説明

配管内監視装置、及び焼却炉

【課題】炉内への原料の供給を停止することなく、炉内温度が不安定となる前に配管内の原料の詰まりを検知できる配管内監視装置および配管内監視装置を備えた焼却炉を提供する。
【解決手段】配管内監視装置は、炉内へ原料を供給する配管3と、前記配管3の一端に形成し内部を監視可能とする窓5と、前記窓5から前記配管3内を撮像する撮像装置7と、前記撮像装置7で撮像した画像を受信して表示する表示画面9と、を備えており、さらに前記撮像装置7で撮像した画像を処理し、前記配管3内の詰まりを判別する画像処理手段8を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内へ原料を投入するための配管内を監視する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーキルン方式の炉は、投入された処理物を移動させながらバーナで燃焼させて加熱処理する。処理物の性状や処理物投入口との位置関係により、炉内の温度分布にバラツキが生じるため、処理物が炉の内面に溶着したり、耐火物が損傷したりすることがあり、炉内を監視する監視カメラを備えたものが知られている。
【0003】
特許文献1で開示されたロータリーキルン炉では、バーナを三次元方向への移動及び首振りが可能なように構成したバーナを投入側と排出側との両方に設け、炉内を監視可能なCCDカメラによる撮像結果に基づいてバーナの位置、首振り角度を調整し、炉内の燃焼雰囲気を最適にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−304764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のロータリーキルン炉のカメラは炉内の監視のみであり、炉内へ投入される原料の配管内を監視するものではない。炉内へ投入される原料は、配管内に詰まることがある。原料が配管内で詰まり、炉内へ供給されなくなると、炉内温度が不安定になることから配管内の原料の詰まりを発見することができる。しかしながら、配管内に原料が詰まり、炉内温度が不安定になるまでに時間差があり、原料が詰まったことを発見する時点では、大量の原料が配管内に詰まってしまい、この詰まりを除去するのに多大な労力と時間を必要としていた。このため、定期的に炉内への原料供給を停止し、配管内を点検することにより原料の詰まりを未然に防いでいた。この方法の場合は、炉内への原料供給を不必要に停止するため、炉の時間稼働率を低下させていた。
【0006】
そこで、本発明は、炉内への原料の供給を停止することなく、炉内温度が不安定になる前に配管内の原料の詰まりを発見することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決する本発明の配管内監視装置は、炉内へ原料を供給する配管と、前記配管内部を監視可能とする窓と、を備える。このような構成により、炉内へ原料を供給しながら配管内の監視ができる。これにより、配管内の原料の詰まり、及び詰まりの原因となる原料の溶着を早期に発見できる。
【0008】
上記配管内監視装置において、前記窓は、前記配管の排出口付近を監視可能とすることができる。配管内に生じる原料の詰まりは、炉から伝わる熱により原料の一部が配管内で溶解し溶着することに起因する。したがって、配管内の詰りは炉に近い配管の排出口付近に生じ易いため、排出口近傍を監視することにより、配管内の詰まりの原因となる原料の溶着を早期に発見できる。
【0009】
上記配管内監視装置において、前記配管は直線状であり、前記配管の一端が炉内に開口し、他端に前記窓が形成された構成とすることができる。このような構成によると窓から炉内を直視できる。操業中は炉内の火炎により窓から見える炉が明るく見えるが、配管内に原料が溶着すると影ができるため、配管内の詰まりの原因となる原料の溶着を容易に発見できる。
【0010】
上記配管内監視装置において、前記窓から前記配管内を撮像する撮像装置と、前記撮像装置の撮像した画像を受信して表示する表示画面と、を備えた構成とすることができる。このような構成とすることにより、撮像した配管内の様子を遠隔地で監視することができる。
【0011】
上記配管内監視装置において、前記窓から前記配管内を撮像する撮像装置と、前記撮像装置の撮像した画像を受信し、前記配管内の詰まりを判別する画像処理手段と、を備えた構成とすることができる。このような構成とすることにより、画像処理を用いて配管内における原料の詰まり、及び原料の溶着を容易に発見することができる。特に、前記撮像装置は、熱画像検出器とすることができる。このような構成によると、配管内に原料が溶着すると、原料の溶着により炉内の火炎が隠れ、熱画像検出器により監視する開口部の温度分布が変化する。すなわち、熱画像検出器により監視される開口部の温度分布の変化から配管内の原料の詰まり、及び原料の溶着を検出できる。
【0012】
上記配管内監視装置において、前記配管内に原料が溶着した場合、溶着した原料を除去する除去手段を備えた構成とすることができる。特に、前記除去手段は、配管内の詰りを炉内へ押し出すプッシャとすることができる。このような構成とすることにより、炉の操業を停止することなく、溶着した原料を除去できる。これにより、炉の操業時間を増加できる。
【0013】
また、本発明の課題を解決する焼却炉は、上記のいずれかの配管内監視装置を備え、当該配管内監視装置により前記配管内に原料の詰まりが発見された場合、原料の供給を停止する。これにより、配管内に大量の原料が詰まることが抑制され、除去作業の負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の配管内監視装置によると、炉内への原料の供給を停止することなく、配管内の原料の詰まり、及び配管内の原料の溶着を発見することができる。これにより、炉の稼働時間を増加できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1の配管内監視装置を組み込んだ燃焼装置を示した説明図である。
【図2】ロータリーキルン炉の操業中にCCDカメラにより撮影した第1配管の排出口付近の様子を示した説明図であって、(a)は原料の溶着がない状態を示し、(b)は第1配管の下部に原料が溶着した状態を示している。
【図3】実施例2の配管内監視装置を示した説明図である。
【図4】プッシャの先端部を示した説明図である。
【図5】先端部がロッド部に対して移動可能に構成したプッシャを示した説明図であって、(a)は先端部が支点を中心に回動するように構成したプッシャを示し、(b)は先端部がスライドするように構成したプッシャを示している。
【図6】第1配管にプッシャの先端部を収容する収容部が形成された配管内監視装置を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施例の配管内監視装置1を組み込んだ燃焼装置10を示した説明図である。燃焼装置10は配管内監視装置1、ロータリーキルン炉2を備えている。配管内監視装置1は、原料をロータリーキルン炉2内へ供給するための第1配管3、および第2配管4、第1配管3内部を監視可能とする窓5と、を備えている。
【0018】
第1配管3は直線状の250A配管であり、一端(排出口)3aがロータリーキルン炉2内へ開口している。第1配管3の他端3b側には点検口6が設けられ、点検口6の端面には耐熱ガラスで形成された窓5が設置されている。ユーザは窓5を覗くことにより、第1配管3内部を見渡すことができ、さらに、第1配管3が直線状であるため、窓5からロータリーキルン炉2内部を見ることができる。また、点検口6には空気が吹き込まれており、第1配管3と窓5との間に緩衝領域を設けている。これにより、窓5が原料の衝突や燃焼熱から保護されている。
【0019】
第2配管4は、第1配管3の途中から鉛直上方に分岐した配管である。原料は第2配管4の上側から投入され、図中の矢示A、B、Cの順に移動し、ロータリーキルン炉2内へ供給される。
【0020】
さらに、配管内監視装置1はCCDカメラ7、画像処理装置8、モニタ9を備えている。CCDカメラ7は窓5から第1配管3内部を覗く位置に配置され、さらに、第1配管3内の排出口3aを撮像領域とするように設定されている。CCDカメラ7で撮影された画像は画像処理装置8で処理されてモニタ9に表示される。
【0021】
燃焼装置10において処理される原料は、携帯電話や基板等の貴金属やレアメタルを含むプラスチック廃材などである。この原料に含まれる一部のプラスチックは融点が低く、ロータリーキルン炉2に到達する以前の第1配管3内で溶解することがある。特に、上記プラスチックの溶解は、ロータリーキルン炉2内から熱が伝達し温度が上昇しやすい第1配管3の排出口3a付近において起きやすい。このため、図1中に示す第1配管3の排出口3a付近において溶解したプラスチックに他の廃材が溶着し、配管内の詰まりの原因となる。配管内監視装置1は、上記の理由により生じる原料の溶着を早期に発見するための装置である。
【0022】
図2は、ロータリーキルン炉2の操業中にCCDカメラ7により撮影した第1配管3の排出口3a付近の様子を示した説明図である。図2(a)は原料の溶着がない状態を示し、図2(b)は第1配管の下部に原料が溶着した状態を示している。図2(a)に示すように、CCDカメラ7により取得された映像にはロータリーキルン炉2内で燃焼する火炎Fが見られる。図2(b)に示すように、第1配管3に原料が溶着すると火炎Fが原料に隠れて影ができる。火炎Fは非常に明るい一方、影となる部位は非常に暗いため、モニタ9を監視する作業員は原料の溶着を容易に発見することができる。また、画像処理装置8は影の部位とそうでない部位の明暗の割合を数値化し、モニタ9へ表示することができる。モニタ9を監視する作業員は、この明暗の割合の数値をもとに、原料の溶着を判断することにしてもよい。作業員は、第1配管3内に溶着した原料の除去が必要と判断すると、ロータリーキルン炉2への原料の供給を停止し、管内に溶着した原料の除去作業を行う。
【0023】
上記のように、配管内監視装置1により、窓5から第1配管3内を監視することができるため、原料の供給を停止することなく第1配管3内の原料の詰まりを検出することができる。従って、従来、点検作業中に停止していた原料の供給が連続して行われるため、ロータリーキルン炉2の時間稼働率が上昇する。さらに、配管内の詰まり、及び詰まりの原因となる原料の溶着を早期に発見することができる。配管内に溶着した原料を即座に除去する作業を行うことにより、従来、大量の原料が詰まり、1時間程度掛かっていた煩雑な除去作業を短時間で完了できる。特に、炉横は40℃にもなるため、作業員の負担を軽減することができる。
【0024】
具体的には以下のような効果が得られる。従来、点検作業でひと月あたり操業を4時間停止し、配管内の原料の詰まりのトラブルによりひと月あたり操業を4時間停止していたため、ひと月あたり合計8時間操業を停止していた。一方、本実施例の配管内監視装置1を導入した後は、点検作業による操業停止は必要なく、詰まりのトラブルによる原料除去作業でひと月あたり操業を0.7時間停止するのみに留めることができる。従って、ひと月あたり操業時間を7.3時間増加することができる。
【実施例2】
【0025】
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例の配管内監視装置の構成は実施例1の配管内監視装置1とほぼ同様である。但し、実施例1のCCDカメラ7をサーモカメラとした点で本実施例の配管内監視装置は実施例1の配管内監視装置と相違する。また、本実施例の画像処理装置はサーモカメラにより取得した画像を温度分布として取得し、モニタ9へ表示させることができる。なお、その他の構成は実施例1と同一であるため、実施例1と同一の構成要素については、その詳細な説明は省略する。
【0026】
サーモカメラが取得し、画像処理装置により処理されて表示される画像は、ロータリーキルン炉2内が見える部位では温度が高く、配管内に溶着した原料により影となる部位では温度が低く表示される。したがって、モニタ9を監視する作業員は、その温度分布図から容易に原料の溶着を発見することができる。
【0027】
本実施例の配管内監視装置によると、原料の供給を停止することなく第1配管3内の原料の詰まりを容易に検出することができる。これにより、ロータリーキルン炉2の時間稼働率を上昇できる。さらに、配管内の詰まり、及び詰まりの原因となる原料の溶着を早期に発見することができるため、溶着した原料を即座に除去する作業を行い、煩雑な除去作業を短時間で完了できる。
【実施例3】
【0028】
次に、本発明の実施例3について説明する。本実施例の配管内監視装置31の構成は実施例1の配管内監視装置1とほぼ同様である。但し、第1配管3内に溶着した原料を除去するためのプッシャ32を備えている点で、実施例1と相違する。図3は本実施例の配管内監視装置31を示した説明図である。プッシャ32は、第1配管3の管内の下部に残存した原料や、溶着した原料を炉内へ押し出す器具である。図4はプッシャ32の先端部を示した説明図である。プッシャ32はロッド部32aと、ロッド部32aの先端に組みつけられた半円型の先端部32bとを備えている。
【0029】
図3に示すように、プッシャ32は、先端部32bをロータリーキルン炉2側へ向けて端部3b側から第1配管3内に挿入されている。ロッド部32aは、通常、第1配管3の端部3b側いっぱいまで引き出されており、CCDカメラ7による配管及び炉内の監視の障害とならないようになっている。モニタ9を監視する作業員が第1配管3内に原料の溶着を発見し、溶着した原料の除去が判断されると、原料の供給を一時停止した後、プッシャ32が端部3b側から押し込まれて、溶着した原料を炉内へと押し込む。原料の残存や溶着は第1配管3内の下側半面に発生しやすいため、本実施例のプッシャ32のように管内の下側のみ押し込む構成で残存した原料や溶着した原料を十分に除去可能である。配管内監視装置31はこのようなプッシャ32を備えたことにより、第1配管3内に残存、溶着した原料を除去することが容易となる。これにより、除去作業を行う作業員の作業負担を軽減するとともに、溶着した原料の除去にかける作業時間が大幅に削減できるため、作業効率を上昇できる。また、このようなプッシャ32を備える構成は、既存の配管を利用して取り付けることができるため、燃焼装置を改めて製造するコスト等をかける必要がない。
【0030】
また、上記のプッシャ32は、図5に示すように、先端部32bがロッド部32aに対して移動可能に構成しても良い。図5(a)は先端部32bが支点3211を中心に回動するように構成したプッシャ321を示し、図5(b)は先端部32bがスライド部3221でスライドするように構成したプッシャ322を示している。例えば、図6に示すように第1配管3の端部3b側に、先端部32bを収容する収容部33を形成し、原料を炉内に押し込む作業時以外で、先端部32bが収容部33に収容されるようにする。これにより、CCDカメラ7が撮影する障害となることを防止することができる。また、このように先端部32bを収容する構成とするならば、先端部32bの形状を全円状とすることもできる。
【0031】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、さらに本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。
【符号の説明】
【0032】
1 配管内監視装置
2 ロータリーキルン炉
3 第1配管
3a 排出口
5 窓
6 点検口
7 CCDカメラ
8 画像処理装置
9 モニタ
32、321、322 プッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内へ原料を供給する配管と、前記配管内部を監視可能とする窓と、を備えた配管内監視装置。
【請求項2】
前記窓は、前記配管の排出口付近を監視可能とする請求項1記載の配管内監視装置。
【請求項3】
前記配管は直線状であり、前記配管の一端が炉内に開口し、他端に前記窓が形成された請求項1または2記載の配管内監視装置。
【請求項4】
前記窓から前記配管内を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置の撮像した画像を受信して表示する表示画面と、
を備えた請求項1乃至3記載のいずれか一項記載の配管内監視装置。
【請求項5】
前記窓から前記配管内を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置の撮像した画像を受信し、前記配管内の詰まりを判別する画像処理手段と、
を備えた請求項1乃至4のいずれか一項記載の配管内監視装置。
【請求項6】
前記撮像装置は、熱画像検出器である請求項5記載の配管内監視装置。
【請求項7】
前記配管内に原料が溶着した場合、溶着した原料を除去する除去手段を備えた請求項1乃至6のいずれか一項記載の配管内監視装置。
【請求項8】
前記除去手段は、配管内の原料を炉内へ押し出すプッシャである請求項7記載の配管内監視装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項記載の配管内監視装置を備え、
当該配管内監視装置により前記配管内に原料の詰まりが発見された場合、原料の供給を停止する焼却炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−75226(P2011−75226A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228444(P2009−228444)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(502362758)JX日鉱日石金属株式会社 (482)
【Fターム(参考)】