデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−エイコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチル−n−ドコシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルオレイルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルベヘニルアミン塩酸塩、トリヘキシルアミン塩酸塩、トリイソオクチルアミン塩酸塩、トリオクチルアミン塩酸塩、トリイソデシルアミン塩酸塩、トリドデシルアミン塩酸塩、N−メチル−N−オクタデシル−1−オクタデシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルシクロヘキシルメチルアミン塩酸塩、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン塩酸塩、ピロリジン塩酸塩、ピペリジン塩酸塩、2,5−ジメチルピロリジン塩酸塩、2−メチルピペリジン塩酸塩、3−メチルピペリジン塩酸塩、4−メチルピペリジン塩酸塩、2,6−ジメチルピペリジン塩酸塩、3,3−ジメチルピペリジン塩酸塩、3,5−ジメチルピペリジン塩酸塩、2−エチルピペリジン塩酸塩、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン塩酸塩、1−メチルピロリジン塩酸塩、1−メチルピペリジン塩酸塩、1−エチルピペリジン塩酸塩、1−ブチルピロリジン塩酸塩、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン塩酸塩等の脂肪族アミンの塩酸塩、アニリン塩酸塩、N−メチルアニリン塩酸塩、N−エチルアニリン塩酸塩、N−アリルアニリン塩酸塩、o−トルイジン塩酸塩、m−トルイジン塩酸塩、p−トルイジン塩酸塩、N,N−ジメチルアニリン塩酸塩、N−メチル−o−トルイジン塩酸塩、N−メチル−m−トルイジン塩酸塩、N−メチル−p−トルイジン塩酸塩等の芳香族アミンの塩酸塩および上記化合物の塩酸塩をフッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩または硫酸塩に置き換えた化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
式(2)で表される化合物のうち、Mが酸素原子であるものとしては、メチルエーテル塩酸塩、エチルエーテル塩酸塩、n−ブチルエーテル塩酸塩、テトラヒドロフラン塩酸塩、フェニルエーテル塩酸塩等の化合物および上記化合物の塩酸塩をフッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩または硫酸塩に置き換えた化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
式(2)で表される化合物のうち、Mが硫黄原子であるものとしては、フッ化ジエチルスルホニウム、塩化ジエチルスルホニウム、臭化ジエチルスルホニウム、ヨウ化ジエチルスルホニウム、フッ化ジメチルスルホニウム、塩化ジメチルスルホニウム、臭化ジメチルスルホニウム、ヨウ化ジメチルスルホニウムを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
式(2)で表される化合物のうち、Mがリン原子であるものとしては、トリフェニルホスフィン塩酸塩、トリ(o−トリル)ホスフィン塩酸塩、トリ(p−トリル)ホスフィン塩酸塩、トリメシチルホスフィン塩酸塩等の化合物および上記化合物の塩酸塩をフッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩または硫酸塩に置き換えた化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
有機化合物処理においては、粘土化合物の濃度は0.1〜30重量%、処理温度は0〜150℃の条件を選択して処理を行うことが好ましい。また、有機化合物は固体として調製して溶媒に溶解させて使用しても良いし、溶媒中での化学反応により有機化合物の溶液を調製してそのまま使用しても良い。粘土化合物と有機化合物の反応量比については、粘土化合物の交換可能なカチオンに対して当量以上の有機化合物を用いることが好ましい。処理溶媒としては、ペンタン、ヘキサンもしくはヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼンもしくはトルエン等の芳香族炭化水素類、エチルアルコールもしくはメチルアルコール等のアルコール類、エチルエーテルもしくはn−ブチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレンもしくはクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、アセトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランまたは水等を用いることができるが、好ましくは、アルコール類または水を単独もしくは溶媒の一成分として用いることである。
【0029】
有機アルミニウム化合物(C)は、本発明のオレフィン重合用触媒の構成成分であり、遷移金属化合物(A)、および遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物(B)と共に用いられる。
【0030】
有機アルミニウム化合物(C)は、遷移金属化合物をアルキル化することが可能な化合物が好ましく、具体的にはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0031】
本発明における遷移金属化合物(A)((A)成分)と遷移金属化合物(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物(B)((B)成分)、および有機アルミニウム化合物(C)((C)成分)の比に制限はないが、次に示す比であることが望ましい。
【0032】
(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(C成分)=100:1〜1:100000の範囲にあり、特に1:1〜1:10000の範囲であることが好ましく、(A)成分と(B)成分の重量比が(A成分):(B成分)=10:1〜1:10000にあり、特に3:1〜1:1000の範囲であることが好ましい。
【0033】
本発明のオレフィン重合用触媒は、担体に担持させてなる固体触媒として用いて重合を行ってもよい。担体に特に制限がないが、無機酸化物であることが好ましい。無機酸化物の具体的な例としては、マグネシア、カルシア等のアルカリ土類金属の酸化物、アルミナ、シリカ等の典型元素の酸化物、酸化セリウム、酸化サマリウム等のランタニド系稀土類元素の酸化物、酸化アクチニウム、酸化トリウム等のアクチニド系稀土類の酸化物、チタニア、ジルコニア、酸化銅、酸化銀等の遷移金属元素の酸化物、シリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア等の複合酸化物が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0034】
(A)成分、(B)成分および(C)成分からなるオレフィン重合用触媒を調製する方法に関して制限はなく、調製の方法として、各成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法などを挙げることができる。また、これらの成分を反応させる順番に関しても制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も制限はない。また、各成分を2種以上用いてオレフィン重合用触媒を調製することも可能である。
【0035】
本発明における触媒は、通常の重合プロセス、すなわちスラリー重合、気相重合、高圧重合、溶液重合、塊状重合のいずれのプロセスにも使用できる。
【0036】
本発明において重合とは単独重合のみならず共重合も意味し、これら重合により得られるポリオレフィンは、単独重合体のみならず共重合体も含む意味で用いられる。
【0037】
本発明におけるオレフィンの重合は、気相でも液相でも行うことができ、特に気相で重合を行う場合には、粒子形状の整ったポリオレフィンを効率よく安定的に生産することができる。また、重合を液相で行う場合、用いる溶媒は、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等が挙げられ、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、1−ヘキセンなどのオレフィンそれ自身を溶媒として用いることもできる。
【0038】
本発明に用いるオレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン、スチレンおよびスチレン誘導体、ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役および非共役ジエン、シクロブテン等の環状オレフィン等が挙げられる。さらに、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように、3種以上の成分を混合して重合することもできる。
【0039】
本発明の方法を用いてポリオレフィンを製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、重合温度は−100〜300℃、重合時間は10秒〜20時間、重合圧力は常圧〜3000kg/cm2Gの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるポリオレフィンは、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0040】
本発明で製造するポリオレフィンは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が1000以上500000以下、好ましくは5000以上100000以下であり、重量平均分子量(Mw)とMnの比(Mw/Mn)は2以上7以下であり、好ましくは2以上5以下であることを特徴とする。
【0041】
本発明の方法により得られるポリオレフィンは、ポリマーの末端に二重結合(ビニル末端)を有するポリマーであり、他のオレフィンとの共重合を行うことが可能なマクロモノマーとして用いることが可能である。本発明により得られるポリオレフィンをマクロマーとして用いる場合、本発明で得られるポリオレフィンを単離した後、他のオレフィンと共重合を行う方法、本発明で得られるポリオレフィンの製造と、他のオレフィンとの共重合を同時に行う方法などを挙げることができる。マクロマーとして用いるポリオレフィンは、分子量が小さすぎると、他のオレフィンとの共重合により得られるポリオレフィンの溶融流動性、溶融張力など成形加工性が発現しない。また分子量が大きすぎると、オレフィンとの共重合においてマクロモノマーが取り込まれにくくなるため、適切な分子量が必要である。本発明で得られるポリオレフィンは、マクロマーとして使用するポリオレフィンとして適した分子量を有している。
【0042】
ポリオレフィンの末端構造は、H−NMR、13C−NMR、またはFT−IRなどでその構造と存在量を求めることが可能である。例えば、FT−IRでは、末端メチル基は1378cm−1、ビニル末端は909cm−1、トランスビニレンは965cm−1、ビニリデンは888cm−1に吸収を有することから、これらの末端構造を1000炭素あたりの存在量として算出することが可能である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、マクロモノマーとして利用可能なポリオレフィンを効率よく製造することが可能である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、重合操作、反応および溶媒精製は、すべて不活性ガス下で行った。また、反応に用いた溶媒などはすべて予め公知の方法で精製、乾燥、脱酸素を行ったものを用いた。遷移金属化合物の同定は核磁気共鳴装置(日本電子、GSX−270)を用いて行った。得られたポリマーの融点Tm、融解熱ΔHは、DSC(示差走査熱量計)SEIKO SC−5000を用いて測定した。メルトインデックスMIおよびHLMIは、ASTM D1238条件に準ずる方法で測定した。数平均分子量(Mn)および重量平均分子量と数平均分子量の比(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては東ソー(株)製 HLC−8121GPC/HTを用い、カラムとしては東ソー(株)製 TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いて測定した。測定試料は1.0mg/mLの濃度で調製し、0.3mL注入して測定した。分子量の検量線は、ユニバーサルキャリブレーション法により、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正されている。なお、MwおよびMnは直鎖状ポリエチレン換算の値として求めた。ビニル末端などのポリマーの末端構造は、FT−IR(PERKIN ELMER社製SPECTRUM ONE)によって測定した。
【0045】
実施例1
[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成]
−78℃に冷却した2,4,7−トリメチルインデン(53.329g,338mmol)のTHF溶液(670mL)に、n−BuLiのヘキサン溶液(1.58mol/L,278mL,439mmol)をゆっくり滴下し、室温で終夜撹拌を行った。得られた反応混合物を、−78℃に冷却したジクロロジメチルシラン(204mL,1.60mol)のヘキサン溶液(2.4L)にゆっくり滴下した。室温で終夜撹拌した後、減圧下で溶媒を留去したところ、黄色オイルと無色の固体の混合物を得た。得られた反応混合物をTHFに溶かした後、シクロペンタジエン(62mL,744mmol)とn−BuLiのヘキサン溶液(1.58mol/L,445mL,676mmol)から調製したシクロペンタジエニルリチウムのTHF溶液(1200mL)をゆっくりと滴下した。そのまま終夜撹拌した後、反応混合物を1Nの塩酸水溶液(1L)にゆっくり加えた。ヘキサンで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した後、シリカゲルカラム(シリカゲル 100g,ヘキサン/塩化メチレン=5/1)で処理したところ、黄色のオイルとして配位子を得た(83.708g,298mmol)。
【0046】
上述の方法で得た配位子(7.01g,25mmol)をTHF(250mL)に溶かし、−78℃に冷却してn−BuLiのヘキサン溶液(1.52mol/L,36.2mL,55mmol)をゆっくり加えた。室温で終夜撹拌した後、減圧下で溶媒を留去後、トルエン(250mL)を加えて黄色懸濁液とした。この懸濁液を−78℃に冷却した後、四塩化ジルコニウム(5.792g,24.9mmol)のトルエンスラリー(30mL)を加えた。ゆっくりと昇温した後、室温で終夜撹拌を行った。セライト濾過を行うことで析出した固体を除去した後、濃縮後、上澄み液を除去し、得られた固体をヘキサンで洗浄することで、黄色の固体として目的化合物を得た(2.973g,6.74mmol,収率27%)。
【0047】
H−NMR(CDCl) δ=7.03(1H)、6.87−6.78(3H)、6.68(1H)、6.01(1H)、5.69(1H),2.59(3H)、2.44(3H)、2.36(3H)、1.09(3H)、0.98(3H).
実施例2
[変性粘土化合物Aの調製]
水350mLにエタノール150mLと37%濃塩酸8.3mLを加えた後、得られた溶液にN,N−ジメチルオクタデシルアミン 29.7g(0.1mol)を添加し、60℃に加熱することによって、N,N−ジメチルオクタデシルアミン塩酸塩溶液を調製した。この溶液にヘクトライト100gを加えた。この懸濁液を60℃で3時間撹拌し、上澄み液を除去した後、60℃の水1Lで洗浄した。その後、60℃、10−3torrで24時間乾燥し、ジェットミルで粉砕することによって、平均粒径5.2μmの変性粘土化合物Aを得た。
【0048】
[触媒調製]
上述の変性粘土化合物A(2.00g)にヘキサン(10mL)を加え、室温で30分撹拌を行った。一方、実施例1で合成したジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド(44.5mg、101mmol)のヘキサン溶液(22.3mL)にトリエチルアルミニウム(1.2mol/L、11.2mL)を加え、室温で1時間撹拌を行った後、この溶液20mLを変性ヘクトライトのヘキサン溶液にゆっくり加えた。60℃で3時間撹拌し、上澄み液を除去、固体を洗浄後、5%トリメチルアルミニウムのヘキサン溶液で希釈することで触媒懸濁液を得た。さらに触媒懸濁液をヘキサンで希釈することで、触媒スラリー(0.5mmolZr/L)の調製を行った。
【0049】
[エチレン重合]
2Lのオートクレーブに、ヘキサン1200mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.34mol/L)1.0mLを入れ、オートクレーブの内温を85℃に昇温した。[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.6mL(Zr:0.3μmol)を添加した後、エチレンを分圧が1.2MPaになるまでエチレンを加えて重合を行った。エチレンを連続的に供給して、エチレン分圧を1.2MPaに保ちながら90分間重合を行った。オートクレーブの内圧を脱圧後、濾過、乾燥することで368.4gのポリエチレンを得た。得られたポリエチレンのHLMIは2.11g/10min、Mnは54,000、Mw/Mnは4.63、Tmは134.9℃、ΔHは185mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.07個、トランスビニレンが0.10個、ビニリデンが0.01個、末端メチルは検出限界以下であった。
【0050】
実施例3
[エチレン/ブテン共重合]
2Lのオートクレーブに、ヘキサン1200mLとトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.34mol/L)1.0mLを入れ、オートクレーブの内温を75℃に昇温した。実施例2に示す[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.2mL(Zr:0.1μmol)を添加した後、ブテン18.1gとエチレンを分圧が1.2MPaになるまでエチレンを加えて重合を行った。エチレンを連続的に供給して、エチレン分圧を1.2MPaに保ちながら、重合温度75℃で22分間重合を行った。オートクレーブの内圧を脱圧後、濾過、乾燥することで39.6gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは1.15g/10min、HLMIは51.4g/10min、Mnは30,000、Mw/Mnは3.37、Tmは118.5℃、ΔHは126mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.11個、トランスビニレンが0.09個、末端メチルが8.45個、ビニリデンが0.02個であった。
【0051】
実施例4
[エチレン/ブテン共重合]
ブテンの添加量を9.11g、触媒スラリーの添加量を0.1mL(Zr:0.05μmol)とし、重合温度75℃で48分重合を行った以外、実施例3と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、39.0gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは0.32g/10min、HLMIは18.4g/10min、Tmは124.6℃、ΔHは155mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.08個、トランスビニレンが0.11個、末端メチルが4.58個、ビニリデンが0.01個であった。
【0052】
実施例5
[エチレン/ブテン共重合]
ブテンの添加量を27.3g、触媒スラリーの添加量を0.1mL(Zr:0.05μmol)とし、重合温度75℃で26分重合を行った以外、実施例3と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、40.1gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは0.93g/10min、HLMIは40.5g/10min、Tmは117.1℃、ΔHは146mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.13個、トランスビニレンが0.11個、末端メチルが10.6個、ビニリデンが0.03個であった。
【0053】
実施例6
[変性粘土化合物Bの調製]
実施例2の[変性粘土化合物Aの調製]に記載のヘクトライトの代わりに、酸変性モンモリロナイト(商品名:K500,日本活性白土社製)に代えた以外は、実施例2と同様の方法で平均粒系9.3μm変性粘土化合物Bを得た。
【0054】
[触媒調製]
実施例2の[触媒調製]に記載の変性粘土化合物Aの代わりに、変性粘土化合物Bを用いた以外は、実施例2と同様の方法で触媒スラリーの調製を行った。
【0055】
[エチレン重合]
実施例2の[エチレン重合]に記載の方法と同様の方法でエチレン重合を行い、70.4gのポリエチレンを得た。得られたポリエチレンのHLMIは0.19g/10min、Tmは134.5℃、ΔHは177mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.05個、トランスビニレンが0.06個、ビニリデンと末端メチルは検出限界以下であった。
【0056】
実施例7
[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成]
−78℃に冷却した4,7−トリメチルインデン(5.00g,34.7mmol)のTHF溶液(60mL)に、n−BuLiのヘキサン溶液(1.59mol/L,24mL,38mmol)をゆっくり滴下し、室温で終夜撹拌を行った。得られた反応混合物を、−78℃に冷却したジクロロジメチルシラン(21mL,174mmol)のヘキサン溶液(240mL)にゆっくり滴下した。室温で終夜撹拌した後、減圧下で溶媒を留去したところ、黄色オイルと無色の固体の混合物を得た。得られた反応混合物をTHFに溶かした後、シクロペンタジエン(6.9mL,83.3mmol)とn−BuLiのヘキサン溶液(1.59mol/L,44.0mL,69.4mmol)から調製したシクロペンタジエニルリチウムのTHF溶液(60mL)をゆっくりと滴下した。そのまま終夜撹拌した後、反応混合物を1Nの塩酸水溶液(300mL)にゆっくり加えた。ヘキサンで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去したところ、オレンジ色のオイルとして配位子を得た(8.80g,33.0mmol,収率95%)。
【0057】
上述の方法で得た配位子(4.00g,15mmol)をTHF(100mL)に溶かし、−78℃に冷却してn−BuLiのヘキサン溶液(1.52mol/L,21.7mL,33mmol)をゆっくり加えた。室温で終夜撹拌した後、減圧下で溶媒を留去後、トルエン(100mL)を加えて黄色懸濁液とした。この懸濁液を−78℃に冷却した後、四塩化ジルコニウム(3.50g,15mmol)のトルエンスラリー(20mL)を加えた。ゆっくりと昇温した後、室温で終夜撹拌を行った。セライト濾過を行うことで析出した固体を除去した後、濃縮後、上澄み液を除去し、得られた固体をヘキサンで洗浄することで、黄色の固体として目的化合物を得た(2.748g,6.44mmol,収率43%)。
【0058】
H−NMR(CDCl) δ=7.15(1H)、7.07(1H)、6.90−6.84(2H)、6.72(1H)、6.36(1H)、5.96(1H)、5.70(1H)、2.49(3H)、2.47(3H)、1.03(3H)、0.89(3H).
実施例8
[触媒調製]
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの代わりに、実施例7で得たジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド(42.7mg,100μmol)のヘキサン溶液(22.2mL)にトリエチルアルミニウム(1.2mol/L、11.2mL)を加えた溶液(20mL)を、変性ヘクトライトのヘキサン溶液に加えた以外は、実施例2と同様の方法で触媒スラリーの調製を行った。
【0059】
[エチレン重合]
実施例2と同様の方法でエチレン重合を行い、108.0gのポリエチレンを得た。得られたポリエチレンのMIは22.2g/10min、HLMIは277g/10min、Tmは133.2℃、ΔHは210mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.21個、トランスビニレンが0.22個、末端メチルとビニリデンは検出限界以下であった。
【0060】
実施例9
[エチレン/ブテン共重合]
実施例8に示す[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.4mL(Zr:0.2μmol)を用い、重合温度70℃で54分間重合を行った以外は、実施例3と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、39.4gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは27.9g/10min、Tmは117.8℃、ΔHは154mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.18個、トランスビニレンが0.15個、末端メチルが9.21個、ビニリデンが0.04個であった。
【0061】
実施例10
[エチレン/ブテン共重合]
実施例8に示す[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.3mL(Zr:0.15μmol)を用い、重合温度70℃で45分間重合を行った以外は、実施例5と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、43.6gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは72.4g/10min、Tmは113.7℃、ΔHは133mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.25個、トランスビニレンが0.12個、末端メチルが13.5個、ビニリデンが0.04個であった。
【0062】
実施例11
[ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)クロリドの合成]
−40℃に冷却したテトラメチルシクロペンタジエン(5.310g、36.9mmol)のジエチルエーテル/THF混合溶媒(193mL/40mL)に、n−BuLiのヘキサン溶液(1.52mol/L、30mL、45.6mmol)を加え、室温で終夜撹拌を行った後、−30℃に冷却したジクロロジメチルシラン(18mL,140mmol)のジエチルエーテル溶液(150mL)にゆっくり加えた。室温に昇温しながら終夜撹拌を行った後、減圧下で溶媒を留去したところ黄色オイルと無色の固体を得た。ペンタンで抽出を行い、減圧下でペンタンを留去したところ、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)クロリドを得た(7.621g,35.5mmol,収率96%)。
【0063】
[ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成]
−78℃に冷却した2,4,7−トリメチルインデン(6.595g,41.6mmol)のペンタン溶液(150mL)にn−BuLiのヘキサン溶液(1.52mol/L,30mL,45.6mmol)を加え、室温に戻した後、加熱還流を5時間行った。上澄み液を除去した後、減圧下で乾燥を行い、得られた固体をTHF(250mL)に溶かして、−75℃に冷却した。上述の方法で合成を行ったジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)クロリド(10.526g,49mmol)のTHF溶液(150mL)をゆっくり加え、室温で終夜撹拌を行った。反応混合物を1N塩酸に加えた後、ジエチルエーテルで抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥を行った。得られたオレンジ色オイルをヘキサンに溶かし、シリカゲルカラムを通して精製を行ったところ、黄色のオイルを得た(2.305g,6.8mmol)。黄色オイルは、しばらくの間、静置すると固化して、黄色の固体になった。
【0064】
この黄色固体(1.173g,3.49mmol)をトルエン/THF混合溶媒(63mL/7mL)に溶かし、−80℃に冷却した後、n−BuLiのヘキサン溶液(1.52mol/L,5.1mL,7.8mL)を加え、室温で終夜撹拌を行った。反応溶液を−80℃に冷却した後、四塩化ジルコニウム(0.8738g,3.74mmol)のトルエン懸濁液(30mL)を加え、ゆっくりと室温に昇温しながら終夜撹拌を行った。反応懸濁液を濾過した後、減圧下で溶媒を留去後、ヘキサンで洗浄を行い、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを得た(1.308g,2.34mmol,収率67%)。
【0065】
H−NMR(CDCl) δ=7.02〜6.96(2H),6.79(1H),2.53(3H),2.41(3H),2.37(3H),2.08(3H),1.98(3H),1.90(3H),1.77(3H),1.15(3H),1.13(3H).
実施例12
[触媒調製]
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの代わりに、実施例11で得たジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は、実施例2と同様の方法で触媒スラリーの調製を行った。
【0066】
[エチレン重合]
上述の[触媒調製]で調製した触媒スラリーを0.6mL(Zr:0.3μmol)用い、85℃で90分間重合を行った以外は、実施例2と同様の方法でエチレン重合を行い、66.6gのポリエチレンを得た。得られたポリエチレンのHLMIは0.269g/10min、Mnは63,800、Mw/Mnは5.82、Tmは134.2℃、ΔHは183mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.07個、トランスビニレンが0.04個、末端メチルとビニリデンは検出限界以下であった。
【0067】
実施例13
[エチレン/ブテン共重合]
実施例12に示す[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.6mL(Zr:0.3μmol)を用い、重合温度75℃で35分間重合を行った以外は、実施例3と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、58.8gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは0.01g/10min、HLMIは0.795g/10min、Mnは68,900、Mw/Mnは3.67、Tmは120.2℃、ΔHは132mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.09個、末端メチルが5.99個、ビニリデンは検出限界以下であった。
【0068】
実施例14
[エチレン/ブテン共重合]
実施例12に示す[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.6mL(Zr:0.3μmol)を用い、重合温度75℃で28分間重合を行った以外は、実施例5と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、51.9gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは0.01g/10min、HLMIは0.629g/10min、Mnは60,900、Mw/Mnは3.58、Tmは118.1℃、ΔHは125mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.10個、末端メチルが8.58個、ビニリデンは検出限界以下であった。
【0069】
実施例15
[ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成]
−78℃に冷却した4,7−ジメチルインデン(3.351g,23.3mmol)のヘキサン溶液(100mL)にn−BuLiのヘキサン溶液(1.52mol/L,16.8mL,25.5mmol)を加え、室温で終夜撹拌を行った。上澄み液を除去した後、THF(150mL)を加え、−60℃に冷却した。実施例11に示す方法で合成を行ったジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)クロリド(5.2306g,24.3mmol)のTHF溶液(50mL)をゆっくり加え、室温で2時間撹拌を行った。反応混合物を1N塩酸に加えた後、ヘキサンで抽出、飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥を行った。得られたオレンジ色オイルをヘキサンに溶かし、シリカゲルカラムを通して精製を行ったところ、黄色のオイルを得た(3.734g,11.6mmol)。
【0070】
この黄色オイル(2.140g,6.63mmol)をトルエン/THF混合溶媒(117mL/13mL)に溶かし、−75℃に冷却した後、n−BuLiのヘキサン溶液(1.52mol/L,9.6mL,14.6mmol)を加え、室温で終夜撹拌を行った。反応溶液を−80℃に冷却した後、四塩化ジルコニウム(1.575g,6.76mmol)のトルエン懸濁液(50mL)を加え、ゆっくりと室温に昇温しながら終夜撹拌を行った。減圧下で溶媒を留去した後、塩化メチレンで抽出し、減圧下で溶媒を留去後、残さをヘキサンで洗浄したところジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを得た(2.003g,4.14mmol,収率63%)。
【0071】
H−NMR(CDCl) δ=7.32(1H),7.00(1H),6.24(1H),2.52(3H),2.41(3H),2.04(3H),1.95(3H),1.94(3H),1.90(3H),1.10(3H),1.02(3H).
実施例16
[触媒調製]
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの代わりに、実施例15で得たジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(4,7−ジメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は、実施例2と同様の方法で触媒スラリーの調製を行った。
[エチレン重合]
上述の[触媒調製]で調製した触媒スラリーを0.4mL(Zr:0.2μmol)用い、85℃で90分間重合を行った以外は、実施例2と同様の方法でエチレン重合を行い、64.7gのポリエチレンを得た。得られたポリエチレンのMIは0.83g/10min、HLMIは15.6g/10min、Mnは34,100、Mw/Mnは3.4、Tmは135.7℃、ΔHは206mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.09個、トランスビニレンが0.11個、末端メチルとビニリデンは検出限界以下であった。
【0072】
実施例17
[エチレン/ブテン共重合]
実施例16に示す[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.4mL(Zr:0.2μmol)を用い、重合温度70℃で55分間重合を行った以外は、実施例3と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、56.7gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは0.14g/10min、HLMIは5.06g/10min、Mnは47,200、Mw/Mnは2.8、Tmは122.6℃、ΔHは154mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.06個、トランスビニレンが0.09個、末端メチルが5.19個、ビニリデンは検出限界以下であった。
【0073】
実施例18
[エチレン/ブテン共重合]
実施例16に示す[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.3mL(Zr:0.15μmol)を用い、重合温度70℃で90分間重合を行った以外は、実施例3と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、48.0gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは0.02g/10min、HLMIは1.81g/10min、Mnは32,900、Mw/Mnは4.4、Tmは120.8℃、102.2℃、ΔHは142mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.07個、トランスビニレンが0.08、末端メチルが6.91個、ビニリデンが0.01個であった。
【0074】
実施例19
[ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3、4,7−テトラメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成]
−78℃に冷却した2,3,4,7−テトラメチルインデン(2.83g,16.43mmol)のTHF溶液(75mL)に、n−BuLiのヘキサン溶液(18.1mmol)をゆっくり滴下し、室温で5時間撹拌を行った。得られた反応混合物を、−78℃に冷却したジクロロジメチルシラン(9.33g,72.28mmol)のヘキサン溶液(150mL)にゆっくり滴下した。室温で終夜撹拌した後、減圧下で溶媒を留去し、ヘキサンに懸濁させて、セライト濾過を行い、得られた濾液の溶媒を減圧下で留去したところ、オレンジ色オイルを得た(3.847g)。得られた反応混合物をTHF(100mL)に溶かした後、シクロペンタジエン(3.26g,49.29mmol)とn−BuLiのヘキサン溶液(54.22mmol)から調製したシクロペンタジエニルリチウムのTHF溶液(50mL)をゆっくりと滴下した。そのまま終夜撹拌した後、反応混合物を1Nの塩酸水溶液(300mL)にゆっくり加えた。ヘキサンで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去しところ、黄色のオイルとして配位子を得た(3.912g)。
【0075】
上述の方法で得た配位子(1.51g,5.12mmol)をTHFに溶かし、−78℃に冷却してn−BuLiのヘキサン溶液(11.25mmol)をゆっくり加えた。室温で終夜撹拌した後、減圧下で溶媒を留去後、トルエンを加えて黄色懸濁液とした。この懸濁液を−78℃に冷却した後、四塩化ジルコニウム(1.19g,5.12mmol)のトルエンスラリーを加えた。ゆっくりと昇温した後、室温で終夜撹拌を行った。セライト濾過を行うことで析出した固体を除去した後、濃縮後、上澄み液を除去し、得られた固体をヘキサンで洗浄することで、黄色の固体として目的化合物を得た(0.925g,収率40%)。
【0076】
H−NMR(CDCl) δ=6.91(1H),6.78(1H),6.69(1H),5.86(1H),5.73(1H),2.62(3H),2.58(3H),2.53(3H),2.13(3H),1.07(3H),0.94(3H).
実施例20
[触媒調製]
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの代わりに、実施例19で得たジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3、4,7−テトラメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は、実施例2と同様の方法で触媒スラリーの調製を行った。
【0077】
[エチレン重合]
上述の[触媒調製]で調製した触媒スラリーを0.6mL(Zr:0.3μmol)用い、85℃で90分間重合を行った以外は、実施例2と同様の方法でエチレン重合を行い、341.5gのポリエチレンを得た。得られたポリエチレンのMIは1.80g/10min、HLMIは36.8g/10min、Mnは34,300、Mw/Mnは2.99、Tmは134.7℃、ΔHは213mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.09個、トランスビニレンが0.13個、末端メチルとビニリデンは検出限界以下であった。
【0078】
実施例21
[エチレン/ブテン共重合]
実施例19に示す[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.2mL(Zr:0.1μmol)を用い、重合温度75℃で90分間重合を行った以外は、実施例3と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、60.7gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは0.07g/10min、HLMIは9.7g/10min、Mnは34,600、Mw/Mnは4.35、Tmは123.5℃、ΔHは177mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.06個、トランスビニレンが0.11個、末端メチルが4.2個、ビニリデンが0.02個であった。
【0079】
実施例22
[ジビニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの合成]
−78℃に冷却した2,4,7−トリメチルインデン(5.103g,32.25mmol)のTHF溶液(100mL)に、n−BuLiのヘキサン溶液(1.59mol/L,22.3mL,35.47mmol)をゆっくり滴下し、室温で終夜撹拌を行った。得られた反応混合物を、−78℃に冷却したジクロロジビニルシラン(19.75g,128.99mmol)のヘキサン溶液(200mL)にゆっくり滴下した。室温で終夜撹拌した後、減圧下で溶媒を留去し、ヘキサン(300mL)を加えてセライト濾過を行った。濾液の溶媒を減圧下で留去したところ、淡黄色のオイルを得た(8.731g,31.8mmol,収率99%)。生成物をTHF(150mL)に溶かした後、シクロペンタジエン(5.950g,90.01mmol)とn−BuLiのヘキサン溶液(1.59mol/L,62.3mL,99.0mmol)から調製したシクロペンタジエニルリチウムのTHF溶液(100mL)をゆっくりと滴下した。終夜撹拌した後、反応混合物を1Nの塩酸水溶液(200mL)にゆっくり加えた。ヘキサンで抽出、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した後、シリカゲルカラム(展開溶媒:ヘキサン)で処理したところ、淡黄色のオイルとして配位子を得た(4.134g,13.6mmol)。
【0080】
上述の方法で得た配位子(4.134g,13.58mmol)をDME(120mL)に溶かし、−78℃に冷却してn−BuLiのヘキサン溶液(1.59mol/L,18.8mL,29.9mmol)をゆっくり加えた。室温で終夜撹拌した後、再度−78℃に冷却し、四塩化ジルコニウム(3.16g,13.58mmol)のヘキサン/DME溶液(10mL/40mL)を加えた。ゆっくりと昇温した後、室温で終夜撹拌を行った。減圧下で溶媒を留去した後、トルエン(170mL)を加えてセライト濾過を行い、濾液の溶媒を減圧下で留去後、残さをヘキサンで洗浄して黄色の固体を得た。この固体を塩化メチレン(50mL)に溶かし、ヘキサン(200mL)を加えて析出した固体を濾取することで、黄色の固体として目的化合物を得た(2.282g,4.91mmol,収率36%)。
【0081】
H−NMR(CDCl) δ=7.03(1H)、6.87−6.78(3H)、6.68(1H)、6.01(1H)、5.69(1H),2.59(3H)、2.44(3H)、2.36(3H)、1.09(3H)、0.98(3H).
実施例23
[触媒調製]
ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドの代わりに、実施例22で得たジビニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリドを用いた以外は、実施例2と同様の方法で触媒スラリーの調製を行った。
【0082】
[エチレン重合]
上述の[触媒調製]で調製した触媒スラリーを0.2mL(Zr:0.1μmol)用い、85℃で90分間重合を行った以外は、実施例2と同様の方法でエチレン重合を行い、45.8gのポリエチレンを得た。得られたポリエチレンのMIは0.02g/10min、HLMIは0.78g/10min、Mnは61,000、Mw/Mnは4.59、Tmは133.9℃、ΔHは182mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.07個、トランスビニレンが0.08個、末端メチルとビニリデンは検出限界以下であった。
【0083】
実施例24
[エチレン/ブテン共重合]
実施例23に示す[触媒調製]で調製した触媒スラリー0.2mL(Zr:0.1μmol)を用い、重合温度75℃で90分間重合を行った以外は、実施例3と同様の方法でエチレン/ブテン共重合を行い、36.7gのエチレン/ブテン共重合体を得た。得られたエチレン/ブテン共重合体のMIは0.31g/10min、HLMIは12.4g/10min、Mnは40,000、Mw/Mnは3.50、Tmは120.9℃、ΔHは137mJ/mgであった。FT−IRで求めたポリマーの末端構造は、1000炭素あたり、末端ビニルが0.07個、トランスビニレンが0.08個、末端メチルが6.57個、ビニリデンは検出限界以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であり、Xはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換アミノ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。Rは、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。Rは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20の炭化水素基置換シリル基、炭素数1〜20の酸素原子含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素原子含有炭化水素基または炭素数1〜20のケイ素原子含有炭化水素基である。)
で表される遷移金属化合物(A)。
【請求項2】
請求項1に記載の遷移金属化合物(A)、遷移金属化合物(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物(B)および有機アルミニウム化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒。
【請求項3】
遷移金属化合物(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させる化合物(B)が、下記一般式(2)
[Ry−1H][A] (2)
(式中、[Ry−1H]はカチオンであり、Hはプロトンであり、Mは周期表の第15族または第16族から選ばれる元素であり、Rは各々独立して炭素数1〜30の炭化水素基であり、Rは各々独立して水素原子または炭素数1〜30の炭化水素基であり、yは、Mが第15族元素の時y=3であり、Mが第16族元素の時y=2であり、[A]はアニオンであり、aおよびbは電荷が釣り合うように選ばれた整数である。)
で表される有機化合物で処理された変性粘土化合物であることを特徴とする請求項2に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンの重合を行うことを特徴とするポリオレフィンの製造方法。

【公開番号】特開2008−50278(P2008−50278A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−225904(P2006−225904)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】