説明

配線構造体の製造方法、圧電アクチュエータユニットの製造方法、配線構造体及び圧電アクチュエータユニット

【課題】高密度に配置された第1接続端子と第2接続端子とを、電気的接続信頼性良く接続する。
【解決手段】インクジェットヘッドを製造するには、まず、フレキシブル層51の上面のランド52と対向する部分に凹部51bを形成し、続いて、凹部51bを覆うように可逆性の熱収縮層56を形成する。次に、フレキシブル層51の下面にソルダーレジスト層55を形成し、ソルダーレジスト層55の貫通孔55aから露出したランド52の表面にハンダ46を形成する。次に、接続端子45aを洗浄処理してから、COF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱することにより、フレキシブル層51のランド52と対向する部分を圧電層42側に隆起させるとともにハンダ46を接続端子45aに接触させ、その後、ヒータHを離すことにより、フレキシブル層を隆起前の状態に戻してハンダ46を上方に引き伸ばして鼓状にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面に形成された接続端子と、基材と対向して配置されたフレキシブル層の面に形成された接続端子とが接合層を介して接続された配線構造体の製造方法及び配線構造体、並びに、圧電層の表面に形成された接続端子と、圧電層と対向して配置されたフレキシブル配線部材の表面に形成された接続端子とが接合層を介して接続された圧電アクチュエータユニットの製造方法、及び圧電アクチュエータユニットに関するに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェットヘッドにおいては、複数のノズルに連通する複数の圧力室に対応して圧電層の上面に複数の外部電極(接続端子)が形成されているとともに、圧電層と対向するように配置されたCOF(Chip On Film)下面における外部電極と対向する部分に端子電極が形成されている。そして、端子電極の表面にハンダなどの接合材によって構成されたバンプが形成されたCOFを、圧電層に向かって押圧しながら加熱することにより、端子電極上のバンプを構成するハンダ等が溶融状態で外部電極と接触し、その後に硬化することで外部電極と端子電極とをバンプを介して接続している。
【0003】
【特許文献1】特開2007−253427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、例えば、特許文献1に記載されているようなインクジェットヘッドにおいては、高解像度印刷や装置の小型化などを実現するため、ノズルの高密度化に伴い圧力室が狭い間隔で高密度に配置され、これに対応して、圧電層の外部電極及びCOFの端子電極も高密度に配置され、バンプ同士の間隔も狭くなる。一方、特許文献1のように端子電極の表面にバンプが形成されたCOFを圧電層に向かって押圧することで、バンプを介して外部電極と端子電極とを接続すると、溶融状態のハンダなどの接合材は、押圧されたときに、その表面張力により外側にふくらんだ状態を維持して硬化する。したがって、COFの電極や配線の高密度化に伴い、隣接するバンプ同士の間隔が狭くなっていると、押圧されて外側にふくらんだ状態で硬化したバンプは、隣接するバンプと接触しやすくバンプ同士が導通してショートしてしまう虞がある。また、そのような高密度で狭い配線間隔のCOFにおいては、接合材によって接合した後に他部品への組立てなどの他の製造工程において発生する微小の異物が、そのバンプ間に入り込んで残留してしまう(所謂ゴミ噛み)ことがある。このような場合、エア噴射等で除去を試みても、バンプ間隔が狭いため、バンプ間隔に入り込んでしまい除去しきれず、この残留異物を介してバンプ同士が導通したりしてしまう虞もある。
【0005】
本発明の目的は、高密度に配置された第1接続端子と第2接続端子とにおいても、電気的接続信頼性の高い接続が可能な配線構造体の製造方法、圧電アクチュエータユニットの製造方法、配線構造体、及び圧電アクチュエータユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る配線構造体の製造方法は、基材の一表面に形成された複数の第1接続端子と、前記基材の前記一表面と対向するように配置されたフレキシブル層の前記基材との対向面に形成された複数の第2接続端子とが接続されることによって形成された配線構造体の製造方法であって、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における、前記複数の第2接続端子と対向する部分に、それぞれ、可逆性の熱収縮層を形成する熱収縮層形成工程と、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子の少なくとも一方の表面に、それぞれ、導電性を有する接合層を形成する接合層形成工程と、加熱手段により前記フレキシブル層を前記基材に向かって押圧しながら加熱することにより、前記各熱収縮層を収縮させて前記フレキシブル層の前記複数の第2接続端子が形成された部分を前記基材側に隆起させるとともに、前記接合層を未硬化状態で前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子に接触させる押圧加熱工程と、前記フレキシブル層への押圧及び加熱を解除することによって、前記フレキシブル層を隆起前の状態に戻すとともに、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子に接触している前記接合層を前記フレキシブル層側に引き伸ばして、この状態で前記接合層を硬化させる押圧加熱解除工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0007】
これによると、接合層が、押圧加熱解除工程においてフレキシブル層側に引き伸ばされることにより、基材の一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状になり、鼓状になった接合層により、第1接続端子と第2接続端子とが接続されるとともに基材とフレキシブル層とが接合されるため、接合層同士の間隔が大きくなり、第1接続端子同士及び第2接続端子同士が狭い間隔で高密度に配置されている場合でも、接合層同士が直接接触して互いに導通したり、接合層の間の隙間に残留した異物などを介して互いに導通したりしてしまうのを防止することができる。また、接合層が引き伸ばされる量は僅かなものであるが、複数の熱収縮層により、フレキシブル層の第2接続端子と対向する部分が隆起され、加熱後にはフレキシブル層のこれらの部分が隆起前の状態に戻ることにより、接合層が個々に引き伸ばされているため、接合層の引き伸ばし量の制御がしやすく、加熱手段を昇降させる装置などを細かく制御したり、装置に工夫したりしたりしなくても、容易に接合層を引き伸ばして鼓状にすることができる。
【0008】
第2の発明に係る配線構造体の製造方法は、第1の発明に係る配線構造体の製造方法であって、前記熱収縮層形成工程の前に、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における前記熱収縮層が形成される部分の一部に第1凹部を形成する第1凹部形成工程をさらに備えており、前記熱収縮層形成工程において、前記第1凹部を覆うように前記熱収縮層を形成することを特徴とするものである。
【0009】
これによると、第1凹部が形成されていることにより、フレキシブル層が、加熱されたときに第1凹部を埋めるように変形して大きく隆起するため、加熱が解除されて隆起前の状態に戻ったときに、接合層は、大きく引き上げられて確実に上述したような鼓状になる。
【0010】
第3の発明に係る配線構造体の製造方法は、第1又は第2の発明に係る配線構造体の製造方法であって、前記押圧加熱工程の前に、前記フレキシブル層の前記基板との対向面に、前記接続端子が形成される部分を挟むように、1対の第2凹部を形成する第2凹部形成工程をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0011】
これによると、熱収縮層を加熱したときに、フレキシブル層が、第2凹部を埋めるように変形するため、フレキシブル層が一表面側に隆起しやすくなり、隆起部の高さをさらに高くすることができる。その結果、加熱が解除されて隆起前の状態に戻ったときに、接合層は、大きく引き上げられて確実に上述したような鼓状になる。
【0012】
第4の発明に係る配線構造体の製造方法は、第1〜第3の発明に係る配線構造体の製造方法であって、前記熱収縮層形成工程の前に、前記フレキシブル層の前記基板と反対側の面における、前記熱収縮層がそれぞれ形成される部分の全域に、前記熱収縮層の厚みとほぼ同じ深さを有する第3凹部を形成する第3凹部形成工程をさらに備えており、前記熱収縮層形成工程において、前記第3凹部の底面に前記複数の熱収縮層を形成することを特徴とするものである。
【0013】
これによると、熱収縮層がその厚みと同じ深さを有する第3凹部の底面に配置されているため、フレキシブル層の基材と反対側の面が平坦となり、フレキシブル配線が、汎用性のある使い勝手のよいものとなる。
【0014】
第5の発明に係る配線構造体の製造方法は、第1〜第4のいずれかの発明に係る配線構造体の製造方法であって、前記熱収縮層形成工程において、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における前記複数の第2接続端子とそれぞれ対向する部分とは別に、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における前記複数の第2接続端子と対向しない部分の一部にも、さらに前記熱収縮層を形成し、前記接合層形成工程において、前記第1接続端子及び前記第2接続端子の少なくとも一方の表面とは別に、前記基材の前記フレキシブル層と対向することとなる面、及び、前記フレキシブル層の前記基材と対向することとなる面の少なくともいずれか一方における、前記複数の第2接続端子と対向しない前記熱収縮層と対向する部分にも、さらに前記接合層を形成することを特徴とするものである。
【0015】
これによると、第2接続端子の配置によっては、押圧加熱工程及び押圧加熱解除工程において、接合層に加わる押圧力にばらつきが発生する虞があるが、第2接続端子と対向しない部分に熱収縮層及び接合層を適切に形成することにより、全ての第2接続端子に対応する接合層に均等に押圧力を加えることが可能となり、全ての第1接続端子と第2接続端子とを均等に接合することができる。
【0016】
第6の発明に係る配線構造体の製造方法は、第5の発明に係る配線構造体の製造方法であって、前記熱収縮層形成工程において、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における、前記加熱手段の外縁部と対向することとなる部分に、前記複数の第2接続端子と対向しない前記熱収縮層を形成することを特徴とするものである。
【0017】
加熱手段は端の部分ほどその熱容量が外側に逃げ易く、その温度が低くなっているので、第2接続端子と対向する熱収縮層が加熱手段の端の部分により加熱された場合には、その加熱温度が低く、この部分におけるフレキシブル層の隆起量が他の部分よりも小さくなってしまい、その結果、第1接続端子と第2接続端子とが均等に接続されない、あるいは、基材とフレキシブル層とが均等に接合されない虞がある。
【0018】
しかしながら、本発明では、第2接続端子と対向しない部分に形成された熱収縮層及び接合層が、加熱手段の端の部分に押圧加熱されるため、これよりも内側にある熱収縮層及び接合層は均等に押圧加熱されることとなる。したがって、フレキシブル層の複数の第2接続端子と対向する部分が全て均等に隆起し、複数の第1接続端子と複数の第2接続端子とを均等に接続することができるとともに、基材とフレキシブル層とを均等に接合することができる。
【0019】
第7の発明に係る配線構造体の製造方法は、第5又は第6の発明に係る配線構造体であって、前記複数の第2接続端子が所定の一方向に配列されたものであり、前記熱収縮層形成工程において、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における、前記所定の一方向に関して最も端に位置する第2接続端子よりもさらに前記所定の一方向の外側の部分に、前記複数の第2接続端子と対向しない前記熱収縮層を形成することを特徴とするものである。
所定の一方向に関して端に位置する第2接続端子よりも外側の部分に、第2接続端子と対向しない熱収縮層及び接合層が形成されていない場合には、端に位置する第2接続端子に対応する接合層と、他の接続端子に対応する接合層とで、押圧加熱工程の際に加えられる押圧力が異なり、第1接続端子と第2接続端子とが均等に接続されない、あるいは、基材とフレキシブル層とが均等に接合されない虞がある。
【0020】
しかしながら、本発明では、所定の一方向に関して、端に位置する第2接続端子よりも外側の部分に熱収縮層及び接合層が配置されているため、所定の一方向に関して、全て第2接続端子に対向する熱収縮層及び接合層の両側に、熱収縮層及び接合層が存在することとなり、その結果、全ての第2接続端子に対応する接合層に均等に押圧力が加わり、全ての第1接続端子と第2接続端子とが均等に接続されるとともに、基材とフレキシブル層とが均等に接合される。
【0021】
第8の発明に係る配線構造体の製造方法は、第1〜第7のいずれかの発明に係る配線構造体の製造方法であって、前記接合層形成工程において、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子の一方の表面にのみ前記接合層を形成し、前記押圧加熱工程の前に、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子のうち前記接合層が形成されていない他方の表面を洗浄処理する洗浄処理工程をさらに備えていることを特徴とするものである。
【0022】
これによると、接合層が第1接続端子及び第2接続端子の表面を流れやすくなるため、小さい押圧力で、複数の第1接続端子と複数の第2接続端子とを接合することができる。
【0023】
第9の発明に係る配線構造体の製造方法は、第1〜第8のいずれかの発明に係る配線構造体の製造方法であって、前記基材が、圧電アクチュエータを構成する、前記複数の第1接続端子に接続された複数の電極を有する圧電層であることを特徴とするものである。
【0024】
これによると、圧電アクチュエータは、例えば、インクジェットヘッドなどに用いられる場合には、電極及び第1接続端子が高密度に配置されることになり、これに伴って、第2接続端子も高密度に配置されることになるが、このような場合でも、接合層が、圧電層(基材)の一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状になり、隣接する接合層の間隔が大きくなるため、接合層同士が直接接触して互いに導通したり、接合層の間の隙間に残留した異物などを介して接合層同士が互いに導通したりしてしまうのを防止することができる。
【0025】
第10の発明に係る圧電アクチュエータユニットの製造方法は、圧電層と、前記圧電層に設けられており、前記圧電層に電界を発生させるための複数の電極と、前記圧電層の一表面に形成されており、前記複数の電極に接続された複数の第1接続端子とを有する圧電アクチュエータと、前記圧電層の前記一表面と対向するように配置されたフレキシブル層と、前記フレキシブル層に設けられた複数の配線と、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面に形成されており、前記複数の配線に接続された複数の第2接続端子とを有するフレキシブル配線部材とを備えた圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、前記フレキシブル層の前記圧電層と反対側となる面における、前記複数の第2接続端子と対向する部分に、それぞれ、可逆性の熱収縮層を形成する熱収縮層形成工程と、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子の少なくとも一方の表面に、それぞれ、導電性を有する接合層を形成する接合層形成工程と、加熱手段により前記フレキシブル層を前記圧電層に向かって押圧しながら加熱することにより、前記熱収縮層を収縮させて前記フレキシブル層の前記複数の第2接続端子が形成された部分を前記圧電層側に隆起させるとともに、前記接合層を未硬化の状態で前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子に接触させる押圧加熱工程と、前記フレキシブル層への押圧及び加熱を解除することにより、前記フレキシブル層が隆起前の状態に戻すとともに前記接合層を前記フレキシブル層側に引き伸ばして、この状態で前記接合層を硬化させる押圧加熱解除工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0026】
これによると、接合層が、押圧加熱解除工程においてフレキシブル層側に引き伸ばされることにより、基材の一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状になり、鼓状になった接合層により、第1接続端子と第2接続端子とが接続されるとともに圧電層とフレキシブル層とが接合されるので、隣接する接合層の間隔が大きくなり、第1接続端子同士及び第2接続端子同士が狭い間隔で高密度に配置されている場合でも、接合層同士が直接接触して互いに導通したり、接合層の間の隙間に残留した異物などを介して互いに導通したりしてしまうのを防止することができる。また、接合層が引き伸ばされる量は僅かなものであるが、複数の熱収縮層により、フレキシブル層の第2接続端子と対向する部分が隆起され、加熱後にはフレキシブル層のこれらの部分が隆起前の状態に戻ることにより、接合層が個々に引き伸ばされているため、接合層の引き伸ばし量の制御がしやすく、加熱手段の昇降手段を細かく制御したり、装置に工夫したりしなくても、容易に接合層を引き伸ばして鼓状にすることができる。
【0027】
第11の発明に係る配線構造体は、基材と、前記基材の一表面に形成された複数の第1接続端子と、前記基材の前記一表面と対向するように配置されたフレキシブル層と、前記フレキシブル層の前記基材との対向面に形成された複数の第2接続端子と、前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とを接続するとともに前記基材と前記フレキシブル層とを接合する接合層とを備えており、前記接合層が、前記一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状に形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
これによると、接合層が、基材の一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状になっているため、隣接する接合層の間隔が大きくなり、第1、第2接続端子が高密度に配置されていても、接合層同士が直接接触して互いに導通したり、接合層の間の隙間に残留した異物などを介して接合層同士が互いに導通したりしてしまうのを防止することができる。
【0029】
第12の発明に係る配線構造体は、第11の発明に係る配線構造体であって、前記フレキシブル層の前記基材と反対側の面における、前記複数の第2接続端子と対向する部分にそれぞれ形成された可逆性の熱収縮層をさらに備えており、前記接合層が、前記熱収縮層が加熱されて収縮するのに伴って前記圧電層側に隆起していた前記フレキシブル層の前記複数の第2接続端子と対向する部分が、前記熱収縮層への加熱が解除されるのに伴って隆起前の状態に戻ることによりフレキシブル層側に引き伸ばされることによって、前記一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状に形成されたものであることを特徴とするものである。
【0030】
これによると、接合層を容易に基材の一表面と直交する方向に関する中央部が鼓状にすることができる。
【0031】
第13の発明に係る配線構造体は、第11又は第12の発明に係る配線構造体であって、前記基材が、圧電アクチュエータを構成する、前記複数の第1接続端子に接続された複数の電極を有する圧電層であることを特徴とするものである。
【0032】
これによると、圧電アクチュエータは、例えば、インクジェットヘッドなどに用いられる場合には、電極及び第1接続端子が高密度に配置されることになり、これに伴って、第2接続端子も高密度に配置されることになるが、このような場合でも、接合層が、圧電層(基材)の一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状になっているため、隣接する接合層の間隔が大きくなり、接合層同士が直接接触して互いに導通したり、接合層の間の隙間に残留した異物などを介して接合層同士が互いに導通したりしてしまうのを防止することができる。
【0033】
第14の発明に係る圧電アクチュエータユニットは、圧電層と、前記圧電層に設けられており、前記圧電層に電界を発生させるための複数の電極と、前記圧電層の一表面に形成されており、前記複数の電極に接続された複数の第1接続端子とを有する圧電アクチュエータと、前記圧電層の前記一表面と対向するように配置されたフレキシブル層と、前記フレキシブル層に設けられた複数の配線と、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面に形成されており、前記複数の配線に接続された複数の第2接続端子とを有するフレキシブル配線部材と、前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とを接続するとともに前記基材と前記フレキシブル層とを接合する接合層とを備えており、前記接合層は、前記一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状に形成されていることを特徴とするものである。
【0034】
これによると、接合層が、圧電層の一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状になっているため、隣接する接合層の間隔が大きくなり、第1、第2接続端子が高密度に配置されていても、接合層同士が直接接触して互いに導通したり、接合層の間の隙間に残留した異物などを介して接合層同士が互いに導通したりしてしまうのを防止することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、接合層が、押圧加熱解除工程においてフレキシブル層側に引き伸ばされることにより、基材の一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状になり、鼓状になった接合層により、第1接続端子と第2接続端子とが接続されるとともに基材とフレキシブル層とが接合されるため、接合層同士の間隔が大きくなり、第1接続端子同士及び第2接続端子同士が狭い間隔で高密度に配置されている場合でも、接合層同士が直接接触して互いに導通したり、接合層の間の隙間に残留した異物などを介して互いに導通したりしてしまうのを防止することができる。また、接合層が引き伸ばされる量は僅かなものであるが、複数の熱収縮層により、フレキシブル層の第2接続端子と対向する部分が隆起され、加熱後にはフレキシブル層のこれらの部分が隆起前の状態に戻ることにより、接合層が個々に引き伸ばされているため、接合層の引き伸ばし量の制御がしやすく、加熱手段を昇降させる装置などを細かく制御したり、装置に工夫したりしなくても、容易に接合層を引き伸ばして鼓状にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0037】
図1は、本実施の形態に係る圧電アクチュエータを有するプリンタ1の概略構成図である。このプリンタ1は、単独のプリンタ装置に適用しても、あるいは、ファクシミリ機能やコピー機能等の複数の機能を備えた多機能装置のプリンタ装置に適用してもよい。図1に示すように、プリンタ1は、装置本体内にキャリッジ2、インクジェットヘッド3(液体移送装置)、用紙搬送ローラ4などを備えている。なお、以下の説明ではノズルから液体を吐出する方向を下方向とし、その反対方向を上方向としている。また、必要に応じて図中の方向を定める場合は、適宜説明を付与する。
【0038】
キャリッジ2は、その上面が開口された略箱状の樹脂製のケースで、図1の左右方向(走査方向)に延びるガイド軸5に移動可能に載置され、図示しない駆動ユニットによって走査方向(左右方向)に往復移動するように構成されている。装置本体内には、複数種類のインク(例えば、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4種類)を供給するための交換式のインクカートリッジ(図示せず)が静置されていて、各インクカートリッジはインクチューブ(図示せず)を介してキャリッジ2内に載置されたインクジェットヘッド3に接続されている。また、キャリッジ2の下方に対向して、用紙搬送ローラ4とプラテン6が配置されていて、その両者の間に記録用紙Pが図1の手前方向(紙送り方向)に搬送される。インクジェットヘッド3は、キャリッジ2の下面に配置されており、複数のノズル15(図4参照)をキャリッジ2の下面に露出開口させて搭載している。
【0039】
そして、プリンタ1においては、用紙搬送ローラ4により紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、キャリッジ2とともに走査方向に往復移動するインクジェットヘッド3からインクを吐出することにより、記録用紙Pに印刷を行う。
【0040】
次に、インクジェットヘッド3について説明する。図2は図1のインクジェットヘッド3の構成を示す斜視図である。図3はインクジェットヘッド3の平面図である。図4(a)は図3の部分拡大図である。図4(b)〜(d)は、図4(a)における後述する振動板40及び各圧電層41、42の表面をそれぞれ示す図である。図5は図4(a)のV−V線断面図である。図6は図4(a)のVI−VI線断面図である。図7は図3のVII−VII線断面図である。
【0041】
なお、図面を分かりやすくするため、図2においては、後述するランド52と配線53とを透過した状態で図示している。また、図3、図4においては、後述する流路ユニット31のインク流路の一部の図示を省略し、図3においては、圧電アクチュエータ32の下部電極43及び中間電極44の図示を省略している。また、図4(a)においては、ともに点線で図示すべき下部電極43及び中間電極44を、それぞれ二点鎖線及び一点鎖線で図示している。さらに、図4(b)〜(d)においては、圧力室10と後述する下部電極43、中間電極44及び上部電極45との平面視での位置関係を示していて、各電極43、44、45にハッチングを付している。また、図7においては、後述する圧電層42よりも下の部分の図示を省略している。
【0042】
図2〜図7に示すように、インクジェットヘッド3は、複数のノズル15や複数の圧力室10等の複数のインク流路が形成された流路ユニット31と流路ユニット31の上面に配置され、圧力室10内に充満されたインクにノズル15からの吐出のための圧力を付与する圧電アクチュエータユニット33(配線構造体)とを備えている。圧電アクチュエータユニット33は、圧電アクチュエータ32とその上面で電気かつ機械的に接続されたCOF50(Chip On Film)(フレキシブル配線部材)とからなる。流路ユニット31は、インク流路となる複数の貫通孔が形成された複数のプレート21〜24が互いに積層されることによって、インク供給口9からインクが供給されるマニホールド流路11、及び、マニホールド流路11の出口から流路12を経て圧力室10に至り、さらに、圧力室10から流路13、14を経てノズル15に至る複数の個別インク流路を有するインク流路(液体移送流路)が形成されている。そして、後述するように、圧電アクチュエータ32により、圧力室10内のインクに圧力が付与されると、圧力室10に連通するノズル15からインクが吐出される。ノズルプレート24を除く3枚のプレート21〜23はステンレス板やニッケル合金鋼板などの金属材料により構成されており、ノズルプレート24はポリイミド等の合成樹脂材料によって構成されている。
【0043】
流路ユニット31の最上層のプレート21には、複数のノズル15に対応して複数の圧力室10が板厚を貫通して形成され、圧力室10は、走査方向(図3の左右方向)を長手方向とする略楕円形の平面形状(図4も参照)を有し、その一端が流路12と、他端がノズル15と連通するように形成されており、複数の圧力室10は紙送り方向(図3の上下方向、所定の一方向)に沿って配列されて1つの圧力室列8を構成しており、このような圧力室列8が、走査方向に2列に配列されることによって1つの圧力室群7を構成している。さらに、このような圧力室群7が走査方向に沿って5つ配列されている。ここで、1つの圧力室群7に含まれる2列の圧力室列8を構成する圧力室10同士は、紙送り方向に関して互いにずれて配置されている。また、流路ユニット31の最下層のノズルプレート24には、複数の圧力室10の長手方向の一端と連通する複数のノズル15が下方に開口して貫通形成されていて、図示しないが、複数の圧力室10と同様に送り方向に配列しているとともに、ノズル列群をなし、走査方向に5つのノズル列群をなしている。
【0044】
そして、5つの圧力室群7のうち、図3の右側の2つを構成する圧力室10に対応するノズル15からは使用頻度の高いブラックのインクが吐出され、図3の左側の3つの圧力室群7の圧力室10に対応するノズル15からは、図3の右側に配列されているものから順に、イエロー、シアン、マゼンタのインクが吐出される。また、プレート22には、平面視で圧力室10の長手方向の両端部に重なる位置にそれぞれ流路12、13となる貫通孔が形成され、プレート23には、マニホールド流路11となる貫通孔が圧力室10の列に対応して紙送り方向に延び、平面視で圧力室10の長手方向と重なるとともにインク供給口9と連通する位置まで延設されている
【0045】
次に、圧電アクチュエータ32は、振動板40、圧電層41、42、下部電極43、中間電極44及び上部電極45を備えている。振動板40は、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との混晶であるチタン酸ジルコン酸鉛を主成分とする圧電材料からなり、複数の圧力室10を覆うように、流路ユニット31の上面に配置されている。また、振動板40の厚みは20μm程度となっている。なお、この振動板40は必ずしも圧電材料からなる必要はない。圧電層41、42は、振動板40と同様の圧電材料からなり、互いに積層されて振動板40の上面に配置されている。また圧電層41、42の厚みは、それぞれ20μm程度となっている。
【0046】
下部電極43は、振動板40と圧電層41との間に配置されており、図4(b)のように各圧力室群7に対応して、各圧力室群7を構成する2列の圧力室列8に沿って紙送り方向に延びており、これら2列の圧力室列8を構成する複数の圧力室10と平面視で重なり合うように対向している。また、図示しないが、各圧力室群7に対応して上記紙送り方向に延びた部分同士は互いに接続され、図示しない接続端子が設けられている。接続端子は、COF50上の図示しない配線のランドに接続され、配線を介して下部電極43は、常にグランド電位に保持されている。
【0047】
中間電極44は、圧電層41と圧電層42との間に配置されており、図4(c)のように各圧力室群7毎に、それぞれ、複数の対向部44a及び接続部44b、44cを有している。複数の対向部44aは、紙送り方向に関する長さが圧力室10よりも短い略矩形の平面形状を有しており、複数の圧力室10の紙送り方向に関する略中央部と対向するように配置されている。
【0048】
接続部44bは、紙送り方向に延びて、各圧力室群7を構成する2列の圧力室列8のうち、図4の右側に配置された圧力室列8を構成する複数の圧力室10に対応する複数の対向部44aの図4右側の端同士を接続している。接続部44cは、紙送り方向に延びて、各圧力室群7を構成する2列の圧力室列8のうち、図4の左側に配置された圧力室列8を構成する複数の圧力室10に対応する複数の対向部44aの図4左側の端同士を接続している。また、中間電極44は、図示しない接続端子と、COF50上の中間電極用の配線のランドに接続されており、配線を介して常に所定の正の電位(例えば、20V程度)に保持されている。
【0049】
複数の上部電極45は、図3、図4(d)のように圧電層42(基材)の上面(COF50との対向面)に、複数の圧力室10に対応して、複数の圧力室10のほぼ全域と対向するように配置されており、紙送り方向(所定の一方向)に配列しているとともに、上部電極列群をなし、1つの上部電極列群に含まれる2列の上部電極45の列を構成する上部電極45同士は、紙送り方向に関して互いにずれて配置されている。また、上部電極45は、紙送り方向に関する長さが中間電極44の対向部44aよりも長い、略矩形の平面形状を有している。上部電極45は、走査方向に関するノズル15と反対側の端における一部分が、走査方向に圧力室10と対向しない部分まで延びており、この部分がCOF50の配線53のランド52に接続される接続端子45a(第1接続端子)となっている。接続端子45aは、Ag-Pd系の材料からなる。
【0050】
また、上部電極45は、後述するように、ハンダ46を介してCOF50上の配線53と接続され、COF50に実装されたドライバIC54に接続されており、グランド電位と上記所定の電位(例えば、20V)との間でその電位が切り替えられる。なお、前述した中間電極44と下部電極43の図示しない接続端子も上部電極45と同様にハンダを介して配線と電気的に接続されている。
【0051】
また、前述した圧電層42は、予め上部電極45と中間電極44とに挟まれた部分が上向きに分極されており、圧電層41、42は、上部電極45と下部電極43とに挟まれた部分が、上部電極45から下部電極43に向かって下向きに分極されている。なお、圧電層41のうち、中間電極44と下部電極43とに挟まれた部分は、中間電極44から下部電極43に向かって下向きに分極されている。
【0052】
また、圧電層42の上面には、複数のダミー電極45’が形成されている。ダミー電極45’は、図3、図7に示すように、上部電極45と同様の構成を有しており、圧電層42の上面における、各圧力室列8の紙送り方向に関する最も端に配置された圧力室10に対応する上部電極45よりも紙送り方向の外側に隣接して配置されており、紙送り方向に関して互いに隣接する上部電極45同士の間隔と、紙送り方向に関して最も端に配置された上部電極45とダミー電極45’との間隔とがほぼ同じとなっている。
【0053】
そして、これにより、接続端子45aと同様の構成を有するダミー電極45’の複数のダミー接続端子45a’が、圧電層42の上面における、各圧力室列8の紙送り方向に関する最も端に配置された圧力室10に対応する上部電極45の接続端子45aよりも紙送り方向の外側に隣接して配置されており、紙送り方向に関して互いに隣接する接続端子45a同士の間隔と、走査方向に関して最も端に配置された接続端子45aとダミー接続端子45a’との間隔とがほぼ同じとなっている。なお、ダミー接続端子45a’は、他の接続端子45のようにノズルからインクを吐出させるために電圧を印加させるためのものではないため、必ずしも対応する個別電極や圧力室、ノズルなどを配置させる必要はない。
【0054】
次に、圧電アクチュエータ32に電位を付与するCOF50(フレキシブル配線部材)は、フレキシブル層51、複数のランド52(第2接続端子)、複数のダミーランド52’複数の配線53、53z及びドライバIC54を有している。COF50は、圧電アクチュエータ32の上方に配置されて圧電層42に接合されているとともに、走査方向に引き出されている。
【0055】
フレキシブル層51はポリイミドなどの樹脂材からなり絶縁性および可撓性を有した帯状体であり、その下面が圧電層42と対向して圧電アクチュエータ32上に配置されている。
【0056】
複数のランド52は、銅などの導電性材料からなり、フレキシブル層51の下面における接続端子45aと対向する部分に形成されている。複数のダミーランド52’は、フレキシブル層51の下面におけるダミー接続端子45a’と対向する部分に配置されている。また、配線53は、銅などの導電性材料からなり、フレキシブル層51の下面に形成されており、複数のランド52と接続されている。なお、ダミーランド52’は配線53と接続されていない。
【0057】
また、フレキシブル層51の下面には、ソルダレジストなどで形成された絶縁層55(以下は、ソルダーレジスト層55とする)がランド52、52’および配線53を覆って形成されている。そして、ソルダーレジスト層55には、ランド52及びダミーランド52’と対向する部分に貫通孔55aがエッチング等で形成されており、ランド52及びダミーランド52’は貫通孔55aから圧電アクチュエータ側に露出している。そして、貫通孔55aから露出したランド52と接続端子45a、及び、貫通孔55aから露出したダミーランド52’とダミー接続端子45a’とは、それぞれ、ハンダ46、46’により電気的かつ機械的に接続されている。そして、これにより、圧電層42とフレキシブル層51とがハンダ46、46’により接合されている。ここで、ハンダ46、46’は、上下方向(一表面と直交する方向)に関する略中央部がくびれた鼓状になっている。
【0058】
また、フレキシブル層51の上面におけるランド52と対向する部分には、凹部51b(第1凹部)が形成されているとともに、凹部51bに沿って凹部51bを覆うように可逆性の熱収縮層56が形成されている。さらに、フレキシブル層51の上面には、これら凹部51b及び熱収縮層56とは別に、ダミーランド52’と対向する部分(紙送り方向に関して最も端に位置するランド52よりもさらに紙送り方向外側のランド52とは対向しない部分)に、凹部51bと同様の構成を有する凹部51b’(第1凹部)が形成されているとともに、凹部51b’を覆うように、熱収縮層56と同様の構成を有する熱収縮層56’が形成されている。ここで、可逆性の熱収縮層56、56’とは、例えば、マイクロカプセル化されたNaSO、KNO、NaCOなどを含むソルダーレジストや、タングステン酸ジルコニウムなどからなり、加熱すると収縮し、加熱をやめると収縮前の状態に戻るもののことである。なお、凹部51b及び熱収縮層56は、後述するように、ハンダ46、46’を上述したような鼓状にするために用いられるものである。
【0059】
ドライバIC54は、圧電アクチュエータ32に印加する駆動信号を供給するための駆動回路を内蔵していて、COF50の引き出された部分の上面に配置されている。ドライバIC54には、電極43〜45に駆動信号を出力するための上記出力用の配線53が接続されているとともに、本体側から駆動信号が入力される入力用の配線53zが接続されている。
【0060】
ここで、圧電アクチュエータ32の動作について説明する。まず、圧電アクチュエータ32がインクを吐出させる動作を行う前の待機状態においては、前述したように、下部電極43及び中間電極44が、それぞれ、常にグランド電位及び上記所定の電位(例えば、20V)に保持されているとともに、上部電極45の電位が予めグランド電位に保持されている。この状態では、上部電極45が中間電極44よりも低電位になっているとともに、下部電極43と同電位となっている。
【0061】
これにより、上部電極45と中間電極44との間の電位差が生じ、圧電層42のこれらの電極に挟まれた部分にその分極方向と同じ上向きの電界が発生し、圧電層42のこの部分がこの電界と直交する水平方向に収縮する。これによりいわゆるユニモルフ変形が生じ、圧電層41、42及び振動板40の圧力室10と対向する部分が全体として圧力室10に向かって凸となるように変形する。この状態では、圧電層41、42及び振動板40が変形していない場合と比較して、圧力室10の容積が小さくなっている。
【0062】
そして、インクを吐出させるべく圧電アクチュエータ32を駆動させる際には、上部電極45の電位を、一旦、上記所定の電位に切り替えた後、グランド電位に戻す。上部電極45の電位を上記所定の電位に切り替えると、上部電極45が中間電極44と同電位となるとともに、下部電極43よりも高電位となる。これにより、圧電層42の上記収縮が元に戻る。そしてこれと同時に、上部電極45と下部電極43との間に電位差が生じ、圧電層41、42のこれらの電極に挟まれた部分にはその分極方向と同じ下向きの電界が発生し、圧電層41、42のこの部分が水平方向に収縮する。これにより、圧電層41、42及び振動板40が全体として、圧力室10と反対側に凸となるように変形し、圧力室10の容積が増加する。
【0063】
この後、上部電極45の電位をグランド電位に戻すと、前述したのと同様、圧電層41、42及び振動板40の圧力室10と対向する部分が全体として圧力室10に向かって凸となるように変形し、圧力室10の容積が小さくなる。これにより、圧力室10内のインクの圧力が上昇し、圧力室10に連通するノズル15からインクが吐出される。
【0064】
また、上述したようにして圧電アクチュエータ32を駆動させる場合、上部電極45の電位をグランド電位から所定の電位に切り替えたときには、圧電層42の上部電極45と中間電極44とに挟まれた部分が収縮した状態から収縮前の状態に伸長すると同時に、圧電層41、42の上部電極45と下部電極43とに挟まれた部分が収縮するため、圧電層42の上記の伸長が、圧電層41、42の上記収縮に一部吸収される。
【0065】
一方、上部電極45の電位を所定の電位からグランド電位に戻したときには、圧電層42の上部電極45と中間電極44とに挟まれた部分が収縮するとともに、圧電層41、42の上部電極45と下部電極43とに挟まれた部分が収縮前の状態まで伸長するため、圧電層42の上記収縮が圧電層41、42の上記伸長によって一部吸収される。
【0066】
以上のことから、圧電層41、42の圧力室10と対向する部分の変形が、他の圧力室10と対向する部分に伝達して当該他の圧力室10に連通するノズル15からのインクの吐出特性が変動してしまう、いわゆるクロストークが抑制される。
【0067】
なお、上述した待機状態及び圧電アクチュエータ32が駆動されている間においては、圧電層41の中間電極44と下部電極43との間の部分には常に電位差が生じており、圧電層41のこの部分には、その分極方向と同じ方向の電界が発生している。これにより、圧電層41のこの部分は常に収縮した状態となっている。なお、アクチュエータの構成や駆動方式は、圧力室に充満されたインクをノズルから吐出させるための圧力が付与できれば、上述の実施形態と同様に限られることはない。
【0068】
次に、インクジェットヘッド3(圧電アクチュエータユニット33)の製造方法について説明する。図8は、インクジェットヘッド3の製造工程を示す工程図である。
【0069】
インクジェットヘッド3を製造するには、まず、図8(a)に示すように、フレキシブル層51の下面には、印刷などで形成されたランド52及びダミーランド52’が形成されている。そして、フレキシブル層51の上面で、ランド52とダミーランド52’と対向する部分に、レーザ加工、エッチング、サンドブラスタ加工などにより凹部51b、51b’を形成する(第1凹部形成工程)。凹部51b、51b’は、断面視で上側開口され下方に縮径されたV字状で、平面視外形状が略円形状をしている。なお、配線53は、ランド52とともに同時に形成する。続いて、図8(b)に示すように、印刷などにより、フレキシブル層51の上面におけるランド52及びダミーランド52’と対向する部分に、凹部51b、51b’に沿って凹部51b、51b’を覆うように熱収縮層56、56’を印刷形成する(熱収縮層形成工程)。熱収縮層56、56’は、平面視で略円形状である。このとき、熱収縮層56、56’は、同じ厚みでフレキシブル層51の上面に印刷形成されるため、凹部51b、51b’上にも沿って形成され、熱収縮層56、56’も断面凹部形状となっている。
【0070】
さらに、図8(c)に示すように、フレキシブル層51の下面にランド52、ダミーランド52’及び配線53を覆うようにソルダーレジスト層55を印刷形成し、ソルダーレジスト層55におけるランド52及びダミーランド52’と対向する部分にエッチングなどで貫通孔55aを形成した後、貫通孔55aから露出したランド52の表面にハンダ46のバンプを形成するとともに、貫通孔55aから露出したダミーランド52’の表面にハンダ46’を形成する(接合層形成工程)。
【0071】
また、図8(d)に示すように、圧電層42の上面に形成された上部電極45の接続端子45a及びダミー接続端子45a’の上面を、オゾン処理やプラズマ処理などにより洗浄処理する(洗浄処理工程)次に、図8(e)に示すように、載置台などに置かれた圧電層42に対して、COF50を、平面視でランド52とハンダ46、及び、ダミーランド52’とハンダ46’とが対向するように位置合わせした状態で、ヒータH(加熱手段)により、COF50側から圧電層42に向かって押圧しながら加熱する(押圧加熱工程)。
【0072】
このとき、熱収縮層56’は、ヒータHの加熱面の端の部分と対向し、ヒータHのこの端の部分に押圧されながら加熱され、熱収縮層56は、ヒータHの加熱面の熱収縮層56’が押圧される部分よりも内側の部分と対向し、ヒータHのこの内側の部分に押圧される。
【0073】
すると、熱収縮層56、56’が、ヒータHにより温度Ta℃に加熱されることで収縮する。ここで、温度Ta℃は、熱収縮層56、56’を収縮させることができ、且つ、後述するハンダの溶融点Tb℃よりも低い温度である。平面視略円形状の熱収縮層は、その中心方向(断面視で中心に互いに向き合う方向)に向かって収縮しようとする。このとき、熱収縮層56、56’が形成されたフレキシブル層51のランド52及びダミーランド52’と対向する部分は、可撓性であり、熱収縮層56、56’との密着性が良いため、熱収縮層56の収縮に伴って共に収縮方向へ引き寄せられる。そして、熱収縮層およびランド部には凹部が形成されているため、熱収縮層はその開口空間を埋めるように断面視中心方向に収縮するとともに、対向するフレキシブル層も引き寄せられ、その凹部の先端部分(開口側とは反対側の部分)から、下面側へ逃げるようにして撓み変形し始め、それぞれ圧電層42側に隆起した隆起部51aを形成する。本実施の形態では、特に断面視V字状に凹部が形成されているため、その先端部分から下面側にフレキシブル層が変形しやすくなっている。なお、ハンダ46は、隆起部51aの隆起に伴って、さらに下面側に突出された状態となっている。そして、この状態で、ハンダ46、46’のバンプを圧電層42に押圧すると同時にヒータHを、上記温度Ta℃よりも高いハンダ溶融点Tb℃にまで加熱し、溶融状態(未硬化状態)のハンダ46が接続端子45a、ダミー接続端子45a’に接触させる。接続端子45a及びダミー接続端子45a’は、Ag−Pd系材料で形成されており、ハンダとのなじみがよいため、接続端子45a及びダミー接続端子45a’に接触し、その表面張力を保持した状態で接続端子45a及びダミー接続端子45a’上を流れる。接続端子45a及びダミー接続端子45a’の表面が洗浄処理されているので、小さな押圧力でも、ハンダ46、46’は接続端子45a及びダミー接続端子45a’に流れやすくなっている。そのため、接続端子とハンダとの接触面積が増えることで、電気的機械的接合強度が得られる。
【0074】
次に、図8(f)に示すように、ヒータHをCOF50から離すことにより、COF50への押圧加熱を解除する(押圧加熱解除工程)。すると、COF50が冷却されることで、収縮していた熱収縮層56が収縮前の状態に戻り、これに伴って、可撓性のフレキシブル層51も隆起部51aが形成される前の平坦な状態に戻る。
【0075】
この隆起部51aが平坦状態に戻るときに、接続端子上に接触しているハンダ46、46’はまだ未硬化状態であるため、隆起部51aの戻り力により上方(フレキシブル層51側)に引き伸ばされ、その結果、上下方向に関する略中央部がくびれた鼓状になる。そして、ハンダ46、46’はこの状態でさらに冷却されて硬化し、ハンダ46を介して接続端子45aとランド52とが接続されるとともに、圧電層42とフレキシブル層51とがハンダ46、46’により接合される。接続端子45とハンダとはなじみが良いため、未硬化状態のハンダが引き伸ばされても、ハンダが端子部に接触状態でいるため、裾部の広がりが良い中央部にくびれた鼓状を成すことができるとともに、ハンダと端子部との接合強度は維持される。
【0076】
ここで、インクジェットヘッド3においては、高解像度印刷や装置の小型化の実現のために、圧力室10が狭い間隔で高密度に配置されており、これに対応して接続端子45a及びランド52も狭い間隔で高密度に配置されている。このとき、本実施の形態とは異なり、溶融状態のハンダ46、46’が上方に引き伸ばされないとすると、ハンダ46、46’はヒータHにより押圧されることにより、その表面張力により外側にふくらんだ状態で硬化して、接続端子45aとランド52、及び、ダミー接続端子45a’とダミーランド52’とを接続する。そして、この場合には、ハンダ46同士の間隔、あるいは、ハンダ46とハンダ46’との間隔が狭くなり、その結果、ハンダ46同士あるいはハンダ46とハンダ46’とが接触しやすく互いに導通してしまう虞がある。
【0077】
さらに、ハンダ46同士の間隔、あるいは、ハンダ46とハンダ46’との間隔が狭いと、接合工程後にハンダ46同士の間、あるいは、ハンダ46とハンダ46’との間に異物が残留し、エア噴射等で異物除去を試みても、狭いハンダ46同士の間隔に入り込んだ異物が除去されずに、異物を介してハンダ46同士、あるいは、ハンダ46とハンダ46’とが導通してしまう虞がある。
【0078】
しかしながら、本実施の形態では、ハンダ46、46’が上下方向に関する略中央部がくびれた鼓状になるため、高密度に狭ピッチ間隔で設けられた隣接するハンダ46同士においても、隣接するハンダ46同士の中央部の間隔が大きくなり、ハンダ46、46’が互いに接触して導通してしまうの防止することができる。
【0079】
さらに、ハンダ46同士の間隔及びハンダ46とハンダ46’の中央部の間隔が大きくなるため、これらの隙間に異物が残留しても、異物除去されやすくなるため、その異物によりハンダ46、46’が互いに導通してしまうのを防止することができる。
【0080】
このとき、熱収縮部層56、56’及びフレキシブル層51には凹部51bが形成されており、熱収縮部56、56’及びフレキシブル層51は凹部51bの隙間を埋めるように変形するため、フレキシブル層51が下面側に隆起しやすくなり、隆起部51aの高さが高くなる。その結果、フレキシブル層51が隆起前の状態に戻ったときにハンダ46、46’が大きく引き伸ばされることとなり、ハンダ46、46’は確実に上下方向に関する略中央部がくびれた鼓状になる。
【0081】
ここで、本実施の形態とは異なり、熱収縮層56、56’を形成する代わりに、例えば、ヒータHに固定されたCOF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱して、ハンダ46を接続端子45aに接触させた後、ヒータHを上方に移動させることによりCOF50を上方に引き上げてハンダ46を鼓状にすることも考えられる。しかしながら、ハンダ46、46’を引き伸ばして鼓状にするためにCOF50を引き上げる量、つまり、ヒータHの移動量は僅かなものあるので、この場合には、ヒータHを平行かつ微小に移動させるための制御が困難で、通常のヒータHでは、その高さ調整や、平行調整を微小に行うことが難しく、複数のバンプに対して個体差が出やすいので、制御可能な性能のよいヒータHが必要となり、高コストである。また、ヒータHは、平滑な加熱面を有したバーヒータを用いることで、COFの接合領域全体に一度でヒータによる押圧加熱をかけることができるが、上述のような微小な移動量の制御が必要なバーヒータHを想定した場合、ヒータHの平滑度がシビアになるため、より精度の良いヒータを用意する必要があり、生産コストが高くなる。
【0082】
しかしながら、本実施の形態では、ランド52及びダミーランド52’毎に個々に熱収縮層56、56’及び凹部51b、51b’を形成し、これにより、フレキシブル層51の各ランド52及びダミーランド52’に対向する部分を個々それぞれに隆起させ、その後元に戻すことで、バーヒータHのシビアな制御ができる精度良いヒータHを用意しなくても、ハンダ46、46’を上方に引き伸ばして容易に鼓状にすることができる。本実施の形態の場合、ハンダ46、46の引き伸ばし量は、隆起部の隆起量(戻り量)により制御されるため、フレキシブル層の種類、熱収縮材の種類、および収縮温度とを適宜条件選択することで決定される。
【0083】
また、本実施の形態とは異なり、ハンダ46を上方に引き伸ばさず、COF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱したときには、端子部とハンダ46との接触面積が多いほうが接合強度が上がるため、溶融状態のハンダ46は、接続端子45aに接触した後、その上を流れ、表面張力によって外側にふくらんだ状態に維持できる程度まで押圧され、その状態で硬化させるが、押圧力のバラツキやハンダ46の体積バラツキにより、ヒータHの押圧加熱時に、溶融状態のハンダ46がその表面張力を維持しきれず、ハンダ46は接続端子45a上を大きく流れ、その結果、ハンダ46が接続端子45a上から上部電極45の圧力室10と対向する部分まで流れて圧電アクチュエータ32の駆動特性が変動してしまう虞があった。そのため、ハンダ46が、流れすぎて上部電極45の圧力室10と対向する部分まで流れてしまうのを防止するために、接続端子45aを面積の大きなものする必要がある。
【0084】
しかしながら、本実施の形態では、ヒータHによりCOF50を圧電層42に押圧しながら加熱し、端子部に溶融したハンダが接触して、接続端子45a上に流れた後、ハンダ46を上方に引き伸ばしているため、溶融したハンダ46の表面張力を維持できないほど押圧されることはなく、また、押圧力のバラツキやハンダ46の体積バラツキにより、ハンダ46が上部電極45の圧力室10と対向する部分に流れ込もうとした場合でも、隆起部51aが隆起前の状態に戻ることによりハンダ46が引き伸ばされるため、接続端子45aから上部電極45の圧力室10と対向する部分に流れようとするハンダ46が接続端子45a側に引き戻され、ハンダ46が上部電極45の圧力室10と対向する部分に流れ込んでしまうのを防止することができる。これにより、接続端子45aの面積を小さくすることができ、インクジェットヘッド3を小型化することができる。
【0085】
さらに、COF50を押圧しながら加熱するヒータHは、その外周端の部分ほど熱が外部に逃げやすいため、その温度が低くなりやすい。したがって、本実施の形態とは異なり、端に位置するランド52がヒータHの端の部分と対向し、この部分によって加熱される場合には、端に位置する熱収縮層56に対する加熱温度が、他の熱収縮層56に対する加熱温度よりも低くなってしまう。その結果、端に位置する熱収縮層56に対応する隆起部51aの高さと他の熱収縮層56に対応する隆起部51aの高さとが異なってしまい、接続端子45aとランド52とが均等に接続されない、あるいは、圧電層42とフレキシブル層51とが均等に接合されない虞がある。
【0086】
そのため、COFの接合領域よりもヒータHの加熱面積を大きめにすることで、端に位置するランド52への熱影響を他のランド52と同一にすることもできるが、ヒータHが大型化してコストがかかる。しかしながら、本実施の形態では、紙送り方向に関する最も端に位置するランド52よりもさらに紙送り方向の外側にダミーランド52’が形成されているとともに、これに対応して凹部51b’、熱収縮層56’が配置されており、熱収縮層56’がヒータHの端の部分により加熱される。したがって、ヒータHを大型化しなくても、熱収縮層56’に対する加熱温度は、熱収縮層56に対する加熱温度よりも低くなってしまうものの、熱収縮層56に対しては均等に加熱されることとなり、接続端子45aとランド52とが均等に接続されるとともに、圧電層42とフレキシブル層51とが均等に接合される。
【0087】
また、本実施の形態と異なり、ダミー接続端子45a’、ダミーランド52’、凹部51b’、熱収縮層56’及びハンダ46’が形成されていないとすると、紙送り方向に関する端に位置するランド52については、紙送り方向の片側にのみ隣接するランド52が存在し、これに対応して熱収縮層56、凹部51b及びハンダ46が存在しているのに対して、他のランド52については、紙送り方向の両側に隣接するランド52が存在し、これに対応して熱収縮層56、凹部51b及びハンダ46が存在することとなる。その結果、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧したときに、フレキシブル層51の紙送り方向に関する端に位置するランド52に対向する部分に加わる押圧力と、他のランド52に対向する部分に加わる押圧力とが異なり、接続端子45aとランド52とが均等に接続されない、あるいは、圧電層42とフレキシブル層51とが均等に接合されない虞がある。
【0088】
しかしながら、本実施の形態では、ダミーランド52’、凹部51b’、熱収縮層56’、及びハンダ46’が形成されていることにより、紙送り方向に関する端に位置するランド52については、紙送り方向の両側にランド52及びダミーランド52’が隣接して存在し、他のランド52については、紙送り方向の両側にランド52が隣接して存在することとなるため、ヒータHによりCOF50を圧電層42側に押圧したときに、フレキシブル層51におけるランド52と対向する部分に加わる押圧力と、ダミーランド52’に対向する部分に加わる押圧力とは異なるが、ランド52に対向する部分に加わる押圧力が均等になるため、接続端子45aとランド52とが均等に接続されるとともに、圧電層42とフレキシブル層51とが均等に接合される。
【0089】
以上に説明したように、本実施の形態によると、ハンダ46、46’が上下方向に関する略中央部がくびれた鼓状になるため、高密度に狭ピッチ間隔で設けられた隣接するハンダ46同士においても、隣接するハンダ46同士の中央部分の間隔が大きくなり、ハンダ46、46’が互いに接触して導通してしまうの防止することができる。
【0090】
さらに、ハンダ46同士の間隔及びハンダ46とハンダ46’の中央部分の間隔が大きくなるため、接合工程の後に、これらの隙間に異物が残留してその異物によりハンダ46、46’が互いに導通してしまうのを防止することができる。
【0091】
さらに、熱収縮層56、56’およびフレキシブル層51には凹部51bが形成されており、熱収縮層56、56’はその凹部を埋めるように変形し、熱収縮層56、56’と密着しているフレキシブル層51は凹部51bの空間を埋めるように引き寄せられるとともに、凹部の先端部分にあたるフレキシブル層51が下面側へ隆起しやすくなり、隆起部51aの高さが高くなる。その結果、フレキシブル層51が隆起前の状態に戻ったときにハンダ46、46’が大きく引き伸ばされることとなり、ハンダ46、46’は確実に上下方向に関する略中央部がくびれた鼓状になる。
【0092】
また、ランド52及びダミーランド52’毎に個々に熱収縮層56、56’及び凹部51b、51b’を形成し、これにより、フレキシブル層51の各ランド52及びダミーランド52’に対向する部分を個々に隆起させ、その後元に戻すことで、ハンダ46、46’を上方に引き伸ばして容易に鼓状にすることができる。
【0093】
また、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱した後、ヒータHを離すことによりハンダ46を上方に引き伸ばしているため、ハンダ46が上方に引き伸ばされる際に、接続端子45aから上部電極45の圧力室10と対向する部分に流れようとするハンダ46が接続端子45a側に引き戻され、ハンダ46が上部電極45の圧力室10と対向する部分に流れ込んでしまうのを防止することができる。これにより、接続端子45aの面積を小さくすることができ、インクジェットヘッド3を小型化することができる。
【0094】
また、紙送り方向に関する最も端に位置するランド52よりもさらに紙送り方向の外側にダミーランド52’が形成されているとともに、これに対応して凹部51b’、熱収縮層56’が配置されており、熱収縮層56’がヒータHの端の部分により加熱される。したがって、熱収縮層56’に対する加熱温度は、熱収縮層56に対する加熱温度よりも低くなってしまうものの、熱収縮層56に対しては均等に加熱されることとなり、接続端子45aとランド52とが均等に接続されるとともに、圧電層42とフレキシブル層51とが均等に接合される。
【0095】
また、ダミーランド52’、凹部51b’、熱収縮層56’、及びハンダ46’が形成されていることにより、紙送り方向に関する端に位置するランド52については、紙送り方向の両側にランド52及びダミーランド52’が隣接して存在し、他のランド52については、紙送り方向の両側にランド52が隣接して存在することとなるため、ヒータHによりCOF50を圧電層42側に押圧したときに、フレキシブル層51におけるランド52と対向する部分に加わる押圧力と、ダミーランド52’に対向する部分に加わる押圧力とは異なるものの、ランド52に対向する部分に加わる押圧力が均等になるため、接続端子45aとランド52とが均等に接続されるとともに、圧電層42とフレキシブル層51とが均等に接合される。
【0096】
さらに、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱する前に、接続端子45a及びダミー接続端子45a’の表面を洗浄処理しているので、小さな押圧力でも、ハンダ46、46’は接続端子45a及びダミー接続端子45a’に十分に流れる。
【0097】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0098】
一変形例では、図9(a)に示すように、熱収縮層56を形成する前(熱収縮層形成工程の前)に、フレキシブル層51の下面に、平面視でランド52及びダミーランド52’を挟むように、それぞれ、1対の凹部51c及び1対の凹部51c’(第2凹部)を形成する(第2凹部形成工程)(変形例1)。凹部51c、51c’は、ランド52、52’の周囲を囲う平面視で連続または不連続な環状で、断面視V字状となっている。なお、凹部51c、51c’を形成するのは、凹部51b、51b’を形成するのと(第1凹部形成工程と)同時であってもよいし、凹部51b、51b’を形成する前、あるいは凹部51b、51b’を形成した後であってもよい。
【0099】
この場合には、図9(e)に示すように、ヒータHにより、COF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱する(押圧加熱工程)と、上述の実施の形態と同様、熱収縮層56が収縮するのに伴ってフレキシブル層51のランド52と対向する部分が圧電層42側に収縮するが、このとき、フレキシブル層51は、凹部51b、51b’に加えて凹部51c、51c’の隙間を埋めるように変形するため、フレキシブル層51がさらに変形しやすくなり、隆起部51aの高さがさらに高くなる。これにより、図9(f)に示すように、ヒータHを離してCOF50への押圧、加熱を解除したときに、ハンダ46、46’がさらに大きく引き上げられ、ハンダ46、46’は、確実に上下方向に関する略中央部がくびれた鼓状になる。
【0100】
なお、変形例1においては、図9(b)に示す熱収縮層56を形成する工程(熱収縮層形成工程)、図9(c)に示すソルダーレジスト層55及びハンダ46、46’を形成する工程(接合層形成工程)、及び、図9(d)に示す接続端子45a及びダミー接続端子45a’を洗浄処理する工程(洗浄処理工程)については、上述の実施の形態と同様であるので、ここではその詳細な説明を省略する。
【0101】
別の一変形例では、図10(a)に示すように、フレキシブル層51の上面に凹部51b、51b’を形成した後、図10(b)に示すように、フレキシブル層51の上面に、凹部51b、51b’を覆い、且つ、凹部51b、51b’との間に空間ができるように、シート状の可逆性の熱収縮層71、71’を接着する(熱収縮層形成工程)(変形例2)。なお、これ以降の図10(c)〜(f)の工程は上述の実施の形態の図8(c)〜(f)と同様であるのでここではその詳細な説明を省略する。
【0102】
この場合には、熱収縮層71、71’と凹部51b、51b’との間に空間ができているので、図10(e)に示すように、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱したときに、熱収縮層71、71’が凹部51b、51b’を埋められていないため、フレキシブル層51が凹部51b、51b’の隙間を埋めるように変形しやすくなっていて、隆起部51aの高さが高くなる。これにより、図10(f)に示すように、ヒータHを離してCOF50に対する押圧、加熱をやめたときに、フレキシブル層51が隆起前の状態に戻ってハンダ46、46’を引き上げる量が大きくなり、ハンダ46、46’は確実に上下方向に関する略中央部がくびれた鼓状になる。
【0103】
また、別の一変形例では、図11(b)に示すように、変形例2と同様のシート状の熱収縮層71、71’を接着する前(熱収縮層形成工程の前)に、フレキシブル層51の上面における熱収縮層71、71’が接着される部分の全域に、熱収縮層71、71’とほぼ同じ形状で同じ高さの凹部51d、51d’(第3凹部)を形成し(第3凹部形成工程)、その後、凹部51d、51d’の底面に凹部51b、51b’を形成し(第1凹部形成工程)、続いて、凹部51d、51d’の底面に熱収縮層71、71’を接着する(熱収縮層形成工程)(変形例3)。
【0104】
変形例2では、凹部51d、51d’が形成されていないフレキシブル層51の上面に熱収縮層71、71’を接着しているため、フレキシブル層51の上面は、熱収縮層71、71’が接着された部分が他の部分よりも突出しており凹凸ができているが、変形例3の場合には、フレキシブル層51の上面に熱収縮層71、71’と同じ高さの凹部51d、51d’が形成されているとともに、凹部51d、51d’の底面に熱収縮層71、71’が接着されているため、図11に示すように、フレキシブル層51の上面が平坦な状態となる。したがって、この後、COF50の上面に別の部材を配置する場合などに、熱収縮層71、71’が邪魔になることがなく、COF50が、汎用性のある使い勝手のよいものとなる。
【0105】
また、本実施の形態では、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧加熱する前に、接続端子45a及びダミー接続端子45a’の表面を洗浄処理していたが、洗浄処理は行わなくてもよい。
【0106】
また、本実施の形態では、紙送り方向に関する両端に位置する上部電極45の接続端子45a(ランド52)よりも紙送り方向の外側の部分に、ダミー接続端子45a’、ダミーランド52’、熱収縮層56’、凹部51b’及びハンダ46’が配置されていたが、これらが、紙送り方向に関する両端に位置するランド52よりも紙送り方向の外側の部分とは異なる、COF50がヒータHの端の部分により押圧される位置に配置されていてもよい。
【0107】
この場合でも、熱収縮層56’に対する加熱温度は、熱収縮層56に対する加熱温度よりも低くなってしまうものの、熱収縮層56に対しては均等に加熱されることとなり、接続端子45aとランド52とが均等に接合される。
【0108】
また、これらが、COF50がヒータHの端の部分により押圧される部分以外の部分に配置されていてもよい。上部電極45(接続端子45a)及びランド52の位置によっては、ダミー接続端子45a’、ダミーランド52’、熱収縮層56’、凹部51b’及びハンダ46’がないと、ヒータHによる押圧力のばらつきなどにより、接続端子45aとランド52とが均等に接続されない、あるいは、圧電層42とフレキシブル層51とが均等に接合されない虞があるが、ダミー接続端子45a’、ダミーランド52’、熱収縮層56’、凹部51b’及びハンダ46’を適切に配置することにより、接続端子45aとランド52とを均等に接続することができるとともに、圧電層42とフレキシブル層51とを均等に接合することができる。
【0109】
さらには、ダミー接続端子45a’、ダミーランド52’、熱収縮層56’、凹部51b’及びハンダ46’が設けられていなくてもよい。
【0110】
また、本実施の形態では、フレキシブル層51の上面に凹部51b、51b’を形成し、凹部51b、51b’を覆うように熱収縮層56、56’を形成したが、凹部51b、51b’は形成しなくてもよい。この場合でも、ヒータHによりCOF50を圧電層42に向かって押圧しながら加熱したときには、熱収縮層56、56’が収縮し、これに伴ってフレキシブル層51の熱収縮層56、56’と対向する部分が圧電層42側に隆起して隆起部51aとなる。ただし、凹部51b、51b’が形成されている場合と比較して、隆起部51aの高さは低くなる。また、熱収縮層の外形形状や凹部の外形および断面形状は、本実施の形態に限られるものではない。
【0111】
また、本実施の形態では、ランド52及びダミーランド52’の表面にハンダ46、46’を形成しておき、COF50を圧電層42に向かって押圧することにより、ハンダ46、46’を接続端子45a及びダミー接続端子45a’に接触させたが、これには限られず、接続端子45a及びダミー接続端子45a’の表面にハンダを形成しておき、COF50を圧電層42に向かって押圧することにより、ハンダをランド52及びダミーランド52’に接触させてもよい。あるいは、ランド52及びダミーランド52’の表面、及び、接続端子45a及びダミー接続端子45a’の表面の両方にハンダを形成しておき、COF50を圧電層42に向かって押圧することにより、これらのハンダ同士を接触させ(ハンダをランド52と接続端子45a、及び、ダミーランド52’とダミー接続端子45a’に接触させ)てもよい。
【0112】
また、本実施の形態では、ハンダ46により接続端子45aとランド52とを接続させるとともに、圧電層42とフレキシブル層51とを接合したが、接合時に引き伸ばすことができれば、これには限られず、例えば、導電性接着剤や、導電性材料を含む熱硬化性樹脂や、導電性材料を含む熱可塑性樹脂など、ハンダとは異なる接合層によって接続端子45aとランド52との接続、及び、圧電層42とフレキシブル層51との接合を行ってもよい。なお、熱硬化性樹脂を用いる場合には、例えば、熱硬化性樹脂が硬化し始めた段階でヒータHによる押圧、加熱を解除すれば、熱硬化性樹脂が上方に引き伸ばされ、その後完全に硬化する。
【0113】
また、本実施の形態では、ヒータHで加熱することにより熱収縮層56、56’を収縮させることで、フレキシブル層51を隆起させるとともに、融解したハンダ46、46’を、接続端子45aとランド52、及び、ダミー接続端子45a’とダミーランド52’とにそれぞれ接触させ、その後、ヒータHによる加熱を解除して、フレキシブル層51を隆起前の状態に戻すことにより、ハンダ46、46’を上方に引き伸ばして、ハンダ46、46’を上下方向に関する略中央部がくびれた鼓状にして硬化させたが、他の方法によってハンダ46、46’を上下方向に関する略中央部がくびれた鼓状にして硬化させてもよい。
【0114】
また、以上では、圧電アクチュエータ32とCOF50とにより構成される圧電アクチュエータユニット33を有するインクジェットヘッド3及びその製造に本発明を適用したが、これには限られず、基板上に形成された接続端子(第1接続端子)と、フレキシブル層に形成された接続端子(第2接続端子)とが接続されることによって形成される、圧電アクチュエータユニット以外の配線構造体及びその製造に本発明を適用することも可能である。
【0115】
例えば、その一例として、基板上に形成された接続端子(第1接続端子)と、フレキシブル層に形成された接続端子(第2接続端子)とを接合材によりバンプ接合するともに、フレキシブル層と基板との間に封止樹脂などを注入する場合がある。封入樹脂は、電極や接合材の酸化防止や、水分が染み込んでショートを起こしたり、フレキシブル層と基板間へのゴミの浸入を防いだりするためのものである。このような封止樹脂を注入する場合、封止樹脂がある程度の粘性を有しているため、電極や配線が高密度で隣接するバンプ同士が狭間隔になっているため、その毛細力を超えて、バンプ間に封止樹脂が入り込みにくく充填されきらないため、電気的接続信頼性が悪くなる虞があるが、本発明を適用すれば、上述した実施形態での効果に付け加えて、封止樹脂が注入されやすい構成となるため、電気的接続信頼性のある接続をすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明における実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの斜視図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】(a)が図3の部分拡大図であり、(b)〜(d)が、(a)の振動板及び各圧電層の表面の図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図4のVI−VI線断面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】インクジェットヘッドの製造工程を示す工程図である。
【図9】変形例1の図8相当の図である。
【図10】変形例2の図8相当の図である。
【図11】変形例3の図8相当の図である。
【符号の説明】
【0117】
32 圧電アクチュエータ
33 圧電アクチュエータユニット
40 振動板
41、42 圧電層
45 上部電極
45a 接続端子
46、46’ ハンダ
50 COF
51 フレキシブル層
51a 隆起部
51b〜51d 凹部
51b’〜51d’ 凹部
52 ランド
53 配線
56、56’ 熱収縮層
71、71’ 熱収縮層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一表面に形成された複数の第1接続端子と、
前記基材の前記一表面と対向するように配置されたフレキシブル層の前記基材との対向面に形成された複数の第2接続端子とが接続されることによって形成された配線構造体の製造方法であって、
前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における、前記複数の第2接続端子と対向する部分に、それぞれ、可逆性の熱収縮層を形成する熱収縮層形成工程と、
前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子の少なくとも一方の表面に、それぞれ、導電性を有する接合層を形成する接合層形成工程と、
加熱手段により前記フレキシブル層を前記基材に向かって押圧しながら加熱することにより、前記各熱収縮層を収縮させて前記フレキシブル層の前記複数の第2接続端子が形成された部分を前記基材側に隆起させるとともに、前記接合層を未硬化状態で前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子に接触させる押圧加熱工程と、
前記フレキシブル層への押圧及び加熱を解除することによって、前記フレキシブル層を隆起前の状態に戻すとともに、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子に接触している前記接合層を前記フレキシブル層側に引き伸ばして、この状態で前記接合層を硬化させる押圧加熱解除工程とを備えていることを特徴とする配線構造体の製造方法。
【請求項2】
前記熱収縮層形成工程の前に、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における前記熱収縮層が形成される部分の一部に第1凹部を形成する第1凹部形成工程をさらに備えており、
前記熱収縮層形成工程において、前記第1凹部を覆うように前記熱収縮層を形成することを特徴とする請求項1に記載の配線構造体の製造方法。
【請求項3】
前記押圧加熱工程の前に、前記フレキシブル層の前記基板との対向面に、前記接続端子が形成される部分を挟むように、1対の第2凹部を形成する第2凹部形成工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線構造体の製造方法。
【請求項4】
前記熱収縮層形成工程の前に、前記フレキシブル層の前記基板と反対側の面における、前記熱収縮層がそれぞれ形成される部分の全域に、前記熱収縮層の厚みとほぼ同じ深さを有する第3凹部を形成する第3凹部形成工程をさらに備えており、
前記熱収縮層形成工程において、前記第3凹部の底面に前記複数の熱収縮層を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の配線構造体の製造方法。
【請求項5】
前記熱収縮層形成工程において、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における前記複数の第2接続端子とそれぞれ対向する部分とは別に、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における前記複数の第2接続端子と対向しない部分の一部にも、さらに前記熱収縮層を形成し、
前記接合層形成工程において、前記第1接続端子及び前記第2接続端子の少なくとも一方の表面とは別に、前記基材の前記フレキシブル層と対向することとなる面、及び、前記フレキシブル層の前記基材と対向することとなる面の少なくともいずれか一方における、前記複数の第2接続端子と対向しない前記熱収縮層と対向する部分にも、さらに前記接合層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の配線構造体の製造方法。
【請求項6】
前記熱収縮層形成工程において、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における、前記加熱手段の外縁部と対向することとなる部分に、前記複数の第2接続端子と対向しない前記熱収縮層を形成することを特徴とする請求項5に記載の配線構造体の製造方法。
【請求項7】
前記複数の第2接続端子が所定の一方向に配列されたものであり、
前記熱収縮層形成工程において、前記フレキシブル層の前記基材と反対側となる面における、前記所定の一方向に関して最も端に位置する第2接続端子よりもさらに前記所定の一方向の外側の部分に、前記複数の第2接続端子と対向しない前記熱収縮層を形成することを特徴とする請求項5又は6に記載の配線構造体の製造方法。
【請求項8】
前記接合層形成工程において、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子の一方の表面にのみ前記接合層を形成し、
前記押圧加熱工程の前に、前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子のうち前記接合層が形成されていない他方の表面を洗浄処理する洗浄処理工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の配線構造体の製造方法。
【請求項9】
前記基材が、圧電アクチュエータを構成する、前記複数の第1接続端子に接続された複数の電極を有する圧電層であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の配線構造体の製造方法。
【請求項10】
圧電層と、前記圧電層に設けられており、前記圧電層に電界を発生させるための複数の電極と、前記圧電層の一表面に形成されており、前記複数の電極に接続された複数の第1接続端子とを有する圧電アクチュエータと、
前記圧電層の前記一表面と対向するように配置されたフレキシブル層と、前記フレキシブル層に設けられた複数の配線と、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面に形成されており、前記複数の配線に接続された複数の第2接続端子とを有するフレキシブル配線部材とを備えた圧電アクチュエータユニットの製造方法であって、
前記フレキシブル層の前記圧電層と反対側となる面における、前記複数の第2接続端子と対向する部分に、それぞれ、可逆性の熱収縮層を形成する熱収縮層形成工程と、
前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子の少なくとも一方の表面に、それぞれ、導電性を有する接合層を形成する接合層形成工程と、
加熱手段により前記フレキシブル層を前記圧電層に向かって押圧しながら加熱することにより、前記熱収縮層を収縮させて前記フレキシブル層の前記複数の第2接続端子が形成された部分を前記圧電層側に隆起させるとともに、前記接合層を未硬化の状態で前記複数の第1接続端子及び前記複数の第2接続端子に接触させる押圧加熱工程と、
前記フレキシブル層への押圧及び加熱を解除することにより、前記フレキシブル層が隆起前の状態に戻すとともに前記接合層を前記フレキシブル層側に引き伸ばして、この状態で前記接合層を硬化させる押圧加熱解除工程とを備えていることを特徴とする圧電アクチュエータユニットの製造方法。
【請求項11】
基材と、
前記基材の一表面に形成された複数の第1接続端子と、
前記基材の前記一表面と対向するように配置されたフレキシブル層と、
前記フレキシブル層の前記基材との対向面に形成された複数の第2接続端子と、
前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とを接続するとともに前記基材と前記フレキシブル層とを接合する接合層とを備えており、
前記接合層が、前記一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状に形成されていることを特徴とする配線構造体。
【請求項12】
前記フレキシブル層の前記基材と反対側の面における、前記複数の第2接続端子と対向する部分にそれぞれ形成された可逆性の熱収縮層をさらに備えており、
前記接合層が、前記熱収縮層が加熱されて収縮するのに伴って前記圧電層側に隆起していた前記フレキシブル層の前記複数の第2接続端子と対向する部分が、前記熱収縮層への加熱が解除されるのに伴って隆起前の状態に戻ることによりフレキシブル層側に引き伸ばされることによって、前記一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状に形成されたものであることを特徴とする請求項11に記載の配線構造体。
【請求項13】
前記基材が、圧電アクチュエータを構成する、前記複数の第1接続端子に接続された複数の電極を有する圧電層であることを特徴とする請求項11又は12に記載の配線構造体。
【請求項14】
圧電層と、前記圧電層に設けられており、前記圧電層に電界を発生させるための複数の電極と、前記圧電層の一表面に形成されており、前記複数の電極に接続された複数の第1接続端子とを有する圧電アクチュエータと、
前記圧電層の前記一表面と対向するように配置されたフレキシブル層と、前記フレキシブル層に設けられた複数の配線と、前記フレキシブル層の前記圧電層との対向面に形成されており、前記複数の配線に接続された複数の第2接続端子とを有するフレキシブル配線部材と、
前記複数の第1接続端子と前記複数の第2接続端子とを接続するとともに前記基材と前記フレキシブル層とを接合する接合層とを備えており、
前記接合層は、前記一表面と直交する方向に関する中央部がくびれた鼓状に形成されていることを特徴とする圧電アクチュエータユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−105316(P2010−105316A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281177(P2008−281177)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】