説明

配線基板

【課題】 高い防湿性を確保するとともに、被覆の有無および被覆範囲を容易に判別することのできるモールドにより被覆された配線基板を提供すること。
【解決手段】 露出している電極端子6を、絶縁性の透明樹脂材料に蛍光体を混入したモールド11により被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に係り、特に、露出した電極端子などを被覆して保護するモールドの有無および被覆範囲を容易に確認することのできる配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板上に電極ならびに電極端子が形成されている配線基板、例えば液晶表示素子の基板において、電極端子上に液晶表示素子の各画素を駆動するためのICチップが実装されていたりフレキシブル回路基板が接続されているものがある。このような液晶表示素子の基板においては、露出した電極端子およびICチップに結露により電食が生じ、断線や短絡が発生することを防止するため、絶縁性および防湿性を有する透明樹脂材料からなるモールドを被覆して保護していた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、前述したモールドとしては、被覆対象部位における被覆の有無および被覆範囲を判別するため、ポリイミド等の透明樹脂材料に染料あるいは顔料等を混入して着色し、視認できるようにしていた。
【0004】
【特許文献1】特開2000−284725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述したような従来の配線基板の電極端子およびICチップに被覆されるモールドは、透明樹脂材料に染料あるいは顔料等を混入することにより防湿性が低下してしまうため、染料あるいは顔料等はごく少量しか混入することができなかった。このため、このモールドにより液晶表示素子基板の対象部位を被覆すると、対象部位の色味によりモールドの有無および被覆範囲が判別しにくいという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、高い防湿性を確保するとともに、被覆の有無および被覆範囲を容易に判別することのできるモールドにより被覆された配線基板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するため本発明に係る配線基板の特徴は、基板上に電極ならびに電極端子が形成されている配線基板において、露出している前記電極端子を、絶縁性の透明樹脂材料に蛍光体を混入したモールドにより被覆した点にある。
【0008】
このような構成を採用したことにより、ブラックライトを照射すると、露出している電極端子がモールドにより被覆されている場合、モールドに混入された蛍光体が発光してモールドの有無および被覆範囲を容易に判別することができる。さらに、透明樹脂材料に対して蛍光体の添加量がごく少量であっても発光が確認できるため、透明樹脂材料の防湿性の低下を防止することができ、電極端子に結露によって電食が生じ、断線および短絡が生じてしまうことを防止することができる。
【0009】
また、本発明に係る配線基板の他の特徴は、前記電極端子上にICチップが実装され、このICチップを前記モールドにより被覆した点にある。
【0010】
このような構成を採用したことにより、ブラックライトを照射すると、ICチップがモールドにより被覆されている場合、モールドに混入された蛍光体が発光してモールドの有無および被覆範囲を容易に判別することができる。さらに、透明樹脂材料に対して蛍光体の添加量がごく少量であっても発光が確認できるため、透明樹脂材料の防湿性の低下を防止することができ、ICチップに結露によって電食が生じ、断線および短絡が生じてしまうことを防止することができる。
【0011】
また、本発明に係る配線基板の他の特徴は、前記モールドの蛍光体の添加量が、透明樹脂材料の0.03wt%以下である点にある。
【0012】
このような構成を採用したことにより、モールドに透明樹脂材料の高い防湿性を確保することができる。さらに、ブラックライトを照射した際の蛍光体の発光も確認することができ、モールドの有無および被覆範囲を容易かつ正確に判別することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の配線基板によれば、電極端子およびICチップを被覆するモールドの有無および被覆範囲を、ブラックライトを照射することによりモールドを構成する透明樹脂材料に混入された蛍光体の発光により容易かつ正確に判別することができる。さらに、透明樹脂材料に混入される蛍光体の添加量をごく少量にしても蛍光体の発光を確認することができるため、モールドに透明樹脂材料の高い防湿性を確保することができ、電極端子およびICチップに結露により電食が生じ、断線や短絡が発生することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明に係る配線基板の実施形態について、液晶表示素子を一例として説明する。
【0015】
図1は本発明に係る配線基板の実施形態を示す概略断面図である。
【0016】
液晶表示素子1は、図1に示すように、ガラスやプラスチック等からなる一対の透明基板2,3を有しており、本実施形態の配線基板としての前記一方の透明基板3には前記他方の透明基板2よりも側方に張り出した張出部3aが形成されている。
【0017】
前記各透明基板2,3の表面にはITOからなり格子状に対向するストライプ状の透明電極4がそれぞれ形成されており、前記透明基板3の張出部3aには、前記透明電極4から延設される電極端子6が形成されている。
【0018】
そして、前記各透明基板2,3はそれぞれ透明電極形成面を対向させて配置され、前記各透明基板2,3の周縁部にシール材7を配設する。
【0019】
そして、シール材7と各透明基板2,3とからなる空間部に液晶8が封入されている。そして、前記電極端子6上には液晶駆動用のICチップ9が実装されるとともに、フレキシブル回路基板10が接続されており、露出している前記電極端子6上および前記ICチップ9にはモールド11が被覆されている。
【0020】
前記モールド11は、絶縁性、防湿性のポリイミド樹脂またはシリコーン樹脂等の透明樹脂材料にEu(ユーロピューム)−キレート化合物、クマリン系化合物等の蛍光体が混入されており、ブラックライト(図示せず)を照射することにより透明樹脂材料に混入された蛍光体が発光し、前記モールド11の有無および被覆範囲を判別できるようになっている。
【0021】
ここで、前記モールド11における蛍光体の添加量と透明樹脂材料の防湿性およびブラックライトを照射した際の視認性との関係を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1に示すように、透明樹脂材料に対して0.00wt%の蛍光体、つまり、蛍光体を添加しない場合には、透明樹脂材料の防湿性は非常に優れるが、ブラックライトを照射した際に蛍光体の発光を得られず、視認性に劣ってしまう。
【0024】
また、透明樹脂材料に対して0.01wt%の蛍光体を添加した場合には、透明樹脂材料に高い防湿性を確保するとともに、ブラックライトを照射した際に蛍光体の発光による視認性を確保することができる。
【0025】
また、透明樹脂材料に対して0.03wt%の蛍光体を添加した場合には、透明樹脂材料に防湿性を確保することができるとともに、ブラックライトを照射した際に蛍光体の強い発光による視認性を確保することができる。
【0026】
また、透明樹脂材料に対して0.05wt%の蛍光体を添加した場合には、透明樹脂材料の防湿性を損なってしまうが、ブラックライトを照射した際に蛍光体の非常に強いい発光による視認性を確保することができる。
【0027】
以上のことから、透明樹脂材料に対する蛍光体の添加量は、0.01wt%以上0.03wt%以下が好ましく、本実施形態においては透明樹脂材料に対して0.03wt%の蛍光体を添加するものとする。
【0028】
以上説明した構成からなる本実施形態の配線基板によれば、露出した電極端子6上およびICチップ9がモールド11により被覆されていれば、ブラックライトを照射することによりモールド11を構成する透明樹脂材料に混入された蛍光体が発光して、モールド11の有無および被覆範囲を容易に判別することができる。さらに、モールド11を構成する透明樹脂材料に混入する発光体の添加量をごく少量にすることができるため、モールド11に透明樹脂材料の高い防湿性を確保することができるので、端子電極6およびICチップ9に結露による電食が生じ、断線や短絡が発生してしまうことを防止することができる。
【0029】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更が可能である。例えば、配線基板として有機EL表示素子やプラズマ表示素子等の画像表示素子の電極配線基板であってもよい。
【0030】
また、画像表示素子の製造方法において、画像表示素子の張出部に絶縁性の透明樹脂材料中に蛍光体を混入したモールドを配設する工程と、張出部にブラックライトを照射する工程と、張出部にモールドが配設されているかどうか否かを判定する工程とを含むことによって、張出部にモールドの有無を確実に判定することができる。さらに、モールドの位置が適切な位置に配設されているかを判定することができる。このような工程を有することで、モールドの配設不具合のない信頼性の高い画像表示素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る配線基板の実施形態を示す概略断面図
【符号の説明】
【0032】
1 液晶表示素子
2,3 透明基板
3a 張出部
4 透明電極
6 電極端子
7 シール材
8 液晶
9 ICチップ
10 フレキシブル回路基板
11 モールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電極ならびに電極端子が形成されている配線基板において、
露出している前記電極端子を、絶縁性の透明樹脂材料に蛍光体を混入したモールドにより被覆したことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記電極端子上にICチップが実装され、このICチップを前記モールドにより被覆した請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記モールドの蛍光体の添加量が、透明樹脂材料の0.03wt%以下である請求項1または請求項2に記載の配線基板。

【図1】
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【公開番号】特開2007−165630(P2007−165630A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360589(P2005−360589)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【出願人】(000167783)広島オプト株式会社 (95)
【Fターム(参考)】