説明

部品取り付け後回路形成する実装工法に用いるパッチランドの製造方法

【課題】汎用電子部品を用いて電子部品組み立て作業をする際、はんだ付け作業をせずに、または予め回路形成されたプリント板を用いることなしで電子部品を実装する工法において用いられるパッチランドに関し、ピン間の狭い部品あるいはピン精度の厳しい部品向けのパッチランドを製造する。
【解決手段】引き剥がし容易な銅箔の接着強度であるピール強度を0.5kg/cm以下にした銅張り基板を用いて、エッチングすることによりパッチランドを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を取り付け固定した後、絶縁基板上に導電ペーストで回路パターンの配線を行う電子部品実装工法におけるパッチランドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品取り付け後に回路形成する実装するパッチランド実装工法で用いていたパッチランドの製造は、図1のように打ち抜きポンチまたは手動・自動プレスを用いて銅箔を打ち抜いていた。
【0003】
しかし、ICなどのピン間が狭い部品、ピッチ間精度の厳しいものには対応できなかった。また、打ち抜いたパッチランドは、ばらばらになり、一つ一つ各部品のリードに取り付け、時間が掛かり非効率な作業となるという欠点があった。そして、打ち抜いたパッチランドは図1の右図のように電子部品のリードにはんだ付けして取り付けいていた。
【特許文献1】特開平11−95655号公報、特願2005−075050
【非特許文献1】「学研電子ブロックのひみつ―EX‐150復刻版のすべてがわかる」 大人の科学編集部編集 学習研究社発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点は、ICなどのピン間が狭い部品やピッチ間精度の厳しい部品を電子工作に採用できないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、銅箔の接着強度であるピール強度を0.5kg/cm以下にした銅張り基板を用いて、これをエッチングすることにより、精度の高いパッチランドを製造することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ICなどのピン間が狭い部品やピッチ間精度の厳しい部品を電子工作に採用することができる。また、各リード毎の位置合わせが不要となり、且つリードにパッチランドを接着するとき、パッチランを固定しておく必要がなくなり、誰でも簡単に効率的に電子部品のリードへパッチランドの取り付けが行えるようになる。これにより、抵抗・コンデンサ・トランジスタだけでなく、ICなどの汎用部品、さらに表面実装部品であるQFPなども回路に組み込むことができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
引き剥がし容易なように、銅箔の接着強度であるピール強度を0.5kg/cm以下にした銅張り基板を用いて、エッチングすることにより間単にパッチランドを形成することを実現した。
【実施例】
【0008】
まず、ピール強度を0.5kg/cm以下にした銅張り基板の製造方法を説明する。図2のA)に示すように厚さ50ミクロンの銅箔1に、一般の多層積層板に用いられる黒化処理で、苛性ソーダの濃度が高い黒化処理を施し、密着強度を低くなるように処理して、図2のB)の銅箔1aとした。その他に銅箔の密着強度を低くする処理として、有機皮膜処理、例えばイミダゾール処理などが考えられる。銅箔厚さが薄過ぎた場合には、電子部品をリードにはんだ付けし基板からの引き剥がした時に、パッチランドが欠損することがある。また、銅箔厚さが厚過ぎた場合には、銅箔をエッチングする時間が多くかかり効率的ではない。
【0009】
次に、図2のB)に示すように処理された銅箔1aと厚さ1.6mmの紙フェノール基板3との間に、接着層となるプリプレグまたは接着フィルムまたはボンディングシート2を介し、加圧加熱により積層接着し図2のC)に示す基板3aとした。この接着強度が強過ぎた場合には、電子部品をリードにはんだ付けし基板からの引き剥がした時に、ランドがきれいに基板から剥がれないことがある。また、接着強度が弱過ぎた場合には、パッチランド形成工程であるドライフィルムラミネート後のエッチング工程で、パッチランドパターンが欠落することがある。一体化し銅張り板となった基板のピール強度を測定したところ、0.1kg/cmであった。
【0010】
次に、積層接着により一体化し銅張り板となった基板3aにドライフィルムをラミネートして、予め設計されたパッチランドのマスクフィルムを用いて露光した。マスクフィルムには、パッチランドが図3のA)のように16ピンIC用として2.54mmピッチの矩形ランドを配置したものを用いた。また、図3のB)のように矩形ランドのコーナー部を丸くしたものや、図3のC)のように抵抗やコンデンサなどの一般電子部品用として、2.54mmピッチ格子状に丸ランドを配したものも考えられる。さらに、図3のD)のようにQFP部品で表面実装用にランドをファンアウトした形のものも考えられる。
【0011】
その後、水酸化カリウム溶液で現像をおこなった。現像した基板を、塩化第二銅溶液でエッチングして、図2のD)に示すようにパッチランドのパターンを形成した。実施例では、フォトエッチ工法により、パッチランドを形成したが、パターンが粗い場合であれば、スクリーン印刷による画像形成後、エッチングによりパッチランドを形成することも可能である。
【0012】
実際に、図4のように矩形にパッチランドを形成した基板に、ICを載せたところ、簡単にパッチランドとICリードの位置が合わせられた。パッチランドの座りが良くなる様に、図5のようにICリードの先を若干曲げることによって、パッチランドと部品リードとの接続をより強固なものとするもできる。その後、図4の右図のようにはんだ付けを行いICのリードにパッチランドを付けた。
【0013】
次に、パッチランドをICのリードに付ける工程を図2に示す。まず、図2のE)のようにICを銅箔が剥離可能な基板上にエッチングで形成されたパッチランドの位置に合わせる。次に図2のF)のようにパッチランドとICリードをはんだまたは導電ペーストで接続・接着して取り付ける。最後に、部品のリードを基板から、ゆっくりと引き離すとパッチランドは、図2のG)のように基板から容易に剥離してICリードについている。実際に、パッチランドと基板との接着のピール強度が0.1kg/cmと弱いため、パッチランドは、はんだ付けしたICリード側へ引っ張られて、容易に剥がすことが出来た。また、剥離容易なように、はんだ付け温度が、例えば、300度以上の温度で接着層が劣化するようなボンディングシートで積層一体化した積層板を用いて、引き剥がし容易なようにすることも考えられる。図6には、エッチングした剥離容易なパッチランドが配列した基板の上に、ICを載せてパッチランドを引き剥がす工程を、立体的な模式図で示した。
【0014】
このICを、アクリルの基板の上に瞬間接着剤で接着したところ、うまく固定することが出来た。回路を組み立てるために、その他の部品にパッチランドを付け、アクリル基板に瞬間接着剤で固定し、部品搭載を完成させることが出来た。引き続き、導電ペーストで回路パターンを電子部品の端子間を繋ぐように描画して、回路を完成させた。回路をジャンプさせるときには、すずめっき線をU字型に変形させ、リードの両端にパッチランドを付けてジャンパーさせることも可能であった。組み立てられたキットに、電源を印加したところ稼動させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0015】
電子回路図をそのままに組み立てられるため、電子回路を学習し理解する上で、分りやすい教材となるため、学校現場だけでなく、企業の新人研修や職業訓練などでの活用が見込まれる。また、ピッチ間の狭い部品やピッチ間精度の厳しい部品にも対応できるため試作開発の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】銅箔板打ち抜き概略図をトランジスタにパッチランド取り付け図
【図2】ピール強度を0.5kg/cm以下にした銅張り基板の製造とパッチランド取り付け図(実施例)
【図3】パッチランドの形状例
【図4】パッチランドを形成した基板へICを載せた図とその部品リードにはんだまたは導電ペーストで接着した図
【図5】ICリードの先を若干曲げてパッチランドを取り付けた図
【図6】ICを載せてパッチランドを引き剥がす工程の立体模式図
【符号の説明】
【0017】
1 銅箔(1a:表面処理後の銅箔)
2 プリプレグまたは接着フィルムまたはボンディングシート
3 絶縁基板(3a:一体積層後の基板)
4 パッチランド
5 はんだ、または導電性ペースト
6 一般電子部品(6a、6bを含む)
7 電子部品のリード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路図によって作成された電子部品のレイアウト図に従って、絶縁基板上に電子部品を接着剤にて取り付け固定した後、絶縁基板上に導電ペーストで各電子部品の端子間を繋ぎ、配線することを特徴とする電子部品の実装において、予め各電子部品の端子となる部分にはんだ付けまたは導電ペーストで付ける金属小片(パッチランド)の製造に関し、ベース基板に接着ピール強度0.5kg/cm以下で剥離容易な銅箔35ミクロから100ミクロンを張った銅張り基板をエッチングすることによって、パッチランドを形成する製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−278390(P2006−278390A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90744(P2005−90744)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(399097742)
【Fターム(参考)】