部品締結ドライバユニット
【課題】絶対原点の調整を可能となす部品締結ドライバユニットの提供。
【解決手段】本発明は、ACサーボモータ20の駆動軸20aと駆動工具28とをねじりコイルばね25を介して連結し、駆動軸20aの絶対回転角度を示す信号を出力可能なレゾルバ21と、駆動工具28の絶対回転角度を示す信号を出力可能なレゾルバ27と、制御ユニット3とを備えている。
制御ユニット3は、レゾルバ21,27の信号からACサーボモータ20が駆動していない状態での駆動軸20aと駆動工具24との固有回転角度差を割り出し、これを表示部36に表示する。また、レゾルバ21,27はそれぞれ相対的に回転位置決め可能に設けられているため、表示部36に表示された固有回転角度差を見て、レゾルバ21,27の絶対原点を調整することができる。
【解決手段】本発明は、ACサーボモータ20の駆動軸20aと駆動工具28とをねじりコイルばね25を介して連結し、駆動軸20aの絶対回転角度を示す信号を出力可能なレゾルバ21と、駆動工具28の絶対回転角度を示す信号を出力可能なレゾルバ27と、制御ユニット3とを備えている。
制御ユニット3は、レゾルバ21,27の信号からACサーボモータ20が駆動していない状態での駆動軸20aと駆動工具24との固有回転角度差を割り出し、これを表示部36に表示する。また、レゾルバ21,27はそれぞれ相対的に回転位置決め可能に設けられているため、表示部36に表示された固有回転角度差を見て、レゾルバ21,27の絶対原点を調整することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークにねじ等の部品を締結する部品締結ドライバユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークにねじを締結するため、特許文献1に開示されたねじ締め装置が使用されている。このねじ締め装置は、モータの駆動軸と、この駆動軸の同軸線上に回転自在に設けられた出力軸とをコイルばねで連結し、駆動軸と出力軸との双方の回転を検出するためのエンコーダをそれぞれ設け、さらに出力軸には一体に回転するドライバビットを連結して成るものである。このねじ締め装置を用いてワークにねじを締め付ける場合には、ドライバビットをねじ頭部に係合させ、これをモータの駆動により回転させてねじに回転を付与する。この時、ねじの締め込みに伴ってドライバビットには相応の締付トルクが作用するため、これがドライバビットの回転負荷となってコイルばねがねじれる。結果、2つのエンコーダによって検出されるドライバビットの回転角度とモータ駆動軸の回転角度とに差が生じることとなるため、この回転角度差から締付トルクを割り出すことができる。
【0003】
【特許文献1】特開平2003−166887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のねじ締め装置において、エンコーダは一般に知られている色々な種類のものが採用できる。通常の光学式エンコーダは絶対原点を持たず、電源投入時における位置を原点とするものが多い。こういったエンコーダの場合、コイルばねの経年変化による歪みや、軸受等の消耗による回転摩擦の増大等が起こっていても、これを知ることができない。このため、最近では絶対原点を知ることができるレゾルバ等が用いられるようになっている。このようなレゾルバ等を採用する場合、問題となるのがレゾルバを装置に組み付ける時の絶対原点の位置決め調整である。すなわち、上下2つのレゾルバの絶対原点を一致させて組み立てないと、正確なトルク検出が行えない問題が発生するのである。また、装置の使用過程においても、コイルばねの経年変化による歪み等が徐々に生じ、2つのレゾルバの絶対原点にずれが生じるため、レゾルバを調整しないとトルク検出精度が低下してしまう等の問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、レゾルバ等の絶対回転角度を検出可能な回転角検出手段の絶対原点位置調整を可能となした部品締結ドライバユニットの提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、回転駆動手段と、この回転駆動手段の駆動軸と弾性部材を介して連結された駆動工具とを有する部品締結ドライバユニットであって、前記回転駆動手段の駆動軸の絶対回転角度を示す信号を出力可能な第一回転角検出手段と、前記駆動工具の絶対回転角度を示す信号を出力可能な第二回転角検出手段と、これら第一回転角検出手段と第二回転角検出手段とからの信号から得られる駆動軸と駆動工具との回転角度差から回転負荷トルクを割り出す制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、駆動軸と駆動工具との固有回転角度差を表示する表示部を有し、また前記第一回転角検出手段および第二回転角検出手段は、相対的に回転位置決め可能に設けられていることを特徴とする。なお、前記第一、第二回転角検出手段は共にレゾルバであり、弾性部材はねじりコイルばねであることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の部品締結ドライバユニットは、回転駆動手段の駆動軸と駆動工具との固有回転角度差を表示する表示部を有するとともに、駆動軸の回転角度を検出する第一回転角検出手段と駆動工具の回転角度を検出する第二回転各検出手段とを相対的に回転位置決め可能に設けたものである。よって、ツールユニットを組み立てる時、あるいはツールユニットの現場での使用時等において、固有回転角度差に基づいてレゾルバの絶対原点位置の調整が可能になり、回転角度差に基づくトルク検出精度を高めることが可能である。このことにより、より低い領域のトルク検出精度も高めることができ、例えば、従来困難とされてきたM2以下の極小ねじのトルク管理締結も精度よく行えるようになる等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1において、1は部品締結ドライバユニットであり、ツールユニット2と、このツールユニット2を制御する制御ユニット3とを有する。
【0008】
前記ツールユニット2は、回転駆動手段の一例としてACサーボモータ20(以下、単にモータ20という)を有する。このモータ20には、第一回転角検出手段の一例であるレゾルバ21が組み付けられている。また、このモータ20の下部には、フランジ22が固定されており、このフランジ22は4本のねじ23でケース24に締結されている。このフランジ22に空けられたねじ23のガイド穴22a・・は、図2に示すように長穴形状を成しており、各ねじ23を緩めることでモータ20自体を軸心回りに回転させることが可能となる。これにより、モータ20と一体のレゾルバ21とケース24と一体に設けられる後記レゾルバ27とを相対的に回転させることが可能になっている。
【0009】
モータ20の駆動軸20aには、弾性部材の一例であるねじりコイルばね25(以下、コイルばね25という)の一端が連結してあり、このコイルばね25の他端は伝達軸26に連結されている。この伝達軸26は軸受により回転自在に支持されており、この伝達軸26は、第二回転角検出手段の一例であるレゾルバ27に連結されている。また、このレゾルバ27には、ねじの十字状駆動穴に係合可能な先端形状を成す駆動工具28が伝達軸26と一体に回転するよう連結されている。このような構造であるため、モータ20の駆動軸20aないし駆動工具28は、一体に回転するようになっており、駆動工具28に回転負荷トルクが作用すると、これに伴ってコイルばね25がねじれ、駆動軸20aと駆動工具28との回転角度差が生じるようになっている。なお、コイルばね25は駆動軸20aと伝達軸26とに対して軸方向に移動可能に支持されており、これにより、コイルばね25のねじれに伴う伸縮を許容するようになっている。
【0010】
前記レゾルバ21,27は同様の構造であり、公知の構造のものである。図面で断面を示しているレゾルバ27を例に説明すると、このレゾルバ27は、励磁コイルと位置検出コイルとを備えるステータ27a内に、回転トランス部を有するロータ27bを回転自在に配置して成るものであり、励磁コイルから回転トランス部に励磁電圧を与えると、位置検出コイルには、この励磁電圧波形に対してロータ27bの回転位相に対応する位相の電圧波形の出力電圧が出力される。この励磁電圧と出力電圧との位相差から、固定配置されたステータ27aに対して回転するロータ27bの絶対回転角度を知ることができる。レゾルバ21のロータ(図示せず)には駆動軸20aが、またレゾルバ27のロータ27bには伝達軸26および駆動工具28がそれぞれ一体に連結してある。そして、レゾルバ21のステータ(図示せず)はモータ20に、レゾルバ27のステータ27aはケース24にそれぞれ一体に固定されている。よって、レゾルバ21は駆動軸20aの絶対回転角度を示す出力電圧を、またレゾルバ27は駆動工具28の絶対回転角度を示す出力電圧をそれぞれ出力する。
【0011】
前記制御ユニット3は、制御部30と、この制御部30からの指令を受けて前記モータ20を駆動制御するモータ駆動部31と、レゾルバ21,27にそれぞれ励磁電圧を印加するとともに、それぞれの出力電圧から回転角度を割り出すレゾルバ駆動部32,33と、レゾルバ駆動部32,33によって割り出された回転角度の差に応じた締付トルク、目標締付トルクなどの各種データおよびツールユニット2の駆動制御に必要な各種プログラム・パラメータ等を記憶した記憶部34と、各種情報・信号入力を行う操作部35と、各種情報を表示する表示部36と、本ドライバユニット1が搭載されるロボット等(図示せず)との信号送受信を制御する入出力部37とを備えて成る。
【0012】
前記制御部30は、電源が投入されると図3に示すように、
S01:レゾルバ駆動部32,33に励磁指令信号を付与。
S02:レゾルバ駆動部32,33から回転角度を読み込む。
S03:回転角度の差(以下、これを固有回転角度差という)を算出。
S04:固有回転角度差が閾値を超えていないか確認する。閾値を超えていない場合は、S06にジャンプ。
S05:表示部36に部品交換表示指令信号を付与。
S06:レゾルバ駆動部32,33に励磁停止指令信号を付与。
S07:エンド。
となる起動チェック処理を行う。
【0013】
また、制御部30は、図4に示すように、
S11:スタート指令信号の入力待ち。
S12:モータ駆動部31に駆動指令信号を付与。
S13:レゾルバ駆動部32,33に励磁指令信号を付与。
S14:レゾルバ駆動部32,33から回転角度を読み込む。
S15:回転角度差を算出。
S16:回転角度差に対応する締付トルクを記憶部34から読み込む。
S17:締付トルクを目標締付トルクと比較し、目標締付トルクに達していない場合は、S14にジャンプ。
S18:モータ駆動部31に停止指令信号を付与。
S19:表示部36に完了表示指令信号を付与。
S20:ロボットの待機位置復帰信号を待つ。
S21:レゾルバ駆動部32,33から回転角度を読み込む。
S22:固有回転角度差を算出。
S23:固有回転角度差が閾値を超えていないか確認。閾値を超えていない場合は、S25にジャンプ。
S24:表示部36に部品交換表示指令信号を付与。
S25:レゾルバ駆動部32,33に励磁停止指令信号を送信。
S26:エンド
となるねじ締め処理を実行する。
【0014】
また、前記制御部30は、モータ20が停止した状態で操作部35に設けられた回転角度差表示スイッチ(図示せず)が入力されると、図5に示すように、
S31:レゾルバ駆動部32,33に励磁指令信号を付与。
S32:レゾルバ駆動部32,33から回転角度を読み込む。
S33:回転角度の差(以下、これを固有回転角度差という)を算出。
S34:表示部36に角度差表示指令信号を付与。
S35:レゾルバ駆動部32,33に励磁停止指令信号を付与。
S36:エンド。
となる回転角度差表示処理を行う。
【0015】
次に本発明に係る部品締結ドライバユニット1の作用を述べる。なお、ここでは本ドライバユニット1がロボット(図示せず)に搭載されている状態にあり、駆動工具28の移動路前方には、ねじを保持するチャックユニット(図示せず)が設けられる構造での作用を述べる。
【0016】
まず、電源が投入された時、本ドライバユニット1においては、上記起動チェック処理が行われる。この処理では、レゾルバ21,27に励磁電圧を印加し、それぞれの出力電圧から回転角度が求められ、その回転角度差(固有回転角度差)が求められる。ドライバユニット1製造過程では、レゾルバ21,27は双方の絶対原点が一致するように調整してツールユニット2に組み付けられる。しかし、コイルばねの経年変化(ヘタリ)や軸受の消耗等が生じると、この絶対原点にずれが生じる。例えば、コイルばね25であれば経年変化により原形復帰できなくなる幅が徐々に大きくなるし、軸受が消耗すると伝達軸や出力軸の摩擦抵抗が増し、これらが本来原位置となる位置まで回転復帰することができなくなる。このようにして、駆動軸20aと駆動工具28との間に固有回転角度差が生じるのであるが、その大きさを電源投入時の起動チェック処理により把握する。
【0017】
通常、コイルばね25をねじった後、これが完全に原形復帰することは考えられない。また、伝達軸26等の回転部品には何らかの摩擦抵抗が作用している。よって、固有回転角度差はツールユニット2の各部品が正常な状態の時でも生じてしまう。こういった正常状態での固有回転角度差が現れる領域は、図6に示すように、不感領域といって締付トルクと回転角度差との関係が都度一定にならない領域であり、実際の締付トルク制御には利用することがない。よって、正常状態での固有回転角度差が生じていても問題はない。通常は、回転角度差と締付トルクとの関係が安定する使用領域(図6参照)での利用が想定されているため、その下限値よりも少し低い回転角度差を固有回転角度差の閾値として設定して起動チェック処理が行われる。これにより、検出された固有回転角度差が閾値を超えている場合には、表示部に部品交換を報知するLED点灯や、ディジタル表示器による表示を行う。
【0018】
起動チェック処理が終わり、次に操作部35のスタートスイッチ(図示せず)が押されると、チャックユニットにはねじが供給され、またロボットの動作によりドライバユニット1がワークのめねじ直上に移動する。同時に、制御ユニット3によりドライバユニット1のモータ20が駆動し、駆動工具28が回転を始める。また、レゾルバ21,27に励磁電圧が印加され、それぞれの出力電圧から回転角度の検出が開始される。続いてロボットの動作により、ドライバユニット2がワーク側へ移動すると、駆動工具28はチャックユニットに保持されたねじの駆動穴に係合し、かつ、このねじをチャックユニットから押し出してワークのめねじに締め込む。この時、駆動工具28にはねじを締め付ける時の締付トルク(回転負荷トルク)が作用するため、これに応じてコイルばね23が巻込み方向にねじれ、レゾルバ21,27の各出力電圧から得られる回転角度に差が生じる。制御ユニット3では、この回転角度差に応じた締付トルクが割り出されるとともに、この締付トルクが目標締付トルクに達したか否かが判定される。達していない場合は、新たな回転角度差に対応する締付トルクと目標締付トルクとの比較が繰り返される。また、締付トルクが目標締付トルクに達した場合には、モータ20の駆動が停止し、その後にドライバユニット1はロボットの作動により所定の待機位置に戻される。また、この時、起動チェック処理と同様にレゾルバ21,27の出力電圧から固有回転角度差が求められ、これが閾値を超えていないか確認される。閾値を超えている場合は、表示部に部品交換を報知するLED点灯や、ディジタル表示器による表示がなされる。この固有回転角度差の確認処理が完了した後、レゾルバ21,27への励磁電圧印加が停止されてねじ締め処理が完了する。なお、前述のねじ締め作業完了後に固有回転角度差を求めるタイミングであるが、これはロボットの作動により駆動工具28がねじから離れ、かつコイルばね23の原形復帰に伴う反動が収まった後、つまりは駆動工具28の軸心回りの負荷が解除されて後とするのが効果的である。なお、ねじ締め処理開始時のロボットが動作する前に固有回転角度差を求めて閾値と確認するようにしてもよい。
【0019】
一方、操作部35の回転角度差表示スイッチが押された時には、モータ20の駆動が停止した状態で前述のようにレゾルバ21,27が励磁され、駆動軸20aおよび駆動工具28の固有回転角度差が求められ、これが表示部36に表示される。この固有回転角度差は、駆動軸20aと駆動工具28との絶対原点同士のずれを示すものである。よって、この固有回転角度差の表示を見てねじ23・・・を緩め、モータ20及びケース24を相対的に回転させると、レゾルバ21とレゾルバ27との絶対原点をいつでも調整することができる。なお、固有回転角度差を表示するには、表示部36にLED表示器、ディジタル表示器、液晶パネル等を設けておくことが一般的であるが、これ以外に、表示部36に固有回転角度差を印字出力するプリンタやプロッタ等の印字装置を設けておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る部品締結ドライバユニットのブロック説明図。
【図2】本発明に係る部品締結ドライバユニットのツールユニットの平面図。
【図3】本発明に係る部品締結ドライバユニットの起動チェック処理のフローチャート。
【図4】本発明に係る部品締結ドライバユニットのねじ締め処理のフローチャート。
【図5】本発明に係る部品締結ドライバユニットの回転角度差表示処理のフローチャート。
【図6】本発明に係るレゾルバの特性を示すグラフ。
【符号の説明】
【0021】
1 部品締結ドライバユニット
2 ツールユニット
3 制御ユニット
20 ACサーボモータ
20a 駆動軸
21 レゾルバ
22 フランジ
23 ねじ
24 ケース
25 ねじりコイルばね
26 伝達軸
27 レゾルバ
28 駆動工具
30 制御部
36 表示部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークにねじ等の部品を締結する部品締結ドライバユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークにねじを締結するため、特許文献1に開示されたねじ締め装置が使用されている。このねじ締め装置は、モータの駆動軸と、この駆動軸の同軸線上に回転自在に設けられた出力軸とをコイルばねで連結し、駆動軸と出力軸との双方の回転を検出するためのエンコーダをそれぞれ設け、さらに出力軸には一体に回転するドライバビットを連結して成るものである。このねじ締め装置を用いてワークにねじを締め付ける場合には、ドライバビットをねじ頭部に係合させ、これをモータの駆動により回転させてねじに回転を付与する。この時、ねじの締め込みに伴ってドライバビットには相応の締付トルクが作用するため、これがドライバビットの回転負荷となってコイルばねがねじれる。結果、2つのエンコーダによって検出されるドライバビットの回転角度とモータ駆動軸の回転角度とに差が生じることとなるため、この回転角度差から締付トルクを割り出すことができる。
【0003】
【特許文献1】特開平2003−166887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のねじ締め装置において、エンコーダは一般に知られている色々な種類のものが採用できる。通常の光学式エンコーダは絶対原点を持たず、電源投入時における位置を原点とするものが多い。こういったエンコーダの場合、コイルばねの経年変化による歪みや、軸受等の消耗による回転摩擦の増大等が起こっていても、これを知ることができない。このため、最近では絶対原点を知ることができるレゾルバ等が用いられるようになっている。このようなレゾルバ等を採用する場合、問題となるのがレゾルバを装置に組み付ける時の絶対原点の位置決め調整である。すなわち、上下2つのレゾルバの絶対原点を一致させて組み立てないと、正確なトルク検出が行えない問題が発生するのである。また、装置の使用過程においても、コイルばねの経年変化による歪み等が徐々に生じ、2つのレゾルバの絶対原点にずれが生じるため、レゾルバを調整しないとトルク検出精度が低下してしまう等の問題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、レゾルバ等の絶対回転角度を検出可能な回転角検出手段の絶対原点位置調整を可能となした部品締結ドライバユニットの提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、回転駆動手段と、この回転駆動手段の駆動軸と弾性部材を介して連結された駆動工具とを有する部品締結ドライバユニットであって、前記回転駆動手段の駆動軸の絶対回転角度を示す信号を出力可能な第一回転角検出手段と、前記駆動工具の絶対回転角度を示す信号を出力可能な第二回転角検出手段と、これら第一回転角検出手段と第二回転角検出手段とからの信号から得られる駆動軸と駆動工具との回転角度差から回転負荷トルクを割り出す制御ユニットとを有し、前記制御ユニットは、駆動軸と駆動工具との固有回転角度差を表示する表示部を有し、また前記第一回転角検出手段および第二回転角検出手段は、相対的に回転位置決め可能に設けられていることを特徴とする。なお、前記第一、第二回転角検出手段は共にレゾルバであり、弾性部材はねじりコイルばねであることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の部品締結ドライバユニットは、回転駆動手段の駆動軸と駆動工具との固有回転角度差を表示する表示部を有するとともに、駆動軸の回転角度を検出する第一回転角検出手段と駆動工具の回転角度を検出する第二回転各検出手段とを相対的に回転位置決め可能に設けたものである。よって、ツールユニットを組み立てる時、あるいはツールユニットの現場での使用時等において、固有回転角度差に基づいてレゾルバの絶対原点位置の調整が可能になり、回転角度差に基づくトルク検出精度を高めることが可能である。このことにより、より低い領域のトルク検出精度も高めることができ、例えば、従来困難とされてきたM2以下の極小ねじのトルク管理締結も精度よく行えるようになる等の利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に基づいて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1において、1は部品締結ドライバユニットであり、ツールユニット2と、このツールユニット2を制御する制御ユニット3とを有する。
【0008】
前記ツールユニット2は、回転駆動手段の一例としてACサーボモータ20(以下、単にモータ20という)を有する。このモータ20には、第一回転角検出手段の一例であるレゾルバ21が組み付けられている。また、このモータ20の下部には、フランジ22が固定されており、このフランジ22は4本のねじ23でケース24に締結されている。このフランジ22に空けられたねじ23のガイド穴22a・・は、図2に示すように長穴形状を成しており、各ねじ23を緩めることでモータ20自体を軸心回りに回転させることが可能となる。これにより、モータ20と一体のレゾルバ21とケース24と一体に設けられる後記レゾルバ27とを相対的に回転させることが可能になっている。
【0009】
モータ20の駆動軸20aには、弾性部材の一例であるねじりコイルばね25(以下、コイルばね25という)の一端が連結してあり、このコイルばね25の他端は伝達軸26に連結されている。この伝達軸26は軸受により回転自在に支持されており、この伝達軸26は、第二回転角検出手段の一例であるレゾルバ27に連結されている。また、このレゾルバ27には、ねじの十字状駆動穴に係合可能な先端形状を成す駆動工具28が伝達軸26と一体に回転するよう連結されている。このような構造であるため、モータ20の駆動軸20aないし駆動工具28は、一体に回転するようになっており、駆動工具28に回転負荷トルクが作用すると、これに伴ってコイルばね25がねじれ、駆動軸20aと駆動工具28との回転角度差が生じるようになっている。なお、コイルばね25は駆動軸20aと伝達軸26とに対して軸方向に移動可能に支持されており、これにより、コイルばね25のねじれに伴う伸縮を許容するようになっている。
【0010】
前記レゾルバ21,27は同様の構造であり、公知の構造のものである。図面で断面を示しているレゾルバ27を例に説明すると、このレゾルバ27は、励磁コイルと位置検出コイルとを備えるステータ27a内に、回転トランス部を有するロータ27bを回転自在に配置して成るものであり、励磁コイルから回転トランス部に励磁電圧を与えると、位置検出コイルには、この励磁電圧波形に対してロータ27bの回転位相に対応する位相の電圧波形の出力電圧が出力される。この励磁電圧と出力電圧との位相差から、固定配置されたステータ27aに対して回転するロータ27bの絶対回転角度を知ることができる。レゾルバ21のロータ(図示せず)には駆動軸20aが、またレゾルバ27のロータ27bには伝達軸26および駆動工具28がそれぞれ一体に連結してある。そして、レゾルバ21のステータ(図示せず)はモータ20に、レゾルバ27のステータ27aはケース24にそれぞれ一体に固定されている。よって、レゾルバ21は駆動軸20aの絶対回転角度を示す出力電圧を、またレゾルバ27は駆動工具28の絶対回転角度を示す出力電圧をそれぞれ出力する。
【0011】
前記制御ユニット3は、制御部30と、この制御部30からの指令を受けて前記モータ20を駆動制御するモータ駆動部31と、レゾルバ21,27にそれぞれ励磁電圧を印加するとともに、それぞれの出力電圧から回転角度を割り出すレゾルバ駆動部32,33と、レゾルバ駆動部32,33によって割り出された回転角度の差に応じた締付トルク、目標締付トルクなどの各種データおよびツールユニット2の駆動制御に必要な各種プログラム・パラメータ等を記憶した記憶部34と、各種情報・信号入力を行う操作部35と、各種情報を表示する表示部36と、本ドライバユニット1が搭載されるロボット等(図示せず)との信号送受信を制御する入出力部37とを備えて成る。
【0012】
前記制御部30は、電源が投入されると図3に示すように、
S01:レゾルバ駆動部32,33に励磁指令信号を付与。
S02:レゾルバ駆動部32,33から回転角度を読み込む。
S03:回転角度の差(以下、これを固有回転角度差という)を算出。
S04:固有回転角度差が閾値を超えていないか確認する。閾値を超えていない場合は、S06にジャンプ。
S05:表示部36に部品交換表示指令信号を付与。
S06:レゾルバ駆動部32,33に励磁停止指令信号を付与。
S07:エンド。
となる起動チェック処理を行う。
【0013】
また、制御部30は、図4に示すように、
S11:スタート指令信号の入力待ち。
S12:モータ駆動部31に駆動指令信号を付与。
S13:レゾルバ駆動部32,33に励磁指令信号を付与。
S14:レゾルバ駆動部32,33から回転角度を読み込む。
S15:回転角度差を算出。
S16:回転角度差に対応する締付トルクを記憶部34から読み込む。
S17:締付トルクを目標締付トルクと比較し、目標締付トルクに達していない場合は、S14にジャンプ。
S18:モータ駆動部31に停止指令信号を付与。
S19:表示部36に完了表示指令信号を付与。
S20:ロボットの待機位置復帰信号を待つ。
S21:レゾルバ駆動部32,33から回転角度を読み込む。
S22:固有回転角度差を算出。
S23:固有回転角度差が閾値を超えていないか確認。閾値を超えていない場合は、S25にジャンプ。
S24:表示部36に部品交換表示指令信号を付与。
S25:レゾルバ駆動部32,33に励磁停止指令信号を送信。
S26:エンド
となるねじ締め処理を実行する。
【0014】
また、前記制御部30は、モータ20が停止した状態で操作部35に設けられた回転角度差表示スイッチ(図示せず)が入力されると、図5に示すように、
S31:レゾルバ駆動部32,33に励磁指令信号を付与。
S32:レゾルバ駆動部32,33から回転角度を読み込む。
S33:回転角度の差(以下、これを固有回転角度差という)を算出。
S34:表示部36に角度差表示指令信号を付与。
S35:レゾルバ駆動部32,33に励磁停止指令信号を付与。
S36:エンド。
となる回転角度差表示処理を行う。
【0015】
次に本発明に係る部品締結ドライバユニット1の作用を述べる。なお、ここでは本ドライバユニット1がロボット(図示せず)に搭載されている状態にあり、駆動工具28の移動路前方には、ねじを保持するチャックユニット(図示せず)が設けられる構造での作用を述べる。
【0016】
まず、電源が投入された時、本ドライバユニット1においては、上記起動チェック処理が行われる。この処理では、レゾルバ21,27に励磁電圧を印加し、それぞれの出力電圧から回転角度が求められ、その回転角度差(固有回転角度差)が求められる。ドライバユニット1製造過程では、レゾルバ21,27は双方の絶対原点が一致するように調整してツールユニット2に組み付けられる。しかし、コイルばねの経年変化(ヘタリ)や軸受の消耗等が生じると、この絶対原点にずれが生じる。例えば、コイルばね25であれば経年変化により原形復帰できなくなる幅が徐々に大きくなるし、軸受が消耗すると伝達軸や出力軸の摩擦抵抗が増し、これらが本来原位置となる位置まで回転復帰することができなくなる。このようにして、駆動軸20aと駆動工具28との間に固有回転角度差が生じるのであるが、その大きさを電源投入時の起動チェック処理により把握する。
【0017】
通常、コイルばね25をねじった後、これが完全に原形復帰することは考えられない。また、伝達軸26等の回転部品には何らかの摩擦抵抗が作用している。よって、固有回転角度差はツールユニット2の各部品が正常な状態の時でも生じてしまう。こういった正常状態での固有回転角度差が現れる領域は、図6に示すように、不感領域といって締付トルクと回転角度差との関係が都度一定にならない領域であり、実際の締付トルク制御には利用することがない。よって、正常状態での固有回転角度差が生じていても問題はない。通常は、回転角度差と締付トルクとの関係が安定する使用領域(図6参照)での利用が想定されているため、その下限値よりも少し低い回転角度差を固有回転角度差の閾値として設定して起動チェック処理が行われる。これにより、検出された固有回転角度差が閾値を超えている場合には、表示部に部品交換を報知するLED点灯や、ディジタル表示器による表示を行う。
【0018】
起動チェック処理が終わり、次に操作部35のスタートスイッチ(図示せず)が押されると、チャックユニットにはねじが供給され、またロボットの動作によりドライバユニット1がワークのめねじ直上に移動する。同時に、制御ユニット3によりドライバユニット1のモータ20が駆動し、駆動工具28が回転を始める。また、レゾルバ21,27に励磁電圧が印加され、それぞれの出力電圧から回転角度の検出が開始される。続いてロボットの動作により、ドライバユニット2がワーク側へ移動すると、駆動工具28はチャックユニットに保持されたねじの駆動穴に係合し、かつ、このねじをチャックユニットから押し出してワークのめねじに締め込む。この時、駆動工具28にはねじを締め付ける時の締付トルク(回転負荷トルク)が作用するため、これに応じてコイルばね23が巻込み方向にねじれ、レゾルバ21,27の各出力電圧から得られる回転角度に差が生じる。制御ユニット3では、この回転角度差に応じた締付トルクが割り出されるとともに、この締付トルクが目標締付トルクに達したか否かが判定される。達していない場合は、新たな回転角度差に対応する締付トルクと目標締付トルクとの比較が繰り返される。また、締付トルクが目標締付トルクに達した場合には、モータ20の駆動が停止し、その後にドライバユニット1はロボットの作動により所定の待機位置に戻される。また、この時、起動チェック処理と同様にレゾルバ21,27の出力電圧から固有回転角度差が求められ、これが閾値を超えていないか確認される。閾値を超えている場合は、表示部に部品交換を報知するLED点灯や、ディジタル表示器による表示がなされる。この固有回転角度差の確認処理が完了した後、レゾルバ21,27への励磁電圧印加が停止されてねじ締め処理が完了する。なお、前述のねじ締め作業完了後に固有回転角度差を求めるタイミングであるが、これはロボットの作動により駆動工具28がねじから離れ、かつコイルばね23の原形復帰に伴う反動が収まった後、つまりは駆動工具28の軸心回りの負荷が解除されて後とするのが効果的である。なお、ねじ締め処理開始時のロボットが動作する前に固有回転角度差を求めて閾値と確認するようにしてもよい。
【0019】
一方、操作部35の回転角度差表示スイッチが押された時には、モータ20の駆動が停止した状態で前述のようにレゾルバ21,27が励磁され、駆動軸20aおよび駆動工具28の固有回転角度差が求められ、これが表示部36に表示される。この固有回転角度差は、駆動軸20aと駆動工具28との絶対原点同士のずれを示すものである。よって、この固有回転角度差の表示を見てねじ23・・・を緩め、モータ20及びケース24を相対的に回転させると、レゾルバ21とレゾルバ27との絶対原点をいつでも調整することができる。なお、固有回転角度差を表示するには、表示部36にLED表示器、ディジタル表示器、液晶パネル等を設けておくことが一般的であるが、これ以外に、表示部36に固有回転角度差を印字出力するプリンタやプロッタ等の印字装置を設けておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る部品締結ドライバユニットのブロック説明図。
【図2】本発明に係る部品締結ドライバユニットのツールユニットの平面図。
【図3】本発明に係る部品締結ドライバユニットの起動チェック処理のフローチャート。
【図4】本発明に係る部品締結ドライバユニットのねじ締め処理のフローチャート。
【図5】本発明に係る部品締結ドライバユニットの回転角度差表示処理のフローチャート。
【図6】本発明に係るレゾルバの特性を示すグラフ。
【符号の説明】
【0021】
1 部品締結ドライバユニット
2 ツールユニット
3 制御ユニット
20 ACサーボモータ
20a 駆動軸
21 レゾルバ
22 フランジ
23 ねじ
24 ケース
25 ねじりコイルばね
26 伝達軸
27 レゾルバ
28 駆動工具
30 制御部
36 表示部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動手段と、この回転駆動手段の駆動軸と弾性部材を介して連結された駆動工具とを有する部品締結ドライバユニットであって、
前記回転駆動手段の駆動軸の絶対回転角度を示す信号を出力可能な第一回転角検出手段と、前記駆動工具の絶対回転角度を示す信号を出力可能な第二回転角検出手段と、これら第一回転角検出手段と第二回転角検出手段とからの信号から得られる駆動軸と駆動工具との回転角度差から回転負荷トルクを割り出す制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットは、駆動軸と駆動工具との固有回転角度差を表示する表示部を有し、また前記第一回転角検出手段および第二回転角検出手段は、相対的に回転位置決め可能に設けられていることを特徴とする部品締結ドライバユニット。
【請求項2】
第一、第二回転角検出手段は共にレゾルバであり、弾性部材はねじりコイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の部品締結ドライバユニット。
【請求項1】
回転駆動手段と、この回転駆動手段の駆動軸と弾性部材を介して連結された駆動工具とを有する部品締結ドライバユニットであって、
前記回転駆動手段の駆動軸の絶対回転角度を示す信号を出力可能な第一回転角検出手段と、前記駆動工具の絶対回転角度を示す信号を出力可能な第二回転角検出手段と、これら第一回転角検出手段と第二回転角検出手段とからの信号から得られる駆動軸と駆動工具との回転角度差から回転負荷トルクを割り出す制御ユニットとを有し、
前記制御ユニットは、駆動軸と駆動工具との固有回転角度差を表示する表示部を有し、また前記第一回転角検出手段および第二回転角検出手段は、相対的に回転位置決め可能に設けられていることを特徴とする部品締結ドライバユニット。
【請求項2】
第一、第二回転角検出手段は共にレゾルバであり、弾性部材はねじりコイルばねであることを特徴とする請求項1に記載の部品締結ドライバユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2006−68858(P2006−68858A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−256267(P2004−256267)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
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