説明

配線回路基板およびその製造方法ならびに燃料電池

【課題】導体層の腐食が防止されるとともに導体層の抵抗が低減された配線回路基板およびその製造方法ならびに配線回路基板を備えた燃料電池を提供する。
【解決手段】主面E2がベース絶縁層2に対向するように、所定のパターンを有する導体層31がベース絶縁層2上に形成される。導体層31の主面E1および側面E3上に酸に対して導体層31よりも高い耐食性を有するバリア層32が形成されるとともに、導体層31の主面E1および側面E3ならびにバリア層32が導電性の被覆層6a〜6nにより被覆される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法ならびに配線回路基板を備えた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等のモバイル機器には、小型でかつ高容量の電池が求められる。そこで、リチウム二次電池等の従来の電池に比べて、高エネルギー密度を得ることが可能な燃料電池の開発が進められている。燃料電池としては、例えば直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cells)がある。
【0003】
直接メタノール型燃料電池では、メタノールが触媒によって分解され、水素イオンが生成される。その水素イオンと空気中の酸素とを反応させることにより電力を発生させる。この場合、化学エネルギーを極めて効率よく電気エネルギーに変換することができ、非常に高いエネルギー密度を得ることができる。
【0004】
特許文献1には、燃料極、空気極および高分子電解質膜からなる膜電極接合体が基板上の導体層間に配置された燃料電池が記載されている。膜電極接合体の燃料極および空気極と基板上の導体層とは電気的に接触している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−200064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている燃料電池においては、燃料極に燃料を流通するための流通構造および空気極に空気を流通するための流通構造が設けられる。しかしながら、燃料極および空気極に長時間燃料が接触すると、燃料極および空気極が腐食する。そのため、燃料極および空気極の抵抗が増加する。その結果、燃料極および空気極の集電効率が低下する。
【0007】
本発明の目的は、導体層の腐食が防止されるとともに導体層の抵抗が低減された配線回路基板およびその製造方法ならびに配線回路基板を備えた燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る配線回路基板は、絶縁層と、所定のパターンを有しかつ第1および第2の主面ならびに側面を有するとともに、第2の主面が絶縁層と対向するように絶縁層上に形成された導体層と、導体層の第1の主面および側面の少なくとも一部の領域上に形成され、酸に対して導体層よりも高い耐食性を有するバリア層と、導体層の第1の主面および側面ならびにバリア層を被覆する導電性の被覆層とを備えるものである。
【0009】
この配線回路基板においては、第2の主面が絶縁層に対向するように、所定のパターンを有する導体層が絶縁層上に形成される。導体層の第1の主面および側面の少なくとも一部の領域上に酸に対して導体層よりも高い耐食性を有するバリア層が形成されるとともに、導体層の第1の主面および側面ならびにバリア層が導電性の被覆層により被覆される。
【0010】
この場合、蟻酸等の燃料電池の副生成物が導体層に付着することが防止される。それにより、導体層の腐食が防止される。また、導体層と被覆層との間の接触抵抗の増加が防止される。その結果、燃料電池の電力を効率的に外部に供給することができる。
【0011】
(2)バリア層は、複素環化合物を含んでもよい。この場合、バリア層の酸に対する耐食性を容易に高くすることができる。
【0012】
(3)複素環化合物は、窒素を含んでもよい。この場合、バリア層の酸に対する耐食性をより容易に高くすることができる。
【0013】
(4)複素環化合物は、アゾール系化合物を含んでもよい。この場合、バリア層の酸に対する耐食性をさらに容易に高くすることができる。
【0014】
(5)複素環化合物は、テトラゾール誘導体、ジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体およびトリアゾール誘導体のうち少なくとも1つを含んでもよい。この場合、バリア層の酸に対する耐食性をさらに容易に高くすることができる。
【0015】
(6)複素環化合物は、下記式(1)で表されるテトラゾール誘導体を含み、R1およびR2は、同じまたは異なり、水素原子または置換基であってもよい。この場合、バリア層の酸に対する耐食性をさらに容易に高くすることができる。
【0016】
【化1】

【0017】
(7)複素環化合物は、下記式(2)で表されるベンゾトリアゾール誘導体を含み、R3およびR4は、同じまたは異なり、水素原子または置換基であってもよい。この場合、バリア層の酸に対する耐食性をさらに容易に高くすることができる。
【0018】
【化2】

【0019】
(8)バリア層の厚みは、1nm以上1000nm以下であってもよい。この場合、導体層の腐食を十分に防止することができる。また、導体層と被覆層との密着性および導体層と被覆層との間の導電性を向上させることができる。
【0020】
(9)被覆層は、樹脂組成物を含んでもよい。この場合、配線回路基板のフレキシブル性が良好になる。
【0021】
(10)樹脂組成物は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリイミド樹脂のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0022】
この場合、配線回路基板のフレキシブル性がより良好になる。特に、樹脂組成物がフェノール樹脂またはエポキシ樹脂を含む場合、配線回路基板のフレキシブル性が良好になりかつ耐薬品性が良好になる。
【0023】
(11)被覆層は、導電材料を含んでもよい。この場合、被覆層の導電性をより十分に確保することができる。
【0024】
(12)導電材料は、炭素材料および金属材料のうち少なくとも一方を含んでもよい。この場合、被覆層の導電性をさらに十分に確保することができる。
【0025】
(13)第2の発明に係る燃料電池は、電池要素と、電池要素の電極として配置される第1の発明に係る配線回路基板と、電池要素および配線回路基板を収容する筺体とを備えるものである。
【0026】
この燃料電池においては、電池要素および上記の配線回路基板が筺体内に収容される。電池要素の電力は、配線回路基板の導体層を通して筺体の外部に取り出される。
【0027】
配線回路基板においては、酸等の燃料電池の副生成物が導体層に付着することが防止される。それにより、導体層の腐食が防止される。また、導体層と被覆層との間の接触抵抗の増加が防止される。その結果、燃料電池の電池要素の電力を効率的に外部に供給することができる。
【0028】
(14)第3の発明に係る配線回路基板の製造方法は、所定のパターンを有しかつ第1および第2の主面ならびに側面を有する導体層を、第2の主面が絶縁層に対向するように絶縁層上に形成する工程と、導体層の第1の主面および側面の少なくとも一部の領域上に、酸に対して導体層よりも高い耐食性を有するバリア層を形成するとともに、導体層の第1の主面および側面ならびにバリア層を被覆する導電性の被覆層を形成する工程とを含むものである。
【0029】
この配線回路基板の製造方法においては、第2の主面が絶縁層に対向するように、所定のパターンを有する導体層が絶縁層上に形成される。導体層の第1の主面および側面の少なくとも一部の領域上に酸に対して導体層よりも高い耐食性を有するバリア層が形成されるとともに、導体層の第1の主面および側面ならびにバリア層が導電性の被覆層により被覆される。
【0030】
この場合、蟻酸等の燃料電池の副生成物が導体層に付着することが防止される。それにより、導体層の腐食が防止される。また、導体層と被覆層との間の接触抵抗の増加が防止される。その結果、燃料電池の電力を効率的に外部に供給することができる。
【0031】
(15)バリア層および被覆層を形成する工程は、樹脂組成物、導電材料および複素環化合物を混合することにより被覆層前駆体を調製する工程と、被覆層前駆体を導体層の第1の主面および側面の少なくとも一部の領域上に塗布する工程と、被覆層前駆体を加熱する工程とを含んでもよい。
【0032】
この場合、樹脂組成物、導電材料および複素環化合物が混合されることにより被覆層前駆体が調製される。被覆層前駆体が導体層の第1の主面および側面上に塗布された後、被覆層前駆体が加熱される。これにより、導体層の第1の主面および側面の少なくとも一部の領域上に複素環化合物からなるバリア層が形成され、バリア層上に導電材料を含む樹脂組成物からなる被覆層が形成される。このようにして、導体層の第1の主面および側面にバリア層を容易に形成するとともに、導体層の第1の主面および側面ならびにバリア層を被覆層により容易に被覆することができる。
【0033】
(16)バリア層および被覆層を形成する工程は、導体層の第1の主面および側面の少なくとも一部の領域上に、酸に対して導体層よりも高い耐食性を有するバリア層を形成する工程と、導体層の第1の主面および側面ならびにバリア層を被覆する導電性の被覆層を形成する工程とを含んでもよい。
【0034】
この場合、導体層の第1の主面および側面の少なくとも一部の領域上にバリア層が形成された後に、導体層の第1の主面および側面ならびにバリア層が被覆層により被覆される。これにより、導体層の第1の主面および側面の少なくとも一部の領域上にバリア層を確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、配線回路基板の導体層の腐食を防止するとともに導体層の抵抗が低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施の形態に係るフレキシブル配線回路基板の図である。
【図2】FPC基板の第1の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図3】FPC基板の第1の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図4】FPC基板を用いた燃料電池の外観斜視図である。
【図5】燃料電池内における作用を説明するための図である。
【図6】FPC基板の第2の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図7】実施例1〜7および実施例9〜12ならびに比較例1,2におけるFPC基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図8】実施例8におけるFPC基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図9】実施例1〜12および比較例1,2におけるFPC基板の断面図である。
【図10】実施例1〜12および比較例1,2におけるFPC基板の接触抵抗の測定方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態に係る配線回路基板について説明する。なお、本実施の形態では、配線回路基板の例として、屈曲性を有するフレキシブル配線回路基板について説明する。
【0038】
(1)フレキシブル配線回路基板の構成
図1(a)は本発明の一実施の形態に係るフレキシブル配線回路基板の平面図であり、図1(b)は図1(a)のフレキシブル配線回路基板のA−A線断面図である。以下の説明においては、フレキシブル配線回路をFPC基板と略記する。
【0039】
図1(a)および図1(b)に示すように、FPC基板1は、例えばポリイミドからなるベース絶縁層2を備える。ベース絶縁層2の厚みは、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上50μm以下がより好ましく、5μm以上30μm以下がさらに好ましい。ベース絶縁層2の厚みが1μm以上である場合、ベース絶縁層2の耐久性および取り扱い性が向上する。また、ベース絶縁層2の厚みが100μm以下である場合、ベース絶縁層2のフレキシブル性が向上するとともに、FPC基板1の薄型化が容易になる。
【0040】
ベース絶縁層2は第1絶縁部2a、第2絶縁部2b、第3絶縁部2cおよび第4絶縁部2dからなる。第1絶縁部2aおよび第2絶縁部2bは、それぞれ矩形形状を有し、互いに隣接するように一体的に形成される。以下、第1絶縁部2aと第2絶縁部2bとの境界線に平行な辺を側辺と称し、第1絶縁部2aおよび第2絶縁部2bの側辺に垂直な一対の辺を端辺と称する。
【0041】
第3絶縁部2cは、第1絶縁部2aの1つの角部における側辺の一部から延出する。第4絶縁部2dは、第1絶縁部2aの上記角部の対角に位置する第2絶縁部2bの角部における側辺の一部から延出する。
【0042】
第1絶縁部2aと第2絶縁部2bとの境界線上にベース絶縁層2をほぼ二等分するように折曲部B1が設けられる。後述のように、ベース絶縁層2は、折曲部B1に沿って折曲可能である。折曲部B1は、例えば線状の浅い溝であってもよく、または、線状の印等でもよい。あるいは、折曲部B1でベース絶縁層2を折曲可能であれば、折曲部B1に特に何もなくてもよい。ベース絶縁層2を折曲部B1に沿って折曲する場合、第1絶縁部2aと第2絶縁部2bとが対向する。この場合、第3絶縁部2cと第4絶縁部2dとは対向しない。
【0043】
第1絶縁部2aには、複数(本例では端辺方向に沿って4個かつ側辺方向に沿って5個の合計20個)の開口H1が形成される。また、第2絶縁部2bには、複数(本例では端辺方向に沿って4個かつ側辺方向に沿って5個の合計20個)の開口H2が形成される。
【0044】
ベース絶縁層2の一面には、矩形の集電部3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h,3i,3j、接続導体部3k,3l,3m,3nおよび引き出し導体部3o,3pが形成される。図1(b)に示すように、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pは、導体層31およびバリア層32により構成される。なお、図1(b)には集電部3c,3hのみが表されている。
【0045】
導体層31は、例えば銅からなり、主面E1,E2および側面E3を有する。側面E3は導体層30の外周面および開口の内周面を含む。集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pは、導体層31の主面E2がベース絶縁層2に対向するようにベース絶縁層2上に設けられる。集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pにおいて、導体層31の主面E1および側面E3はバリア層32により覆われている。導体層31の主面E2はバリア層32により覆われていない。
【0046】
導体層31の厚みは、1μm以上100μm以下が好ましく、5μm以上70μm以下がより好ましく、10μm以上50μm以下がさらに好ましい。導体層31の厚みが1μm以上である場合、導体層31の耐久性、取り扱い性および導電性が向上する。また、導体層31の厚みが100μm以下である場合、導体層31のフレキシブル性が向上するとともに、FPC基板1の薄型化が容易になる。
【0047】
バリア層32は、燃料電池における蟻酸等の副生成物が導体層31に付着することを防止するために設けられる。これにより、導体層31が腐食することが防止される。バリア層32は、複素環化合物からなることが好ましく、五員複素環化合物からなることがより好ましく、窒素を含む五員複素環化合物(アゾール系化合物)からなることがより好ましい。アゾール系化合物として、テトラゾール誘導体、ジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体またはトリアゾール誘導体等が挙げられる。この場合、バリア層の酸に対する耐食性を高くすることができる。
【0048】
下記式(1)はテトラゾール誘導体の構造の一例を示す。式(1)において、R1およびR2は、同じまたは異なり、水素原子または置換基である。置換基は、炭素数が1から12のアルキル基(C2n+1;n=1〜12)、フェニル基、アミノ基、メルカプト基、芳香族含有官能基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基またはカルボキシル基等である。
【0049】
【化3】

【0050】
テトラゾール誘導体として、1H−テトラゾール誘導体、5−アミノ−1H−テトラゾール誘導体、5−メチル−1H−テトラゾール誘導体または5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体等が挙げられる。
【0051】
ジアゾール誘導体として、イミダゾール誘導体またはピラゾール誘導体等が挙げられる。
【0052】
チアジアゾール誘導体として、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール誘導体または2−カルボキシルメチルチオ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール誘導体等が挙げられる。
【0053】
トリアゾール誘導体として、ベンゾトリアゾール誘導体、トリルトリアゾール誘導体、トリルトリアゾール塩、1H−1,2,3−トリアゾール誘導体、1H−1,2,4−トリアゾール誘導体、1,2,3−トリアゾール−4,5−ジカルボン酸、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール誘導体または3−アミノ−1,2,4−トリアゾール誘導体等が挙げられる。
【0054】
下記式(2)はベンゾトリアゾール誘導体の構造の一例を示す。式(2)において、R3およびR4は、同じまたは異なり、水素原子または置換基である。置換基は、炭素数が1から12のアルキル基(C2n+1;n=1〜12)、フェニル基、アミノ基、メルカプト基、芳香族含有官能基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基またはカルボキシル基等である。R3は、ベンゼン環のいずれの位置に配置されてもよい。
【0055】
【化4】

【0056】
ベンゾトリアゾール誘導体として、5−メチルベンゾトリアゾール誘導体、1H−ベンゾトリアゾール−5−カルボン酸、カルボキシベンゾトリアゾール誘導体、1H−4,5−メチルベンゾトリアゾール誘導体または2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール誘導体等が挙げられる。
【0057】
上記のアゾール系化合物として、テトラゾール誘導体またはベンゾトリアゾール誘導体が用いられることが好ましい。5−メチル−1H−テトラゾール誘導体、5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体、5−メチルベンゾトリアゾール誘導体またはトリルトリアゾール誘導体が用いられることがより好ましい。
【0058】
バリア層32の厚みは、1nm以上1000nm以下が好ましく、10nm以上500nm以下がより好ましい。バリア層32の厚みが1nm以上である場合、導体層31の腐食を十分に防止することができる。また、バリア層32の厚みが1000nm以下である場合、導体層31と後述する被覆層6a〜6nとの密着性が向上するとともに、導体層31と被覆層6a〜6nとの間の導電性が向上する。
【0059】
集電部3a〜3jの各々は長方形状を有する。集電部3a〜3eは、第1絶縁部2aの端辺に沿って平行に延びかつ第1絶縁部2aの側辺方向に沿って設けられる。ここで、集電部3a〜3eの各々は、第1絶縁部2aの端辺に平行に並ぶ4個の開口H1を含む第1絶縁部2aの領域に形成される。
【0060】
同様に、集電部3f〜3jは、第2絶縁部2bの端辺に沿って平行に延びかつ第2絶縁部2bの側辺方向に沿って設けられる。ここで、集電部3f〜3jの各々は、第2絶縁部2bの端辺に平行に並ぶ4個の開口H2を含む第2絶縁部2bの領域に形成される。
【0061】
この場合、集電部3a〜3eと集電部3f〜3jとは、折曲部B1を中心として対称な位置に配置される。
【0062】
接続導体部3k〜3nは、折曲部B1をまたぐように第1絶縁部2aおよび第2絶縁部2bにわたって形成される。接続導体部3kは集電部3bと集電部3fとを電気的に接続し、接続導体部3lは集電部3cと集電部3gとを電気的に接続し、接続導体部3mは集電部3dと集電部3hとを電気的に接続し、接続導体部3nは集電部3eと集電部3iとを電気的に接続する。
【0063】
第1絶縁部2aの開口H1上における集電部3a〜3eの部分には、開口H1よりも径大の開口H11が形成される。また、第2絶縁部2bの開口H2上における集電部3f〜3jの部分には、開口H2よりも径大の開口H12が形成される。
【0064】
引き出し導体部3oは、集電部3aの外側の短辺から第3絶縁部2c上に直線状に延びるように形成される。引き出し導体部3pは、集電部3jの外側の短辺から第4絶縁部2d上に直線状に延びるように形成される。
【0065】
集電部3aおよび引き出し導体部3oの一部を覆うように、第1絶縁部2a上に被覆層6aが形成される。これにより、引き出し導体部3oの先端部は被覆層6aに覆われずに露出する。この露出した引き出し導体部3oの部分を、引き出し電極5aと称する。また、集電部3b〜3eをそれぞれ覆うように、第1絶縁部2a上に被覆層6b,6c,6d,6eが形成される。集電部3a〜3eの開口H11内において、被覆層6a〜6eは第1絶縁部2aの上面に接する。
【0066】
集電部3jおよび引き出し導体部3pの一部を覆うように、第2絶縁部2b上に被覆層6jが形成される。これにより、引き出し導体部3pの先端部は被覆層6jに覆われずに露出する。この露出した引き出し導体部3pの部分を、引き出し電極5bと称する。また、集電部3f〜3iをそれぞれ覆うように、第2絶縁部2b上に被覆層6f,6g,6h,6iが形成される。集電部3f〜3jの開口H12内において、被覆層6f〜6jは第2絶縁部2bの上面に接する。
【0067】
接続導体部3k〜3nをそれぞれ覆うように、第1絶縁部2a上および第2絶縁部2b上に被覆層6k,6l,6m,6nが形成される。被覆層6a〜6nは、導電材料を含有した樹脂組成物からなる。そのため、被覆層6a〜6nは、導電性を保持しつつフレキシブル性を有する。これにより、FPC基板1を屈曲させて使用する場合でも、被覆層6a〜6nが破損することが十分に防止される。
【0068】
導電材料の混合量は、樹脂組成物の混合量100重量部に対し、1重量部以上90重量部以下が好ましく、10重量部以上70重量部以下がより好ましく、40重量部以上70重量部以下がさらに好ましい。導電材料の混合量が樹脂組成物の混合量100重量部に対して1重量部以上である場合、被覆層6a〜6nに導電性を付与することができる。また、導電材料の混合量が樹脂組成物の混合量100重量部に対して90重量部以下である場合、樹脂組成物を確実に硬化させることができる。
【0069】
被覆層6a〜6nの厚みは、1μm以上100μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましく、15μm以上40μm以下がさらに好ましい。被覆層6a〜6nの厚みが1μm以上である場合、被覆層6a〜6nの耐久性および取り扱い性が向上するとともに、被覆層6a〜6nが集電部3a〜集電部3j、接続導体部3l〜3nおよび引き出し導体部3o,3pから欠落することが防止される。また、被覆層6a〜6nの厚みが100μm以下である場合、被覆層6a〜6nのフレキシブル性が向上するとともに、FPC基板1の薄型化が容易になる。
【0070】
(2)FPC基板の第1の製造方法
図1に示したFPC基板1の製造方法を説明する。図2および図3は、FPC基板1の製造方法を説明するための工程断面図である。なお、図2および図3は、図1のFPC基板1のA−A線から見た工程断面図である。
【0071】
まず、図2(a)に示すように、例えばポリイミドからなる絶縁膜20と例えば銅からなる導体膜30とからなる2層CCL(Copper Clad Laminate:銅張積層板)を用意する。絶縁膜20の厚みは例えば25μmであり、導体膜30の厚みは例えば18μmである。
【0072】
次に、図2(b)に示すように、導体膜30上に所定のパターンを有するエッチングレジスト22が形成される。エッチングレジスト22は、例えば、ドライフィルムレジスト等により導体膜30上にレジスト膜を形成し、そのレジスト膜を所定のパターンで露光し、その後、現像することにより形成される。
【0073】
続いて、図2(c)に示すように、塩化第二鉄等のエッチング液を用いたエッチングにより、エッチングレジスト22の下の領域を除く導体膜30の領域が除去される。その後、図2(d)に示すように、エッチングレジスト22が剥離液により除去される。これにより、所定のパターンを有する導体層31が、絶縁膜20上に形成される。導体層31は、主面E1,E2および側面E3を有する。主面E2は絶縁膜20に接する。
【0074】
スパッタ、蒸着またはめっき等の一般的な方法により絶縁膜20上に導体層31が形成されてもよい。また、レーザ光または金型を用いて導体膜30が導体層31のパターンに打ち抜かれ、打ち抜かれた導体層31のパターンが接着剤等により絶縁膜20に接合されてもよい。
【0075】
次に、図3(a)に示すように、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように絶縁膜20上に被覆層前駆体60が塗布される。被覆層前駆体60の厚みは例えば25μmである。被覆層前駆体60は、例えば樹脂組成物と導電材料とが混合されることにより調製される。また、被覆層前駆体60には、テトラゾール誘導体等の上記の複素環化合物が混合される。
【0076】
続いて、図3(b)に示すように、被覆層前駆体60を30℃以上200℃以下の温度で0.15時間以上5時間以下乾燥させることにより、硬化処理が行われる。この場合、被覆層前駆体60に混合された複素環化合物が導体層31との界面に移動する。それにより、導体層31の主面E1および側面E3にテトラゾール誘導体からなるバリア層32が形成され、被覆層前駆体60の残りの部分が被覆層6a〜6nとなる。
【0077】
このようにして、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pが形成される。また、集電部3a〜3eには複数の開口H11が形成され、集電部3f〜3jには複数の開口H12が形成される。さらに、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pを覆うように被覆層6a〜6nが形成される。ここで、引き出し電極5a,5bが被覆層6a,6jから露出する。なお、図3(b)には集電部3c,3h、接続導体部3l、引き出し電極5aおよび被覆層6a,6c,6h,6lのみが表されている。
【0078】
最後に、図3(c)に示すように、絶縁膜20が所定の形状に切断されることにより、ベース絶縁層2が形成される。また、ベース絶縁層2には複数の開口H1,H2が形成される。これにより、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3n、引き出し導体部3o,3pおよび被覆層6a〜6nを備えるFPC基板1が完成する。図2および図3では、サブトラクティブ法によるFPC基板1の製造方法を示したが、これに限定されず、セミアディティブ法等の他の製造方法を用いてもよい。
【0079】
(3)FPC基板を用いた燃料電池
図4は、FPC基板1を用いた燃料電池100の外観斜視図である。図5は、燃料電池100内における作用を説明するための図であり、図4の燃料電池100のB−B線から見た断面図である。
【0080】
図4および図5に示すように、燃料電池100は直方体状のケーシング40を有する。図4では、ケーシング40を破線により示している。ケーシング40は、上面部41、下面部42、一方の側面部43および他方の側面部44を有する。
【0081】
FPC基板1は、被覆層6a〜6nが形成された一面を内側にして図1の折曲部B1に沿って折曲された状態でケーシング40の上面部41および下面部42により狭持される。
【0082】
ケーシング40内において、複数(本実施の形態では5個)の電極膜35が、折曲されたFPC基板1の被覆層6aと被覆層6fとの間、被覆層6bと被覆層6gとの間、被覆層6cと被覆層6hとの間、被覆層6dと被覆層6iとの間、および被覆層6eと被覆層6jとの間にそれぞれ配置される(図1(a)参照)。これにより、複数の電極膜35が直列接続される。
【0083】
各電極膜35は空気極35a、燃料極35bおよび電解質膜35cからなる。空気極35aは電解質膜35cの一面に形成され、燃料極35bは電解質膜35cの他面に形成される。複数の電極膜35の空気極35aはFPC基板1の被覆層6f〜6jにそれぞれ対向し、複数の電極膜35の燃料極35bはFPC基板1の被覆層6a〜6eにそれぞれ対向する。
【0084】
ケーシング40内の上面部41上には、集電部3f〜3jの複数の開口H12およびベース絶縁層2の複数の開口H2に対応するように複数の開口H41が形成される。電極膜35の空気極35aには、ケーシング40の複数の開口H41、ベース絶縁層2の複数の開口H2、および集電部3f〜3jの複数の開口H12を通して空気が供給される。
【0085】
ケーシング40の下面部42には、ベース絶縁層2の第1絶縁部2a(図1(a)参照)に接するように燃料収容室50が設けられる。燃料収容室50には、燃料供給管51の一端が接続される。燃料供給管51の他端は、ケーシング40の他方の側面部44を通って外部の図示しない燃料供給部に接続される。燃料供給部から燃料供給管51を通して燃料収容室50内に燃料が供給される。各電極膜35の燃料極35bには、ベース絶縁層2の複数の開口H1および集電部3a〜3eの複数の開口H11を通して燃料が供給される。なお、本実施の形態では、燃料としてメタノールを用いる。
【0086】
上記の構成においては、複数の燃料極35bにおいて、メタノールが水素イオンと二酸化炭素とに分解され、電子が生成される。生成された電子は、FPC基板1の集電部3a(図1参照)から引き出し電極5aに導かれる。メタノールから分解された水素イオンは、電解質膜35cを透過して空気極35aに達する。複数の空気極35aにおいて、引き出し電極5bから集電部3jに導かれた電子を消費しつつ水素イオンと酸素とが反応し、水が生成される。このようにして、引き出し電極5a,5bに接続された外部回路に電力が供給される。
【0087】
(4)FPC基板の第2の製造方法
図1に示したFPC基板1の第2の製造方法について、FPC基板1の第1の製造方法と異なる点を説明する。図6は、FPC基板1の第2の製造方法を説明するための工程断面図である。FPC基板1の第2の製造方法は、FPC基板1の第1の製造方法の図2(a)の工程から図2(d)の工程と同様の工程を有する。
【0088】
図2(d)の工程の後、図6(a)に示すように、導体層31の主面E1および側面E3にスプレー塗布によりテトラゾール誘導体等の上記の複素環化合物からなるバリア層32が形成される。このようにして、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pが形成される。また、集電部3a〜3eには複数の開口H11が形成され、集電部3f〜3jには複数の開口H12が形成される。なお、図6(a)には集電部3c,3h、接続導体部3lおよび引き出し導体部3oのみが表されている。FPC基板の第2の製造方法において、バリア層32は、グラビアコート法またはディッピング法等の一般的な方法により形成されてもよい。
【0089】
次に、図6(b)に示すように、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように被覆層前駆体6pが塗布される。被覆層前駆体6pの厚みは例えば25μmである。本実施の形態において、被覆層前駆体6pには、上記の複素環化合物が混合されない。
【0090】
続いて、図6(c)に示すように、被覆層前駆体6pを所定温度で所定時間乾燥させることにより、硬化処理が行われる。これにより、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pを覆うように被覆層6a〜6nが形成される。ここで、引き出し電極5a,5bが被覆層6a,6jから露出する。なお、図6(c)には被覆層6a,6c,6h,6lおよび引き出し電極5aのみが表されている。
【0091】
最後に、図6(d)に示すように、絶縁膜20が所定の形状に切断されることにより、ベース絶縁層2が形成される。また、ベース絶縁層2には複数の開口H1,H2が形成される。これにより、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3n、引き出し導体部3o,3pおよび被覆層6a〜6nを備えるFPC基板1が完成する。
【0092】
(5)効果
本実施の形態に係るFPC基板1において、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pは、導体層31およびバリア層32により構成される。
【0093】
導体層31の主面E1および側面E3はバリア層32により覆われている。この場合、蟻酸等の燃料電池100の副生成物が導体層31に付着することが防止される。それにより、導体層31の腐食が防止される。また、導体層31と被覆層6a〜6nとの間の接触抵抗の増加が防止される。その結果、燃料電池100の電極膜35の電力を効率的に外部に供給することができる。
【0094】
FPC基板1の第1の製造方法においては、樹脂組成物に導電材料および複素環化合物が混合されることにより被覆層前駆体60が調製される。被覆層前駆体60が導体層31の主面E1および側面E3上に塗布された後、被覆層前駆体60が加熱される。これにより、導体層31の主面E1および側面E3上に複素環化合物からなるバリア層32が形成され、バリア層32上に導電材料を含む樹脂組成物からなる被覆層6a〜6nが形成される。このようにして、導体層31の主面E1および側面E3にバリア層バリア層32を容易に形成するとともに、導体層31の主面E1および側面E3ならびにバリア層32を被覆層6a〜6nにより容易に被覆することができる。
【0095】
FPC基板1の第2の製造方法においては、導体層31の主面E1および側面E3に複素環化合物を含むバリア層32が形成された後に、導体層31の主面E1および側面E3が被覆層6a〜6nにより被覆される。これにより、導体層31の主面E1および側面E3上にバリア層32を確実に形成することができる。
【0096】
(6)他の実施の形態
(6−1)上記実施の形態において、FPC基板1のベース絶縁層2の材料としてポリイミドが用いられたが、これに限定されない。例えば、ポリイミドに代えて、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリオレフィン、エポキシまたはポリテトラフルオロエチレン等の他の絶縁材料が用いられてもよい。
【0097】
(6−2)上記実施の形態において、ベース絶縁層2は連続孔を有さないが、これに限定されない。例えば、ベース絶縁層2は多孔質性の連続孔を有してもよい。この場合、ベース絶縁層2は通気性を有する。そのため、ベース絶縁層2に開口H1,H2を形成しなくても、FPC基板1を燃料電池100の電極として用いることが可能となる。
【0098】
この場合、ベース絶縁層2の材料として、多孔質性の連続孔が形成されたePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシまたはポリテトラフルオロエチレン等の絶縁材料を用いることができる。
【0099】
(6−3)上記実施の形態において、導体層31の材料として銅が用いられたが、これに限定されない。例えば、銅に代えて、金(Au)、銀、チタン、白金もしくはアルミニウム等の他の金属、または銅合金、金合金、銀合金、チタン合金、白金合金もしくはアルミニウム合金等の合金が用いられてもよい。この場合でも、被覆層6a〜6nの導電性を十分に確保することができる。
【0100】
(6−4)上記実施の形態において、被覆層6a〜6nの樹脂組成物として、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂もしくはポリアミドイミド樹脂またはこれらの樹脂を2種類以上混合した樹脂を用いることができる。この場合、FPC基板1のフレキシブル性が良好になる。特に、樹脂組成物がフェノール樹脂またはエポキシ樹脂を含む場合、FPC基板1のフレキシブル性が良好になりかつ耐薬品性が良好になる。
【0101】
(6−5)上記実施の形態において、被覆層6a〜6nの導電材料として、例えばカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブもしくは炭素繊維等の炭素材料、金(Au)、銀もしくはナノ銀粒子等の金属材料、またはポリチオフェンもしくはポリアニリン等の導電性高分子材料を用いることができ、またはこれらの材料を2種類以上混合した材料を用いることができる。
【0102】
(6−6)上記実施の形態において、FPC基板1は5対の集電部(集電部3a,3f、集電部3b,3g、集電部3c,3h、集電部3d,3iおよび集電部3e,3j)を有するが、これに限定されない。FPC基板1の集電部の数は2対以上であれば、4対以下であってもよいし、6対以上であってもよい。これにより、任意の数の電極膜35を直列接続することができる。
【0103】
また、FPC基板1が1対の集電部を有してもよい。この場合、接続導体部3k〜3nは設けられない。
【0104】
(6−7)上記実施の形態において、配線回路基板は屈曲性を有するFPC基板であるが、これに限定されない。例えば、配線回路基板に屈曲性を要しない場合、配線回路基板はリジッド配線回路基板であってもよい。
【0105】
(6−8)上記実施の形態において、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pに被覆層6a〜6nが形成されるが、これに限定されない。例えば、引き出し導体部3o,3pに蟻酸等が付着しない場合には、集電部3a〜3jおよび接続導体部3k〜3nにのみ被覆層6a〜6nが形成されてもよい。
【0106】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0107】
上記実施の形態においては、ベース絶縁層2が絶縁層の例であり、主面E1が第1の主面の例であり、主面E2が第2の主面の例であり、側面E3が側面の例であり、導体層31が導体層の例である。バリア層32がバリア層の例であり、被覆層6a〜6nが被覆層の例であり、FPC基板1が配線回路基板の例であり、電極膜35が電池要素の例であり、ケーシング40が筺体の例であり、被覆層前駆体60が被覆層前駆体の例である。
【0108】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【0109】
(8)実施例
(8−1)実施例および比較例
以下の実施例1〜12および比較例1,2では、上記実施の形態に基づいて、被覆層前駆体を以下の方法で調製した。その後、被覆層前駆体を用いて以下のFPC基板を製造した。図7は、実施例1〜7および実施例9〜12ならびに比較例1,2におけるFPC基板の製造方法を説明するための工程断面図である。図8は、実施例8におけるFPC基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0110】
実施例1においては、ヴグリュー精留塔を具備した四口フラスコにおいてジメチルテレフタル酸75重量部、ジメチルイソフタル酸40重量部、エチレングリコール80重量部、ネオペンチルグリコール60重量部およびテトラブチルチタネート0.1重量部を混合し、温度180℃で3時間エステル交換を行なった。次に、その混合物に無水トリメリット酸2重量部およびセバシン酸80重量部を混合し、1時間脱水反応を行った。続いて、その混合物の周囲の雰囲気を1mmHg以下まで徐々に減圧し、温度270℃で2時間重合反応させることによりポリエステル樹脂を作製した。
【0111】
その後、四口フラスコにおいて作製したポリエステル樹脂40重量部および酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル100重量部を混合し、温度80℃で溶解させた。次に、その混合物を常温に冷却した後、混合物にヘキサメチレンジイソシアネートのブロック体(旭化成ケミカルズ株式会社製デュラネート)5重量部を配合し、樹脂組成物を作製した。
【0112】
続いて、その樹脂組成物の塗布液45重量部に、導電成分として導電性カーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラックEC−DJ600)10重量部および黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製)45重量部を混合した。その後、3本ロール機を用いて混合物中の導電性カーボンブラックおよび黒鉛を分散させることにより被覆層前駆体Aを調製した。
【0113】
一方、図7(a)に示すように、絶縁膜20と導体膜30とからなる2層CCLを用意した。次に、図7(b)に示すように、塩化第二鉄を用いて2層CCLをエッチングすることにより、絶縁膜20上に所定のパターンを有する導体層31を形成した。
【0114】
続いて、複素環化合物として5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体0.8重量部を上記の被覆層前駆体Aに混合することにより被覆層前駆体60を調製し、図7(c)に示すように、その被覆層前駆体60を導体層31の主面E1および側面E3に塗布した。その後、温度150℃で30分間乾燥させることにより、被覆層前駆体60の硬化処理を行った。
【0115】
このようにして、図7(d)に示すように、実施例1のFPC基板1sを作製した。FPC基板1sにおいては、絶縁膜20上に導体層31およびバリア層32からなる集電部3が形成される。また、集電部3を覆うように絶縁膜20上に被覆層6が形成される。被覆層6の厚みは25μmである。
【0116】
実施例2においては、実施例1の被覆層前駆体Aに代えて以下の被覆層前駆体Bを用いた点を除いて、実施例1と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0117】
MEK(Methyl Ethyl Ketone:メチルエチルケトン)に溶解させたエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製jER−1007)41重量部に、導電成分として導電性カーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラックEC−DJ600)10重量部および黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製)45重量部を混合した。次に、3本ロール機を用いて混合物中の導電性カーボンブラックおよび黒鉛を分散させた。続いて、その混合物に硬化剤である酸無水物(新日本理化株式会社製MH−700)3.3重量部および触媒であるイミダゾール(四国化成工業株式会社製2E4MZ)2重量部を混合することにより被覆層前駆体Bを調製した。その被覆層前駆体Bに複素環化合物として5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体0.8重量部を混合することにより被覆層前駆体60を調製した。
【0118】
実施例3においては、実施例1の被覆層前駆体Aに代えて以下の被覆層前駆体Cを用いた点を除いて、実施例1と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0119】
エチルカルビトールに、レゾール型フェノール樹脂(DIC株式会社製フェノライト5010)36重量部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン株式会社製jER−1007)9重量部を予め混合するとともに、導電成分として導電性カーボンブラック(ライオン株式会社製ケッチェンブラックEC−DJ600)10重量部および黒鉛(日本黒鉛工業株式会社製)45重量部を混合した。その後、3本ロール機を用いて混合物中の導電性カーボンブラックおよび黒鉛を分散させることにより被覆層前駆体Cを調製した。その被覆層前駆体Cに複素環化合物として5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体0.8重量部を混合することにより被覆層前駆体60を調製した。
【0120】
実施例4においては、被覆層前駆体60に複素環化合物として5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体に代えて5−メチル−1H−テトラゾール誘導体が混合されている点を除いて、実施例1と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0121】
実施例5においては、被覆層前駆体60に複素環化合物として5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体に代えて5−メチルベンゾトリアゾール誘導体が混合されている点を除いて、実施例1と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0122】
実施例6においては、被覆層前駆体60に5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体が0.8重量部ではなく0.3重量部混合されている点を除いて、実施例1と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0123】
実施例7においては、被覆層前駆体60に5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体が0.8重量部ではなく5重量部混合されている点を除いて、実施例1と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0124】
実施例8におけるFPC基板1sの製造方法は、実施例1〜7のFPC基板1sの製造方法における図7(a),(b)の工程と同様の工程を有するとともに、図7(c),(d)の工程の代わりに図8(a),(b),(c)の工程を有する。
【0125】
図7(b)の工程の後、濃度0.6重量%の5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体が混合されたメタノールをワイヤーバーを用いて導体層31の主面E1および側面E3に塗布した。その後、塗布されたメタノールを温度50℃で3分間乾燥させることにより、図8(a)に示すように、導体層31の主面E1および側面E3にバリア層32を形成した。これにより、絶縁膜20上に導体層31およびバリア層32からなる集電部3が形成される。
【0126】
次に、図8(b)に示すように、集電部3を覆うように絶縁膜20上に実施例1の被覆層前駆体Aを塗布し、温度180℃で30分間乾燥させることにより、被覆層前駆体Aの硬化処理を行った。このようにして、図8(c)に示すように、実施例8のFPC基板1sを作製した。FPC基板1sにおいては、集電部3を覆うように絶縁膜20上に被覆層6が形成される。被覆層6の厚みは25μmである。
【0127】
実施例9においては、被覆層前駆体60に5−メチルベンゾトリアゾール誘導体が0.8重量部ではなく0.3重量部混合されている点を除いて、実施例5と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0128】
実施例10においては、被覆層前駆体60に5−メチルベンゾトリアゾール誘導体が0.8重量部ではなく5重量部混合されている点を除いて、実施例5と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0129】
実施例11においては、被覆層前駆体60に5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体が0.8重量部ではなく0.001重量部混合されている点を除いて、実施例1と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0130】
実施例12においては、被覆層前駆体60に5−フェニル−1H−テトラゾール誘導体が0.8重量部ではなく20重量部混合されている点を除いて、実施例1と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0131】
比較例1においては、被覆層前駆体60の代わりに複素環化合物が混合されていない被覆層前駆体を用いた点を除いて、実施例1と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0132】
比較例2においては、被覆層前駆体60の代わりに複素環化合物が混合されていない被覆層前駆体を用いた点を除いて、実施例2と同様の方法でFPC基板1sを作製した。
【0133】
(8−2)バリア層の厚みの測定およびFPC基板の接触抵抗の測定
図9は、実施例1〜12および比較例1,2におけるFPC基板1sの断面図である。図9(a)に示すように、実施例1〜12および比較例1,2におけるFPC基板1sを絶縁膜20と垂直な面で切断した。図9(b)は、図9(a)のA部の拡大断面図である。飛行時間二次イオン質量分析計(ION−TOF GmbH製TOF−SIMS5)を用いて図9(b)のFPC基板1sの断面の組成分析を行い、複素環化合物の分布状態から、バリア層32の厚みの測定を行った。なお、図9(c)は、実施例1におけるFPC基板1sの飛行時間二次イオン質量分析計による分析結果およびCのイオン像である。
【0134】
実施例1〜12および比較例1,2におけるFPC基板1sを濃度1000ppmおよび温度50℃の蟻酸水溶液に7日間浸漬させた。その後、FPC基板1sの導体層31の腐食の有無およびFPC基板1sの接触抵抗を測定した。
【0135】
図10は、実施例1〜12および比較例1,2におけるFPC基板1sの接触抵抗の測定方法を示す模式図である。図10に示すように、実施例1〜12および比較例1,2のFPC基板1sをそれぞれ一対ずつ用意した。被覆層6の表面が互いに向き合うように一対のFPC基板1sを配置するとともに、一対のFPC基板1sの被覆層6間にカーボンペーパーCPを配置した。各FPC基板1sの被覆層6には、接続端子Cおよび接続線Lを介して抵抗測定装置(日置電機株式会社製ACmΩ HITESTER)を接続した。一対のFPC基板1sをカーボンペーパーCPの一面および他面に1MPaの圧力で押し当てた。その状態で、一対のFPC基板1sの接続端子C間の抵抗値を接触抵抗として抵抗測定装置により測定した。
【0136】
バリア層32の厚みならびに導体層31の腐食の有無およびFPC基板1sの接触抵抗の結果を表1に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
表1に示すように、実施例1のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み120nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ23mΩおよび24mΩであった。
【0139】
実施例2のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み120nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ19mΩおよび23mΩであった。
【0140】
実施例3のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み120nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ23mΩおよび24mΩであった。
【0141】
実施例4のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み120nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ20mΩおよび22mΩであった。
【0142】
実施例5のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み100nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ21mΩおよび28mΩであった。
【0143】
実施例6のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み30nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ22mΩおよび24mΩであった。
【0144】
実施例7のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み300nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ22mΩおよび23mΩであった。
【0145】
実施例8のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み150nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ20mΩおよび22mΩであった。
【0146】
実施例9のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み40nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ21mΩおよび25mΩであった。
【0147】
実施例10のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み350nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ22mΩおよび23mΩであった。
【0148】
実施例11のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み4nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ24mΩおよび550mΩであった。
【0149】
実施例12のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31の主面E1および側面E3を覆うように、厚み510nmのバリア層32が形成されていた。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食は観測されなかった。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ24mΩおよび600mΩであった。
【0150】
比較例1のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31にバリア層32が形成されていなかった。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食が観測された。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ20mΩおよび1634mΩであった。
【0151】
比較例2のFPC基板1sにおいては、バリア層32の厚みの測定の結果、導体層31にバリア層32が形成されていなかった。また、FPC基板1sを蟻酸水溶液に浸漬させた結果、導体層31の腐食が観測された。蟻酸水溶液への浸漬前および浸漬後のFPC基板1sの接触抵抗は、それぞれ21mΩおよび1715mΩであった。
【0152】
実施例1〜7および実施例9〜12ならびに比較例1,2の結果から、複素環化合物を含む被覆層前駆体60を導体層31の主面E1および側面E3に塗布し、所定の条件の下で硬化処理を行うことにより、導体層31の主面E1および側面E3を覆うようにバリア層32が形成されることが確認された。また、実施例8の結果から、複素環化合物を含む溶液を導体層31の主面E1および側面E3に塗布し、所定の条件の下で硬化処理を行うことにより、導体層31の主面E1および側面E3を覆うようにバリア層32が形成されることが確認された。
【0153】
実施例1〜12および比較例1,2の結果から、導体層31にバリア層32を形成した場合、導体層31が蟻酸水溶液に接触しても、導体層31が腐食しないことが確認された。特に、実施例1〜10においては、FPC基板1sの接触抵抗がほとんど増加しないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本発明は、種々の配線回路基板およびその製造に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0155】
1,1s FPC基板
2 ベース絶縁層
2a 第1絶縁部
2b 第2絶縁部
2c 第3絶縁部
2d 第4絶縁部
3,3a〜3j 集電部
3k〜3n 接続導体部
3o,3p 引き出し導体部
5a,5b 引き出し電極
6,6a〜6n 被覆層
20 絶縁膜
22 エッチングレジスト
30 導体膜
31 導体層
32 バリア層
35 電極膜
35a 空気極
35b 燃料極
35c 電解質膜
40 ケーシング
41 上面部
42 下面部
43,44 側面部
50 燃料収容室
51 燃料供給管
60,6p 被覆層前駆体
100 燃料電池
B1 折曲部
C 接続端子
CP カーボンペーパー
E1,E2 主面
E3 側面
H1,H2,H11,H12,H41 開口
L 接続線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、
所定のパターンを有しかつ第1および第2の主面ならびに側面を有するとともに、前記第2の主面が前記絶縁層と対向するように前記絶縁層上に形成された導体層と、
前記導体層の前記第1の主面および前記側面の少なくとも一部の領域上に形成され、酸に対して前記導体層よりも高い耐食性を有するバリア層と、
前記導体層の前記第1の主面および前記側面ならびに前記バリア層を被覆する導電性の被覆層とを備えることを特徴とする配線回路基板。
【請求項2】
前記バリア層は、複素環化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記複素環化合物は、窒素を含むことを特徴とする請求項2記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記複素環化合物は、アゾール系化合物を含むことを特徴とする請求項2または3記載の配線回路基板。
【請求項5】
前記複素環化合物は、テトラゾール誘導体、ジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体およびトリアゾール誘導体のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項6】
前記複素環化合物は、下記式(1)で表されるテトラゾール誘導体を含み、R1およびR2は、同じまたは異なり、水素原子または置換基であることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の配線回路基板。
【化1】

【請求項7】
前記複素環化合物は、下記式(2)で表されるベンゾトリアゾール誘導体を含み、R3およびR4は、同じまたは異なり、水素原子または置換基であることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の配線回路基板。
【化2】

【請求項8】
前記バリア層の厚みは、1nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項9】
前記被覆層は、樹脂組成物を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項10】
前記樹脂組成物は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびポリイミド樹脂のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項9記載の配線回路基板。
【請求項11】
前記被覆層は、導電材料を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の配線回路基板。
【請求項12】
前記導電材料は、炭素材料および金属材料のうち少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項11記載の配線回路基板。
【請求項13】
電池要素と、
前記電池要素の電極として配置される請求項1〜12のいずれかに記載の配線回路基板と、
前記電池要素および前記配線回路基板を収容する筺体とを備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項14】
所定のパターンを有しかつ第1および第2の主面ならびに側面を有する導体層を、前記第2の主面が絶縁層に対向するように前記絶縁層上に形成する工程と、
前記導体層の前記第1の主面および前記側面の少なくとも一部の領域上に、酸に対して前記導体層よりも高い耐食性を有するバリア層を形成するとともに、前記導体層の前記第1の主面および前記側面ならびに前記バリア層を被覆する導電性の被覆層を形成する工程とを含むことを特徴とする配線回路基板の製造方法。
【請求項15】
前記バリア層および前記被覆層を形成する工程は、
樹脂組成物、導電材料および複素環化合物を混合することにより被覆層前駆体を調製する工程と、
前記被覆層前駆体を前記導体層の前記第1の主面および前記側面の少なくとも一部の領域上に塗布する工程と、
前記被覆層前駆体を加熱する工程とを含むことを特徴とする請求項14記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項16】
前記バリア層および前記被覆層を形成する工程は、
前記導体層の前記第1の主面および前記側面の少なくとも一部の領域上に、酸に対して前記導体層よりも高い耐食性を有するバリア層を形成する工程と、
前記導体層の前記第1の主面および前記側面ならびに前記バリア層を被覆する導電性の被覆層を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項14記載の配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−156309(P2012−156309A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14085(P2011−14085)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】