説明

配管継手部構造

【課題】シールキャップにシールリングを挿入する際、シールリングの脱落防止を行って、配管接続作業を容易に行うこと。
【解決手段】第1の継手部材1と第2の継手部材5間にシールキャップ10とシールリング15とを介在させる。シールキャップ10の一端にはシールリング15を挿入した際の、ストッパとなるシールリング係合爪片12を4箇所に対向して形成し、シールリング係合爪片12と軸方向に沿って対向する位置に脱落防止爪片14を2箇所に対向して形成する。シールキャップ10の内周面側に形成する脱落防止爪片14に対してシールキャップ10の外周面に対向する位置に溝状の凹溝を形成して、配管組付後の配管固定爪又は脱落防止爪片14の位置を確認し、脱着するための目印とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロン代替冷媒をCO2で使用する場合の配管継手部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化のため、冷凍サイクルにおける冷媒としてフロンガスに替わる次世代冷媒、例えば、炭酸ガス(CO2)やそれに類するガスが検討されるようになってきた。これらの次世代冷媒を使用する冷凍サイクルでは、高圧部の圧力が冷媒の臨界圧力を超えて運転される冷凍サイクルとなっており、ゴムなどの高分子材料に対しては溶解度が大きいこととなっていた。そのため、配管継手部においてOリング等のシール部材を使用する場合、冷媒がシール部材を透過して外部に洩れることが課題として発生していた。この課題を解決するために従来においては、透過性が高いという特徴を有する次世代冷媒に対して、冷媒の大気への放出を防止する対策が検討されてきた。例えば、特許文献1では、Oリングとバックアップリングの2個のシール部材を使用してCO2がシール部材を透過して外部に漏れることを防止した構成が知られている。この特許文献1では冷媒の外部への漏洩の防止に関しては優れた効果を発揮しているものの、シール部材はもともと熱に弱く高温下においては耐久性に課題を残すこととなっていた。そのため特許文献2に示すようなアルミニウム製のシールリングと樹脂製のシールキャップを使用した配管継手部構造が提供されていた。
【0003】
これによると、図9〜10に示すように、配管部材を一端に接続した一対の継手ブロック21、21間を筒状の保護ソケット(シールキャップ)22と保護ソケット22内に挿入される密封リング(シールリング)23が介在されている。保護ソケット22には外側に向かって突出するフランジ状の密封リップ22aが形成され、密封リング23は一対の継手ブロック21、21間に形成されるギャップ空間に密封状態で嵌り込むように構成されていた。
【特許文献1】特開2006−348998公報
【特許文献2】特許第3936697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2の配管継手部構造では、一対の継手ブロック21、21を接続する際、密封リング23を挿入した保護ソケット22を間にして接続するため、密封リング23が保護ソケットから脱落して密封リング23の挿入忘れという単純な作業ミスを発生する虞があった。この密封リング23を脱落させないように一対の継手ブロック21、21を接続するためには、その作業に手間をかけることとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、冷媒漏れ防止用のシールキャップを介在させて一対の配管部材を接続する際に、内部のシールリングを脱落させることなく短時間で接続作業を行うことができる配管継手部構造を提供することを目的とする。そのために、本発明に係る配管継手部構造は、以下のように構成するものである。すなわち、
請求項1記載の発明では、一端に第1の配管部材を接続するとともに他端に雄部を有する第1の継手部材と一端に第2の配管部材を接続するとともに他端に前記雄部と対向する雌部を有する第2の継手部材とを備え、前記第1の継手部材と前記第2の継手部材とは、内部を流通する冷媒の外部への漏洩を防止するために配設されたシールキャップ及びシールリングを介して接続される配管継手部構造であって、前記シールキャップは、前記雄部に装着可能な円筒状に形成されて内部に前記シールリングを収容するとともに、前記シールキャップには前記シールリングが前記シールキャップから脱落することを防止する脱落防止手段が配設されていることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2記載の発明では、前記脱落防止手段が、前記シールキャップの一端に形成されたシールリング係合爪片と、前記シールリングを間にして前記シールリング係合爪片と反対側に配設される脱落防止爪片と、で前記シールリングを挟持可能に形成していることを特徴としている。
【0007】
請求項3記載の発明では、前記シールキャップの外周面には、前記シールキャップを前記第1の継手部材から脱着するための目印手段が形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項4記載の発明では、前記目印手段が、前記シールキャップの外周面に形成された凹溝であることを特徴としている。
【0009】
請求項5記載の発明では、前記シールキャップは樹脂製の材料で形成され、前記凹溝を押圧することによって、前記シールリングを前記シールキャップから脱着可能に形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項6記載の発明では、前記第2の継手部材の雌部の内径と前記シールキャップの外径とのクリアランスが、前記シールキャップに形成された配管固定爪の係合部と前記雄部に形成された係合部との引っかかり代より小さく設定されていることを特徴としている。
【0011】
請求項7記載の発明では、2つの継手部材の間に挟持されて、それら継手部材の間をシールするシールリングを保持するシールキャップであって、筒状に形成されたキャップ本体部と、前記キャップ本体部の内周面の一端部に、径方向内側に突出して設けられたシールリング係合爪片と、前記キャップ本体部の内周面の中ほどの径方向に対向する位置に、径方向内側に突出して設けられた2つの脱落防止爪片とを備え、前記キャップ本体部は、前記脱落防止爪片の間を通して前記脱落防止爪片と前記シールリング係合爪片との間に前記シールリングを脱着することを許容するために、前記脱落防止爪片の径方向間隔の拡張を許容するように、径方向に関して弾性変形可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項8記載の発明では、前記キャップ本体部の外側に視認可能に設けられ、前記脱落防止爪片と径方向に対応するか、あるいは直交する位置に設けられた目印部を備えることを特徴としている。
【0013】
請求項9記載の発明では、前記キャップ本体部の内周面の他端部の径方向に対向する位置に、径方向内側に突出して設けられ、前記継手部材に係合可能な2つの配管固定爪であって、前記キャップ本体部の弾性変形により径方向間隔が拡張し、前記継手部材への脱着を許容する2つの配管固定爪を備えることを特徴としている。
【0014】
請求項10記載の発明では、前記脱落防止爪片と前記配管固定爪とは周方向に関して相補的な位置に設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配管継手部構造によれば、シールリングをシールキャップに挿入することによって、シールキャップに配設された脱落防止手段がシールリングを保持することができる。そのため、シールリングをシールキャップに収容した状態で第1の継手部材と第2の継手部材とを接続することができるから短時間で容易な接続作業を行うことができる。
【0016】
この脱落防止手段の一形態は、シールリングをシールキャップに挿入する際、シールリングの一方の端面がシールキャップのシールリング係合爪片に係合され、シールリングの他方の端面がシールキャップの脱落防止爪片に係合される。シールキャップのシールリング係合爪片と脱落防止爪片とがシールリングを挟持可能に形成していることから、シールリングをシールキャップに脱落させずに保持することができる。
【0017】
また、このシールキャップは樹脂製の材料で形成されるとともにシールキャップの外周面には、シールキャップを第1の継手部材から脱着するための目印手段とする凹溝が形成されていることから、その凹溝付近を押圧することでシールキャップが変形し、シールキャップの配管固定爪を雄部材の係合部から係合解除することができる。そのためシールキャップを第1の継手部材の雄部から脱着することが可能となる。
【0018】
また、第1の継手部材と第2の継手部材とを取り外す際に、シールキャップが第2の継手部材の雌部内周面に沿って移動することになる。この場合、シールキャップの外径と第2の継手部材の雌部の内径とのクリアランスが、シールキャップに形成された配管固定爪の係合部と雄部に形成された係合部との引っかかり代より小さく設定していることから、シールキャップが第1の継手部材の雄部に装着されたままで第1の継手部材と第2の継手部材とを取外すことができる。
【0019】
また、配管継手部構造内に配置される本発明のシールキャップによれば、シールキャップは、2つの継手部材の間をシールするシールリングを保持可能に形成されている。シールリングは、シールキャップの内周面の一端側に設けられたシールリング係合爪片と、シールリング係合爪片と対向して設けられた脱落防止爪片との間で保持される。シールキャップはシールリングをシールリング係合爪片と脱落防止爪片との間に通すための径方向間隔の拡張を許容するために弾性変形可能に構成されているから、シールリングをワンタッチで挿入できるとともに、シールキャップ内に挿入されたシールリングの脱落防止を図ることができる。
【0020】
さらに、本発明のシールキャップには、内周面に形成された脱落防止爪片の位置を確認するために、外周面に目印部を形成して視認可能としているから、目印部付近あるいは軸方向に対する目印部と直交する部位を操作することによって、シールキャップと第1の継手部材との分離、あるいはシールリングとシールキャップとの分離を即座に行うことができる。
【0021】
また、本発明のシールキャップは、内周面の他端部において、径方向に対向する2つの配管固定爪を設けて継手部材に係合可能としている。この配管固定爪は、キャップ本体部の弾性変形で径方向間隔が拡張可能であるから、シールキャップをキャップ本体部にワンタッチで脱着することができる。
【0022】
さらに、脱落防止爪片と配管固定爪とは、相補的な位置関係にあるから、シールリングとシールキャップとの分離、第1の継手部材とシールキャップとの分離を同時に行うのではなく順に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の配管継手部構造の一形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、実施形態の配管継手部構造を示す分解断面図を示し、図2は組付断面図を示すものである。図1〜2に示す実施形態の配管継手部構造は、図示しない配管部材を一端に接続する第1の継手部材1と、図示しない配管部材を一端に接続する第2の継手部材5と、樹脂製のシールキャップ10と、シールリング15とを備えている。
【0025】
第1の継手部材1は、第2の継手部材5側に向かって円筒状の雄部2が突出して形成され、内部に流路3が形成されている。第1の継手部材1における雄部2と反対側の面には、図示しない配管部材の一端が挿入される配管口4が形成されている。雄部2の先端には、径方向外側に向けて広がった傘状の係合部2bが先端に設けられ、さらに雄部2の先端面には軸方向に尖状となるリング状突起2aが第2の継手部材5側に向かって突出して形成されている。この突起2aはシールリング15の一端面を押圧してシールリング15の端面に食い込むように形成されている。また、第1の継手部材1には第2の継手部材5と締結するためのボルト挿入孔1aが形成されている。
【0026】
さらに、雄部2の係合部2bに連接した小径部2cにはOリング16が装着されている。Oリング16は、外部からシールキャップ10またはシールリング15側に水分や泥水等の浸入を防ぐために配置されるものであり、シールリング15の腐食及び錆の発生を防止するものである。
【0027】
第2の継手部材5は、第1の継手部材1の雄部2が挿入される雌部(以下、凹部という)6が形成され、内部に流路7が形成されている。第2の継手部材5における凹部6と反対側の面には、図示しない配管部材の一端が挿入される配管口8が形成されている。凹部6の底面には流路7の開口端を囲むようにして環状の隆起部が設けられており、さらにその先端面には軸方向に尖状となるリング状突起6aが第1の継手部材1側に向かって突出して形成されている。この突起6aはシールリング15の他端面を押圧してシールリング15の他方の端面に食い込むように形成されている。また、第2の継手部材5には第1の継手部材5のボルト挿入孔1aに対向して雌ねじ5aが形成されている。ボルト挿入孔1aと雌ねじ5aとは入替可能である。
【0028】
なお、凹部6の内径とシールキャップ10の外径との差は、継手部材1と継手部材5とを引き離す際に、シールキャップ10が雄部2に残るように設定されている。具体的には、図3に示すように、凹部6の内面とシールキャップ10の外面との間の隙間(クリアランス)Hが、配管固定爪13の係合面13aと雄部2の係合部2bとの間の引っかかり代Lより大きくなることがないように、各部の径が設定されている。この関係は、シールキャップ10が凹部6内において最大限に偏って位置した際にも維持される。この結果、シールキャップ10の周方向の一部分だけに配管固定爪13が形成されている構成においても、凹部6内に位置している間は、シールキャップ10が雄部2から外れることがない。例えば、Oリング16が雄部2外面と凹部6内面との間で摩擦されてシールキャップ10を押すことや、シールキャップ10の外面と凹部6の内面とが一部で強く摩擦されることがあっても、シールキャップ10は雄部2に係合し続けるため、分解時にシールキャップ10が凹部6内に取り残されることが防止される。
【0029】
シールキャップ10は、弾性変形可能な熱可塑性樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート又はそれらのガラス繊維やタルク等の補強剤を含むもの等で形成されている。シールキャップ10は、図4〜6に示すように、円筒状に形成されたキャップ本体部11を有する。シールキャップ10には、キャップ本体部11の一方の端部から径方向内側に向かって突出された複数(図例においては4箇所)のシールリング係合爪片12(図4参照)が形成されている。シールリング係合爪片12の裏面側にはシールリング15の一端面と係合する係合面12a(図5参照)が形成されている。
【0030】
キャップ本体部11の内面には、中央よりやや他端寄りの位置に、雄部2の係合部2bに係合する配管固定爪13が内方に向かって対向する2箇所の位置に径方向内側に向かって突出して形成されている。配管固定爪13の裏面側が係合面13a(図5参照)として形成されている。
【0031】
また、図6に示すように、キャップ本体部11の複数のシールリング係合爪片12と相補的な位置にシールリング15の他端面に係合する脱落防止爪片14が、対向する2箇所において形成されている。脱落防止爪片14におけるシールリング15と対向する面が係合面14aとして形成されている。さらにキャップ本体部11の外周面には、脱落防止爪片14と対応した周方向の位置に、凹溝11aが端面から溝状に形成され、シールキャップ10の配管固定爪13からの脱着のための目印として形成されている。
【0032】
シールリング15は、シールキャップ10のシールリング係合爪片12に係合可能な一面を有して円環状に形成されている。また、両面において、突起2a及び突起6aに食い込まれるような軟らかさを有した材料、例えば、アルミニウム製又は銅製等で形成されている。
【0033】
筒状に形成されたキャップ本体部11の内径は、シールリング15の外径より僅かに大きく形成されている。
【0034】
複数のシールリング係合爪片12は、キャップ本体部11の内周面に等間隔に分散して設けられている。シールリング係合爪片12の一端面は、傾斜面を持つ。シールリング係合爪片12の内側に向いた面(裏面)は、シールリング15の端面に沿う平面を提供している。各シールリング係合爪片12は、円弧状に延びている。各シールリング係合爪片12の周方向の長さは、隣り合う2つのシールリング係合爪片12の間の距離より狭い。シールリング15を収容した状態でキャップ本体部11をその径方向に沿って楕円状に変形させた場合であっても、シールリング係合爪片12の径方向内側先端で区画される最小円は、シールリング15の外径より大きくなることはない。その一方で、シールリング15を収容した状態でキャップ本体部11をその径方向に沿って楕円状に変形させた場合、シールリング係合爪片12の径方向先端で区画される最大円は、シールリング15の外径より大きくなることがある。4つのシールリング係合爪片12に代えて、この実施形態の2つのシールリング係合爪片12にわたって延びる2つのシールリング係合爪片12を採用してもよい。また、全周にわたって延びるシールリング係合爪片12を採用してもよい。
【0035】
複数の配管固定爪13は、キャップ本体部11の内周面に等間隔に分散して設けられている。配管固定爪13は、キャップ本体部11の他端側から緩やかに径方向内側に向かって延びる斜面を持つ。配管固定爪13は、係合部2bと係合するために、径方向に沿った平面を有している。この平面は、キャップ本体部11の一端側に向かって面している。各配管固定爪13は、円弧状に延びている。各配管固定爪13の周方向の長さは、2つのシールリング係合爪片12の間の距離にほぼ等しい。複数の配管固定爪13は、この配管固定爪13側からシールリング15をキャップ本体部11内に挿入することができるような寸法を持っている。この実施形態では、径方向高さと複数の配管固定爪13の間隔とが、キャップ本体部11内の若干の変形を許容しながら、シールリング15をキャップ本体部11内に挿入することを可能としている。
【0036】
複数の脱落防止爪片14は、キャップ本体部11の内周面に等間隔に分散して設けられている。脱落防止爪片14は、キャップ本体部11の他端側から緩やかに径方向内側へ向けて延びる斜面を持つ。脱落防止爪片14は、シールリング15の他端面と係合するために、径方向に沿った平面14aを有している。各脱落防止爪片14は、円弧状に延びている。各脱落防止爪片14の周方向の長さは、2つのシールリング係合爪片12の間の距離より十分に小さい。複数の脱落防止爪片14は、キャップ本体部11の他端側からシールリング15が挿入される際に、キャップ本体部11の若干の変形を許容しながら、シールリング15が脱落防止爪片14を乗り越えて、脱落防止爪片14とシールリング係合爪片12との間に挿入できるように設けられている。この実施形態では、径方向に対向して2つだけの脱落防止爪片14が設けられることで、キャップ本体部11の同径方向への変形の下でシールリング15の挿入が可能とされている。
【0037】
キャップ本体部11の内面には、周方向に関して、複数の脱落防止爪片14の間に、少なくともシールリング係合爪片12の一部分が位置づけられる。複数のシールリング係合爪片12を用いる実施形態では、脱落防止爪片14とシールリング係合爪片12とは、周方向に関して互いに相補的な位置に設けられているともいえる。実施形態では、脱落防止爪片14が設けられた周方向範囲と重複することなく、しかも離れた位置にシールリング係合爪片12が配置されている。この結果、対向配置された脱落防止爪片14の径方向間隔が広げられた際には、対向配置されたシールリング係合爪片12の径方向間隔が狭くなる。この実施形態では、2つの脱落防止爪片14の間に、2つのシールリング係合爪片12が位置づけられている。さらに2つの脱落防止爪片14の間に、ひとつの配管固定爪13が位置づけられている。複数の脱落防止爪片14と複数の配管固定爪13とは、周方向に関して互いに相補的な位置に位置づけられている。さらに配管固定爪13もまた径方向に対向して位置づけられている。脱落防止爪片14が設けられた径方向と、配管固定爪13が設けられた径方向とは、互いに直交する関係にある。目印部としての凹溝11aは脱落防止爪片14又は配管固定爪13に対応する位置に設けられる。
【0038】
以上に述べたようにこの実施形態では、2つの継手部材の間に挟持されて、それら継手部材の間をシールするシールリング15を有する。シールリング15を保持するシールキャップ10は、筒状に形成されたキャップ本体部11と、キャップ本体部11の内周面の一端部に、径方向内側に突出して設けられたシールリング係合爪片12と、キャップ本体部11の内周面に突出して設けられたシールリング係合爪片12と、キャップ本体部11の内周面の中ほどの径方向に対向する位置に径方向に突出して設けられた2つの脱落防止片14とを備える。しかも、キャップ本体部11は、脱落防止爪片14の間を通して脱落防止爪片14とシールリング係合爪片12との間にシールリング15を脱着することを許容するために、脱落防止爪片14の径方向間隔の拡張を許容するように、径方向に関して弾性変形可能に構成されている。さらに、キャップ本体部11の外側に視認可能に設けられ、脱落合資爪片14と径方向に対応するか、あるいは直交する位置に設けられた目印部14aを備える。さらに、キャップ本体部11の内周面の他端部の径方向に対向する位置に、径方向内側に突出して設けられ、継手部材に係合可能な2つの配管固定爪13であって、キャップ本体部11の弾性変形により径方向間隔が拡張し、継手部材への脱着を許容する2つの配管固定爪13を備える。また、脱落防止爪14と配管固定爪13とは周方向に関して相補的な位置に設けられている。
【0039】
次に、上述のように構成された配管継手部構造の作用について説明する。
【0040】
図1に示すように、一端に配管部材を接続した第1の継手部材1の雄部2と、一端に配管部材を接続した第2の継手部材5の凹部6とをそれぞれ対向して配置する。シールキャップ10にシールリング15を挿入してシールキャップ10を第1の継手部材1の雄部2に装着する。シールリング15をシールキャップ10に挿入する際、シールリング15をシールキャップ10の第1の継手部材1側から挿入する。シールキャップ10に形成された脱落防止爪片14は、シールリング15の挿入方向に対して径方向に対して徐々に狭まる傾斜面を有している。そのため、シールリング15を押し込むことによって、脱落防止爪片14とキャップ本体部11とを変形させることとなって、容易に嵌め込むことができる。
【0041】
シールリング15の一方の面はシールリング係合爪片12の係合面12aに係合され、他方の面は脱落防止爪片14の係合面14aに係合されてシールキャップ10内に収容される。
【0042】
シールキャップ10を第1の継手部材1の雄部2に向かって装着する際、第1の継手部材1の雄部2でシールキャップ10の配管固定爪13を変形させる。シールキャップ10の配管固定爪13は第1の継手部材1の係合部2bと係合されるとともに、シールリング15の端面は第1の継手部材1の雄部2の先端に形成された突起2a上に位置づけられる。
【0043】
次に、シールキャップ10を装着した第1の継手部材1を第2の継手部材5に挿入する。この際、第1の継手部材1の雄部2に装着されたシールキャップ10が第2の継手部材5の凹部6内に挿入され、シールキャップ1の端面が凹部6の底面まで達すると、第2の継手部材5の凹部6の底面に形成された突起6a上にシールリング15の端面が位置づけられる。そして第1の継手部材1と第2の継手部材5とをボルトで締結する。この際、突起2aと突起6bとがシールリング15の両端面にそれぞれ食い込む。これによって、第1の継手部材1と第2の継手部材5とはシールリング15でシールされながら接続される。
【0044】
なお、例えば、シールキャップ10及びシールリング15を交換する場合、第1の継手部材1と第2の継手部材5とを分離させた後、シールキャップ10を第1の継手部材1の雄部2から分離させる。このような脱着の際、シールキャップ10と第1の継手部材1の雄部2とは、対向する2箇所の位置で形成された配管固定爪13で係合していることから、図7に示すように、シールキャップ10の配管固定爪13をお互いに広げる方向に外周面を押圧することによって、シールキャップ10を変形させれば、シールキャップ10を容易に脱着させることができる。この場合、配管固定爪13をお互いに広げる方向は、シールキャップ10の外周面に形成された溝状の凹溝11aが目印となっていることから、凹溝11aの周りを両側から押すことになる。
【0045】
また、シールリング15とシールキャップ10とを脱着する場合には、図8に示すように、2箇所に形成されたシールキャップ10の脱落防止爪片14を広げる方向にシールキャップ10を変形させることによって脱着させる。この場合には、対向する2箇所の凹溝11aと直交する部位を押圧するか、あるいは、シールキャップ10とシールリング15の係合状態を目視で確認した上でシールキャップ10の外周面を押圧する。
【0046】
上述のように、実施形態の配管継手部構造では、シールリング15をシールキャップ10に装着する際、シールキャップ10に脱落防止爪片14を形成したことから、シールキャップ10に装着したシールリング15の脱落防止を図ることができる。そのため、第1の継手部材1と第2の継手部材5とを接続する際の作業を容易に行うことができる。
【0047】
また、シールキャップ10を第1の継手部材1の雄部2から脱着する際、シールキャップ10には、シールキャップ10の外周面に形成された凹溝11aを目印として形成したことから、凹溝11aの周りを押すことによって、シールキャップ10の係合爪片14を雄部2の係合部2bから容易に脱着し、また、シールリング15をシールキャップ10から脱着する際、凹溝11aと直交する方向の部位を押すことによって、シールキャップ10とシールリング15とを容易に脱着することができる。
【0048】
なお、本発明の配管継手部構造は、上述の形態に限定するものではない。例えば、シールリング10のキャップ本体部11の外周面に形成された凹溝11aは、図5においてシールキャップ10の反対側の端面、つまり、シールキャップ10のシールリング係合爪片12側の端面から溝状に形成してもよく、また、端面からではなく軸心方向の中央部に形成してもよい。さらには、凹溝11aの代わりに、キャップ本体部11端面に孔を形成するか、あるいは識別できるシールを付着させておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一形態を示す配管継手部構造の分解正面断面図である。
【図2】同組付断面図である。
【図3】図2におけるシールキャップと凹部との嵌合状態を示す一部拡大図である。
【図4】図1における配管継手部構造のシールキャップを示す側面図である。
【図5】図4におけるV−V断面図である
【図6】図4におけるVI−VI断面図である。
【図7】シールキャップの配管固定爪を広げるように変形させた状態を示す側面図である。
【図8】シールキャップの脱落防止爪片を広げるように変形させた状態を示す側面図である。
【図9】従来の配管継手部構造を示す一部断面図である。
【図10】従来のシールキャップを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1、第1の継手部材
2、雄部
2a、突起
2b、係合部
5、第2の継手部材
6、凹部
6a、突起
10、シールキャップ
11、キャップ本体部
11a、凹溝
12、シールリング係合爪片
12a、係合面
13、配管固定爪
13a、係合面
14、脱落防止爪片
14a、係合面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に第1の配管部材を接続するとともに他端に雄部(2)を有する第1の継手部材(1)と一端に第2の配管部材を接続するとともに他端に前記雄部と対向する雌部(6)を有する第2の継手部材(5)とを備え、前記第1の継手部材(1)と前記第2の継手部材(5)とは、内部を流通する冷媒の外部への漏洩を防止するために配設されたシールキャップ(10)及びシールリング(15)を介して接続される配管継手部構造であって、
前記シールキャップ(10)は、前記雄部(2)に装着可能な円筒状に形成されて内部に前記シールリング(15)が前記シールキャップ(10)から脱落することを防止する脱落防止手段が配設されていることを特徴とする配管継手部構造。
【請求項2】
前記脱落防止手段が、前記シールキャップ(10)の一端に形成されたシールリング係合爪片(12)と、前記シールリング(15)を間にして前記シールリング係合爪片(12)と反対側に配設される脱落防止爪片(14)と、で前記シールリング(15)を挟持可能に形成していることを特徴とする請求項1記載の配管継手部構造。
【請求項3】
前記シールキャップ(10)の外周面には、前記シールキャップ(10)を前記第1の継手部材(1)から脱着するための目印手段が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の配管継手部構造。
【請求項4】
前記目印手段が、前記シールキャップの外周面に形成された凹溝(11a)であることを特徴とする請求項3記載の配管継手部構造。
【請求項5】
前記シールキャップ(10)は樹脂製の材料で形成され、前記凹溝(11a)を押圧することによって、前記シールリング(15)を前記シールキャップ(10)から脱着可能に形成されていることを特徴とする請求項4記載の配管継手部構造。
【請求項6】
前記第2の継手部材の雌部(6)の内径と前記シールキャップ(10)の外径とのクリアランスが、前記シールキャップ(10)に形成された配管固定爪(13)の係合部と前記雄部(2)に形成された係合部との引っかかり代より小さく設定されていることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の配管継手部構造。
【請求項7】
2つの継手部材の間に挟持されて、それら継手部材の間をシールするシールリングを保持するシールキャップであって、
筒状に形成されたキャップ本体部(11)と、
前記キャップ本体部(11)の内周面の一端部に、径方向内側に突出して設けられたシールリング係合爪片(12)と、
前記キャップ本体部(11)の内周面の中ほどの径方向に対向する位置に、径方向内側に突出して設けられた2つの脱落防止爪片(14)とを備え、
前記キャップ本体部(11)は、前記脱落防止爪片(14)の間を通して前記脱落防止爪片(14)と前記シールリング係合爪片(12)との間に前記シールリングを脱着することを許容するために、前記脱落防止爪片(14)の径方向間隔の拡張を許容するように、径方向に関して弾性変形可能に構成されていることを特徴とするシールキャップ。
【請求項8】
前記キャップ本体部の外側に視認可能に設けられ、前記脱落防止爪片(14)と径方向に対応するか、あるいは直交する位置に設けられた目印部(11a)を備えることを特徴とする請求項7記載のシールキャップ。
【請求項9】
前記キャップ本体部の内周面の他端部の径方向に対向する位置に、径方向内側に突出して設けられ、前記継手部材に係合可能な2つの配管固定爪(13)であって、前記キャップ本体部(11)の弾性変形により径方向間隔が拡張し、前記継手部材への脱着を許容する2つの配管固定爪(13)を備えることを特徴とする請求項7又は8記載のシールキャップ。
【請求項10】
前記脱落防止爪片(14)と前記配管固定爪(13)とは周方向に関して相補的な位置に設けられていることを特徴とする請求項9記載のシールキャップ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−127809(P2009−127809A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305853(P2007−305853)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(591085547)ゴムノイナキ株式会社 (10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】