説明

配線基板の製造方法

【課題】製造途中の配線基板表面に印刷を行なう際に、配線基板の反りを抑えつつ印刷工程の効率を向上させる。
【解決手段】配線基板の製造方法は、(a)複数の配線基板形成板と、複数の配線基板形成板を保持可能な枠体部とを用意する工程と、(b)枠体部に複数の配線基板形成板を配置する工程と、(c)押圧部で各々の前記配線基板形成板を押圧すると共に、搬送治具を枠体部に取り付ける工程と、(d)枠体部に取り付けた搬送治具を印刷テーブル上に搬送する工程と、(e)印刷テーブルと各々の配線基板形成板との間に陰圧を発生させることによって、配線基板形成板を印刷テーブル上に吸着させる工程と、(f)搬送治具を枠体部から取り外す工程と、(g)枠体部に取り付けられた状態で印刷テーブル上に吸着された各々の配線基板形成板に対して印刷を行なう工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線基板を製造する際には、製造途中の配線基板の表面に印刷を行なう工程が広く行なわれている。例えば、配線基板に形成されたランドパターンに電子部品を表面実装するために、スクリーン印刷装置等の印刷装置によって、クリームはんだ等の導電性ペーストを配線基板上に所定のパターンで印刷する方法が知られている。このように、製造途中の配線基板の表面に印刷を行なう場合には、印刷工程で用いる印刷機において配線基板との間の位置合わせの精度を向上させようとしても、配線基板に生じた反りに起因して、結果的に印刷の精度が不十分になる場合が生じ得る。従来、このような配線基板の反りに起因する印刷精度の低下を抑えるために、印刷用のマスクプレートを配線基板上に配置する工程に先立って、配線基板を押圧して反りを矯正する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−20392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように印刷の工程に先立って配線基板を押圧することによって配線基板の反りを矯正する場合には、印刷時には、配線基板の反りの抑制が必ずしも充分でない場合が生じ得た。そのため、印刷工程における配線基板の反りを、さらに充分に抑制する構成が望まれていた。また、配線基板の製造効率を向上させるために、複数の配線基板を同時に取り扱って印刷工程に供することが望まれていた。従来は、複数の配線基板を同時に取り扱って、反りを充分に抑制しつつ印刷工程に供する方法については、充分な検討がなされていなかった。
【0005】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、製造途中の配線基板表面に印刷を行なう際に、配線基板の反りを抑えつつ、印刷工程の効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実施することが可能である。
【0007】
[適用例1]
配線基板の製造方法であって、
(a)製造途中の前記配線基板である配線基板形成板を複数用意すると共に、複数の前記配線基板形成板を平面的に保持可能な枠体部を用意する工程と、
(b)前記枠体部における所定の位置に、複数の前記配線基板形成板を配置する工程と、
(c)前記枠体部に配置された各々の前記配線基板形成板を押圧する押圧部を有する搬送治具を、前記枠体部に取り付ける工程であって、前記押圧部で各々の前記配線基板形成板を押圧すると共に、前記搬送治具を前記枠体部に取り付ける工程と、
(d)前記枠体部に取り付けた前記搬送治具を、前記配線基板形成板上に印刷を行なうための印刷テーブル上に搬送する工程と、
(e)前記印刷テーブルと各々の前記配線基板形成板との間に陰圧を発生させることによって、前記押圧部によって押圧されている各々の前記配線基板形成板を前記印刷テーブル上に吸着させる工程と、
(f)前記搬送治具を、前記枠体部から取り外す工程と、
(g)前記枠体部に取り付けられた状態で前記印刷テーブル上に吸着された各々の前記配線基板形成板に対して、印刷を行なう工程と
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【0008】
適用例1に記載の配線基板の製造方法によれば、複数の配線基板形成板を、枠体部上に平面的に配置して、一括して搬送すると共に印刷テーブル上に吸着させるため、配線基板形成板を印刷に供するための工程の効率を向上させることができる。さらに、搬送治具の押圧部を用いて各配線基板形成板を押圧するため、各配線基板形成板の反りを抑えた状態で、印刷テーブルへの搬送を行なうことができ、各配線基板形成板を印刷テーブル上に吸着させることができる。その結果、搬送治具を取り外した後の印刷工程においても、配線基板形成板の反りを抑えた状態を保つことができるため、印刷精度を確保することができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載の配線基板の製造方法であって、前記(c)工程は、各々の前記配線基板形成板を前記枠体部に対して位置合わせして、前記搬送治具を前記枠体部に取り付ける工程を含み、前記(d)工程は、前記搬送治具が取り付けられた前記枠体部と、前記印刷テーブルとを位置合わせして、前記枠体部に取り付けた前記搬送治具を前記印刷テーブル上に配置する工程を含む配線基板の製造方法。適用例2記載の配線基板の製造方法によれば、取り付けや配置の動作を行なう部材間で、その都度位置合わせを行なうという簡便な動作により、各配線基板形成板を印刷テーブルに対して位置合わせすることができ、印刷精度を確保することができる。
【0010】
[適用例3]
適用例1または2記載の配線基板の製造方法であって、前記印刷テーブルは、前記(g)工程において、各々の前記配線基板形成板の表面が前記枠体部の表面から突出するように、各々の前記配線基板形成板が配置される箇所に、前記印刷テーブルの他の領域から突出する台座部を備える配線基板の製造方法。適用例3記載の配線基板の製造方法によれば、印刷テーブル上において、各配線基板形成板の表面が枠体部の表面から突出するため、印刷の工程において印刷用マスクを用いる場合には、印刷用マスクを、配線基板形成板上に支障無く配置することが可能になる。そして、各台座部上に配線基板形成板を配置する際に、配線基板形成板の反りが押圧部によって抑えられているため、配線基板形成板を印刷テーブル上に吸着させる動作を、支障無く行なうことができる。また、配線基板形成板の反りを抑えた状態で配線基板形成板を印刷テーブル上に吸着させることができるため、配線基板形成板の表面を枠体部の表面よりも突出させる場合であっても、配線基板形成板が枠体部上に乗り上げることを抑制可能となり、乗り上げに起因する配線基板形成板のずれを抑えることができる。
【0011】
[適用例4]
適用例1ないし3いずれか記載の配線基板の製造方法であって、前記(c)工程は、前記搬送治具と前記枠体部との間に陰圧を発生させることによって、前記枠体部を前記搬送治具へと吸着させ、前記搬送治具を前記枠体部に取り付ける工程を含み、前記(f)工程は、前記陰圧を解除して、前記搬送治具を前記枠体部から取り外す工程を含む配線基板の製造方法。適用例4記載の配線基板の製造方法によれば、搬送治具を枠体部に取り付ける動作や、搬送治具を枠体部から取り外す動作を、比較的短い時間内で簡便な動作により行なうことが可能になる。
【0012】
[適用例5]
適用例1ないし4いずれか記載の配線基板の製造方法であって、前記(b)工程は、前記枠体部上に、複数の前記配線基板形成板を載置する工程であり、前記(c)工程は、前記配線基板形成板が載置された前記枠体部の面上に、前記搬送治具を重ね合わせて、前記搬送治具における前記枠体部と対向する面に設けた弾性体を備える前記押圧部を、各々の前記配線基板形成板に押しつけることによって、各々の前記配線基板形成板を水平化する工程を含む配線基板の製造方法。適用例5記載の配線基板の製造方法によれば、枠体部上に搬送治具を重ね合わせる動作を行なうことにより、配線基板形成板を押圧部により押圧する動作を行なうことができる。また、押圧部が弾性体を備えるため、押圧の動作に起因する配線基板形成板の損傷を抑制して、配線基板形成板を水平化する効果を高めることができる。
【0013】
[適用例6]
適用例1ないし5いずれか記載の配線基板の製造方法であって、各々の前記配線基板形成板は、略矩形形状に形成されており、前記押圧部は、各々の前記配線基板形成板の四隅を押圧する箇所に設けられている配線基板の製造方法。適用例6記載の配線基板の製造方法によれば、配線基板形成板の反りの抑制を効率良く確実に行なうことが可能となる。さらに、押圧箇所が、配線基板形成板の四隅であることにより、配線基板形成板において、押圧部による押圧に起因して、配線パターンのデザインの自由度が制限されることを抑えることができる。
【0014】
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、配線基板の製造方法により製造された配線基板や、製造途中の配線基板を搬送するための搬送治具、あるいは、配線基板用の印刷装置などの形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】配線基板の製造工程を示す説明図である。
【図2】搬送・印刷工程を示す説明図である。
【図3】枠体部10の概略構成を表わす説明図である。
【図4】段差部13上に配線基板形成板30を載置した様子を示す断面図である。
【図5】搬送治具20の概略構成を表わす平面図である。
【図6】バネ式吸着パッド23と枠体部吸着パッド22の構成を表わす説明図である。
【図7】枠体部10に搬送治具20を取り付ける様子を表わす斜視図である。
【図8】搬送治具20を枠体部10に重ね合わせた様子を模式的に表わす平面図である。
【図9】配線基板形成板30が位置合わせされる様子を表わす説明図である。
【図10】配線基板形成板30の位置合わせを行なう様子を表わす断面模式図である。
【図11】枠体部10に搬送治具20を取り付けた様子を表わす断面模式図である。
【図12】印刷テーブル40の概略構成を表わす斜視図である。
【図13】配線基板形成板30を台座部42上に吸着させた様子を表わす断面模式図である。
【図14】搬送治具20を取り外した様子を表わす断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明に係る実施形態としての配線基板の製造工程を示す説明図である。配線基板は、半導体チップなどの電子部品を表面実装するための部品であり、本実施形態では、電子部品の表面実装に供する直前の形態の部品を配線基板と呼び、製造途中の配線基板を、配線基板形成板と呼ぶ。
【0017】
本実施形態では、配線基板を製造する際には、まず、連結配線基板を作製する(ステップS100)。ここで、連結配線基板とは、配線基板となる複数個の積層体(配線基板形成板)が、縦横に連結された構造をいう。配線基板は、所定のパターンを有する複数の導体層および絶縁体層(誘電体層)を交互に積層して成るビルドアップ基板である。本実施形態では、このような導体層および絶縁体層を順次形成する動作を、縦横に連結された複数の配線基板を対象として、一括して行なっている。また、本実施形態では、特に、配線基板として、コア層(板状コア)を有しない、いわゆるコアレス多層基板を作製している。配線基板を構成する各導体層を形成する方法は、セミアディティブ法の他、フルアディティブ法やサブトラクティブ法を用いることができる。
【0018】
ステップS100において、各配線基板が備えるべき所定数の導体層および絶縁層を所定のパターンで交互に形成した連結配線基板を作製すると、次に、連結配線基板を所定の箇所にて分割する。これにより、個々の配線基板の元となる複数の配線基板形成板が得られる(ステップS110)。
【0019】
ステップS110で分割により複数の配線基板形成板を得て、さらに洗浄工程等を行なった後に、各々の配線基板形成板を、印刷装置に搬送して、印刷の工程に供する(ステップS120)。ステップS120の印刷工程では、配線基板に形成されたランドパターンに電子部品を表面実装するために、スクリーン印刷装置を用いて、導電性ペーストであるクリームはんだ等の導電性ペーストを、配線基板上の電極パッド上に塗布する。なお、ステップS120における印刷工程は、スクリーン印刷以外の方法により行なうこととしても良い。ステップS120の印刷工程を終了することにより、電子部品を実装するための配線基板が完成する。本実施形態では、ステップS120の搬送・印刷工程における、配線基板形成板の反りを抑える工程に特徴があるため、搬送・印刷工程の詳しい構成について、以下、説明する。
【0020】
図2は、ステップS120の搬送・印刷工程を示す説明図である。搬送・印刷工程においては、まず、搬送・印刷工程に供すべき、複数の配線基板形成板30を用意する(ステップS200)。ステップS200で用意する複数の配線基板形成板30は、ステップS110で連結配線基板を分割して得たものである。
【0021】
その後、用意した複数の配線基板形成板30を、枠体部10に嵌め込む(ステップS210)。枠体部10は、複数の配線基板形成板30を、一括して取り扱い、搬送および印刷の工程に供するための部材である。
【0022】
図3は、枠体部10の概略構成を表わす説明図である。図3(A)は、枠体部10の平面図である。枠体部10は、外周が略矩形形状の薄板状部材である。枠体部10には、略矩形形状の配線基板形成板30を一枚ずつ嵌め込み可能となるように、配線基板形成板30よりも一回り大きな嵌め込み穴12が、複数形成されている。本実施形態では、枠体部10には、24個の嵌め込み穴12が設けられている。各々の嵌め込み穴12では、配線基板形成板30の4つの角部に対応する位置に、枠体部10の表面よりも一段低く形成された段差部13が設けられている。そのため、ステップS210における配線基板形成板30の嵌め込みの動作は、配線基板形成板30を段差部13上に載置する動作として行なわれる。
【0023】
図3(B)は、段差部13上に配線基板形成板30を載置した様子を、一つの嵌め込み穴12について拡大して示す平面図であり、図4は、段差部13上に配線基板形成板30を載置した様子を示す断面図である。図3(B)では、段差部13のうち、配線基板形成板30によって覆われている部分については、破線で示している。図4は、図3(B)におけるA−A断面を示している。本実施形態の配線基板は、既述したように、コアレス多層基板であり、コア層を有する配線基板に比べて薄く形成されている。また、各嵌め込み穴12では、配線基板形成板30の嵌め込みの動作が容易となるように、段差部13における段差の深さが十分に確保されている。そのため、段差部13上に配線基板形成板30を載置すると、図4に示すように、配線基板形成板30の表面は、枠体部10の表面よりも低くなる。
【0024】
このように、各嵌め込み穴12に配線基板形成板30を嵌め込むことで、複数の配線基板形成板30が、枠体部10によって、平面的に保持される。さらに、枠体部10には、四隅のうちの対向する2つの角の各々の近傍に、位置決め穴14が設けられている(図3(A)参照)。この位置決め穴14は、この後の印刷の工程における配線基板形成板30の位置決めに関わる構造であり、後に詳しく説明する。なお、枠体部10は、搬送・印刷工程において、配線基板形成板30を載置した状態で、寸法変化を起こすことなく十分に平坦な状態を維持可能な強度および剛性を有していればよい。本実施形態では、枠体部10は、ステンレス鋼により形成した。
【0025】
ステップS210の後には、配線基板形成板30を載置した枠体部10に対して、搬送治具20の取り付けを行なう(ステップS220)。搬送治具20は、配線基板形成板30を載置した枠体部10を、印刷装置が備える印刷テーブル上に搬送するための装置である。図5は、搬送治具20の概略構成を表わす平面図である。搬送治具20は、略矩形形状の板状部材である板状部21を備えている。板状部21の一方の面側(図5に表われている面側)において、対向する2辺の各々の近傍には、取っ手部26が設けられている。本実施形態では、枠体部10上に載置した配線基板形成板30を、印刷装置の印刷テーブル上に搬送する動作は、作業員により手動で行なわれる。その際、取っ手部26を作業員が把持することにより、搬送治具20と一体化した枠体部10の搬送が行なわれる。なお、枠体部10と一体化した搬送治具20を印刷テーブル40へと搬送する動作、および、搬送した搬送治具20を印刷テーブル40上に配置する後述する動作は、作業員による手動に代えて、機械を用いて自動で行なっても良い。
【0026】
搬送治具20の板状部21には、複数のバネ式吸着パッド23と、複数の枠体部吸着パッド22とが取り付けられている。バネ式吸着パッド23は、配線基板形成板30を押圧して、配線基板形成板の反りを抑制するための構造である。また、枠体部吸着パッド22は、搬送治具20へと枠体部10を吸着させるための構造である。なお、バネ式吸着パッド23は、特許請求の範囲の各請求項に記載した、「押圧部」に相当する。
【0027】
図6は、バネ式吸着パッド23および枠体部吸着パッド22の構成を説明するための説明図であり、搬送治具20の一部分の側面を模式的に表わしている。図6に示すように、板状部21は、中空の部材である。枠体部吸着パッド22は、ゴムや樹脂等の弾性体によってカップ状に形成され、カップの開口部側を鉛直方向下方に向けて配置されたパッド部22pを備えている。さらに、枠体部吸着パッド22は、カップ状のパッド部22pの底部に一端が取り付けられ、板状部21に他端が取り付けられた軸部22rを備えている。軸部22rの一端は、パッド部22pの底部を貫通して開口しており、軸部22rの他端は、板状部21内の空間で開口している。このようにして、パッド部22pの内側の空間と、板状部21内とが連通されている。図5に示すように、本実施形態では、搬送治具20は、12個の枠体部吸着パッド22を備えている。板状部21内において、各枠体部吸着パッド22が取り付けられた領域は、バネ式吸着パッド23が取り付けられた領域とは区画されて、吸引空間25を形成している。図5に示すように、搬送治具20には、吸引空間25と連通する吸引配管24が取り付けられている。この吸引配管24には、図示しない真空ポンプが取り付けられている。そのため、吸引空間25内で真空ポンプによる陰圧を発生させることにより、パッド部22pにおいて、吸引力を発生させることができる。本実施形態の搬送治具20においては、真空ポンプにより陰圧が発生している空間と、吸引空間25との連通状態を開閉する図示しない切り替えバルブが、吸引配管24に設けられると共に、上記切り替えバルブを開閉する図示しない搬送治具スイッチが設けられている。搬送治具スイッチをオンにすることで、真空ポンプにより陰圧が発生している空間と吸引空間25とが連通されて、パッド部22pにおいて吸引力が発生する。また、搬送治具スイッチをオフにすることで、真空ポンプにより陰圧が発生している空間と吸引空間25とが非連通状態となると共に、吸引空間25が大気開放されて、パッド部22pで発生した吸引力が解除される。
【0028】
図6に戻り、バネ式吸着パッド23は、板状部21の厚み方向に摺動可能となるように板状部21を貫通して設けられた軸部23rを備える。図6では、軸部23rが摺動(移動)する方向を、矢印で示している。また、バネ式吸着パッド23は、軸部23rの一端であって、枠体部吸着パッド22のパッド部22pと同じ側の端部に設けられ、ゴムや樹脂等の弾性体によって形成されたパッド部23pを備える。さらに、パッド部23pと板状部21との間には、軸部23rの外周に沿って、コイルバネ23sを備えている。コイルバネ23sは、後述するように、配線基板形成板30の反りを抑えるための押圧力を発生するための部材である。また、軸部23rの他端には、ボルト23bが取り付けられている。図6では、ボルト23bが板状部21の表面に係合して、バネ式吸着パッド23全体が最も鉛直方向下方に移動した状態を示している。このように、ボルト23bが板状部21の表面に係合する状態では、パッド部23pの方がパッド部22pよりも板状部21から離間した状態となる。なお、図5に示したように、本実施形態の搬送治具20は、96個のバネ式吸着パッド23を備えている。
【0029】
図7は、ステップS220において、枠体部10に搬送治具20を取り付ける様子を表わす斜視図である。枠体部10に搬送治具20を取り付ける際には、枠体部吸着パッド22のパッド部22pおよびバネ式吸着パッド23のパッド部23pが設けられた側の面が、枠体部10と対向する向きで、搬送治具20を枠体部10に重ね合わせる。なお、図7では、搬送治具20に取り付けられた吸引配管24の記載は省略している。
【0030】
図8は、搬送治具20を枠体部10に重ね合わせた様子を模式的に表わす平面図である。図8では、搬送治具20の下に配置された枠体部10に係る構造は、破線で示している。図8に示すように、搬送治具20が備えるバネ式吸着パッド23は、各々、枠体部10上に載置された各配線基板形成板30の四隅に対応する位置に設けられている。搬送治具20を枠体部10に取り付ける際には、バネ式吸着パッド23を用いて、枠体部10の各々の嵌め込み穴12に対して、嵌め込まれた各配線基板形成板30の位置合わせを行なう。すなわち、各嵌め込み穴12内において、各々の配線基板形成板30を、枠体部10の一の角部である角部Bに対応する角部に位置合わせする。
【0031】
図9は、嵌め込み穴12内で、配線基板形成板30が位置合わせされる様子を表わす説明図である。図9(A)は、ステップS210で、嵌め込み穴12内に配線基板形成板30がランダムに嵌め込まれた様子の一例を表わす。配線基板形成板30の四辺の周囲には、嵌め込み穴12の内壁との間に間隙が形成されている。その後、図8に示す枠体部10の角部Bに対応する角部に位置合わせすることにより、嵌め込み穴12内の配線基板形成板30は、図9(B)に示されるように2辺が嵌め込み穴12の内壁に当接する状態となる。
【0032】
図10は、配線基板形成板30の位置合わせを行なう様子を表わす断面模式図である。取っ手部26を把持した状態で搬送治具20を枠体部10に重ね合わせると、バネ式吸着パッド23のパッド部23pの先端が、配線基板形成板30の四隅の近傍に接触する。図10は、パッド部23pの先端が配線基板形成板30に接触した様子を表わす。この状態で、搬送治具20をさらに鉛直方向下方に押し付け、板状部21を枠体部10に接近させると、バネ式吸着パッド23の軸部23rが鉛直方向上方に摺動し、パッド部23pと板状部21との距離が縮まる。これにより、コイルバネ23sによって、配線基板形成板30を鉛直方向下方に押圧する力が発生する。このように、パッド部23pを配線基板形成板30に接触させて、若干の押圧力が発生する状態で、搬送治具20に対して、図8に示すX方向およびY方向に移動させる向きの水平な力を加える。搬送治具20に対してX方向およびY方向の力を加える動作は、必要に応じて複数回行なっても良い。これにより、枠体部10上に載置される各々の配線基板形成板30を、図9(B)に示すように位置決めすることができる。
【0033】
図11は、ステップS220において枠体部10に搬送治具20を取り付けた様子を表わす断面模式図である。既述したように、パッド部23pを配線基板形成板30の四隅に押し当てつつ配線基板形成板30を嵌め込み穴12内で位置決めした後には、搬送治具20を、さらに鉛直方向下方に押し付ける。すると、枠体部吸着パッド22のパッド部22pの先端が、枠体部10の表面に接触する。このとき、搬送治具20に設けられた既述した搬送治具スイッチをオンにして、吸引空間25において真空ポンプによる陰圧を発生させることにより、パッド部22pに枠体部10を吸着させることができる。すなわち、ステップS220における枠体部10に対する搬送治具20の取付は、搬送治具20に対して枠体部10を吸着させることにより行なわれる。図11では、パッド部22pにおいて枠体部10を吸着する力が発生する様子を、枠体部吸着パッド22に重ねて示した矢印によって表わしている。既述した搬送治具スイッチをオンにすることで、吸引空間25において陰圧を発生させることによる枠体部10の吸着の動作を瞬時に行なうことが可能であるため、各配線基板形成板30は、各々の嵌め込み穴12内で位置合わせされた状態が保持される。なお、吸引空間25内に陰圧を発生させるための搬送治具スイッチを、例えばペダル式のスイッチとすれば、作業者が一人であっても、一対の取っ手部26を両手で保持した状態で、枠体部10を吸着させる動作を容易に行なうことができる。
【0034】
既述したように、バネ式吸着パッド23のパッド部23pは、各配線基板形成板30の四隅の近傍に接触している。そして、バネ式吸着パッド23では、コイルバネ23sによって、各配線基板形成板30に対して鉛直方向下方向きの押圧力が発生している。そのため、搬送治具20が取り付けられた枠体部10では、各配線基板形成板30は、四隅がパッド部23pに押圧されることにより、反りが抑制されて水平化された状態となる。図11では、パッド部23pに配線基板形成板30が押圧される様子を、バネ式吸着パッド23に重ねて示した矢印によって表わしている。なお、バネ式吸着パッド23から押圧力が加えられる配線基板形成板30は、枠体部10の段差部13によって裏面側から支持される。
【0035】
枠体部10に搬送治具20が取り付けられると、次に、搬送治具20を印刷装置へと搬送し、印刷装置の印刷テーブル40上に搬送治具20を設置する(ステップS230)。本実施形態では、このような搬送および設置の動作も、作業者が取っ手部26を把持することにより、手動で行なわれる。
【0036】
図12は、印刷テーブル40の概略構成を表わす斜視図である。印刷テーブル40は、平坦な平面部41を備えており、平面部41から一定の高さで突出した複数の台座部42が設けられている。各々の台座部42は、平面視で、配線基板形成板30とほぼ同じ大きさの略矩形形状に形成されている。そして、各々の台座部42は、配線基板形成板30を載置した枠体部10を印刷テーブル40上の所定の位置に配置した時に、各々の配線基板形成板30が配置される箇所と同じ位置に、設けられている。すなわち、搬送治具20を印刷テーブル40上に設置すると、各々の配線基板形成板30は、対応する台座部42上に重なって載置される。
【0037】
これらの台座部42は、印刷装置における印刷の工程において、配線基板形成板30の水平状態を維持しつつ、配線基板形成板30を隙間無く吸着するための構造である。そのため、台座部42において、配線基板形成板30が載置される面の略中央部には、台座部42上に配置された配線基板形成板30と台座部42との間に陰圧を発生させるための吸引口44が設けられている。各台座部42に設けられた各々の吸引口44は、図示しない真空ポンプに接続されている。そのため、吸引口44において、真空ポンプによる吸引力を発生させることにより、配線基板形成板30を印刷テーブル40上に吸着させることが可能になる。なお、台座部42において、配線基板形成板30が載置される側の表面は、配線基板形成板30を隙間無く吸着できるように、吸引口44以外には凹凸の無い平坦面となっている。
【0038】
さらに、印刷テーブル40には、平面部41から突出する一対の位置決めピン46が設けられている。この位置決めピン46は、印刷テーブル40に対して枠体部10を位置決めするための構造である。枠体部10を取り付けた搬送治具20を印刷テーブル40上に設置する際には、枠体部10が備える位置決め穴14に位置決めピン46が貫通するように、搬送治具20の設置を行なう。これにより、印刷テーブル40に対して枠体部10を位置決めしつつ、印刷テーブル40上に枠体部10を配置することができる。ここで、各配線基板形成板30は、既述したように、各嵌め込み穴12内において枠体部10に対して位置決めされている。そのため、上記のように印刷テーブル40に対して枠体部10を位置決めすることにより、印刷テーブル40に対して各々の配線基板形成板30を位置決めすることができる。これにより、各配線基板形成板30を、各々の台座部42上に、精度良く配置することができる。なお、印刷テーブル40に設ける位置決めピン46および枠体部10に設ける位置決め穴14の数は、2個以外の複数としても良い。
【0039】
搬送治具20を搬送して印刷テーブル40上に設置すると、次に、各配線基板形成板30を、印刷テーブル上に吸着させる(ステップS240)。具体的には、吸引口44から既述した吸引力を発生させるための印刷テーブルスイッチをオンにして、各配線基板形成板30を台座部42上に吸着させる。既述したように、各々の配線基板形成板30は、バネ式吸着パッド23に押圧されることによって反りが抑えられているため、台座部42上に配置された段階で、台座部42上にほぼ密着されている。そのため、吸引口44で吸引力を発生させることにより、配線基板形成板30全体の水平化状態を維持したまま、配線基板形成板30を台座部42に吸着させることができる。
【0040】
図13は、搬送治具20を印刷テーブル40上に配置して、各配線基板形成板30を台座部42上に吸着させた時の様子を表わす断面模式図である。既述したように、各配線基板形成板30は、印刷テーブル40に対して位置合わせされているため、配線基板形成板30は、台座部42上に精度良く配置されている。そして、吸引口44を介して吸引力が発生しているため、配線基板形成板30は、台座部42に吸着されている。また、枠体部吸着パッド22のパッド部22pにおいては、枠体部10に対する吸着力が維持されている。そのため、パッド部22pに吸着される枠体部10は、印刷テーブル40の平面部41からは離間している。
【0041】
その後、搬送治具20の枠体部10からの取り外しを行なう(ステップS250)。搬送治具20の取り外しは、具体的には、既述した搬送治具スイッチをオフにすることで、吸引空間25を大気開放して、枠体部吸着パッド22のパッド部22pにおける吸着力を解除し、その後、搬送治具20を除去することにより行なう。
【0042】
図14は、ステップS250で搬送治具20を取り外した様子を表わす断面模式図である。パッド部22pにおける吸引力が解除されることで、枠体部10は図13の状態から落下し、印刷テーブル40の平面部41上に載置される。枠体部10が落下することにより、台座部42上に配置される各配線基板形成板30の表面は、枠体部10の表面から突出した状態となる。なお、この段階では、吸引口44を介した吸引力は維持されている。
【0043】
搬送治具20を取り外した後は、印刷の工程を行なう(ステップS260)。印刷の工程は、既述したように、スクリーン印刷装置を用いてクリームはんだの塗布を行なっている。その際、メタルマスク(配線基板形成板30上の電極パッドに対応する穴を有する金属製の薄板)を配線基板形成板上に載置し、スキージを使ってクリームはんだの塗布を行なっている。本実施形態では、既述したように、ステップS250で搬送治具20を取り外した時には、配線基板形成板30の表面が枠体部10の表面から突出した状態となるため、印刷テーブル40上から枠体部10を除去しなくても、配線基板形成板30上に、印刷用のマスク(既述したメタルマスク)を、支障なく配置することができる。ここで、各配線基板形成板30は印刷テーブル40に対して位置合わせされているため、印刷用のマスクと印刷テーブル40とを位置合わせすることにより、印刷用のマスクと各配線基板形成板30との間を精度良く位置合わせすることができる。その際に、台座部42上に吸着された各配線基板形成板30は十分に水平化されているため、精度良く印刷を行なうことができる。
【0044】
印刷工程を行なうことにより、電子部品の表面実装に供するための配線基板が完成される。印刷工程が終了した配線基板は、印刷テーブルスイッチをオフにすることで、吸引口44で発生する吸引力を解除して、印刷テーブル40上から枠体部10ごと回収すればよい。
【0045】
なお、既述したように、枠体部10に搬送治具20を取り付けて搬送する際には、枠体部10および搬送治具20において、種々の力が作用する。例えば、枠体部吸着パッド22において発生する吸着力は、鉛直方向上向きの力であり、バネ式吸着パッド23において発生する押圧力は、鉛直方向下向きの力である。搬送治具20においては、枠体部10および搬送治具20において搬送の際に加わる種々の力を考慮して、コイルバネ23sの選択や、枠体部吸着パッド22のパッド部22pにおける吸着面の面積の設定や、枠体部吸着パッド22を設ける個数の設定などを行なう必要がある。以下に、枠体部10および搬送治具20において、搬送の際に加わる力について説明する。
【0046】
搬送時に、枠体部10において鉛直方向下向きにかかる力F1(N)は、以下の(1)式により表わすことができる。
1=Tm×(α+9.8)+F1’ …(1)
ここで、Tmは、枠体部10と、枠体部10上に載置された全ての配線基板形成板30の合計質量(kg)、αは、搬送の際に搬送治具20を鉛直方向上向きに持ち上げる時の加速度(m/s2)、F1’は、すべてのバネ式吸着パッド23から加えられる力(N)、である。
【0047】
すべてのバネ式吸着パッド23から加えられる力F1’は、以下の(2)式により表わすことができる。
1’=k×δ×N1 …(2)
ここで、kは、コイルバネ23sのバネ定数(N/mm)、δは、枠体部10を搬送治具20に吸着させた時のコイルバネ23sの変位量(mm)、N1は、すべてのコイルバネ23sの数(本実施形態では96本)、である。
【0048】
また、搬送時に、枠体部10において鉛直方向上向きにかかる力をF2(N)は、以下の(3)式により表わすことができる。
2=P×S×N2 …(3)
ここで、Pは、枠体部吸着パッド22における真空圧力(Pa)、Sは、パッド部22pにおける吸着に係る面積(m2)、N2は、すべてのパッド部22pの数(本実施形態では、12個)である。
【0049】
ステップS230において、搬送治具20に枠体部10を吸着させた状態で搬送を行なうためには、以下の(4)式が成り立つ必要がある。
1 < F2 …(4)
ここで、枠体部10および配線基板形成板30の質量が定まることにより、(1)式の値Tmが定まる。また、搬送治具20を鉛直方向上向きに持ち上げる時の加速度である(1)式の値αも、十分な確からしさにて、その上限を設定することができる。また、用いるコイルバネ23sを選択すれば、(2)式のバネ定数kを定めることができる。さらに、各部材のサイズを設定すれば、(2)式に示した、枠体部10と搬送治具20とを一体化したときのコイルバネ23sの変位量δを定めることができる。バネ式吸着パッド23を、各配線基板形成板30の四隅に対応して設けるならば、枠体部10上に載置する配線基板形成板30の数を定めることで、(2)式の値N2も定まる。さらに、用いる真空ポンプを決定すれば、(3)式の真空圧力Pも定まる。そのため、(4)式を成り立たせるための値として、(3)式におけるパッド部22pの面積S、および、パッド部22pの数N2を、適宜定めればよい。なお、その際には、さらに安全係数を考慮して、吸着の動作の信頼性を確保すればよい。
【0050】
以上のように構成された本実施形態の配線基板の製造方法によれば、複数の配線基板形成板30を載置した枠体部10に搬送治具20を取り付けて、印刷テーブル40への搬送・載置を行なうため、配線基板形成板30の反りを抑えつつ、印刷工程の効率を向上させることができる。すなわち、複数の配線基板形成板30を、枠体部10上に平面的に配置して、一括して搬送および印刷の工程に供するため、これらの工程の効率を向上させることができる。さらに、搬送治具20のバネ式吸着パッド23を用いて各配線基板形成板30を押圧するため、各配線基板形成板30の反りを抑えた状態で、印刷テーブル40への搬送と、印刷テーブル40上への載置を行なうことができる。そして、このように各配線基板形成板30の反りを抑えた状態で、各配線基板形成板30の印刷テーブル40上への吸着を行なうことができる。その結果、搬送治具20を除去した後の印刷工程においても、配線基板形成板30の反りを抑えた状態を保つことができるため、印刷精度を確保することができる。
【0051】
ここで、配線基板形成板30を印刷テーブル40の各台座部42上に吸着させる際に、配線基板形成板30に反りが生じている場合には、台座部42の表面と配線基板形成板30との間に隙間が生じることにより、吸引口44からの吸引を行なっても、配線基板形成板30が台座部42の表面に密着するように、十分に吸着させることが困難となる場合がある。配線基板形成板30を十分に吸着させることができないと、配線基板形成板30が印刷テーブル40に対して位置ずれを起こす場合があり、その結果、印刷テーブル40上で行なう印刷の精度が低下する可能性がある。例えば、本実施形態のようにコアレス多層基板を製造する場合には、配線基板形成板30が薄いため、配線基板形成板30に対する嵌め込み穴12の内壁面による保持力が不足して、枠体部10上に配線基板形成板30の一部が乗り上げる場合がある。特に、本実施形態のように、印刷用マスクとの接触性確保のために台座部42を設け、配線基板形成板30の表面を枠体部10の表面よりも持ち上げる場合には、嵌め込み穴12の内壁における配線基板形成板30と当接する掛かり部の厚みが小さくなり、配線基板形成板30が枠体部10上に乗り上げやすくなる。このように配線基板形成板30が枠体部10上に乗り上げた場合には、特に位置ずれが問題となり得る。また、配線基板形成板30が反っていることそのものによっても、印刷時のずれが引き起こされ、印刷精度が低下し得る。これに対して、本実施形態では、予め配線基板形成板30の反りを抑えて台座部42上に密着させた状態で、配線基板形成板30を台座部42に吸着させるため、配線基板形成板30の反りに起因する上記した印刷精度の低下を抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態では、押圧部であるバネ式吸着パッド23を用いて各配線基板形成板30の反りを抑制する動作を、配線基板形成板30の四隅を押圧することにより行なうため、配線基板形成板30の反りの抑制を効率良く確実に行なうことが可能となる。さらに、押圧箇所が、配線基板形成板30の四隅であることにより、配線基板形成板30において、バネ式吸着パッド23による押圧に起因して、配線パターンのデザインの自由度が制限されることを抑えることができる。また、本実施形態では、押圧部であるバネ式吸着パッド23のパッド部23pを、ゴムや樹脂等の弾性体によって形成しているため、パッド部23pによる配線基板形成板30の損傷を抑えつつ、配線基板形成板30を水平化する効果を高めることができる。
【0053】
さらに、本実施形態では、枠体部10に対する各配線基板形成板30の位置合わせを、嵌め込み穴12の特定の角部に対する配線基板形成板30の位置合わせとして行なっている。また、印刷テーブル40に対する枠体部10の位置合わせを、一対の位置決めピン46に位置決め穴14を嵌め込む動作により行なっている。そのため、取り付けや配置の動作を行なう部材間で、その都度位置合わせを行なうという簡便な動作により、各配線基板形成板30を、印刷テーブル40に対して位置合わせすることができ、印刷精度を確保することができる。
【0054】
本実施形態の配線基板の製造方法は、コア層を有する場合に比べて薄く形成されるコアレス多層基板を製造する際に、特に好適に適用できる。配線基板の反りは、例えば、ステップS110における分割の工程により生じ易いが、特に、コアレス多層基板では反りが生じ易いためである。ただし、コア層を有する基板の作製時に、本実施形態を適用しても差し支えない。
【0055】
なお、コア層を有する配線基板を製造するために、配線基板形成板を印刷工程に供する場合に、配線基板形成板の反りが許容範囲であれば、搬送治具20の使用は省略しても良い。すなわち、複数の配線基板形成板を位置合わせしつつ枠体部10に載置し、搬送治具20を用いることなくそのまま印刷装置に搬送すると共に、枠体部10と印刷テーブル40とを位置合わせし、各配線基板形成板を台座部42上に吸着させても良い。配線基板形成板の反りが許容範囲であれば、搬送治具20が備える押圧部による反りの抑制を特に行なわなくても、台座部42上への配線基板形成板の吸着を、良好に行なうことができる。このように、コア層を有する配線の作製時に搬送治具20を用いない場合であっても、コアレス多層基板作製時とコア層を有する配線基板作製時とで、印刷装置における印刷テーブル40や枠体部10を共通して用いることができる。
【0056】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
変形例1:
本発明の実施形態では、枠体部10に対する配線基板形成板30の位置合わせは、枠体部10に搬送治具20を重ね合わせて、バネ式吸着パッド23のパッド部22pを配線基板形成板30に接触させた状態で、搬送治具20を枠体部10の一つの角部に引き寄せる力を加えることにより行なった。このような構成とする他に、例えば、枠体部10への配線基板形成板30の嵌め込み時に、個々の嵌め込み穴12において、配線基板形成板30を、特定の共通する角部に接するように嵌め込むこととしても良い。搬送の工程に先立って、枠体部10に対して、より具体的には、枠体部10の個々の嵌め込み穴12内で、個々の配線基板形成板30を位置合わせできればよい。
【0058】
変形例2:
本発明の実施形態では、搬送治具20に設けられて個々の配線基板形成板30を押圧する押圧部として、バネ式吸着パッド23を用いたが、異なる構成としても良い。例えば、搬送治具20において、バネ式吸着パッド23に代えてエアの吹きつけ装置を設けて、エアの圧力を利用して配線基板形成板30を押圧しても良い。配線基板形成板30を印刷テーブル40へと搬送し、印刷テーブル40上に吸着させるまでの間、配線基板形成板30の反りを抑制するための押圧力を加えることができればよい。
【0059】
変形例3:
本発明の実施形態では、搬送治具20を枠体部10に取り付けるために、真空ポンプを用いた吸引力を利用したが、異なる構成としても良い。例えば、搬送治具20と枠体部10とを、機械的に止め付ける機構を設けても良い。ただし、真空ポンプを用いる場合には、既述した搬送治具スイッチのオンオフ等により、枠体部吸着パッド22のパッド部22pにおける吸引力の発生及びその解除の動作を、瞬間的に行なうことが容易となる。また、パッド部22pにおける吸引力の発生の動作を短い時間内で行なうことができるため、枠体部10への搬送治具20の取り付け動作の間に、位置合わせを終えた配線基板形成板30にずれが生じることを抑制できて、望ましい。
【0060】
変形例4:
本発明の実施形態では、印刷テーブル40の位置決めピン46に対して、枠体部10の位置決め穴14の嵌め込みを行なったが、枠体部10に代えて搬送治具20に位置決め穴を設けても良い。枠体部10に搬送治具20を取り付けて一体化する際に、枠体部10と搬送治具20との間も位置決めがなされていれば、枠体部10と搬送治具20の少なくとも一方と、印刷テーブル40とを位置合わせできればよい。各々の配線基板形成板30は、枠体部10に対して位置決めされているため、このような構成とすることで、実施形態と同様に、各配線基板形成板30を、印刷テーブル40に対して位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0061】
10…枠体部
12…嵌め込み穴
13…段差部
14…位置決め穴
20…搬送治具
21…板状部
22…枠体部吸着パッド
22p…パッド部
22r…軸部
23…バネ式吸着パッド
23b…ボルト
23p…パッド部
23r…軸部
23s…コイルバネ
24…吸引配管
25…吸引空間
26…取っ手部26
30…配線基板形成板
40…印刷テーブル
41…平面部
42…台座部
44…吸引口
46…位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の製造方法であって、
(a)製造途中の前記配線基板である配線基板形成板を複数用意すると共に、複数の前記配線基板形成板を平面的に保持可能な枠体部を用意する工程と、
(b)前記枠体部における所定の位置に、複数の前記配線基板形成板を配置する工程と、
(c)前記枠体部に配置された各々の前記配線基板形成板を押圧する押圧部を有する搬送治具を、前記枠体部に取り付ける工程であって、前記押圧部で各々の前記配線基板形成板を押圧すると共に、前記搬送治具を前記枠体部に取り付ける工程と、
(d)前記枠体部に取り付けた前記搬送治具を、前記配線基板形成板上に印刷を行なうための印刷テーブル上に搬送する工程と、
(e)前記印刷テーブルと各々の前記配線基板形成板との間に陰圧を発生させることによって、前記押圧部によって押圧されている各々の前記配線基板形成板を前記印刷テーブル上に吸着させる工程と、
(f)前記搬送治具を、前記枠体部から取り外す工程と、
(g)前記枠体部に取り付けられた状態で前記印刷テーブル上に吸着された各々の前記配線基板形成板に対して、印刷を行なう工程と
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、
前記(c)工程は、各々の前記配線基板形成板を前記枠体部に対して位置合わせして、前記搬送治具を前記枠体部に取り付ける工程を含み、
前記(d)工程は、前記搬送治具が取り付けられた前記枠体部と、前記印刷テーブルとを位置合わせして、前記枠体部に取り付けた前記搬送治具を前記印刷テーブル上に配置する工程を含む
配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の配線基板の製造方法であって、
前記印刷テーブルは、前記(g)工程において、各々の前記配線基板形成板の表面が前記枠体部の表面から突出するように、各々の前記配線基板形成板が配置される箇所に、前記印刷テーブルの他の領域から突出する台座部を備える
配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか記載の配線基板の製造方法であって、
前記(c)工程は、前記搬送治具と前記枠体部との間に陰圧を発生させることによって、前記枠体部を前記搬送治具へと吸着させ、前記搬送治具を前記枠体部に取り付ける工程を含み、
前記(f)工程は、前記陰圧を解除して、前記搬送治具を前記枠体部から取り外す工程を含む
配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4いずれか記載の配線基板の製造方法であって、
前記(b)工程は、前記枠体部上に、複数の前記配線基板形成板を載置する工程であり、
前記(c)工程は、前記配線基板形成板が載置された前記枠体部の面上に、前記搬送治具を重ね合わせて、前記搬送治具における前記枠体部と対向する面に設けた弾性体を備える前記押圧部を、各々の前記配線基板形成板に押しつけることによって、各々の前記配線基板形成板を水平化する工程を含む
配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5いずれか記載の配線基板の製造方法であって、
各々の前記配線基板形成板は、略矩形形状に形成されており、
前記押圧部は、各々の前記配線基板形成板の四隅を押圧する箇所に設けられている
配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−51309(P2013−51309A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188494(P2011−188494)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】