説明

配線基板の製造方法とこれに用いる無電解ニッケルめっき液

【課題】 接続端子部分の銅回路上にニッケルめっき皮膜/置換型無電解金めっき皮膜/還元型無電解金めっき皮膜を形成した配線基板を用いて半導体チップとを半田接合した場合、その接合強度は、半田ボールを基板に搭載するときのリフロー等の加熱工程を繰り返すごとに大きく低下する。本発明はこうした問題点のない配線基板の製造方法とこれに用いる無電解ニッケルめっき液の提供を課題とする。
【解決手段】 接続端子部にニッケルめっき皮膜、金めっき皮膜を設けて半田接合用の配線基板を製造する方法において、マンガンのカルボン酸塩を添加した無電解ニッケルめっき液、好ましくは液中のマンガン濃度が液中のニッケル濃度の1〜10%である無電解ニッケル液を用いてニッケルめっき皮膜を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関し、より具体的には配線基板に施す無電解ニッケルめっき方法とそれに用いる無電解ニッケルめっき液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板等の配線基板においても薄膜化、高密度化の要求が強く、これを可能とする実装方法として配線基板に直接半導体チップを接合するいわゆるチップ・オン・ボード方式での実装が提案され、実用化されてきている。
【0003】
この方式に用いられる配線基板では、半導体チップ接合時の接続信頼性を良くするために、例えば、接続端子部分の銅回路上にニッケルめっき皮膜/置換型無電解金めっき皮膜/還元型無電解金めっき皮膜を形成し半田バンプとの接続信頼性を向上させる技術が開示されている(非特許文献1参照)。
【0004】
そして、このようなめっき皮膜を有する配線基板の接続端子部と半田バンプを介して半導体チップを接続する技術としては、例えば、接続端子部表面に各種組成の半田ボールを搭載し、リフロー(溶融加熱)処理して配線接続部に半田バンプを形成し、この半田バンプ上に半導体チップの電極部が接するように半導体チップを搭載し、再度リフローして半導体チップと配線基板と接合する技術が開示されている(非特許文献2参照)。
【非特許文献1】社団法人プリント回路学会誌「サーキットテクノロジー」(1993年Vol.8 No.5 368〜372頁)
【非特許文献2】回路実装学会誌(1993年Vol.12 No.3 133〜159頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した接続端子部分の銅回路上にニッケルめっき皮膜/置換型無電解金めっき皮膜/還元型無電解金めっき皮膜を形成した配線基板を用いて半導体チップとを接合した場合、その接合強度は、半田ボールを基板に搭載するときのリフロー等の加熱工程を繰り返すごとに大きく低下する。この結果、配線基板と半導体チップとの接続信頼性に深刻な問題を招くことになる。
【0006】
本発明はこうした問題点のない配線基板の製造方法とこれに用いる無電解ニッケルめっき液の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本第1の発明は、接続端子部にニッケルめっき皮膜、金めっき皮膜を設けて半田接合用の配線基板を製造する方法において、マンガンのカルボン酸塩を添加した無電解ニッケルめっき液を用いてニッケルめっき皮膜を設けることを特徴とする配線基板の製造方法である。
【0008】
そして、本第2の発明は、本第1の発明に用いる無電解ニッケル液であり、その液中にマンガンのカルボン酸塩が添加されたことを特徴とする無電解ニッケル液である。
【0009】
そして、本第3の発明は、本第2の発明に加えて、液中のマンガン濃度がニッケル濃度の1〜10%である無電解ニッケル液である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従い得られた配線基板を用いて半導体チップと接合端子部とを半田を介して接合した場合、従来の方法で得られた配線基板を用いた場合よりリフローによる半田接合強度の低下が少なく、基板と部品との接続信頼性の良い半田接合電気配線基板を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明では、接続端子部にニッケルめっき皮膜、金めっき皮膜を設けて半田接合用の配線基板を製造する方法において、接続端子部に無電解ニッケルめっきを施してニッケル皮膜を得るに際してマンガンのカルボン酸を添加した無電解ニッケルめっき液を用いる。そして、その後に従来法と同様に、半田濡れ性を向上させるための無電解金めっき、或いは、電解金めっきを行う。こうして配線基板の接続端子と半導体チップとの接続信頼性を良好にする。
【0012】
具体的には、配線基板の接続端子部や銅リード部や銅パッド部等に無電解ニッケルめっきを施すに際して一般的な無電解ニッケルめっき液中にマンガン濃度がニッケル濃度の1〜10%となるようにマンガンのカルボン酸塩を添加し、この液を用いて所望のめっき厚(例えば1〜5μm程度)になるように無電解ニッケルめっきを行い、さらに、無電解金めっき、或いは、電解金めっきで所望のめっき厚(例えば0.01〜0.05μm程度)の金めっき皮膜を得る。
【実施例】
【0013】
次に、実施例を用いて本発明をさらに説明する。本実施例では、通常の回路を配置したプリント配線板に本発明の方法と従来法とに従い厚さ3μmの無電解ニッケルめっき皮膜を設け、その上に市販の無電解金めっき液(日鉱マテリアルズ社製 CF−500S)を用いて厚さ0.01μmの無電解金めっき皮膜を設けた。そして、このプリント配線板に直径0.45mmの共晶半田ボールを搭載し、その後半田プル強度を測定し、半田接合強度を調べた。
【0014】
半田ボール搭載時のリフロー条件および半田プル強度測定条件をは以下のとおりである。
・リフロー条件
オーブンにてリフロー
1サイクルは以下のとおり
150℃で30秒保持し、その後230℃に昇温し60秒保持する。
・Pull Test 条件
Pull測定装置 アークテック社製 dage2400PC
熱条件 270℃で5秒保持後、45℃に冷却し、その後テストを開始する。
Pull速度 500μm/sec
【0015】
(実施例1)
硫酸ニッケル・6HOが30g/L、次亜リン酸ナトリウムが20g/l、クエン酸ナトリウムが30g/lの無電解ニッケルめっき液に蟻酸マンガンを、マンガン濃度がニッケル濃度の10%となるように添加して本発明の無電解ニッケルめっき液を得た。なお、このめっき液のpHは5.0であった。
【0016】
80℃にしたこの無電解めっき液と、半田搭載部が設けられ、その搭載部が銅むき出しの状態のプリント配線板とを25分間接触させて半田搭載部に厚さ3μmの無電解ニッケルめっき皮膜を設けた。その後、その上に前記した方法で厚さ0.01μmの無電解金めっき皮膜を設けた。
その後、前記した方法に従い半田プル強度を測定した。結果を図1に示した。本例では、リフロー回数が増加しても殆ど半田プル強度の低下が見られなかった。
【0017】
(実施例2)
シュウ酸マンガンを用い、ニッケル濃度に対して3%のマンガン濃度となる用にした以外は実施例1と同様にしてプリント配線板に半田ボールを搭載した。その後、その後、前記した方法に従い半田プル強度を測定した。結果を図2に示した。本例でも、リフロー回数が増加しても殆ど半田プル強度の低下が見られなかった。
【0018】
(従来例)
市販の80℃の無電解ニッケルめっき液(上村工業社製 NPR−4)とプリント配線板とを20分間接触させて厚さ3μmの無電解ニッケル皮膜を作成した以外は実施例1と同様にしてプリント配線板を作成し、半田ボールを搭載した。その後、その後、前記した方法に従い半田プル強度を測定した。結果を図1と図2とに合わせて示した。
【0019】
この結果は、市販液でめっきした基板の半田プル強度はリフロー回数が増えるに連れて低下していることを示しており、本発明の有用性は明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1で得られた結果と従来例で得られた結果を合わせて示した図である。
【図2】実施例2で得られた結果と従来例で得られた結果を合わせて示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続端子部にニッケルめっき皮膜、金めっき皮膜を設けて半田接合用の配線基板を製造する方法において、マンガンのカルボン酸塩を添加した無電解ニッケルめっき液を用いてニッケルめっき皮膜を設けることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1の発明に用いる無電解ニッケル液であり、その液中にマンガンのカルボン酸塩が添加されたことを特徴とする無電解ニッケル液。
【請求項3】
液中のマンガン濃度が液中のニッケル濃度の1〜10%である請求項2記載の無電解ニッケル液。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−241530(P2006−241530A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59867(P2005−59867)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】