説明

部材支持構造

【課題】被支持部材に対するダメージャビリティの向上と、底付きGの低減を図ることが可能な部材支持構造を得る。
【解決手段】ラジエータ18を保持するラジエータサポート16は、車両前方側から受けた荷重により後退して、エネルギー吸収する作用を有している。ラジエータサポートは、後退可能量L1とされる。ラジエータサポートロア16Bとフロントサスペンションメンバ20のロアアームの間には、フロントアンダメンバ26が配置され、車両前方側からの荷重でスライドして、エネルギー吸収する。フロントアンダメンバ26のスライド可能量L2は、L1≦L2となるように設定される。したがって、ラジエータサポート16の後退量がL1に達した後もフロントアンダメンバ26がスライドしてエネルギー吸収するので、底付きGが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材支持構造に関し、さらに詳しくは、車体に対し被支持部材を支持するための部材支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体に対し被支持部材を支持するための部材支持構造として、特許文献1には、サスペンションメンバーの先端部に、各フロントサイドフレームのそれぞれに沿うと共に、車両の前方に向けて伸延する一対の受圧部材を連結した車両の前部車体構造が記載されている。
【0003】
ところで、車体の端部に支持される被支持部材には、たとえばラジエータ等のように、損傷時の修理コスト等の低減(いわゆるダメージャビリティの向上)が特に求められるものがある。このような被支持部材に対し、衝突体からの外力のエネルギーを効果的に吸収してダメージャビリティを向上させつつ、部材支持構造の全体としても、エネルギー吸収の後半段階での吸収荷重(いわゆる「底付きG」)を小さくして、確実にエネルギー吸収できることが望まれる。
【特許文献1】特開2006−15859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、被支持部材に対するダメージャビリティの向上と、底付きGの低減を図ることが可能な部材支持構造を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明では、車体に対し被支持部材を支持すると共に、衝突体から被支持部材へ作用した外力で変形してエネルギー吸収する支持部材と、前記支持部材と車両骨格部材の間に配置され、衝突体から被支持部材へ作用した外力で変形してエネルギー吸収する中間部材と、を備え、前記支持部材による変形後においても前記中間部材が変形してエネルギー吸収可能とされていることを特徴とする。
【0006】
したがって、この部材支持構造では、衝突体から被支持部材へ外力が作用すると、被支持部材を支持する支持部材が変形し、エネルギー吸収される。これにより、被支持部材の損傷を低減すると共に、修理コストも低減でき、ダメージャビリティが向上する。
【0007】
また、この外力によって、被支持部材又は支持部材と車両骨格部材の間に配置された中間部材も変形して、エネルギー吸収する。ここで、中間部材は、支持部材の変形後においても変形して外力のエネルギーを吸収する。そして、中間部材の変形後に、車両骨格部材を含む各部材でさらにエネルギー吸収するが、その際の吸収荷重(底付きG)は、その前に中間部材が変形しない構成と比較して、小さくなる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記中間部材が、前記支持部材と車両骨格部材の間で支持部材と車両骨格部材の接近方向に相対移動する複数の相対移動部材と、前記複数の相対移動部材どうしを連結し、前記外力により連結解除して前記相対移動を可能とする複数の連結部材と、を有することを特徴とする。
【0009】
したがって、中間部材に外力が作用する前は、連結部材によって複数の相対移動部材が連結されており、これらが不用意に相対移動することはない。そして、連結部材は複数設けられているので、1つのみ設けられた構成と比較して、複数の相対移動部材どうしの不用意な相対回転を抑制できる。
【0010】
中間部材に外力が作用すると、連結部材は連結解除するので、相対移動部材が相対移動できるようになる。そして、この相対移動によってエネルギー吸収がなされながら、支持部材と車両骨格部材とが接近する。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記複数の相対移動部材どうしの相対移動量を制限する相対移動量制限部材、を有することを特徴とする。
【0012】
相対移動量制限部材によって、複数の相対移動部材の相対移動量を制限することで、中間部材を介して車両骨格部材に荷重を伝達し、初期段階での吸収荷重を増大させることが可能になる。
【0013】
請求項4に記載の発明では、請求項2又は請求項3に記載の発明において、前記車両骨格部材が、タイヤを支持するタイヤ支持部材を含んで構成され、前記複数の相対移動部材の相対移動全量と前記相対移動部材と前記タイヤ支持部材との間隙の和が、衝突初期での衝突体とタイヤの距離とタイヤのバースト代の和よりも長くされていることを特徴とする。
【0014】
したがって、衝突体がタイヤと干渉し、タイヤがバーストしてエネルギー吸収した後、相対移動部材の相対移動量が全量に達すると共に相対移動部材とタイヤ支持部材との間隙が解消されて、底付きの状態になる。中間部材からタイヤ及びタイヤ支持部材を経て車両骨格部材に至る荷重伝達経路でも衝突荷重を伝達できるので、より効率的なエネルギー吸収が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記構成としたので、被支持部材に対するダメージャビリティの向上と、底付きGの低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1には、本発明の一実施形態の部材支持構造12が示されている。本実施形態では、部材支持構造12が自動車の車体前部構造として適用された例を挙げる。また、各図面において車両前方を矢印FRで、上方を矢印UPで、車幅方向外側を矢印OUTでそれぞれ示す。
【0017】
図1に示すように、部材支持構造12は、車両前後方向に延在するフロントサイドメンバ14を有している。フロントサイドメンバ14は、車両前方側の略水平な前部14Aと、前部14Aの後端から斜め下方に延出された傾斜部14B、及び、傾斜部14Bの後端(下端)から車両後方に延出された略水平な後部14C、を有している。
【0018】
フロントサイドメンバ14の前端14Fには、ラジエータサポート16が配置されている。ラジエータサポート16は、ラジエータ18を保持すると共に、フロントサイドメンバ14に取り付けられるラジエータサポート本体16Aと、ラジエータ18を下方から支持するラジエータサポートロア16Bと、を有している。
【0019】
ラジエータサポート本体16Aは、ラジエータ18とフロントサイドメンバ14の前端14Fとの間に間隔L1が生じるようにラジエータ18を保持している。また、ラジエータサポート本体16Aは、車両前方側から受けた荷重が閾値f1を超えると変形しつつラジエータ18を後退させつつ、エネルギー吸収する作用を有している。
【0020】
実際に車両前方側から、たとえば衝突体100等によって荷重(衝撃)Fが作用した場合には、ラジエータサポート16への荷重F1と、後述するフロントアンダメンバ26への荷重F2とに分かれて、この荷重Fが吸収されるようになっている。すなわち、ラジエータサポート本体16Aは、上記した閾値f1を超える分力F1が作用すると変形し、この間隔L1を解消してラジエータ18を後退させる。以下では、間隔L1を適宜、ラジエータサポート後退可能量L1と表現する。
【0021】
フロントサイドメンバ14の傾斜部14Bの下方にはフロントサスペンションメンバ20が配置されており、連結部材22や、図示しないボルト等によって、フロントサイドメンバ14に固定されている。さらに、ラジエータサポートロア16Bとフロントサスペンションメンバ20のロアアーム24(図4参照)の間に、フロントアンダメンバ26が配置されている。フロントアンダメンバ26の前端は、ストッパ部材28を介してラジエータサポートロア16Bに固定されている。また、フロントアンダメンバ26の後端は、連結部材22を介してフロントサイドメンバ14に連結されている。
【0022】
図2及び図3にも示すように、フロントアンダメンバ26は、車両前方側のアンダメンバスライド部材26Aと、車両後方側のアンダメンバ本体26Bと、を有している。アンダメンバ本体26Bは略四角筒状に形成されており、車両前方側からアンダメンバスライド部材26Aが挿入されている。図2に示すように、アンダメンバスライド部材26Aとアンダメンバ本体26Bとは、車両前後方向の2本の結合ピン30(又は結合用ボルト)で結合されており、通常は、アンダメンバスライド部材26Aがアンダメンバ本体26Bに対して車両前後方向にスライドすることはないが、結合ピン30の破断強度を超える荷重が作用すると、結合ピン30が破断される。このように結合ピン30が破断された状態で、あらかじめ設定された閾値f2を超える荷重が車両前方側から作用すると、アンダメンバスライド部材26Aがアンダメンバ本体26Bに対してスライドする。衝突体100から作用した荷重Fのうち、フロントアンダメンバ26へ作用する荷重F2が、このスライドによって吸収される。
【0023】
ここで、結合ピン30の破断荷重(破断に要する荷重)をDとすると、上記の荷重の閾値f1、f2と破断荷重Dについて、本実施形態では、
f1≧f2≧D (1)
の関係が満たされるように、それぞれの強度が設定されている。したがって、まず、結合ピン30が破断され、その後、アンダメンバ本体26Bに対してアンダメンバスライド部材26Aがスライドする。
【0024】
図2及び図3に詳細に示すように、ストッパ部材28は、ラジエータサポートロア16Bへの固定用とされる固定片28Aと、この固定片28Aから下方に延出されてアンダメンバスライド部材26Aに固定されたストッパ片28Bとを有している。固定片28Aは、たとえばボルト40及びナット42によって、ラジエータサポートロア16Bに固定される。
【0025】
ストッパ片28Bは、車両前方側から見て、アンダメンバ本体26Bと重なる形状とされており、アンダメンバ本体26Bに対するアンダメンバスライド部材26Aのスライドは、ストッパ片28Bがアンダメンバ本体26Bに当たることにより制限される。この状態でストッパ片28Bがさらに後退しようとすると、ストッパ片28Bは、車両前方側から見てアンダメンバ本体26Bと重なっているので、アンダメンバ本体26Bの稜線を有効に利用して、アンダメンバ本体26Bへと効果的に荷重を伝達する。
【0026】
ここで、フロントアンダメンバ26のスライド可能量、すなわち、アンダメンバスライド部材26Aのアンダメンバ本体26Bに対するスライド量をL2とすると、本実施形態では、
L1≦L2 (2)
の関係が満たされている。したがって、衝突体100の衝突によってラジエータサポート本体16Aが変形するが、この変形が終了した後も、アンダメンバスライド部材26Aがアンダメンバ本体26Bに対してスライドする。
【0027】
図4(A)に示すように、アンダメンバ本体26Bとフロントサイドメンバ14のロアアーム24との間には、間隙D1が構成されている。この間隙D1の長さをbとする。また、衝突体100が衝突した瞬間の、衝突体100からタイヤ32の先端までの距離をc、タイヤ32のバースト代をdとする。このとき、本実施形態では、
L2+b≧c+d (3)
が成立するように、フロントアンダメンバ26のスライド可能量L2が、各部材の形状や部材間の距離との関係において設定されている。
【0028】
図6に示すように、アンダメンバ本体26Bの後端は閉塞板34によって閉塞されており、閉塞板34の上部及び下部が、それぞれアンダメンバ本体26Bの上部及び下部と接合されて、接合部36とされている。接合部36は、車両前方側から後方側に向かうにしたがって上下に広がる形状とされている。この広がり部分の上下長は、ロアアーム24の上下方向の挙動が最も大きくなったとき(バウンド状態)を考慮し、ロアアーム24最大の上下動に対しても、後退したアンダメンバ本体26Bがロアアーム24に当たるようになっている。
【0029】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0030】
図7には、衝突体100が衝突したときの車両前端の移動量(車両ストロークS)と、車体に作用する荷重(厳密には、図示しないフロアに作用する荷重、以下「フロアG」とする)との関係が示されている。図7のグラフにおいて、実線L3は本実施形態の場合であり、破線L4は、ラジエータサポート16が後退せず、本実施形態のフロントアンダメンバ26も有さない構造しない構造(比較例1とする)の場合である。また、一点鎖線L5は後述するように、ラジエータサポート16は後退するが、本実施形態のフロントアンダメンバ26を有さない構造(比較例2とする)の場合である
【0031】
本実施形態の部材支持構造12が適用された自動車と衝突体100とが衝突した場合、衝突体100から車体に作用した荷重Fのうち、フロントアンダメンバ26に作用した荷重F2が結合ピン30の破断荷重Dより大きいと、結合ピン30が破断され(図7のグラフにおいて、車両ストロークの原点)、ラジエータサポート16は後退可能となる。ラジエータサポート16は、荷重F1を受けて変形しつつラジエータ18を後退させ、衝突体100からの衝撃のエネルギーを吸収する。また、フロントアンダメンバ26も、アンダメンバ本体26Bに対しアンダメンバスライド部材26Aがスライドして、このエネルギーを吸収する。
【0032】
ここで、図7のグラフの実線L3と破線L4とから分かるように、本実施形態ではラジエータサポート16を後退させて衝突のエネルギーを吸収しているので、比較例1と比べて、衝突初期において車体に作用する荷重が少なくなっている(斜線で示す領域E1参照)。すなわち、本実施形態では、衝突体100から作用する荷重が比較的小さい衝突(いわゆる軽衝突)の場合に、ラジエータ18を後退させて、その損傷を低減する(好ましくは損傷しないようにする)ことが可能である。ラジエータ18の修理に要するコストを低減でき、ダメージャビリティが向上する。
【0033】
衝突体100からの荷重が車体にさらに作用すると、ラジエータサポート16の後退量がラジエータサポート後退可能量L1に達する。本実施形態では、ラジエータサポート後退可能量L1と、フロントアンダメンバ26のスライド可能量L2について、上記(2)の関係が成立している。したがって、以後は、荷重F1はフロントサイドメンバ14に作用する。また、荷重F2は引き続きフロントアンダメンバ26に作用する。
【0034】
ここで、図7のグラフの実線L3と一点鎖線L5とから分かるように、本実施形態では、ラジエータサポート16の後退量がラジエータサポート後退可能量L1に達した後も、フロントサイドメンバ14によって荷重F1が作用するだけでなく、フロントアンダメンバ26にも荷重F2が作用する。そして、フロントアンダメンバ26のスライドによって衝突のエネルギーを吸収している(斜線で示す領域E2参照)。このため、フロントアンダメンバ26を有さない比較例2と比べて、本実施形態では、この段階でのフロアGが大きくなっている。
【0035】
フロントアンダメンバ26のスライド量がL2に達すると、以後は、荷重F2もラジエータサポートロア16Bからストッパ部材28、フロントアンダメンバ26、フロントサスペンションメンバ20を経てフロントサイドメンバ14に作用する。この荷重伝達経路によってエネルギー吸収することで、衝突初期でのフロアGを増大させることができる。そして、フロアGは段階的に(場合によっては連続的に)増大した後、最大値、すなわち底付きGに達する。なお、本実施形態の場合と、比較例1、比較例2のいずれの場合でも、最終的に吸収される衝撃のエネルギーの全量は等しい。
【0036】
以上の説明から分かるように、単純にラジエータサポート16の後退のみでラジエータ18に対するダメージャビリティを向上させる比較例2の構成では、車両ストロークがL1に達するまでのフロアGが低減されている分、底付きGは大きくなっている。これに対し、本実施形態では、ストロークがL1に達するまではフロアGが低減されているが、その後、ストロークがL2に達するまでは、フロアGを増大させている。これによって、結果的に底付きGを比較例2の構成よりも低減させることが可能になっている。
【0037】
また、本実施形態では、特にフロントアンダメンバ26のスライド可能量L2に関し、上記式(3)が成立している。このため、図4(B)に示すように、フロントアンダメンバ26がロアアーム24と干渉する前に、タイヤ32が衝突体100と干渉し、タイヤバーストによってエネルギー吸収する。その後、フロントアンダメンバ26がロアアーム24に当たって底付きの状態になるため、フロントアンダメンバ26から、ロアアーム24を経てフロントサイドメンバ14に至る荷重伝達経路において、衝突の荷重を効果的に伝達できる。
【0038】
このように、本実施形態では、上記(3)の関係を満たすようにすることで、タイヤ32を効果的に利用し、安定的に衝突の荷重を車体に伝達可能となっている。
【0039】
ただし、本発明では、上記(3)の関係を満たさない構成を排除するものではない。すなわち、図5(A)に示すように、
L2+b<c+d
の関係が成立している構成では、タイヤ32が衝突体100と干渉する前に、フロントアンダメンバ26がロアアーム24に当たってロアアーム24を後方に押す。これにより、図5(B)に示すように、タイヤ32が衝突体100から離れてしまうので、図4に示す構成と比較すると、エネルギー吸収やフロントサイドメンバ14への荷重伝達という点での効率は低くなる。しかし、図5の構成でも、ストロークがL1に達するまではフロアGが低減されているが、その後、ストロークがL2に達するまでは、フロアGを増大させており、底付きGを比較例2の構成よりも低減させることが可能になっている。
【0040】
また、本実施形態では、図6に示したように、アンダメンバ本体26Bの後端が上下に広がる形状とされており、ロアアーム24の上下方向最大の挙動に対しても、後退したアンダメンバ本体26Bがロアアーム24に当たる。これにより、確実にフロントアンダメンバ26をロアアーム24に当てて、荷重を伝達することが可能になっている。
【0041】
また、本実施形態では、図2に示したように、フロントアンダメンバ26のアンダメンバスライド部材26Aとアンダメンバ本体26Bとを、2本の結合ピン30によって結合している。したがって、1本の結合ピン30のみで結合した図8の構成と比較して、アンダメンバスライド部材26Aとアンダメンバ本体26Bとの相対的な回転モーメントに抗して、これらの回転ゆるみを抑制することができる。特に、図8の構成では、走行時の振動等によって結合ピン30回りに回転ゆるみが発生するおそれがあるが、本実施形態では、通常走行時の振動等が作用しても、回転ゆるみを抑制できる。もちろん、1本の結合ピン30のみであっても、回転ゆるみが生じるおそれがない場合には、1本の結合ピン30のみでアンダメンバスライド部材26Aとアンダメンバ本体26Bとを結合してもよい。また、回転ゆるみを抑制する観点からは、3本以上の結合ピン30でアンダメンバスライド部材26Aとアンダメンバ本体26Bとを結合してもよい。本発明の連結部材としては、このような結合ピン30に限定されず、アンダメンバスライド部材26Aとアンダメンバ本体26Bとを、所定の荷重Dで結合解除するように結合するものであればよい。
【0042】
また、本発明の相対移動量制限部材としても、上記では、フロントアンダメンバ26のアンダメンバスライド部材26Aに固定されたストッパ部材28を挙げたが、これに限定されない。たとえば図9及び図10に示すように、略板状のストッパ板38を、アンダメンバ本体26Bの内部に固定してもよい。ストッパ板38の固定構造も特に限定されないが、ストッパ板38の各片からフランジ片38Fを延出し、このフランジ片38Fを利用してスポット溶接等によりアンダメンバ本体26Bに固定してもよい。これにより、アンダメンバスライド部材26Aの構造を簡素化できる。また、図2及び図3に示す構造と比較して、ストッパ板38がアンダメンバ本体26Bの内部に配置されているので、省スペース化を図ることができる。
【0043】
さらに、図11に示すように、フロントアンダメンバ26のアンダメンバ本体26Bの後端を開放し(図6に示す閉塞板34を設けない)、アンダメンバスライド部材26Aがアンダメンバ本体26Bを貫通して、直接的にロアアーム24に当たることで、本発明の相対移動量制限部材が構成されるようになっていてもよい(図11に二点鎖線で示すアンダメンバスライド部材26A参照)。この構成では、図2及び図3に示すストッパ部材28や、図9及び図10に示すストッパ板38が不要となるので、部品点数を少なくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態の部材支持構造を車体の前部構造として概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態の部材支持構造を構成するフロントアンダメンバの前部およびその近傍を部分的に拡大して示す一部破断側面図である。
【図3】本発明の一実施形態の部材支持構造を構成するフロントアンダメンバの前部を部分的に拡大して示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態の部材支持構造においてフロントアンダメンバのスライド可能量を説明する説明図であり、(A)は衝突体との衝突前、(B)は衝突後を示す。
【図5】図4に示したものとは異なる構成の部材支持構造においてフロントアンダメンバのスライド可能量を説明する説明図であり、(A)は衝突体との衝突前、(B)は衝突後を示す。
【図6】本発明の一実施形態の部材支持構造を構成するフロントアンダメンバの後部およびその近傍を部分的に拡大して示す一部破断側面図である
【図7】衝突体との衝突時における車両ストロークとフロアGとの関係を本発明の実施形態及び比較例1、2の場合で模式的に示すグラフである。
【図8】図2に示したものとは異なる本発明の部材支持構造を構成するフロントアンダメンバの前部およびその近傍を部分的に拡大して示す一部破断側面図である。
【図9】図2及び図8に示したものとは異なる本発明の部材支持構造を構成するフロントアンダメンバの前部およびその近傍を部分的に拡大して示す一部破断側面図である。
【図10】図9に示すフロントアンダメンバを部分的に示す断面図である。
【図11】図2、図8〜図10に示したものとは異なる本発明の部材支持構造を構成するフロントアンダメンバの後部およびその近傍を部分的に拡大して示す一部破断側面図である。
【符号の説明】
【0045】
12 部材支持構造
14 フロントサイドメンバ(車両骨格部材)
16 ラジエータサポート(支持部材)
16A ラジエータサポート本体
16B ラジエータサポートロア
18 ラジエータ(被支持部材)
20 フロントサスペンションメンバ
22 連結部材
24 ロアアーム(タイヤ支持部材、車両骨格部材)
26 フロントアンダメンバ(中間部材)
26A アンダメンバスライド部材(相対移動部材)
26B アンダメンバ本体(相対移動部材)
28 ストッパ部材(相対移動量制限部材)
30 結合ピン(連結部材)
32 タイヤ
34 閉塞板
36 接合部
38 ストッパ板(相対移動量制限部材)
100 衝突体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対し被支持部材を支持すると共に、衝突体から被支持部材へ作用した外力で変形してエネルギー吸収する支持部材と、
前記支持部材と車両骨格部材の間に配置され、衝突体から被支持部材へ作用した外力で変形してエネルギー吸収する中間部材と、
を備え、
前記支持部材による変形後においても前記中間部材が変形してエネルギー吸収可能とされていることを特徴とする部材支持構造。
【請求項2】
前記中間部材が、
前記支持部材と車両骨格部材の間で支持部材と車両骨格部材の接近方向に相対移動する複数の相対移動部材と、
前記複数の相対移動部材どうしを連結し、前記外力により連結解除して前記相対移動を可能とする複数の連結部材と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の部材支持構造。
【請求項3】
前記複数の相対移動部材どうしの相対移動量を制限する相対移動量制限部材、
を有することを特徴とする請求項2に記載の部材支持構造。
【請求項4】
前記車両骨格部材が、タイヤを支持するタイヤ支持部材を含んで構成され、
前記複数の相対移動部材の相対移動全量と前記相対移動部材と前記タイヤ支持部材との間隙の和が、衝突初期での衝突体とタイヤの距離とタイヤのバースト代の和よりも長くされていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の部材支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−37112(P2008−37112A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209556(P2006−209556)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】