配線用シートおよび電動機
【課題】複数の導体板を有する配線用シートを安価に構成する。
【解決手段】所定距離隔てて並列に配置された導電性を有する複数の板部材11〜13と、複数の板部材11〜13の表面全体を覆うとともに、各板部材11〜13をそれぞれ個別に外包して各板部材同士を電気的に絶縁する略シート状の外装材2とを有し、板部材11〜13には、外装材2から露出した端子部11a〜13aがそれぞれ設けられ、外装材2には、隣り合う板部材11〜13の間に折り曲げ部2b、2cが設けられ、この折り曲げ部2b、2cを介して外装材2が折り曲げられて、複数の板部材11〜13が積層配置される。
【解決手段】所定距離隔てて並列に配置された導電性を有する複数の板部材11〜13と、複数の板部材11〜13の表面全体を覆うとともに、各板部材11〜13をそれぞれ個別に外包して各板部材同士を電気的に絶縁する略シート状の外装材2とを有し、板部材11〜13には、外装材2から露出した端子部11a〜13aがそれぞれ設けられ、外装材2には、隣り合う板部材11〜13の間に折り曲げ部2b、2cが設けられ、この折り曲げ部2b、2cを介して外装材2が折り曲げられて、複数の板部材11〜13が積層配置される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電板を有する配線用シートおよび電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
並列に配置された複数の導電板を絶縁層を介して積層し、これら導電板と絶縁層の全体をフィルムで覆って配線用のフラットケーブルを形成するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−37046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のものは、フィルムとは別体の絶縁層が必要であるため、コスト高となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による配線用シートは、所定距離隔てて並列に配置された導電性を有する複数の板部材と、複数の板部材の表面全体を覆うとともに、各板部材をそれぞれ個別に外包して各板部材同士を電気的に絶縁する略シート状の外装材とを有し、板部材には、外装材から露出した端子部がそれぞれ設けられ、外装材には、隣り合う板部材の間に折り曲げ部が設けられ、この折り曲げ部を介して外装材が折り曲げられて、複数の板部材が積層配置されることを特徴とする。
また、本発明による電動機は、上述の配線用シートと、ステータコア部に複数のコイルが巻回された略円筒形状の固定子と、コイルの内側に回転可能に支持された回転子とを備え、端子部は、入力用端子部と出力用端子部とを有し、配線用シートは、固定子の形状に対応して湾曲して設けられるとともに、入力用端子部にコイルに電力を供給するための電力供給手段が接続され、出力用端子部にコイルが接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外装材とは別に、板部材同士を絶縁するための絶縁層が必要とならず、安価に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図3を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る配線用シートの全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のII-II線断面図である。この配線用シート100は、例えば電動モータの給電ラインとして使用されるものであるが、図1,2はその使用前の状態を示している。配線用シート100は、所定距離隔てて並列に配置された帯板状の複数(図では3列)のバスバー11〜13と、これらバスバー全体を覆うシートフィルム2とで構成される。バスバー11〜13は導電性を有する金属(例えば銅など)により構成される。シートフィルム2は、電気絶縁性を有し、かつ可撓性を有する素材、例えば合成樹脂等により構成される。
【0008】
図2に示すようにシートフィルム2はその中央部2aで折り曲げられ、バスバー11〜13の上面および下面を覆った状態で、バスバー12と13の中間部2b、バスバー12と11の中間部2c、およびフィルム2の端部2dで、それぞれ上側と下側が熱溶着されている。これによりシートフィルム2は各バスバー11〜13を個別に外包してラミネートされ、バスバー同士はシートフィルム2によって互いに電気的に絶縁された状態となる。なお、バスバー11〜13の端部には、それぞれシートフィルム2から露出して端子部が設けられるが、図1では端子部の図示を省略している。
【0009】
図3(a)は、配線用シート100の使用状態を示す図であり、図3(b)は図3(a)のb−b線断面図である。配線用シート100の使用時には、シートフィルム2はバスバー11と12の間およびバスバー12と13の間で折り曲げられる。すなわち中間部2cの中心の折り曲げ線L1で谷折りされ、中間部2bの中心の折り曲げ線L2で山折りされて、図3に示すようにバスバー11〜13がフィルム2を介して積層される。これにより複数列のバスバー11〜13を有する配線用シート全体の幅Wを小さくすることができ、狭小のスペースにも給電ラインとして配線用シート100を容易に取り付けることができる。
【0010】
第1の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)並列配置されたバスバー11〜13を一枚のシートフィルム2によって個別に外包した後、折り曲げ線L1,L2で折り曲げて、積層型の配線用シート100を構成するようにした。これによりバスバー11〜13はシートフィルム2で絶縁された状態で積層されるので、フィルム2以外に絶縁層を別途設ける必要がなく、安価に構成できる。
(2)折り曲げ後の配線用シート100の幅Wを単一のバスバーの幅と同程度とすることができ、狭小のスペースにも配線用シート100を容易に取り付けることができる。
【0011】
−第2の実施の形態−
図4,図5を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態では、バスバー11〜13に端子を設ける例を示す。図4は、第2の実施の形態に係る配線用シート100の折り曲げ前の構成を示す平面図であり、図5(a),(b)はそれぞれ折り曲げ後の構成を示す側面図、平面図である。なお、図1〜3と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0012】
図4に示すようにバスバー11〜13の縁部にはそれぞれ長手方向に沿って、折り曲げ線L1,L2と直交する方向に複数(図では3個)の端子11a〜13aが突設されている。バスバー11の端子11aは、フィルム2の端部2dから外側に突出している。一方、バスバー12,13の端子12a,13aは、それぞれ山折りとなる折り曲げ線L2上に設けられている。端子12a,13aが位置するフィルム2の中間部2bには、予め端子12a,13aよりもやや大きめの孔21が開口され、端子12a,13aは孔21を介してフィルム2から露出している。
【0013】
バスバー11〜13の端子11a〜13aはそれぞれバスバー11〜13の長手方向に沿って交互に設けられている。すなわち、図4では左側から順に端子13a,12a、11a,13a,・・・が設けられ、各端子11a〜13aは長手方向の互いに異なる位置に設けられている。
【0014】
図4のシートフィルム2を折り曲げ線L1,L2で折り曲げると、図5に示すように各バスバー11〜13の端子11a〜13aはそれぞれフィルム2の一端部から同方向に突出する。このとき、各バスバー11〜13の端子11a〜13aの位置は長手方向に互いにずれており、端子11a〜13a同士の接触を防ぐことができる。
【0015】
このように第2の実施の形態では、バスバー11〜13の縁部に端子11a〜13aを突設するとともに、端子12a,13aの位置に合わせてシートフィルム2に孔21を開口するようにした。これによりシートフィルム2を折り曲げた状態で端子11a〜13aがフィルム2の端部から突出し、端子11a〜13aとケーブル等との接続が容易である。端子12a,13aの位置に合わせてシートフィルム2に予め孔21を開口するので、配線用シート100の製造時に、孔21を基準としてシートフィルム2にバスバー11〜13をセットすればよく、配線用シート100の製造が容易である。
【0016】
なお、図4,5では、3列のバスバー11〜13に端子11a〜13aを設ける例を示したが、4列のバスバーに端子を設けることもできる。図6は、4列のバスバー11〜14を有する配線用シート100の折り曲げ前の構成を示す平面図であり、図7(a),(b)はそれぞれ折り曲げ前および折り曲げ後の構成を示す図6のVII−VII線断面図である。
【0017】
図6においても、山折りとなる中間部2bに位置する端子12a,13aに対応して、シートフィルム2に孔21が開口されている。また、図6では、バスバー14の縁部に端子14aが突設され、端子14aに対応してシートフィルム2の中央部2aにも孔21が開口されている。端子11a〜14aはそれぞれバスバー11〜14の長手方向に沿って交互に設けられている。これによりシートフィルム2を折り曲げると、図5に示したのと同様、端子11a〜14aはそれぞれ長手方向の異なる位置でシートフィルム2の端部から突出する。
【0018】
なお、図4,5では、中間部2b、2cの中心の折り曲げ線L1,L2でシートフィルム2を折り曲げてバスバー11〜13を積層するようにしたが、折り曲げ線L1,L2の位置を中心からずらしてバスバー11〜13を積層してもよい。例えば図8に示すように折り曲げ線L1,L2をそれぞれバスバー12側に平行移動し、折り曲げ線L11,L12でシートフィルム2を折り曲げるようにしてもよい。これにより図9(a)に示すようにシートフィルム2を折り曲げたときに端子11〜13の高さに段差が生じる。このため、図9(b)に示すように折り曲げ線L1,L2でシートフィルム2を折り曲げたものに比べ、端子11〜13間の沿面距離Sを増やすことができる。
【0019】
−第3の実施の形態−
図10〜図12を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態では、配線用シート100を電動モータに取り付ける例を示す。図10は、第3の実施の形態に係る配線用シート100の折り曲げ前の構成を示す平面図、図11(a)はこの配線用シート100の使用状態を示す図であり、図11(b)は図11(a)のb−b線断面図である。なお、図4,5と同一の箇所には同一の符号を付す。
【0020】
第3の実施の形態では、ステータのコイルにU相用、V相用、W相用の電力を導く給電ラインとしてバスバー11〜13を機能させる。このため、バスバー11〜13の縁部にはコイル203(図12)に対応した数の端子11a〜13aが設けられるとともに、電力供給用の端子11b〜13bが設けられている。図10に示すように端子11a〜13aは長手方向に沿って交互に設けられるが、バスバー11〜13はそれぞれ長手方向端部の端子11a〜13aの位置までしか延設されておらず、バスバー11〜13の端部には段差がある。
【0021】
図11に示すように配線用シート100は折り曲げ線L1,L2で折り曲げられ、バスバー11〜13が積層された後、ステータの形状に合わせて全体が略円形状に湾曲されている。端子11a〜13aはそれぞれコイルに向けて内径側に折り曲げられ、端子11b〜13bはそれぞれ外径側に折り曲げられている。
【0022】
図12は、電動モータの正面図である。ステータ200は、略円筒形状のステータコア201のティースに、絶縁部材202を介して複数のコイル203を巻回して構成されている。ステータコア201の内側には、マグネットが埋め込まれたロータ205が回転可能に設けられている。ステータコア201の外周端部には上述の配線用シート100が配設され、配線用シート100の端子11a〜13aはそれぞれコイル203の一端部に接続されている。コイル203の他端部同士は互いに接続され、中性点とされている。
【0023】
端子11b〜13bにはインバータ206からの3相交流が印加される。これによりバスバー11〜13を介して各コイル203に電流が流れ、ロータ205の周囲に回転磁界が発生し、ロータ205が回転する。
【0024】
このように第3の実施の形態では、配線用シート100のバスバー11〜13をそれぞれU相用、V相用、W相用のバスバーとして構成し、各バスバー11〜13の端子11a〜13aをコイル203に接続するようにしたので、インバータ206からの3相交流をコイル203に印加することができる。このときシートフィルム2を折り曲げてバスバー11〜13を積層しているので、配線用シート100をステータコア201の外周面に沿って配置した場合の配線用シート全体の軸方向の長さ(幅)は短く、かつ厚さも比較的薄いため、狭小のスペースにも配線用シート100を容易に配置できる。
【0025】
なお、ステータコア201に複数のコイル203が巻回されたステータ200(固定子)と、コイル203の内側に回転可能に支持されたロータ205(回転子)とを備え、配線用シート100の端子11a〜13a(出力用端子部)にコイル203を接続するとともに、端子11b〜13b(入力用端子部)にインバータ206等を接続して、コイル203に回転磁界を発生させるのであれば、電動機としての電動モータの構成はいかなるものでもよい。
【0026】
上記第1〜第3の実施の形態では、略矩形状のバスバー11〜13を並列に配置して配線用シート100を構成したが、板部材としてのバスバー11〜13の形状はこれに限らない。複数のバスバー11〜13の表面全体を覆うとともに、各バスバー11〜13を個別に外包して電気的に絶縁するのであれば、外装材としてのシートフィルム2の形状はいかなるものでもよい。上記第2の実施の形態では、バスバー11〜13の長手方向に沿って、端子部として端子11a〜13aを設けたが、端子部をバスバー11〜13の両端部に設けてもよい。
【0027】
シートフィルム2を各バスバー11〜13の中間部2b、2c(折り曲げ部)で折り曲げ、バスバー11〜13を1列づつ積層するようにしたが、一部の中間部のみ(例えば中間部2bのみ)でシートフィルム2を折り曲げるようにしてもよい。すなわち、バスバーの数が増えると積層数も増えるため、積層数を抑えるために一部の中間部のみでシートフィルム2を折り曲げるようにしてもよい。山折りされるシートフィルム2の中間部b2に、予め開口部として孔21を開口し、孔21から端子12a,13aを突出させるようにしたが、開口部の構成は上述したものに限らない。
【0028】
上記第3の実施の形態では、電動モータに配線用シート100を適用したが、他の電気機器にも同様に配線用シート100を適用できる。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の配線用シートに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る配線用シートの平面図。
【図2】図1のII-II線断面図。
【図3】(a)は図1の配線用シートの使用状態を示す図、(b)は図3(a)のb−b線断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る配線用シートの平面図。
【図5】(a)は図4の配線用シートの使用状態を示す側面図、(b)は平面図。
【図6】図4の変形例を示す図。
【図7】図6のVII-VII線断面図。
【図8】配線用シートの折り曲げ線の位置をずらす例を示す図。
【図9】(a)は図8のL11,L21でシートを折り曲げた状態を示す図、(b)は図8のL1,L2でシートを折り曲げた状態を示す図。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る配線用シートの平面図。
【図11】(a)は図10の配線用シートの使用状態を示す図、(b)は図11(a)のb−b線断面図。
【図12】本発明の実施の形態に係る電動モータを構成するステータの正面図。
【符号の説明】
【0030】
2 シートフィルム
2b,2c 中間部
21 孔
11〜14 バスバー
11a〜14a 端子
11b〜13b 端子
100 配線用シート
200 ステータ
205 ロータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電板を有する配線用シートおよび電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
並列に配置された複数の導電板を絶縁層を介して積層し、これら導電板と絶縁層の全体をフィルムで覆って配線用のフラットケーブルを形成するようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−37046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載のものは、フィルムとは別体の絶縁層が必要であるため、コスト高となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による配線用シートは、所定距離隔てて並列に配置された導電性を有する複数の板部材と、複数の板部材の表面全体を覆うとともに、各板部材をそれぞれ個別に外包して各板部材同士を電気的に絶縁する略シート状の外装材とを有し、板部材には、外装材から露出した端子部がそれぞれ設けられ、外装材には、隣り合う板部材の間に折り曲げ部が設けられ、この折り曲げ部を介して外装材が折り曲げられて、複数の板部材が積層配置されることを特徴とする。
また、本発明による電動機は、上述の配線用シートと、ステータコア部に複数のコイルが巻回された略円筒形状の固定子と、コイルの内側に回転可能に支持された回転子とを備え、端子部は、入力用端子部と出力用端子部とを有し、配線用シートは、固定子の形状に対応して湾曲して設けられるとともに、入力用端子部にコイルに電力を供給するための電力供給手段が接続され、出力用端子部にコイルが接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、外装材とは別に、板部材同士を絶縁するための絶縁層が必要とならず、安価に構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の実施の形態−
以下、図1〜図3を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る配線用シートの全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のII-II線断面図である。この配線用シート100は、例えば電動モータの給電ラインとして使用されるものであるが、図1,2はその使用前の状態を示している。配線用シート100は、所定距離隔てて並列に配置された帯板状の複数(図では3列)のバスバー11〜13と、これらバスバー全体を覆うシートフィルム2とで構成される。バスバー11〜13は導電性を有する金属(例えば銅など)により構成される。シートフィルム2は、電気絶縁性を有し、かつ可撓性を有する素材、例えば合成樹脂等により構成される。
【0008】
図2に示すようにシートフィルム2はその中央部2aで折り曲げられ、バスバー11〜13の上面および下面を覆った状態で、バスバー12と13の中間部2b、バスバー12と11の中間部2c、およびフィルム2の端部2dで、それぞれ上側と下側が熱溶着されている。これによりシートフィルム2は各バスバー11〜13を個別に外包してラミネートされ、バスバー同士はシートフィルム2によって互いに電気的に絶縁された状態となる。なお、バスバー11〜13の端部には、それぞれシートフィルム2から露出して端子部が設けられるが、図1では端子部の図示を省略している。
【0009】
図3(a)は、配線用シート100の使用状態を示す図であり、図3(b)は図3(a)のb−b線断面図である。配線用シート100の使用時には、シートフィルム2はバスバー11と12の間およびバスバー12と13の間で折り曲げられる。すなわち中間部2cの中心の折り曲げ線L1で谷折りされ、中間部2bの中心の折り曲げ線L2で山折りされて、図3に示すようにバスバー11〜13がフィルム2を介して積層される。これにより複数列のバスバー11〜13を有する配線用シート全体の幅Wを小さくすることができ、狭小のスペースにも給電ラインとして配線用シート100を容易に取り付けることができる。
【0010】
第1の実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)並列配置されたバスバー11〜13を一枚のシートフィルム2によって個別に外包した後、折り曲げ線L1,L2で折り曲げて、積層型の配線用シート100を構成するようにした。これによりバスバー11〜13はシートフィルム2で絶縁された状態で積層されるので、フィルム2以外に絶縁層を別途設ける必要がなく、安価に構成できる。
(2)折り曲げ後の配線用シート100の幅Wを単一のバスバーの幅と同程度とすることができ、狭小のスペースにも配線用シート100を容易に取り付けることができる。
【0011】
−第2の実施の形態−
図4,図5を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態では、バスバー11〜13に端子を設ける例を示す。図4は、第2の実施の形態に係る配線用シート100の折り曲げ前の構成を示す平面図であり、図5(a),(b)はそれぞれ折り曲げ後の構成を示す側面図、平面図である。なお、図1〜3と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0012】
図4に示すようにバスバー11〜13の縁部にはそれぞれ長手方向に沿って、折り曲げ線L1,L2と直交する方向に複数(図では3個)の端子11a〜13aが突設されている。バスバー11の端子11aは、フィルム2の端部2dから外側に突出している。一方、バスバー12,13の端子12a,13aは、それぞれ山折りとなる折り曲げ線L2上に設けられている。端子12a,13aが位置するフィルム2の中間部2bには、予め端子12a,13aよりもやや大きめの孔21が開口され、端子12a,13aは孔21を介してフィルム2から露出している。
【0013】
バスバー11〜13の端子11a〜13aはそれぞれバスバー11〜13の長手方向に沿って交互に設けられている。すなわち、図4では左側から順に端子13a,12a、11a,13a,・・・が設けられ、各端子11a〜13aは長手方向の互いに異なる位置に設けられている。
【0014】
図4のシートフィルム2を折り曲げ線L1,L2で折り曲げると、図5に示すように各バスバー11〜13の端子11a〜13aはそれぞれフィルム2の一端部から同方向に突出する。このとき、各バスバー11〜13の端子11a〜13aの位置は長手方向に互いにずれており、端子11a〜13a同士の接触を防ぐことができる。
【0015】
このように第2の実施の形態では、バスバー11〜13の縁部に端子11a〜13aを突設するとともに、端子12a,13aの位置に合わせてシートフィルム2に孔21を開口するようにした。これによりシートフィルム2を折り曲げた状態で端子11a〜13aがフィルム2の端部から突出し、端子11a〜13aとケーブル等との接続が容易である。端子12a,13aの位置に合わせてシートフィルム2に予め孔21を開口するので、配線用シート100の製造時に、孔21を基準としてシートフィルム2にバスバー11〜13をセットすればよく、配線用シート100の製造が容易である。
【0016】
なお、図4,5では、3列のバスバー11〜13に端子11a〜13aを設ける例を示したが、4列のバスバーに端子を設けることもできる。図6は、4列のバスバー11〜14を有する配線用シート100の折り曲げ前の構成を示す平面図であり、図7(a),(b)はそれぞれ折り曲げ前および折り曲げ後の構成を示す図6のVII−VII線断面図である。
【0017】
図6においても、山折りとなる中間部2bに位置する端子12a,13aに対応して、シートフィルム2に孔21が開口されている。また、図6では、バスバー14の縁部に端子14aが突設され、端子14aに対応してシートフィルム2の中央部2aにも孔21が開口されている。端子11a〜14aはそれぞれバスバー11〜14の長手方向に沿って交互に設けられている。これによりシートフィルム2を折り曲げると、図5に示したのと同様、端子11a〜14aはそれぞれ長手方向の異なる位置でシートフィルム2の端部から突出する。
【0018】
なお、図4,5では、中間部2b、2cの中心の折り曲げ線L1,L2でシートフィルム2を折り曲げてバスバー11〜13を積層するようにしたが、折り曲げ線L1,L2の位置を中心からずらしてバスバー11〜13を積層してもよい。例えば図8に示すように折り曲げ線L1,L2をそれぞれバスバー12側に平行移動し、折り曲げ線L11,L12でシートフィルム2を折り曲げるようにしてもよい。これにより図9(a)に示すようにシートフィルム2を折り曲げたときに端子11〜13の高さに段差が生じる。このため、図9(b)に示すように折り曲げ線L1,L2でシートフィルム2を折り曲げたものに比べ、端子11〜13間の沿面距離Sを増やすことができる。
【0019】
−第3の実施の形態−
図10〜図12を参照して本発明の第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態では、配線用シート100を電動モータに取り付ける例を示す。図10は、第3の実施の形態に係る配線用シート100の折り曲げ前の構成を示す平面図、図11(a)はこの配線用シート100の使用状態を示す図であり、図11(b)は図11(a)のb−b線断面図である。なお、図4,5と同一の箇所には同一の符号を付す。
【0020】
第3の実施の形態では、ステータのコイルにU相用、V相用、W相用の電力を導く給電ラインとしてバスバー11〜13を機能させる。このため、バスバー11〜13の縁部にはコイル203(図12)に対応した数の端子11a〜13aが設けられるとともに、電力供給用の端子11b〜13bが設けられている。図10に示すように端子11a〜13aは長手方向に沿って交互に設けられるが、バスバー11〜13はそれぞれ長手方向端部の端子11a〜13aの位置までしか延設されておらず、バスバー11〜13の端部には段差がある。
【0021】
図11に示すように配線用シート100は折り曲げ線L1,L2で折り曲げられ、バスバー11〜13が積層された後、ステータの形状に合わせて全体が略円形状に湾曲されている。端子11a〜13aはそれぞれコイルに向けて内径側に折り曲げられ、端子11b〜13bはそれぞれ外径側に折り曲げられている。
【0022】
図12は、電動モータの正面図である。ステータ200は、略円筒形状のステータコア201のティースに、絶縁部材202を介して複数のコイル203を巻回して構成されている。ステータコア201の内側には、マグネットが埋め込まれたロータ205が回転可能に設けられている。ステータコア201の外周端部には上述の配線用シート100が配設され、配線用シート100の端子11a〜13aはそれぞれコイル203の一端部に接続されている。コイル203の他端部同士は互いに接続され、中性点とされている。
【0023】
端子11b〜13bにはインバータ206からの3相交流が印加される。これによりバスバー11〜13を介して各コイル203に電流が流れ、ロータ205の周囲に回転磁界が発生し、ロータ205が回転する。
【0024】
このように第3の実施の形態では、配線用シート100のバスバー11〜13をそれぞれU相用、V相用、W相用のバスバーとして構成し、各バスバー11〜13の端子11a〜13aをコイル203に接続するようにしたので、インバータ206からの3相交流をコイル203に印加することができる。このときシートフィルム2を折り曲げてバスバー11〜13を積層しているので、配線用シート100をステータコア201の外周面に沿って配置した場合の配線用シート全体の軸方向の長さ(幅)は短く、かつ厚さも比較的薄いため、狭小のスペースにも配線用シート100を容易に配置できる。
【0025】
なお、ステータコア201に複数のコイル203が巻回されたステータ200(固定子)と、コイル203の内側に回転可能に支持されたロータ205(回転子)とを備え、配線用シート100の端子11a〜13a(出力用端子部)にコイル203を接続するとともに、端子11b〜13b(入力用端子部)にインバータ206等を接続して、コイル203に回転磁界を発生させるのであれば、電動機としての電動モータの構成はいかなるものでもよい。
【0026】
上記第1〜第3の実施の形態では、略矩形状のバスバー11〜13を並列に配置して配線用シート100を構成したが、板部材としてのバスバー11〜13の形状はこれに限らない。複数のバスバー11〜13の表面全体を覆うとともに、各バスバー11〜13を個別に外包して電気的に絶縁するのであれば、外装材としてのシートフィルム2の形状はいかなるものでもよい。上記第2の実施の形態では、バスバー11〜13の長手方向に沿って、端子部として端子11a〜13aを設けたが、端子部をバスバー11〜13の両端部に設けてもよい。
【0027】
シートフィルム2を各バスバー11〜13の中間部2b、2c(折り曲げ部)で折り曲げ、バスバー11〜13を1列づつ積層するようにしたが、一部の中間部のみ(例えば中間部2bのみ)でシートフィルム2を折り曲げるようにしてもよい。すなわち、バスバーの数が増えると積層数も増えるため、積層数を抑えるために一部の中間部のみでシートフィルム2を折り曲げるようにしてもよい。山折りされるシートフィルム2の中間部b2に、予め開口部として孔21を開口し、孔21から端子12a,13aを突出させるようにしたが、開口部の構成は上述したものに限らない。
【0028】
上記第3の実施の形態では、電動モータに配線用シート100を適用したが、他の電気機器にも同様に配線用シート100を適用できる。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の配線用シートに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る配線用シートの平面図。
【図2】図1のII-II線断面図。
【図3】(a)は図1の配線用シートの使用状態を示す図、(b)は図3(a)のb−b線断面図。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る配線用シートの平面図。
【図5】(a)は図4の配線用シートの使用状態を示す側面図、(b)は平面図。
【図6】図4の変形例を示す図。
【図7】図6のVII-VII線断面図。
【図8】配線用シートの折り曲げ線の位置をずらす例を示す図。
【図9】(a)は図8のL11,L21でシートを折り曲げた状態を示す図、(b)は図8のL1,L2でシートを折り曲げた状態を示す図。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る配線用シートの平面図。
【図11】(a)は図10の配線用シートの使用状態を示す図、(b)は図11(a)のb−b線断面図。
【図12】本発明の実施の形態に係る電動モータを構成するステータの正面図。
【符号の説明】
【0030】
2 シートフィルム
2b,2c 中間部
21 孔
11〜14 バスバー
11a〜14a 端子
11b〜13b 端子
100 配線用シート
200 ステータ
205 ロータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定距離隔てて並列に配置された導電性を有する複数の板部材と、
前記複数の板部材の表面全体を覆うとともに、前記各板部材をそれぞれ個別に外包して前記各板部材同士を電気的に絶縁する略シート状の外装材とを有し、
前記板部材には、前記外装材から露出した端子部がそれぞれ設けられ、
前記外装材には、隣り合う前記板部材の間に折り曲げ部が設けられ、この折り曲げ部を介して前記外装材が折り曲げられて、前記複数の板部材が積層配置されることを特徴とする配線用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の配線用シートにおいて、
前記外装材の折り曲げ部には予め開口部が設けられ、この開口部を介して前記板部材の縁部から前記端子部が突出して設けられることを特徴とする配線用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の配線用シートにおいて、
前記各端子部は、前記板部材の長手方向に沿って互いに位置をずらして設けられることを特徴とする配線用シート。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の配線用シートにおいて、
前記折り曲げ部を介して前記外装材を折り曲げたときに隣り合う前記板部材同士で段差が生じるように、前記折り曲げ部は、隣り合う前記板部材間の中心から一方の前記板部材側に平行移動した位置に設けられることを特徴とする配線用シート。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の配線用シートにおいて、
前記複数の板部材には、それぞれ相の異なる電流が供給されることを特徴とする配線用シート。
【請求項6】
請求項5に記載の配線用シートと、
ステータコア部に複数のコイルが巻回された略円筒形状の固定子と、
前記コイルの内側に回転可能に支持された回転子とを備え、
前記端子部は、入力用端子部と出力用端子部とを有し、
前記配線用シートは、前記固定子の形状に対応して湾曲して設けられるとともに、前記入力用端子部に前記コイルに電力を供給するための電力供給手段が接続され、前記出力用端子部に前記コイルが接続されることを特徴とする電動機。
【請求項1】
所定距離隔てて並列に配置された導電性を有する複数の板部材と、
前記複数の板部材の表面全体を覆うとともに、前記各板部材をそれぞれ個別に外包して前記各板部材同士を電気的に絶縁する略シート状の外装材とを有し、
前記板部材には、前記外装材から露出した端子部がそれぞれ設けられ、
前記外装材には、隣り合う前記板部材の間に折り曲げ部が設けられ、この折り曲げ部を介して前記外装材が折り曲げられて、前記複数の板部材が積層配置されることを特徴とする配線用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の配線用シートにおいて、
前記外装材の折り曲げ部には予め開口部が設けられ、この開口部を介して前記板部材の縁部から前記端子部が突出して設けられることを特徴とする配線用シート。
【請求項3】
請求項2に記載の配線用シートにおいて、
前記各端子部は、前記板部材の長手方向に沿って互いに位置をずらして設けられることを特徴とする配線用シート。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の配線用シートにおいて、
前記折り曲げ部を介して前記外装材を折り曲げたときに隣り合う前記板部材同士で段差が生じるように、前記折り曲げ部は、隣り合う前記板部材間の中心から一方の前記板部材側に平行移動した位置に設けられることを特徴とする配線用シート。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の配線用シートにおいて、
前記複数の板部材には、それぞれ相の異なる電流が供給されることを特徴とする配線用シート。
【請求項6】
請求項5に記載の配線用シートと、
ステータコア部に複数のコイルが巻回された略円筒形状の固定子と、
前記コイルの内側に回転可能に支持された回転子とを備え、
前記端子部は、入力用端子部と出力用端子部とを有し、
前記配線用シートは、前記固定子の形状に対応して湾曲して設けられるとともに、前記入力用端子部に前記コイルに電力を供給するための電力供給手段が接続され、前記出力用端子部に前記コイルが接続されることを特徴とする電動機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−305626(P2008−305626A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150475(P2007−150475)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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