説明

配線基板およびプローブカードならびに電子装置

【課題】 絶縁樹脂層とセラミック配線基板との間に熱応力発生したとしても、配線が破断してしまう可能性がより低減された高信頼性の配線基板を提供すること。
【解決手段】 セラミック配線基板1と、セラミック配線基板1の上面に積層された複数の絶縁樹脂層2と、複数の絶縁樹脂層2それぞれの上面の配線層3と、絶縁樹脂層2の上下に位置する配線層3・3間を接続するビア導体4と、最下層の絶縁樹脂層2の上面からセラミック配線基板1内に至り、最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3とセラミック配線基板1の上面の外部配線7aとを接続する貫通導体6とを具備する配線基板。熱応力が大きくなるセラミック配線基板1と最下層の絶縁樹脂層2との界面に、比較的接続強度の弱いビア導体4の端面と外部配線7aとの接続部を有さないので、配線が破断してしまう可能性が低減された高信頼性の配線基板となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカードに用いられる配線基板または半導体素子や圧電振動子等の電子部品を搭載するための配線基板、ならびにそのような配線基板を用いたプローブカードおよび電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化・高密度化に伴い、電子機器に使用される半導体素子のみならず、その半導体素子が搭載されるパッケージや配線基板、あるいは半導体素子の電気的な検査をするためのプローブカードに対しても配線の微細化および高密度化が要求されている。また、半導体素子の高速化に伴って高周波信号の伝送が可能であることも求められ、プローブカードに対しては平坦性に優れていることも求められている。
【0003】
このような要求にこたえるものとして、微細なパターン加工が可能であり、平坦性および高周波特性に優れた基板として、研磨加工により平坦化したセラミック基板上に薄膜導体と薄膜の絶縁層とを複数層形成した多層配線部を形成した、いわゆるビルドアップ方式の配線基板がある(例えば、特許文献1を参照。)。図6は、従来の配線基板の一例を示す断面図である。従来の配線基板は、複数のセラミック絶縁層18と内部配線15および外部配線17とから成るセラミック配線基板11の上面に絶縁樹脂層12と配線層13とを交互に積層して形成されていた。そして、絶縁樹脂層12の上下に位置する配線層13同士、および最下層の絶縁樹脂層12の上面の配線層13とセラミック配線基板11の上面の外部配線17aとはビア導体14により接続されているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−214586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の配線基板は、最下層の絶縁樹脂層12に形成されたビア導体14とセラミック配線基板11の上面に形成された外部配線17aとの接続部に、絶縁樹脂層12の熱膨張係数とセラミック配線基板11の熱膨張係数の差による熱応力が加わりやすいものであった。これは、セラミック配線基板11の上面の外部配線17aはその厚みが薄く、絶縁樹脂層12に比べてセラミック配線基板11のセラミック絶縁層18との接合強度が高いので、熱膨張の挙動は、セラミック配線基板11(セラミック絶縁層18)の挙動に準じた挙動を示し、ビア導体14は絶縁樹脂層12内に形成されているので絶縁樹脂層12の挙動に準じた挙動を示すことから、最下層の絶縁樹脂層12に形成されたビア導体14とセラミック配線基板11の上面に形成された外部配線17aとの接合界面の位置が、セラミック配線基板11と絶縁樹脂層12との間の熱応力が大きくなる位置と実質的に一致するからである。
【0006】
このような従来の配線基板に対して、配線層13のさらなる微細化が求められ、ビア導体14のセラミック配線基板11の上面の外部配線17aとの接続部が、例えば直径50μm程度以下の小さいものとなると、ビア導体14とセラミック配線基板11の上面に形成された外部配線17aとの接続強度が小さくなる。また、半導体素子の電気的な検査はウエハ上の多数の半導体素子をプローブカードにて同時に行なうが、半導体素子のコスト低下のためにこのウエハの大きさが大きくなると、プローブカードも大型にする必要があり、プローブカード用の配線基板が大型になると、ビア導体14のセラミック配線基板11の上面の外部配線17aとの接続部に加わる熱応力も大きいものとなる。そのため、最下層の絶縁樹脂層12のビア導体14とセラミック配線基板11の上面の外部配線17aとの間で断線しやすくなるという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、絶縁樹脂層12とセラミック配線基板11との間に熱応力発生したとしても、配線が破断してしまう可能性がより低減された高信頼性の配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の配線基板は、セラミック配線基板と、該セラミック配線基板の上面に積層された複数の絶縁樹脂層と、複数の該絶縁樹脂層それぞれの上面の配線層と、前記絶縁樹脂層の上下に位置する前記配線層間を接続するビア導体と、セラミック配線基板内から最下層の前記絶縁樹脂層の上面に至り、セラミック配線基板の表面配線層と最下層の前記絶縁樹脂層の上面の前記配線層とを接続する貫通導体とを具備することを特徴とするものである。
【0009】
本発明の配線基板は、上記構成において、前記貫通導体は最下層の前記絶縁樹脂層の上面から最下層の前記絶縁樹脂層の上面の配線層内に突出していることを特徴とするものである。
【0010】
本発明のプローブカードは、上記構成の本発明の配線基板と、最上層の前記絶縁樹脂層の上面の配線層に接続されたプローブピンとを具備することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の電子装置は、上記構成の本発明の配線基板と、最上層の前記絶縁樹脂層の上面の配線層に接続された電子部品とを具備することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の配線基板によれば、最下層の絶縁樹脂層の上面からセラミック配線基板内に至り、最下層の絶縁樹脂層の上面の配線層とセラミック配線基板の上面の外部配線とを接続する貫通導体とを具備することから、熱応力が大きくなるセラミック配線基板と最下層の絶縁樹脂層との界面に、比較的接続強度の弱いビア導体の端面と外部配線との接続部を有さず、貫通導体は熱応力によりせん断破壊され難いので、配線が破断してしまう可能性が低減された高信頼性の配線基板となる。
【0013】
本発明の配線基板によれば、上記構成において、貫通導体が最下層の絶縁樹脂層の上面から最下層の絶縁樹脂層の上面の配線層内に突出しているときには、絶縁樹脂層とセラミック配線基板との界面に最も近い貫通導体と最下層の絶縁樹脂層の上面の配線層との接続部において、貫通導体と最下層の絶縁樹脂層の上面の配線層との接続界面に平行な方向に働く熱応力に対して、貫通導体と最下層の絶縁樹脂層の上面の配線層との接続面積が大きく、かつ貫通導体の突出した部分の側面でも応力を受ける構造となっているので、この接続部の接続強度が高いものとなり、配線が破断してしまう可能性がより低減された高信頼性の配線基板となる。
【0014】
本発明のプローブカードによれば、上記構成の本発明の配線基板と、最上層の前記絶縁樹脂層の上面の配線層に接続されたプローブピンとを具備することから、大型のウエハに対応する大型のものであっても、温度変化により配線が破断してしまう可能性が低減された高信頼性のプローブカードとなる。
【0015】
本発明の電子装置によれば、上記構成の本発明の配線基板と、最上層の前記絶縁樹脂層の上面の配線層に接続された電子部品とを具備することから、温度変化により配線が破断してしまう可能性が小さいので、微細配線の半導体素子のようなより小型の電子部品が搭載されたより小型で高信頼性の電子装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1のA部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の配線基板の他の例の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の配線基板の他の例の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】本発明の配線基板の他の例の要部を拡大して示す断面図である。
【図6】従来の配線基板の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の配線基板ならびにそれを用いたプローブカードおよび電子装置について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。図2は、図1のA部を拡大して示す断面図である。図3〜図5は、図2と同様の本発明の配線基板の他の例の要部を拡大して示す断面図である。図1〜図5において、1はセラミック配線基板、2は絶縁樹脂層、3は絶縁樹脂層2の上に形成された配線層、4は絶縁樹脂層2を貫通して形成されたビア導体、5はセラミック配線基板1の内部配線、6は貫通導体、7はセラミック配線基板1の表面の外部配線、7aはセラミック配線基板1の上面の外部配線、8はセラミック配線基板1のセラミック絶縁層である。図1に示す例では、配線基板の最表面の配線層3は4つで、絶縁樹脂層2は2層、セラミック配線基板1のセラミック絶縁層8も3層と簡略化した例を示している。配線基板に搭載する電子部品の端子の数や、プローブカードで検査するウエハ上の半導体素子の数および半導体素子の端子の数、およびそれらの配置に応じて、絶縁樹脂層2,配線層3,ビア導体4,内部配線5,貫通導体6,外部配線7の大きさや配置が設定される。
【0018】
本発明の配線基板は、図1〜図5に示す例のように、セラミック配線基板1と、セラミック配線基板1の上面に積層された複数の絶縁樹脂層2と、複数の絶縁樹脂層2それぞれの上面の配線層3と、絶縁樹脂層2の上下に位置する配線層3・3間を接続するビア導体4と、最下層の絶縁樹脂層2の上面からセラミック配線基板1内に至り、最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3とセラミック配線基板1の上面の外部配線7aとを接続する貫通導体6とを具備することを特徴とするものである。このような構成としたことから、熱応力が大きくなるセラミック配線基板1と最下層の絶縁樹脂層2との界面に、比較的接続強度の弱いビア導体4の端面と外部配線7aとの接続部を有さず、貫通導体6は熱応力によりせん断破壊され難いので、配線が破断してしまう可能性が低減された高信頼性の配線基板となる。また、図1〜図5に示す例のように、貫通導体6は、セラミック配線基板1の内部配線5とはセラミック配線基板1の上面の外部配線7aを介して接続しているので、貫通導体6の寸法やセラミック配線基板1内に埋設された部分の深さをセラミック配線基板1の内部配線5の大きさや配置を考慮せずに決めることができるので、設計の自由度の高い配線基板となる。
【0019】
また、本発明の配線基板は、図3に示す例のように、上記構成において、貫通導体6は最下層の絶縁樹脂層2の上面から最下層の絶縁樹脂層2の上面に位置する配線層3内に突出していることが好ましい。このような構成としたときには、絶縁樹脂層2とセラミック配線基板1との界面に最も近い貫通導体6と最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3との接続部において、貫通導体6と最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3との接続界面に平行な方向に働く熱応力に対して、貫通導体6と最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3との接続面積が大きく、かつ貫通導体6の突出した部分の側面でも応力を受ける構造となっているので、この接続部の接続強度が高いものとなり、配線が破断してしまう可能性がより低減された高信頼性の配線基板となる。
【0020】
本発明のプローブカードは、上記構成の本発明の配線基板と、最上層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3に接続されたプローブピンとを具備することを特徴とするものである。このことにより、大型のウエハに対応する大型のものであっても、温度変化により配線が破断してしまう可能性が低減された高信頼性のプローブカードとなる。
【0021】
また、本発明の電子装置は、上記構成の本発明の配線基板と、最上層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3に接続された電子部品とを具備することを特徴とするものである。このことにより、大型のウエハに対応する大型のものであっても、温度変化により配線が破断してしまう可能性が低減された高信頼性のプローブカードとなる。
【0022】
セラミック配線基板1は、セラミックスから成る絶縁基体とその表面に形成された外部配線7・7aおよび内部に形成された内部配線5を有する。絶縁基体を図1〜図5に示す例のように複数のセラミック絶縁層8で構成し、内部配線5を展開することでセラミック配線基板1の下面の外部配線7の間隔を大きくすることができる。絶縁樹脂層2の上面の配線層3の間隔が大きい場合は、内部配線5を展開する必要がないので、セラミック絶縁層8は1層で構成してもよい。セラミック配線基板1の下面の外部配線7は配線基板を外部回路に接続するためのものであり、セラミック配線基板1の上面の外部配線7aはその上の絶縁樹脂層2に形成されたビア導体4および配線層3と貫通導体6を介して接続するためのものである。内部配線5は、セラミック配線基板1の下面の外部配線7と絶縁樹脂層2に形成された配線層3等とをセラミック配線基板1の上面の外部配線7aを介して電気的に接続するためのものであり、セラミック絶縁層8・8間の内部配線層と、セラミック絶縁層8を貫通して内部配線層間や内部配線層と外部配線7とを接続する内部貫通導体とがある。
【0023】
セラミック配線基板1のセラミック絶縁層8は、酸化アルミニウム(アルミナ:Al)質焼結体,窒化アルミニウム(AlN)質焼結体,炭化珪素(SiC)質焼結体,ムライト質焼結体,ガラスセラミックス等のセラミックスから成るものである。プローブカードに用いる場合は、熱膨張係数がウエハを形成するシリコン(Si)に近い、酸化アルミニウム(Al)質焼結体またはガラスセラミックスが好ましい。セラミック絶縁層8がこのようなセラミックスから成るものであると、配線基板上にプローブ端子を形成する際に、プローブ端子やプローブ端子の接合部に加わる、プローブ端子とともに接合されるウエハと配線基板との熱膨張差による熱応力が比較的小さなものとなるので好ましい。また、プローブカードとして用いた場合に、半導体素子の電気特性の測定時における熱負荷に対する熱変形を有効に防止でき、さらに、高い熱伝達性により内部に熱を滞留させることがない。
【0024】
セラミック配線基板1の内部配線5および外部配線7・7aは、セラミック絶縁層8と同時焼成により形成される、タングステン(W),モリブデン(Mo),モリブデン−マンガン(Mo−Mn)合金,銀(Ag),銅(Cu),金(Au),銀−パラジウム(Pd)合金等の金属を主成分とするメタライズからなるものである。
【0025】
このようなセラミック配線基板1は、以下の方法により製作される。例えば、セラミック絶縁層8が酸化アルミニウム質焼結体で形成される場合には、まず、酸化アルミニウム,酸化珪素,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムの原材料粉末に適当な有機バインダおよび溶媒を添加混合して泥漿状となすとともに、これをドクターブレード法等によってシート状に成形し、セラミック絶縁層8となる複数のセラミックグリーンシートを作製する。
【0026】
次に、セラミックグリーンシートの内部貫通導体が形成される所定位置に適当な打ち抜き加工により貫通孔を形成するとともに、貫通孔に導体ペーストを充填する。また、スクリーン印刷法等によってセラミックグリーンシートの所定位置に内部配線層となる導体ペースト層を10〜20μmの厚みに形成する。導体ペーストは、タングステン(W),モリブデン(Mo),モリブデン−マンガン(Mo−Mn)合金等の融点の高い金属粉末と適当な樹脂バインダおよび溶剤とを混練することにより作製される。
【0027】
最後に、これらセラミックグリーンシートを重ね合わせて圧着して積層体を作製し、この積層体を1500℃〜1600℃程度の高温で焼成することによりセラミック配線基板1が作製される。セラミック配線基板1の外部配線7・7aの表面には、腐食防止や外部回路との接続性のために、厚さ1〜10μm程度のニッケルめっき層および厚さ0.1〜3μm程度の金めっき層を順次形成するとよい。内部配線5(内部貫通導体)のセラミック配線基板1の表面に露出する部分にも同様のめっき層を形成してもよい。
【0028】
セラミック配線基板1の上面の外部配線7aは、外部配線7aを有さないセラミック配線基板1を作製して、その上面を研磨するなどして平坦にした後に、モリマン法等のメタライズ法や蒸着法,スパッタリング法,イオンプレーティング法等の薄膜形成法により形成してもよい。メタライズ法の場合は、例えば、スクリーン印刷法等によってセラミック配線基板1の所定位置にタングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn)等の金属粉末と適当な樹脂バインダおよび溶剤を含む金属ペーストを塗布し、1400℃以上の高温で熱処理することにより作製される。薄膜形成法の場合は、セラミック配線基板1の上面の全面に、0.1μm〜3μm程度の厚みの、例えばクロム(Cr)−Cu合金層やチタン(Ti)−Cu合金層から成る下地導体層を形成し、その上に外部配線7aのパターン形状の開口を有するレジスト膜を形成して、このレジスト膜をマスクとしてめっき等で銅や金等の金属から成る、2μm〜10μm程度の厚みの主導体層を形成する。そして、レジスト膜を剥離除去し、下地導体層の露出した部分をエッチングにより除去することで外部配線7aが形成される。その表面には、さらに、めっき法によりニッケルや金のめっき層を形成するとよい。
【0029】
絶縁樹脂層2は、ポリイミド樹脂,ポリフェニレンサルファイド樹脂,全芳香族ポリエステル樹脂,BCB(ベンゾシクロブテン)樹脂,エポキシ樹脂,ビスマレイミドトリアジン樹脂,ポリフェニレンエーテル樹脂,ポリキノリン樹脂,フッ素樹脂等の絶縁性の樹脂から成るものである。
【0030】
セラミック配線基板1の上に絶縁樹脂層2を形成するには、例えば、ポリイミド樹脂からなる場合には、ワニス状のポリイミド前駆体を基板1の上面にスピンコート法・ダイコート法・カーテンコート法・印刷法等の塗布法により塗布し、しかる後、400℃程度の熱で硬化させてポリイミド化させることによって10μm〜50μm程度の厚みに形成する。あるいは、上記樹脂から成る10μm〜50μm程度のシートの下面に、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂,シロキサン変性ポリイミド樹脂,ポリイミド樹脂,ビスマレイミドトリアジン樹脂,エポキシ樹脂等の樹脂接着剤を乾燥厚みで5μm〜20μm程度にドクターブレード法等の塗布法にて塗布して乾燥させることで接着剤層を形成し、これをセラミック配線基板1の上に重ねて加熱プレスすることで形成する。いずれの方法においても、絶縁樹脂層2にビア導体4および配線層3を形成して上記工程を必要な絶縁樹脂層2の数だけ繰り返すことで複数の絶縁樹脂層2が形成される。フィルムの樹脂を用いる方法は、複数のフィルムを一括してプレスすることが可能であり、1層毎に塗布および硬化を行なう必要がないので、製造工程を短くすることができる。
【0031】
絶縁樹脂層2にはビア導体4が形成されるので、この部分には例えば、直径20μm〜100μmの貫通孔が形成される。この貫通孔の形成方法は、まず絶縁樹脂層2に開口を有するレジスト膜を形成するとともにこのレジスト膜の開口に位置する絶縁樹脂層2をエッチングすることによって、あるいはレーザを使い直接絶縁樹脂層2の一部を除去することによって形成される。このときのレーザはエキシマレーザ,COレーザ等を用いることができるが、貫通孔の内壁の形状を垂直に近く調整でき、さらに貫通孔の内壁面を滑らかに加工できる紫外線レーザで形成しておくのが望ましい。あるいは、ワニス状の樹脂を塗布する方法の場合であれば、感光性の樹脂を用いて、例えば露光により貫通孔が形成される部分以外を硬化させて、貫通孔が形成される部分の樹脂をエッチングにより除去することにより貫通孔を形成してもよい。
【0032】
配線層3の形成は、まず、蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法等の薄膜形成法により、絶縁樹脂層2の主面の全面に、0.1μm〜3μm程度の厚みの、例えばクロム(Cr)−Cu合金層やチタン(Ti)−Cu合金層から成る下地導体層を形成する。次に、下地導体層の上に配線層3のパターン形状の開口を有するレジスト膜を形成して、このレジスト膜をマスクとしてめっき等で銅や金等の電気抵抗の小さい金属から成る、2μm〜10μm程度の厚みの主導体層を形成する。そして、レジスト膜を剥離除去し、下地導体層の露出した部分をエッチングにより除去することで配線層3が形成される。最上層の配線層3の表面には、外部配線7と同様に、めっき法によりニッケルや金のめっき層を形成するとよい。
【0033】
配線層3は、図4に示す例のように、絶縁樹脂層2に配線層3と同形状の凹部を形成しておき、その凹部内に配線層3を形成すると、絶縁樹脂層2の上面と配線層3の上面との間に段差がなく平坦になるので、複数の絶縁樹脂層2を積層しても配線基板の上面は平坦となり、最上層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3に電子部品やプローブピンをより良好に接続することが可能となるので好ましい。絶縁樹脂層2に凹部を形成するには、絶縁樹脂層2の表面に配線層3のパターン形状の開口を有するレジスト膜を形成して、RIE(Reactive Ion Etching)等のエッチング法により絶縁樹脂層2の露出した部分の表面を除去して形成すればよい。
【0034】
貫通導体6が最下層の絶縁樹脂層2の上面から最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3内に突出している場合は、最下層の絶縁樹脂層2の上面から突出する貫通導体6を形成しておき、それに重なるように上記の方法で配線層3を形成すればよい。図3に示す例では貫通導体6の上面にも配線層3が形成されて接続されているが、配線層3を貫通導体6が貫通して貫通導体6の側面と配線層3とが接続されていてもよい。
【0035】
ビア導体4は、配線層3を形成する前に、例えば、銅等の金属粉末と樹脂を主成分とする導体ペーストを絶縁樹脂層2の貫通孔に充填しておくことにより、図1〜図5に示す例のような、貫通孔が導体により充填されたものが形成される。導体ペーストは、銅等の金属粉末と樹脂と溶媒から成り、貫通孔に充填した後に乾燥させることにより固化するものである。あるいは、配線層3を形成する際に、貫通孔の内面にも下地導体層および主導体層を形成することにより、配線層3と同時に形成してもよい。この場合のビア導体4は、絶縁樹脂層2の貫通孔の内面に被着して形成され、貫通孔は導体により充填されたものとはならない。主導体層を形成する際のめっき厚みを厚くすると、図1〜図5に示す例のような、貫通孔が導体により充填されたものとすることができる。ビア導体4を配線層3と同時に形成する場合は、貫通孔の内面に薄膜により下地導体層を良好に形成することができるように、図1〜図5に示す例のように、貫通孔は絶縁樹脂層2の上面側のほうが大きくなるような形状にするのが好ましい。このような形状の貫通孔は、エッチングにより貫通孔を形成する場合はエッチング条件により、レーザにより貫通孔を形成する場合はレーザの出力等の調節により、感光性樹脂を用いる場合は露光条件やエッチング条件により形成することができる。
【0036】
貫通導体6は、最下層の絶縁樹脂層2の上面からセラミック配線基板1内に至るもの、あるいは、さらに最下層の絶縁樹脂層2の上面から最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3内に突出しているものであるが、最下層の絶縁樹脂層2のビア導体4がセラミック配線基板1内まで延びているものであってもよく、セラミック配線基板1と同時焼成で形成され、セラミック配線基板1の最上層のセラミック絶縁層8から突出しているものであってもよい。
【0037】
貫通導体6が、最下層の絶縁樹脂層2のビア導体4がセラミック配線基板1内まで延びたものである場合は、以下のようにして形成することができる。まず、上面に貫通導体6の下部が入る穴を有するセラミック配線基板1を作製する。上記のようにしてセラミック配線基板1を作製した後にレーザ加工やマスクを用いたブラスト加工により穴を形成してもよいし、焼成前の積層体あるいは最上層のセラミック絶縁層8となるセラミックグリーンシートにレーザ加工等により穴を形成してもよい。このようにして作製したセラミック配線基板1は、例えば、図1〜図4に示す例のようなものとなる。あるいは、最上層のセラミック絶縁層8となるセラミックグリーンシートに、穴となる貫通孔を形成しておいてセラミック配線基板1を作製してもよい。このようにして作製したセラミック配線基板1は図5に示す例のようなものとなる。次に、この穴を有するセラミック配線基板1の上に絶縁樹脂層2を形成して貫通孔を形成する。そして、上記したビア導体4の形成方法により貫通導体6が形成される。貫通導体6を最下層の絶縁樹脂層2の上面から最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3内に突出させる場合は、必要に応じて最下層の絶縁樹脂層2の貫通孔の周囲に予めレジストを形成しておき、貫通導体6となるめっき皮膜の厚みを厚くすればよい。このときに、めっきは電解めっきとし、内部配線5を電極として内部配線5上に銅等のめっき皮膜が析出するようにすると、アスペクト比が高い場合であってもボイドが含まれない貫通導体6を形成できるので、高強度で高接合信頼性、低電気抵抗な貫通導体6となるので好ましい。
【0038】
あるいは、上記ビア導体4と同様に、例えば、銅等の金属粉末と樹脂を主成分とする導体ペーストを絶縁樹脂層2の貫通孔に充填することでも、図1〜図5に示す例のような、貫通孔が導体により充填された貫通導体6を形成することができる。
【0039】
このような、貫通導体6が最下層の絶縁樹脂層2のビア導体4がセラミック配線基板1内まで延びたものである場合で、ワニス状の樹脂を塗布して絶縁樹脂層2を形成するときは、セラミック配線基板1の上面の穴にワニス状の樹脂が入らないように、孔の上部の絶縁樹脂層2に開口する貫通孔が形成されるように、孔の周囲に塗布するとよい。孔へのワニス状の樹脂の流入を防止するためには、図5に示す例のように、絶縁樹脂層2の貫通孔の径をセラミック配線基板1の上面の穴の径より大きくなるように塗布するのが好ましい。ただし、ワニスが穴に入った場合であってもレーザやRIE等のエッチングにより除去することは可能である。樹脂シートを加熱プレスにより接着する方法の場合は、セラミック配線基板1の上面の穴に樹脂が流入することがないので好ましい。
【0040】
貫通導体6が、セラミック配線基板1と同時焼成で形成され、セラミック配線基板1の最上層のセラミック絶縁層8から突出したものである場合は、以下のようにして形成することができる。まず、貫通導体6が上から2番目のセラミック絶縁層8から最上層のセラミック絶縁層8にかけて形成され、最上層のセラミック絶縁層8には内部配線5が形成されていないセラミック配線基板1を作製する。この配線セラミック配線基板1の上面を平坦に研磨し、貫通導体6が上面に露出した部分にレジスト膜を形成する。次にセラミック配線基板1の上面をサンドブラストで研削することにより最上層のセラミック絶縁層8だけを研削した後、レジストを剥離することによって、貫通導体6の一部が上面から突出するとともに内部配線5が表面に露出したセラミック配線基板1が製作される。
【0041】
または、貫通導体6よりセラミック絶縁層8の方がエッチングレートが大きいエッチング方法を用いてもよい。例えば、セラミック絶縁層8がガラスセラミックスであり、貫通導体6が銅を主成分とする場合であれば、貫通導体6の銅よりもセラミック絶縁層8のガラスセラミックスの方がRIEエッチングの加工レートが速いので、銅を主成分とする貫通導体6の上部を柱状に残したままセラミック絶縁層8の表面の除去が可能である。フッ化アンモニウム等のガラスが溶解しやすく、金属は溶解しにくいものをエッチング液として用いても同様にできる。
【0042】
あるいは、セラミック配線基板1を作製する際に、貫通導体6用の導体ペーストをセラミックグリーンシートより焼結収縮が小さい組成、あるいはセラミックグリーンシートより低い温度で焼結収縮してセラミックグリーンシートが焼結収縮するときには収縮しないような組成の導体ペーストを用いて焼成することにより、貫通導体6が突出したセラミック配線基板1を作製することができる。さらに、セラミック絶縁層8がガラスセラミックスから成る場合であれば、セラミックグリーンシートが焼結する温度では焼結収縮しない、アルミナ等を主成分とする拘束グリーンシートを積層体の両面に積層して焼成すると、拘束グリーンシートによりセラミックグリーンシートは積層面方向の焼結収縮が抑えられ、厚み方向により収縮しやすくなるので、貫通導体6を突出させるのがより容易になるとともに、平面方向の収縮が小さく収縮ばらつきや寸法精度が良好なセラミック配線基板1が得られるので好ましい。
【0043】
このような、貫通導体6の一部が最上層のセラミック絶縁層8から突出したセラミック配線基板1の上面に最下層の絶縁樹脂層2を形成するには、例えば、以下のようにすればよい。まず、予めワニス状のポリイミド樹脂を半硬化状態のフィルム状に成形し、それをセラミック配線基板1の上に載せて加熱プレスすることでポリイミド樹脂を硬化し、貫通導体6の上面まで絶縁樹脂層2に覆われた状態にする。そして、貫通導体6が露出するまで絶縁樹脂層2を研磨するとセラミック配線基板1内から最下層の絶縁樹脂層2の上面に至る貫通導体6となる。このときの研磨を機械研磨だけで行うと貫通導体6が機械研磨時の力で曲がり易いので、貫通導体6の上のポリイミド樹脂等の樹脂層の厚みが50μm程度になるまでの粗研磨は機械研磨で行い、その後はRIEを用いて絶縁樹脂層2表面全面をエッチングして平坦にすることが好ましい。特に、最下層の絶縁樹脂層2の上面から最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3内に突出させる場合は、機械研磨により貫通導体6が露出するまで絶縁樹脂層2を研磨した場合であっても、その後はRIEを用いて絶縁樹脂層2の表面全面をエッチングすることで貫通導体6の変形や径の減少を防ぎつつ貫通導体6を最下層の絶縁樹脂層2の上面から突出させることができるので好ましい。
【0044】
貫通導体6は、上記のような製造方法および材質の場合には、その径が75μm〜200μm程度であれば、絶縁樹脂層2の熱膨張係数とセラミック配線基板1の熱膨張係数の差による熱応力により破断してしまう可能性が小さい。また、このとき、貫通導体6の最下層の絶縁樹脂層2とセラミック配線基板1との界面から最下層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3までの長さ(=最下層の絶縁樹脂層2の厚み)が20μm〜50μm程度であり、貫通導体6の最下層の絶縁樹脂層2とセラミック配線基板1との界面からセラミック配線基板1内に位置する下端までの長さ(=図5に示す例では、セラミック配線基板1の最上層のセラミック絶縁層8の厚み)が100μm〜500μm程度であれば、熱応力により貫通導体6と配線層3との接続部や貫通導体6と内部配線5との接続部で破断してしまう可能性が小さい。
【0045】
本発明のプローブカードは、上記のような本発明の配線基板と、最上層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3に接続されたプローブピンとを具備するものである。プローブピンは、例えば、以下のようにして作製され、本発明の配線基板に取り付けられる。まず、シリコンウエハの1面にエッチングにより複数のプローブピンの雌型を形成し、雌型を形成した面にめっき法によりニッケルから成る金属を被着させるとともに雌型をニッケルで埋め込み、埋め込まれたニッケル以外のウエハ上のニッケルをエッチング等の加工を施すことにより除去して、ニッケル製プローブピンが埋設されたシリコンウエハを作製する。このシリコンウエハに埋設されたニッケル製プローブピンを配線基板の最上層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3にはんだ等の接合材で接合する。そして、シリコンウエハを水酸化カリウム水溶液で除去することによって、プローブカードが得られる。
【0046】
本発明の電子装置は、上記のような本発明の配線基板と、最上層の絶縁樹脂層2の上面の配線層3に接続された電子部品とを具備するものである。電子部品は、例えばICチップ等の半導体素子や水晶振動子等の圧電振動子であり、チップコンデンサ等の受動素子も必要に応じて搭載される。このような電子部品の配線層3への接続は、はんだ付けや導電性接着剤による接着、およびワイヤボンディングにより行なわれる。
【符号の説明】
【0047】
1:セラミック配線基板
2:絶縁樹脂層
3:配線層
4:ビア導体
5:内部配線
6:貫通導体
7:外部配線
7a:セラミック配線基板の上面の外部配線
8:セラミック絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック配線基板と、該セラミック配線基板の上面に積層された複数の絶縁樹脂層と、複数の該絶縁樹脂層それぞれの上面の配線層と、前記絶縁樹脂層の上下に位置する前記配線層間を接続するビア導体と、最下層の前記絶縁樹脂層の上面からセラミック配線基板内に至り、最下層の前記絶縁樹脂層の上面の前記配線層と前記セラミック配線基板の上面の外部配線とを接続する貫通導体とを具備することを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記貫通導体は最下層の前記絶縁樹脂層の上面から最下層の前記絶縁樹脂層の上面の配線層内に突出していることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配線基板と、最上層の前記絶縁樹脂層の上面の配線層に接続されたプローブピンとを具備することを特徴とするプローブカード。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の配線基板と、最上層の前記絶縁樹脂層の上面の配線層に接続された電子部品とを具備することを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−192784(P2010−192784A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37344(P2009−37344)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】