説明

配管補修用掘削具とその掘削具を使用する配管補修方法

【課題】被貫通部材を深く掘削でき、配管の極近くを綺麗に掘削することのできる配管補修用掘削具と、その掘削具を使用することにより配管補修後における掘削箇所の補修を短時間のうちに容易に行うことのできる配管補修方法を提供する。
【解決手段】配管の中心軸に沿って移動可能で、配管の中心軸周りに回転可能な状態で外嵌する把持部6を有する掘削具本体4と、配管の被貫通部材を掘削する掘削具本体4に取り付けられる掘削刃10と、掘削刃10を回転駆動する駆動手段13を備えて、配管の周囲に位置する被貫通部材を掘削するように構成されている配管補修用掘削具で、掘削刃10が、その先端と先端周部に掘削部12を有し、その長手方向軸心を回転中心軸Lとして回転する棒状の掘削刃10で構成されている配管補修用掘削具1とその掘削具1を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管に対してその配管の中心軸に沿って移動可能で、かつ、配管の中心軸周りに回転可能な状態で外嵌する把持部を有する掘削具本体と、前記配管が貫通する被貫通部材を掘削するために掘削具本体に取り付けられる掘削刃と、その掘削刃を回転駆動する駆動手段を備え、前記駆動手段による掘削刃の回転駆動と掘削具本体の配管の中心軸に対する回転および移動によって、前記配管の周囲に位置する前記被貫通部材を掘削するように構成されている配管補修用掘削具とその掘削具を使用する配管補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような掘削具としては、従来、掘削刃が、その円周縁部に掘削部を有する円盤状の掘削刃で構成され、円盤の中心から延出する軸を回転中心軸として回転させて、円周縁部の掘削部により配管の周囲に位置する被貫通部材を掘削するように構成したものが知られており、また、その掘削具を使用して配管を補修する配管補修方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−218774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の掘削具では、掘削刃が円盤状であるため、配管に近接して配管の極近くに位置する被貫通部材のみを綺麗に掘削するのがむずかしく、特に、配管の極近くの被貫通部材を深く綺麗に掘削するのがむずかしいという問題があった。
したがって、従来の掘削具を使用して被貫通部材を掘削すると、どうしても配管の周囲を大きく掘削することになり、特に、深く掘削する必要がある場合には、その傾向が顕著で、そのため、配管補修後において、掘削した箇所を補修するのに多くの時間と労力を要するという欠点があった。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、たとえ被貫通部材を深く掘削する必要がある場合でも、配管の極近くを綺麗に掘削することのできる配管補修用掘削具を提供し、さらに、その掘削具を使用することによって配管補修後における掘削箇所の補修を短時間のうちに容易に行うことのできる配管補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、配管に対してその配管の中心軸に沿って移動可能で、かつ、配管の中心軸周りに回転可能な状態で外嵌する把持部を有する掘削具本体と、前記配管が貫通する被貫通部材を掘削するために掘削具本体に取り付けられる掘削刃と、その掘削刃を回転駆動する駆動手段を備え、前記駆動手段による掘削刃の回転駆動と掘削具本体の配管の中心軸に対する回転および移動によって、前記配管の周囲に位置する前記被貫通部材を掘削するように構成されている配管補修用掘削具であって、前記掘削刃が、その先端と先端周部に掘削部を有し、その長手方向軸心を回転中心軸として回転する棒状の掘削刃で構成されているところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、被貫通部材を掘削するための掘削刃が、その先端と先端周部に掘削部を有し、その長手方向軸心を回転中心軸として回転する棒状の掘削刃で構成されているので、例えば、その棒状の掘削刃の回転中心軸が、配管の中心軸とほぼ平行になるように、または、掘削刃の先端側が配管の中心軸に近接する方向に多少傾斜させて掘削具本体に取り付けることによって、掘削刃の先端を配管の極近くにまで近接させることができる。
そして、その掘削刃は先端と先端周部に掘削部を有しているので、駆動手段による掘削刃の回転に伴って、配管の極近くに位置する被貫通部材のみを綺麗に掘削することができるとともに、被貫通部材を深く綺麗に掘削することも可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、第1の特徴構成を有する配管補修用掘削具において、前記棒状の掘削刃が、前記掘削具本体の把持部を配管に外嵌した状態で、その回転中心軸が前記配管の中心軸とほぼ平行になるように構成されているところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、棒状の掘削刃が、掘削具本体の把持部を配管に外嵌した状態で、その回転中心軸が配管の中心軸とほぼ平行になるように構成されているので、たとえ被貫通部材を深く掘削しても、掘削刃の先端が誤って配管を傷つけるようなことはなく、したがって、配管の極近くに位置する被貫通部材のみを深く綺麗に掘削することが容易となる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、第1または第2の特徴構成を有する配管補修用掘削具において、前記駆動手段が、前記掘削具本体と別体に構成されて、前記棒状の掘削刃に対してフレキシブルな回転力伝達部材を介して連動連結されているところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、掘削刃を回転駆動する駆動手段、換言すると、比較的大きくて重量のある駆動手段が、掘削具本体と別体に構成されているので、掘削具本体は比較的小型で軽量となり、配管の極近くまで近接させることができるとともに、たとえひとりの作業者であっても、被貫通部材の掘削作業を容易に行うことができる。
そして、その駆動手段が、棒状の掘削刃に対してフレキシブルな回転力伝達部材を介して連動連結されているので、掘削刃は駆動手段によって確実に回転駆動され、被貫通部材を所望どおりに掘削することができる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、第1〜第3のいずれかの特徴構成を有する配管補修用掘削具を使用して配管を補修する配管補修方法であって、前記掘削具により補修対象となる配管の周囲に位置する被貫通部材を掘削し、前記配管周囲の被貫通部材を除去して配管の補修対象部位を露出させ、その配管の補修対象部位を補修材で被覆した後、その配管と前記被貫通部材との間の隙間に充填材を充填して補修するところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、上述した配管補修用掘削具を使用し、その掘削具により補修対象となる配管の周囲に位置する被貫通部材を掘削し、配管周囲の被貫通部材を除去して配管の補修対象部位を露出させるので、例えば、配管周囲の被貫通部材の掘削量を必要最小限に抑えて補修対象部位を露出させることにより、補修対象部位の露出工程までを短時間のうちに容易に行うことができる。
そして、配管の補修対象部位を補修材で被覆した後、その配管と被貫通部材との間の隙間に充填材を充填して補修するのであるが、その充填材の量も必要最小限に抑えることができ、充填材による充填作業を短時間のうちに行うことができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、第4の特徴構成を有する配管補修方法において、前記充填材として水膨潤ゴムを使用し、前記配管の周りに樹脂製化粧板を外嵌して前記水膨潤ゴムの表面を覆って補修するところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、充填材として水膨潤ゴムを使用するので、配管の補修作業が完了した後においては、たとえ配管と被貫通部材との間に水などが入り込もうとしても、水膨潤ゴムの膨潤によって水などの侵入は阻止される。
したがって、たとえ浴室の床や壁を貫通する配管の補修であっても、配管周面への水の浸入を確実に阻止することができ、かつ、配管の周りに樹脂製化粧板を外嵌して水膨潤ゴムの表面を覆って補修するので、外観的にも美麗に補修することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明による配管補修用掘削具とその掘削具を使用する配管補修方法につき、その実施の形態を図面に基づいて説明する。
配管補修用の掘削具1は、図1に分解して示すように、一対の半割り部材2,3からなる掘削具本体4を備え、一方の半割り部材2には、複数のボルト挿通孔2aが設けられ、他方の半割り部材3には、ボルト挿通孔2aに対応して複数のねじ孔3aが設けられ、ボルト5をボルト挿通孔2aに挿通してねじ孔3aに螺合することにより、一対の半割り部材2,3が互いに連結されるように構成されている。
各半割り部材2,3の内面は、平面視においてほぼ半円形に形成され、両半割り部材2,3を互いに連結すると、その中央部にほぼ円形の空間が形成されて、後に説明するように、補修対象となる配管Pに外嵌する把持部6として機能するように構成されている。
【0017】
一方の半割り部材2には、その両端部近くにねじ孔7aを有する突起7が外側へ向けてそれぞれ突設され、両突起7間の中央部には、掘削刃用の挿入孔8が設けられ、他方の半割り部材3にも、同じ突起7と挿入孔8が設けられている。
そして、両半割り部材2,3を互いに連結した状態で、合計4つの突起7のねじ孔7aのいずれかに、例えば、2本のハンドル操作具9を螺合することにより、作業者がその2本のハンドル操作具9を把持して掘削具1を操作できるように構成されている。また、半割り部材2,3の挿入孔8は、少なくともいずれか一方に掘削刃10を挿入配置するためのもので、各挿入孔8は、図5に詳しく示すように、小径孔8aと大径孔8bからなり、両孔8a,8bの間には段部8cが設けられている。
【0018】
掘削刃10は、図1および図5に示すように、小径の回転軸10aとその回転軸10aの先端に連設された大径の掘削軸10bからなる棒状で、その長手方向軸心を回転中心軸Lとして回転する掘削刃で構成され、回転軸10aと掘削軸10bの間には段部10cが設けられ、回転軸10aの端部は雄ねじ11に構成されている。
掘削刃10の回転軸10aは、挿入孔8の小径孔8aより多少小径に設定され、掘削軸10bは、大径孔8bより多少小径に設定されていて、掘削刃10の回転軸10a側を挿入孔8の大径孔8b側から挿入すると、掘削刃10の段部10cが挿入孔8の段部8cに当接するように構成され、掘削刃10の掘削軸10bの先端と先端周部は、多数のダイヤモンドの粒からなる掘削部12に形成されている。
【0019】
掘削刃10は、掘削具本体4と別体に構成された駆動手段としての電動モータ13により回転駆動され、フレキシブルな回転力伝達部材としてのフレキシブルシャフト14を介して電動モータ13に連動連結されている。
すなわち、電動モータ13に連動連結されたフレキシブルシャフト14は、フレキシブルな被覆筒により被覆されて、その先端に回転軸10aの雄ねじ11が螺合する雌ねじ15aを有するチャック15が取り付けられている。回転軸10aの雄ねじ11とチャック15の雌ねじ15aは、電動モータ13によるフレキシブルシャフト14および掘削刃10の回転方向とは逆方向のねじで構成され、掘削刃10の回転に伴って雄ねじ11が徐々に螺合方向へ回転するため、雄ねじ11の螺合を規制するストッパ16がチャック15に設けられている。
【0020】
つぎに、上述した掘削具1を使用して配管Pを補修する補修方法について説明する。
例えば、補修対象となる配管Pが、図2に示すように、建築物の床を貫通して上方へ延出している場合であれば、半割り部材2,3の挿入孔8の大径孔8bが下方に位置するようにして、両半割り部材2,3を配管Pに外嵌してボルト5により互いに連結する。
つまり、把持部6によって配管Pを外嵌するのであり、それによって、掘削具本体4は、配管Pの中心軸PLに沿って上下に移動可能で、かつ、配管Pの中心軸PL周りに回転可能な状態で配管Pに取り付けられる。
また、半割り部材2,3の挿入孔8のいずれか一方に対し、挿入孔8の下方から掘削刃10の回転軸10a側を上にして掘削刃10を挿入する。それによって、掘削刃10は、その回転中心軸Lが配管Pの中心軸PLにほぼ平行となり、掘削刃10の雄ねじ11とチャック15の雌ねじ15aを螺合して、掘削刃10と電動モータ13を連動連結する。
【0021】
その後、電動モータ13を起動させて掘削刃10を回転駆動させるとともに、ハンドル操作具9を把持して掘削具本体4を下方へ移動させる。それによって、図5に示すように、掘削刃10の段部10cが挿入孔8の段部8cに当接するため、掘削具本体4をさらに下方へ移動させることにより、掘削刃10先端の掘削部12が配管Pの被貫通部材である床材Fに押し付けられて床材Fを掘削する。
このように、掘削刃10を回転駆動させながら、掘削具本体4を配管Pの中心軸PLに沿って下方へ移動させて掘削刃10の掘削部12を床材Fに押し付け、さらに、掘削具本体4を配管Pの中心軸PLの周りに回転させることによって、図3に示すように、配管Pの周囲に位置する床材Fを確実に掘削することができ、その後、配管Pの周囲の床材Fを除去して、配管Pの補修対象部位PXを露出させる。
【0022】
その後、補修対象部位PXやその周辺を浄化し、図4に示すように、補修対象部位PXの状況に応じて、例えば、軽度の腐食であれば、補修材17として塗料を使用し、また、腐食が進んでいれば、補修材17として金属粉入りのエポキシ樹脂製パテを使用して、補修対象部位PXとその周辺を被覆して補修する。
そして、補修した配管Pと床材Fとの間の隙間にモルタル、シリコンコーキング、水膨潤性ゴム、各種の樹脂などの充填材18を充填し、さらに、配管Pの周りに樹脂製化粧板19を外嵌し、樹脂製化粧板19により充填材18の表面を覆って、配管Pの補修を完了する。
【0023】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、掘削具本体4の把持部6を配管Pに外嵌した状態で、掘削刃10の回転中心軸Lが配管Pの中心軸PLとほぼ平行になるように構成した掘削具1を示したが、掘削刃10の掘削軸10b側が配管Pに近接し、回転軸10a側が配管Pから遠ざかる方向へ若干傾斜するように配置して構成することもできる。
また、電動モータ13を掘削具本体4と別体に構成した例を示したが、電動モータ13を掘削具本体4に取り付けて、掘削刃10と電動モータ13を直接連動連結することもできる。
【0024】
(2)先の実施形態では、配管Pの周りに樹脂製化粧板19を外嵌し、充填材18の表面を覆って補修する方法を示したが、補修対象となる配管Pの種類や使用目的、あるいは、周辺の状況によっては、樹脂製化粧板19を使用せずに補修することも可能である。
なお、本発明の対象となる配管Pは、ガス管や下水道管をはじめとして、各種の流体を通流させるための管のみならず、流体を通流させない管、具体的には、ベランダなどに設けられる支柱用の管なども含むものとし、さらに、その配管Pが、先の実施形態のように建築物の床を貫通する場合に限らず、側壁や天井などを貫通する場合、さらには、床や壁などを貫通することなく単に埋設されている場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】配管補修用掘削具の分解斜視図
【図2】配管補修方法の工程を示す説明図
【図3】配管補修方法の工程を示す説明図
【図4】配管補修方法の工程を示す説明図
【図5】配管補修用掘削具の要部の断面図
【符号の説明】
【0026】
1 掘削具
4 掘削具本体
6 把持部
10 掘削刃
12 掘削部
13 駆動手段
14 回転力伝達部材
17 補修材
18 充填材
19 樹脂製化粧板
L 掘削刃の回転中心軸
P 配管
PL 配管の中心軸
PX 配管の補修対象部位
F 被貫通部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に対してその配管の中心軸に沿って移動可能で、かつ、配管の中心軸周りに回転可能な状態で外嵌する把持部を有する掘削具本体と、前記配管が貫通する被貫通部材を掘削するために掘削具本体に取り付けられる掘削刃と、その掘削刃を回転駆動する駆動手段を備え、前記駆動手段による掘削刃の回転駆動と掘削具本体の配管の中心軸に対する回転および移動によって、前記配管の周囲に位置する前記被貫通部材を掘削するように構成されている配管補修用掘削具であって、
前記掘削刃が、その先端と先端周部に掘削部を有し、その長手方向軸心を回転中心軸として回転する棒状の掘削刃で構成されている配管補修用掘削具。
【請求項2】
前記棒状の掘削刃が、前記掘削具本体の把持部を配管に外嵌した状態で、その回転中心軸が前記配管の中心軸とほぼ平行になるように構成されている請求項1に記載の配管補修用掘削具。
【請求項3】
前記駆動手段が、前記掘削具本体と別体に構成されて、前記棒状の掘削刃に対してフレキシブルな回転力伝達部材を介して連動連結されている請求項1または2に記載の配管補修用掘削具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配管補修用掘削具を使用して配管を補修する配管補修方法であって、
前記掘削具により補修対象となる配管の周囲に位置する被貫通部材を掘削し、前記配管周囲の被貫通部材を除去して配管の補修対象部位を露出させ、その配管の補修対象部位を補修材で被覆した後、その配管と前記被貫通部材との間の隙間に充填材を充填して補修する配管補修方法。
【請求項5】
前記充填材として水膨潤ゴムを使用し、前記配管の周りに樹脂製化粧板を外嵌して前記水膨潤ゴムの表面を覆って補修する請求項4に記載の配管補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−223165(P2007−223165A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46995(P2006−46995)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】