説明

部材、特に把持部材、内装部材、およびステアリングホイール

【課題】 従来技術では、加熱用インサートを皮革などからなる被覆材で覆うようにして加熱可能にしたハンドルが存在するが、予め加熱用インサートを取り付けた被覆材でハンドル表面を覆う必要があり、ネットヒータを構成するヒータ線は被覆材に現出する凹凸のため外観を悪化しないよう、あまり太いものが使用できず、また、ヒータ線に電力を供給するターミナルなども被覆材の外観を低下させないようにスリムでコンパクトに設計しなければならず、ヒータ装置に困難な技術的課題がある。
【解決手段】 断熱性を有する基材12と、基材12の表面に引き回された電熱線13と、電熱線13と基材12とを覆う伝熱性を有する被覆材11を備え、基材12には、電熱線13を位置決めする突起21を備え、被覆材11は、電熱線13と相補的に形成され外面と基材12表面の間の領域の少なくとも一部の範囲を隙間なくとじる部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、オートバイ、自転車、モーターボートなどの乗り物を操作するための操作ハンドルやノブ、グリップなどの把持部材や内装部材の部材に適用できるものであって加温機能を備えたものに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の把持部材や内装部材としては ステアリングホイール、シフトノブ、ドアグリップ、アシストグリップ、ジョイスティック操作ノブ、アームレストなどがある。
これらの把持部材は、自動車の搭乗者により触れられかつ/または操作される部材であるが、特に寒冷地では、屋外に長時間駐車されるなどにより表面温度が下がり、触れると冷たいため、改善が求められている。
対応策として、例えばステアリングホイールのグリップ部にヒータを組み込んで加温している。
一方、地球環境への配慮の観点から、走行に関して二酸化炭素を全く発生させない車両(ゼロエミッション車両、ZEV)の市場導入が進みつつある。その一態様である車載蓄電池を使用して走行する電気自動車(EV)にあっては、室内の気温を上昇させるために電力を消費すると、走行に利用できる電力が減少し、その結果航続距離が短くなってしまうとの課題が指摘されている。
このような車両にあっては、直接手を触れる把持部材によって直接に暖かさを感じ取れるようにすることで、暖房を抑え気味にしてもなお運転者の快適性を低下させないようにすることができて、航続距離の短縮を抑えられるので、加温機能を備えた把持部材の利用価値が高いと考えられている。
把持操作部分の表面を効率よく暖めるため、ヒータはできるだけ表面または表面近くに配置するのがよく、表面に熱をよく伝達し、把持操作部分以外の箇所に熱を失わないような把持部材が好ましい。
従来技術としては、シート、合成樹脂、繊維製品等、特に皮革からなる被覆材と、電気的なエネルギー源に接続可能な統合された加熱用インサートとを備えた、自動車用の加熱可能なハンドルにおいて、加熱用インサートがたて編み生地によって形成されている加熱可能なハンドル(例えば、特許文献1参照)が、また、芯金と、この芯金の外周に位置する柔軟な網状のヒータ装置と、これら芯金およびヒータ装置を一体的に埋設して覆う表皮部とを備えたグリップ部を具備したステアリングホイール(例えば、特許文献2参照)が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−15162号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1〜図8を参照)
【特許文献2】特開平11−268652号公報(特許請求の範囲の欄、発明の詳細な説明の欄、及び図1〜図6を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術である特許文献1は、加熱用インサートを皮革などからなる被覆材で覆うようにして加熱可能にしたハンドルの開示がある。加熱用インサートは、たて編み生地を使用し、加熱要素の輪郭線が表面に浮き出ないようにしている。
しかしながら、予め加熱用インサートを取り付けた被覆材でハンドル表面を覆う必要があり、ネットヒータを構成するヒータ線は被覆材に現出する凹凸のため外観を悪化しないよう、あまり太いものが使用できず、また、ヒータ線に電力を供給するターミナルなども被覆材の外観を低下させないようにスリムでコンパクトに設計しなければならず、ヒータ装置に困難な技術的課題がある。
また、前記特許文献2は、金型に樹脂を注入して成形する際に、ネットヒータを金型内に置き、スペーサーを用いて芯金に所定距離以上接近しないように一体に成形している。
インテグラルスキンフォーム体により、表面側は高密度で高伝熱性を得、内部側は発泡しており低密度で低伝熱性となり、ヒータを効果的に作用させられる。しかしながら、表面からヒータまでの距離、すなわち、伝熱距離を一定の範囲に規制することが難しく、広い範囲をムラなく暖めることが容易でない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであって、ヒータを組み込んだ皮革等の被覆材を必須とせず効率的な加温機能を備え外観向上の容易な部材を提供することを目的としている。すなわち、本願発明の部材は、次のような構成を採用している。
(1)断熱性を有する基材と、基材の表面に引き回された電熱線と、電熱線と基材とを覆う伝熱性を有する被覆材を備え、基材には、電熱線を位置決めする位置決め部を備え、被覆材は、電熱線と相補的に形成され外面と基材表面の間の領域の少なくとも一部の範囲を隙間なくとじる。
(2)上記の部材において、位置決め部は、引き回される電熱線の屈曲部を保持する。
(3)上記(1)または(2)の部材において、位置決め部は、突起部または凹陥部の少なくともいずれか一方を備え、基材の型成形時に一体に形成される。
(4)上記(3)の部材であって、位置決め部は、基材の型成形における型割り部分に形成される。
(5)上記(1)〜(4)いずれかの部材の被覆材は、基材を、断面全周に亘って収縮を伴ってとじる。
(6)上記(1)〜(5)いずれかの部材を組み込んでなるステアリングホイールであって、回転中心部を備えるボス部と、回転周縁部に配置され把持操作されるグリップ部と、グリップ部とボス部とを連結する連結部とを備える。
基材部は、ゴム弾性を持つ樹脂部材(ポリウレタン(発泡、無発泡)、オレフィン系エラストマーなど)、硬質樹脂(PP、ABSなど)、軽量発泡体(ビーズ発泡したスチロール(発泡スチロール)、PEF(発泡ポリエチレン))などが利用できる。断熱性をもつもの(発泡ポリウレタン、発泡スチロールなど)が芯金や車体への伝熱量を抑え表面側に熱を多く伝えることができるので、好ましい。
また電熱線は、例えば銅合金線(銅ニッケル、銅スズ等)や、ニクロム線などが利用できる。
被覆材は、熱伝導性のよいもの、無発泡ポリウレタン樹脂製の表皮、熱可塑性エラストマーなどを選択できる。適宜、銅、アルミニウム合金等の金属の箔をインサートしたり、フレーク状にした前記金属を添加して伝熱性を高め、加温性を向上してもよい。
被覆材は、電熱線を取り付けた基材部を金型にインサートし表皮を注入一体成形する製造方法によれば、皮革を手作業で縫製する場合に比べて原皮からの切り出し、針穴加工や縫製、端末処理などの一連の加工工数が抑制され、より大量生産に適するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る部材、特に把持部材、内装部材、およびステアリングホイールは、上記説明のような構成を有するので、以下に記載する効果を奏する。
断熱性を有する基材と、基材の表面に引き回された電熱線と、電熱線と基材とを覆う伝熱性を有する被覆材を備え、基材には、電熱線を位置決めする位置決め部が設けられ、被覆材は、電熱線と相補的に形成され外面と基材表面の間の領域の少なくとも一部の範囲を隙間なくとじる。基材に電熱線が位置決めされて設置され、これと相補的に隙間なくとじる被覆材で基材表面を覆うので、電熱線が基材に対して簡易な位置決めがなされれば、被覆材で電熱線を確実に位置決めできるので、電熱線の取付けを容易にし、組立製造コストを抑制できる。基材の伝熱性を下げ、伝熱性の高い被覆材が電熱線を隙間なくとじるので、電熱線の断面全周に被覆材が接して熱エネルギーを受け取ることができ、外面の加温効率を向上できる。電熱線がいくらか太いもの、複線のものを使用しても、外面への凹凸の表出を抑制できる。
位置決め部は、引き回される電熱線の屈曲部を保持するようにする形態、突起部または凹陥部の少なくともいずれか一方を備え、基材の型成形時に一体に形成する形態や、基材の型成形における型割り部分に形成する形態を採用して、電熱線の位置決めを容易にし、被覆材でとじられるまでの電熱線のずれを防止することができる。
被覆材は、基材を、断面全周に亘って収縮を伴ってとじるようにすると、被覆材によって基材が締め付けるように一体的に被覆され、基材と被覆材の界面接合強度を得、把持操作等により作用する外力に抗して電熱線を確実に保持することができる。
ステアリングホイールは、比較的大きな形状を備え、車両等の運行時に把持されるものであるので、触感及び視覚上の違和感を感じやすい点で重要である。
この発明はこのような用途において極めて有効な課題解決手段として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本願発明の一実施例である加温機能を備えたステアリングホイールの正面図である。
【図2】図1のステアリングホイールの加温機能を備えた部位を拡大した斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1における基材部のヒータ線の取り付け部位を示す拡大斜視図である。
【図5】本発明の第2実施例のカッターでのステアリングホイールへの切り溝の入れ方を示すもので、ステアリングホイールの概略側面図である。
【図6】図5の概略斜視図である
【図7】本発明の第2実施例における基材部へのヒータ線の圧入状態を示す概略側面図である。
【図8】本発明の第3実施例であり、ステアリングホイールにおいて、ポリウレタン製の基材部に代え、発泡樹脂ブロックを使用した基材部を採用した例を示す要部分解説明図である。
【図9】ヒータ線を自動で基材部に取り付ける装置の一例を示すもので、(a)は、取り付け前の状態を示す説明図、(b)はヒータ線取り付け後の基材部の状態を示す概略断面図である。
【図10】本発明の加温機能を搭載した他の部材の実施例を示したもので、(a)は変速ノブの概略斜視図、(b)はグラブレールの概略斜視図、(c)はアームレストの概略斜視図である。
【図11】本発明のステアリングホイールにおいて、ポリウレタン製の基材部に代え、発泡樹脂のインサート成形体を使用した基材部を採用した例を示す要部拡大断面斜視図である。
【図12】図11の表面部を拡大した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
断熱性を有する基材と、基材の表面に引き回された電熱線と、電熱線と基材とを覆う伝熱性を有する被覆材を備え、基材には、電熱線を位置決めする位置決め部を備え、被覆材は、電熱線と相補的に形成され外面と基材表面の間の領域の少なくとも一部の範囲を隙間なくとじる部材である。
【実施例1】
【0009】
図1は、本願発明の一実施例である加温機能を備えたステアリングホイール1の正面図である。ステアリングホイール1は、円環状をなし把持操作部またはグリップ部などともいわれるリム部2と、リム部2の内周部分の三箇所から中心Cに向かって延びるスポーク部3(3a、3b、3c)と、スポーク部3を介してリム部2に連結され、車体側の回転シャフト(図示せず)に結合するためのボス5bを中心に有するボスプレート5aを含むボス部4とから、概略構成されている。
ボス部4には、運転者に対向する側にエアバッグモジュールが、その背後である車体側に樹脂製の裏カバーが(ともに図示せず)取り付けられる。
ステアリングホイール本体10は、表面に革を模した微細凹凸形状である革シボが付与された被覆材であるポリウレタンからなる薄皮状の表皮部11と、表皮部11により全体を被覆された発泡ポリウレタンからなる基材である基材部12と、基材部12の内部にあってステアリングホイール本体10を内部で支える構造体としての芯金5と、基材部12の表面に矩形波状に引き回されるヒータ線13とから概略構成されている。
芯金5は、ボスプレート5aとスポーク芯金部5cとリム芯金部5dとを含み、ステアリングホイール本体10全体の構造体となっており、例えばマグネシウム合金、ジュラルミンなどの軽合金を鋳型内に射出して鋳造する方法などにより、図示の形状に成形される。
基材部12を成形する方法は、ステアリングホイールの表皮材として利用される発泡ポリウレタンを高発泡になるように調整したものを、芯金5をインサートした射出反応成形型(RIM型)に注入して行う。すなわち、発泡ポリウレタンは、イソシアネートとポリオールと、イソシアネートとポリオールのいずれか一方に添加した着色剤、発泡剤と、適宜、安定剤、触媒、紫外線吸収剤などの添加剤とともにRIM型に注入する直前に混合し、型内で重合反応させて発泡ポリウレタンとする。RIM型の製品部分(キャビティ)には、成形品の脱型を容易にするための離型剤を多用しないように、または全然使用しなくてもよいように、テフロン(登録商標)コーティングを施しておく。発泡ポリウレタンの収縮率は、選択するポリオール、イソシアネート、各種添加剤により調整でき、ここでは1〜2%としてある。基材部12に使用する発泡ポリウレタンは短時間で寸法が安定するものが好ましく、成形後24時間で80%〜90%の収縮を発揮するものを選択する。
すなわち、経時的に収縮が進行して最終的に2%の収縮をするものであれば、成形後の最初の24時間で例えば90%の変化、すなわち1.8%の収縮をし、その後数日間で収縮を終えるものを選択する。成形後、比較的短い時間の間に収縮ししかも収縮率の高くないものは、表皮部11と組み合わせるとき、表皮材11の内部で形状が縮まないので表皮部11との良好な結合が得やすい。
【0010】
次に、上記のようにして得た基材部12の表面に、電熱線であるヒータ線13が引き回される。ヒータ線13は、例えば銅合金線を使用し、線径は2mm以下の単線又は撚り線である。
表面に塩化ビニル、テフロン(登録商標)樹脂などのコーティングを施し、表面酸化防止効果と絶縁性を得ている。
ヒータ線13の固定は、ヒータ線13が後工程でずれない程度に簡易なものとするのが作業性と製品コストの点で好ましい。そのようなヒータ線13を固定するための基材部12の構造の例を図2〜図4を参照して説明する。
基材部12には、凹陥部の一態様である断面略半円形の溝20と、高さ2ミリメートル程度の突起21を設けてある。突起21は、基材部12を成形する金型の型割線の近傍部(パーティング部、型割り部分)PLに、内外周部に沿って間歇的に設けている。すなわち、上側突起21aは第1の半型側に、下側突起21bは第2の半型側に、それぞれ傾斜状に突出させ、他方の半型側の合わせ面によって係止面21cを形成するようにしている。各突起21a、21bの両側部にはそれぞれ溝20が彫り込まれて、他方の半型側に端末部20aが伸ばされる。係止面21cは、端末部20a、20aの間の曲面を削ぎ落とすように立面21dを形成して、係止面21cが広くなりヒータ線13が溝20から横方向に向きを変えるときに係止面21cに掛かりやすくしている。
このような突起21a、21bによって、ヒータ線13がU字状にターンし、略矩形ジグザグ状に基材部12の表面に取り付けられる(図2、図3参照)。また、スポーク部3については、スリット22を形成して、ヒータ線13を圧入するように取り付ける。ヒータ線13の両端は、スポーク部3aからボス部4内に引き出される。
このようにして、基材部12の表面を短い距離で往復するようにヒータ線13の屈曲部を保持してジグザグに取り付けられるので、リム部を螺旋状になるように一方向に周回させる方法を採らず、ヒータ線13を、例えば大径のドラムに巻いた状態で製造工程に受け入れ、送り機構を介してステアリングホイール本体10に供給して取り付ける作業の手作業、自動機いずれによる場合でも取扱が容易になる。
【0011】
次に、表面にヒータ線13が取り付けられた基材部12を、表皮部成形型にインサートして表皮部11を一体に成形する。基材部12と同様にRIM成形法による。表皮部成形型には、成形前に、基材部12を型内に置くまえの金型を開いた状態で、コーティングを施す。コーティングは、はじめに離型剤を塗布し、次にバリアー層(塗料の膜)付与を行う。表皮部11が形成されるときバリアーが表皮部11側に移り(インモールドコート法)、一体成形された保護膜により隠蔽され表皮部11は紫外線に対する耐久性と耐磨耗性が向上する。基材部12の外側に、反応してポリウレタンを形成する混合液を注入し基材部12の外側に重ねて一体に成形し、いわゆるオーバーモールドして、ヒータ線13が表皮部11の厚み範囲内に一体に埋め込まれる。表皮部11はソリッドウレタン、無発泡ウレタンともいわれる、発泡を伴わないポリウレタン樹脂層からなる。無発泡ウレタンの他、発泡による空隙率の低い、いわゆる低発泡のポリウレタン樹脂層としてもよい。この場合の低発泡ポリウレタンとしては、比重0.8程度のものを選択するのがよい。
基材部12の発泡ポリウレタンは、いわゆるスポンジ体であって、比重0.3〜0.6のものを選択する。熱伝導性が低くなっているが、表皮部11は発泡を伴わないか上述のような低発泡体としたので、熱伝導性では発泡ポリウレタン製の基材部12よりも勝っている。これに例えば、アルミの微粉末などを加えてもよい。微粉末が表面近くにも一部存在したとしても、バリアーによって、外観上の問題となることはない。
表皮部11を形成するためのポリウレタンは、成形後の収縮率の大きなものを選択するのがよい。好ましくは、基材部12に使用したポリウレタンの3倍以上の収縮率を持つものを選択する。すなわち、基材部12を1〜2%の収縮率のポリウレタンを使用するときは、表皮部11については6%程度の収縮率を持つものを選択する。表皮部11が収縮により基材部12に密着する。基材部12の成形時に離型剤の使用を抑えてあるので、表皮部11と基材部12の界面の剥離性が抑制される。
特に、本実施例のように断面全周に亘り基材部12を覆うので、成形後収縮により締め付け力が良好に作用することとあいまって、界面の接合力が得られる。収縮率は基材部12のそれの5倍程度とするのがよく、それを超える大きな収縮率となると、ヒータ線13の影響が出やすくなり、外観上好ましくない場合がある。
表皮部11はヒータ線13を一体にインサート成形しており、表皮部11内にヒータ線13が埋め込まれ閉じ込められる、すなわちとじられている。そのため、ヒータ線13の表面全部に表皮部11を構成するポリウレタンが入り込み、成形時に微細の気泡等が巻き込まれる等の例外的場合を除いて、隙間なくポリウレタンでパッキングされ、伝導伝熱により熱移動が行われ表皮部11の表面を効率よく暖めることができる。
このようにして、従来のポリウレタン製のステアリングホイールと外観上全く差の無いヒータ装置付きステアリングホイール、すなわち、表皮部11内に一体にヒータ線13を埋め込んだポリウレタン製のステアリングホイール1が製造される。
【実施例2】
【0012】
基材部112は、平滑な、先の実施例で用いた凹凸のない形状を選択した。この基材部112は、芯金5をRIM成形金型内に置き、芯金5の回りにポリウレタンの被覆部を形成し、成形後、カッター刃を使用して周方向に切り溝113を形成してある。図5、図6に示すように、ボス5bを回転装置114に軸固定し、図6の矢印R方向に回転させて、外周面に押し当てたカッター115を図5の矢印Yのように外周面112aに沿って動かし、螺旋状の切り溝113を形成する。切り溝113に、図7に示すように、ヒータ線13を圧入し、保持させる。ヒータ線13は、図1、図4などに示した方法に従い、スポーク3に沿って両端末が引き出され、図示しない温度制御のための電流制限機構を備えた電源装置に接続される。
【実施例3】
【0013】
図8は、上記実施例のポリウレタン製の基材部12、112に代え、発泡樹脂ブロックを使用した基材部212の例を示している。
発泡樹脂ブロックは、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレンなどからなり、射出成形、ビーズ発泡成形などによる、高発泡成形体である。使用する表皮11のための成形材料に合わせて、適宜、表面に保護膜やプライマー処理を行い、成形材料による侵食を防止し、界面接合強度を得るようにする。例えばポリウレタン成形用反応液により、発泡ポリスチレンが溶解し、体積が縮減するので、表面に保護膜としての塗膜を形成しておく。
鉄パイプをコイリング加工して円環状のリム芯金205aとし、図示しないボスプレートと接続するスポーク芯金205cを、熔接によって一体にリム芯金205aと接合してある。
発泡樹脂ブロックは、アッパシェル201とロアシェル202とからなり、図8の態様では、リム芯金205aの全周を複数のパーツに分けて、例えば4部構成とし、各部にアッパシェルとロアシェルを有する全8部品としている。勿論全周に亘ってカバーするアッパシェルとロアシェルの全2部品構成としてもよい。各シェル201、202には、リム芯金205aとスポーク芯金205cを収納する溝部203と、対向面204を有し、対向面204には、相補的凹凸であるボス210と円孔211が形成されている。このような発泡樹脂ブロックによれば、基材212はRIM成形によらず、各別に用意された部品を組み立てることにより準備される。
各シェル201、202には、内周部に間歇的に設けた突起208により、ヒータ線の係止が可能である。突起によらず、事務用あるいは建築用に利用される門型をしたステープルの門部分にヒータ線をくぐらせるようにして発泡樹脂ブロックに打ち込んで位置決めし、ヒータ線を保持してもよい。
ヒータ線が表面に引き回された基材部222に、上記実施例と同様に発泡しないポリウレタンを被覆して、ステアリングホイールを製造する。
【0014】
図9はヒータ線13を自動で基材部222に取り付ける装置の例である。図9(a)に示すように、基材部222の外周側に、多関節体である取付治具250が、ジグザグに保持したヒータ線13を端末のピン251によって支持している。
基材部222に沿って変形した取付治具が基材部222に巻きつき、ヒータ線13をピン252で押してピン251から離脱させ突起228に係合させる。
なお、表皮部11は、上記例では、いずれも発泡しないポリウレタン樹脂のRIM成形によったが、この材料及び工法に限定されるものではない。例えば、熱可塑性エラストマー樹脂の射出成形法によってもよいし、注型法により樹脂を薄皮状に形成してもよい。これに遠心力を利用してもよい(回転成形)。
【実施例4】
【0015】
図11は、上記実施例のポリウレタン製の基材部12、112に代え、発泡樹脂のインサート成形体を使用した基材部312の例を示している。発泡樹脂は、例えばポリプロピレン樹脂にケミカル発泡剤を添加したもので、インラインスクリュ式射出成形機を使用して、芯金を成形金型内にインサートして芯金5(5d)を覆う一体成形発泡樹脂基材を形成している。基材部312の表面には、複数のボス313が互いに所定間隔で離間するように配置形成され、ヒータ線13がボス313に掛けまわされるようにして取り付けられる。ボス313はヒータ線13の直径よりも大きな高さを有しており、例えば、ヒータ線の直径が1mmのとき、ボス313を高さ3mmにしておく。ヒータ線13を基材部312の表面312aに密着させるように保持し、ボス313を熱ゴテ、超音波ホーンなどで溶かし、図12に示すように、ヒータ線13を包み込むように表面312aにダンゴ状に丸める。基材部312を構成する発泡樹脂が冷え固まると、ヒータ線13が表面312aに沿ってしっかりと固定される。このようにしてヒータ線13が取り付けられた基材部312に表面処理としてのプライマや火炎処理を施しポリプロピレン樹脂の表面活性を高めた状態で、上記実施例と同様にポリウレタン樹脂のインサートRIM成形を行い、表皮部が付与され内部にヒータ装置を備えたステアリングホイールを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
部材である把持部材、内装部材としては、ステアリングホイールの他、図10(a)〜(c)に示す、変速ノブ301、グラブレール302、アームレスト(兼コンソールボックスリッド)303等が例示される。
【符号の説明】
【0017】
1・・・・ステアリングホイール
2・・・・リム部
3・・・・スポーク部
3a・・・・スポーク部
3b・・・・スポーク部
3c・・・・スポーク部
4・・・・ボス部
5・・・・芯金
5a・・・・ボスプレート
5b・・・・ボス
5c・・・・スポーク芯金部
5d・・・・リム芯金部
10・・・・ステアリングホイール本体
11・・・・表皮部
12・・・・基材部
13・・・・ヒータ線
20・・・・溝
20a・・・・端末部
21・・・・突起
21a・・・・上側突起
21b・・・・下側突起
21c・・・・係止面
21d・・・・立面
22・・・・スリット
112・・・・基材部
112a・・・・外周面
113・・・・切り溝
114・・・・回転装置
115・・・・カッター
201・・・・アッパシェル
202・・・・ロアシェル
203・・・・溝部
204・・・・対向面
205a・・・・リム芯金
205c・・・・スポーク芯金
208・・・・突起
210・・・・ボス
211・・・・円孔
212・・・・基材部
222・・・・基材部
250・・・・取付治具
251・・・・ピン
252・・・・ピン
301・・・・変速ノブ
302・・・・クラブレール
303・・・・アームレスト
312・・・・基材部
312a・・・・表面
313・・・・ボス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性を有する基材と、基材の表面に引き回された電熱線と、電熱線と基材とを覆う伝熱性を有する被覆材を備え、基材には、電熱線を位置決めする位置決め部を備え、被覆材は、電熱線と相補的に形成され外面と基材表面の間の領域の少なくとも一部の範囲を隙間なくとじることを特徴とする部材。
【請求項2】
位置決め部は、引き回される電熱線の屈曲部を保持することを特徴とする請求項1に記載の部材。
【請求項3】
位置決め部は、突起部または凹陥部の少なくともいずれか一方を備え、基材の型成形時に一体に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の部材。
【請求項4】
位置決め部は、基材の型成形における型割り部分に形成されることを特徴とする請求項3に記載の部材。
【請求項5】
被覆材は、基材を、断面全周に亘って収縮を伴ってとじることを特徴とする請求項1〜請求項4のうち、いずれか1項に記載の部材。
【請求項6】
回転中心部を備えるボス部と、回転周縁部に配置され把持操作されるグリップ部と、グリップ部とボス部とを連結する連結部とを備え、グリップ部に、請求項1加〜請求項5のうち、いずれか1項に記載の部材を組み込んでなることを特徴とするステアリングホイール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−52775(P2013−52775A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192802(P2011−192802)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】