説明

選択性の高いセロトニンおよびノルエピネフリン二重再取り込み阻害薬およびその使用

高度に選択的なセロトニン・ノルエピネフリン二重再取り込み阻害剤を提供する。これらの化合物は、副作用が少なく、うつ病、線維筋痛症、不安、パニック障害、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、月経前不快症候群、注意欠陥障害、強迫性障害、対人不安障害、全般性不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振、神経性過食症、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、血管運動性潮紅、コカイン及びアルコール依存症、性的機能不全、境界性人格障害、線維筋痛症症候群、糖尿病性神経因性疼痛、慢性疲労症候群、疼痛、内臓痛、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群、パーキンソン病及びてんかんを含む種々の状態の処置に使用する組成物及び製品に有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
神経科学及び女性の健康のための医薬品の市場は、Venlafaxine及びDuloxetineといったセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)の近年の開発からも明らかな通り、種々の適応症の第一選択治療としてSNRIを使用する方向へと向かっている。これは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の従来からの使用とは対照的である。SSRI及びSNRIの副作用は、旧世代の三環系抗うつ薬に比べて軽度であるが、これらのSSRI及びSNRIの選択性又はその他の神経受容体(ムスカリン受容体、ヒスタミン受容体、及びα−アドレナリン作用性受容体等)への結合に関連する望ましくない副作用が依然として幾らか存在する。これらの受容体に結合すると、口渇、嗜眠、食欲亢進及び幾つかの心血管リスクが引き起こされる。
【0002】
SNRIのノルエピネフリン(NE)亢進作用は、幾つかの副作用に関与しており、そのため適用例が制限される。例えば、現在利用可能なSNRIは、NE亢進作用に伴う便秘という副作用のため、過敏性腸管症候群(IBS)の処置への適用は制限される。SNRIの副作用として別に考えられることは、高用量で拡張期血圧が軽度に上昇することであり、この副作用もNE亢進作用に伴うものである。更に、過量摂取の場合は、過度のアドレナリン刺激作用、卒中、不整脈、徐脈、高血圧、低血圧及び死亡が引き起こされてきた。
【0003】
従って、シナプス後受容体の結合が少なくなることで副作用が低減される効果を発揮するようにセロトニン及び/又はノルエピネフリンの再取り込みを阻害することにより、セロトニン及びノルエピネフリンの不均衡に伴う病態を処置する代替の組成物が必要とされている(非特許文献1)。
【非特許文献1】H. Hallら、Acta pharmacol et. toxicol.(1984)54,379−384
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、セロトニン・ノルエピネフリン二重再取り込み阻害作用を有する新たな分類の化合物を提供する。理論に束縛されるものではないが、これらの化合物は、例えばヒスタミン受容体、ムスカリン受容体、α−アドレナリン作用性受容体、(種々の)セロトニン受容体、ドーパミン受容体、オピエート受容体、ベンゾジアゼピン受容体等の後シナプス神経受容体に結合するために副作用が低減すると考えられる。この種の化合物は、より選択性の高い二種再取り込み阻害薬であり、従来のSNRIとはセロトニン/ノルエピネフリンの再取り込み阻害作用の比率が異なる。
【0005】
一態様において、本発明は、以下の構造の化合物:
【0006】
【化9】

(R=Cl、F、Br、CH、CF、SCH、NHCH、NO、CN、OH、OC−Cアルキル、置換OC−Cアルキル)
又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩を提供する。
【0007】
別の態様において、本発明は、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。
【0008】
更に別の態様において、本発明は、処置を必要とする被験体における大うつ病、血管運動神経症状、過敏性腸管症候群、早発射精、疼痛及び尿失禁を処置するためも本発明の化合物を使用する方法を提供する。
【0009】
更なる実施形態において、本発明は、以下の化学式A:
【0010】
【化10】

(式中、YはC又は結合である)
又は以下の化学式B:
【0011】
【化11】

(式中、XがC、N又はOであり;YがC又は不在であり;XがCである場合は、RがH、ハロゲン、CF、フェニル、SCH、OH、NHCH、OC−Cアルキル及び置換OC−Cアルキルから選択され;XがNである場合は、RがH、フェニル又はCFから選択される)
の化合物を調製する方法を提供する。
【0012】
本明細書に記載されるこれらの方法は、シス配置の化合物を選択的に提供する。一実施形態において、本発明の化合物は、シスジアステレオマーが50%を超える配置である。別の実施形態において、本発明の化合物は、シスジアステレオマーが95%を超える配置である。
【0013】
本発明の更に他の態様及び利点は、以下の詳細な説明より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下の構造を有する新しい分類の化合物:
【0015】
【化12】

(R=Cl、F、Br、CH、CF、SCH、NHCH、NO、CN、OH、OC−Cアルキル、置換OC−Cアルキル)
又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩を提供する。
【0016】
有利なことに、本発明のこれらの化合物及び処方物は、便秘、高血圧及びヒスタミンに関連する副作用をはじめとする、既述の数多くのSNRIに関連する望ましくない副作用を低減する。
【0017】
本発明の化合物は、1つ以上の不斉炭素原子を含有する場合があり、本化合物の幾つかは1つ以上の不斉(キラル)中心を含有する場合があり、それ故光学異性体及びジアステレオマーを形成する場合がある。化学式(I)では立体化学構造が示されていないが、一実施形態において、炭素1はキラル中心として存在する。但し、この分子は、R及びS異性体の形態だけでなく、ラセミ混合物の形態でも存在することができる。又、ジアステレオマーには2種類がある。シクロヘキサン環上のこれらの2つの基は、シス又はトランス配置であってもよいが、好ましくはシス配置であるのがよい。例えば、一実施形態において、本発明の化合物は、シスジアステレオマーが50%を超える配置である。別の実施形態において、本発明の化合物は、シスジアステレオマーが95%を超える配置である。従って、本発明には、このような光学異性体及びジアステレオマー;並びにラセミ異性体及び分解された異性体、エナンチオマー的に純粋な立体異性体;並びにR及びS立体異性体のその他の混合物、並びにそれらの薬学的に許容される塩、水和物及びプロドラッグが含まれる。
【0018】
基又は基の一部(例えばアルコキシ)となる「アルキル」という用語は、特に記載がない限り、一般的に長さが1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個又は8個の炭素原子からなる、直鎖及び分枝鎖の両飽和脂肪族炭化水素基を指すものとして、本明細書で使用される。「低級アルキル」という用語は、長さが1個、2個、3個又は4個の炭素原子からなるアルキル鎖を指すものとして、本明細書で使用される。「置換アルキル」という用語は、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アリール、複素環、置換アリール、置換複素環、アルコキシ、アリールオキシ、置換アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アルキルアミノ、アリールチオを含む群から選択される1個〜3個の置換基を有する、アルキル又は直前に記載した低級アルキルを指す。これらの置換基は、その結合が安定した化学成分を構成する限り、アルキル基の何れかの炭素原子と結合する場合がある。
【0019】
「ハロゲン」という用語は、Cl、Br、F又はIを指す。
【0020】
基又は基の一部(例えばアリールオキシ)となる「アリール」という用語は、例えば6個〜20個の炭素原子からなる炭素環芳香族系を指すものとして本明細書で使用され、これは単環式である場合もあれば、縮合又は結合環の少なくとも一部が共役芳香族系を形成するような縮合又は結合した多環式である場合もある。アリール基には、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、テトラヒドロナフチル及びフェナントリルが含まれるが、これらに限定されない。
【0021】
「置換アリール」という用語は、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリールオキシ、置換アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アルキルアミノ及びアリールチオを含む群から選択される1個、2個、3個又は4個の置換基を有する、直前に定義したアリールを指す。
【0022】
アルケニル及びアルキニル基は、例えば2個〜7個の炭素原子を有する場合がある。シクロアルキル基は、3個〜8個の炭素原子を有する場合がある。
【0023】
「複素環」という用語は、飽和、部分飽和又は不飽和であり、且つ炭素原子並びにN、O及びS原子を含む群から選択される1個〜4個のヘテロ原子からなる、安定した4員、5員、6員若しくは7員の単環式、又は安定した多環式複素環を説明するものとして本明細書で使用される。少なくとも1個の炭素原子はC=Oである場合がある。N及びS原子は酸化する場合がある。複素環には又、上に定義した複素環の何れかがアリール環に縮合している何れの多環式環も含まれる。多環式環は、上記のような4員〜7員環の単環式環2個又は3個である場合がある。複素環は、結果として得られる構造が化学的に安定している限り、何れのヘテロ原子又は炭素原子にも結合する場合がある。このような複素環基には、例えばテトラヒドロフラン、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペリジニル、アゼピニル、ピロリジニル、イミダゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、モルフォリニル、インドリル、キノリニル、チエニル、フリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、チアモルフォリニル、チアモルフォリニルスルホキシド、及びイソキノリニルが含まれる。
【0024】
「置換複素環」という用語は、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アルケニル、置換アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリールオキシ、置換アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アルキルアミノ又はアリールチオを含む群から選択される1個〜4個の置換基を有する、直前に定義した複素環を説明するものとして、本明細書で使用される。
【0025】
「アルコキシ」という用語は、式中Rがアルキル又は置換アルキルであるOR基を指すものとして、本明細書で使用される。「アリールオキシ」という用語は、式中Rがアリール又は置換アリールであるOR基を指すものとして、本明細書で使用される。「アルキルカルボニル」という用語は、式中Rがアルキル又は置換アルキルであるRCO基を指すものとして、本明細書で使用される。「アルキルカルボキシ」という用語は、式中Rがアルキル又は置換アルキルであるCOOR基を指すものとして、本明細書で使用される。「アミノアルキル」という用語は、アルキル又は置換アルキル基が1個〜8個の炭素原子を含有し、これらの原子は同じである場合もあれば異なる場合もあり、結合点が窒素原子上にある、二級及び三級アミンの両方を指す。
【0026】
本発明の化合物は、薬学的又は生理学的に許容される酸又は塩基に由来する塩の形態で使用することができる。これらの塩には、酢酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及び同様に既知の許容される酸、並びにそれらの混合物等の有機酸及び無機酸を有する塩が含まれるが、これらに限定されない。その他の塩には、ナトリウム(例えば、水酸化ナトリウム)、カリウム(例えば、水酸化カリウム)、カルシウム又はマグネシウムといったアルカリ金属又はアルカリ土類金属を有する塩が含まれる。
【0027】
これらの塩並びに本発明のその他の化合物は、エステル、カルバメート、及び投与されるとin vivoで活性成分に変換されるその他従来の「プロドラッグ」の形態をとる場合がある。現在好ましい形態において、プロドラッグはエステルである。例えば、B. Testa and J. Caldwell, “Prodrugs Revisited: The “Ad Hoc” Approach as a Complement to Ligand Design”, Medicinal Research Reviews, 16(3):233−241, ed., John Wiley & Sons (1996)を参照されたい。
【0028】
一実施形態において、本発明は、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール、又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを提供する。本化合物は、化学式C16H25NO3及び分子量約279.38を特徴とする。本化合物の遊離塩基は、以下の構造を有する。
【0029】
【化13】

別の実施形態において、本発明は、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシ−4−プロポキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノールを提供する。本化合物は、化学式C17H27NO3及び分子量293.40を特徴とする。本化合物の遊離塩基は、以下の構造を有する。
【0030】
【化14】

本発明の他の例示的化合物には、4−[2−ジメチルアミノ−1−(4−エトキシ−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノール、並びにその塩及びプロドラッグが含まれる。本化合物の遊離塩基は、以下の構造を有する。
【0031】
【化15】

本発明の更に別の例示的化合物は、4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシ−4−イソプロポキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノール、並びにその塩及びプロドラッグである。本化合物の遊離塩基は、以下の構造を有する。
【0032】
【化16】

本発明のこれら及びその他の化合物は、以下の図式に従って調製することができる。
【0033】
合成
本発明の化合物は、以下の方法と、合成有機化合物の技術で既知の合成方法又は当業者によるこれらの方法の亜型を共に使用して調製することができる。[一般的には、Comprehensive Organic Synthesis, “Selectivity, Strategy & Efficiency in Modern Organic Chemistry”, ed., I. Fleming, Pergamon Press, New York (1991); Comprehensive Organic Chemistry, “The Synthesis and Reactions of Organic Compounds”, ed. J.F. Stoddard, Pergamon Press, New York (1979)を参照]。好適な方法は、以下に概略を記すものであるが、これらに限定されない。
【0034】
図式Iは、本発明の特定の化合物を合成する一方法を示す。同様の方法は、適切な基を有する種々の中間産物と使用して、本発明の他の誘導体を合成するのに使用することができる。これらの中間産物は市販されている。
【0035】
【化17】

(R、X及びYは以前に定義した通りである)
代替の合成
一実施形態において、本発明は、以下の構造A:
【0036】
【化18】

(式中、YがC又は結合である)
又は以下の構造B:
【0037】
【化19】

(式中、XがC、N又はOであり;YがC又は不在であり;XがCである場合は、RがH、ハロゲン、CF、フェニル、SCH、NHCH、OC−Cアルキル及び置換OC−Cアルキルから選択され;XがNである場合はRがH、フェニル又はCFから選択される)
の化合物を調製する方法を提供する。
【0038】
本方法は、2−(4−ヒドロキシ−フェノール)−ジメチルアセトアミドをハロゲン化ベンジルと反応させて、2−(4−ベンジルオキシ−フェニル)−ジメチルアセトアミドを得る手順を含む。2−(4−ヒドロキシ−フェノール)−ジアルキルアセトアミドは、ジメチルホルムアミドを含む溶液中に存在する場合がある。更に、この溶液はハロゲン化ベンジルと反応させる前に、炭酸カリウムで処理することができる。
【0039】
構造Aの化合物を得るため、結果として得られた2−(4−ベンジルオキシ−フェニル)−ジメチルアセトアミドを、構造:
【0040】
【化20】

(YがC又は結合である)を有する化合物と好適な塩基を含む溶液中でその後反応させて、対応する三級アルコールであるケタール化合物を得る。好適な塩基の例には、リチウムジイソプロピルアミド及び臭化イソプロピルマグネシウムが含まれる。ケタールを含有する(例えばテトラヒドロフラン(THF)を含有する)溶液を、酸(例えば、水性HCl)と反応させて、急冷し、ケトンを得る。ケタールの加水分解反応物は炭酸カリウムにより急冷される場合がある。次に、結果として得られた産物を、通常は抽出し、濃縮し、熱いEtOAc/ヘキサンから結晶化して、ケトンを得る。水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)及びボランから選択される還元剤を使用して、それにより対応するジアルキルアミンを提供して、ケトンを還元し、シスジオール及びアミドを選択的に得る。構造Aの化合物を得るため、ベンジルエーテルを水素化してベンジル基を除去する。無論、ベンジルエーテルは又、HI、HBr、TMSI等の試薬による酸切断等の他の還元方法といった当業者に利用可能な追加の方法を使用して除去される場合もある。
【0041】
構造Bの化合物を調製するため、2−(4−ベンジルオキシ−フェニル)−ジメチルアセトアミドを、以下の構造を有する化合物:
【0042】
【化21】

(式中、XがC、N又はOであり;YがC又は不在であり;XがCである場合は、RがH、ハロゲン、CF、SCH、NHCH、OH、OC−Cアルキル、フェニル及び置換OC−Cアルキルから選択され;XがNである場合は、RがH、フェニル又はCFである)
と、上述のような好適な塩基を含む溶液中(例えば、THFを含有)で反応させる。一実施形態において、本化合物は、ピラン−4−オン及びフェニル−ピペリジン−4−オンからなる群より選択される。結果として得られた産物を還元し(例えば、LiAlH4を使用する)、対応するジメチルアミンを提供して、ベンジルエステルを水素化してベンジル基を除去し、構造Bの化合物を得る。
【0043】
本発明は更に、以下の構造を有する化合物:
【0044】
【化22】

(式中、R、X及びYが上に定義した通りである);及び以下の構造を有する化合物:
【0045】
【化23】

(式中、R、X及びYが上に定義した通りである);及び以下の構造を有する化合物:
【0046】
【化24】

(式中、Yが上に定義した通りである);及び以下の構造を有する化合物:
【0047】
【化25】

(式中、Yが上に定義した通りである);及び以下の構造を有する化合物:
【0048】
【化26】

(式中、Yが上に定義した通りである);及び以下の構造を有する化合物:
【0049】
【化27】

(式中、Yが上に定義した通りである)等を含む有用な中間産物を提供する。
【0050】
有利なことに、このプロセスはシス化合物を高度に選択的に得るためのものであることが明らかにされており、収率が高く、結晶性も良好である。理論に束縛されるものではないが、LAH反応がこの特異性において著明な役割を果たすと考えられる。
【0051】
一実施形態において、本発明の化合物を合成する方法は、シスジアステレオマーが50%を超える配置を有する化合物を提供する。別の実施形態において、本発明の化合物を合成する方法は、シスジアステレオマーが95%を超える配置を有する化合物を提供する。別の実施形態においては、LAHの代わりに水素化ホウ素ナトリウムを使用するのが望ましい場合がある。
【0052】
図式2
以下の図式は、式中RがOHである化合物の場合の、本発明の一実施形態の合成を説明したものである。
【0053】
【化28】

ジメチルホルムアミド(DMF)中の4−(ジメチルカルバモイルメチル)フェノールを、K2CO3で、次に臭化ベンジルで処理する。臭化ベンジルの保護基は、最終手順での除去が容易になることから、本発明の化合物の合成方法に使用するのに特にふさわしい。[早期の実験では、ベンジル環の4位の酸素を保護するのにメチル基を使用した。しかし、脱保護中にL−セレクトリドを使用するのが困難であったため、脱メチル化が十分でなく、LDA反応にも困難を来し、多数の不純物が産生される結果となった。]但し、その他の保護基を代わりに使用する場合がある。
【0054】
この混合物を室温で攪拌した後、60℃で1時間加熱する。この混合物を濃縮してDMFを除去し、EtOAcで希釈し、水で洗浄する。乾燥MgSO4を添加し、その混合物を濾過し、濃縮して低容量にする。ヘキサンを添加して、ケタール中間産物を沈殿させる。固形物を濾過によって回収して乾燥する。
【0055】
100mL THF/50mL MeOH中のモノエチレンケタールの溶液を、酸(例えば、HCl)で処理し、室温で攪拌する。LDA反応の前に、1,4−シクロヘキサンジオン−モノ−エチレンケタールを4−メトキシシクロヘキサノンに変換することにより、メトキシ誘導体を合成した。別の実施形態において、ケタールは、LDA反応後に所望の置換基を含有するように変換される場合がある。ケタール加水分解反応物を飽和K2CO3により急冷し、EtOAcで抽出して、油になるまで濃縮する。産物を熱いEtOAc/ヘキサンから結晶化し、ケトン中間産物を得る。
【0056】
THF中のケトン溶液を、−78℃でTHF中の水素化アルミニウムリチウム(LAH)ペレットの懸濁液に添加した。この混合物を室温まで温め、少なくとも3時間攪拌する。この反応物をMeOH、次に10%のNaOHで急冷し、少なくとも3時間攪拌する。固形物を濾過により除去し、(例えば、THFで)洗浄し、濃縮する。結果として得られた固形物を、EtOAc/ヘキサンから再結晶化させ、対応するベンジルエーテルを得る。
【0057】
有利なことに、このプロセスはシス化合物を高度に選択的に得るためのものであることが明らかにされており、収率が高く、結晶性も良好である。理論に束縛されるものではないが、LAH反応がこの特異性において著明な役割を果たすと考えられる。一実施形態において、本発明の化合物を合成する方法は、シスジアステレオマーが50%を超える配置を有する化合物を提供する。別の実施形態において、本発明の化合物を合成する方法は、シスジアステレオマーが95%を超える配置を有する化合物を提供する。別の実施形態においては、LAHの代わりに水素化ホウ素ナトリウムを使用するのが望ましい場合がある。
【0058】
エタノール100mL中のベンジルエーテル及びPd/Cの混合物を、圧力下で一晩水素化する。固形物を濾過により精製し、続いてエタノールで洗浄する。この固形物を濃縮し、EtOAc/ヘキサンから結晶化して、最終産物を得る。
【0059】
化学量論的量の酸と遊離塩基を接触させることによって塩が形成される場合がある。或いは、酸が過剰に、通常は1.5倍等量以下使用される場合もある。一実施形態においては、塩基又は酸が溶液中に含まれるか、両方が溶液中に含まれる。
【0060】
溶媒から直接結晶化させることにより、結晶塩が調製される場合がある。又、溶媒の一部又は全てを蒸発させるか、高温で結晶化させた後に、好ましくは段階ごとに温度を制御しながら冷却することによって、収率が改善される場合がある。沈殿温度及び播種を注意深く制御することで、生成プロセス、粒径分布及び産物の形状の再現性が改善される場合がある。
【0061】
本発明の化合物の使用
本発明は、セロトニン再取り込み阻害量とノルエピネフリン再取り込み阻害量の比が現在利用されているSNRIとは異なる化合物を提供する。この属性は、SNRIのNE亢進作用による便秘という副作用のため適用が制限されている過敏性腸管症候群(IBS)のような適応症には極めて魅力的である。このNE減弱作用は又、高血圧という副作用に起因する心血管リスクを有する患者にも魅力的である。又、尿失禁及び疼痛の処置にも適用できる。
【0062】
本発明の組成物は、うつ病(大うつ病、双極性障害及び気分変調を含むがこれらに制限されない)、不安、線維筋痛症、不安、パニック障害、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、月経前不快症候群(月経前症候群とも呼ばれる)、注意欠陥障害(多動を伴う又は伴わない)、強迫性障害(抜毛癖を含む)、対人不安障害、全般性不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振、神経性過食症、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、血管運動性潮紅、コカイン及びアルコール依存症、性的機能不全(早発性射精を含む)、境界性人格障害、慢性疲労症候群、失禁(便失禁、溢流性尿失禁、受動失禁、反射性尿失禁、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、労作性尿失禁及び尿失禁を含む)、疼痛(偏頭痛、慢性背痛、幻肢痛、中枢痛、糖尿病性神経障害及びヘルペス後神経障害等の神経障害疼痛を含むが、これらに制限されない)、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群、パーキンソン病、てんかん等を含むがこれらに制限されない中枢神経系疾患を処置又は予防するのに使用することができる。本発明の化合物及び組成物は、うつ病の再燃又は再発の予防、認知障害の治療、老人性痴呆、アルツハイマー病、記憶障害、健忘症及び健忘症候群を来した患者における認知機能の強化、喫煙又は他の煙草の使用の中止のための処置にも使用することができる。更に、本発明の化合物及び組成物は、うつ病及び非うつ病の女性における視床下部性無月経の処置にも使用することができる。
【0063】
本発明の組成物の有効量とは、上述の病態の1つ以上の症状を、予防、抑制又は緩和するのに十分な量である。上述の病態のそれぞれを処置、予防、抑制又は緩和するのに有用な用量は、治療対象の病態の重症度及び投与経路により異なる。用量及び投与回数も、患者の年齢、体重、反応及び既往歴により異なる。一般的に、本明細書に記載の病態に対する一日推奨用量は、10〜約1000mg/日又は約15〜約350mg/日又は約15〜約140mg/日である。本発明の他の実施形態において、用量は約30〜約90mg/日である。用量は遊離塩基に基づいて記載し、コハク酸塩に基づいて調節する。患者の管理において、治療は一般的に低用量から始め、必要に応じて増量する。ヒトではない患者に対する用量は、当業者が調節することができる。
【0064】
本発明の化合物は、ベンラファキシンをはじめとする他の活性物質と組み合わせて提供される場合がある。ベンラファキシンの用量は約75〜約350mg/日又は約75〜約225mg/日である。別の実施形態において、ベンラファキシンの用量は約75〜約150mg/日である。本発明の組成物と共に投与計画で提供されるベンラファキシン又は別の活性物質は、本発明の組成物と共に処方される場合もあれば、個別に提供される場合もある。
【0065】
本発明の化合物の有効量を患者に提供するためには、あらゆる好適な投与経路を使用することができる。例えば、経口、経粘膜(例えば、経鼻、舌下、口腔、直腸、腟)、非経口(例えば、静脈内又は筋肉内)、経皮及び皮下経路を使用することができる。好ましい投与経路には、経口、経皮及び経粘膜が含まれる。
【0066】
本発明の化合物は、薬学的組成物又は剤型を形成するための従来の薬学的結合手法に従って、薬学的担体又は調剤(例えば、薬学的に許容される担体及び調剤)と組み合わせることができる。薬学的に許容される好適な担体及び調剤には、本明細書で参考として援用されるRemington’s, The Science and Practice of Pharmacy, (Gennaro, AR, ed., 19th edition, 1995, Mack Pub. CO.)に記載のものが含まれるが、これらに限定されない。「薬学的に許容される」という語句は、哺乳動物等の動物(例えば、ヒト)に投与された場合に、生理学的に許容され、通常はアレルギー反応又は胃蠕動異常亢進、眩暈等といった同様の望ましくない反応を引き起こす添加剤又は組成物を指す。
【0067】
組成物
一実施形態において、本発明の組成物は即放性処方物である。別の実施形態において、本発明の組成物は徐放性処方物である。例示的な処方物は本明細書に記載されている。但し、本発明がそれにより制限されることはない。
【0068】
更に別の好適な本発明の組成物は、本明細書に記載の情報を見れば、当業者に容易に明らかになるであろう。例えば、経口投与に好適な錠剤、カプセル剤及びカプレット剤といった用量単位を提供することに加え、本発明は非経口投与、経皮又は経粘膜投与に好適な用量単位を提供する。
【0069】
経口用の固形の薬学的組成物には、デンプン、糖、微結晶セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤沢剤、結合剤及び崩壊剤が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、薬学的組成物及び剤型は、その他の活性を有する構成要素を含む場合もある。
【0070】
一実施形態において、活性成分は錠剤又はカプセル入り錠剤の形態で調製される。例えば、本発明の化合物を好適な調剤と混合して顆粒を形成する。一実施形態において、この顆粒はローラー圧縮機を使用して形成される。別の実施形態において、この顆粒は高剪断顆粒製造機を使用して形成される。但し、低剪断顆粒製造機、混合機等をはじめとする当業者に既知の他の方法を使用して、好適な顆粒を調製することもできる。次に、従来の方法を使用して顆粒を圧縮して錠剤が圧縮される。
【0071】
本錠剤は、場合により活性成分を含む追加の層又は腸溶コーティング、密封コーティング、層間の分離等に必要とされる場合があるその他の層と共に提供される場合がある。一実施形態において、錠剤のコアは第一の活性成分を含有し、第二の活性成分はコーティング層で提供される。
【0072】
場合により、最終密封コーティングを錠剤に施す。好適には、この最終密封コーティングはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及び水からなり、乾燥した状態ではコーティング錠全体の約1重量%未満である。場合により、多層錠剤を好適な包装単位に充填する前の最終手順として、タルクが使用される。
【0073】
或いは又は更に、錠剤はカプセル剤に入れる場合がある。
【0074】
別の態様において、本発明は、活性成分を含有するカプセル剤を提供する。このようなカプセル剤は、当業者に既知の技術を使用して製造される。
【0075】
一実施形態において、本発明は、本発明の1つ以上の化合物のコア及び1つ以上の薬学的に許容される調剤(例えば、希釈剤、結合剤、増量剤、流動促進剤、抗粘着剤、pH調節剤及び/又はアジュバント)を含有する処方物を提供する。このコアは、約3重量/重量%〜約70重量/重量%の活性成分を含有する。他の実施形態において、未コーティングの剤型の重量を100%とすると、化合物は約5重量/重量%〜約60重量/重量%、約10重量/重量%〜約50重量/重量%、約20重量/重量%〜約40重量/重量%、約25重量/重量%〜約35重量/重量%、約30重量/重量%〜約45重量/重量%、又は約32重量/重量%〜約44重量/重量%であってもよい。このコアは徐放性処方物に含まれる場合もあれば、以下に詳述するその他の好適なコアが選択される場合もある。一実施形態においては、遅放性コーティング及び/又は腸溶性コーティングがコアの上に施される。
【0076】
好適には、コアに存在する希釈剤、結合剤、増量剤、流動促進剤、抗粘着剤及びアジュバントの総量は、コアの約30重量/重量%〜約97重量/重量%、又は約25重量/重量%〜約80重量/重量%である。例えば、存在する場合、結合剤、希釈剤及び/又は増量剤は、それぞれ未コーティングの剤型の約15重量/重量%〜約80重量/重量%、約20重量/重量%〜約70重量/重量%、約25重量/重量%〜約45重量/重量%、約30重量/重量%〜約42重量/重量%の量で存在してもよい。処方物中のpH調節剤の総量は、コアの約0.1重量/重量%〜約10重量/重量%、又は約1重量/重量%〜約8重量/重量%、又は約3重量/重量%〜約7重量/重量%であってもよい。但し、これらの百分率は、当業者の必要又は希望に応じて調節することができる。
【0077】
結合剤は、セルロース及びポビドン等を含む既知の結合剤から選択される場合がある。一実施形態において、結合剤は、微結晶セルロース、クロスポビドン及びその混合物から選択する。
【0078】
好適なpH調節剤には、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等が含まれる。この他の好適な成分は当業者には容易に明らかになる。
【0079】
一実施形態において、本発明の化合物は、速度制御成分を含有する徐放性処方物である。通常、このような速度制御成分は、親水性ポリマー及び不活可塑化ポリマーから選択される速度制御ポリマーである。好適な速度制御親水性ポリマーには、ポリビニルアルコール(PVA)、ヒプロメロース及びその混合物が含まれるが、これらに限定されない。好適な不溶性又は不活の「可塑」ポリマーの例には、1つ以上のポリメタクリレート(即ち、Eudragit(登録商標)ポリマー)が含まれるが、これらに限定されない。その他の好適な速度制御ポリマー材料には、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリ(エチレン)オキシド、アルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、親水性セルロース誘導体及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0080】
一実施形態において、本発明の処方物は、未コーティングの剤型の重量に対して、約5重量/重量%〜約75重量/重量%の微結晶セルロース(MCC)、約10重量/重量%〜約70重量/重量%のMCC、約20重量/重量%〜約60重量/重量%、約25重量/重量%〜約30重量/重量%、約30重量/重量%〜約50重量/重量%のMCCを含有する。
【0081】
一実施形態において、コアはコーティングされない。これらのコアは、当業者に既知の技術を使用して、好適なカプセルシェルに入れてもよければ、錠剤に圧縮してもよい。好適には、結果として得られるカプセルシェル又は圧縮錠剤が10〜400mgの活性化合物を含有する。
【0082】
他の実施形態において、処方物はコアの上に1つ以上のコーティングを含有してもよい。更に別の実施形態において、処方物はペレットコア及び非機能性密封コーティング及び機能性第二コーティングからなる。
【0083】
一実施形態において、初回の密封コーティングはコアに直接塗布することができる。この密封コーティングの構成要素は当業者により改変することができるが、密封コーティング剤は、場合により可塑剤及び他の所望の構成要素を含有する、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース、ポリビニルアルコール及びその組み合わせ等の好適なポリマーから選択される場合がある。特に好適な密封コーティング剤はHPMCを含有する。例えば、好適なシールコーティング剤は、約3重量/重量%〜25重量/重量%、好ましくは5重量/重量%〜約7.5重量/重量%の濃度のHPMC溶液として塗布することができる。この初回密封コーティング剤は、例えば噴霧によって流動層被覆に塗布することができる。一実施形態において、Aeromatic StreaTM流動層装置に、Wursterカラム及びボトムスプレーノズルシステムを装着することができる。この装置に約200gの乾燥ペレットコアを充填する。Opadry(登録商標) Clear密封コーティング剤を、入口温度約50〜60℃、コーティング溶液噴霧速度5〜10g/分、噴霧化圧力1〜2バールで塗布する。乾燥したら、好適な条件下で、この初回密封コーティング剤は未コーティングのコアに対して約1重量/重量%〜約3重量/重量%、又は約2重量/重量%となる。別の実施形態において、他の不活構成要素の内、HPMCを含有する市販の密封コーティング剤を使用する。このような市販の密封コーティング剤の一つは、Opadry(登録商標) Clear(Colorcon, Inc.)である。
【0084】
一実施形態において、経口投薬単位は、更に放出又は「遅延」コーティング層を含有する。この放出コーティング層は、初回密封コーティング又はコアに直接塗布される場合がある。一実施形態において、放出コーティング剤は、エチルセルロースを主成分とする製品及びヒプロメロースを含有する。好適なエチルセルロースを主成分とする製品の例には、水性エチルセルロース分散液(25%固形)がある。このような製品の一つは、Surelease(登録商標)製品(Colorcon, Inc.)として市販されている。一実施形態において、水性エチルセルロース(25%固形)分散液約3重量/重量%〜約25重量/重量%、好ましくは約3重量/重量%〜約7重量/重量%、又は約5重量/重量%がコアに塗布される。場合により、例えば約5重量%〜15重量%、好ましくは約10重量%のヒプロメロースをエチルセルロース分散液に混合され、コーティング溶液を生成する。このため、このようなエチルセルロースは、コーティング溶液全体の約85重量%〜約95重量%、又は実施形態によっては約90重量%となる。好適な条件下での乾燥の後、放出コーティング剤全体は、未コーティング又は初回コーティングを経たコアに対して、約2重量/重量%〜約5重量/重量%、又は約3重量/重量%〜約4重量/重量%となる。
【0085】
腸溶コーティング剤(速度制御フィルム)はマルチ粒子(multiparticulate)に塗布される場合があり、これにはポリメタクリレート、ヒプロメロース及びエチルセルロース又はその組み合わせが含まれる場合があるが、これらに限定されない。改変した放出マルチ粒子処方物は、未コーティングの剤型の重量に対して、約3重量/重量%〜約70重量/重量%の活性成分又はその組み合わせ及び約5重量/重量%〜約75重量/重量%の微結晶セルロースを含有することができる。
【0086】
一実施形態において、腸溶コーティング剤は、市販のEudragit(登録商標) L 30 K55(Rohm GmbH & Co. KG)のような、メタクリル酸及びメタクリレートのコポリマーである産物を含有する。好適には、この腸溶コーティング剤は、未コーティング又は初回コーティング済みのマルチ粒子の約15重量/重量%〜45重量/重量%又は約20重量/重量%〜約30重量/重量%又は約25重量/重量%〜約30重量/重量%の量で、マルチ粒子をコーティングするように塗布される。一実施形態において、腸溶コーティング剤は、Eudragit(登録商標) L30D−55コポリマー(Rohm GmbH & Co. KG)、タルク、クエン酸トリエチル及び水からなる。より具体的には、腸溶コーティング剤は、約30重量/重量%の30重量%Eudragit(登録商標) L 30 D55コーティング剤分散液、約15重量/重量%のタルク、約3%のクエン酸トリエチル、水酸化ナトリウム等のpH調節剤及び水を含有する場合がある。
【0087】
別の実施形態において、腸溶コーティング剤は、Surelease(登録商標)水性エチルセルロース分散液(25%固形)製品(Colorcon, Inc.)等のエチルセルロースを主成分とする製品を含有する。一実施形態において、約3重量/重量%〜約25重量/重量%、好ましくは約3重量/重量%〜約7重量/重量%又は約5重量/重量%のSurelease(登録商標)分散液の溶液を、マルチ粒子に塗布する。好適な条件下での乾燥の後、腸溶コーティング剤は、未コーティング又は初回コーティングを経たコアに対して、約2重量/重量%〜約5重量/重量%又は約3重量/重量%〜約4重量/重量%となる。
【0088】
腸溶コーティング剤は未コーティングのコアに直接塗布することもできれば、初回密封コーティングの上に塗布することもできる。上述のように腸溶コーティング剤は通常、流動層被覆に塗布される。一実施形態において、Surelease(登録商標)水性エチルセルロース分散液(25%固形)は密封コーティング剤と同じ方法で塗布される。エチルセルロースコーティング剤を塗布した後、コアを更に5〜10分間乾燥させる。
【0089】
一実施形態において、最終密封コーティング剤を腸溶コーティング剤の上に塗布し、場合により、処方物を好適な包装単位に充填する前の最終手順として、タルクを使用する。好適には、この最終密封コーティング剤は、HPMC及び水からなり、乾燥するとコーティング済みの経口剤型単位全体の約1重量%未満となる。
【0090】
III キット
別の実施形態において、本発明は本発明の化合物及び組成物を含有する製品を提供する。
【0091】
一実施形態において、組成物は患者又はその看護者が使用するために包装される。例えば、組成物はホイル又は他の好適な包装材料で包装することができ、患者が摂取する食品(例えば、アップルソース等)又は飲料の中に混合するのに好適なものである。
【0092】
別の実施形態において、組成物は生理学的に適合する懸濁液に懸濁される。経口液体薬学的組成物の場合、薬学的担体及び調剤には、水、グリコール、油、アルコール、矯味剤、保存剤、着色剤等が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
なお別の実施形態において、上記組成物は、経口送達のためのカプセルまたはカプレットに充填される。
【0094】
別の実施形態において、本発明は、うつ病、ベンラファキシンの処置を受けている患者におけるベンラファキシンの消化管副作用、及び過敏性腸管症候群の処置において有用な医薬品を含むがこれらに限定されない、医薬品の調製における本発明の組成物の使用を提供する。
【0095】
別の実施形態において、本発明は、小児又は高齢の患者への送達のための医薬品の調製における、本発明のマルチ粒子処方物の使用を提供する。
【0096】
他の実施形態において、本発明は、経口、経皮又は経粘膜投与のための用量単位を含むがこれらに限定されない用量単位の調製における、本発明のマルチ粒子処方物の使用を提供する。
【0097】
本発明は又、本発明の処方物を剤型単位で有するホイル包装等の容器又はその他の好適な容器を含む医薬パック及びキットも包含する。
【0098】
以下の実施例を使用して、本発明を説明する。
【実施例】
【0099】
(実施例1) 1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの生成
ジメチルホルムアミド(DMF)(400mL)中の4−(ジメチルカルバモイルメチル)フェノール(35.6g、198.5mmol)を、K2CO3(35.6g、258.0mmol)で処理した後、臭化ベンジル(28mL、238mmol)で処理した。この混合物を室温で4日間攪拌し、その後60℃で1時間加熱した。この混合物を濃縮してDMFを除去し、EtOAcで希釈して、水で3回洗浄した。乾燥MgSO4を添加し、この混合物を濾過して低容量になるまで濃縮した。ヘキサンを添加し産物を沈殿させた。固形物を濾過で回収し、乾燥して収率92%で49gの固形物を得た。
【0100】
【化29】

2Nのリチウムジイソプロピルアミド(LDA)(48.25mL、96.5mmol)の溶液を−78℃まで冷却し、テトラヒドロフラン(THF)25mLで希釈した。これに、THF 250mL中の2−(4−ベンジルオキシ−フェニル)−N,N−ジメチル−アセトアミド(20g、74.3mmol)の溶液を滴下した。この混合物を0℃まで温め、その後−78℃まで再び冷却した。THF 350mL中の1,4−シクロヘキサンジオンモノエチレンケタール(14.1g)の溶液を添加した。この溶液を−20℃まで温めた。
【0101】
高速大量処理液体クロマトグラフィー(HPLC)試験では依然として出発材料が認められた。ケタール1gを更に添加し、この溶液を2時間で0℃まで温めた。この反応物を、水200mL中のNH4Cl 25gの混合物によって急冷した。EtOAcを添加し、層を分離した。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(50% EtOAc/ヘキサン)により収率96%で、固形物30.3gを得た。
【0102】
【化30】

THF 100mL/MeOH 50mL中のケタール(28g、65.8mmoL)の溶液を、3NのHCl 40mLで処理した後、室温で3日間攪拌した。この反応物を飽和K2CO3で急冷し、EtOAcで抽出して、油になるまで濃縮した。産物を熱いEtOAc/ヘキサンから結晶化させ、収率51%で、12.9gの産物を得た。
【0103】
【化31】

THF 100mL中のケトン(11.8g、31.0mmol)の溶液を、−78℃のTHF 100mL中のLAHペレット(4.7g、123.9mmol)の懸濁液に添加した。この混合物を室温まで温め、一晩攪拌した。出発材料/中間産物が依然として存在したため、水素化アルミニウムリチウム(LAH)ペレットをあと0.75g添加し、3時間攪拌した。この反応物をMeOH、次に10%のNaOH 50mLで急冷し、3時間攪拌する。固形物をセライトパッドで濾過により除去し、THFで洗浄し、濃縮した。固形物をEtOAc/ヘキサンから再結晶化し、収率71%で8.15gの産物を得た。
【0104】
【化32】

エタノール100mL中のベンジルエーテル(8.1g、22.0mmol)及び10% Pd/C(50% wet)2.0gの混合物を、100psiで一晩水素化した。この混合物をセライトで濾過し、エタノールで洗浄し、濃縮した。固形の産物をEtOAc/ヘキサンから結晶化して、収率82%で、表題の化合物5.1gを得た。
【0105】
(実施例2) 1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの物理化学的特性
実施例1の方法に基づいて調製する場合、表題の化合物(遊離塩基)の特徴は以下の通りである。
純度: 97.51% シス異性体、1.91% トランス異性体、0.22% 中間産物
構造式:
【0106】
【化33】

分子式: C16H25NO3
分子量: 279.379
外観: 白色からオフホワイトの結晶粉末
融点(DSC onset): 約193.3790℃
X線(粉末回折): 1種の多形
吸水性: 非吸水性(26.30℃/90%RHでの重量増加は2%未満)、重量増加は%RHの低下により消失
溶液安定性: 化合物は室温で少なくとも24時間、全ての水溶液中(pH 1.4〜10.0)で安定していた。
pH可溶性: 最終pH 1.4 24.2mg/ml
最終pH 3.99 24.1mg/ml
最終pH 5.79 26.7mg/ml
最終pH 8.4 22.7mg/ml。
【0107】
(実施例3) 1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの塩形態
A. コハク酸塩
1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール0.5008gを、アセトン3mLに溶解した。この溶液を60℃まで加熱した。コハク酸(Sigma−Aldrich)0.206gを、水2滴を加えたアセトン7mLに溶解し、水浴で70℃まで加熱した。コハク酸溶液を、70℃の1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール溶液に混合しながら滴下した。数滴の水を添加しながら加熱を続行し、65℃で一相溶液を得た。混合を60℃で10分間続行し、一晩かけて室温まで冷却した。フラスコの底に形成された沈殿物をエタノールに溶解し、このエタノール溶液を回転蒸発器を使用して減圧下で蒸発させ、白色の粉末0.4898gを得た。
【0108】
H−NMRで、コハク酸塩に対する1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの比率が1:1である、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールコハク酸塩の構造が確認された。
【0109】
コハク酸塩の水溶性は、pHが1.3、4.5及び6.5Lで12mg/mL以上であり、吸水性を有する白色粉末である。
【0110】
B. 塩酸塩
1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール0.5008gを、水10滴と共にアセトン10mLに溶解し、水浴で70℃まで加熱して、透明な溶液を得た。1Nの塩酸2gを70℃まで加熱し、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール溶液に滴下した。結果として得られた溶液を70℃で30分間混合し続けた。回転蒸発器を使用して溶媒を全て減圧下で蒸発させ、黄桃色の固形物を得た。これをエタノール中に溶解し、そのエタノール溶液を回転蒸発器を使用して減圧下で蒸発させ、オフホワイトの固形物0.4894gを得た。H−NMRで、塩酸塩に対する1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの比率が1:1である、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール塩酸塩の構造が確認された。
【0111】
(実施例4) 4−[2−ジメチルアミノ−1−(シス−1−ヒドロキシ−4−メトキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノールの生成
シクロヘキサノール上の4−メトキシを得るために4−メトキシ−シクロヘキサノンを使用することをはじめとする幾つかの小さな変更を除いては、実施例1と同じ経路で化合物を調製した。4−メトキシ−シクロヘキサノンの合成のまとめを下に記載する。その後残された合成手順を、実施例1に記載の通り完了した。
【0112】
【化34】

(実施例5) 4−[2−ジメチルアミノ−1−(シス−1−ヒドロキシ−4−メトキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノールの物理化学的特性
実施例4の方法に基づいて調製する場合、表題の化合物(遊離塩基)の特徴は以下の通りである。
純度: 99%
構造式:
【0113】
【化35】

分子式: C17H27NO3
分子量: 293.40
外観: 白色の結晶粉末
融点(DSC onset): 179.21℃
X線(粉末回折): 結晶 ― 1種の多形
吸水性: 非吸水性(60%RHでの重量増加は0.44%、90%RHでの重量増加は1.2%、10%RH又は0%RHに戻した場合、重量増加は消失)
溶液安定性: 化合物は室温で少なくとも72時間、全ての水溶液中(pH 1.6〜10.5)で安定していた。
pH可溶性: 最終pH 1.60 >10.71mg/ml
最終pH 7.62 >10.00mg/ml
最終pH 8.21 >10.00mg/ml
最終pH 9.00 7.65mg/ml
最終pH 10.5 7.65mg/ml
オクタノール/水の分配係数: pH6におけるCoct/Caqは6.857。
【0114】
(実施例6) 1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの遊離塩基及び塩形態の透過性評価 ― HTS−24 CACO−2モデル
CACO−2細胞を通過する薬物の輸送速度を、以下の公式に従って見かけの透過係数として判定した。
【0115】
【化36】

ΔQ=量の変化
ΔT=時間の経過(分)
Co=ドナー室における初回の濃度(mM.cm−3)
A=膜の表面積(cm2)
60=cm/s−1を得るための変換係数
Rv=レシーバー室の容積
細胞上下間抵抗(TER)を、以下の公式に従って抵抗測定値から算出した:TER=(R[細胞+フィルター+媒質])−(R[フィルター+媒質])×細胞面積
見かけの透過速度を以下のように解釈した。見かけの透過値が同じ試験実行中のメトプロロール又はプロプラノロールで認められたものと同じ又はそれ以上であれば、予測吸収分画は90%以上(高透化率に分類)とみなす。見かけの透過値が同じ試験実行中のメトプロロール又はプロプラノロールで認められたもの未満であれば、予測吸収分画は90%以下(中等度の透化率に分類)とみなす。見かけの透過値が10nms−1未満であれば、吸収分画を50%以下とみなす(低透化率に分類)。120ohm cm2未満のTER値は、試験期間に単層の完全性が低かったことを示す。
【0116】
化合物/メトプロロール又はプロプラノロール比が1以上であれば、化合物の透過性は高いということである。化合物/メトプロロール又はプロプラノロール比が1未満であれば、化合物の透過性は中等度から低いということである。
【0117】
化合物/プロプラノロール比:
遊離塩基=2.9
塩酸塩=2.9
コハク酸塩=2.9
このように、本化合物の遊離塩基及び両方の被験塩の透過性は高い。
【0118】
透過性に関する結論
これらのcaco−2試験の試験条件下において、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの塩基と塩形態(塩酸塩及びコハク酸塩)との間には透過性に差はなかった。消化管内で予測される透過性は、対照であるプロプラノロールよりも高く、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールが高透過性の化合物に分類されることを示した。全ての場合で、BからAへの化合物の指向性輸送率は低く、B:A比は0.4:1と算出され、流出作用はないことが示された。化合物の回収率は良好で、何れの流出方向試験よりも僅かに高かった。フィルターが制御する化合物の流出率は高く、化合物の回収率も良好であった。これは、この試験系において分解又は代謝は起こらなかったことを示唆するものであった。
【0119】
(実施例7) 1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの薬理
以下の表は、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール(被験化合物)について実施した受容体結合試験の要約である。これらの試験は、以下の刊行物に記載の通り、Novascreen社が改変を加えて調製を行った。受容体結合試験を行ったのは、アドレナリン作用性α−2A(ヒト)結合試験[D.B. Bylundら、J Pharmacol & Exp Ther, 245(2):600−607 (1988), with modifications;JA Totaroら、Life Science, 44:459−467 (1989)];ドーパミン輸送体結合試験[Madrasら、Mol. Pharmacol., 36:518−524, with modifications, JJ Javitchら、Mol Pharmacol, 26:35−44 (1984)];ヒスタミンH1結合試験[Chang,ら、J Neurochem, 32:1658−1663 (1979), with modifications, JI Martinez−Mirら、Brain Res, 526:322−327 (1990); EEJ Haaksmaら、Pharmacol Ther, 47:73−104 (1990)];イミダゾリン結合試験[CM Brownら、Brit. J Pharmacol, 99(4):803−809 (1990), with modifications];ムスカリンM5(ヒト遺伝子組換え)結合試験[NJ Buckleyら、Mol Pharmacol, 35:469−476 (1989), with modifications];ノルエピネフリン輸送体(ヒト遺伝子組換え)結合試験[R. Raismanら、Eur J Pharmacol, 78:345−351 (1982), with modifications, S.Z. Raismanら、Eur J Pharmacol, 72:423 (1981)];セロトニン輸送体(ヒト)結合試験[RJ D’Amatoら、J Pharmacol & Exp Ther, 242:364−371 (1987), with modifications;NL Brownら、Eur J Pharmacol, 123:161−165 (1986)]であった。細胞/機能試験を行ったのは、ノルエピネフリン輸送体(NET−T)ヒト[A. Galliら、J Exp Biol, 198:2197−2212 (1995)];及びセロトニン輸送体(ヒト)試験[D’Amato, et al.,前掲、及びNL Brownら、Eur J Pharmacol, 123:161−165 (1986)]であった。結果を受容体阻害率%で示す。
【0120】
【化37】

【0121】
【化38】

このデータから、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールが極めて良好なセロトニン再取り込み阻害活性を有し、許容される程度のノルエピネフリンの再取り込み阻害活性を有することは明らかである。又、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールは、通常は、口渇及び嗜眠(ムスカリン/コリン作用性受容体)、鎮静又は食欲亢進(ヒスタミンH1)及び心血管作用(αアドレナリン作用性受容体)等、特異的な副作用を伴う他の受容体への結合が著明ではないという、極めて選択的な特性を有することも明らかである。
【0122】
これらの結論は、上に要約したNovascreen社の解釈に基づくものである。
【0123】
(実施例8) 1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの薬物動態及び代謝
これらの試験を実施して、本化合物のヒトにおける代謝の可能性を確認した。これらの結果は、ヒトにおける代謝がそれほど著明ではないことを示している。これは本化合物の利点である。なぜなら、全身の曝露状態が良好となり、身体内に残る薬物のほぼ全てが実際の化合物であって代謝物ではないためである。
【0124】
A. in vitroの代謝
1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールのin vitroでの代謝を、Sprague−Dawleyラット、雄のイヌ、雄のサル及び男女のヒトの肝ミクロソームを使用して実行し、代謝の安定性及び代謝物の種類を確認した。1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールは、肝ミクロソーム内で安定であり(t1/2 >60分)、全ての動物種において第I相及びII相の代謝が僅かであることを示した。
【0125】
LC/MS分析に基づけば、全ての動物種で唯一僅かな代謝物であるN−脱メチル化が検出されただけであったことから、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールは実験条件下では極めて安定であると考えられた。考えられるin vitroでの1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの代謝経路を下に示す。
【0126】
【化39】

B. イヌにおける薬物動態
1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの前臨床の薬物動態を、雄のイヌに2.5mg/kgの静脈内ボーラス投与及び7.5mg/kgの経口投与の単回投与後に確認した。雄のイヌに静脈内投与(注射用水、0.1mL/kg)を行った後、血漿クリアランスは低値で(肝血流で38mL/分/kg以下に比べて7mL/分/kg以下)、in vitroでの肝固有クリアランスと合致した。見かけの分布容積(Vss)は中等度(1.9L/kg)で、見かけの消失半減期(t1/2)は長かった(5.6時間)。7.5mg/kg(水、1mL/kg)の単回用量の経口投与後、経口での消失半減期は長かったが(6時間)、静脈内投与での消失半減期と同等であり、経口投与後の速度制御手順が薬物の除去であることを示唆した。経口投与の場合の生体利用率は高かった(60%)。
【0127】
(実施例9) 微量透析モデルにおける1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールのin vivoでの有効性
1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールを、雄のSprague−Dawleyラットを対象に実施した微量透析試験で評価した[MT Taberら、Differential effects of coadministration of fluoxetine and WAY−100635 on serotonergic neurotransmission in vivo: sensitivity to sequence of injections, Synapse, 2000 Oct; 38(1):17−26]。この技術は、自由に動き回るげっ歯類の脳における化合物の神経化学的作用を捕捉することができる。1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの作用を、うつ病の病因及び/又は治療に関与すると考えられている脳の領域であるラットの背外側前頭皮質を使用して試験した。セロトニンに対する何らかの作用が認められるかどうかを確認するため、化合物(30mg/kg, sc)を選択的5−HT1AアンタゴニストであるN−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド(WAY−100635)と併用して試験した。これを投与した論拠は、5−HTの放出を制御する細胞体樹状突起5−HT1A自己受容体を遮断するためである。これにより、5−HT1A受容体を脱感作するために、本化合物単独で長期(14日)の神経化学的試験を実施する必要がなくなる。試験の条件は以下の通りである。
動物: 雄のSprague−Dawleyラット(280〜350g)
脳の領域: 背外側(DL)前頭皮質(A/P +3.2mm、M/L ±3.5mm、D/V −1.5mm)
投与: 術後24時間の回復
プローブ挿入後3時間の均衡
1時間40分のベースライン
5−HT1AアンタゴニストであるN−[2−[4−(2−メトキシフェニル)−1−ピペラジニル]エチル]−N−(2−ピリジニル)シクロヘキサンカルボキサミド[WAY−100635](0.3mg/kg, 皮下)を投与し、20分後に1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール(30mg/kg,経口)を投与する。
試料の回収: 試料は注射から3時間2分後に回収。
分析: 5−HTレベルをHPLC−ECDで定量化。
【0128】
1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールを5−HT1Aアンタゴニストと併用した場合、皮質内の5−HTレベルは確実に上昇した。これらのin vivoでの神経化学作用は、ベンラファキシン及びフルオキセチン等の他のSNRI及びSSRIを5−HT1Aアンタゴニストと併用した場合に認められる作用と同様であった。これらのin vivoの結果は、本化合物のin vitroでの薬理学的特性を裏付けている。
【0129】
(実施例10) 疼痛動物モデルにおける1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの前臨床の有効性
現行のSNRIは、種々の疼痛の適応症に対して何らかの作用を有することが明らかにされてきた。1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールを、内臓痛モデル及び神経因性疼痛モデルの2種類のin vivo動物モデルで評価した。本化合物は、最高用量(100mg/kg)でマウスPPQ誘発性よじり運動モデルにおける内臓痛を統計学的に有意に回復させ、ラットにおける神経因性疼痛の脊髄神経結紮モデルにおける機械的痛覚過敏を統計学的に有意に回復させた(MED、10mg/kg)。1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールは、ラットを用いたホットプレート法又はテイルフリック試験の何れでも急性疼痛に作用するとは思われず(30mg/kg以下、経口)、試験した用量では(100mg/kg以下)、ラットにおける神経因性疼痛の脊髄神経結紮モデルにおける触覚性異痛症を回復させるとも思われなかった。
【0130】
A. 化合物の投与
1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールを滅菌生食水に溶解し、10mg/kg、30mg/kg及び100mg/kgの用量で経口投与(p.o.)した。ガバペンチンをTronto Research Chemicals(カナダ オンタリオ州)から購入し、0.5%メチルセルロース中の2% Tween 80中に懸濁し、腹腔内投与(i.p.)した。
【0131】
B. 被験動物
内臓痛試験では、雄のCD−1マウス(20〜25g、Charles River;米国ニューヨーク州キングストン/ストーンリッジ)を床敷を入れたケージに5匹ずつで飼育し、神経因性試験では、雄のSprague−Dawleyラット(125〜150g、Harlan;米国インディアナ州インディアナポリス)を床敷を入れたケージに3匹ずつで飼育した。全ての試験で、動物は気温を調節した部屋で、12時間の明暗周期(6時半に照明を付ける)で飼育し、餌及び水は自由に摂取させた。
【0132】
C. 内臓痛モデル:PPQ誘発性収縮(よじり運動)の評価
2mg/kgのPPQ(蒸留水中の4%エタノールに溶解、Sigma−Aldrich[米国ミズーリ州セントルイス])を腹腔内注射した後、急性の内臓痛(腹痛)に対する1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの緩和作用を評価した[Siegmund, E.ら、Proceedings of the Society for Experimental Biology and Medicine, 95 (1957) 279−731]。本化合物は、PPQの投与の60分前に予め投与した(n=7〜10/群)。試験中、PPQ投与後、マウスを1匹ずつPlexiglasケージに入れ、PPQ注射から5分後及び10分後に、1分間隔で腹部の収縮数の合計を記録した。
【0133】
カスタマイズしたSAS−excelアプリケーション(SAS Institute[米国ノースカロライナ州ケアリー])を使用して、一元配置分散分析で統計学的有意性を確認した。続いて、最小有意差分析により、著明且つ主要な作用を更に分析した。有意差の基準は、担体を投与した対照マウスに比べてp<0.05とした。
【0134】
陽性の結果(よじり運動の抑制)が10及び30mg/kgの1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールで認められたが、統計学的に有意ではなかった。よじり運動の有意な抑制は用量100mg/kgで得られた。
【0135】
D. 神経因性疼痛モデル
1. L5脊髄神経結紮(SNL)
4%イソフルラン/O2の麻酔をノーズコーンを介して送達し、手術中は2.5%を維持して外科手術を実施した。麻酔導入後、切開部位を剃毛し、滅菌野を作成した。脊髄神経結紮(SNL)手術を、左L5脊髄神経をきつく結紮することにより神経外傷を生成することを除いては、刊行物[Kim, S.H. and Chung, J.M., An experimental model for peripheral neuropathy produced by segmental spinal nerve ligation in the rat, Pain, 50 (1992) 355−63]に既述の通り実施した。要約すれば、正中切開を行い、L5横突起を除去し、6−0絹縫合糸できつく結紮し、創傷を4−0 Vicrylで層別に縫合し、皮膚は縫合クリップで留めた。
【0136】
神経因性疼痛モデルでは、カスタマイズしたSAS−excelアプリケーション(SAS Institute[米国ノースカロライナ州ケアリー])を使用して、一元配置分散分析で統計学的有意性を確認した。続いて、最小有意差分析により、著明且つ主要な作用を更に分析した。有意差の基準は、担体を投与した対照マウスに比べてp<0.05とした。SNL/担体群に比べて、1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール10mg/kg群及び30mg/kg群では陽性の傾向が確認された。
【0137】
神経因性疼痛の前臨床脊髄神経結紮モデルにおける1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの陽性結果は、内臓痛及び神経因性疼痛を含むがこれらに限定されない疼痛適応症の治療に本化合物を使用できる可能性を示している。
【0138】
2. 行動試験
機械的痛覚過敏の閾値評価を、不快な機械的刺激に対する後肢の引込反射の閾値として、後肢加圧技術を使用して判定した[Randall, L.O. and Selitto, J.J., A method for measurement of analgesic activity on inflamed tissue, Arch. Int. Pharmacodyn. 3 (1957) 409−419]。鎮痛測定器(7200, Ugo Basile, Italy)に丸型プローブを使用し、後肢背部に当て、カットオフ値を250gに設定して、エンドポイントを肢の引っ込め反射とした。閾値を評価した後、手術を行い、SNL手術から3週間後に再評価を行った。試験日にはラットに担体又は被験化合物を投与し、又は投与から1、3、5及び24時間後に機械的閾値を評価した(n=10/群)。
【0139】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって適用範囲が制限されることはない。これらの実施形態の種々の改変は、この説明から当業者に明らかになるであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に含まれる。
【0140】
本出願全体を通して特許、特許出願、刊行物、手続き等が言及されている。これらの文書は本明細書で参考として援用されている。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1は、1−[−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)−エチル−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの粉末X線回折のグラフである。
【図2】図2は、1−[−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)−エチル−シス−1,4−シクロヘキサンジオールの吸湿性を示すグラフである。
【図3】図3は、1−[−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)−エチル−シス−1,4−シクロヘキサンジオールのDSCのグラフである。
【図4】図4は、1−[−2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)−エチル−シス−1,4−シクロヘキサンジオールのpH可溶性を示すグラフである。
【図5】図5は、4−[2−ジメチルアミノ−1−(シス−1−ヒドロキシ−4−メトキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノールの粉末X線回折のグラフである。
【図6】図6は、4−[2−ジメチルアミノ−1−(シス−1−ヒドロキシ−4−メトキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノールの吸湿性を示すグラフである。
【図7】図7は、4−[2−ジメチルアミノ−1−(シス−1−ヒドロキシ−4−メトキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノールのDSCを示すグラフである。
【図8】図8は、4−[2−ジメチルアミノ−1−(シス−1−ヒドロキシ−4−メトキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノールのpH可溶性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
【化1】

の構造の化合物又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩であって、
ここで、Rは、Cl、F、Br、CH、CF、SCH、NHCH、NO、CN、OH、OC−Cアルキル、置換OC−Cアルキルである、
化合物又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がOHである請求項1に記載の化合物、又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項3】
がO−メチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がO−エチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がO−プロピル又はイソプロピルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記プロドラッグが前記化合物のエステル、エーテル又はカルバメートである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記薬学的に許容される塩が塩酸塩、コハク酸塩又はギ酸塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
50%を超えるシスジアステレオマーを含む、請求項1〜7の何れか1項に記載の化合物。
【請求項9】
95%を超えるシスジアステレオマーを含む、請求項1〜8の何れか1項に記載の化合物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の化合物、又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項11】
前記化合物が、
1−[2−ジメチルアミノ−1−(4−フェノール)エチル]−シス−1,4−シクロヘキサンジオール;
4−[2−ジメチルアミノ−1−(シス−1−ヒドロキシ−4−メトキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノール;
4−[2−ジメチルアミノ−1−(4−エトキシ−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノール;及び
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシ−4−プロポキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノール;及び
4−[2−ジメチルアミノ−1−(1−ヒドロキシ−4−イソプロポキシ−シクロヘキシル)−エチル]−フェノール、
又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩
からなる群より選択される、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
経口投薬単位を含む、請求項10又は11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記経口投薬単位がカプセル剤又は錠剤である、請求項12に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
即放性処方物を含む、請求項10〜13の何れか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
徐放性処方物を含む、請求項10〜13の何れか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
過敏性腸管症候群を処置する方法であって、請求項1〜9の何れか1項に記載の化合物又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩を、処置を必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項17】
疼痛又は疼痛症候群を処置する方法であって、請求項1〜9の何れか1項に記載の化合物を、処置を必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項18】
前記疼痛が、内臓痛及び神経因性疼痛又は疼痛症候群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
尿失禁を処置する方法であって、請求項1〜9の何れか1項に記載の化合物又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩を、処置を必要とする被験体に投与することを含む、方法。
【請求項20】
うつ病、線維筋痛症、不安、パニック障害、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、月経前不快症候群、注意欠陥障害、強迫性障害、対人不安障害、全般性不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振、神経性過食症、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、血管運動性潮紅、コカイン及びアルコール依存症、性的機能不全、境界性人格障害、線維筋痛症症候群、糖尿病性神経因性疼痛、慢性疲労症候群、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群、パーキンソン病及びてんかんを処置する方法であって、請求項1〜9の何れか1項に記載の化合物又はそのプロドラッグ若しくは薬学的に許容される塩の治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記うつ病が大うつ病(MDD)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記性的機能不全が早発性射精である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記化合物が1日1回投与用に処方される、請求項16〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
医薬品の調製における、請求項1〜9の何れか1項に記載の化合物の使用。
【請求項25】
前記医薬品が、尿失禁、うつ病、線維筋痛症、不安、パニック障害、広場恐怖症、心的外傷後ストレス障害、月経前不快症候群、注意欠陥障害、強迫性障害、対人不安障害、全般性不安障害、自閉症、統合失調症、肥満、神経性食欲不振、神経性過食症、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、血管運動性潮紅、コカイン及びアルコール依存症、性的機能不全、境界性人格障害、線維筋痛症症候群、糖尿病性神経因性疼痛、慢性疲労症候群、シャイ・ドレーガー症候群、レイノー症候群、パーキンソン病及びてんかんからなる群より選択される状態の処置用である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
前記うつ病が大うつ病(MDD)である、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
前記性的機能不全が早発性射精である、請求項25に記載の使用。
【請求項28】
YがC又は結合である、以下:
【化2】

の構造(A)の化合物を調製する方法であって、該方法は、
(a)2−(4−ヒドロキシフェノール)−ジメチルアセトアミドをハロゲン化ベンジルと反応させて、2−(4−ベンジルオキシ−フェニル)−ジメチルアセトアミドを得る工程;
(b)該2−(4−ベンジルオキシフェニル)−ジメチルアセトアミドを、YがC又は結合である以下:
【化3】

の構造を有する化合物と、好適な塩基を有する溶液中で反応させて、対応するケタール化合物を得る工程;
(c)該ケタールを含有する該溶液を酸と反応させてケトンを得る工程;
(d)水素化アルミニウムリチウム及びボランから選択される還元剤を使用して、該ケトンを選択的に還元し、シスジオール及びアミドを得て、それにより対応するジメチルアミンを提供する工程;
(e)該ベンジルエーテルを水素化して該ベンジル基を除去し、構造(A)の化合物を得る工程
を含む、方法。
【請求項29】
前記酸が水性HClである、請求項28(c)に記載の方法。
【請求項30】
前記反応物が炭酸カリウムにより急冷され、抽出、濃縮され、熱EtOAc/ヘキサンから結晶化されて、前記ケトンを得る、請求項28(c)又は請求項29に記載の方法。
【請求項31】
以下:
【化4】

の構造(B)の化合物であって、ここで、XがC、N又はOであり;YがC又は不在であり;XがCである場合は、RがH、ハロゲン、CF、SCH、NHCH、OH、OC−Cアルキル及び置換OC−Cアルキルから選択され;XがNである場合は、RがH、フェニル又はCFである、化合物を調製する方法であって、
(a)2−(4−ヒドロキシフェノール)−ジメチルアセトアミドをハロゲン化ベンジルと反応させて、2−(4−ベンジルオキシフェニル)−ジメチルアセトアミドを得る工程;
(b)該2−(4−ベンジルオキシフェニル)−ジメチルアセトアミドを、以下:
【化5】

の構造を有する化合物であって、ここで、XがC、N又はOであり;YがC又は不在であり;XがCである場合は、RがH、ハロゲン、CF、SCH、NHCH、OH、OC−Cアルキル、フェニル及び置換OC−Cアルキルから選択され;XがNである場合は、RがH、フェニル又はCFである、化合物と、好適な塩を含む溶液中で反応させる工程;
(c)(b)の産物を還元して、対応するジメチルアミンを得る工程;
(d)該ベンジルエーテルを水素化して、該ベンジル基を除去し、構造(b)の化合物を得る工程
を含む、方法。
【請求項32】
前記構造
【化6】

を有する化合物が、ピラン−4−オン及びフェニル−ピペリジン−4−オンからなる群より選択される、請求項31(b)に記載の方法。
【請求項33】
手順(a)の前記2−(4−ヒドロキシ−フェノール)−ジアルキルアセトアミドが、ジメチルホルムアミドを含む溶液中に存在する、請求項28〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ハロゲン化ベンジルと反応させる前に、前記溶液を炭酸カリウムで処理する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
手順(b)の前記化合物が、テトラヒドロフランを含む溶液中に存在する、請求項28〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記還元が水素化アルミニウムリチウムを使用して実施される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記塩基がリチウムジイソプロピルアミド及び臭化イソプロピルマグネシウムからなる群より選択される、請求項28〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項38】
以下:
【化7】

の構造を有する化合物であって、ここで、XがC、N又はOであり;YがC又は不在であり;XがCである場合は、RがH、ハロゲン、CF、SCH、NHCH、OH、OC−Cアルキル、フェニル及び置換OC−Cアルキルから選択され;XがNである場合は、RがH、フェニル又はCFである、化合物。
【請求項39】
以下:
【化8】

の構造を有する化合物であって、ここで、XがC、N又はOであり;YがC又は不在であり;XがCである場合は、RがH、ハロゲン、CF、SCH、NHCH、OH、OC−Cアルキル、フェニル及び置換OC−Cアルキルから選択され;XがNである場合は、RがH、フェニル又はCFである、化合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−501229(P2009−501229A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521551(P2008−521551)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/026991
【国際公開番号】WO2007/011594
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(591011502)ワイス (573)
【氏名又は名称原語表記】Wyeth
【Fターム(参考)】