説明

配線基板の搬送機構

【課題】 めっき処理やエッチング処理を施すために基板を処理槽等に搬送する際に、基板に形成された導体パターンやレジストを損傷させることなく確実に搬送することを可能とし、製品の歩留まりを向上させる。
【解決手段】 軸線方向に所定間隔をあけてコンベヤロール22が取り付けられたロール軸24を、軸線方向を互いに平行にして並置し、各々のロール軸を一方向に回転駆動する回転駆動機構を設けた配線基板10の搬送機構において、前記コンベヤロール22の前記ロール軸24上における軸線方向の取り付け位置が、前記配線基板が前記搬送機構によって搬送される際に搬送方向に連通して設けられたダミー領域が通過する通過幅内に位置調節され、前記配線基板10の送り機構に、前記配線基板の搬送方向に直交する方向への位置ずれを防止するガイド機構26が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板の搬送機構に関し、とくに配線基板を搬送する際のコンベヤロールの配置を特徴とする配線基板の搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板等の配線基板の製造工程では、基板の配線パターンにめっきを施したり、化学的なエッチングを施したりする際に、たとえば水洗槽から液処理槽に基板を水平に搬送して所要の処理を施すといったことが行われる。基板を水平に搬送する搬送機構としては種々の搬送機構が用いられるが、図5に示す搬送機構は、ロール軸24の軸線方向に多数個のコンベヤロール22を取り付けた搬送体を並列に多数個配置し、駆動機構を用いて各々の搬送体を一方向に回転することによって基板10を搬送するように構成したものである。
【0003】
図5に示す搬送機構20は、各々のロール軸24を同一高さとして水平方向に、一定間隔をあけて互いに軸線方向を平行に配置したものである。ロール軸24に取り付けられているコンベヤロール22はすべて同一径に形成され、図5(b)に示すように、コンベヤロール22により基板10が水平に支持され、ロール軸24の回転とともに基板10が水平に搬送される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリント配線基板等の基板では基板の両面に配線パターンが形成されているから、図5に示すような搬送機構20を用いて基板10を搬送する際に、コンベヤロール22が当接する基板面では、基板10に形成されている導体パターンやレジストにコンベヤロール22の周面が接触し、レジストや導体パターンの剥がれや欠損が生じたり、傷が生じたりして、電気的短絡や断線等の問題が発生する。
とくに、最近の配線基板では配線パターンがきわめて高密度に微細なパターンとして形成されるようになってきていること、また、配線層が多層に形成されるようになってきていることから、搬送時の基板10自体の荷重によって、このような障害が発生しやすくなっている。
【0005】
本発明は、これらの課題を解決すべくなされたものであり、めっき処理やエッチング処理を施すために基板を搬送する際に、基板に形成された導体パターンやレジストを損傷させることなく確実に搬送することを可能とし、製品の歩留まりを向上させることができる配線基板の搬送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下の構成を備える。
すなわち、軸線方向に所定間隔をあけてコンベヤロールが取り付けられたロール軸を、軸線方向を互いに平行にして並置し、各々のロール軸を一方向に回転駆動する回転駆動機構を設けた配線基板の搬送機構において、前記コンベヤロールの前記ロール軸上における軸線方向の取り付け位置が、前記配線基板が前記搬送機構によって搬送される際に搬送方向に連通して設けられたダミー領域が通過する通過幅内に位置調節され、前記配線基板の送り機構に、前記配線基板の搬送方向に直交する方向への位置ずれを防止するガイド機構が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また、前記コンベヤロールは、前記配線基板の両側縁部に沿って設けられたダミー領域と、前記配線基板の内部領域に配線基板の搬送方向に連通して設けられたダミー領域に合わせて配置されていることにより、配線基板がコンベヤロールによって確実に支持された状態で搬送される。
また、前記ガイド機構として、前記コンベヤロールと同径に形成されたロール部と、該ロール部から外側に徐々に拡径して形成されたガイド部とを備えるガイドロールが、前記駆動軸の両端に、前記配線基板の幅寸法に合わせて対向配置されていることを特徴とする。ガイドロールが配線基板の側縁をガイドして、配線基板を左右方向に位置ずれさせずに確実に搬送される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る配線基板の搬送機構によれば、配線基板をコンベヤロールに支持して搬送する際に、配線基板に設けられたダミー領域をコンベヤロールが通過するから、配線基板の製品領域に設けられた導体パターンやレジストにコンベヤロールが接触せず、コンベヤロールが接触することによって導体パターンやレジストが剥がれたり、損傷することによって配線パターンが電気的に短絡したり、断線したりすることが防止でき、これによって配線基板の製造歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る配線基板の搬送機構についての実施の形態について添付図面とともに詳細に説明する。
図1は本発明に係る配線基板の搬送機構についての実施の形態の構成を示す平面図である。本実施の形態の配線基板の搬送機構30は、コンベヤロール22を軸線上で所定配置に設けたロール軸24を、軸線方向を互いに平行にして一定間隔に配置し、各々のロール軸24を一方向に回転駆動する回転駆動機構を連携して設けたものである。
【0010】
図1に示す搬送機構30では、ロール軸24を掛け渡すようにして支持する支持レール28a、28bにロール軸24の両端部を各々回転自在に支持し、ロール軸24に回転駆動機構を連携している。回転駆動機構としてはロール軸24の端部にスプロケットを設け、スプロケットに無端状チェーンを係合させてロール軸24を回転駆動するといった方法が利用できる。
【0011】
ロール軸24には軸線方向に間隔をあけてロール軸24と一体回転すべくコンベヤロール22が取り付けられている。本実施形態の搬送機構30で使用しているコンベヤロール22は、板厚が1〜2mm程度の円板状に形成された部材である。これらのコンベヤロール22はロール軸24上で任意の位置に位置合わせして固定することができる。たとえば、ロール軸24を挿通する挿通パイプにコンベヤロール22を取り付け、ロール軸24上でコンベヤロール22を位置合わせして挿通パイプをロール軸24にねじ止めすることにより、ロール軸24上で任意の位置にコンベヤロール22を位置合わせすることができる。コンベヤロール22には樹脂、金属等の適宜材質を選択することができる。
【0012】
本実施形態の搬送機構30において特徴とする構成は、ロール軸24に取り付けるコンベヤロール22のロール軸24上における位置を、基板10に形成される製品領域の平面配置に合わせて設定することにある。すなわち、基板10には所定間隔をあけて製品領域10aが形成されている。ロール軸24に取り付けるコンベヤロール22は、搬送時に、この基板10における製品領域10a以外のダミー領域10bを通過するように配置する。
【0013】
図2は、基板10の配置領域におけるコンベヤロール22およびロール軸24等の平面配置を示す。図示例の基板10は縦横に3×3のマトリクス配置に製品領域10aが配置されている。一般に、配線基板の製造工程では、図のような大判の基板がワークとして使用され、大判の基板には製品領域10aが複数の区画領域として設定されていることが多い。このように製品領域が区画して設計される基板10については、基板10の搬送方向に連通する形態としてダミー領域(製品とならない領域)10bが形成される。図示例の基板10では基板10の両端に沿って各々ダミー領域10bが形成され、基板10の内部領域には2つのダミー領域10bが基板10の搬送方向の前端から後端へ連通するように設けられている。
【0014】
したがって、本実施形態の場合には、ロール軸24には基板10の両端のダミー領域10bを各々通過するように2個のコンベヤロール22を配置し、また、基板10の内部領域に設けられるダミー領域10bを通過する位置に合わせて2個のコンベヤロール22、22を配置する。こうして、この基板10を搬送する搬送機構としては、ロール軸24の軸線上に4個のコンベヤロール22が配置されることになる。なお、コンベヤロール22が通過する際の通過幅がダミー領域10bよりも狭幅となるように、コンベヤロール22の基板10に当接する周縁部の厚さとダミー領域10bの幅を設定する。
【0015】
こうして、本実施形態の配線基板の搬送機構30では、図1に示すように、各々のロール軸24に取り付けられるコンベヤロール22のロール軸24上の取り付け位置がすべて一致し、基板10の搬送方向に見た場合、コンベヤロール22は一直線状に配列されるようになる。
なお、本実施形態の配線基板の搬送機構30では、基板10を搬送する際に基板10が左右に(基板10の搬送方向に直交する方向)位置ずれしないよう、ロール軸24の両端に取り付けるコンベヤロール22の位置にガイドロール26を取り付けている。
【0016】
ガイドロール26は、図2(b)に示すように、コンベヤロール22と同一径に形成されたロール部26aと、ロール部26aに連続して外周側が徐々に拡径するテーパ面(円錐台状となる)ガイド部26bとを備える。ガイド部26bは、基板10の搬送方向がロール軸24の軸線方向における基準位置から外側に位置ずれした際に基板10を基準位置に復帰させるように作用する。すなわち、基板10はガイドロール26によって両側から挟まれるようにして搬送されることにより、常時、基準位置にガイドされて搬送される。
【0017】
なお、図1に示すように、本実施形態の配線基板の搬送機構30ではロール軸24の一つおきにガイドロール26を配置している。基板10の横ずれを防止するには、基板10がいずれの搬送位置にある場合でも、基板10の搬送方向の少なくとも前後2個所でガイドロール26によって基板10の側縁部をガイド支持する必要がある。図示例の場合は、ロール軸24の1つおきにガイドロール26を配置する設定とすることで、基板10は常時、送り方向の少なくとも2個所でガイドロール26によってガイドされている。
【0018】
このように、本実施形態の配線基板の搬送機構によれば、ガイドロール26により基板10の側縁がガイドされることにより、基板10は左右方向に位置ずれせずに搬送され、基板10の搬送方向が位置決めされることによって、基板10に形成されたダミー領域10b内を確実にコンベヤロール22が通過するようにして基板10が搬送される。このように、基板10を搬送する際に基板10のダミー領域10b内をコンベヤロール22が通過することにより、搬送時にコンベヤロール22が基板の製品領域10aに接触することがなく、したがって基板10にコンベヤロール22が接触することによって基板10に形成された導体パターンやレジストが剥離したり、損傷を受けたりするという問題を解消することができる。
【0019】
図3は、図1、2に示す基板10とは異種の基板11を搬送機構30によって搬送する例を示す。基板11には、上記基板10とは異なり、4×4のマトリックス配置に製品領域11aが整列して形成されている。したがって、基板11の両端に沿ってダミー領域11bが形成され、基板11の内部領域に基板11の搬送方向に連通する配置に3つのダミー領域11bが形成される。
搬送機構30では、基板11のダミー領域11bの配置に合わせて、ロール軸24におけるコンベヤロール22の配置位置を調節する。すなわち、基板11の両側縁に沿って形成されるダミー領域11bに合わせてコンベヤロール22を配置し、基板11の内部領域に形成されるダミー領域11bに合わせて3つのコンベヤロール22を配置する。
【0020】
図3は、基板11における製品領域11aの配列に合わせてコンベヤロール22を配置した状態を示す。前述したように、コンベヤロール22はロール軸24の軸線上で任意に移動可能であり、コンベヤロール22の数を増減することも容易に可能である。したがって、ロール軸24上でのコンベヤロール22の取り付け位置を調節することによって、上述した搬送機構と同一の搬送機構30を使用して、異種の基板11を搬送するようにすることが可能である。
なお、図1、2に示した搬送機構30と同様に、基板11の側縁をガイドして、搬送時に基板11が左右方向に位置ずれすることを防止するガイドロール26は、ロール軸24の1本おきに設けている。
【0021】
本実施形態の配線基板の搬送機構30の場合も、図1に示した実施形態の場合と同様に、搬送機構30によって基板11を搬送する際に、コンベヤロール22は基板11のダミー領域11b内のみを通過し、基板11の製品領域11a内でコンベヤロール22が接触することはないから、基板11を搬送する際に、基板11に形成された導体パターンやレジストが剥がれたり、導体パターンが損傷を受け、電気的な短絡や断線が生じるといった問題を回避することができる。
【0022】
図4は、上述した搬送機構30を配線基板の製造装置に使用する例を示す。同図は、上述した搬送機構30を水洗槽、液処理槽、水洗槽、乾燥槽にわたって連続的に配置した様子を示す。本発明に係る配線基板の搬送機構によれば、上述したように各槽を通過する際に、基板に形成された製品領域以外のダミー領域をコンベヤロール22が通過するから、基板10を搬送する際に、基板10に形成された導体パターンやレジストにコンベヤロール22が接触して、導体パターンやレジストが剥離したり、損傷したりすることを防止することができ、製品の歩留まりを有効に向上させることができる。
【0023】
また、本発明に係る配線基板の搬送機構は、基板に形成されるダミー領域に合わせてコンベヤロール22の配置位置が調節可能となっていることから、基板での製品領域の配置位置が異なる異種製品についても汎用的に使用することが可能である。また、本発明に係る配線基板の搬送機構は、基板を搬送する搬送方向に対してダミー領域が連通する形態に基板におけるダミー領域が設定されていれば、製品領域の配置や形態にかかわらず適用することができ、必ずしも製品領域が縦横に一定間隔のマトリックス配置に設定されている配線基板の搬送に限られるものではない。なお、基板に形成される製品領域とは、個々の製品領域ごとに単品の製品となるように設計されている場合、各製品領域から複数個の製品が得られるように設計されている場合をともに含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る配線基板の搬送機構の一実施形態の構成を示す説明図である。
【図2】配線基板の搬送機構の構成を示す平面図(a)および側面図(b)である。
【図3】配線基板の搬送機構の他の構成例を示す説明図である。
【図4】配線基板の搬送機構を実際に適用した状態の概略構成を示す説明図である。
【図5】配線基板の搬送機構の従来の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10、11 基板
10a、11a 製品領域
10b、11b ダミー領域
20、30 搬送機構
22 コンベヤロール
24 ロール軸
26 ガイドロール
26a ロール部
26b ガイド部
28a、28b 支持レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に所定間隔をあけてコンベヤロールが取り付けられたロール軸を、軸線方向を互いに平行にして並置し、各々のロール軸を一方向に回転駆動する回転駆動機構を設けた配線基板の搬送機構において、
前記コンベヤロールの前記ロール軸上における軸線方向の取り付け位置が、前記配線基板が前記搬送機構によって搬送される際に搬送方向に連通して設けられたダミー領域が通過する通過幅内に位置調節され、
前記配線基板の送り機構に、前記配線基板の搬送方向に直交する方向への位置ずれを防止するガイド機構が設けられていることを特徴とする配線基板の搬送機構。
【請求項2】
前記コンベヤロールは、前記配線基板の両側縁部に沿って設けられたダミー領域と、前記配線基板の内部領域に配線基板の搬送方向に連通して設けられたダミー領域に合わせて配置されていることを特徴とする請求項1記載の配線基板の搬送機構。
【請求項3】
前記ガイド機構として、前記コンベヤロールと同径に形成されたロール部と、該ロール部から外側に徐々に拡径して形成されたガイド部とを備えるガイドロールが、前記駆動軸の両端に、前記配線基板の幅寸法に合わせて対向配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の配線基板の搬送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−273461(P2006−273461A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91945(P2005−91945)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】