説明

配向膜形成用組成物、配向膜、画像表示装置および電子機器

【課題】表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生を効果的に防止することができる配向膜を提供する。
【解決手段】ポリイミド、γ−ブチロラクトン、フッ素系レベリング剤を含むインクジェット方式の配向膜形成用組成物であり、前期フッ素系レベリング剤は、式(1)の単量体、および下記式(2)の単量体を含んで構成される。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向膜形成用組成物、配向膜、画像表示装置および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置における配向膜の形成方法としては、フレキソ印刷法やスピンコート法による方法が一般的であった。しかし、フレキソ印刷法では版のメンテナンスが煩雑であり、また、版に、配向膜形成用の材料(インク)を行き渡らせるために必要以上のインクを使用することから、インクの無駄が多いといった欠点があった。一方、スピンコート法にあっても、大量のインクを必要とするものの、実際に膜形成に供される材料は投入材料の10%程度であり、残りの90%程度は廃棄されてしまうことから、やはりインクの無駄が多いといった欠点があった。
【0003】
このような背景のもとに、近年では、配向膜の形成方法として、インクジェット法に代表される液滴吐出法を用いることが提案されている。液滴吐出法は、必要な箇所に必要な量のインクを配することができることから、材料(インク)の無駄が少なく、したがって材料コストの点などで有利であり、また、面積が大きい基板に対しても容易に配向膜を形成することができる等の利点を有することから、近年特に注目されている。
配向膜の構成材料(配向膜材料)としては、一般に、ポリイミド等が用いられている。また、液滴吐出法(インクジェット法)で配向膜を形成するための配向膜形成用組成物としては、配向膜材料の溶解性等の観点からN−メチルピロリドンやγ−ブチロラクトンを、溶媒として含むものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記のような配向膜形成用組成物を用いてインクジェット法により、配向膜を形成する場合、配向膜形成用組成物の粘度が高いと、基板への濡れ広がりが悪くなるため、固形分含有率が比較的低い配向膜形成用組成物を用いる必要がある。しかしながら、このような配向膜形成用組成物では、配向膜を形成すべき基板の表面状態のわずかな変化によって、塗膜に膜厚のむらを生じやすく、その結果、形成される配向膜に不本意な厚みのむらを生じ、表示画像に色むら・濃度むら(特に、すじむら)等を生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−295195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生を効果的に防止することができる配向膜を提供すること、当該配向膜の形成に好適に用いることができる配向膜形成用組成物を提供すること、また、当該配向膜を備えた画像表示装置、電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明の配向膜形成用組成物は、インクジェット方式による配向膜の製造に用いられる配向膜形成用組成物であって、
ポリイミドと、γ−ブチロラクトンと、フッ素系レベリング剤とを含むことを特徴とする。
これにより、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生を効果的に防止することができる配向膜の形成に好適に用いることができる配向膜形成用組成物を提供することができる。
【0008】
本発明の配向膜形成用組成物では、前記フッ素系レベリング剤として、単量体成分として下記式(1)に示すフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよび下記式(2)に示すアルコキシシリル基含有ビニル単量体sを含んで構成されたフッ素−ケイ素系共重合体を含むことが好ましい。
【化1】

【化2】

これにより、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生をより効果的に防止することができる。また、配向膜形成用組成物の液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、配向膜の形成効率を特に優れたものとすることができる。
【0009】
本発明の配向膜形成用組成物では、前記フッ素−ケイ素系共重合体の重量平均分子量は、15000以上500000以下であることが好ましい。
これにより、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生をより効果的に防止することができる。また、配向膜形成用組成物の液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、配向膜の形成効率を特に優れたものとすることができる。
【0010】
本発明の配向膜形成用組成物では、前記フッ素−ケイ素系共重合体は、溶解度パラメーターが5以上8以下であることが好ましい。
これにより、フッ素−ケイ素系共重合体の配向膜形成用組成物中の他の成分との親和性を高いものとすることができ、配向膜形成用組成物の液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、配向膜の形成効率を特に優れたものとすることができる。また、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生をより効果的に防止することができる。
【0011】
本発明の配向膜形成用組成物では、配向膜形成用組成物中における前記フッ素−ケイ素系共重合体の含有量は、0.1wt%以上5.0wt%以下であることが好ましい。
これにより、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生をより効果的に防止することができる。また、配向膜形成用組成物の液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、配向膜の形成効率を特に優れたものとすることができる。
【0012】
本発明の配向膜は、本発明の配向膜形成用組成物を用いて形成されたことを特徴とする。
これにより、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生を効果的に防止することができる配向膜を提供することができる。
本発明の画像表示装置は、本発明の配向膜を備えたことを特徴とする。
これにより、表示部に表示される表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生を効果的に防止することができる画像表示装置を提供することができる。
本発明の電子機器は、本発明の画像表示装置を備えたことを特徴とする。
これにより、表示部に表示される表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生を効果的に防止することができる電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の配向膜が適用された液晶表示装置(画像表示装置)の一例を示す概略分解斜視図である。
【図2】本発明の配向膜が適用された液晶表示装置(画像表示装置)の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図である。
【図4】図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は概略平面図である。
【図5】マザー基板を示す概略平面図である。
【図6】液晶表示装置(画像表示装置)の製造方法を示す概略断面図である。
【図7】液晶表示装置(画像表示装置)の製造方法を示す概略断面図である。
【図8】本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書で参照する図面は、構成の一部を強調して示したものであり、実際の寸法等を正確に反映したものではない。
《配向膜形成用組成物》
まず、本発明の配向膜形成用組成物の好適な実施形態について説明する。
【0015】
本発明の配向膜形成用組成物(配向膜形成用インク)は、配向膜の製造に用いられる組成物(インク)であり、特に、インクジェット方式による配向膜の製造に用いられるものである。
また、本発明の配向膜形成用組成物(以下、単に、組成物、または、インクとも言う。)は、ポリイミドと、γ−ブチロラクトンと、フッ素系レベリング剤とを含むものである。
【0016】
ところで、インクジェット法を用いた配向膜の製造方法では、配向膜形成用の材料の無駄(廃棄量)を少なくできるという利点はあるが、一般に、形成される配向膜に不本意な厚みのむらを生じやすく、表示画像に色むら・濃度むら(特に、すじむら)等を生じやすいという問題があった。
また、配向膜の製造に用いる液滴吐出装置(産業用)は、プリンターに適用されるもの(民生用)とは全く異なるものであり、例えば、固形分含有率の高い高粘度の組成物を吐出するものであり、また、大量生産を行ったり、大型のワーク(基板)への液滴吐出に用いたりするため、大量の液滴を高い精度を保ちつつ長時間にわたって吐出することが求められる。このような過酷な条件で用いられるため、本来、民生用のものに比べて、液滴の吐出量の変動が生じやすいが、このような吐出量の変動が少しでも生じると、製造される多数の配向膜間での特性のばらつきが生じたり、配向膜の各部位での厚さのばらつきがより顕著なものとなる等の問題があった。
そこで、本発明者らは、上述したような問題を解決すべく、鋭意検討した結果、ポリイミドとγ−ブチロラクトンに加え、フッ素系レベリング剤を配向膜形成用組成物に含ませることにより、上述したような問題を解決できることを見出した。
【0017】
以下、配向膜形成用組成物を構成する各材料について詳細に説明する。
<フッ素系レベリング剤>
本発明の配向膜形成用組成物が含有するフッ素系レベリング剤は、特に限定されないが、単量体成分として下記式(1)に示すフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよび下記式(2)に示すアルコキシシリル基含有ビニル単量体sを含んで構成されたフッ素−ケイ素系共重合体であるのが好ましい。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
配向膜形成用組成物がフッ素系レベリング剤としてフッ素−ケイ素系共重合体を含むことにより、配向膜形成用組成物は、液滴吐出時において、ノズルからの液切れが優れたものとなる。また、ノズルへの組成物中の固形分(ポリイミド等)等の付着が防止される。これは、液滴吐出時において、ノズル付近にあるフッ素−ケイ素系共重合体が、ノズル表面との親和性を低下させているものだと考えられる。特に、ノズルを形成するノズルプレートとして、特開2004−330604号公報に記載されたノズルプレートを用いた場合、ノズルからの配向膜形成用組成物の液切れが特に優れたものとなる。
【0021】
また、フッ素−ケイ素系共重合体がフッ素およびケイ素を有する単量体をともに有することで、フッ素−ケイ素系共重合体は、非常に嵩高いものとなり微小な固形分等を取り込みやすいものとなる。このため、ポリイミド等の固形分等がノズル表面に付着した場合であっても、フッ素−ケイ素系共重合体がこれらを取り込むことによってノズルを洗浄することができるためだと考えられる。特に、このような洗浄効果は、インクジェットヘッドのノズル表面、ノズルプレートのノズル手前部分、ノズル部分へインクを供給するキャビティ部分に対し、発揮されるものである。
【0022】
この結果、液滴の吐出時における液滴の量が均一なものとなり、ノズル近傍に付着したポリイミド等の固形分等によって組成物の液滴が目標とする位置に着弾しない現象(飛行曲り)を防止することができる。このため、配向膜形成用組成物は、液滴の吐出安定性が優れたものとなり、各セルに均一な量の組成物を付与することができる。
また、このようなフッ素−ケイ素系共重合体を含むことにより、配向膜形成用組成物が基板(特にガラス基板)上に好適に濡れ広がることができる。これは、ケイ素を有するフッ素−ケイ素系共重合体と、基板との親和性が高いためと考えられる。このため、不本意な厚みのむらの発生をより効果的に防止することができる。
【0023】
その結果、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生をより効果的に防止することができる。また、配向膜形成用組成物の液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、配向膜の形成効率を特に優れたものとすることができる。
また、配向膜形成用組成物がフッ素系レベリング剤として上記のようなフッ素−ケイ素系共重合体を含むものであると、インクジェット法により形成された膜自体における構成分子の配列を規則正しいものとすることができるため、最終的に得られる配向膜の配向性をより確実に高いものとすることができる。また、配向膜形成用組成物がフッ素系レベリング剤として上記のようなフッ素−ケイ素系共重合体を含むものであると、インクジェット法により形成された膜を構成する分子の、配向処理(ラビング処理)における動きがスムーズなものとすることができ、最終的に得られる配向膜の配向性をより高いものとすることができる。
【0024】
[フッ素化アルキル基含有ビニル単量体f]
フッ素化アルキル基含有ビニル単量体fは、上記式(1)に示す成分である。フッ素−ケイ素系共重合体は、このようなフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fを有することにより、配向膜形成用組成物のノズルからの液切れを優れたものとすることができる。
【0025】
前記式(1)中の2価の連結基Aとしては、例えば、−(CH−、−CHCH(OH)(CH−、−(CHN(R)SO−、−(CHN(R)CO−(式中、nは1以上10以下の整数であり、Rは水素原子又は炭素数1以上18以下のアルキル基である。)、−CH(CH)−、−CH(CHCH)−、−C(CH−等の連結基が挙げられる。
また、前記式(1)中のRとしては、上述したようなフッ素化アルキル基であればよいが、例えば、−C、−C13、−C15、−C17、−(CFH、−(CFCF(CF、−(OCFCFOCFCF、−(OCFCF(CF))等のフッ素化アルキル基が挙げられる。
【0026】
また、Rがフッ素化アルキル基である場合、Rは、分岐鎖を有するものであってもよいし、直鎖状であってもよい。また、Rは、パーフルオロアルキル基であってもよいし、部分フッ素化アルキル基であってもよい。Rが部分フッ素化アルキル基である場合、例えば、2価の連結基としての分岐または直鎖アルキル基と、パーフルオロアルキル基が結合した構造が挙げられ、具体的には、−(CH−C2j+1(但し、式中、n、jは、0以上の整数であり、1≦n+j≦16の関係を満足する。)等の構造が挙げられる。
【0027】
前記フッ素化アルキル基含有ビニル単量体fとしては、前記式(1)を満足すものであればよいが、例えば、CH=CHCOOCHCH17、CH=C(CH)COOCHCH17、CH=CHCOOCHCH1225、CH=C(CH)COOCHCH1225、CH=CHCOOCHCH1021、CH=C(CH)COOCHCH1021、CH=CHCOOCHCH13、CH=C(CH)COOCHCH13、CH=CHCOOCHCH、CH=CFCOOCHCH13、CH=C(CH)COOCHCH2041、CH=C(Cl)COOCHCH、CH=C(CH)COO(CH1021、CH=C(CH)COOCHCF、CH=CHCOOCHCF、CH=CHCOOCH17、CH=C(CH)COOCH17、CH=C(CH)COOCH2041、CH=CHCOOCH2041、CH=C(CH)COOCHCF(CF、CH=C(CH)COOCHCFHCF、CH=CFCOOCH、CH=CHCOO(CHCF(CF、CH=C(CH)COOC(CH)HCFCFHCF、CH=C(CH)COOC(C)HC1021、CH=CHCOOCH(CF)H、CH=C(CH)COOCH(CF)H、CH=CHCOOCH(CF)H、CH=CHCOOCHCF、CH=C(CH)COOCH(CF)H、CH=CHCOOCH(CFH、CH=C(CH)COOCH(CFH、CH=CHCOOCH(CFH、CH=C(CH)COOCH(CFH、CH=CHCOOCH(CF10H、CH=CHCOOCH(CF12H、CH=CHCOOCH(CF14H、CH=CHCOOCH(CF18H、CH=CHCOOC(CH(CFH、CH=CHCOOCHCH(CFH、CH=C(CH)COOCHCH(CFH、CH=C(CH)COOC(CH(CFH、CH=CHCOOC(CF)HC17、CH=CHCOOCH、CH=CHCOOCHC(OH)HCH17、CH=C(CH)COOCHC(OH)H(CH17、CH=CHCOOCHCHN(C)SO17、CH=C(CH)COOCHCHN(CH)SO13、CH=C(Cl)COO(CHN(C)SO1225、CH=CHCOOCHCHN(C)SO15、CH=CHCOO(CHN(CH)SO1225、CH=CHCOO(CH(CFCF(CF、CH=CHCOOCHCHN(C)SO17、CH=C(CH)COOCHCHN(C)SO13、CH=CHCOOCHCHN(C)SO17、CH=C(CHCH17)COOCHCH17等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、上述した中でも、フッ素化アルキル基含有ビニル単量体fとして、CH=CHCOOCHCH17または、CH=C(CHCH17)COOCHCH17を用いた場合、フッ素−ケイ素系共重合体を十分に嵩高いものとしつつ、フッ素−ケイ素系共重合体中のフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよびアルコキシシリル基含有ビニル単量体sの効果がともに特に優れたものとして発揮される。
【0029】
[アルコキシシリル基含有ビニル単量体s]
アルコキシシリル基含有ビニル単量体sは、上記式(2)に示す成分である。フッ素−ケイ素系共重合体は、このようなアルコキシシリル基含有ビニル単量体sを有することにより、配向膜形成用組成物の基板(特にガラス基板)への濡れ性を優れたものとすることができる。
【0030】
前記式(2)中の2価の連結基Bとしては、例えば、−CH(OH)CHOCO−、−(CHp1NHCHCH(OH)CHOCO−、−(CHp1OCO−、−(CHq1O(CHq1OCO−、−OCHCH(OH)CHOCO−(式中、p1、q1は、それぞれ独立して2以上6以下の整数である。)等が挙げられる。
【0031】
また、式(2)中、アルコキシシリル基は、直鎖状のシリコーン鎖であってもよいが、分岐したシリコーン鎖を有することが好ましい。すなわち、式(2)中、lまたはnのうち少なくとも一方は、1以上であることが好ましい。これにより、フッ素−ケイ素系共重合体は、十分に嵩高いものとなる。
また、式(2)中、lおよびnは、上述したように、それぞれ、1以上であることが好ましいが、1以上5以下であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましい。これにより、フッ素−ケイ素系共重合体を十分に嵩高いものとしつつ、フッ素−ケイ素系共重合体中のフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよびアルコキシシリル基含有ビニル単量体sの効果がともに特に優れたものとして発揮される。
【0032】
また、式(2)中、mは、1以上であればよいが、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましく、1または2であることがさらに好ましい。これにより、フッ素−ケイ素系共重合体を十分に嵩高いものとしつつ、フッ素−ケイ素系共重合体中のフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよびアルコキシシリル基含有ビニル単量体sの効果がともに特に優れたものとして発揮される。
【0033】
また、R、R2’、R2’’、R、R3’、R3’’、R、R4’、R4’’がアルキル基である場合、アルキル基の炭素数は、上述したような範囲であればよいが、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。これにより、フッ素−ケイ素系共重合体を十分に嵩高いものとしつつ、フッ素−ケイ素系共重合体中のフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよびアルコキシシリル基含有ビニル単量体sの効果がともに特に優れたものとして発揮される。
前記アルコキシシリル基含有ビニル単量体sとしては、前記式(2)を満足すものであればよいが、例えば、下記式(2−1)〜(2−46)で表されるアルコキシシリル基含有ビニル単量体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

【0039】
【化10】

【0040】
【化11】

【0041】
上述した中でも、アルコキシシリル基含有ビニル単量体sとして、式(2−33)または、式(2−40)で表わされる化合物を用いることが好ましい。これにより、フッ素−ケイ素系共重合体を十分に嵩高いものとしつつ、フッ素−ケイ素系共重合体中のフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよびアルコキシシリル基含有ビニル単量体sの効果がともに特に優れたものとして発揮される。
【0042】
特に、フッ素化アルキル基含有ビニル単量体fとして、CH=CHCOOCHCH17、アルコキシシリル基含有ビニル単量体sとして式(2−40)に表わされる化合物を組み合わせて用いた場合、または、フッ素化アルキル基含有ビニル単量体fとして、CH=C(CHCH17)COOCHCH17、アルコキシシリル基含有ビニル単量体sとして式(2−33)に表わされる化合物を組み合わせて用いた場合、上述したような効果がより顕著に得られる。
【0043】
フッ素−ケイ素系共重合体におけるアルコキシシリル基含有ビニル単量体sの含有率(重合体の合成に用いる単量体の重量で換算して求められる値)は、100重量部のフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fに対し、10重量部以上1000重量部以下であるのが好ましく、25重量部以上400重量部以下であるのがより好ましい。フッ素−ケイ素系共重合体におけるアルコキシシリル基含有ビニル単量体sの含有率が前記範囲内の値であると、フッ素−ケイ素系共重合体を十分に嵩高いものとしつつ、フッ素−ケイ素系共重合体中のフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよびアルコキシシリル基含有ビニル単量体sの効果がともに特に優れたものとして発揮される。
【0044】
また、フッ素−ケイ素系共重合体は、上述したフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよびアルコキシシリル基含有ビニル単量体s以外のビニル単量体を有していてもよい。このような単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸、酢酸ビニルのように脂肪酸ビニル;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の一価ないし二価のカルボン酸のようにα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ステアリルエステルのようにアルキル基の炭素原子数が1以上18以下の(メタアクリル酸アルキルエステル;2−ヒドロキシエチルエステル、ヒドロキシプロピルエステル、ヒドロキシブチルエステルのように(メタ)アクリル酸の炭素原子数1以上18以下のヒドロキシアルキルエステル;ジメチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノエチルエステル、ジエチルアミノプロピルエステルのように(メタ)アクリル酸の炭素原子数1以上18以下のアミノアルキルエステル;メトキシエチルエステル、エトキシエチルエステル、メトキシプロピルエステル、メチルカルビルエステル、エチルカルビルエステル、ブチルカルビルエステルのように(メタ)アクリル酸の炭素原子数3以上18以下のエーテル酸素含有アルキルエステル;ジシクロペンタニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニルオキシルエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、重合度1以上100以下のポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステル又はジ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素原子数1以上6以下のアルキル基によってキャップされた重合度1以上100以下のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステル、メチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテルのようにアルキル炭素原子数が1以上18以下のアルキルビニルエーテル;グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートのように(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル;サートマー社製のスチレンマクロモノマー4500、新中村化学工業(株)製のNKエステルM−230Gのようにマクロモノマー;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、部分スルホン化スチレン、モノ(アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェ−ト、モノ(メタクリロキシエチル)アシッドホスフェ−ト等が挙げられ、これらのうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
上述した中でも、側鎖にポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレングリコ−ルのモノ(メタ)アクリル酸エステル又はジ(メタ)アクリル酸エステル、若しくは末端が炭素原子数1以上6以下のアルキル基によってキャップされた重合度1以上100以下の、ポリエチレングリコ−ル、ポリプロピレングリコ−ル、そしてエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体等のポリアルキレレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルのようにポリオキシアルキレン基を側鎖に有する(メタ)アクリレートモノマー;炭素原子数6以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルのように炭素原子数6以上のアルキル基を側鎖に有する(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
【0046】
また、フッ素−ケイ素系共重合体中における上述したようなその他の単量体の含有量は、フッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよびアルコキシシリル基含有ビニル単量体sの合計の含有量を100重量部としたとき、10重量部以上10000重量部以下であることが好ましく、20重量部以上8000重量部以下であることがより好ましい。なお、その他の単量体が複数種ある場合は、これらの複数種の単量体の合計の含有量が上記の関係を満足することが好ましい。
また、フッ素−ケイ素系共重合体は、各単量体がランダムに配置された共重合体であってもよいし、複数の同一の単量体が重合したブロックによって構成されるブロック共重合体であってもよい。
【0047】
また、フッ素−ケイ素系共重合体の重量平均分子量は、15000以上500000以下であることが好ましく、20000以上100000以下であることがより好ましい。これにより、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生をより効果的に防止することができる。また、配向膜形成用組成物の液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、配向膜の形成効率を特に優れたものとすることができる。
【0048】
また、フッ素−ケイ素系共重合体の溶解度パラメーター(SP値)は、特に限定されないが、5以上8以下であることが好ましい。これにより、フッ素−ケイ素系共重合体の配向膜形成用組成物中の他の成分との親和性を高いものとすることができ、配向膜形成用組成物の液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、配向膜の形成効率を特に優れたものとすることができる。また、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生をより効果的に防止することができる。
【0049】
なお、溶解性パラメータ(SP値)δ[(cal/cm3)1/2]は、複数の物質の相溶性および親和性の指標として用いられるものであり、下記式(I)に表される式で定義される。
δ=(ΔE/V1/2÷2.046[(cal/cm3)1/2] ‥‥ (I)
ただし、ΔE[10N・m・mol−1]は蒸発熱、V[m・mol−1]は1molあたりの体積である。二つの物質の溶解性パラメータの差は、その二つの物質が相溶するために必要なエネルギーと密接な関係が有り、溶解性パラメータの差が小さいほど二つの物質が相溶するために必要なエネルギーは小さなものとなる。すなわち、二つの物質が存在した場合、一般に、溶解性パラメータの差が小さいほど、親和性が高く、相溶性が高いものとなる。
【0050】
溶解性パラメータは、実験によって求めることもできるが、計算によって求めることもできる。計算によって溶解性パラメータを求める方法は、いくつか提案されており、例えば、比較的高分量の材料に関しては、Smallの方法(P.A.Small:J.Appl.Chem,3,71(1953))を用いることができる。また、比較的低分子量の材料に関しては、Hildebrandの方法 (J.H.Hildebrand and R.L.Scott:The Solubility of Non−Electrolytes,ACS Monograph Series,1950)を用いることができる。
【0051】
また、配向膜形成用組成物中におけるフッ素−ケイ素系共重合体の含有量は、特には限定されないが、0.1wt%以上5.0wt%以下であることが好ましく、0.3wt%以上3.0wt%以下であることがより好ましい。これにより、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生をより効果的に防止することができる。また、配向膜形成用組成物の液滴の吐出安定性を特に優れたものとすることができ、配向膜の形成効率を特に優れたものとすることができる。
【0052】
<ポリイミド>
ポリイミドは、配向膜形成用組成物を用いて形成される配向膜の主成分となるものである。
配向膜形成用組成物中におけるポリイミドの含有量は、特には限定されないが、1wt%以上15wt%以下であることが好ましく、2wt%以上10wt%以下であることがより好ましい。
【0053】
<γ−ブチロラクトン>
γ−ブチロラクトンは、配向膜形成用組成物において、ポリイミドを溶解させる機能を有するものである。
配向膜形成用組成物中におけるγ−ブチロラクトンの含有量は、特には限定されないが、10wt%以上95wt%以下であることが好ましく、20wt%以上80wt%以下であることがより好ましい。
【0054】
〔その他の成分〕
また、配向膜形成用組成物は、上記以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。
このような成分としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等の配向性材料;炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、スルホラン、ブチルセロソルブ、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N’−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の溶剤;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等の官能性シラン含有化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタン等のエポキシ基含有化合物;各種酸化防止剤等が挙げられる。
【0055】
配向膜形成用組成物の25℃における粘度(振動式粘度計を用いて測定される粘度)は、特に限定されないが、4mPa・s以上12mPa・s以下であるのが好ましく、5mPa・s以上11mPa・s以下であるのがより好ましい。配向膜形成用組成物の粘度が前記範囲内の値であると、インクジェット方式による液滴吐出において、吐出される配向膜形成用組成物の液適量のばらつきを特に小さいものとし、形成される配向膜の厚さの不本意なばらつき等を効果的に防止することができる。なお、配向膜形成用組成物の粘度の測定は、例えば、振動式粘度計を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0056】
また、配向膜形成用組成物の25℃での表面張力は、25dyn/cm以上38dyn/cm以下であるのが好ましく、25dyn/cm以上35dyn/cm以下であるのがより好ましく、25dyn/cm以上32dyn/cm以下であるのがさらに好ましい。これにより、液滴の吐出性を特に安定したものとできる。このため、製造される配向膜形成用組成物の個体間での特性差を特に少ないものとすることができる。なお、表面張力は、JIS K 3362によって測定される値を採用することができる。
【0057】
《配向膜、画像表示装置》
次に、上述した配向膜形成用組成物を用いて製造される配向膜、および、配向膜を備えた画像表示装置(電気光学装置)としての液晶表示装置について説明する。
図1は、本発明の配向膜が適用された液晶表示装置(画像表示装置)の一例を示す概略分解斜視図、図2は、本発明の配向膜が適用された液晶表示装置(画像表示装置)の製造方法を示すフローチャート、図3は、液滴吐出装置の構成を示す概略斜視図、図4は、図3に示す液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドを示す図であり、(a)は断面斜視図、(b)は概略平面図である。また、図5は、マザー基板を示す概略平面図、図6は、液晶表示装置(画像表示装置)の製造方法を示す概略断面図、図7は、液晶表示装置(画像表示装置)の製造方法を示す概略断面図である。
【0058】
図1に示すように、液晶表示装置200は、TFT(Thin Film Transistor)透過型の液晶パネル220と、液晶パネル220を照明する照明装置218とを備えている。液晶パネル220は、カラーフィルター205を有する対向基板201と、画素電極210に3端子のうちの1つが接続されたTFT素子211を有する素子基板208と、一対の基板201,208によって挟持された液晶(図示省略)とを備えている。また、液晶パネル220の外面側となる一対の基板201,208の表面には、透過する光を偏向させる上偏光板216と下偏光板217とが配設される。
【0059】
対向基板201は、透明なガラスなどの材料からなり、液晶を挟む表面側に隔壁部204によってマトリクス状に区画された複数の膜形成領域2に、赤(R)、緑(G)、青(B)、3色のカラーフィルター205R,205G,205Bが形成されている。隔壁部204は、Crなどの遮光性を有する金属あるいはその酸化膜からなるブラックマトリクスと呼ばれる下層バンク202と、下層バンク202の上(図面では下向き)に形成された有機化合物からなる上層バンク203とにより構成されている。また、隔壁部204とカラーフィルター205R,205G,205Bとを覆う平坦化層206と、平坦化層206を覆うように形成されたITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電膜からなる対向電極207とを備えている。対向電極207を覆うように配向膜214が形成されている。
【0060】
素子基板208は、同じく透明なガラスなどの材料からなり、液晶を挟む表面側に絶縁膜209を介してマトリクス状に形成された画素電極210と、画素電極210に対応して形成された複数のTFT素子211とを有している。TFT素子211の3端子のうち、画素電極210に接続されない他の2端子は、互いに絶縁された状態で画素電極210を囲むように格子状に配設された走査線212とデータ線213とに接続されている。また、これらの画素電極210、TFT素子211、走査線212、データ線213を覆うように配向膜215が形成されている。
【0061】
配向膜214,215は、液晶パネル220の表示モードに応じて、液晶分子を水平配向または垂直配向させることができるものであり、いずれも、上述したような配向膜形成用組成物を用いて、後述するような液滴吐出法(インクジェット法)により形成されたものである。
照明装置218は、例えば光源として白色のLED、EL、冷陰極管などを用い、これらの光源からの光を液晶パネル220に向かって出射することができる導光板や拡散板、反射板などの構成を備えたものであれば、どのようなものでもよい。
本実施形態の液晶表示装置200では、配向膜214,215が上述した配向膜形成用組成物を用いて形成されたものであるため、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生が効果的に防止されている。
【0062】
なお、本発明の画像表示装置は、アクティブ素子としてTFT素子に限らずTFD(Thin Film Diode)素子を有したものでもよく、さらには、画素を構成する電極が互いに交差するように配置されるパッシブ型の画像表示装置(液晶表示装置)でもよい。また、上下偏光板216,217は、視角依存性を改善する目的などで用いられる位相差フィルムなどの光学機能性フィルムと組み合わされたものでもよい。さらには、透過型に限定されず、反射型、半透過反射型の画像表示装置(液晶表示装置)でもよい。
【0063】
<画像表示装置の製造方法>
次に、液晶表示装置(画像表示装置)200の製造方法について説明する。
図2に示すように、本実施形態の液晶表示装置200の製造方法は、対向基板201の表面に隔壁部204を形成する隔壁部形成工程(ステップS1)と、隔壁部204で区画された膜形成領域2に3色のカラーフィルター205R,205G,205Bを形成するカラーフィルター(CF)形成工程(ステップS2)と、隔壁部204とカラーフィルター205とを覆うように平坦化層206を形成する平坦化層形成工程(ステップS3)と、平坦化層206を覆うように対向電極207を形成する透明導電膜形成工程(ステップS4)とを備えている。また、対向電極207を覆うように配向膜214を形成するCF側配向膜形成工程(ステップS5)と、画素電極210やTFT素子211などを覆うように配向膜215を形成する素子側配向膜形成工程(ステップS6)とを備えている。さらに、対向基板201と素子基板208とを対向させ、その隙間に液晶を充填して所定の位置で両方の基板201,208を接合する液晶充填・組立工程(ステップS7)を備えている。
本実施形態の液晶表示装置200の製造方法では、CF形成工程(ステップS2)、CF側配向膜形成工程(ステップS5)および素子側配向膜形成工程(ステップS6)において、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて所望の薄膜を形成している。
【0064】
以下、液滴吐出法に用いる液滴吐出装置100について詳細に説明する。
図3に示すように、液滴吐出装置100は、被吐出物としてのワークW上に液状体(カラーフィルター205形成用の組成物、または、配向膜形成用組成物)を液滴として吐出して、液状体からなる塗布膜を形成するものである。ワークWが載置されるステージ104と、載置されたワークWに液状体を液滴として吐出する複数の液滴吐出ヘッド20(図4参照)が搭載されたヘッドユニット101とを備えている。
【0065】
そして、ヘッドユニット101を副走査方向(X方向)に駆動するためのX方向ガイド軸102と、X方向ガイド軸102を回転させるX方向駆動モーター103とを備えている。また、ステージ104を副走査方向に対して直交する主走査方向(Y方向)にガイドするためのY方向ガイド軸105と、Y方向ガイド軸105に係合して回転するY方向駆動モーター106とを備えている。これらX方向ガイド軸102とY方向ガイド軸105とが上部に配設された基台107を有し、その基台107の下部に、制御装置108を備えている。
【0066】
さらに、ヘッドユニット101の複数の液滴吐出ヘッド20をクリーニング(回復処理)するために、Y方向ガイド軸105に沿って移動するクリーニング機構109と、吐出された液状体を加熱し溶媒を蒸発・乾燥させるためのヒーター111とを備えている。クリーニング機構109は、Y方向ガイド軸105に係合して回転するY方向駆動モーター110を有している。
ヘッドユニット101には、液状体をワークWに塗布する複数の液滴吐出ヘッド20(図4参照)を備えている。そして、これら複数の液滴吐出ヘッド20により、制御装置108から供給される吐出用の制御信号に応じて、個別に液状体を吐出できるようになっている。
【0067】
X方向駆動モーター103は、これに限定されるものではないが例えばステッピングモーターなどであり、制御装置108から駆動パルス信号が供給されると、X方向ガイド軸102を回転させ、X方向ガイド軸102に係合したヘッドユニット101をX方向に移動させる。
同様にY方向駆動モーター106,110は、これに限定されるものではないが例えばステッピングモーターなどであり、制御装置108から駆動パルス信号が供給されると、Y方向ガイド軸105に係合して回転し、Y方向駆動モーター106,110を備えたステージ104およびクリーニング機構109をY方向に移動させる。
【0068】
クリーニング機構109は、液滴吐出ヘッド20をクリーニングする際には、ヘッドユニット101を臨む位置に移動し、液滴吐出ヘッド20のノズル面に密着して不要な液状体を吸引するキャッピング、液状体などが付着したノズル面を拭き取るワイピング、液滴吐出ヘッド20の全ノズルから液状体の吐出を行う予備吐出あるいは不要となった液状体を受けて排出させる処理を行う。
ヒーター111は、例えば、ランプアニールによりワークWを熱処理する手段であり、ワークW上に吐出された液状体を加熱して、溶媒を蒸発させ膜に変換するための熱処理を行う。このヒーター111の電源の投入および遮断も制御装置108によって制御される。
【0069】
液滴吐出装置100の塗布動作は、制御装置108から所定の駆動パルス信号をX方向駆動モーター103およびY方向駆動モーター106に送り、ヘッドユニット101を副走査方向(X方向)に、ステージ104を主走査方向(Y方向)に相対移動させる。そして、この相対移動の間に制御装置108から吐出用の制御信号を供給し、各液滴吐出ヘッド20からワークWの所定の領域に液状体を液滴として吐出し塗布を行う。
【0070】
図4(a)に示すように液滴吐出ヘッド20は、複数のノズル22を有するノズルプレート21と、各ノズル22に対応してこれを区画する区画部24を含む液状体の流路が形成されたリザーバープレート23と、エネルギー発生手段としての圧電素子(ピエゾ)29を有する振動板28とからなる3層構造の所謂ピエゾ方式インクジェットヘッドである。ノズルプレート21とリザーバープレート23の区画部24および振動板28によって複数の圧力発生室25が構成されている。各ノズル22は、各圧力発生室25にそれぞれ連通している。また、圧電素子29は、各圧力発生室25に対応するように振動板28に複数配設されている。
リザーバープレート23には、振動板28に形成された供給孔28aを通じてタンク(図示省略)から供給される液状体が、一時的に貯留される共通流路27が設けられている。また共通流路27に充填された液状体は、供給口26を通じて各圧力発生室25に供給される。
【0071】
図4(b)に示すように、液滴吐出ヘッド20は、2つのノズル列22a,22bを有しており、それぞれ複数(180個)の直径がおよそ28μmのノズル22がピッチPで配列している。そして、2つのノズル列22a,22bは互いにピッチPに対して半分のノズルピッチPずれた状態でノズルプレート21に配設されている。この場合、ピッチPは、およそ140μmである。よって、ノズル列22a,22bに直交する方向から見ると360個のノズル22がおよそ70μmのノズルピッチPで配列した状態となっている。したがって、2つのノズル列22a,22bを有する液滴吐出ヘッド20の有効ノズルの全長は、ノズルピッチP×359(およそ25mm)である。また、ノズル列22a,22bの間隔は、およそ2.54mmである。
【0072】
液滴吐出ヘッド20は、電気信号としての駆動波形が圧電素子29に印加されると圧電素子29自体が歪んで振動板28を変形させる。これにより、圧力発生室25の体積変動が起こり、これによるポンプ作用で圧力発生室25に充填された液状体が加圧され、ノズル22から液状体を液滴Dとして吐出することができる。
なお、本実施形態において、液滴吐出ヘッド20は、いわゆる2連のノズル列22a,22bを有しているが、これに限定されず1連のものでもよい。さらには、ノズル22から液状体を液滴Dとして吐出させる駆動手段は、圧電素子29に限定されず、電気熱変換素子としてのヒーターや電気機械変換素子としての静電アクチュエータなどでもよい。
【0073】
このような液滴吐出ヘッド20を備えた液滴吐出装置100は、上位コンピュータなどの外部情報処理装置からワークW上の所望の領域に液状体を塗布するための吐出データが制御装置108に入力され、当該吐出データに基づいて液状体がノズル22から液滴Dとして吐出される。吐出データには、ワークW上における上記所望の領域に関する位置データ、吐出タイミングを規定する制御データ、液滴吐出ヘッド20とワークWとの主走査における複数のノズル22の選択(ON)/非選択(OFF)データや液滴Dの吐出回数などのノズルデータが含まれている。
【0074】
以下、液晶表示装置200の製造方法について詳細に説明する。
図5に示すように、液晶表示装置200の製造にあたり、実際には、対向基板201を複数取りしたマザー基板M1と、同じく素子基板208を複数取りしたマザー基板M2とを用いる。それぞれのマザー基板M1,M2には、液晶パネル220の大きさに応じた構成要素の形成領域が設計上定められている。図5において斜線部で表した膜形成領域3は、配向膜214(配向膜215)の形成領域を示すものである。すなわち、1つのマザー基板M1から4個分の液晶パネル220に相当する対向基板201が得られる構成となっている。同様に、1つのマザー基板M2から4個分の液晶パネル220に相当する素子基板208が得られる。それぞれに画素構成要素が形成されたマザー基板M1とマザー基板M2とを接合し、接合体を切断することにより、液晶パネル220を取り出している。
【0075】
図2のステップS1は、隔壁部形成工程である。ステップS1では、図6(a)に示すように、まず、対向基板201の表面に、膜形成領域2を区画するように下層バンク202を形成する。形成方法としては、真空蒸着法やスパッタ法により、CrやAlなどの金属膜または金属化合物の膜を対向基板201の表面に遮光性を有するように成膜する。そしてフォトリソグラフィ法により、感光性樹脂(フォトレジスト)を塗布して膜形成領域2が開口するように露光・現像・エッチングする。続いてフォトリソグラフィ法により、感光性の隔壁部形成材料をおよそ2μmの厚みで塗布して露光・現像し、上層バンク203を下層バンク202上に形成する。隔壁部204は、下層バンク202と上層バンク203とからなる所謂二層バンク構造となっている。なお、隔壁部204は、これに限らず、遮光性を有する感光性の隔壁部形成材料を用いて形成した上層バンク203のみの一層構造としてもよい。
【0076】
図2のステップS2は、CF形成工程である。ステップS2では、図6(b)に示すように、液滴吐出装置100のステージ104にマザー基板M1(対向基板201)を載置する。そして、マザー基板M1(対向基板201)が載置されたステージ104と液滴吐出ヘッド20との主走査方向への相対移動に同期して、着色材料を含む液状体としてのカラーフィルター形成用組成物30Rが充填された液滴吐出ヘッド20の複数のノズル22から液滴Dを膜形成領域2に吐出する。膜形成領域2に吐出されるカラーフィルター形成用組成物30Rの総吐出量は、後の乾燥工程で所定の膜厚が得られるように、予め吐出回数などが設定された吐出データに基づいて、制御装置108から適正な制御信号が液滴吐出ヘッド20に送られて制御される。カラーフィルター形成用組成物30Rは、赤色(R)の着色材料を含むものであり、所望の膜形成領域2に吐出される。そして、図6(c)に示すように、液滴吐出装置100に備えられたヒーター111によってマザー基板M1(対向基板201)を加熱して、吐出されたカラーフィルター形成用組成物30Rから溶媒成分を蒸発させ固化して、赤色のカラーフィルター205Rを形成する。
【0077】
続いて緑色(G)、青色(B)の順に異なる着色材料を含むカラーフィルター形成用組成物を順次吐出して乾燥することにより、図6(d)に示すように3色のカラーフィルター205R,205G,205Bを形成する。なお、このよう方法に限定されず、例えば、異なる着色材料を含む3色のカラーフィルター形成用組成物をそれぞれ異なる液滴吐出ヘッド20に充填し、各液滴吐出ヘッド20をヘッドユニット101に装備して、各液滴吐出ヘッド20から所望の膜形成領域2にカラーフィルター形成用組成物を吐出した後、これら3色のカラーフィルター形成用組成物から、一括で溶媒成分を除去してもよい。
【0078】
なお、マザー基板M1は、液状体としてのカラーフィルター形成用組成物の吐出を行う前に、膜形成領域2内が親液性を有するとともに、隔壁部204の少なくとも上層バンク203が撥液性を有するように表面処理を施しておくことが望ましい。これによれば、着弾した液滴Dが膜形成領域2内にむらなく濡れ広がる。また、上層バンク203に着弾した液滴Dを膜形成領域2内に容易に収容することができる。
【0079】
図2のステップS3は、平坦化層形成工程である。ステップS3では、図6(e)に示すように、カラーフィルター205と上層バンク203とを覆うように平坦化層206を形成する。形成方法としては、スピンコート法、ロールコート法などによりアクリル系樹脂をコーティングして乾燥させる方法が挙げられる。また、感光性アクリル樹脂をコーティングしてから紫外光を照射して硬化させる方法も採用することができる。膜厚は、およそ100nmである。なお、カラーフィルター205が形成された対向基板201の表面が比較的に平坦ならば、平坦化層形成工程を省いてもよい。
【0080】
図2のステップS4は、透明導電膜形成工程である。ステップS4では、図6(f)に示すように、平坦化層206の上にITO(Indium Tin Oxide)などの導電材料からなる対向電極207を成膜する。成膜方法としては、ITOなどの導電材料をターゲットとして真空中で蒸着あるいはスパッタする方法が挙げられる。膜厚は、およそ10nmである。なお、形成された対向電極207は、適宜必要な形状(パターン)に加工される。
【0081】
図2のステップS5は、CF側配向膜形成工程である。ステップS5では、図7(g)に示すように、対向電極207を覆うように、液状体として、上述したような配向膜形成用組成物50を塗布する。塗布方法としては、液滴吐出装置100を用い、配向膜形成用組成物50を液滴吐出ヘッド20に充填して、図5に示した膜形成領域3に液滴Dとして吐出する。この場合も、吐出された液滴Dが対向電極207の表面においてむらなく濡れ広がるように、予めマザー基板M1(対向基板201)に表面処理を施しておくのが望ましい。表面処理の方法としては、処理ガスをOとするプラズマ処理などが挙げられる。
【0082】
上記のような液滴吐出装置100を用いた配向膜形成用組成物50の吐出においては、液状体としての配向膜形成用組成物50が、吐出安定性に優れており、インクジェット法に適した表面張力と粘度を有しているので、高い駆動電圧を圧電素子29に印加しなくても、ノズル22から液滴Dを安定した吐出量で吐出することができる。言い換えれば、液滴吐出ヘッド20の低電圧駆動が可能である。さらには、高周波数駆動を可能として、描画速度を早められる。
【0083】
続いて、塗布された配向膜形成用組成物50を乾燥して成膜化する(プレベーク)。本実施形態では、塗布面において、均一に乾燥が進むように、加熱したホットプレート(HP)上に隙間をおいてマザー基板M1を載置し、乾燥させる。乾燥条件としては、例えば、HPの加熱温度を70℃以上100℃以下、好ましくは75℃以上90℃以下に設定、上記隙間を4mm以上6mm以下とすることができる。
【0084】
上記のような条件で、乾燥を行うことにより、最終的に形成される配向膜214に不本意な厚みのむらが生じることをより効果的に防止することができ、表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生をより効果的に防止することができる。
さらに、ポストベークを行い、固化(硬化)した状態の配向膜214を得る。ポストベークの条件としては、180℃以上250℃以下で10分以上1時間以下、加熱乾燥することが望ましい。その後、必要に応じて、ラビング処理などの配向化処理を施すことにより、図7(h)に示すように、配向膜214の形成が完了する。
【0085】
図2のステップS6は、素子側配向膜形成工程である。ステップS6では、図7(i)に示すように、マザー基板M2(素子基板208)の画素電極210などを覆うように配向膜形成用組成物50を塗布する。塗布方法並びにプレベーク、ポストベークの方法は、ステップS5と同様である。これにより、図7(j)に示すように、配向膜215を素子基板208上に積層形成することができる。なお、マザー基板M2に画素電極210やTFT素子211、走査線212やデータ線213を形成する工程は、公知の方法を用いればよく、ここでは説明を省略した。
【0086】
図2のステップS7は、液晶充填・組立工程である。ステップS7では、図7(k)に示すように、配向膜214が形成された対向基板201と配向膜215が形成された素子基板208と、を所定の位置で対向させ、シール材を介して接合する。対向基板201と素子基板208との隙間に液晶を充填して、液晶層219とする。液晶を充填する方法としては、一対の基板の一方に印刷法や吐出法で額縁状にシール材を形成する。これを受け皿に見たてて液晶を真空中で必要量滴下した後に、他方の基板と接合する方法が挙げられる。シール材としては、例えば、熱硬化型のエポキシ系接着剤が好適に用いられる。シール材中には、対向基板201と素子基板208との隙間(Gap)、すなわち液晶層219の厚みが一定になるように、Gap材が含まれている。Gap材としては、所定の径を有するガラス繊維や硬質樹脂粒子などが挙げられる。
このようにしてできたセルの表裏面に上下偏光板216,217を貼り付けることにより液晶表示装置200ができあがる。なお、液晶表示装置200は、これを照明するための照明装置218を素子基板208の背面側に備えて用いられる(図1参照)。
【0087】
《電子機器》
前述したような配向膜214,215を有する液晶表示装置等の画像表示装置(電気光学装置)1000は、各種電子機器の表示部に用いることができる。
図8は、本発明の電子機器を適用したモバイル型(またはノート型)のパーソナルコンピューターの構成を示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。
このパーソナルコンピューター1100においては、表示ユニット1106が画像表示装置1000を備えている。
図9は、本発明の電子機器を適用した携帯電話機(PHSも含む)の構成を示す斜視図である。
この図において、携帯電話機1200は、複数の操作ボタン1202、受話口1204および送話口1206とともに、画像表示装置1000を表示部に備えている。
【0088】
図10は、本発明の電子機器を適用したディジタルスチルカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
ここで、通常のカメラは、被写体の光像により銀塩写真フィルムを感光するのに対し、ディジタルスチルカメラ1300は、被写体の光像をCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子により光電変換して撮像信号(画像信号)を生成する。
【0089】
ディジタルスチルカメラ1300におけるケース(ボディー)1302の背面には、画像表示装置1000が表示部に設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、被写体を電子画像として表示するファインダーとして機能する。
ケースの内部には、回路基板1308が設置されている。この回路基板1308は、撮像信号を格納(記憶)し得るメモリーが設置されている。
【0090】
また、ケース1302の正面側(図示の構成では裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、回路基板1308のメモリーに転送・格納される。
【0091】
また、このディジタルスチルカメラ1300においては、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示のように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、回路基板1308のメモリーに格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。
【0092】
なお、本発明の電子機器は、上述したパーソナルコンピューター(モバイル型パーソナルコンピューター)、携帯電話機、ディジタルスチルカメラの他にも、例えば、テレビ(例えば、液晶テレビ)や、ビデオカメラ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、ラップトップ型パーソナルコンピューター、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、タッチパネルを備えた機器(例えば金融機関のキャッシュディスペンサー、自動券売機)、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電表示装置、超音波診断装置、内視鏡用表示装置)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシュミレータ、その他各種モニター類、プロジェクター等の投射型表示装置等に適用することができる。
本発明の電子機器は、上述したような配向膜を備えるものであるため、表示部に表示される表示画像における色むら・濃度むら(特に、すじむら)の発生を効果的に防止される。
【0093】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、配向膜、画像表示装置、電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、液晶表示装置が、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3色のカラーフィルターを備えるものとして説明したが、他の色の組み合わせであってもよい。また、4色以上のカラーフィルターを備えるものであってもよい。
また、前述した実施形態では、画像表示装置が備える複数の配向膜に、いずれも本発明が適用される場合について説明したが、画像表示装置が備える少なくとも1つの配向膜に適用されるものであってもよい。
【実施例】
【0094】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]フッ素−ケイ素系共重合体の合成
(合成例1)
攪拌装置、コンデンサー、温度計を備えたガラスフラスコにフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fとしてのCH=CHCOOCHCH17で表わされる化合物:18重量部と、アルコキシシリル基含有ビニル単量体sとしての式(2−40)に表わされる化合物:12重量部と、重量平均分子量400のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体を側鎖にもつモノアクリレ−ト化合物:58重量部と、テトラエチレングリコールの両末端がメタアクリル酸とエステル結合した化合物:4重量部と、メチルメタクリレート:8重量部と、イソプロピルアルコ−ル:350重量部とを仕込んだ。そして、窒素ガス気流中、還流下で、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという):1.0重量部と、連載移動剤としてのラウリルメルカプタン:10重量部とを添加した後、ガラスフラスコ内の温度を85℃とし、12時間還流した。
この後、反応物を精製することにより、フッ素−ケイ素系共重合体FS1を得た。フッ素−ケイ素系共重合体FS1のゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量は、18,000であった。
(合成例2〜6)
重合体の合成(重合体溶液の調製)に用いる単量体成分の種類、使用量を表1に示すように変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行った。その結果、5種のフッ素−ケイ素系共重合体FS2〜FS6が得られた。
【0095】
表1に、合成例1〜6でのフッ素−ケイ素系共重合体の合成に用いた単量体の種類、使用量(合成例1〜6で合成したフッ素−ケイ素系共重合体の組成)をまとめて示した。なお、表中、「f1」は構造式がCH=CHCOOCHCH17で表わされる化合物を示し、「f2」は構造式がCH=C(CHCH17)COOCHCH17で表わされる化合物を示し、「f3」は構造式がCH=C(CH)COOCH2041で表わされる化合物を示し、「s1」は前記式(2−40)で表わされる化合物を示し、「s2」は前記式(2−33)で表わされる化合物を示し、「s3」は前記式(2−1)で表わされる化合物を示し、「PEA」は重量平均分子量400のエチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体を側鎖にもつモノアクリレ−ト化合物を示し、「TGMA」はテトラエチレングリコールの両末端がメタアクリル酸とエステル結合した化合物を示し、「MMA」はメチルメタクリレートを示す。また、表中には、合成されたフッ素−ケイ素系共重合体の重量平均分子量Mwをあわせて示した。また、表中、フッ素−ケイ素系共重合体のSP値は、Smallの方法により求めた。
【0096】
【表1】

【0097】
[2]配向膜形成用組成物の調製
(実施例1)
ポリイミドの溶液(JSR社製、AL-16470)と、γ−ブチロラクトンと、フッ素−ケイ素系共重合体FS1とを混合することにより、配向膜形成用組成物を得た。
(実施例2〜11)
配向膜形成用組成物の構成成分の種類、含有率を表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして配向膜形成用組成物を調製した。
(比較例1)
配向膜形成用組成物の調製に用いる成分の種類、使用量を表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして配向膜形成用組成物を調製した。
【0098】
前記各実施例および比較例の配向膜形成用組成物の組成を表2にまとめて示した。なお、表中、AL-16470(JSR社製)を構成するポリイミドを「ALI」で示し、AL-60601(JSR社製)を構成するポリイミドを「ALV」で示し、フッ素系レベリング剤としてのディスパロンUVX−270(楠本化成社製)を「UVX−270」で示し、γ−ブチロラクトンを「γ−BL」で示し、N−メチルピロリドンを「NMP」で示し、ブチルセロソルブを「BC」で示した。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例の配向膜形成用組成物の25℃における粘度は、いずれも、5mPa・s以上11mPa・s以下の範囲内の値であった。
【0099】
【表2】

【0100】
[3]配向膜形成用組成物の吐出安定性評価
前記各実施例および比較例の配向膜形成用組成物について、下記に示すような試験により、液滴の吐出安定性の評価を行った。
まず、図3、図4に示すような液滴吐出装置を用意した。
次に、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、各配向膜形成用組成物について、液滴吐出ヘッドの各ノズルから、5000000発(5000000滴)の液滴の連続吐出を行った。液滴吐出ヘッドの左右両端の指定の2つのノズルについて、吐出された液滴の総重量を求め、上記2つのノズルから吐出された液滴の平均吐出量の差の絶対値ΔW[ng]を求めた。このΔWの、液滴の目標吐出量W[ng]に対する比率(ΔW/W)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。ΔW/Wの値が小さいほど、液滴吐出量の安定性に優れていると言える。
【0101】
A:ΔW/Wの値が、0.015未満。
B:ΔW/Wの値が、0.015以上0.080未満。
C:ΔW/Wの値が、0.080以上0.150未満。
D:ΔW/Wの値が、0.150以上0.250未満。
E:ΔW/Wの値が、0.250以上。
【0102】
[4]液晶表示装置の製造
前記実施形態で述べたような方法を用いて、液晶表示装置を製造した。なお、各実施例および比較例では、配向膜の形成の用いる配向膜形成用組成物を変更した以外は、同一の条件を用いて液晶表示装置を製造した。
【0103】
[5]色むらの発生状況の評価
上記[4]で製造した各実施例および比較例についての液晶表示装置について、暗室で、赤色の単色表示、緑色の単色表示、青色の単色表示、白色の単色表示を行った状態で目視による観察を行い、各部位での色むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
【0104】
A:色むらが全く認められない。
B:色むらがほとんど認められない。
C:色むらがわずかに認められる。
D:色むらがはっきりと認められる。
E:色むらが顕著に認められる。
上記の評価の結果を表3に示す。
【0105】
【表3】

【0106】
表3から明らかなように、本発明では、優れた結果が得られたのに対し、比較例では、満足な結果が得られなかった。また、本発明では、配向膜の製造時(液晶表示装置の製造時)におけるラビング処理(配向化処理)を好適に行うことができた。
また、市販の液晶テレビを分解し、液晶表示装置部分を、上記のようにして製造したものと交換して、上記と同様の評価を行ったところ、上記と同様な結果が得られた。
【符号の説明】
【0107】
200…液晶表示装置 201…対向基板 202…下層バンク 203…上層バンク 204…隔壁部 205、205R、205G、205B…カラーフィルター 206…平坦化層 207…対向電極 208…素子基板 209…絶縁膜 210…画素電極 211…TFT素子 212…走査線 213…データ線 214…配向膜 215…配向膜 216…上偏光板 217…下偏光板 218…照明装置 219…液晶層 220…液晶パネル S1、S2、S3、S4、S5、S6、S7…ステップ 100…液滴吐出装置 101…ヘッドユニット 102…X方向ガイド軸 103…X方向駆動モーター 104…ステージ 105…Y方向ガイド軸 106…Y方向駆動モーター 107…基台 108…制御装置 109…クリーニング機構 110…Y方向駆動モーター 111…ヒーター 20…液滴吐出ヘッド 21…ノズルプレート 22…ノズル 22a…ノズル列 22b…ノズル列 23…リザーバープレート 24…区画部 25…圧力発生室 26…供給口 27…共通流路 28a…供給孔 28…振動板 29…圧電素子 P…ピッチ P…ノズルピッチ M1…マザー基板 M2…マザー基板 2…膜形成領域 3…膜形成領域 D…液滴 30R…カラーフィルター形成用組成物 50…配向膜形成用組成物 1000…画像表示装置 1100…パーソナルコンピューター 1102…キーボード 1104…本体部 1106…表示ユニット 1200…携帯電話機 1202…操作ボタン 1204…受話口 1206…送話口 1300…ディジタルスチルカメラ 1302…ケース(ボディー) 1304…受光ユニット 1306…シャッターボタン 1308…回路基板 1312…ビデオ信号出力端子 1314…データ通信用の入出力端子 1430…テレビモニター 1440…パーソナルコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式による配向膜の製造に用いられる配向膜形成用組成物であって、
ポリイミドと、γ−ブチロラクトンと、フッ素系レベリング剤とを含むことを特徴とする配向膜形成用組成物。
【請求項2】
前記フッ素系レベリング剤として、単量体成分として下記式(1)に示すフッ素化アルキル基含有ビニル単量体fおよび下記式(2)に示すアルコキシシリル基含有ビニル単量体sを含んで構成されたフッ素−ケイ素系共重合体を含む請求項1に記載の配向膜形成用組成物。
【化1】

【化2】

【請求項3】
前記フッ素−ケイ素系共重合体の重量平均分子量は、15000以上500000以下である請求項2に記載の配向膜形成用組成物。
【請求項4】
前記フッ素−ケイ素系共重合体は、溶解度パラメーターが5以上8以下である請求項2または3に記載の配向膜形成用組成物。
【請求項5】
配向膜形成用組成物中における前記フッ素−ケイ素系共重合体の含有量は、0.1wt%以上5.0wt%以下である請求項2ないし4のいずれかに記載の配向膜形成用組成物。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の配向膜形成用組成物を用いて形成されたことを特徴とする配向膜。
【請求項7】
請求項6に記載の配向膜を備えたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−190303(P2011−190303A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55450(P2010−55450)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】