説明

配線板

【課題】少なくとも片面に電気配線を有し、発熱素子1を実装した配線板において、素子による発熱を緩和し実装部品を接続した半田部2にクラックが起こりにくくする。
【解決手段】第1樹脂絶縁層4両面の金属層3の合計厚みを、第1樹脂絶縁層の厚みより厚く設定する。そして、両面の金属層3ともその端縁は第1樹脂絶縁層4の周縁より内側に位置させる。さらに、第1樹脂絶縁層4には、両面の金属層3端縁全周に接し、厚みが金属層厚みと同等以上である補強繊維充填第2樹脂絶縁層5を付加する。発熱素子1実装側の前記第2樹脂絶縁層5は、金属層3を覆い且つ発熱素子1端縁に接しており、発熱素子1上面と同等以上の高さとなる厚みを有している。加えて、第1樹脂絶縁層4、第2樹脂絶縁層5ともに、その熱膨張率を、第1樹脂絶縁層4の両面に配置されている金属層3より小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱素子を実装した構成においても放熱特性及び接続信頼性の高い配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載する配線板は、電子機器の軽薄短小化に伴う微細配線・高密度実装の技術が求められる一方で、発熱に対応する高放熱の技術も求められている。特に、各種制御・操作に大電流を使用する自動車などにおける電子回路では、導電回路の抵抗に起因する発熱やパワー素子からの発熱が非常に多く、配線板の放熱特性は高レベルであることが必須となってきている。
【0003】
その対策として、放熱性の高いセラミック基板やシート状繊維基材に熱硬化性樹脂を保持した絶縁層に厚い金属層(銅板ないし銅箔等)を一体化した積層板を用意し、金属層を回路加工した配線板がある(例えば、特許文献1の段落番号0002の記載)。
【0004】
シート状繊維基材に熱硬化性樹脂を保持した絶縁層に厚い金属層を一体化した配線板では、配線板に半田付によりパワー素子など発熱素子を実装すると、金属層の熱膨張・収縮の応力が半田部にかかり、半田部にクラックが発生しやすくなる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−198103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、シート状繊維基材で補強された第1樹脂絶縁層とその両面に一体化した金属層で構成され、少なくとも片面の金属層が電気配線の機能を有し、発熱素子を実装した配線板において、素子による発熱を緩和し実装部品を接続した半田部にクラックが起こりにくくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するために、本発明に係る配線板(請求項1)は、シート状繊維基材で補強された第1樹脂絶縁層とその両面に一体化した金属層で構成され、少なくとも片面の金属層が電気配線の機能を有する構成において、前記電気配線には、発熱素子が実装されている。第1樹脂絶縁層両面の金属層はその合計厚みが第1樹脂絶縁層の厚みより厚く設定される。そして、第1樹脂絶縁層両面の金属層ともその端縁は第1樹脂絶縁層の周縁より内側に位置する。さらに、第1樹脂絶縁層には、両面の金属層端縁全周に接し厚みが金属層厚みと同等以上である補強繊維充填第2樹脂絶縁層が付加されており、発熱素子実装側の前記第2樹脂絶縁層は、金属層を覆い且つ発熱素子端縁に接しており、発熱素子上面と同等以上の高さとなる厚みを有している。加えて、第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層ともに、熱膨張率が、第1樹脂絶縁層の両面に配置されている金属層より小さいことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る他の配線板(請求項2)は、上記の構成において、発熱素子実装側の前記第2樹脂絶縁層は、金属層を覆い且つ発熱素子を覆う高さとなる厚みを有し金属層および発熱素子を覆っていることを特徴とする。
【0009】
上記請求項1又は2において、好ましくは、樹脂絶縁層の熱伝導率が4W/m・K以上であり(請求項3)、電気配線の機能を有する金属層は厚み0.7mm以上の銅層である(請求項4)。
【発明の効果】
【0010】
電気配線の機能を有する金属層上にパワー素子等の発熱部品を実装する場合、当該パワー素子の熱膨張率は5ppm/℃程度である。一方、パワー素子直下の金属層の熱膨張率(α)は17〜30ppm/℃程度である。パワー素子の発熱と発熱停止による、冷熱サイクルを繰り返すと、両者の熱膨張率の差に起因して、両者を接合している半田部に応力が集中し、半田部にクラックが発生して接続信頼性が低下する。
【0011】
しかし、本発明に係る配線板(請求項1、2)においては、第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層の熱膨張率が金属層の熱膨張率より小さく、金属層は、その端縁全周が金属層の厚みと同等以上の第2樹脂絶縁層に接し規制されている。これによって、金属層の平面方向の熱膨張は抑えられることになる。発熱素子実装側の第2樹脂絶縁層は、金属層全体を覆い且つ発熱素子端縁にまで達しているので、金属層の熱膨張抑制効果は一層大きくなっている。また、第1樹脂絶縁層は、その両面の金属層の合計厚みより薄いので、第1樹脂絶縁層で熱伝導が阻害されることが少なく、第1樹脂絶縁層を介した両面の金属層の熱伝導性は確保され、金属層自体の昇温も抑えられる。このようにして、金属層の温度上昇による膨張が抑制され、半田部にかかる応力が低減される。
さらに、樹脂絶縁層を熱伝導率4W/m・K以上とし(請求項3)、金属層の厚みを厚く設定する(請求項4)ことにより放熱効果は大きくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
請求項1に係る発明を実施する具体的な形態は、例えば、図1(a)に示すような構成が望ましい。シート状繊維基材で補強された第1樹脂絶縁層4の両面に金属層(例えば、銅層)3が一体化され、少なくとも片面の金属層は電気配線の機能を有する。電気配線の機能を有する金属層には、発熱素子1が半田2により実装される。第1樹脂絶縁層4両面に一体化した金属層3は、その合計厚みが第1樹脂絶縁層4の厚みより厚く設定されている。また、これら金属層3の端縁は、第1樹脂絶縁層4の周縁より内側に位置している。そして、第1樹脂絶縁層4には、その両面の金属層3端縁全周に接し厚みが金属層3の厚みと同等以上である補強繊維充填第2樹脂絶縁層5が付加されている。ここで、特に、発熱素子1実装側の第2樹脂絶縁層5は、金属層3を覆い且つ発熱素子1端縁に接しており、発熱素子上面と同等以上の高さとなる厚みを有している。第1樹脂絶縁層4と第2樹脂絶縁層5の双方の熱膨張率は、金属層3の熱膨張率より小さく設定してある。
【0013】
上記のような構成は、まず、シート状繊維基材に熱硬化性樹脂を保持したプリプレグ層の両面に金属層を配置して加熱加圧成形により一体化する。プリプレグ層は、前記成形により第1樹脂絶縁層4となる。そして、金属層3の端縁が第1樹脂絶縁層4の周縁より内側に位置するように、金属層を加工して両面金属層付き板状体とする。この加工は、金属層が電気配線の機能を有するように加工することを含む。尚、予め所定形状に加工した金属層を前記プリプレグ層の両面に配置し、加熱加圧成形により一体化して、両面金属層付き板状体としてもよい。
次に、前記の両面金属層付き板状体の両面にプリプレグ層を重ね、加熱加圧成形により一体化して第2樹脂絶縁層5を形成する。金属層3上の第2樹脂絶縁層5を研磨又はざぐり加工にて除去し、金属層3を露出させる。前記研磨又はざぐり加工において、発熱素子1を実装する側の第2樹脂絶縁層5は、実装領域のみに対応する第2樹脂絶縁層を除去する。その反対側の面については、金属層3の端縁全周が第2樹脂絶縁層5に接した状態となるように、前記研磨又はざぐり加工を行なう。このようにして、第1樹脂絶縁層4に第2樹脂絶縁層5が付加された状態とする。
そして、所定の発熱素子1を、上記第2樹脂絶縁層5を除去した実装領域に、半田リフロー等の手段により実装する。
第2樹脂絶縁層の付加は、金属層3に対面する領域を予め除去したプリプレグ層を両面金属層付き板状体に重ねて加熱加圧成形により一体化すれば、前記の研磨又はざぐり加工の工程を省略又は簡略化することができる。
【0014】
請求項2に係る発明を実施する具体的な形態は、例えば、図1(b)に示すような構成である。図1(a)を参照して説明した両面金属層付き板状体と同様の両面金属層付き板状体に発熱素子1を実装した後、第1樹脂絶縁層4に第2樹脂絶縁層5を付加する。この付加は、発熱素子1実装側においては、第2樹脂絶縁層5が金属層3を覆い且つ発熱素子1を覆う高さとなる厚みを有し金属層および発熱素子を覆った構成とする。その反対側の面については、第2樹脂絶縁層5の厚みを金属層3の厚みと同等とし、金属層3の上面全体が露出するようにする。
このような構成は、発熱素子1を実装した両面金属層付き板状体を補強繊維充填熱硬化性樹脂で封止することにより達成できる。
【0015】
上記発明を実施する具体的な形態は、図1(a)(b)いずれの場合においても、第1樹脂絶縁層4の厚みは、その両面の金属層3の合計厚みよりも薄いので、第1樹脂絶縁層4に金属層3を押し込むことによっては、金属層3の端縁周囲にその厚み以上に樹脂絶縁層が接した状態とすることはできない。第1樹脂絶縁層4に第2樹脂絶縁層5を付加することは必須の事項となる。
【0016】
上記プリプレグを構成するシート状繊維基材は、ガラス繊維や有機繊維で構成された織布や不織布である。樹脂絶縁層の熱膨張率を小さくするためには、アラミド繊維やアルミナ繊維からなるシート状繊維基材が好適である。請求項3において、第1樹脂絶縁層は、好ましくは、熱伝導率が4W/m・K以上である。前記シート状繊維基材に含浸して樹脂絶縁層を構成するための熱硬化性樹脂は、樹脂絶縁層の熱伝導率を4W/m・K以上にする場合には、例えば、以下のような樹脂組成を採用する。
すなわち、無機充填材を含有し(式1)で示す分子構造のエポキシ樹脂モノマを配合したエポキシ樹脂組成物を採用する。前記無機充填材は、熱伝導率20W/m・K以上であって、樹脂固形分100体積部に対し10〜100体積部の量で絶縁層中に存在するようにする。
【0017】
【化1】

【0018】
上記(式1)で示す分子構造のエポキシ樹脂モノマは、ビフェニル骨格あるいはビフェニル誘導体の骨格をもち、1分子中に2個以上のエポキシ基をもつエポキシ化合物全般である。エポキシ樹脂モノマの硬化反応を進めるために、硬化剤を配合する。硬化剤は、例えば、アミン化合物やその誘導体、酸無水物、イミダゾールやその誘導体、フェノール類又はその化合物や重合体などである。また、エポキシ樹脂モノマと硬化剤の反応を促進するために、硬化促進剤を使用することができる。硬化促進剤は、例えば、トリフェニルホスフィン、イミダゾールやその誘導体、三級アミン化合物やその誘導体などである。
【0019】
上記硬化剤や硬化促進剤を配合したエポキシ樹脂組成物に配合する熱伝導率20W/m・K以上の無機充填材は、金属酸化物又は水酸化物あるいは無機セラミックス、その他の充填材であり、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、アルミナ、酸化マグネシウム等の無機粉末充填材、合成繊維、セラミックス繊維等の繊維質充填材、着色剤等である。これら無機充填材は2種類以上を併用してもよい。
無機充填材は、樹脂固形分100体積部に対し10〜100体積部の量となるように配合する。前記無機充填材の熱伝導率と配合量の下限値は、樹脂絶縁層の熱伝導率を4W/m・K以上にする場合に必要である。また、エポキシ樹脂組成物に配合する無機充填材が少ないと、無機充填材をエポキシ樹脂組成物中に均一に分散させることが難しくなる。熱伝導性の確保と共にこの点においても、無機充填材配合量の下限値の規定は重要である。一方、無機充填材の配合量を多くすると、エポキシ樹脂組成物の粘性が増大して取り扱いが難しくなるので、無機充填材配合量の上限値は、このような観点から規定する。
【0020】
尚、無機充填材の熱伝導率が30W/m・K以上であれば、樹脂絶縁層の熱伝導率をさらに高くできるので好ましい。また、無機充填材は、その形状が、粉末(塊状、球状)、短繊維、長繊維等いずれであってもよいが、平板状のものを選定すると、高熱伝導率の無機充填材自身が樹脂中で積み重なった状態で存在することになり、樹脂絶縁層の厚み方向の熱伝導性をさらに高くできるので好ましい。上記エポキシ樹脂組成物には、そのほか必要に応じて難燃剤や希釈剤、可塑剤、カップリング剤等を配合することができる。
【0021】
樹脂絶縁層の形成は、上記エポキシ樹脂組成物を必要に応じ溶剤に希釈してワニスを調製しこれをシート状繊維基材に含浸し、加熱乾燥して半硬化状態にしたプリプレグを準備する。そして、これらを加熱加圧成形して樹脂絶縁層とする。前記加熱加圧成形に当っては、金属層を前記プリプレグ層の両面に配置し、これらを加熱加圧成形により一体化する。金属層は、電解金属、圧延金属のいずれであってもよい。
エポキシ樹脂組成物を溶剤に希釈してワニスを調製する場合、溶剤の配合・使用が、エポキシ樹脂硬化物の熱伝導性に影響を与えることはない。
【実施例】
【0022】
以下、本発明に係る実施例を示し、本発明について詳細に説明する。尚、以下の実施例および比較例において、「部」とは「質量部」を意味する。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0023】
実施例1
エポキシ樹脂モノマ成分としてビフェニル骨格をもつエポキシ樹脂モノマ(ジャパンエポキシレジン製「YL6121H」,エポキシ当量175)100部を用意し、これをメチルイソブチルケトン(和光純薬製)100部に100℃で溶解し、室温に戻した。前記「YL6121H」は、既述の分子構造式(式1)において、R=−CH,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマと分子構造式(式1)において、R=−H,n=0.1であるエポキシ樹脂モノマを等モルで含有するエポキシ樹脂モノマである。
硬化剤として1,5−ジアミノナフタレン(和光純薬製「1,5−DAN」,アミン当量40)22部を用意し、これをメチルイソブチルケトン(和光純薬製)100部に100℃で溶解し、室温に戻した。
上記のエポキシ樹脂モノマ溶液と硬化剤溶液を混合・撹拌して均一なワニスにし、さらに無機充填材として窒化ホウ素(電気化学工業製「GP」,平均粒子径:8μm,熱伝導率60W/m・K,粒子形状:平板状)107部(樹脂固形分100体積部に対し50体積部に相当)を加えて混練し、エポキシ樹脂ワニスを調製した。
このエポキシ樹脂ワニスを、厚み50マイクロメートルのアラミド繊維不織布に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ1枚の両側に熱膨張率が17ppm/℃である0.7mm厚の金属層(銅層)を重ね、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して一体化し、第1樹脂絶縁層の両面に金属層(銅層)を一体化した厚み1.5mmの積層板を得た。そして、金属層(銅層)を所定形状に加工して、両面金属層(銅層)付きの配線板とした。
【0024】
次に、上記エポキシ樹脂ワニスを、厚み120マイクロメートルのアラミド繊維不織布に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグを上記両面金属層(銅層)の所定形状に合わせて金属層対応部分をパンチング加工で除去してから、配線板の両面に7枚ずつ配置し離型フィルムで挟み温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して、第2樹脂絶縁層を一体化した。
離型フィルムを剥がして、パワー素子実装領域において、金属層(銅層)が露出するまで第2樹脂絶縁層をざぐり加工により除去した。そして、第2樹脂絶縁層を除去した領域に発熱素子(セラミックヒータチップ)を半田付により実装した。第1樹脂絶縁層に付加した第2樹脂絶縁層は、発熱素子実装側では発熱素子の端縁周囲に当接し発熱素子と同じ高さとし、反対側では、金属層(銅層)と同じ高さで金属層端縁周囲に当接する構成とした。これは、図1(a)に示す構成に相当するものである。第1及び第2樹脂絶縁層の熱膨張率は、12ppm/℃である。
【0025】
実施例1で得た配線板について素子発熱温度、そり量および半田接続信頼性を測定した結果を、使用した銅層厚みと共に表1にまとめて示す。測定は、以下に示す方法による。
素子発熱温度:構成体を放熱板、冷却装置へ搭載し、実装したセラミックヒータチップに80Wの電力を入力した際の素子の温度を測定した。
そり量:構成体を、105℃〜−40℃の範囲で冷熱サイクル試験を行ない、1000サイクル後の平面に対する浮き上がり量をそり量として測定した。
半田接続信頼性:構成体を、105℃〜−40℃の範囲で冷熱サイクル試験を行ない、1000サイクル後の半田部クラック発生の有無を調べた。
【0026】
実施例2
実施例1のエポキシ樹脂ワニスを、厚み50マイクロメートルのアラミド繊維不織布に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ1枚の両側に熱膨張率が17ppm/℃である0.7mm厚の金属層(銅層)を重ね、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して一体化し、厚み1.5mmの積層板を得た。そして、金属層(銅層)を所定形状に加工して、両面金属層(銅層)付きの配線板とし、一方の面に発熱素子(セラミックヒータチップ)を半田付により実装した。
次に、上記エポキシ樹脂ワニスを、厚み120マイクロメートルのアラミド繊維不織布に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグを上記両面金属層(銅層)の所定形状に合わせて金属層対応部分をパンチング加工で除去してから、配線板の発熱素子実装側には10枚配置し、反対側には7枚配置して、離型フィルムで挟み温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して、第2樹脂絶縁層を一体化した。
【0027】
第1樹脂絶縁層に付加した第2樹脂絶縁層が、発熱素子実装側では金属層(銅層)と発熱素子の全体を覆い、反対側では、金属層(銅層)と同じ高さで金属層端縁周囲に当接する構成の配線板を得た。これは、図1(b)に示す構成に相当するものである。
【0028】
実施例3
エポキシ樹脂(油化シェル製「エピコート1001」,エポキシ当量:500)96質量部、硬化剤としてジシアンジアミド4質量部、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.5質量部を配合し、樹脂固形分が60質量%となるようにメチルエチルケトン溶媒に溶解し、エポキシ樹脂ワニスを調製した。
このエポキシ樹脂ワニスを、厚み100μmのガラス繊維織布(織り密度:縦糸60本/25mm,横糸58本/25mm 旭シュエーベル製「G216」)に含浸し加熱乾燥して、プリプレグを得た。このプリプレグ1枚の両側に熱膨張率が17ppm/℃である0.7mm厚の金属層(銅層)を重ね、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して一体化し、第1樹脂絶縁層の両面に金属層(銅層)を一体化した厚み1.5mmの積層板を得た。そして、金属層(銅層)を所定形状に加工して、両面金属層(銅層)付きの配線板とした。
【0029】
次に、上記エポキシ樹脂ワニスを、厚み200μmのガラス繊維織布(織り密度:縦糸44本/25mm、横糸33本/25mm 旭シュエーベル製「7628」)に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグを上記両面金属層(銅層)の所定形状に合わせて金属層対応部分をパンチング加工で除去してから、配線板の両面に4枚ずつ配置し離型フィルムで挟み温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して、第2樹脂絶縁層を一体化した。
離型フィルムを剥がして、パワー素子実装領域において、金属層(銅層)が露出するまで第2樹脂絶縁層をざぐり加工により除去した。そして、第2樹脂絶縁層を除去した領域に発熱素子(セラミックヒータチップ)を半田付により実装した。第1樹脂絶縁層に付加した第2樹脂絶縁層は、発熱素子実装側では発熱素子の端縁周囲に当接し発熱素子と同じ高さとし、反対側では、金属層(銅層)と同じ高さで金属層端縁周囲に当接する構成とした。これは、図1(a)に示す構成に相当するものである。第1及び第2樹脂絶縁層の熱膨張率は、12ppm/℃である。
【0030】
実施例4
実施例1のエポキシ樹脂ワニスを、厚み50マイクロメートルのアラミド繊維不織布に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ1枚の両側に熱膨張率が17ppm/℃である0.5mm厚の金属層(銅層)を重ね、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して一体化し、厚み1.1mmの積層板を得た。そして、金属層(銅層)を所定形状に加工して、両面金属層(銅層)付きの配線板とした。
【0031】
次に、上記エポキシ樹脂ワニスを、厚み120マイクロメートルのアラミド繊維不織布に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグを上記両面金属層(銅層)の所定形状に合わせて金属層対応部分をパンチング加工で除去してから、配線板の両面に5枚ずつ配置し離型フィルムで挟み温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して、第2樹脂絶縁層を一体化した。
離型フィルムを剥がして、パワー素子実装領域において、金属層(銅層)が露出するまで第2樹脂絶縁層をざぐり加工により除去した。そして、第2樹脂絶縁層を除去した領域に発熱素子(セラミックヒータチップ)を半田付により実装した。第1樹脂絶縁層に付加した第2樹脂絶縁層は、発熱素子実装側では発熱素子の端縁周囲に当接し発熱素子と同じ高さとし、反対側では、金属層(銅層)と同じ高さで金属層端縁周囲に当接する構成とした。これは、図1(a)に示す構成に相当するものである。
【0032】
比較例1
実施例1のエポキシ樹脂ワニスを、厚み50マイクロメートルのアラミド繊維不織布に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ1枚の両側に熱膨張率が17ppm/℃である0.7mm厚の金属層(銅層)を重ね、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して一体化し、厚み1.5mmの積層板を得た。そして、金属層(銅層)を所定形状に加工して、両面金属層(銅層)付きの配線板とした。これは図2に示す構成に相当するものである。
【0033】
比較例2
実施例1のエポキシ樹脂ワニスを、厚み50μmのガラス繊維不織布に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ1枚の両側に熱膨張率が17ppm/℃である0.7mm厚の金属層(銅層)を重ね、温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して一体化し、厚み1.5mmの積層板を得た。そして、金属層(銅層)を所定形状に加工して、両面金属層(銅層)付きの配線板とした。
【0034】
次に、上記エポキシ樹脂ワニスを、厚み0.4mmのガラス繊維不織布に含浸し加熱乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグを上記両面金属層(銅層)の所定形状に合わせて金属層対応部分をパンチング加工で除去してから、配線板の両面に2枚ずつ配置し離型フィルムで挟み温度175℃、圧力4MPaの条件で90分間加熱加圧成形して、第2樹脂絶縁層を一体化した。
離型フィルムを剥がして、パワー素子実装領域において、金属層(銅層)が露出するまで第2樹脂絶縁層をざぐり加工により除去した。そして、第2樹脂絶縁層を除去した領域に発熱素子(セラミックヒータチップ)を半田付により実装した。第1樹脂絶縁層に付加した第2樹脂絶縁層は、発熱素子実装側では発熱素子の端縁周囲に当接し発熱素子と同じ高さとし、反対側では、金属層(銅層)と同じ高さで金属層端縁周囲に当接する構成とした。これは、図1(a)に示す構成に相当するものであるが、第1及び2樹脂絶縁層の熱膨張率が18ppm/℃と、金属層(銅層)の熱膨張率より大きいものである。
【0035】
実施例2〜4、比較例1〜2の配線板についても、実施例1と同様に特性を測定し、結果を表1に示した。
【0036】
【表1】

【0037】

上記表に示したように、比較例1においては、金属層の端縁周囲を規制するものがないので、金属層の熱膨張を抑えられず、配線板のそりが大きくなり、半田部のクラックも発生しやすくなっている。比較例2においては、第2樹脂絶縁層を付加しているものの、その熱膨張率が金属層の熱膨張率より大きいので、配線板のそりと半田部のクラック発生を抑えられていない。
本発明に係る実施例においては、配線板のそりと半田部のクラック発生を抑えられていることを理解できる。また、第2樹脂絶縁層にて周囲を覆うことと放熱性の高い樹脂を使用することで素子の発熱を抑えられることがわかる。さらに、金属層厚みを0.7mmにすると、素子の発熱を抑えられており、0.7mm以上にすることが好ましいことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る実施の形態の配線板断面図である。
【図2】従来の配線板断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1はパワー素子
2は半田
3は金属層
4は第1樹脂絶縁層
5は第2樹脂絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状繊維基材で補強された第1樹脂絶縁層とその両面に一体化した金属層で構成され、少なくとも片面の金属層が電気配線の機能を有する配線板において、前記電気配線には、発熱素子が実装されており、
両面の金属層は、その合計厚みが第1樹脂絶縁層の厚みより厚く設定され、
両面の金属層とも、その端縁は第1樹脂絶縁層の周縁より内側に位置し、
第1樹脂絶縁層には、両面の金属層端縁全周に接し厚みが金属層厚みと同等以上である補強繊維充填第2樹脂絶縁層が付加されており、発熱素子実装側の前記第2樹脂絶縁層は、金属層を覆い且つ発熱素子端縁に接しており、発熱素子上面と同等以上の高さとなる厚みを有し、
第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層双方の熱膨張率が、第1樹脂絶縁層の両面に配置されている金属層の熱膨張率より小さいことを特徴とする配線板。
【請求項2】
シート状繊維基材で補強された第1樹脂絶縁層とその両面に一体化した金属層で構成され、少なくとも片面の金属層が電気配線の機能を有する配線板において、前記電気配線には、発熱素子が実装されており、
両面の金属層は、その合計厚みが第1樹脂絶縁層の厚みより厚く設定され、
両面の金属層とも、その端縁は第1樹脂絶縁層の周縁より内側に位置し、
第1樹脂絶縁層には、両面の金属層端縁全周に接し厚みが金属層厚みと同等以上である補強繊維充填第2樹脂絶縁層が付加されており、発熱素子実装側の前記第2樹脂絶縁層は、金属層を覆い且つ発熱素子を覆う高さとなる厚みを有し金属層および発熱素子を覆っており、
第1樹脂絶縁層と第2樹脂絶縁層双方の熱膨張率が、第1樹脂絶縁層の両面に配置されている金属層の熱膨張率より小さいことを特徴とする配線板。
【請求項3】
樹脂絶縁層の熱伝導率が4W/m・K以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の配線板。
【請求項4】
電気配線の機能を有する金属層が、銅層からなり、厚み0.7mm以上である請求項1又は2記載の配線板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−115983(P2007−115983A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307371(P2005−307371)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】