説明

配線板及びその製造方法

【課題】キャビティにおける絶縁基板とコンデンサとの隙間の直上に配置された導体パターンの断線を抑制し、配線板における電気的接続の信頼性を高めることを可能にする。
【解決手段】キャビティR10が形成された基板100(絶縁基板)と、キャビティR10内に配置される電子部品200(電子デバイス)と、基板100上及び電子部品200上に配置される絶縁層101(層間絶縁層)と、絶縁層101上に配置される導体層110と、を有する配線板10において、キャビティR10における基板100と電子部品200との隙間には、絶縁層101を構成する絶縁材料(絶縁体101a)が充填され、導体層101は、隙間の直上(直上領域R1)において部分的に幅が広くなる導体パターンを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャビティが形成された絶縁基板と、キャビティ内に配置され、絶縁基板の側方に位置するコンデンサと、絶縁基板上及びコンデンサ上に配置される層間絶縁層と、層間絶縁層上に配置される導体層と、を有し、キャビティにおける絶縁基板とコンデンサとの隙間に、層間絶縁層を構成する絶縁材料が充填されてなる配線板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−266197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の配線板では、絶縁基板とコンデンサとの隙間に、層間絶縁層を構成する絶縁材料が充填されるため、層間絶縁層における隙間の直上領域には、その隙間に基づく窪みが形成され易くなる。そして、こうした窪みを有する面上に配線が形成されると、平坦な面上に配線が形成される場合よりも配線に応力が加わり易くなるため、その配線は窪み周辺で断線し易くなる。また、キャビティにおける絶縁基板とコンデンサとの隙間に充填される絶縁材料は、絶縁基板及びコンデンサのいずれよりも大きな熱膨張係数を有すると考えられるため、隙間周辺においては熱応力により歪みが生じ易くなる。こうした歪みが生じると、隙間の直上領域にある配線が断線し易くなる。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、キャビティにおける絶縁基板とコンデンサとの隙間の直上に配置された導体パターンの断線を抑制し、配線板における電気的接続の信頼性を高めることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点に係る配線板は、キャビティが形成された絶縁基板と、前記キャビティ内に配置される電子デバイスと、前記絶縁基板上及び前記電子デバイス上に配置される層間絶縁層と、前記層間絶縁層上に配置される導体層と、を有する配線板において、前記キャビティにおける前記絶縁基板と前記電子デバイスとの隙間には、前記層間絶縁層を構成する絶縁材料が充填され、前記導体層は、前記隙間の直上において部分的に幅が広くなる導体パターンを有する。
【0007】
本発明の第2の観点に係る配線板の製造方法は、キャビティが形成された絶縁基板を準備することと、前記キャビティ内に電子デバイスを配置することと、前記絶縁基板上及び前記電子デバイス上に、層間絶縁層を形成することと、前記キャビティにおける前記絶縁基板と前記電子デバイスとの隙間に、前記層間絶縁層を構成する絶縁材料を充填することと、前記層間絶縁層上に、前記隙間の直上において部分的に幅が広くなる導体パターンを有する導体層を形成することと、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャビティにおける絶縁基板とコンデンサとの隙間の直上に配置された導体パターンの断線を抑制し、配線板における電気的接続の信頼性を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る配線板の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る配線板に内蔵されるコンデンサの断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る配線板において、キャビティに収容されたコンデンサの配置及び形態を示す平面図である。
【図4】図1中の層間絶縁層に形成される窪みの拡大図である。
【図5】本発明の実施形態に係る配線板において、幅が広い部分を有する導体パターンの形態を示す平面図である。
【図6】図5に示す導体パターンの拡大図である。
【図7】図6に示す導体パターンについて、拡幅角度を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る配線板の製造方法を示すフローチャートである。
【図9】図8に示す製造方法において、コア基板(絶縁基板)を準備する工程を説明するための図である。
【図10A】図8に示す製造方法において、キャビティを形成するための第1の方法を説明するための図である。
【図10B】図8に示す製造方法において、キャビティを形成するための第2の方法を説明するための図である。
【図11】図8に示す製造方法において、キャビティ形成後のコア基板を示す図である。
【図12】図8に示す製造方法において、キャビティが形成されたコア基板をキャリアに取り付ける工程を説明するための図である。
【図13】図8に示す製造方法において、キャビティ内にコンデンサを配置する工程を説明するための図である。
【図14】図8に示す製造方法において、キャビティ内にコンデンサが配置された状態を示す図である。
【図15】図8に示す製造方法において、絶縁基板上及びコンデンサ上に、第1の層間絶縁層及び第1の銅箔を形成する工程を説明するための図である。
【図16A】図8に示す製造方法において、プレス工程を説明するための図である。
【図16B】図16Aのプレス後の状態を示す図である。
【図17】図8に示す製造方法において、キャリア除去後、絶縁基板上及びコンデンサ上に、第2の層間絶縁層及び第2の銅箔を形成する工程を説明するための図である。
【図18A】図8に示す製造方法において、第1、第2の層間絶縁層上に導体層を形成し、各導体層とコンデンサの電極とを互いに電気的に接続するための第1の工程を説明するための図である。
【図18B】図18Aの工程の後の第2の工程を説明するための図である。
【図19】図18Bの工程の後の第3の工程を説明するための図である。
【図20】本発明の実施形態に係る配線板の表面に電子部品が実装された状態を示す図である。
【図21A】本発明の実施形態に係る配線板において、幅が広い部分の形状の第1の別例を示す図である。
【図21B】本発明の実施形態に係る配線板において、幅が広い部分の形状の第2の別例を示す図である。
【図22A】本発明の実施形態に係る配線板において、拡幅角度の第1の別例を示す図である。
【図22B】本発明の実施形態に係る配線板において、拡幅角度の第2の別例を示す図である。
【図23】本発明の他の実施形態において、異なる形状の幅が広い部分を有する複数の導体パターンを有する配線板を示す平面図である。
【図24】本発明の実施形態に係る配線板において、窪み周辺に形成される導体パターンの他の形状を示す図である。
【図25】本発明の実施形態に係る配線板において、キャビティの他の形状を示す図である。
【図26】本発明の他の実施形態において、電子部品に代えて、他の配線板を内蔵する配線板を示す図である。
【図27】本発明の他の実施形態において、より簡素な構造を有する配線板を示す図である。
【図28】本発明の他の実施形態において、片面配線板を示す図である。
【図29】本発明の他の実施形態において、より多層な構造を有する配線板を示す図である。
【図30】本発明の他の実施形態において、ICチップを内蔵する配線板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図中、矢印Z1、Z2は、それぞれ配線板の主面(表裏面)の法線方向に相当する配線板の積層方向(又は配線板の厚み方向)を指す。一方、矢印X1、X2及びY1、Y2は、それぞれ積層方向に直交する方向(又は各層の側方)を指す。配線板の主面は、X−Y平面となる。また、配線板の側面は、X−Z平面又はY−Z平面となる。
【0011】
相反する法線方向を向いた2つの主面を、第1面又は第3面(Z1側の面)、第2面又は第4面(Z2側の面)という。積層方向において、コアに近い側を下層(又は内層側)、コアから遠い側を上層(又は外層側)という。また、X−Y平面において、キャビティ(より詳しくはその重心)から離れる側を外側といい、キャビティに近づく側を内側という。直上は、Z方向(Z1側又はZ2側)を意味する。平面形状は、特に指定がなければ、X−Y平面の形状を意味する。
【0012】
導体層は、一乃至複数の導体パターンで構成される層である。導体層は、電気回路を構成する導体パターン、例えば配線(グランドも含む)、パッド、又はランド等を含む場合もあれば、電気回路を構成しない平面状の導体パターン等を含む場合もある。
【0013】
開口部には、孔や溝のほか、切欠や切れ目等も含まれる。孔は貫通孔に限られず、非貫通の孔も含めて、孔という。孔には、ビアホール及びスルーホールが含まれる。以下、ビアホール内(壁面又は底面)に形成される導体をビア導体といい、スルーホール内(壁面)に形成される導体をスルーホール導体という。
【0014】
めっきには、電解めっき等の湿式めっきのほか、PVD(Physical Vapor Deposition)やCVD(Chemical Vapor Deposition)等の乾式めっきも含まれる。
【0015】
「準備すること」には、材料や部品を購入して自ら製造することのほかに、完成品を購入して使用することなども含まれる。
【0016】
電子デバイスがキャビティ内に配置されることには、電子デバイスの全体がキャビティに完全に収容されることのほか、電子デバイスの一部のみがキャビティに配置されることも含まれる。
【0017】
「接続」には、継ぎ目がある場合のほか、継ぎ目がない場合も含まれる。継ぎ目がある場合とは、例えば別々に形成された2つの物体が接着剤等で接合されている場合をいう。継ぎ目がない場合とは、例えば2つの部分が連続的(一体的)に形成され、それらの間に何も介在しない場合をいう。
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0019】
本実施形態に係る配線板10は、図1に示すように、基板100(絶縁基板)と、絶縁層101及び102(層間絶縁層)と、導体層110及び120と、電子部品200(電子デバイス)と、ソルダーレジスト11、12と、を有する。電子部品200は、配線板10に内蔵される。なお、本実施形態の配線板10は、リジッド配線板である。ただし、配線板10は、フレキシブル配線板であってもよい。以下、基板100の表裏面(2つの主面)の一方を第1面F1、他方を第2面F2という。また、電子部品200の表裏面(2つの主面)のうち、第1面F1と同じ方向を向く面を第3面F3といい、他方を第4面F4という。
【0020】
基板100は、絶縁性を有し、配線板10のコア基板となる。基板100(コア基板)にはスルーホール300aが形成され、スルーホール300a内に導体(例えば銅めっき)が充填されることにより、スルーホール導体300bが形成される。スルーホール導体300bの形状は、例えば鼓状である。すなわち、スルーホール導体300bは括れ部300cを有し、スルーホール導体300bの幅は、第1面F1から括れ部300cに近づくにつれて徐々に小さくなり、また、第2面F2から括れ部300cに近づくにつれて徐々に小さくなる。しかしこれに限られず、スルーホール導体300bの形状は任意であり、例えば略円柱であってもよい。
【0021】
基板100の第1面F1上には導体層301が形成され、基板100の第2面F2上には導体層302が形成される。導体層301、302にはそれぞれ、スルーホール導体300bのランドが含まれる。
【0022】
基板100にはキャビティR10が形成され、キャビティR10には電子部品200が収容される。電子部品200は、キャビティR10に配置されることにより、基板100の側方(X方向又はY方向)に位置する。本実施形態では、電子部品200の略全体がキャビティR10に完全に収容される。しかしこれに限られず、電子部品200の一部のみがキャビティR10に配置されてもよい。本実施形態では、キャビティR10における電子部品200と基板100との隙間に、絶縁体101aが充填される。本実施形態では、絶縁体101aが、上層の絶縁層101(詳しくは樹脂絶縁層)を構成する絶縁材料(詳しくは樹脂)からなる(図16A参照)。絶縁体101aは、基板100及び電子部品200のいずれよりも大きな熱膨張係数を有する。絶縁体101aは、電子部品200の周りを完全に覆う。これにより、電子部品200が、絶縁体101a(樹脂)で保護されるとともに、所定の位置に固定される。
【0023】
絶縁層101は、基板100の第1面F1上及び電子部品200の第3面F3上に形成される。絶縁層102は、基板100の第2面F2上及び電子部品200の第4面F4上に形成される。キャビティR10は、基板100を貫通する孔からなり、絶縁層101がキャビティR10(孔)の一方(第1面F1側)の開口を塞ぎ、絶縁層102がキャビティR10(孔)の他方(第2面F2側)の開口を塞いでいる。導体層110は、絶縁層101上に形成され、導体層120は、絶縁層102上に形成される。本実施形態では、導体層110及び120が、最外層となる。ただしこれに限られず、より多くの層間絶縁層及び導体層を積層してもよい(後述の図29参照)。
【0024】
導体層110は、第1面F1側の最外の導体層となり、導体層120は、第2面F2側の最外の導体層となる。導体層110、120上にはそれぞれ、ソルダーレジスト11、12が形成される。ただし、ソルダーレジスト11、12にはそれぞれ、開口部11a、12aが形成されている。このため、導体層110の所定の部位(開口部11aに位置する部位)は、ソルダーレジスト11に覆われず露出しており、パッドP1となる。また、導体層120の所定の部位(開口部12aに位置する部位)は、パッドP2となる。パッドP1は、例えば他の配線板と電気的に接続するための外部接続端子となり、パッドP2は、例えば電子部品を実装するための外部接続端子となる(後述の図20参照)。ただしこれに限られず、パッドP1、P2の用途は任意である。
【0025】
本実施形態では、パッドP1、P2が、その表面に、例えばNi/Au膜からなる耐食層を有する。耐食層は、電解めっき又はスパッタリング等により形成することができる。また、OSP処理を行うことにより、有機保護膜からなる耐食層を形成してもよい。なお、耐食層は必須の構成ではなく、必要がなければ割愛してもよい。
【0026】
絶縁層101には孔311a及び312a(ビアホール)が形成され、絶縁層102には孔321a及び322a(ビアホール)が形成されている。孔311a、312a、321a、322a内にそれぞれ導体(例えば銅のめっき)が充填されることにより、各孔内の導体がそれぞれ、ビア導体311b、312b、321b、322b(フィルド導体)となる。孔311a及び321aの各々は、電子部品200の電極210及び220に達し、ビア導体311b及び321bはそれぞれ、基板100の第1面F1側又は第2面F2側から、電子部品200の電極210、220に電気的に接続される。このように、本実施形態では、電子部品200が両面からビア導体311b及び321bに接続されている。以下、この構造を、両面ビア構造という。
【0027】
上記両面ビア構造により、電子部品200の電極210、220と絶縁層101上の導体層110とは、ビア導体311bを介して、互いに電気的に接続され、また、電子部品200の電極210、220と絶縁層102上の導体層120とは、ビア導体321bを介して、互いに電気的に接続される。
【0028】
また、基板100の第1面F1上の導体層301と絶縁層101上の導体層110とは、ビア導体312bを介して、互いに電気的に接続され、また、基板100の第2面F2上の導体層302と絶縁層102上の導体層120とは、ビア導体322bを介して、互いに電気的に接続される。また、基板100の第1面F1上の導体層301と基板100の第2面F2上の導体層302とは、スルーホール導体300bを介して、互いに電気的に接続されている。ビア導体312b、322b及びスルーホール導体300bは、いずれもフィルド導体であり、これらはZ方向にスタックされている。
【0029】
電子部品200は、例えば図2に示すように、チップ型のMLCC(積層セラミック・コンデンサ)であり、コンデンサ本体201と、U字状の電極210及び220と、を有する。コンデンサ本体201は、複数の誘電層231〜239と複数の導体層211〜214及び221〜224とが交互に積層されて構成される。誘電層231〜239はそれぞれ、例えばセラミックからなる。電極210及び220は、コンデンサ本体201の両端部にそれぞれ形成されている。コンデンサ本体201は、下面(第4面F4側の面)から、側面、そして上面(第3面F3側の面)にかけて、電極210及び220で覆われる。以下、電極210のうち、コンデンサ本体201の上面を覆う部分を上部210aといい、コンデンサ本体201の側面を覆う部分を側部210bといい、コンデンサ本体201の下面を覆う部分を下部210cという。また、電極220のうち、コンデンサ本体201の上面を覆う部分を上部220aといい、コンデンサ本体201の側面を覆う部分を側部220bといい、コンデンサ本体201の下面を覆う部分を下部220cという。
【0030】
電極210と電極220との間に位置するコンデンサ本体201の中央部は、図2に示されるように、電極210、220に覆われず、誘電層231、239(セラミック)が露出するため、比較的強度が弱くなる。しかし、電子部品200が配線板10に実装(内蔵)された状態においては、コンデンサ本体201の中央部は絶縁体101a(樹脂)で覆われるため、絶縁体101aにより、コンデンサ本体201が保護されると考えられる。
【0031】
図3に、電子部品200が基板100(コア基板)のキャビティR10に収容された状態を示す。
【0032】
基板100、絶縁層101、102、ソルダーレジスト11、12、及び電子部品200の形状は、それぞれ例えば矩形板状である。キャビティR10は、基板100を貫通する。キャビティR10の両端(第1面F1側及び第2面F2側)の開口形状はそれぞれ、略長方形になっている。電子部品200の主面の形状は、例えば略長方形である。本実施形態では、電子部品200がキャビティR10に対応した平面形状(例えば略同じ大きさの相似形)を有し、電子部品200の厚さとキャビティR10(孔)の深さとは、略一致する。また、基板100の厚さと電子部品200の厚さも、略一致する。しかしこれに限定されず、キャビティR10の形状及び寸法は任意である。
【0033】
ここで、図3中に示す各寸法の好ましい値の一例を示す。
【0034】
キャビティR10の長手方向の幅D1は、例えば約1080μmであり、キャビティR10の短手方向の幅D2は、例えば約580μmである。電子部品200の長手方向の幅D11は、例えば約1000μmであり、電子部品200の短手方向の幅D12は、例えば約500μmである。電子部品200とキャビティR10との隙間の長手方向の幅D3は、例えば約40μm(クリアランスは2倍の約80μm)であり、電子部品200とキャビティR10との隙間の短手方向の幅D4は、例えば約40μm(クリアランスは2倍の約80μm)である。電極210の上部210aもしくは下部210c、又は、電極220の上部220aもしくは下部220cの幅D13は、例えば約230μmである。
【0035】
ビア導体311bとビア導体321bとは、例えば電子部品200を挟んで、互いに対向するように配置される。ビア導体311b又は321bのピッチD5は、例えば約770μmである。
【0036】
基板100の厚さは、例えば約100μmである。電子部品200の厚さ(電極まで含めた厚さ)は、例えば約150μmである。配線板10の厚さ(ソルダーレジスト11からソルダーレジスト12までの厚さ)は、例えば約290μmである。
【0037】
基板100は、例えばガラスクロス(心材)にエポキシ樹脂を含浸させたもの(以下、ガラエポという)からなる。心材は、主材料(本実施形態ではエポキシ樹脂)よりも熱膨張率の小さい材料である。心材としては、例えばガラス繊維(例えばガラス布又はガラス不織布)、アラミド繊維(例えばアラミド不織布)、又はシリカフィラー等の無機材料が好ましいと考えられる。ただし、基板100の材料は、基本的に任意である。例えばエポキシ樹脂に代えて、ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、イミド樹脂(ポリイミド)、フェノール樹脂、又はアリル化フェニレンエーテル樹脂(A−PPE樹脂)等を用いてもよい。基板100は、異種材料からなる複数の層から構成されていてもよい。
【0038】
本実施形態では、絶縁層101、102の各々が、心材を樹脂に含浸してなる。絶縁層101が心材を含む樹脂からなることで、絶縁層101における隙間R0(図4参照)の直上領域R1に窪みR11が形成されにくくなり、窪みR11上に形成される導体パターンの断線が抑制されるようになる。絶縁層101、102は、例えばガラエポからなる。ただしこれに限定されず、例えば絶縁層101、102は心材を含まない樹脂からなってもよい。また、絶縁層101、102の材料は、基本的に任意である。例えばエポキシ樹脂に代えて、ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、イミド樹脂(ポリイミド)、フェノール樹脂、又はアリル化フェニレンエーテル樹脂(A−PPE樹脂)等を用いてもよい。各絶縁層は、異種材料からなる複数の層から構成されていてもよい。
【0039】
ビア導体311b、312b、321b、322bの各々は、例えば銅めっきからなる。これらビア導体311b等の形状は、例えば基板100(コア基板)又は電子部品200から上層に向かって拡径されるようにテーパしたテーパ円柱(円錐台)である。しかしこれに限定されず、ビア導体の形状は任意である。
【0040】
導体層110は、銅箔111(下層)と、銅めっき112(上層)と、から構成され、導体層120は、銅箔121(下層)と、銅めっき122(上層)と、から構成される。導体層110、120は、例えば電気回路(例えば電子部品200を含む電気回路)を構成する配線、ランド、及び配線板10の強度を高めるためのベタパターンなどを有する。
【0041】
各導体層及び各ビア導体の材料は、導体であれば任意であり、金属でも非金属でもよい。各導体層及び各ビア導体は、異種材料からなる複数の層から構成されていてもよい。
【0042】
本実施形態では、図4に示すように、キャビティR10における電子部品200と基板100との隙間R0には絶縁体101aが充填される。絶縁体101aは、例えば絶縁層101から流出した樹脂である(図16A参照)。このため、絶縁体101aが隙間R0に充填される際、絶縁層101における隙間R0の直上領域R1には、隙間R0に基づく窪みR11が形成される。すなわち、絶縁層101は、隙間R0の直上に窪みR11を有する。また、窪みR11上に形成される導体パターン(導体層110)にも、窪みR11の形状に基づく窪みR12が形成される。
【0043】
本実施形態では、図5に示すように、導体層110が、隙間R0の直上において部分的に拡幅される導体パターン110a、110b、110c、110dを有する。
【0044】
詳しくは、これら導体パターン110a〜110dはいずれも、第1ストレート部S1と、幅が広い部分Eと、第2ストレート部S2とが、この順で続けて接続された部分を有する。これら第1ストレート部S1、幅が広い部分E、及び第2ストレート部S2は、相互に一体的に接続され、各々が配線として機能する。また、導体パターン110a及び110dはそれぞれ、第1ストレート部S1に電気的に接続され第1の端子となるランドL1と、第2ストレート部S2に電気的に接続され第2の端子となるランドL2と、をさらに有する。ランドL2は、例えばパッドP1(図1)として機能する。すなわち、導体パターン110a及び110dでは、幅が広い部分Eが、配線(第2ストレート部S2)を介して、パッドP1(ランドL2)と接続される。また、導体パターン110bと導体パターン110cとは、屈曲部Bを介して、互いに電気的に接続されている。導体パターン110a又は110dのランドL1は、ビア導体311b(図1)を介して、電子部品200の電極210又は220と電気的に接続される。
【0045】
第1ストレート部S1及び第2ストレート部S2は、それぞれ略一定の幅を有する。本実施形態では、第1ストレート部S1が内側(電子部品200に近い側)に位置し、第2ストレート部S2が外側(電子部品200から遠い側)に位置する。
【0046】
幅が広い部分Eは、第1ストレート部S1との接続部位から第2ストレート部S2との接続部位までの略全域において第1ストレート部S1及び第2ストレート部S2のいずれよりも大きな幅をもって、隙間R0の直上に配置される。導体パターン110a〜110dの各々は、幅が広い部分Eにおいて部分的に拡幅されている。本実施形態では、図4に示すように、幅が広い部分Eが窪みR11及びR12よりも大きな幅を有することで、導体パターン110a〜110d(図5)の幅が広い部分Eの各々が、窪みR11内及びその周辺(少なくとも窪みR11の縁を含む)に形成される。
【0047】
本実施形態では、導体層110が、キャビティR10における電子部品200と基板100との隙間R0の直上において部分的に拡幅される導体パターンを有する。そして、その拡幅された部分(幅が広い部分E)では、導体パターンの幅が大きくなることで、幅が広い部分Eの強度は高くなる。このため、キャビティR10における電子部品200と基板100との隙間R0の直上に配置された導体パターン(導体層110)の断線は抑制され、配線板10における電気的接続の信頼性が向上する。
【0048】
導体パターンの強度を高めるためには、導体パターンの厚さを大きくすることも考えられる。しかしながら、導体パターンの厚さを大きくする場合には、めっき工程の回数を増やすなど、製造工程が複雑になり易い。この点、導体パターンの幅を大きくする場合は、パターニング工程におけるパターン(例えばレジストパターン)を変更するだけで実現可能なため、簡素な製造工程を維持し易い。
【0049】
導体パターンの断線を抑制するためには、導体パターン全体の幅を大きくすることも考えられる。しかしながら、導体パターンの断線しにくい部分まで幅を大きくすると、配線を形成するためのスペースが少なくなってしまうなど、新たな課題が生じ得る。
【0050】
この点、本実施形態では、キャビティR10における電子部品200と基板100との隙間R0の直上領域R1において部分的に導体パターン110a〜110dを拡幅している(図5参照)。隙間R0の直上領域R1は、窪みR11に起因して、又は、絶縁体101aと基板100及び電子部品200との熱膨張係数の差異に起因して、導体パターンが特に断線し易い。こうした断線し易い部分における導体パターンの幅を選択的に大きくすることで、配線スペースを確保しつつ、導体パターンの断線を抑制することが可能になる。
【0051】
また、導体パターンの断線を抑制するためには、キャビティR10における電子部品200と基板100との隙間R0の直上領域R1を避けて導体パターンを形成することも考えられる。しかしながら、直上領域R1に導体パターンを形成することができなくなると、配線を形成するためのスペースが少なくなってしまうなど、新たな課題が生じ得る。
【0052】
この点、本実施形態の配線板10では、電子部品200と基板100との隙間R0の直上領域R1にも導体パターンを形成することができるため、配線スペースを確保し易くなる。
【0053】
本実施形態では、基板100(絶縁基板)が配線板10のコア基板に相当し、導体層110とは反対側(第2面F2側)の最外層(導体層120)に、電子部品を実装するためのパッドP2が形成される(後述の図20参照)。このため、幅が広い部分Eを有する導体層110を、電子部品実装面とは反対側(例えばマザーボードに接続される側)に設けることが可能になり、パッドP2に実装される電子部品のために高密度配線が必要になった場合でも、そのためのファインパターンを形成し易くなる。こうしたファインパターンは、例えば導体層120に形成することができる。
【0054】
図5に示されるように、本実施形態では、幅が広い部分Eの形状が略楕円である。しかしこれに限られず、幅が広い部分Eの形状は任意である(後述の図21A〜図23参照)。
【0055】
図6A中の各寸法について、幅が広い部分Eの幅D32が、第1ストレート部S1の幅D31の約1.3〜約5倍の範囲にあることが好ましく、加えて、幅が広い部分Eの幅D32も、第2ストレート部S2の幅D33の約1.3〜約5倍の範囲にあることが、特に好ましい。
【0056】
なお、幅が広い部分Eの幅が一定でない場合は、図6に示すように、幅が広い部分Eの最大幅が上述の幅D32に相当し、幅が広い部分Eの最大幅(幅D32)が、第1ストレート部S1の幅D31及び第2ストレート部S2の幅D33の少なくとも一方の約1.3〜約5倍の範囲にあれば、上述の効果に準ずる効果が得られると考えられる。
【0057】
第1ストレート部S1と幅が広い部分Eとの接続部位C1、及び第2ストレート部S2と幅が広い部分Eとの接続部位C2の少なくとも一方においては、導体パターンの幅が約90°未満の角度で拡幅されることが好ましいと考えられる。これにより、応力集中が緩和され、また、形成が容易になると考えられる。
【0058】
なお、幅が広い部分Eの形状が略楕円である場合は、図7に示すように、接続部位C1又はC2における接線に基づき、接続部位C1の拡幅角度θ1又は接続部位C2の拡幅角度θ2が決定される。拡幅角度θ1は約90°未満であることが好ましく、加えて、拡幅角度θ2も、約90°未満であることが特に好ましいと考えられる。
【0059】
以下、図8等を参照して、配線板10の製造方法について説明する。図8は、本実施形態に係る配線板10の製造方法の概略的な内容及び手順を示すフローチャートである。
【0060】
ステップS11では、図9に示すように、配線板1000(出発材料)を準備する。本実施形態では、配線板1000が、基板100(絶縁基板)と、基板100の第1面F1上に形成された導体層301と、基板100の第2面F2上に形成された導体層302と、スルーホール導体300bと、から構成される。基板100は、例えば完全に硬化したガラエポからなる。導体層301及び302はそれぞれ、例えば銅箔(下層)、無電解めっき(中間層)、及び電解めっき(上層)の3層構造からなる。
【0061】
鼓状のスルーホール300aは、例えば両面に銅箔が形成された基板100(両面銅張積層板)の両側からレーザを照射することにより、形成することができる。そして、基板100上に銅箔が、また、基板100内にスルーホール300aが、それぞれ形成された状態で、例えば銅の電解めっきを行うことにより、導体層301、302、及びスルーホール導体300bを形成することができる。
【0062】
上記レーザ照射の後、スルーホール300aにデスミアを行うことが好ましいと考えられる。デスミアにより、不要な導通(ショート)が抑制される。また、必要に応じて、エッチング等により、導体層301及び302の表面を粗化することが好ましいと考えられる。
【0063】
本実施形態では、図10Aに示すように、基板100上、キャビティR10に対応した領域R100には、導体層301が形成されない。導体層301がこうした導体パターンを有すると、キャビティR10の位置及び形状が明確になるため、後の工程(図8のステップS12)において、キャビティR10を形成するためのレーザ照射のアライメントが容易になる。
【0064】
ただし、導体層301の導体パターンは、図10Aに示すパターンに限られない。例えば図10Bに示すように、基板100上の、後の工程(図8のステップS12)においてレーザを照射する部分(以下、レーザ照射路という)のみ、導体層301が形成されていなくてもよい。この場合、レーザ照射路の内側には、導体層301が存在する。こうした導体層301であっても、キャビティR10を形成するためのレーザ照射のアライメントが容易になる。
【0065】
また、本実施形態では、図10Aに示すように、導体層301がアライメントマーク301aを有する。アライメントマーク301aは、例えば後の工程(図8のステップS13)において光学的に認識できるパターンであり、例えばエッチング等により、部分的に導体を除去することによって形成することができる。本実施形態では、アライメントマーク301aが、領域R100の周囲(例えば4隅)に配置される。ただしこれに限られず、アライメントマーク301aの配置及び形状は任意である。
【0066】
続けて、図8のステップS12で、基板100にキャビティR10を形成する。具体的には、例えば図10Aに示すように、四角形を描くようにレーザを照射することにより、基板100における、キャビティR10に対応した領域R100を、その周りの部分から切り取る。レーザの照射角度は、例えば基板100の第1面F1に対して略垂直の角度とする。これにより、図11に示すように、キャビティR10が形成される。本実施形態では、キャビティR10をレーザにより形成するため、キャビティR10が容易に得られる。キャビティR10は、電子部品200の収容スペースとなる。
【0067】
続けて、図8のステップS13で、電子部品200を、基板100のキャビティR10に配置する。
【0068】
具体的には、図12に示すように、例えばPET(ポリ・エチレン・テレフタレート)からなるキャリア1001を、基板100の片側(例えば第2面F2)に設ける。これにより、キャビティR10(孔)の一方の開口がキャリア1001で塞がれる。本実施形態では、キャリア1001が、粘着シート(例えばテープ)からなり、基板100側に粘着性を有する。キャリア1001は、例えばラミネートにより、基板100と接着される。
【0069】
続けて、図13に示すように、キャビティR10(孔)の塞がれた開口とは反対側(Z1側)から、キャビティR10に電子部品200を入れる。電子部品200は、例えば部品実装機によりキャビティR10に入れ込まれる。例えば電子部品200は、真空チャック等により保持され、キャビティR10の上方(Z1側)に運ばれた後、そこから鉛直方向に沿って下降し、キャビティR10に入れられる。これにより、図14に示すように、キャリア1001(粘着シート)上に、電子部品200が配置される。なお、電子部品200の位置決めをする際には、アライメントマーク301a(図10A、図10B参照)を用いることが好ましい。そうすることで、電子部品200とキャビティR10との位置合わせの精度を高めることが可能になると考えられる。
【0070】
続けて、図8のステップS14で、図15に示すように、半硬化の状態で、キャビティR10(孔)の塞がれた開口とは反対側(Z1側)の、基板100の第1面F1上及び電子部品200の第3面F3上に、絶縁層101(第1の層間絶縁層)を形成する。さらに、絶縁層101上に、銅箔111(第1の銅箔)を形成する。絶縁層101は、例えば熱硬化性を有するエポキシ樹脂のプリプレグからなる。続けて、図16Aに示すように、絶縁層101を半硬化の状態でプレスすることにより、絶縁層101から樹脂を流出させてキャビティR10へ流し込む。これにより、図16Bに示すように、キャビティR10における基板100と電子部品200との間に絶縁体101a(絶縁層101を構成する樹脂)が充填される。そして、絶縁層101における隙間R0(図4参照)の直上領域R1に窪みR11が形成される。この際、基板100と電子部品200との隙間が狭ければ、電子部品200の固定が弱くても、樹脂がキャビティR10へ流れ込む勢いで、電子部品200の位置ずれや、好ましくない傾きは生じにくい。なお、絶縁体101aは、基板100及び電子部品200のいずれよりも大きな熱膨張係数を有する。
【0071】
キャビティR10に絶縁体101aが充填されたら、その充填樹脂(絶縁体101a)と電子部品200との仮溶着を行う。具体的には、加熱により充填樹脂に電子部品200を支持できる程度の保持力を発現させる。これにより、キャリア1001に支持されていた電子部品200が、充填樹脂によって支持されるようになる。その後、キャリア1001を除去する。
【0072】
なお、この段階では、絶縁体101a(充填樹脂)及び絶縁層101は半硬化しているにすぎず、完全には硬化していない。ただしこれに限られず、例えば、この段階で絶縁体101a及び絶縁層101を完全に硬化させてもよい。
【0073】
続けて、図8のステップS15で、基板100の第2面F2側にビルドアップを行う。
【0074】
具体的には、図17に示すように、基板100の第2面F2上に、絶縁層102(第2の層間絶縁層)及び銅箔121(第2の銅箔)を形成する。電子部品200の電極210及び220はそれぞれ、絶縁層102で覆われる。例えばプレスにより、絶縁層102をプリプレグの状態で基板100に接着させた後、加熱して絶縁層101、102の各々を硬化させる。本実施形態では、粘着シート(キャリア1001)を除去した後に、キャビティR10に充填した樹脂を硬化させるため、絶縁層101、102の硬化を同時に行うことが可能になる。そして、両面の絶縁層101、102の硬化を同時に行うことにより、基板100の反りが抑制されるため、基板100を薄くし易くなる。
【0075】
続く図8のステップS16では、ビア導体及び導体層を形成する。
【0076】
詳しくは、図18Aに示すように、例えばレーザにより、絶縁層101及び銅箔111に孔311a及び312a(それぞれビアホール)を形成し、絶縁層102及び銅箔121に孔321a及び322a(それぞれビアホール)を形成する。孔311a及び312aの各々は絶縁層101及び銅箔111を貫通し、孔321a及び322aの各々は絶縁層102及び銅箔121を貫通する。そして、孔311a及び321aの各々は、電子部品200の電極210又は220に至り、孔312a及び322aの各々は、スルーホール導体300bの直上に至る。その後、必要に応じて、デスミアを行う。
【0077】
続けて、例えば化学めっき法により、銅箔111、121上及び孔311a、312a、321a、322a内に、例えば銅の無電解めっき膜1003、1004を形成する(図18B参照)。なお、無電解めっきに先立って、例えば浸漬により、パラジウム等からなる触媒を、絶縁層101、102の表面に吸着させてもよい。
【0078】
続けて、リソグラフィ技術又は印刷等により、第1面F1側の主面(無電解めっき膜1003上)に、開口部1005aを有するめっきレジスト1005を、また、第2面F2側の主面(無電解めっき膜1004上)に、開口部1006aを有するめっきレジスト1006を、それぞれ形成する(図18B参照)。この際、所望のパターンを有するめっきレジストを用いることで、幅が広い部分E等(図5参照)を形成することができる。開口部1005a、1006aはそれぞれ、導体層110、120(図1)に対応したパターンを有する。
【0079】
続けて、図18Bに示すように、例えばパターンめっき法により、めっきレジスト1005、1006の開口部1005a、1006aに、それぞれ例えば銅の電解めっき1007、1008を形成する。具体的には、陽極にめっきする材料である銅を接続し、陰極に被めっき材である無電解めっき膜1003、1004を接続して、めっき液に浸漬する。そして、両極間に直流の電圧を印加して電流を流し、無電解めっき膜1003、1004の表面に銅を析出させる。これにより、孔311a及び312a、孔321a及び322aに、それぞれ電解めっき1007、1008が充填され、例えば銅のめっきからなるビア導体311b、312b、321b、322bが形成される。
【0080】
その後、例えば所定の剥離液により、めっきレジスト1005及び1006を除去し、続けて不要な無電解めっき膜1003、1004及び銅箔111、121を除去することにより、図19に示すように、導体パターン110a〜110d(図5参照)を含む導体層110及び導体層120が形成される。
【0081】
なお、電解めっきのためのシード層は無電解めっき膜に限られず、無電解めっき膜1003、1004に代えて、スパッタ膜等をシード層として用いてもよい。
【0082】
その後、図8のステップS17で、絶縁層101、102上にそれぞれ、開口部11aを有するソルダーレジスト11、開口部12aを有するソルダーレジスト12を形成する(図1参照)。導体層110、120はそれぞれ、開口部11a、12aに位置する所定の部位(パッドP1、P2及びランド等)を除いて、ソルダーレジスト11、12で覆われる。ソルダーレジスト11及び12は、例えばスクリーン印刷、スプレーコーティング、ロールコーティング、又はラミネート等により、形成することができる。
【0083】
続けて、電解めっき又はスパッタリング等により、導体層110、120上、詳しくはソルダーレジスト11、12に覆われないパッドP1、P2(図1参照)の表面にそれぞれ、例えばNi/Au膜からなる耐食層を形成する。また、OSP処理を行うことにより、有機保護膜からなる耐食層を形成してもよい。
【0084】
こうして、基板100の第1面F1上に、絶縁層101、導体層110、及びソルダーレジスト11から構成されるビルドアップ部が形成され、基板100の第2面F2上に、絶縁層102、導体層120、及びソルダーレジスト12から構成されるビルドアップ部が形成される。その結果、本実施形態の配線板10(図1)が完成する。その後、必要があれば、電子部品200の電気テスト(容量値及び絶縁性などのチェック)を行う。
【0085】
本実施形態の製造方法は、配線板10の製造に適している。こうした製造方法であれば、低コストで、良好な配線板10が得られると考えられる。
【0086】
本実施形態の配線板10は、例えば電子部品又は他の配線板と電気的に接続することができる。例えば図20に示すように、半田等により、配線板10のパッドP2に電子部品400(例えばICチップ)を実装することができる。また、パッドP1により、配線板10を他の配線板500(例えばマザーボード)に実装することができる。本実施形態の配線板10は、例えば携帯電話の回路基板として用いることができる。
【0087】
(他の実施形態)
各導体パターンにおける幅が広い部分Eの平面形状は、図5に示される略楕円に限られず任意である。例えば図21Aに示すように略長方形であってもよく、図21Bに示すように略菱形であってもよく、その他の形状、例えば略平行四辺形などであってもよい。
【0088】
図22Aに示すように、第1ストレート部S1と幅が広い部分Eとの接続部位C1における拡幅角度θ1、及び第2ストレート部S2と幅が広い部分Eとの接続部位C2における拡幅角度θ2を、約90°にしてもよい。しかしながら、応力集中の緩和や加工容易性を考慮すると、図22Bに示すように、第1ストレート部S1と幅が広い部分Eとの接続部位C1、及び第2ストレート部S2と幅が広い部分Eとの接続部位C2の少なくとも一方において、導体パターンの幅が約90°未満の角度で拡幅されることが好ましいと考えられる。
【0089】
図23に示すように、異なる形状の幅が広い部分Eを有する複数の導体パターン110a〜110eを有する配線板であってもよい。図23の例における各導体パターンの幅が広い部分Eの平面形状は、導体パターン110aでは略長方形であり、導体パターン110b、110cでは略楕円であり、導体パターン110dでは略菱形であり、導体パターン110eでは略平行四辺形である。
【0090】
図24に示すように、幅が広い部分Eが窪みR11及びR12よりも小さな幅を有し、窪みR11内に形成される導体パターン(導体層110)の一部のみが幅が広い部分Eになっていてもよい。ただし、断線を抑制する上では、図4に示すように、幅が広い部分Eが窪みR11及びR12よりも大きな幅を有し、幅が広い部分Eが、窪みR11内だけでなく窪みR11の周辺(少なくとも窪みR11の縁を含む)まで形成されていることが好ましい。
【0091】
電子部品200及びキャビティR10の形状は任意である。例えば図25に示すように、キャビティR10の開口形状が略楕円であってもよい。電子部品200の主面の形状、及びキャビティR10の開口形状は、略円(略真円)であってもよく、また、略正方形、略正六角形、略正八角形など、略長方形以外の略多角形であってもよい。なお、多角形の角の形状は任意であり、例えば略直角でも、鋭角でも、鈍角でも、丸みを帯びていてもよい。
【0092】
配線板10に内蔵されるものは電子部品200に限られず、例えば図26に示すように、他の配線板600であってもよい。図26の例では、配線板600はキャビティR10に収容され、配線板600のパッドP3、P4(外部接続端子)がそれぞれ、ビア導体311b、321bを介して、導体層110、120(厳密にいえばその導体パターン)と電気的に接続される。配線板600は、例えば各導体層がファインな導体パターンを有することにより、又は導体層間の層間絶縁層が薄くなっていることにより、配線板10よりも高い密度で導体を有していることが好ましい。
【0093】
上記実施形態では、電子部品200について両面ビア構造を有していたが、これに限定されない。例えば図27に示すように、電子部品200の電極210、220に電気的に接続するビア導体321bを片側のみに有する配線板であってもよい。
【0094】
上記実施形態では、キャビティR10(電子部品200の収容スペース)に電子部品200を1つのみ有する配線板(配線板10)を示したが、これに限られない。例えばキャビティR10に複数の電子部品200を有する配線板であってもよい。複数の電子部品200は、積層方向(Z方向)に並べて配置しても、X方向又はY方向に並べて配置してもよい。また、複数のキャビティR10を形成してもよい。
【0095】
上記実施形態では、コア基板の両側に導体層を有する両面配線板(配線板10)を示したが、これに限られない。例えば図28に示すように、コア基板(基板100)の片側のみに導体層を有する片面配線板であってもよい。
【0096】
また、例えば図28に示されるように、キャビティR10(電子部品200の収容スペース)は、基板100を貫通しない孔(凹部)であってもよい。この場合も、電子部品200の厚さとキャビティR10(孔)の深さとは、略一致することが好ましいと考えられる。
【0097】
上記実施形態では、基板100の厚さと電子部品200の厚さとが略一致している例を示したが、これに限られない。例えば図28に示されるように、電子部品200の厚さよりも基板100の厚さの方が大きくてもよい。
【0098】
コア基板の片側に2層以上のビルドアップ層を有する配線板であってもよい。例えば図29に示すように、基板100の第1面F1側に、2層の絶縁層101、103と2層の導体層110、130とが交互に積層されてもよい。図29の例では、絶縁層103に孔331a(ビアホール)が形成されており、孔331a内に導体(例えば銅のめっき)が充填されることにより、その孔331a内の導体がビア導体331b(フィルド導体)となる。絶縁層101上の導体層110と絶縁層103上の導体層130とは、ビア導体331bを介して、互いに電気的に接続される。
【0099】
図29に示すように、基板100の第1面F1側と基板100の第2面F2側とで、ビルドアップ層の数が異なっていてもよい。ただし、応力を緩和するためには、基板100の第1面F1側と基板100の第2面F2側とで、ビルドアップ層の数を同じにして、表裏の対称性を高めることが好ましいと考えられる。
【0100】
配線板10の構成、及びその構成要素の種類、性能、寸法、材質、形状、層数、又は配置等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に変更することができる。
【0101】
電子部品200の電極210及び220の形状は、U字形状に限定されず、例えば平板状の電極対でコンデンサ本体201を挟むものであってもよい。
【0102】
電子部品200の種類は、任意である。例えばコンデンサ、抵抗、コイル等の受動部品のほか、IC回路等の能動部品など、任意の電子部品を採用することができる。例えば図30に示すように、基板100のキャビティR10に、ICチップからなる電子部品200を配置し、絶縁材(接着剤200b及び絶縁体101a)で固定してもよい。図30の例では、電子部品200が第4面F4側にパッド200aを有し、電子部品200の第4面F4は接着剤200bで覆われている。また、導体層110は、基板100上に配置される導体パターンPT1と、キャビティR10に充填された絶縁材(接着剤200b及び絶縁体101a)上に配置される導体パターンPT2と、を有し、電子部品200のパッド200aと導体パターンPT2とが、接着剤200bに形成されたビアホール内の導体(ビア導体200c)を介して、互いに電気的に接続されている。なお、接着剤200bは、例えば製造過程でICチップ(電子部品200)を支持板に固定するために用いられる。
【0103】
また、図30の例において、導体層110及び120はそれぞれ、キャビティR10における電子部品200と基板100との隙間R0の直上領域R1に、幅が広い部分Eを有する。ここで、導体層110の幅が広い部分Eは、上記実施形態の幅が広い部分E(図4及び図5参照)と同様、窪みR11内及びその周辺に形成され、導体層110での断線を抑制する。一方、導体層120の幅が広い部分Eは、例えば導体パターンPT1、PT2間の境界部(基板100とキャビティR10内の絶縁材との境界部)、又は電子部品200のエッジ部(電子部品200とキャビティR10内の絶縁材との境界部)など、異なる材料間の境界部の直上に配置されることが好ましい。異なる材料間の境界部の直上では、それら材料間の熱膨張率の差異に起因して断線が起こり易くなるため、幅が広い部分Eにより補強して導体層120での断線を抑制することが望ましい。
【0104】
例えばビア導体311b等は、フィルド導体に限られず、例えばコンフォーマル導体であってもよい。
【0105】
電子部品200をビア接続(ビア導体311b、321b)で実装せず、ワイヤボンディング接続など、他の手法で実装してもよい。
【0106】
配線板の製造工程は、上記図8に示した順序や内容に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において任意に順序や内容を変更することができる。また、用途等に応じて、必要ない工程を割愛してもよい。
【0107】
例えば各導体層の形成方法は任意である。例えばパネルめっき法、パターンめっき法、フルアディティブ法、セミアディティブ(SAP)法、サブトラクティブ法、転写法、及びテンティング法のいずれか1つ、又はこれらの2以上を任意に組み合わせた方法で、導体層を形成してもよい。
【0108】
また、レーザに代えて、湿式又は乾式のエッチングで加工してもよい。エッチングで加工する場合には、予め除去したくない部分をレジスト等で保護しておくことが好ましいと考えられる。
【0109】
上記実施形態や変形例等は、任意に組み合わせることができる。用途等に応じて適切な組み合わせを選ぶことが好ましいと考えられる。例えば図21A〜図26のいずれかに示した構造を、図27〜図30のいずれかに示した構造に適用してもよい。
【0110】
以上、本発明の実施形態について説明したが、設計上の都合やその他の要因によって必要となる様々な修正や組み合わせは、「請求項」に記載されている発明や「発明を実施するための形態」に記載されている具体例に対応する発明の範囲に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の配線板は、内蔵される電子部品の電気回路の形成に適している。また、本発明に係る配線板の製造方法は、配線板の製造に適している。
【符号の説明】
【0112】
10 配線板
11、12 ソルダーレジスト
11a、12a 開口部
100 基板
101〜103 絶縁層
101a 絶縁体
110、120、130 導体層
110a〜110e 導体パターン
111、121 銅箔
112、122 銅めっき
200 電子部品
200a パッド
200b 接着剤
200c ビア導体
201 コンデンサ本体
210、220 電極
210a、220a 上部
210b、220b 側部
210c、220c 下部
211〜214 導体層
221〜224 導体層
231〜239 誘電層
300a スルーホール
300b スルーホール導体
300c 括れ部
301、302 導体層
301a アライメントマーク
311a、312a、321a、322a、331a 孔
311b、312b、321b、322b、331b ビア導体
400 電子部品
500 配線板
600 配線板
1000 配線板
1001 キャリア
B 屈曲部
E 幅が広い部分
C1、C2 接続部位
L1、L2 ランド
P1〜P4 パッド
PT1、PT2 導体パターン
R1 直上領域
R10 キャビティ
R100 領域
S1 第1ストレート部
S2 第2ストレート部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティが形成された絶縁基板と、
前記キャビティ内に配置される電子デバイスと、
前記絶縁基板上及び前記電子デバイス上に配置される層間絶縁層と、
前記層間絶縁層上に配置される導体層と、
を有する配線板において、
前記キャビティにおける前記絶縁基板と前記電子デバイスとの隙間には、前記層間絶縁層を構成する絶縁材料が充填され、
前記導体層は、前記隙間の直上において部分的に幅が広くなる導体パターンを有する、
ことを特徴とする配線板。
【請求項2】
前記層間絶縁層は、前記隙間の直上に窪みを有し、
前記導体パターンの幅が広い部分は、前記窪み内に形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の配線板。
【請求項3】
前記導体パターンは、第1ストレート部と、幅が広い部分と、第2ストレート部とが、この順で接続された部分を有し、
前記第1ストレート部及び前記第2ストレート部は、それぞれ略一定の幅を有し、
前記幅が広い部分は、前記第1ストレート部及び前記第2ストレート部のいずれよりも大きな幅をもって、前記隙間の直上に配置される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の配線板。
【請求項4】
前記第1ストレート部と前記幅が広い部分との接続部位、及び前記第2ストレート部と前記幅が広い部分との接続部位の少なくとも一方においては、前記導体パターンの幅が約90°未満の角度で幅が広くなる、
ことを特徴とする請求項3に記載の配線板。
【請求項5】
前記幅が広い部分の最大幅は、前記第1ストレート部の幅及び前記第2ストレート部の幅の少なくとも一方の約1.3〜約5倍の範囲にある、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の配線板。
【請求項6】
前記導体パターンは、配線及びパッドを有し、
前記導体パターンの幅が広い部分は、前記配線を介して、前記パッドと接続される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項7】
前記充填される絶縁材料は、前記絶縁基板及び前記電子デバイスのいずれよりも大きな熱膨張係数を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項8】
前記電子デバイスは、電子部品又は他の配線板であり、
前記導体パターンは、前記電子部品の電極又は前記他の配線板のパッドと電気的に接続される、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項9】
前記層間絶縁層は、心材を樹脂に含浸してなる、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項10】
前記絶縁基板は前記配線板のコア基板に相当し、
前記導体層とは反対側の最外層には、電子部品を実装するためのパッドが形成される、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の配線板。
【請求項11】
キャビティが形成された絶縁基板を準備することと、
前記キャビティ内に電子デバイスを配置することと、
前記絶縁基板上及び前記電子デバイス上に、層間絶縁層を形成することと、
前記キャビティにおける前記絶縁基板と前記電子デバイスとの隙間に、前記層間絶縁層を構成する絶縁材料を充填することと、
前記層間絶縁層上に、前記隙間の直上において部分的に幅が広くなる導体パターンを有する導体層を形成することと、
を含む、
配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−151372(P2012−151372A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10311(P2011−10311)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】