説明

配線基板およびその製造方法

【課題】 配線導体に断線を発生させることがなく、絶縁基板とソルダーレジスト樹脂層やビルドアップ樹脂層との密着強度に優れた配線基板を生産性高く提供すること。
【解決手段】 ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する絶縁材料から成る絶縁基板1の主面に、金属から成る配線導体2および該配線導体2の少なくとも一部を被覆するエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る樹脂層3を被着させて成る配線基板10であって、前記主面の前記樹脂層3が被着された面は、ポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して形成された粗面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する絶縁材料から成る絶縁基板の主面にエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る絶縁層を強固に被着させて成る配線基板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子等の電子部品を搭載するために用いられる配線基板として、ガラス繊維やアラミド繊維等の耐熱繊維の織布または不織布から成る耐熱繊維基材に熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させた絶縁材料から成る絶縁層を複数積層して成る板状の絶縁基板の両主面および各絶縁層間に銅箔から成る配線導体を埋設するとともに上下の配線導体の所定のもの同士を各絶縁層に設けたビア孔内に充填されたビア導体を介して電気的に接続し、さらに前記絶縁基板の主面にエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成るソルダーレジスト樹脂層やビルドアップ樹脂層を被着させたものが知られている。
【0003】
このような配線基板は、以下のようにして製造される。まず、耐熱繊維基材に未硬化の熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂成分を含浸させた絶縁シートを複数枚準備する。次にこれらの絶縁シートにレーザ加工によりビア孔を所定の配列に穿孔する。次にこれらのビア孔内に金属粉末および未硬化の熱硬化性樹脂成分を含有する導体ペーストを充填する。次にこのようにしてビア孔内に導体ペーストが充填された絶縁シートの片面または両面に銅箔から成る所定パターンの配線導体をその一部がビア孔内の導体ペーストと接するように埋入する。次にこのようにして所定パターンの配線導体が埋入された絶縁シートの複数枚を所定の順に互いに積層してその主面および各絶縁シート間に配線導体が配設されるとともに各絶縁層を貫通する導体ペーストに上下の配線導体が接する未硬化の絶縁基板を形成する。次にこの未硬化の絶縁基板をプレス装置により上下からプレスしながら加熱することにより、絶縁シートの熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂成分および導体ペーストの熱硬化性樹脂成分を熱硬化させて硬化した絶縁基板を製作する。次にこの硬化した絶縁基板の主面にバフロールを使用した機械的な研磨加工を互いに直角な方向に複数回ずつ施して溝状の微小な研磨痕を残すことにより絶縁基板の主面を粗化し、その上に未硬化のエポキシ樹脂成分を含有するペーストやシートを被着させた後、ペーストやシート中のエポキシ樹脂成分を熱硬化させることにより絶縁基板の主面にソルダーレジスト樹脂層やビルドアップ樹脂層を有する配線基板を得る。なお、絶縁基板の主面を粗化することにより絶縁基板とソルダーレジスト樹脂層やビルドアップ樹脂層との密着を強固とすることができる。また、絶縁基板の主面に機械的な研磨加工を施して研磨痕を残すことにより絶縁基板の主面を粗化するのは、絶縁基板を構成するポリフェニレンエーテル樹脂が化学的研磨では粗化が困難なためである。
【特許文献1】特開2003−258436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁基板の主面に機械的な研磨加工を施して溝状の微小な研磨痕を残すことにより絶縁基板の主面を粗化した場合、絶縁基板の主面に埋設された配線導体にも溝状の研磨痕が付くことになり、幅が20μm以下の極めて微細な配線導体においては溝状の研磨痕が付くことにより断線が発生する危険性が高くなるという問題点を有していた。
また、機械的な研磨加工行なう場合、バフロールにおける砥粒の脱落や磨耗、目詰まりの影響で多数の絶縁基板に対して微小な研磨痕を一様に残すことが困難であり、かつ互いに直交する方向に複数回ずつ研磨する必要があり生産性が低いという問題点も有していた。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑み案出されたものであり、その課題は、絶縁基板の主面に埋設された配線導体に断線を発生させることがなく、かつ絶縁基板の主面に微細な粗化状態が一様な形成され、ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する絶縁材料から成る絶縁基板とエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成るソルダーレジスト樹脂層やビルドアップ樹脂層との密着強度に優れた配線基板を生産性高く提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の配線基板は、ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する絶縁材料から成る絶縁基板の主面に、金属から成る配線導体および該配線導体の少なくとも一部を被覆するエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る樹脂層を被着させて成る配線基板であって、前記主面の前記樹脂層が被着された面は、ポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して形成された粗面であることを特徴とするものである。
また、本発明の配線基板の製造方法は、ポリフェニレンエーテル樹脂とトリアリルイソシアヌレートとを含有する未硬化の絶縁材料から成り、主面に金属から成る配線導体が被着された未硬化の絶縁基板を準備する工程と、前記未硬化の絶縁基板を表面が平滑なプレス板で挟みながら加熱加圧することにより前記ポリフェニレンエーテル樹脂とトリアリルイソシアヌレートとを反応させて硬化した絶縁基板を得るとともに該硬化した絶縁基板の露出主面にトリアリルイソシアヌレートが偏析した表皮層および該表皮層の下にポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して成る樹脂団塊層を形成する工程と、前記絶縁基板から前記表皮層を除去し、前記絶縁基板の主面に前記樹脂団塊層を露出させる工程と、該樹脂団塊層が露出した前記主面に、エポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る樹脂層を前記配線導体の少なくとも一部を被覆するように被着させる工程と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配線基板によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する絶縁材料から成る絶縁基板の主面におけるエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る樹脂層が被着された面は、ポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して形成された粗面であることから、この粗面とエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る樹脂層とが強固に密着する。
【0008】
また、本発明の配線基板の製造方法によれば、ポリフェニレンエーテル樹脂とトリアリルイソシアヌレートとを含有する未硬化の絶縁材料から成り、主面に金属から成る配線導体が被着された未硬化の絶縁基板を表面が平滑なプレス板で挟みながら加熱加圧することにより硬化した絶縁基板を得るとともに該硬化した絶縁基板の露出主面にトリアリルイソシアヌレートが偏析した表皮層および該表皮層の下にポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して成る樹脂団塊層を形成し、次に前記絶縁基板から前記表皮層を除去して前記絶縁基板の主面に前記樹脂団塊層を露出させ、次にこの樹脂団塊層が露出した前記主面に、エポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る樹脂層を被着させることから、ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する絶縁材料から成る絶縁基板とエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る樹脂層とが樹脂団塊層により形成される粗面を介して強固に密着される。また、表皮層が除去されて現われる樹脂団塊層により形成される粗面は微細で一様であるとともに表皮層を除去する作業を一回行なうだけで絶縁基板の主面を粗化できるので生産性に優れている。さらに配線導体を傷つけることがなく、したがって配線導体に断線を発生させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の配線基板およびその製造方法を添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の配線基板における第1の実施形態例を示す概略断面図であり、図2は本発明における絶縁基板の主面状態を示すSEM写真、図3は本発明における絶縁基板の主面状態わ示すAFM写真である。また図4(a),(b)、図5(c),(d)、図6(e),(f)は、この第1の実施形態例の配線基板を製造する方法を説明するための工程毎の概略断面図である。図1において1は絶縁基板、2は配線導体、3はソルダーレジスト樹脂層であり、主としてこれらで第1の実施形態例の配線基板10が構成される。また図4(a),(b)、図5(c),(d)、図6(e),(f)において11aは絶縁シート、11は未硬化の絶縁基板である。
【0010】
第1の実施形態例の配線基板10は、上面に電子部品を搭載した状態で外部電気回路基板上に実装されるものであり、図1に示すように、複数(この例では8層)の絶縁層1aが積層されて成る絶縁基板1の主面および各絶縁層1a間に配線導体2が埋設されているとともに、絶縁基板1の主面に配線導体2の一部を露出させるソルダーレジスト樹脂層3が被着されて成る。なお、各絶縁層1aを挟んで上下に位置する配線導体2の所定のもの同士が各絶縁層1aに設けたビア孔1v内に充填されたビア導体4を介して互いに電気的に接続されている。
【0011】
絶縁基板1を構成する各絶縁層1aは、ガラス繊維やアラミド繊維等の耐熱繊維の織布または不織布から成る耐熱繊維基材に熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させた厚みが50〜150μm程度の絶縁材料から成り、その主面に配線導体2を埋設した状態で互いに積層一体化されている。また、各絶縁層1aには、上下に位置する所定の配線導体2同士を繋ぐ位置に直径が30〜200μm程度のビア孔1vが設けられており、このビア孔1v内に前記所定の配線導体2同士を電気的に接続するビア導体4が充填されている。
【0012】
絶縁基板1の主面および各絶縁層1a間に埋設された配線導体2は、所定パターンにエッチングされた厚みが5〜50μm程度の銅箔から成り、配線基板10に搭載される電子部品を外部電気回路基板に電気的に接続するための導電路の一部としての機能し、絶縁基板1の上面に埋設された配線導体2には電子部品の電極が半田バンプ等の電気的接続手段を介して電気的に接続される電子部品接続パッド2aが形成されており、絶縁基板1の下面に埋設された配線導体2には外部電気回路基板の配線導体に半田ボール等の電気的接続手段を介して電気的に接続される外部接続パッド2bが形成されている。
【0013】
各絶縁層1aのビア孔1v内に充填されたビア導体4は、例えば錫と銀とビスマスと銅との合金から成る金属粉末とトリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレート、トリスエポキシプロピルイソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン系熱硬化性樹脂成分とを含有している。そして、前記金属粉末同士および前記金属粉末と配線導体2との接触により導電性を呈する。
【0014】
絶縁基板1の主面に配線導体2の一部を露出させるように被着されたソルダーレジスト樹脂層3は、エポキシ樹脂にシリカ粉末等の無機絶縁フィラーを含有させた絶縁材料から成り、絶縁基板1の主面に埋設された配線導体2における電子部品接続パッド2aおよび外部接続パッド2b以外の部分を被覆している。このソルダーレジスト樹脂層3は、電子部品接続パッド2aおよび外部接続パッド2bとしての領域を画定するとともに絶縁基板1の主面に埋設された配線導体2の他の部分を外部から保護する保護層として機能し、通常5〜50μm程度の厚みを有している。
【0015】
このような構成の中、第一の実施形態例においては、絶縁基板1の前記ソルダーレジスト樹脂層3が被着された面が図2に示すように、ポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して形成された粗面であり、そのことが重要である。樹脂塊の大きさはその大半が1〜10μm程度であり、このような大きさの樹脂塊が集合することにより図3に示すように算術平均粗さで100〜300nm程度の微小な凹凸を多数有する粗面が得られる。そしてこの粗面の凹凸とソルダーレジスト樹脂層3とが噛み合うことにより第1の実施形態例の配線基板においては、絶縁基板1とソルダーレジスト樹脂層3とが強固に密着されるのである。
【0016】
次にこの第1の実施形態例の配線基板10を製造する方法について説明する。先ず、図4(a)に示すように、ガラス繊維やアラミド繊維等の耐熱繊維の織布または不織布から成る耐熱繊維基材にポリフェニレンエーテル樹脂とトリアリルイソシアヌレートとを含有する未硬化の樹脂成分を含浸させた絶縁シート11aを複数枚(この例では8枚)準備する。なお、これらの絶縁シート11aは第1の実施形態例の配線基板10における各絶縁層1aとなるものである。
【0017】
次に、図4(b)に示すように、各絶縁シート11aの所定の位置にその上面から下面にかけて直径が30〜200μm程度の複数の貫通孔11vを形成する。これらの貫通孔11vは、配線基板10におけるビア孔1vとなるものであり、各絶縁シート11aの所定の位置に炭酸ガスレーザやYAGレーザ等を用いたレーザ加工を施すことにより形成される。
【0018】
次に、図5(c)に示すように、各絶縁シート11aの貫通孔11v内に金属粉末と熱硬化性樹脂成分とを含有する導体ペースト14を充填する。導体ペースト14は、配線基板10におけるビア導体4となるものであり、スクリーン印刷法を採用することにより貫通孔11v内に充填される。導体ペースト14に含有される金属粉末としては銅および錫を含有する合金、例えば錫−銀−ビスマス−銅合金が好適である。また熱硬化樹脂成分としてはトリアリルイソシアヌレートを含有することが好ましい。
【0019】
次に図5(d)に示すように、各絶縁シート11aの片面または両面に所定パターンにエッチングされた銅箔からなる配線導体2を貫通孔11v内の導体ペースト14と接するように埋入する。絶縁シート11aの片面または両面に配線導体2を埋入するには、例えばポリエチレンテレフタレートから成る支持フィルム上に所定パターンにエッチングされた配線導体2が剥離可能な状態で保持された転写シートを準備するとともに、この転写シートをその配線導体2が絶縁シート11a側となるようにして絶縁シート11aの片面または両面に積層した状態でそれらを上下からプレスして配線導体2を絶縁シート11aに埋入させた後、支持フィルムを剥離する方法が採用される。
【0020】
次に図6(e)に示すように、上記のようにして配線導体2が埋入された絶縁シート11aの複数枚を所定の順序で積層して未硬化の絶縁基板11を形成するとともに、この未硬化の絶縁基板11を平滑なプレス面を有する熱プレス装置により上下からプレスしながら加熱することにより、絶縁シート11aの熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂成分および導体ペースト14中の熱硬化性樹脂成分を熱硬化させ、その主面および各絶縁層1a間に配線導体2が埋設された硬化した絶縁基板1を得る。
【0021】
このとき、本発明の製造方法においては、絶縁基板11を平滑なプレス面を有する熱プレス装置により上下からプレスしながら加熱する際、絶縁基板1の露出する主面にトリアリルイソシアヌレートが偏析した厚みが0.5〜3μm程度の表皮層とこの表皮層の下にポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする大きさが1〜10μm程度の樹脂塊が多数集合して成る樹脂団塊層を形成する。このような表皮層および樹脂団塊層を形成するには、絶縁基板11を平滑なプレス面を有する熱プレス装置により上下からプレスしながら加熱する際の圧力と時間および温度を所定の条件にコントロールすればよい。具体的には、絶縁シート11aに含有される樹脂成分が最低溶融粘度となる温度よりも5〜10℃程度低い温度で圧力0.5〜5MPa程度を加えながら5〜30分間程度加熱加圧して絶縁基板11の主面にトリアリルイソシアヌレートを滲出させた後、絶縁シート11aに含有される樹脂成分の熱硬化温度で圧力5〜10MPa程度を加えながら30分〜2時間程度加熱加圧して絶縁シート11aの熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂成分および導体ペースト14中の熱硬化性樹脂成分を熱硬化させればよい。このような表皮層および樹脂団塊層が形成されるメカニズムは明らかではないが、上記の条件でプレスしながら加熱すると、絶縁シート11a中に含有されるトリアリルイソシアヌレート成分が平滑なプレス面に当接する絶縁基板1の露出主面に滲出してトリアリルイソシアヌレートが偏析した表皮層を形成するとともにその下ではトリアリルイソシアヌレートが不足してポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して成る樹脂団塊層が形成されるものと推察される。表皮層の厚みは0.5〜3μm程度であるのが好ましく、0.5μm未満であるとトリアリルイソシアヌレートが充分に偏析しないため十分な大きさの樹脂塊を形成することができなくなり、3μmを超えると表皮層を良好に除去することが困難となる。ここで、トリアリルイソシアヌレートを偏析させる温度が低い又は、時間が短いと表皮層は殆ど形成されず、逆にトリアリルイソシアヌレートを偏析させる時間が長いと表皮層が厚く形成される。なお、絶縁シート11aの主面に配線導体2を埋入させる際に絶縁シート11aの樹脂成分が最低溶融粘度となる温度よりも5〜10℃程度低い温度で圧力0.5〜5MPa程度を加えながら5〜30分間程度加熱加圧することにより絶縁シート11aの主面にトリアリルイソシアヌレートを予め滲出させておいてもよい。この場合にも絶縁基板11の主面にトリアリルイソシアヌレートが偏析した表皮層とこの表皮層の下にポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して成る樹脂団塊層を形成することができる。
【0022】
次に、この表皮層および樹脂団塊層が形成された絶縁基板1の主面から表皮層を除去して樹脂団塊層を露出させる。露出した樹脂団塊層は大きさが1〜10μm程度の樹脂塊が集合してなり、露出する絶縁基板1の主面に算術平均粗さで100〜300nm程度の微小な凹凸を有する粗面を形成する。なお、表皮層を除去するには砥粒を水とともに絶縁基板1の主面に吹付けて表皮層を剥ぎ取る方法が好適に採用される。トリアリルイソシアヌレートが偏析した表皮層は脆い性質を有しているので砥粒の吹付けにより容易に砕いて剥ぎ取ることができる。またこの表皮層を除去するための砥粒の吹付けは絶縁基板1の主面に埋設された配線導体2を傷つけない程度の強さ行なうことができ、したがって配線導体2に傷による断線を発生させるようなことは一切ない。また、表皮層に砥粒を吹付けて表皮層を除去するだけで、その下にある樹脂団塊層により絶縁基板1の表面に微細な凹凸を有する粗面を形成することができるので極めて生産性に優れている。
【0023】
次に、図6(f)に示すように、絶縁基板1の主面にエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成るソルダーレジスト樹脂層3を被着する。このとき、絶縁基板1の露出した主面は樹脂団塊層が露出した算術平均粗さが100〜300nm程度の粗面となっていることから、この粗面の微小な凹凸とソルダーレジスト樹脂層3とが噛み合うことにより絶縁基板1とソルダーレジスト樹脂層3とが強固に密着する。なお、絶縁基板1の主面にソルダーレジスト樹脂層3を被着するには、感光性を有する未硬化のエポキシ樹脂成分を含有する樹脂フィルムを絶縁基板1の両主面に積層するとともに周知のフォトリソグラフィ技術を採用して電子部品接続パッド2aおよび外部接続パッド2bを露出させる所定のパターンに露光および現像を行なった後、その樹脂フィルムを紫外線硬化および熱硬化させる方法が採用される。
【0024】
次に本発明の第2の実施形態例について説明する。図7は本発明の配線基板における第2の実施形態例を示す断面図であり、図8(a)〜(e)、図9(f)〜(h)は、この第2の実施形態例の配線基板を製造法する方法を説明するための工程毎の概略断面図である。図7において、21は絶縁基板、22は配線導体、23はビルドアップ樹脂層、24はビルドアップ配線層であり、主としてこれらで第2の実施形態例の配線基板20が構成される。また図8(a)〜(e)、図9(f)〜(h)において31aは絶縁シート、31は未硬化の絶縁基板である。
【0025】
第2の実施形態例の配線基板20は、図7に示すように、複数(この例では2層)の絶縁層21aが積層されて成る絶縁基板21の主面および各絶縁層21a間に配線導体22が埋設されているとともに、配線導体22が埋設された絶縁基板21の両主面にビルドアップ樹脂層23とビルドアップ配線層24とを交互に複数層(この例では3層ずつ)積層し、さらにその上にソルダーレジスト樹脂層25を被着させて成る。なお、各絶縁層21aを挟んで上下に位置する配線導体22の所定のもの同士が各絶縁層21aに設けたビア孔21v内に充填されたビア導体26を介して互いに電気的に接続されている。
【0026】
絶縁基板21を構成する各絶縁層21aは、前述の第1の実施形態例における絶縁層1aと同様にガラス繊維やアラミド繊維等の耐熱繊維の織布または不織布から成る耐熱繊維基材に熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂を含浸させた厚みが50〜150μm程度の絶縁材料から成り、その主面に配線導体22を埋設した状態で互いに積層一体化されている。また、各絶縁層21aには、上下に位置する所定の配線導体22同士を繋ぐ位置に直径が30〜200μm程度のビア孔21vが設けられており、このビア孔21v内に前記所定の配線導体22同士を電気的に接続するビア導体26が充填されている。
【0027】
絶縁基板21の主面および各絶縁層21a間に埋設された配線導体22は、前述の第1の実施形態例における配線導体2と同様に、所定パターンにエッチングされた厚みが5〜50μm程度の銅箔から成り、配線基板20に搭載される電子部品を外部電気回路基板に電気的に接続するための導電路の一部としての機能し、後述するビルドアップ配線層24に電気的に接続されている。
【0028】
各絶縁層21aのビア孔21v内に充填されたビア導体26は、前述の第1の実施形態例におけるビア導体14と同様に、例えば錫と銀とビスマスと銅との合金から成る金属粉末とトリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレート、トリスエポキシプロピルイソシアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のトリアジン系熱硬化性樹脂とを含有している。そして、前記金属粉末同士および前記金属粉末と配線導体22との接触により導電性を呈する。
【0029】
配線導体22が埋設された絶縁基板21の主面に積層された各ビルドアップ樹脂層23は、エポキシ樹脂にシリカ粉末等の無機絶縁フィラーを含有させた厚みが20〜40μm程度の絶縁材料から成り、その所定位置に上下に貫通する複数のビア孔23vを有するとともにその主面およびビア孔23v内にビルドアップ配線層24が被着されている。
【0030】
各ビルドアップ樹脂層23の主面およびビア孔23v内に被着されたビルドアップ配線層24は、所定パターンに形成された厚みが5〜20μm程度の銅めっき膜から成り、配線基板20に搭載される電子部品を外部電気回路基板に電気的に接続するための導電路の一部としての機能し、最内層のビルドアップ配線層24は絶縁基板21主面に埋設された配線導体22にビア孔23vを介して電気的に接続されており、最外層のビルドアップ配線層24には電子部品の電極が半田バンプ等の電気的接続手段を介して電気的に接続される電子部品接続パッド24aおよび外部電気回路基板の配線導体に半田ボール等の電気的接続手段を介して電気的に接続される外部接続パッド24bが形成されている。
【0031】
このような構成の中、第2の実施形態例においては、第1の実施形態例における絶縁基板1の場合と同様に、絶縁基板21の前記ビルドアップ樹脂層23が被着された面がポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して形成された粗面であり、そのことが重要である。樹脂塊の大きさは1〜10μm程度であり、このような大きさの樹脂塊が集合することにより算術平均粗さで100〜300nm程度の微小な凹凸を多数有する粗面が得られる。そしてこの粗面の凹凸とビルドアップ樹脂層23とが噛み合うことにより第2の実施形態例の配線基板20においては、絶縁基板21とビルドアップ樹脂層23とが強固に密着されるのである。
【0032】
次にこの第2の実施形態例の配線基板20を製造する方法について説明する。先ず、図8(a)に示すように、ガラス繊維やアラミド繊維等の耐熱繊維の織布または不織布から成る耐熱繊維基材にポリフェニレンエーテル樹脂とトリアリルイソシアヌレートとを含有する未硬化の樹脂成分を含浸させた絶縁シート31aを複数枚(本例では2枚)準備する。なお、これらの絶縁シート31aは第1の実施形態例における絶縁シート11aと同様のものであり、第2の実施形態例の配線基板20における各絶縁層21aとなるものである。
【0033】
次に、図8(b)に示すように、絶縁シート31aの所定の位置にその上面から下面にかけて直径が30〜200μm程度の複数の貫通孔31vを形成する。これらの貫通孔31vは、配線基板20におけるビア孔21vとなるものであり、前述の第1の実施形態例の場合と同様に各絶縁シート31aの所定の位置に炭酸ガスレーザやYAGレーザ等を用いたレーザ加工法を施すことにより形成される。
【0034】
次に、図8(c)に示すように、各絶縁シート31aの貫通孔31v内に金属粉末と熱硬化性樹脂成分を含有する導体ペースト36を充填する。導体ペースト36は、前述の第1の実施形態例における導体ペースト14と同様のものであり、配線基板20におけるビア導体26となるものである。そして、前述の第1の実施形態例の場合と同様にスクリーン印刷法を採用することにより貫通孔31v内に充填される。
【0035】
次に図8(d)に示すように、各絶縁シート31aの片面または両面に所定パターンにエッチングされた銅箔からなる配線導体22を貫通孔31v内の導体ペースト36と接するように埋入する。絶縁シート31aの片面または両面に配線導体22を埋入するには、前述した第1の実施形態例の場合と同様に、例えばポリエチレンテレフタレートから成る支持フィルム上に所定パターンにエッチングされた配線導体22が剥離可能な状態で保持された転写シートを準備するとともに、この転写シートをその配線導体22が絶縁シート31a側となるようにして絶縁シート31aの片面または両面に積層した状態でそれらを上下からプレスして配線導体22を絶縁シート31aに埋入させた後、支持フィルムを剥離する方法が採用される。
【0036】
次に図8(e)に示すように、上記のようにして配線導体22が埋入された絶縁シート31aの複数枚を所定の順序で積層して未硬化の絶縁基板31を形成するとともに、前述の第1の実施形態例の場合と同様に、この未硬化の絶縁基板31を平坦なプレス面を有する熱プレス装置により上下からプレスしながら加熱することにより、絶縁シート31aの熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂成分および導体ペースト36中の熱硬化性樹脂成分を熱硬化させ、その主面および各絶縁層31a間に配線導体22が埋設された硬化した絶縁基板21を得る。
【0037】
このとき、前述の第1の実施形態例の場合と同様に、絶縁基板31を平滑なプレス面を有する熱プレス装置により上下からプレスしながら加熱する際、絶縁基板21の露出する主面にトリアリルイソシアヌレートが偏析した厚みが0.5〜3μm程度の表皮層とこの表皮層の下にポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする大きさが1〜10μm程度の樹脂塊が多数集合して成る樹脂団塊層を形成する。なお、加熱加圧の条件は前述の第1の実施形態例の場合と同様である。
【0038】
次に、前述した第1の実施形態例の場合と同様に絶縁基板21の表面に砥粒を吹付けることにより絶縁基板21の主面から表皮層を除去して樹脂団塊層を露出させる。露出した樹脂団塊層は大きさが1〜10μm程度の樹脂塊が集合してなり、露出する絶縁基板21の主面に算術平均粗さで100〜300nm程度の微小な凹凸を有する粗面を形成する。この場合も前述した第1の実施形態例の場合と同様に、配線導体2に傷による断線を発生させるようなことは一切ない。また、表皮層に砥粒を吹付けて表皮層を除去するだけで、その下にある樹脂団塊層により絶縁基板1の表面に微細な凹凸を有する粗面を形成することができるので極めて生産性に優れている。
【0039】
次に、図9(f)に示すように、絶縁基板21の主面にエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る第1層目のビルドアップ樹脂層23を積層する。このとき、絶縁基板21の露出した主面は樹脂団塊層が露出した算術平均粗さが100〜300nm程度の粗面となっていることから、この粗面の微小な凹凸とビルドアップ樹脂層23とが噛み合うことにより絶縁基板21とビルドアップ樹脂層23とが強固に密着する。なお、絶縁基板21の主面にビルドアップ樹脂層23を積層するには、未硬化のエポキシ樹脂成分を含有する樹脂フィルムを絶縁基板21の両主面に積層するとともに熱硬化させた後、その所定の位置に炭酸ガスレーザやYAGレーザ等を用いたレーザ加工法によりビア孔23vを形成すればよい。
【0040】
次に、図9(g)に示すように、第1層目のビルドアップ樹脂層23の主面およびビア孔23v内に周知のセミアディティブ法を用いて無電解銅めっきおよび電解銅めっきから成る第1層目のビルドアップ配線層24を所定のパターンに形成する。
【0041】
次に、図9(h)に示すように、次層のビルドアップ樹脂層23およびビルドアップ配線層24を上記と同様にして形成した後、最表層のビルドアップ樹脂層23およびビルドアップ配線層24の上に電子部品接続パッド24aおよび外部接続パッド24bを露出させるようにしてソルダーレジスト樹脂層25を被着する。ソルダーレジスト樹脂層25を被着するには、前述の第1の実施形態例の場合と同様に、感光性を有する未硬化のエポキシ樹脂成分を含有する樹脂フィルムを最表層のビルドアップ樹脂層23およびビルドアップ配線層24の上に積層するとともに周知のフォトリソグラフィ技術を採用して電子部品接続パッド24aおよび外部接続パッド24bを露出させる所定のパターンに露光および現像を行なった後、その樹脂フィルムを紫外線硬化および熱硬化させる方法が採用される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の配線基板における第1の実施形態例を示す概略断面図である。
【図2】本発明における絶縁基板の主面状態を示すSEM写真である。
【図3】本発明における絶縁基板の主面状態を示すAFM写真である。
【図4】(a),(b)は第1の実施形態例の配線基板を製造する方法を説明するための概略断面図である。
【図5】(c),(d)は第1の実施形態例の配線基板を製造する方法を説明するための概略断面図である。
【図6】(e),(f)は第1の実施形態例の配線基板を製造する方法を説明するための概略断面図である。
【図7】本発明の配線基板における第2の実施形態例を示す概略断面図である。
【図8】(a)〜(e)は第2の実施形態例の配線基板を製造する方法を説明するための概略断面図である。
【図9】(f)〜(h)は第2の実施形態例の配線基板を製造する方法を説明するための概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1,21:絶縁基板
2,22:配線導体
3,23:樹脂層
11,31:未硬化の絶縁基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル樹脂を含有する絶縁材料から成る絶縁基板の主面に、金属から成る配線導体および該配線導体の少なくとも一部を被覆するエポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る樹脂層を被着させて成る配線基板であって、前記主面の前記樹脂層が被着された面は、ポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して形成された粗面であることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
ポリフェニレンエーテル樹脂とトリアリルイソシアヌレートとを含有する未硬化の絶縁材料から成り、主面に金属から成る配線導体が被着された未硬化の絶縁基板を準備する工程と、前記未硬化の絶縁基板を表面が平滑なプレス板で挟みながら加熱加圧することにより前記ポリフェニレンエーテル樹脂とトリアリルイソシアヌレートとを反応させて硬化した絶縁基板を得るとともに該硬化した絶縁基板の露出主面にトリアリルイソシアヌレートが偏析した表皮層および該表皮層の下にポリフェニレンエーテル樹脂を主成分とする樹脂塊が多数集合して成る樹脂団塊層を形成する工程と、前記絶縁基板から前記表皮層を除去し、前記絶縁基板の主面に前記樹脂団塊層を露出させる工程と、該樹脂団塊層が露出した前記主面に、エポキシ樹脂を含有する絶縁材料から成る樹脂層を前記配線導体の少なくとも一部を被覆するように被着させる工程と、を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−182221(P2009−182221A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21187(P2008−21187)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】