説明

配線基板の製造方法及びその実装構造体の製造方法

【課題】本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応え配線基板の製造方法及びその実装構造体の製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明の一形態にかかる配線基板の製造方法は、ポリイミド樹脂を含む第1樹脂層10aの一主面を金属層12で被覆する工程と、金属層12上に部分的に複数の導電層11を形成する工程と、アルカリ性の水溶液を用いて、導電層11の表面を粗化する工程と、導電層11の露出した表面を粗化する工程の後、第1樹脂層10aの一主面を露出させるために、平面視にて導電層11同士の間に配された前記金属層12の一部をエッチングする工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器及びその周辺機器)等に使用される配線基板の製造方法及びその実装構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における実装構造体としては、配線基板に電子部品を実装したものが使用されている。
【0003】
特許文献1には、下地層上にシード層を形成する工程と、該シード層上に銅めっき層を形成する工程と、該銅めっき層をマスクにして前記シード層をエッチングすることにより、配線層を得る工程と、アルカリ性の水溶液を用いて該配線層表面を粗化する工程と、を備えた配線基板の製造方法が記載されている。
【0004】
ところで、特許文献1に記載された配線基板の製造方法において、下地層としてポリイミド樹脂を含む樹脂層を用いた場合、配線層表面の粗化に用いられるアルカリ性の水溶液によって、樹脂層表面に露出したポリイミド樹脂の樹脂分子に含まれるイミド環が加水分解されやすい。その結果、該加水分解によってカルボキシル基が生成されるため、配線層の導電材料がイオン化して該カルボキシル基と結合することにより、配線層同士の間にて絶縁性が低下しやすい。したがって、配線層同士が短絡しやすくなり、ひいては配線基板の電気的信頼性が低下しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009‐277905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応え配線基板の製造方法及びその実装構造体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態にかかる配線基板の製造方法は、ポリイミド樹脂を含む第1樹脂層の一主面を金属層で被覆する工程と、前記金属層上に部分的に複数の導電層を形成する工程と、アルカリ性の水溶液を用いて、前記導電層の表面を粗化する工程と、前記導電層の露出した表面を粗化する工程の後、前記第1樹脂層の一主面を露出させるために、平面視にて前記導電層同士の間に配された前記金属層の一部をエッチングする工程と、を備えている。
【0008】
本発明の一形態にかかる実装構造体の製造方法は、上述した配線基板の製造方法により得られた配線基板に、電子部品を電気的に接続する工程を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一形態にかかる配線基板の製造方法によれば、樹脂層表面に配されたポリイミド樹脂の樹脂分子に含まれるイミド環の加水分解を抑制することにより、導電層同士の間にて絶縁性を高め、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態にかかる実装構造体を厚み方向に切断した断面図であり、図1(b)は、図1に示した実装構造体のR1部分を拡大して示した断面図である。
【図2】図2(a)及び(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図2(c)は、図2(b)に示した実装構造体のR2部分を拡大して示した断面図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する、図2(b)のR2部分に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する、図2(b)のR2部分に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図5】図5は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する、図2(b)のR2部分に相当する部分を拡大して示した断面図である。
【図6】図6(a)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図6(b)は、図6(a)に示した実装構造体のR3部分を拡大して示した断面図である。
【図7】図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法を、該配線基板の製造方法を用いた実装構造体の製造方法を例に、図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1(a)に示した実装構造体1は、本実施形態に係る実装構造体の製造方法を用いて作製されたものであり、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置又はその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2と、電子部品2がバンプ3を介してフリップチップ実装された配線基板4と、を含んでいる。
【0013】
電子部品2は、例えばIC又はLSI等の半導体素子であり、母材が、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム又は炭化珪素等の半導体材料により形成されている。この電子部品2は、各方向への熱膨張率が例えば3ppm/℃以上5ppm/℃以下に設定されている。
【0014】
なお、電子部品2の熱膨張率は、市販のTMA装置を用いてJISK7197‐1991に準じた測定方法により測定される。以下、各部材の熱膨張率は、電子部品2と同様に測定される。
【0015】
バンプ3は、例えば鉛、錫、銀、金、銅、亜鉛、ビスマス、インジウム又はアルミニウム等を含む半田等の導電材料により構成されている。
【0016】
配線基板4は、コア基板5とコア基板5の上下に形成された一対の配線層6とを含んでいる。
【0017】
コア基板5は、配線基板4の強度を高めるものであり、基体7と、該基体7を厚み方向に貫通する筒状のスルーホール導体8と、該スルーホール導体8の内部に配された柱状の絶縁体9と、を含んでいる。
【0018】
基体7は、コア基板5の主要部をなして剛性を高めるものであり、樹脂材料と、樹脂材料により被覆された基材と、該樹脂材料内に含有された無機絶縁フィラーと、を含んでい
る。この基体7は、厚みが例えば0.1mm以上1mm以下に設定され、平面方向への熱膨張率が例えば5ppm/℃以上30ppm/℃以下に設定され、厚み方向への熱膨張率が例えば15ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば5GPa以上30GPa以下に設定されている。
【0019】
なお、基体7の厚みは、基体7を厚み方向(Z方向)に沿って切断し、その切断面を走査型電子顕微鏡で観察し、厚み方向に沿った長さを測定し、その平均値を算出することにより測定される。また、基体7のヤング率は、MTSシステムズ社製Nano Indentor XP/DCMを用いて測定される。以下、各部材の熱膨張率は、基体7と同様に測定される。
【0020】
基体7に含まれた樹脂材料は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂又はポリエーテルケトン樹脂等により形成されたものを使用することができる。
【0021】
基体7に含まれた基材は、繊維により構成された織布若しくは不織布又は繊維を一方向に配列したものを使用することができる。繊維としては、例えばガラス繊維、樹脂繊維、炭素繊維又は金属繊維等を使用することができる。
【0022】
基体7に含まれた無機絶縁フィラーは、基体7を高剛性及び低熱膨張にするものであり、例えば無機絶縁粒子により形成されている。該無機絶縁粒子は、例えば酸化ケイ素を含むものを用いることができ、各方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上7ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば20GPa以上30GPa以下に設定されている。
【0023】
スルーホール導体8は、コア基板5の上下の配線層6を電気的に接続するものであり、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の導電材料により形成されたものを使用することができる。
【0024】
絶縁体9は、後述するビア導体13の支持面を形成するものであり、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂又はビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料により形成されたものを使用することができる。
【0025】
一方、コア基板5の上下には、上述した如く、一対の配線層6が形成されている。配線層6は、図1(a)及び(b)に示すように、複数の絶縁層10と、基体7上及び絶縁層10上に配されて厚み方向に互いに離間し、且つ絶縁層10上にて平面方向に互いに離間する複数の導電層11と、該導電層11と絶縁層10との間に介された金属層12と、絶縁層10を貫通するビア導体13と、を含んでいる。
【0026】
絶縁層10は、導電層11を支持する支持部材として機能するだけでなく、導電層11同士の短絡を防ぐ絶縁部材として機能するものであり、第1樹脂層10aと、該第1樹脂層10aよりもコア基板5側に配された第2樹脂層10bと、を有する。この絶縁層10は、厚みが例えば5μm以上40μm以下に設定されている。
【0027】
第1樹脂層10aは、第2樹脂層10bよりもヤング率が高いとともに平面方向の熱膨張率が小さく、絶縁層10の剛性を高めるとともに平面方向における熱膨張率を低減するものであり、樹脂材料と該樹脂材料内に含有された無機絶縁フィラーとを含んでいる。また、第1樹脂層10aは、平板状に形成されており、コア基板5側の一主面にて、第2樹脂層10bに当接し、他主面にて、複数の導電層11に当接するとともに、該複数の導電
層の間の領域で他の絶縁層10に含まれる第2樹脂層10bに当接する。この第1樹脂層10aは、厚みが例えば2μm上20μm以下に設定され、平面方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上30ppm/℃以下に設定され、厚み方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば2.5GPa以上10GPa以下に設定されている。
【0028】
第1樹脂層10aに含まれた樹脂材料は、ポリイミド樹脂を用いる。このようにポリイミド樹脂を用いることにより、第1樹脂層10aを高剛性及び低熱膨張率にすることができる。このポリイミド樹脂は、イミド環を有する分子を含む樹脂材料を用いることができる。また、ポリイミド樹脂は、各樹脂分子鎖の長手方向が第1樹脂層10aの平面方向に平行である構造を有するフィルム状であることが望ましい。その結果、平面方向への熱膨張率を小さくすることができる。
【0029】
第1樹脂層10aに含まれた無機絶縁フィラーは、例えば酸化ケイ素等の無機絶縁材料を含む無機絶縁粒子により形成することができ、該無機絶縁材料は、上述した基体7に含まれたものと同様のものを用いることができる。該無機絶縁粒子は、第1樹脂層10aの樹脂材料内における含有量が例えば0.5体積%以上3体積%以下に設定されている。
【0030】
なお、第1樹脂層10aの樹脂材料内における無機絶縁粒子の含有量(体積%)は、第1樹脂層10aの切断面を電界放出型電子顕微鏡で撮影し、画像解析装置等を用いて、第1樹脂層10aの樹脂材料に対して無機絶縁粒子の占める面積比率(面積%)を10箇所の断面にて測定し、その測定値の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより測定される。後述する第2樹脂層10bの樹脂材料内における無機絶縁粒子の含有量は、第1樹脂層10aと同様に測定される。
【0031】
第2樹脂層10bは、第1樹脂層10aよりもヤング率が低く、厚み方向に隣接した第1樹脂層10aそれぞれに当接して該第1樹脂層10a同士を接着するとともに、導電層11の側面及び一主面に接着して導電層11を固定するものであり、樹脂材料と該樹脂材料内に含有された無機絶縁フィラーとを含んでいる。この第2樹脂層10bは、厚みが例えば2μm以上20μm以下に設定され、各方向への熱膨張率が例えば10ppm/℃以上100ppm/℃以下に設定され、平面方向への熱膨張率が第1樹脂層10aの例えば2倍以上100倍以下に設定され、ヤング率が例えば0.05GPa以上0.5GPa以下に設定され、ヤング率が第1樹脂層10aの例えば0.0005倍以上0.2倍以下に設定されている。
【0032】
第2樹脂層10bに含まれた樹脂材料は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、又はアミド樹脂等を用いることができる。
【0033】
第2樹脂層10bに含まれた無機絶縁フィラーは、例えば酸化ケイ素等の無機絶縁材料を含む無機絶縁粒子により形成することができ、該無機絶縁材料は、上述した基体7に含まれたものと同様のものを用いることができる。該無機絶縁粒子は、第2樹脂層10bの樹脂材料内における含有量が例えば20体積%以上30体積%以下に設定されている。
【0034】
導電層11は、接地用配線、電力供給用配線又は信号用配線として機能するものであり、側面及び一主面が第2樹脂層10bに当接されており、他主面が金属層12に当接している。この導電層11は、金属層12よりも導電率が高く設定されており、高導電率である銅からなる金属材料により形成されたものを使用することができる。また、導電層11は、厚みが例えば3μm以上20μm以下に設定されている。
【0035】
また、導電層11は、側面及び一主面に微細な凹凸が形成されている。その結果、第2
樹脂層10bとの接着強度を高め、導電層11と第2樹脂層10bとの剥離を低減することにより、導電層11の断線を低減することができる。この凹凸により、導電層11の側面及び一主面の表面粗さは、Ra(算術平均粗さ)が例えば0.1μm以上1μm以下に設定されている。なお、算術平均粗さは、ISO4287:1997に準ずる。
【0036】
また、導電層11は、第1層領域11aと、該第1層領域11a上に配され、結晶の粒塊が第1層領域11aよりも大きく、厚みが第1層領域11aよりも大きい第2層領域11bを有している。この第1層領域11aは、厚みが例えば0.2μm以上1μm以下に設定されており、第2層領域11bは、厚みが例えば2μm以上19μm以下に設定されている。
【0037】
なお、該第1層領域11a及び第2層領域11bは、導電層11を厚み方向に沿って切断し、その切断面を、走査イオン顕微鏡を用いて観察することにより確認することができる。
【0038】
金属層12は、導電層11及び第1樹脂層10aに当接されて、導電層11と第1樹脂層10aとを接着するものである。この金属層12は、チタン、モリブデン、クロム又はニッケルクロム合金からなる金属材料により形成されたものを使用することができる。このような金属材料は、第1樹脂層10aとの界面において、導電層11を構成する銅と比較して、金属粒子がイオン化して遊離しにくいため、金属層12と第1樹脂層10aとの接着強度を高めることができる。また、金属層12は、厚みが例えば0.03μm以上0.1μm以下に設定され、厚みが導電層11の例えば0.0015倍以上0.033倍以下に設定され、側面のRa(算術平均粗さ)が例えば0.01μm以上0.5μm以下に設定されている。
【0039】
ビア導体13は、厚み方向に互いに離間した導電層11同士を相互に接続するものであり、コア基板5に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体13としては、例えば銅、チタン、モリブデン、クロム又はニッケルクロム合金等の金属材料により形成されたものを使用することができる。
【0040】
かくして、上述した実装構造体1は、配線基板4を介して供給される電源や信号に基づいて電子部品2を駆動若しくは制御することにより、所望の機能を発揮する。
【0041】
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図2から図7に基づいて説明する。
【0042】
(1)図2(a)に示すように、コア基板5を準備する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0043】
まず、例えば未硬化の樹脂シートを複数積層するとともに最外層に銅箔を積層し、該積層体を加熱加圧して硬化させることにより、基体7を作製する。なお、未硬化は、ISO472:1999に準ずるA‐ステージ又はB‐ステージの状態である。次に、例えばドリル加工やレーザー加工等により、基体7を厚み方向に貫通したスルーホールを形成する。次に、例えば無電解めっき法、電気めっき法、蒸着法、CVD法又はスパッタリング法等により、スルーホールの内壁に導電材料を被着させて、スルーホール導体8を形成する。次に、スルーホール導体8の内部に、樹脂材料等を充填し、絶縁体9を形成する。次に、導電材料を絶縁体9の露出部に被着させた後、従来周知のフォトリソグラフィー技術、エッチング等により、銅箔をパターニングして導電層11を形成する。
【0044】
以上のようにして、コア基板5を作製することができる。
【0045】
(2)図2(b)及び(c)に示すように、導電層11上に絶縁層10を形成し、該絶縁層10にビア孔Vを形成する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0046】
まず、未硬化の第2樹脂層10bを介して、フィルム状の第1樹脂層10aを導電層11上に配置した後、コア基板7、第2樹脂層10b及び第1樹脂層10aを加熱加圧して第2樹脂層10bを硬化させることにより、導電層11上に絶縁層10を形成する。次に、例えばYAGレーザー装置又は炭酸ガスレーザー装置により、絶縁層10にビア孔Vを形成し、ビア孔V内に導電層11の少なくとも一部を露出させる。
【0047】
(3)図3(a)に示すように、スパッタリング装置又は蒸着装置を用いて、第1樹脂層10aの露出した表面に金属層12を被着させることにより、第1樹脂層10aの露出した表面を金属層12で被覆する。
【0048】
(4)図4(b)に示すように、金属層12上に導電層11を部分的に複数形成するとともに、ビア孔V内にビア導体13を形成する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0049】
まず、図3(b)に示すように、スパッタリング装置又は蒸着装置を用いて、金属層12の露出した表面に導電層11の第1層領域11aを被着させる。次に、図4(a)に示すように、レジストを用いた電気めっき法により、第1層領域11aをシード層として第1層領域11a上に第2層領域11bを部分的に複数形成するとともに、ビア孔V内にビア導体13を形成する。次に、図4(b)に示すように、塩酸及び硫酸の混合液、過酸化水素水及び水酸化ナトリウム水溶液の混合液、塩化第2鉄水溶液又は塩化第2銅水溶液等を用いて、部分的に形成された第2層領域11bをマスクとして第1層領域11aをエッチングすることにより、第1層領域11a及び第2層領域11bからなる導電層11を複数形成するとともに、導電層11同士の間に金属層12を露出させる。
【0050】
このように、スパッタリング装置又は蒸着装置を用いて第1層領域11aを形成することにより、めっき法を用いる場合と比較して、金属層12の酸化を低減しつつ金属層12上に第1層領域11aを形成することができるため、金属層12と第1層領域11aとの密着強度を高めることができる。また、電気めっき法により第2層領域11bを効率良く形成することができる。
【0051】
(5)図5に示すように、アルカリ性の水溶液を用いて、導電層11の表面を粗化する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0052】
まず、塩化パラジウムを含む水溶液に、絶縁層10、導電層11及び金属層12を浸漬させることにより、パラジウムが分散して配されるように、導電層11の表面にパラジウムを付着させる。
【0053】
次に、亜塩素酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムを含むアルカリ性酸化剤の水溶液に、絶縁層10、導電層11及び金属層12を浸漬させることにより、パラジウムを起点として導電層11の露出した表面を部分的に酸化させ、該酸化により形成される酸化銅を結晶成長させることにより、酸化銅の針状結晶からなる凸部を導電層11の側面及び上面に形成する。その結果、導電層11表面に分散したパラジウムによって酸化反応の閾値を下げることができるため、導電層11表面全体でより均一に酸化反応を開始させることができる。それ故、より均一で緻密な凸部を形成することができ、ひいては微細な凹凸を形成することができる。
【0054】
ここで、本実施形態の配線基板4の製造方法においては、アルカリ性の水溶液による処理の際に、導電層11同士の間において、絶縁層10の第1樹脂層10aの表面が金属層
12により被覆されている。その結果、金属層12によって、アルカリ性の水溶液から第1樹脂層10aの表面が保護され、第1樹脂層10aに含まれるポリイミド樹脂とアルカリ性の水溶液との接触が抑制されるため、アルカリ性の水溶液による該ポリイミド樹脂のイミド環の加水分解が抑制される。したがって、該加水分解によるカルボキシル基の生成を抑制することにより、配線層同士の間における絶縁性を高めることができる。
【0055】
また、該加水分解によるポリイミド樹脂の損傷を低減することにより、第1樹脂層10
aの剛性を維持することができる。また、該加水分解によるポリイミド樹脂の損傷を低減することにより、後述する(7)の工程にて第1樹脂層10a上に第2樹脂層10bを形成する際に、該第1樹脂層10aと該第2樹脂層10bとの接着強度を高めることができる。
【0056】
(6)図6(a)及び(b)に示すように、部分的に形成された導電層11をマスクとして金属層12をエッチングすることにより、金属層12同士の間に第1樹脂層10aを露出させる。
【0057】
ここで、金属層12をエッチングする際には、導電層11及び金属層12の内、金属層12を選択的にエッチングすることが望ましい。その結果、導電層11表面の凹凸を維持しつつ、金属層12をエッチングすることができる。
【0058】
このような金属層12の選択的なエッチングは、金属層12がクロム又はニッケルクロム合金からなる場合には硫酸と塩酸との混合液を用いることにより、金属層12がチタンからなる場合には水酸化ナトリウム水溶液と過酸化水素水との混合液を用いることにより、行うことができる。
【0059】
(7)図7に示すように、上述した(2)乃至(6)の工程を繰り返すことにより、配線層6を形成し、配線基板4を作製することができる。
【0060】
(8)配線基板4にバンプ3を介して電子部品2をフリップチップ実装することにより、図1に示す実装構造体1を作製することができる。
【0061】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。
【0062】
例えば、上述した実施形態において、2層の絶縁層により配線層を形成した構成を例に説明したが、絶縁層は3層以上であっても構わない。
【0063】
また、上述した実施形態において、基体として樹脂製のものを用いた構成を例に説明したが、基体としては、例えばセラミック製のものや金属板を樹脂で被覆したものを用いても構わない。
【0064】
また、上述した実施形態の(2)の工程において、セミアディティブ法により導電層を形成した構成を例に説明したが、フルアディティブ法又はサブトラクティブ法により導電層を形成しても構わない。
【符号の説明】
【0065】
1 実装構造体
2 電子部品
3 バンプ
4 配線基板
5 コア基板
6 配線層
7 基体
8 スルーホール導体
9 絶縁体
10 絶縁層
10a 第1樹脂層
10b 第2樹脂層
11 導電層
12 金属層
13 ビア導体
V ビア孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂を含む第1樹脂層の一主面を金属層で被覆する工程と、
前記金属層上に部分的に複数の導電層を形成する工程と、
アルカリ性の水溶液を用いて、前記導電層の表面を粗化する工程と、
前記導電層の露出した表面を粗化する工程の後、前記第1樹脂層の一主面を露出させるために、平面視にて前記導電層同士の間に配された前記金属層の一部をエッチングする工程と、
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記第1樹脂層の一主面を前記金属層で被覆する工程は、
スパッタリング法または蒸着法を用いて、前記金属層を形成する工程を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の配線基板の製造方法において、
前記導電層は、第1層領域と、該第1層領域上に配された第2層領域と、を有しており、
前記導電層を形成する工程は、
スパッタリング法または蒸着法を用いて、前記金属層の一主面を前記第1層領域で被覆する工程と、
電解めっき法を用いて、前記第1層領域上に前記第2層領域を複数形成する工程と、
平面視にて前記第2層領域同士の間に配された前記第1層領域の一部をエッチングする工程と、
を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記金属層の一部をエッチングする工程は、
前記導電層をエッチングせずに、前記金属層をエッチングする工程を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記第1樹脂層の露出した表面に当接する第2樹脂層を形成する工程を更に備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記金属層は、チタン、モリブデン、クロムまたはニッケルクロム合金からなり、
前記導電層は、銅からなる、
ことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の配線基板の製造方法により得られた配線基板に、電子部品を電気的に接続する工程を備えることを特徴とする実装構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−249785(P2011−249785A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99208(P2011−99208)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】