説明

部品の取付装置

【課題】ボスを損傷させることなく金属クリップから抜き出してリサイクル性を向上させ、ボスを挿入しやすく取付孔に対する抜け止め力も高める部品の取付装置を提供する。
【解決手段】この取付装置は、拡径部11を有するボス10と、金属クリップ30とを備え、金属クリップ10は、U字状の脚部11と、取付孔7の裏側周縁に係合する第1係合肩部35と、抜け止め突起37と、取付孔7の表側周縁に係合するフランジ部39と、スリット44を介して第1係合肩部35と分離形成される第2係合肩部45と、撓み可能な一対の弾性挟持片47と、くの字状をなしボス10の拡径部11に係合する係合部49とを有している。被取付部品5に対して部品1を強く引張ると、くの字状の係合部49は、ボス10に食い込むことなく、弾性挟持片47の間からボス10を抜け出すことがことができ、リサイクル性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の内装部材等の部品を、パネル部材等の被取付部品に固定するために用いられる部品の取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装部材等をパネル部材等に取付ける装置として、下記特許文献1には、部品から立設したボス(係止ペグ)に金属クリップを組み付けて、この金属クリップを介して取付孔を有するパネル部材に取付けるようにした部品の取付装置が開示されている。前記金属クリップは、U字状の脚部と、該脚部の両端部を外側に屈曲されたフランジ部と、脚部の内側からスリットを介してV字状をなして外側に屈曲された係止ばね片と、脚部とフランジ部との境界である屈曲部から脚部の内側に向けて斜め下方に突出した一対の逆刺爪片が切り起こして形成されている。そして、ボスを一対の逆刺爪片の間に挿入すると、ボス両側に各逆刺爪片が圧接し、両逆刺爪片によってボスが挟み込まれて、ボスに金属クリップが組み付けられる。その状態で取付孔に挿入することにより、係止ばね片が取付孔に係合して、金属クリップを介して部品が被取付部品に固定される。
【0003】
また、下記特許文献2には、部品から立設したボス(リブ)に樹脂クリップを組み付けて、この樹脂クリップを介して取付孔を有するパネル部材に取付けるようにした、部品の取付装置が開示されている。前記樹脂クリップは、ボスを挟み込む形状をなした本体部と、該本体部の両内面から突出した一対の係合突部とを有しており、一方、ボスの長さ方向途中には、係合突部が係合する係合孔が設けられている。また、前記係合突部は、その両側面にテーパ状をなした係合面が形成されている。そして、ボスを本体部に挿入すると、係合突部が係合孔に入り込むと共にテーパ状の係合面が係合孔周縁に係合して、ボスに樹脂クリップが組み付けられ、その状態で取付孔に挿入することにより、本体部の両端部が取付孔に係合して、樹脂クリップを介して部品が被取付部品に固定される。
【特許文献1】実開平5−69407号公報
【特許文献2】特開平11−30214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでリサイクル等のため、内装部材等をパネル部材から取外す場合がある。このような場合、上記特許文献1の場合においては、一対の逆刺爪片によってボスが強固に挟み込まれているため、部品を被取付部品に対して強く引っ張ると、ボスが削られてしまうという不都合が生じる。こうなると、ボスに再度金属クリップを組付けてもガタツキが生じるため、部品の再利用を図ることは難しいという問題がある。
【0005】
一方、上記特許文献2の場合は、部品を引っ張ると、テーパ状の係合面を介して係合突部が係合孔から抜け出て、樹脂クリップからボスを抜き出し、被取付部品から部品を取外すことができる。しかしながら、上記樹脂クリップは、ボスに係合する部分である係合突部と、取付孔に係合する部分(本体部の両端部)とが共に本体部に設けられているため、本体部の肉厚を厚くして剛性を高めると、取付孔に対して強固に固定できるが、本体部が撓みにくくなってボスを本体部内に挿入しにくくなり、一方、ボスを挿入しやすいように本体部を薄くすると、取付孔にしっかりと固定されずクリップが抜け外れやすくなり、ボスの挿入しやすさと、取付孔に対する高い抜け止め力との両立を図ることは難しい。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ボスを損傷させることなく金属クリップから抜き出してリサイクル性を向上させると共に、ボスを挿入しやすく取付孔に対する抜け止め力も高めることができる、部品の取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、部品に形成されたボスと、該ボスに組付けられる金属クリップとを備え、前記金属クリップをボスに組付けて、被取付部品に形成された取付孔に挿入して嵌合させることにより、部品を被取付部品に固定するようにした部品の取付け装置において、前記ボスは、その先端に拡径部が形成されており、前記金属クリップは、U字状に屈曲された脚部と、該脚部から所定角度で内側に屈曲されて前記取付孔の裏側周縁に係合する第1係合肩部と、前記脚部と前記第1係合肩部との境界部にて幅方向の一部を切り起こして前記脚部の斜面に沿って外側へ突出させた抜け止め突起と、前記第1係合肩部から外側に屈曲されて前記取付孔の表側周縁に係合するフランジ部と、前記第1係合肩部の内側又は外側に形成された前記フランジ部近傍まで伸びるスリットを介して第1係合肩部と分離して形成されると共に前記第1係合肩部とほぼ同じ角度で屈曲された第2係合肩部と、該第2係合肩部から内側に屈曲されて前記脚部の内部に向かって伸びると共に脚部の内側及び外側に撓み可能とされた少なくとも一対の弾性挟持片と、該弾性挟持片の先端部からくの字状をなして外側に屈曲され前記ボスの拡径部に係合する係合部とを備え、一対の弾性挟持片の先端部どうしにおける間隔が、前記ボスの拡径部の幅よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする部品の取付装置を提供するものである。
【0008】
上記発明によれば、ボスを脚部の内側に押し込むと、一対の弾性挟持片が拡径部に押圧されて外側に撓むと共に、係合部が拡径部に係合して、ボスにクリップを組付けることができる。この状態で、クリップを取付孔に挿入すると、フランジ部が取付孔の表側周縁に係合すると共に、第1係合肩部及び第2係合肩部が取付孔の裏側周縁に係合して、金属クリップを介して被取付部品に部品を固定することができる。
【0009】
そして、部品を被取付部品に対して強く引張ると、抜け止め突起が取付孔の裏側周縁に引っ掛かるので、クリップに対してボスが引張られることになり、ボスの拡径部に係合部が押圧されて弾性挟持片が外側に撓み、一対の弾性挟持片の間からボスを抜き出すことができる。このように、クリップを被取付部品側に残した状態で、部品のみを被取付部品から取外すことができるので、金属クリップと部品とを分離してリサイクル性を向上させることができる。
【0010】
また、弾性挟持片の係合部は、くの字状をなしていてボスに食い込むことがないので、一対の弾性挟持片の間から、ボスを損傷させることなく抜き出すことができ、部品の再利用を図ることが可能となる。
【0011】
更に、第2係合肩部は、第1係合肩部からスリットを介して分離して形成されているので、弾性挟持片を撓ませやすくして、一対の弾性挟持片の間にボスを挿入しやすくすることができると共に、ボスを引き抜く方向に力が作用した際には、弾性挟持片が広がって第2係合肩部が取付孔の裏側周縁により強く係合するので、クリップの取付孔に対する抜け止め力を高めることができる。
【0012】
本発明の第2は、前記第1の発明において、前記ボスの両側面において、最大拡径部より先端側のボスの軸心に対する傾斜角度は、最大拡径部より基端側のボスの軸心に対する傾斜角度よりも小さくされている部品の取付装置を提供するものである。
【0013】
上記発明によれば、弾性挟持片の間にボスを挿入しやすくすることができると共に、ボスの拡径部に弾性挟持片の係合部が係合した状態では強い抜け止め力が得られる。
【0014】
本発明の第3は、前記第1又は第2の発明において、前記クリップのフランジ部の先端は、前記被取付部品の表面から離反する方向に屈曲されて、ツマミ片をなしている部品の取付装置を提供するものである。
【0015】
上記発明によれば、フランジ部の先端がツマミ部をなしているので、被取付部品側にクリップを残してボスを抜き出した後、上記ツマミ部を摘まんで、抜け止め突起が取付孔の内周に位置するまで、脚部を内側に撓ませた後、金属クリップを取付孔から引き抜くことにより、金属クリップを取付孔から容易に取外すことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の部品の取付装置によれば、ボスにクリップを組付けた状態で、クリップを取付孔に挿入すると、フランジ部が取付孔の表側周縁に係合すると共に、第1係合肩部及び第2係合肩部が取付孔の裏側周縁に係合して、金属クリップを介して被取付部品に部品をしっかりと固定することができる。
【0017】
また、部品を取外す必要が生じたときには、部品を被取付部品に対して強く引張ると、抜け止め突起が取付孔の裏側周縁に引っ掛かるので、クリップに対してボスが引張られ、一対の弾性挟持片の間からボスを抜き出すことができる。このように、クリップを被取付部品側に残した状態で、部品のみを被取付部品から取外すことができるので、金属クリップと部品とを分離してリサイクル性を向上させることができる。
【0018】
また、弾性挟持片の係合部は、くの字状をなしボスに食い込むことがないので、一対の弾性挟持片の間から、ボスを損傷させることなく抜け出すことがことができ、部品の再利用を図れる。
【0019】
更に、第2係合肩部は、第1係合肩部からスリットを介して分離して形成されているので、弾性挟持片を撓ませやすくして、一対の弾性挟持片の間にボスを挿入しやすくなり、ボスを引き抜く方向に力が作用した際には、弾性挟持片が広がって第2係合肩部が取付孔の裏側周縁により強く係合するので、クリップの取付孔に対する抜け止め力を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図1〜11を参照して本発明の部品の取付装置の一実施形態について説明する。
【0021】
この部品の取付装置(以下、「取付装置」という)は、合成樹脂からなる内装部材(例えば、ガーニッシュやトリムボード)等の部品1の裏面側から突設したボス10に、金属クリップ30(以下、「クリップ30」という)を組付けて、その状態で金属よりなる車体パネル等の被取付部品5に設けられた長孔形状をなす取付孔7に挿入して、クリップ30を取付孔7に嵌合させることにより、クリップ30を介して被取付部品5に部品1を取付けるようにしたものである。
【0022】
各構成部材について説明すると、図1及び図7〜12に示すように、部品1の裏面から所定長さで板状のボス10が立設されている。また、このボス10の先端には、所定高さで外側に突出した拡径部11が形成されている。より具体的には、この拡径部11は、ボス10の軸方向途中から先端に向かうにつれて次第に外側に突出し、後述するクリップ30の係合部49が係合する係合面12と、該係合面12の最も外側へ突出した頂部13と、該頂部13から先端に向かうにつれて次第に縮径するテーパ面14とを有している。また、ボス10の表面側の頂部13から、その反対の裏面側の頂部13までの間隔を、拡径部11の幅D1とする(図10参照)。この幅D1は、後述するクリップ30の各係合部49、49どうしの間隔D3(図5参照)よりも大きく設定されていて、ボス10の押し引きによって弾性挟持片47及び係合部49を押圧して、弾性挟持片47が撓むようになっている。
【0023】
なお、図10に示すようにボス10の軸心をCとしたとき、軸心Cに対する前記係合面12の傾斜角度をθ1とし、軸心Cに対する前記テーパ面14の傾斜角度をθ2としたとき、θ2の方がθ1よりも小さくなるように設定されている。また、ボス10は、拡径部11の係合面12に、クリップ30の係合部49が係合したときに、図7及び図8に示すように、その先端がクリップ30の屈曲部33(後述する)の内側に突き当たる長さで形成されており、更に、ボス10の先端は円弧状に形成されていて、前記屈曲部33の内側に広い面積で当接するようになっている。このようにボス10を形成したことにより、ボス10にクリップ30を、ガタツキを少なくして組付けることが可能となっている。
【0024】
また、ボス10の軸方向に沿った両側縁からは、一対の側壁16,16が立設されている。この一対の側壁16,16は、ボス10にクリップ30が組み付けられたときに、クリップ30の幅方向両側に配置されて、クリップ30の組付け位置の位置ズレを防止する役割をなしている。また、各側壁16の先端側の両側面には、先端に向かって次第に縮径するテーパ面16aが形成されており、被取付部品5の取付孔7に挿入しやすくなっている。更に、各側壁16の基部側には、側壁16に対して直交するようにして前記部品1の裏面に沿って伸びる当接部18が所定高さで突設されている。この当接部18は、図8に示すように、被取付部品5に部品1が固定された状態で、被取付部品5の取付孔7の表側周縁に当接する部分となると共に、その状態で、後述するクリップ30のツマミ片41と部品1の裏面との間に隙間を形成して、ツマミ片41に対する接触を防止する部分となっている。
【0025】
上記ボス10に組み付けられるクリップ30について、図2〜6を参照して説明すると、このクリップ30は、前記ボス10の表裏両面を挟み込むように、屈曲部33を介して長さ方向の両側部を斜め外側に屈曲させて、側方から見て略U字状をなす脚部31を有している。脚部31の両側部は、その内側が後述する切欠き部43及びスリット44によって、切欠かれた形状をなしている。なお、本発明において、U字状とはボス10の両面を挟む形状であればよく、例えば、脚部の両側部を所定角度で外側に拡開させてV字状をなした形状も含む意味である。
【0026】
脚部31の両側部の端部からは、所定角度で内側に屈曲されて、取付孔7の裏側周縁に係合する第1係合肩部35が形成されている。この実施形態における脚部31の場合、前述したように切欠き部43及びスリット44により内側が切欠かれた形状をなしているため、脚部31の幅方向の両側部から上記第1係合肩部35,35がそれぞれ設けられている。また、図4,6に示すように、脚部31の端部と第1係合肩部35との境界部にて、幅方向の外側を切り起こして、脚部31の斜面に沿って外側へ突出させて、抜け止め突起37,37がそれぞれ形成されている。各抜け止め突起37は、クリップ30からボス10を引き抜かれる際に、取付孔7の裏側周縁に引っ掛かる部分となる(図9,10参照)。また、第1係合肩部35は、所定角度で屈曲しているため、被取付部品5が薄い場合や厚い場合でも、第1係合肩部35の一部が取付孔7の裏側周縁に係合するため、被取付部品5の板厚変化に対応できるようになっている。
【0027】
脚部31の幅方向の両側部に設けた第1係合肩部35,35は、フランジ部39に連結されている。このフランジ部39は、第1係合肩部35,35の先端部からクリップ30の軸方向に沿ってほぼ平行に伸びた後、外側に向けてほぼ直角に屈曲されて設けられており、被取付部品5の取付孔7の表側周縁に係合するようになっている。更に、このフランジ部39の先端は、被取付部品5の表面から離反するように上方に向けて、ほぼ直角に屈曲されてツマミ片41をなしている。なお、このツマミ片41は、クリップ30をボス10に組み付けたときに、部品1の裏面に接触しない高さで伸びている(図7,8参照)。
【0028】
脚部31の両側部の内側であって、屈曲部33の近傍には所定幅で切欠き部43が形成され、この切欠き部43の両側から脚部31の長さ方向に沿って一対のスリット44,44が設けられている(図4参照)。この一対のスリット44,44は、前記第1係合肩部35,35の内側に位置すると共に、その先端が前記フランジ部39の近傍まで伸びている。そして、この一対のスリット44,44を介して、前記フランジ部39の幅方向の中央から第2係合肩部45が形成されている。この第2係合肩部45は、スリット44,44により第1係合肩部35,35に対して分離されていると共に、第1係合肩部35とほぼ同じ角度で屈曲されて形成されている。なお、第2係合肩部45は、その下端部が、前記第1係合肩部35の下端部よりも上方に位置し、第1係合肩部35に対して若干短く形成されている(図3参照)。
【0029】
また、各第2係合肩部45の先端部から内側に屈曲されて、脚部31の内部に向かって一対の弾性挟持片47,47が延設されている。各弾性挟持片47は、第1係合肩部35に対して分離された第2係合肩部45から延設されているため、脚部31の内側及び外側に撓み可能となっている。また、各弾性挟持片47は、図3に示すように脚部31の軸方向中間まで伸びていて、その先端部からくの字状をなして外側に屈曲されて、前記拡径部11の係合面12に係合する係合部49が形成されている。そして、図5に示すように、一対の弾性挟持片47,47の先端部どうしにおける間隔をD3としたとき、この間隔D3は前記ボス10の拡径部11の幅D1よりも小さくなるように設定されている。その結果、ボス10が押し引きされた場合に、ボス10の拡径部11により弾性挟持片47及び係合部49が押圧されて、弾性挟持片47が撓むようになっている。
【0030】
次に、上記構成からなる本発明の取付装置を用いて、部品1を被取付部品5に取付ける際の手順について説明する。
【0031】
まず、部品1から突設したボス10に対してクリップ30を組付けるべく、クリップ30の幅方向両側を、ボス10の各側壁16,16の内側となるように整合させて、クリップ30をボス10に対して押し込んでいく。すると、拡径部11のテーパ面14により案内されて、一対の弾性挟持片47,47の間にボス10の拡径部11が挿入されていく。このとき、本発明においては、一対の弾性挟持片47,47の先端部どうしの間隔D3を、ボス10の拡径部11の幅D1よりも小さくなるように設定したため、拡径部11に対してクリップ30が深く押し込まれると、テーパ面14に先端部が押圧されて各弾性挟持片47が外側に撓み、係合部49がテーパ面14を乗り越えて係合面12に至ると、各弾性挟持片47が弾性復帰して係合面12に係合部49が係合すると共に、ボス10の円弧状をなした先端部が、クリップ30の屈曲部33の内側に突き当たって、ボス10にクリップ30が組み付けることができる。このとき、ボス10は、その先端部がクリップ30の屈曲部33の内側に当接すると共に、係合面12がクリップ30の係合部49に係合しているので、クリップ30をガタツキなくしっかりと組付けることが可能となる。
【0032】
上記のように、クリップ30を組付ける際には各弾性挟持片47が外側に撓むようになっているが、この弾性挟持片47は、第1係合肩部35からスリット44を介して分離形成された第2係合肩部45から延設されているため、撓ませやすくなっている。その結果、一対の弾性挟持片47,47の間にボス10を挿入しやすくなるので、ボス10に対するクリップ30の取付け作業性を高めることができる。
【0033】
以上のようにして、ボス10にクリップ30を組付けたら、図7に示すように、被取付部品5の取付孔7に対してボス10及びクリップ30を押し込んでいく。すると、取付孔7の内周に押圧されて、クリップ30の脚部31が内側に撓み、第1係合肩部35及び第2係合肩部45が取付孔7の裏側周縁に至ると、弾性復帰して取付孔7の裏側周縁に係合すると共に、フランジ部39が取付孔7の表側周縁に係合して、クリップ30が被取付部品5に取付けられる。更に、部品1の当接部18が被取付部品5の表面に当接し、図8に示すように、クリップ30を介して被取付部品5に部品1を固定することができる。
【0034】
そして、修理やリサイクル等のため、被取付部品5から部品1を取外したいときには、被取付部品5に対して部品1を強く引っ張るだけでよい。こうすると、係合部49の下方に係合している係合面12を介して、クリップ30自体が上方に持上げられて、図9に示すように、抜け止め突起37が取付孔7の裏側周縁に引っかかるので、クリップ30に対してボス10のみが引っ張られるようになる。すると、ボス10の係合面12によって、係合部49が押圧されて各弾性挟持片47が外側に撓み、係合面12が係合部49を通り抜けて、図10に示すように、一対の弾性挟持片47,47の間からボス10を抜き出すことができる。
【0035】
このように、クリップ30を被取付部品5側に残した状態で、部品1のみを被取付部品5から取外すことができるので、クリップ30と部品1とを分離してリサイクル性を向上させることができる。特に、本実施形態のように、被取付部品5がクリップ30と同じ金属製とされている場合、金属製のクリップ30及び被取付部品5と、合成樹脂製の部品1とに、材料別に分別することができるので、リサイクルに好適となる。
【0036】
また、クリップ30の係合部49は、くの字状をなしているため、ボス10が引き抜かれる際でも、拡径部11の係合面12に押圧されて、自然に外側へ撓むようになっているので、ボス10に食い込んだりすることない。その結果、一対の弾性挟持片47,47の間から、ボス10を損傷させることなく抜き出すことがことができるので、例えば、ボス10にクリップ30をガタツキなく安定して再組付することが可能となり、部品1の再利用を図ることができる。
【0037】
更に、このクリップ30においては、第1係合肩部35のみならず、第2係合肩部45も取付孔7の裏側周縁に当接するようになっているので、ボス10を引き抜く方向に力が作用すると、各弾性挟持片47,47が外側に広がって第2係合肩部45が取付孔7の裏側周縁により強く係合するようになり、その結果、クリップ30の取付孔7に対する抜け止め力を高めることができる。また、前述したように、一対の弾性挟持片47,47の間にボス10を挿入しやすくされているので、ボス10の挿入しやすさと、取付孔7に対する高い抜け止め力との両立を図ることができ、リサイクルを考慮した部品の取付装置として好適となる。
【0038】
また、本実施形態においては、図10に示すように、ボス10の軸心Cに対するテーパ面14の傾斜角度をθ2が、ボス10の軸心Cに対する係合面12の傾斜角度θ1よりも小さくなるように設定されているので、一対の弾性挟持片47,47の間にボス10を挿入しやすくすることができると共に、ボス10の拡径部11の係合面12に、弾性挟持片47の各係合部49が係合した状態では強い抜け止め力が得られることが可能となる。
【0039】
ところで、図10に示すように、クリップ30からボス10を抜き出した後に、クリップ30が取付孔7に対して位置ズレすることがあり、こうした場合には、クリップ30を取付孔7から引き抜いて再度取付ける必要がある。それ以外にも、クリップ30を交換したい場合等、被取付部品5からクリップ30を取外す必要が生じることがある。このとき、本実施形態においては、クリップ30の両端に一対のツマミ片41,41が設けられているので、図11に示すように、ツマミ片41,41を、プライヤ等の工具若しくは作業者自身の手等によって互いに近接するように挟み付けることができる。すると、クリップ30の両側部の第1係合肩部35、第2係合肩部45、及び抜け止め突起37と、取付孔7との係合を解除することができるので、後はクリップ30を取付孔7から引き抜くことによって、被取付部品5からクリップ30を取外すことができる。
【0040】
図12〜14には、本発明の部品の取付装置の他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0041】
この実施形態においては、前記実施形態と比べてクリップの形状が異なっている。特に、U字状の脚部の内側ではなく、脚部の外側に一対の第2係合肩部がそれぞれ設けられている点で、前記実施形態と異なっている。
【0042】
すなわち、この実施形態におけるクリップ30aは、U字状に屈曲した脚部31の両側に、それぞれスリット44,44が設けられていて、各スリット44,44の先端が、第1係合肩部35の両側に位置すると共にフランジ部39の近傍まで伸びている。そして、各スリット44,44を介して第1係合肩部35と分離して、その両側に第2係合肩部45,45が形成され、該第2係合肩部45から弾性挟持片47が屈曲形成されている。この弾性挟持片47は、クリップ30の両側部に2つずつ、合計で4つ設けられている。また、脚部31の端部と第1係合肩部35との境界部には、幅方向の両側に沿って、一対の抜け止め突起37,37が切り起こして形成されている。
【0043】
この実施形態の場合も、前記実施形態と同様に、図14に示すようにして、クリップ30aを介して、被取付部品5に部品1を固定することができ、特に、弾性挟持片47が4つ設けられている関係上、ボス10の拡径部11の係合面12に、4つの係合部49がそれぞれ係合するようになるので、クリップ30に対するボス10の抜け止め力をより一層高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の部品の取付装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同部品の取付装置を構成するクリップの斜視図である。
【図3】同クリップの正面図である。
【図4】同クリップの右側面図である
【図5】図4のA−A矢視線における断面図である。
【図6】図4のB−B矢視線における断面図である。
【図7】部品の取付装置を用いて、部品を被取付部品に取付ける前の状態を示す説明図である。
【図8】部品の取付装置を用いて、部品を被取付部品に取付けた状態を示す説明図である。
【図9】被取付部品から部品を取外す際の第1の工程を示す説明図である。
【図10】被取付部品から部品を取外す際の第2の工程を示す説明図である。
【図11】金属クリップを被取付部品から取外す際の状態を示す説明図である。
【図12】本発明の部品の取付装置の他の実施形態を示しており、その正面図である。
【図13】本発明の部品の取付装置の他の実施形態を示しており、その右側面図である。
【図14】図13のE−E矢視線における断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 部品
5 被取付部品
7 取付孔
10 ボス
11 拡径部
30,30a 金属クリップ(クリップ)
31 脚部
35 第1係合肩部
37 抜け止め突起
39 フランジ部
41 ツマミ片
45 第2係合肩部
47 弾性挟持片
49 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品に形成されたボスと、該ボスに組付けられる金属クリップとを備え、前記金属クリップをボスに組付けて、被取付部品に形成された取付孔に挿入して嵌合させることにより、部品を被取付部品に固定するようにした部品の取付け装置において、
前記ボスは、その先端に拡径部が形成されており、
前記金属クリップは、U字状に屈曲された脚部と、該脚部から所定角度で内側に屈曲されて前記取付孔の裏側周縁に係合する第1係合肩部と、前記脚部と前記第1係合肩部との境界部にて幅方向の一部を切り起こして前記脚部の斜面に沿って外側へ突出させた抜け止め突起と、前記第1係合肩部から外側に屈曲されて前記取付孔の表側周縁に係合するフランジ部と、前記第1係合肩部の内側又は外側に形成された前記フランジ部近傍まで伸びるスリットを介して第1係合肩部と分離して形成されると共に前記第1係合肩部とほぼ同じ角度で屈曲された第2係合肩部と、該第2係合肩部から内側に屈曲されて前記脚部の内部に向かって伸びると共に脚部の内側及び外側に撓み可能とされた少なくとも一対の弾性挟持片と、該弾性挟持片の先端部からくの字状をなして外側に屈曲され前記ボスの拡径部に係合する係合部とを備え、
一対の弾性挟持片の先端部どうしにおける間隔が、前記ボスの拡径部の幅よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする部品の取付装置。
【請求項2】
前記ボスの両側面において、最大拡径部より先端側のボスの軸心に対する傾斜角度は、最大拡径部より基端側のボスの軸心に対する傾斜角度よりも小さくされている請求項1記載の部品の取付装置。
【請求項3】
前記クリップのフランジ部の先端は、前記被取付部品の表面から離反する方向に屈曲されて、ツマミ片をなしている請求項1又は2記載の部品の取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−315467(P2007−315467A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−144422(P2006−144422)
【出願日】平成18年5月24日(2006.5.24)
【出願人】(000124096)株式会社パイオラックス (331)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】