説明

配線パターン形成方法、デバイスおよび電子機器

【課題】液滴吐出法による配線パターン形成方法において、配線パターンの端部あるいは折れ曲がり部におけるマイグレーションの発生を抑止することにより、デンドライトの発生を抑止し、配線間の短絡を抑止する。
【解決手段】液滴吐出ヘッド1と基板101とを所定方向に相対的に移動させ、前記液滴吐出ヘッド1に形成された複数の吐出ノズルから、前記基板101に対して液状材料を液滴として吐出し、前記基板101上に所定の配線パターンを形成する方法において、前記配線パターンの端部を先細り形状にして、または折れ曲がり部を曲線状にして前記配線パターンを形成する工程を有することを特徴とする配線パターン形成方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドから基板に対して液状材料を吐出することにより、所定のパターンを形成する配線パターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液滴吐出法は、プリント配線、有機EL素子など様々な製品において、作業性が高く、安価であるにもかかわらず、細かい制御が可能な製造方法として使われ始めている。
【0003】
電子回路又は集積回路等に使われる配線パターンの形成には、従来、リソグラフィー法が用いられてきた。しかしながら、リソグラフィー法は真空装置など大がかりな設備と複雑な工程を必要とすること、および材料使用効率も数%程度であり材料のほとんどを廃棄しなくてはならないことから、製造コストが非常に高いという問題点があった。そこで、リソグラフィー法に替わるプロセスとして、機能性材料を含む液体を液滴の状態で吐出させて基材に直接パターニングする液滴吐出法が検討され始めた。
【0004】
例えば、特許文献1には、導電性微粒子を分散させた液体を液滴吐出法にて基板に直接パターン塗布し、その後、熱処理やレーザー照射を行って導電膜パターンに変換し、配線パターンを形成する方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献2には、前記液滴吐出法を用いて配線パターンを形成する工程において、基板に所定の前処理を行い、かつ液滴の着弾方法を工夫することによって、断線や短絡等の欠陥の発生を抑止できることが開示されている。
【0006】
しかし、前記のようにして形成した配線パターンでも、隣接する配線同士の間で電圧の極性が異なる電流を流すと配線間の電界により配線パターンにおいてマイグレーションが発生し、図1に示すように、デンドライトを生じる場合があった。特に、マイグレーションは、配線パターンの外形の輪郭が角張った部分、たとえば配線パターンの折れ曲がり部や配線パターンの端部において発生しやすい傾向がある。これら配線パターンの折れ曲がり部や端部が別の配線パターンに隣接している場合に、配線パターンに電流を流すと、成長したデンドライトが別の配線パターンに到達して、配線パターン同士で短絡を生じさせるおそれがあった。
【特許文献1】米国特許第5132248号明細書
【特許文献2】特開2004−146796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、配線パターンの端部あるいは折れ曲がり部におけるマイグレーションの発生を抑止して、デンドライトの発生を抑止するか、あるいはデンドライトの成長方向を制御することによって、配線間の短絡を抑止することが可能な液滴吐出法による配線パターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。すなわち、本発明の配線パターン形成方法は、液滴吐出ヘッドと基板とを所定方向に相対的に移動させ、前記液滴吐出ヘッドに形成された複数の吐出ノズルから、前記基板に対して液状材料を液滴にして吐出し、前記基板上に所定の配線パターンを形成する方法において、前記配線パターンの端部を先細り形状にして、または折れ曲がり部を曲線状にして前記パターンを形成する工程を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の配線パターン形成方法は、前記端部において、前記配線パターンの走査方向における液滴吐出の数を段階的に減らすとともに、前記液滴吐出の位置を前記配線パターンの非走査方向に半ピッチずつ段階的にずらすことによって、前記端部を先細り形状にして前記配線パターンを形成する工程を有することを特徴とする
【0010】
また、本発明の配線パターン形成方法は、前記折れ曲がり部において、前記配線パターンの折れ曲がり部における液滴吐出の数を増減させることにより、前記折れ曲がり部を曲線状にして前記配線パターンを形成する工程を有することを特徴とする。
【0011】
特に、本発明は、隣接する配線パターン間で電圧の極性の異なる電流を流す場合に用いると良い。
【0012】
本発明のデバイスは、前記配線パターン形成方法を用いて、基板上に所定の配線パターンが形成されたことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の電子機器は、前記デバイスを備えたことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、配線パターンの端部あるいは折れ曲がり部におけるマイグレーションの発生を抑止して、デンドライトの発生を抑止するか、あるいはデンドライトの成長方向を制御することによって、配線間の短絡を抑止することが可能な液滴吐出法による配線パターン形成方法を提供できる。
【0015】
さらに、前記配線パターン形成方法を用いることによって、配線間の短絡を抑止することが可能なデバイスおよび電子機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
図2は、本実施形態の配線パターン形成方法に用いられる液滴吐出ヘッド1を備えた液滴吐出装置IJの概略外観斜視図である。図2において、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と、X軸方向駆動軸4と、Y軸方向ガイド軸5と、制御装置6と、ステージ7と、クリーニング機構8と、基台9と、ヒータ15とを備えている。前記ステージ7は、この液滴吐出装置IJにより液滴が吐出される基板101を支持するものであって、基板101を基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。
【0017】
液滴吐出ヘッド1は、後述する複数の吐出ノズル10を備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッド1であり、長手方向とY軸方向とを一致させている。前記吐出ノズル10は、液滴吐出ヘッド1の下面にY軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド1の吐出ノズル10からは、ステージ7に支持されている基板101に対して、例えば導電性微粒子を含む液状材料が吐出される。
【0018】
前記液滴吐出ヘッド1は、液滴吐出法により液状材料を液滴の状態で定量的に吐出可能であり、例えば1〜300ナノグラムの液状材料を定量的に断続して滴下可能な装置である。
【0019】
液滴吐出方式としては、圧電体素子の体積変化により液状材料を吐出させるピエゾジェット方式であっても、熱の印加により急激に蒸気が発生することにより液状材料を吐出させる方式であってもよい。
【0020】
前記液状材料とは、液滴吐出ヘッド1の吐出ノズル10から吐出可能な粘度を備えた媒体をいう。水性であるか油性であるかを問わない。ノズル等から吐出可能な流動性、すなわち粘度を備えていれば十分で、固体物質が混入していても全体として液状材料であればよい。また、液状材料に含まれる材料は、溶媒中に微粒子として分散されたものの他に、融点以上に加熱されて溶解されたものでもよく、溶媒の他に染料や顔料その他の機能性材料を添加したものであってもよい。また、基板101はフラット基板を指す他、曲面状の基板であってもよい。さらにパターン形成面の硬度が硬い必要はなく、ガラスやプラスチック、金属以外に、フィルム、紙、ゴム等可撓性を有するものの表面であってもよい。
【0021】
図3は液滴吐出ヘッド1をノズル面側(基板101との対向面側)から見た図である。液滴吐出ヘッド1は、複数のヘッド部21と、これらヘッド部21を搭載したキャリッジ部22とを備えている。ヘッド部21のノズル面24には液状材料を液滴の状態で吐出する複数の吐出ノズル10が設けられている。ヘッド部21(ノズル面24)のそれぞれは平面視矩形状であって、吐出ノズル10は、ヘッド部21の長手方向である略Y軸方向に沿って一定間隔で列状に、且つヘッド部21の幅方向である略X軸方向に間隔をあけて2列でノズル面24のそれぞれに複数(例えば、1列180ノズル、合計360ノズル)設けられている。また、ヘッド部21は、吐出ノズル10を基板101側に向けるとともに、Y軸に対して所定角度傾いた状態で略Y軸方向に沿って列状に、且つX軸方向に所定間隔をあけて2列に配置された状態でキャリッジ部22に複数(図2では1列6個、合計12個)位置決めされて支持されている。
【0022】
ここで、液滴吐出ヘッド1は、この液滴吐出ヘッド1のY軸方向に対する取り付け角度を調整可能な角度調整機構(不図示)を備えている。この角度調整機構により、液滴吐出ヘッド1はY軸方向に対する角度θを可変とする。角度調整機構を駆動することにより、吐出ノズル10のそれぞれをY軸方向に並んで配置させることができ、また、吐出ノズル10の並び方向のY軸に対する角度を調整できる。
【0023】
図2に戻って、X軸方向駆動軸4には、X軸方向駆動モータ2が接続されている。X軸方向駆動モータ2は、ステッピングモータ等であり、制御装置6からX軸方向の駆動信号が供給されると、X軸方向駆動軸4を回転させる。X軸方向駆動軸4が回転すると、液滴吐出ヘッド1はX軸方向に移動する。
【0024】
Y軸方向ガイド軸5は、基台9に対して動かないように固定されている。ステージ7は、Y軸方向駆動モータ3を備えている。Y軸方向モータ3は、ステッピングモータ等であり、制御装置6からY軸方向の駆動信号が供給されると、ステージ7をY軸方向に移動する。
【0025】
制御装置6は、液滴吐出ヘッド1に液滴の吐出制御用の電圧を供給する。また、X軸方向駆動モータ2に液滴吐出ヘッド1のX軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y軸方向駆動モータ3にステージ7のY軸方向の移動を制御する駆動パルス信号を供給する。
【0026】
以上の機構により、液滴吐出装置IJは、液滴吐出ヘッド1と基板101を支持するステージ7とを相対的に走査しつつ基板101に対して液滴を吐出する。
【0027】
クリーニング機構8は、液滴吐出ヘッド1をクリーニングするものである。クリーニング機構8には、図示しないY軸方向の駆動モータが備えられている。このY軸方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y軸方向ガイド軸5に沿って移動する。クリーニング機構8の移動も制御装置6により制御される。
【0028】
ヒータ15は、ここではランプアニールにより基板101を熱処理する手段であり、基板101上に塗布された液状材料に含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。このヒータ15の電源の投入及び遮断も制御装置6により制御される。
【0029】
本実施形態において、液滴吐出装置IJは基板101上に配線パターンを形成する。したがって、液状材料には、配線パターン形成用材料である導電性微粒子が含まれている。液状材料は、導電性微粒子を所定の溶媒及びバインダー樹脂を用いてペースト化したものである。導電性微粒子としては、金、銀、銅、鉄等の金属微粒子が挙げられる。導電性微粒子の粒径は5〜100nmであることが好ましい。液滴吐出ヘッド1から基板101に吐出された液状材料は、ヒータ15で熱処理されることにより導電性膜に変換される。
【0030】
更に、配線パターン形成用の液状材料としては、有機金属化合物、有機金属錯体、及びそれに類するものを含む液状材料を用いることができる。有機金属化合物としては有機銀化合物を用いる場合、前記有機銀化合物をジエチレングリコールジエチルエーテルなどの溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を液状材料として用いる。さらに、前記流動体を熱処理又は光処理することで有機化合物成分が除去され、銀粒子が残留し、導電性が発現される。
【0031】
次に、本実施形態の配線パターン形成方法について説明する。
【0032】
図4は、本実施形態における配線パターン形成方法により形成した配線パターン40の一例を示す模式図である。前記配線パターン40は、本体部41および端部42とから構成されている。以下、図5〜図7を用いて、前記配線パターン形成方法について説明する。
【0033】
図5(a)は、液滴吐出ヘッド1およびステージ7を動かして(1回目の走査)、液滴吐出ヘッド1に設けられている吐出ノズル10aから、ステージ7上に設置された基板101に液滴を吐出した際の模式図である。この1回目の走査で吐出された液滴には、「1」を付している。なお、液滴吐出ヘッド1は長手方向をY軸方向に一致させて設定してあり、吐出ノズル10は、液滴吐出ヘッド1においてY軸方向に一定間隔bで設けられている。
【0034】
図5(b)は、図5(a)に示したA点における拡大図の一例を示した図である。基板101に対して吐出された液滴は、基板101に着弾することにより基板101上で濡れ拡がる。例えば、基板101に着弾した液滴は、直径cを有するように濡れ拡がる。前記液滴の直径cは、使用する液状材料の種類、前記液状材料に対する基板101の濡れ性、基板温度、吐出ノズル10の形状およびサイズなど様々な条件によって決定される。
【0035】
液滴吐出ヘッド1をX軸方向に走査しつつ、吐出ノズル10から基板101に対して液滴を吐出する際、液滴吐出ヘッド1に設けられている吐出ノズル10は、制御装置6の制御のもとで、X軸方向に所定の間隔で液滴を吐出する。本実施形態では、液滴吐出間隔eは0.9×cに設定されている。そのため、基板101上に形成された隣接した液滴は、お互いに直径方向において10%の長さだけ重なる。こうすることにより、円状の液滴によって配線パターンが形成される際に生じる配線パターンにおける空隙部を、重なり長さdの部分の液滴が広がることによって埋めることができる。また、重なり長さdが小さいので、過剰な液状材料によって形成されるバルジと呼ばれる隆起の発生をも抑制することができる。
【0036】
なお、図5では、隣接する液滴が直径方向に10%重なるように配置されているが、前記重なり長さdは、液状材料の特性、液状材料に対する基板の濡れ性、基板温度、ノズル形状およびサイズなど様々な条件を考慮して、最適な値を設定する。一般に、1%〜30%の範囲で設定するのが好ましい。過剰に重なる条件で液滴を吐出することは、過剰な液状材料によって形成されるバルジと呼ばれる隆起の発生が生じる場合があるので好ましくないためである。
【0037】
図6は、2回目の走査により、吐出ノズル10aから基板101に液滴を吐出した一例を示す模式図である。まず、ステージ7を液滴吐出間隔eだけY軸方向にステップ移動させ、吐出ノズル10aを初期位置fから位置gに移動する。次に、液滴吐出ヘッド1をX軸方向に走査させるとともに、1回目の走査の場合と同様に、液滴吐出間隔eで液滴を吐出する。なお、この2回目の走査で吐出された液滴には「2」を付している。
【0038】
図7は、前記配線パターン40の端部42を先細り形状にする一例を示す模式図である。まず、ステージ7をe/2(以下、半ピッチ)だけ−Y軸方向にステップ移動させ、吐出ノズル10aを位置gから位置hに移動する。次に、液滴吐出ヘッド1を配線パターン40の端部42に移動し、液滴を吐出する。この3回目の走査で吐出された液滴には「3」を付している。以上のようにして、図4に示した実施形態の配線パターン40を形成する。
【0039】
図8(a)は、本実施形態の配線パターン形成方法を用いて形成した配線パターン40の別の一例を示した模式図である。配線パターン40は本体部41と先細り形状とされた端部42とから構成されている。以下、図8(b)を用いて、前記配線パターン形成方法について説明する。
【0040】
前記配線パターン40の本体部41は、前実施形態の場合と同様にして形成する。まず、初期位置fから、液滴吐出ヘッド1をX軸方向に走査しつつ、液滴吐出間隔eで液滴を吐出する(1回目の走査)。次に、ステージ7をY軸方向に液滴吐出間隔eだけ移動し、吐出ノズル10aを位置fから位置gに移動した後、液滴吐出ヘッド1をX軸方向に走査しつつ、液滴吐出間隔eで液滴を吐出する(2回目の走査)。前記操作を繰り返し、3回目および4回目の走査を行い、本実施形態の配線パターン40の本体部41を形成する。
【0041】
次に、吐出ノズル10aを位置hに移動する。位置hは、ステージ7を初期位置gから半ピッチだけ−Y軸方向にステップ移動させた位置である。次に、吐出ノズル10aを配線パターン40の端部42に移動した後、基板101をY軸方向に走査させるとともに、液滴吐出間隔eで液滴を吐出する。この5回目の走査で吐出された液滴には「5」を付している。
【0042】
さらに、吐出ノズル10aを位置gに移動する。次に、吐出ノズル10aを配線パターン40の端部42に移動した後、基板101をY軸方向に走査させるとともに、液滴吐出間隔eで液滴を吐出する。この6回目の走査で吐出された液滴には「6」を付している。以上のようにして、図8(a)に示す実施形態の配線パターン40を形成する。
【0043】
図9は、図8(a)に示した配線パターン40を作成する別の方法の一例を示した模式図である。配線パターン40の本体部41は、前記実施形態と同様の方法で作成する。次に、吐出ノズル10aを位置iに移動する。位置iは、ステージ7を初期位置gから半ピッチだけ−Y軸方向にステップ移動させた位置である。さらに、液滴吐出ヘッド1を配線パターン40の端部42に移動した後、液滴を吐出する(5回目の走査)。このとき、液滴吐出量を増加させることによって、従来のものより液滴直径cが大きい液滴を吐出させる。このような方法によっても、配線パターン40の端部42を先細り形状とすることができる。
【0044】
図10(a)は、本実施形態の配線パターン形成方法を用いて形成した配線パターン40のさらに別の一例を示した模式図である。配線パターン40は、互いに交差する方向に位置する2つの本体部41と前記本体部同士を連結する曲線状の折れ曲がり部43とから構成されている。以下、図10(b)を用いて、前記配線パターン形成方法について説明する。
【0045】
図10(b)は、吐出ノズル10aから基板101に液滴を吐出した際の模式図である。前実施形態の場合と同様に、まず、初期位置fから、液滴吐出ヘッド1をX軸方向に走査しつつ、液滴吐出間隔eで液滴を吐出する(1回目の走査)。次に、ステージ7をY軸方向に液滴吐出間隔eだけ移動し、吐出ノズル10aを位置fから位置gに移動した後、液滴吐出ヘッド1をX軸方向に走査しつつ、液滴吐出間隔eで液滴を吐出する(2回目の走査)。前記操作を繰り返し、3回目〜9回目の走査を行い、本実施形態の配線パターン40を形成する。それぞれn回目の走査で吐出した液滴には「n」の符号を付けている。
【0046】
なお、前記配線パターン40の折れ曲がり部43において、折れ曲がり部の外側43bは、1個の液滴を減らすことによって、配線の外側のラインを曲線状とする。逆に、折れ曲がり部の内側43aは、1個の液滴を加えることによって、配線の外側のラインを曲線状とする。ここで、増減させる液滴の数は1個とは限らず、配線パターンの幅、形状等によって、配線の外側のラインがもっともなだらかな曲線状となるように設定する。
【0047】
以下、本発明の実施形態の効果について説明する。
本発明の配線パターン形成方法は、液滴吐出ヘッド1と基板101とを所定方向に相対的に移動させ、前記液滴吐出ヘッド1に形成された複数の吐出ノズル10から、前記基板101に対して液状材料を吐出し、前記基板101上に所定の配線パターン40を成膜する工程を有する配線パターン形成方法において、前記配線パターン40の端部42を先細りにして、または折れ曲がり部43を曲線状にして前記配線パターン40を形成する工程を有することを特徴とする構成なので、前記配線パターン40が鋭角な端部42または折れ曲がり部43を有する場合、前記配線パターン40に電界を印加し電流を流すときに、前記端部42および折れ曲がり部43の鋭角外周部分に発生する電界の局所場をなくすことができ、その結果、その電界の局所場に起因する不純物金属等のマイグレーションの発生を抑止し、デンドライトの発生を抑止し、配線間の短絡を防止することができる。
【0048】
本体部41に先細り形状とされた端部42を形成した配線パターン40の場合は、先細り形状とされた端部42の先端においてデンドライトが発生する場合があるが、配線パターン間の電界の方向に沿うので、端部42の先端における電界の方向を、たとえば、本体部41の長手方向と一致するように設定することで、隣接する配線パターン40の方向にデンドライトが成長するおそれがなく、配線間の短絡の発生を防止することができる。
【0049】
また、折れ曲がり部43を有する配線パターン40の場合は、折れ曲がり部43における液滴の吐出パターンを制御して、折れ曲がり部の外形を曲線状とすることで、マイグレーションの発生を抑止し、デンドライトの発生が抑止し、配線間の短絡を防止することができる。
【0050】
また、本発明の配線パターン形成方法を用いて、前記配線間の短絡を抑止させたデバイスを製造することができ、さらに、前記デバイスを用いた電子機器を製造することができる。なお、本発明におけるデバイスは、所定の配線パターンを有する素子及び装置を含む。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこの実施例にのみ限定されるものではない。
【0052】
所定の洗浄工程を行ったプラスチック基板を5枚用意した。液滴吐出装置の所定の位置に前記基板を5枚セットし、図11に示すように、液滴吐出法により、前記各基板上に4本1組のくし型ライン配線パターンを、向き合うように2組形成した。各基板のライン配線パターンを基板の上部側からNo.1ライン配線パターンとし、以降No.2、No.3、…、No.8ライン配線パターンとした。ここで、各ライン配線パターンは、幅120μm、長さ10mm、ライン間隔30μmで形成した。
また、ここで用いた金属微粒子溶液は、水溶性Ag微粒子溶液であった。
【0053】
各基板において、前記ライン配線パターンの本体部は、240μm間隔に並べられた8つの液滴ノズルから、7ngの液滴を走査方向に36μm毎に連続して吐出させることにより形成した。なお、前記プラスチック基板上で、7ngの液滴は、直径40μmの液滴を形成した。
【0054】
前記ライン配線パターンの本体部は幅方向を4つの液滴で構成し、端部においては、液滴の数を3つから2つと段階的に減らすとともに、各段階でステージを半ピッチ(18μm)ずらすことによって、先細り形状とした。
【0055】
各基板の奇数番号のライン配線パターンに陰極、偶数番号のライン配線パターンに陽極の電極をつなぎ、3V/μmの電界、90Vの電圧を15分間印加した。電界印加後、電子顕微鏡により5枚の基板のライン配線パターン周辺部を観察したが、何の変化も見られなかった。
【0056】
(比較例1)
次に、各ライン配線パターンの端部を先細り形状としなかった他は実施例と同様にして、5枚の基板上にライン配線パターンを形成した。
【0057】
実施例と同様に、奇数番号のライン配線パターンに陰極、偶数番号のライン配線パターンに陽極の電極をつなぎ、3V/μmの電界、90Vの電圧を15分間印加した。5枚の基板のうち1枚の基板の4本のラインにおいて、配線間の短絡が発生した。また、電子顕微鏡により5枚の基板のライン配線パターン周辺部を観察すると、5枚いずれの基板においても、また、各基板上のすべてのライン配線パターンの端部において、デンドライトと呼ばれる析出不純物の平面ツリー構造が生じていた。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、液滴吐出ヘッドから基板に対して液状材料を液滴として吐出し、配線パターンを形成する方法に関するものである。プリント基板においては、隣接する配線に電圧の極性が異なる電流を流す配線パターンならば、どのようなものにも応用することができる。たとえば、SAWフィルタのくし型電極や血糖値センサなどである。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】デンドライトが発生した配線パターンの一例を示す概略図である。
【図2】本発明の配線パターン形成方法に用いられる液滴吐出装置を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の液滴吐出ヘッドの概略外観図である。
【図4】本発明の配線パターン形成方法により作成された配線パターンの一例を説明するための模式図である。
【図5】(a)は本発明の配線パターン形成方法の一例を説明するための模式図であって、(b)は(a)に示すA点における拡大図の一例を示す図である。
【図6】本発明の配線パターン形成方法の一例を説明するための模式図である。
【図7】本発明の配線パターン形成方法の一例を説明するための模式図である。
【図8】(a)は本発明の配線パターン形成方法により作成された配線パターンの一例を説明するための模式図であって、(b)は本発明の配線パターン形成方法の一例を説明するための模式図である。
【図9】本発明の配線パターン形成方法の一例を説明するための模式図である。
【図10】(a)は本発明の配線パターン形成方法により作成された配線パターンの一例を説明するための模式図であって、(b)は本発明の配線パターン形成方法の一例を説明するための模式図である。
【図11】実施例1および比較例1において作成したライン配線パターンの一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0060】
1…液滴吐出ヘッド、2…X軸方向駆動モータ、3…Y軸方向駆動モータ、4…X軸方向駆動軸、5…Y軸方向ガイド軸、6…制御装置、7…ステージ、8…クリーニング機構、9…基台、10…吐出ノズル、10a…吐出ノズル、15…ヒータ、21…ヘッド部、22…キャリッジ部、24…ノズル面、30…デンドライト、40…配線パターン、41…本体部、42…端部、43…折れ曲がり部、43a…折れ曲がり部の内側、43b…折れ曲がり部の外側、101…基板、IJ…液滴吐出装置、b…吐出ノズル間隔、c…液滴直径、d…隣接液滴の重なり長さ、e…液滴吐出間隔、f…吐出ノズル10aの初期位置、g…吐出ノズル10aの位置、h…吐出ノズル10aの位置、i…吐出ノズル10aの位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッドと基板とを所定方向に相対的に移動させ、前記液滴吐出ヘッドに形成された複数の吐出ノズルから、前記基板に対して液状材料を液滴として吐出し、前記基板上に所定の配線パターンを形成する方法において、
前記配線パターンの端部を先細り形状にして、または折れ曲がり部を曲線状にして前記配線パターンを形成する工程を有することを特徴とする配線パターン形成方法。
【請求項2】
前記端部において、前記配線パターンの走査方向における液滴吐出の数を段階的に減らすとともに、前記液滴吐出の位置を前記配線パターンの非走査方向に半ピッチずつ段階的にずらすことによって、前記端部を先細り形状にして前記配線パターンを形成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の配線パターン形成方法。
【請求項3】
前記折れ曲がり部において、前記配線パターンの折れ曲がり部における液滴吐出の数を増減させることにより、前記折れ曲がり部を曲線状にして前記配線パターンを形成する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の配線パターン形成方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3における配線パターン形成方法を用いて、基板上に所定の配線パターンが形成されたことを特徴とするデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のデバイスを備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−135621(P2008−135621A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321472(P2006−321472)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】