説明

酸化マグネシウム還元方法及び反応装置

【課題】水酸化マグネシウム粉末から水素化マグネシウム粉末へのリサイクルを可能にする酸化マグネシウム還元方法及び反応装置を提供する。
【解決手段】不活性ガスの熱プラズマを生成するプラズマ反応炉に酸化マグネシウム粉末と、メタン及び/又は水素とを供給し、酸化マグネシウム粉末をマグネシウムにプラズマ還元し、プラズマ還元された気体のマグネシウムを凝縮させることによって、マグネシウム粉末又は水素化マグネシウム粉末の混合物或いは水素化マグネシウム粉末を生成する。反応装置に、プラズマ反応炉と、プラズマ反応炉の上部に設けられた筒状のトーチ電極と、トーチ電極を囲繞するトーチノズルと、プラズマ反応炉の下部に設けられた下部電極と、トーチ電極及び下部電極に電力を供給する電源と、トーチ電極を通じてメタンを供給する第1供給路と、トーチノズルを通じて酸化マグネシウムを供給する第2供給路とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化マグネシウム粉末を、マグネシウム粉末又は水素化マグネシウム粉末に還元する酸化マグネシウム還元方法及び該酸化マグネシウム還元方法を実施するための反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境エネルギー問題の解決手段として燃料電池が注目されている。燃料電池は、水素H2 をエネルギー源としており、化石燃料を燃やすことで発生する温室効果ガス、環境汚染物質等を放出しないため、地球温暖化、環境汚染、化石燃料の枯渇といった問題を解決する手段として期待されている。
【0003】
燃料電池のエネルギー源である水素H2 の貯蔵方法としては、水素H2 を例えば350気圧の高圧でボンベ内に貯蔵する高圧ボンベ方式、水素H2 を−253℃以下の極低温で液化して貯蔵する液体水素方式、水素吸蔵合金に水素H2 を吸蔵する吸蔵合金方式等が挙げられる。特に、吸蔵合金方式は、超高圧、極低温といった特殊状態で水素H2 を貯蔵する必要がないため、取り扱いが容易で安全性が高く、しかも単位体積当たりの水素貯蔵量が高いという優れた特徴を有している。
【0004】
特許文献1には、平均粒径が45μm未満の水素化マグネシウムMgH2 粉末を収容した反応容器と、該反応容器に水を供給する貯水容器と、反応容器中の水素化マグネシウムMgH2 に超音波を与える音波発生部とを備え、水素化マグネシウムMgH2 の加水分解によって発生した水素H2 を用いて発電を行う発電装置が開示されている。
【0005】
水素化マグネシウムMgH2 は、マグネシウムMgを水素H2 ガス雰囲気中に保持し、水素H2 ガス雰囲気中の温度及び圧力を増減させることによって生成することができる(例えば、特許文献2)。ところが、マグネシウムMgは反応性が非常に高いため、平均粒径が45μmを下回ると、安全に取り扱うことが困難になる。また、マグネシウムMgは延性、展性が高いため、平均粒径45μm未満に粉砕すること自体が困難である。そこで、まずは、平均粒径45μm以上のマグネシウムMg原料粒子を用いて水素化マグネシウムMgH2 粗粒子を生成し、生成した水素化マグネシウムMgH2 粗粒子を粒子間衝突方式のジェット粉砕機で45μm未満に粉砕することにより、水素化マグネシウムMgH2 粉末を製造している。
【0006】
一方、燃料電池のエネルギー源である水素H2 を水素化マグネシウムの加水分解によって発生させた場合、残留物として水酸化マグネシウムMg(OH)2 粉末が生成されるが、水酸化マグネシウムMg(OH)2 粉末から水素化マグネシウムMgH2 粉末への効果的なリサイクル方法は未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−99534号公報
【特許文献2】特開2008−44832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、水酸化マグネシウムの加熱脱水によって得られた酸化マグネシウム粉末及びメタンをプラズマ炉に供給し、酸化マグネシウム粉末をプラズマ還元することによって、マグネシウム粉末又は水素化マグネシウム粉末を生成することができ、水酸化マグネシウム粉末から水素化マグネシウム粉末へのリサイクルを可能にする酸化マグネシウム還元方法及び該酸化マグネシウム還元方法を実施するための反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る酸化マグネシウム還元方法は、不活性ガスの熱プラズマを生成するプラズマ反応炉に酸化マグネシウム粉末と、メタン及び/又は水素とを供給し、不活性ガス、メタン及び/又は水素にて生成された還元雰囲気の熱プラズマにて酸化マグネシウム粉末をマグネシウムに還元し、還元された気体のマグネシウムを凝縮させることによって、マグネシウム粉末及び/又は水素化マグネシウム粉末を生成することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る酸化マグネシウム還元方法は、プラズマ還元にてマグネシウム粉末を生成した場合、水素を前記プラズマ反応炉に供給して、該プラズマ反応炉中のマグネシウム粉末と、水素とを接触させることにより、水素化マグネシウム粉末を生成することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る酸化マグネシウム還元方法は、発電所の電力を用いて前記熱プラズマを生成することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る酸化マグネシウム還元方法は、前記プラズマ反応炉の上部に設けられた筒状のトーチ電極と、該トーチ電極を囲繞するトーチノズルと、前記トーチ電極に対向した下部電極とを準備し、前記トーチ電極を通じて酸化マグネシウム粉末(又はメタン及び/又は水素)を供給し、前記トーチノズルを通じてメタン及び/又は水素(又は酸化マグネシウム粉末)を供給することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る反応装置は、プラズマ反応炉と、該プラズマ反応炉の上部に設けられた筒状のトーチ電極と、該トーチ電極を囲繞するトーチノズルと、前記トーチ電極に対向するように、前記プラズマ反応炉の下部に設けられた下部電極と、前記トーチ電極及び下部電極に電力を供給する電源と、前記トーチ電極を通じて酸化マグネシウム粉末(又はメタン及び/又は水素)を供給する第1供給路と、前記トーチノズルを通じてメタン及び/又は水素(又は酸化マグネシウム粉末)を供給する第2供給路とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、プラズマ反応炉に供給された不活性ガスと、メタンとによって、還元雰囲気の熱プラズマが生成される。また、不活性ガスと、メタン及び水素とによって、還元雰囲気の熱プラズマを生成しても良い。更に、不活性ガスと、水素とによって、還元雰囲気の熱プラズマを生成しても良い。
そして、該熱プラズマに供給された酸化マグネシウム粉末は、マグネシウムに還元される。メタンを供給している場合、熱プラズマの温度が約2000度になると、マグネシウム、一酸化炭素及び水素ガスを主成分とするプラズマが得られ、更にマグネシウムを冷却すると、気体のマグネシウムが凝縮し、マグネシウム粉末及び/又は水素化マグネシウム粉末が生成される。なお、メタンを供給している場合、プラズマの主成分に水が含まれないため、マグネシウムが再び酸化するおそれはない。マグネシウム粉末及び/又は水素化マグネシウム粉末は、マグネシウム粉末、水素化マグネシウム粉末、又はマグネシウム粉末及び水素化マグネシウム粉末を意味する。
また、メタン及び水素を供給している場合、又は水素を供給している場合も、マグネシウム粉末及び/又は水素化マグネシウム粉末が生成される。
【0015】
本発明にあっては、プラズマ還元にてマグネシウム粉末を生成した場合、水素をプラズマ反応炉に供給することによって、マグネシウム粉末を水素化する。従って、水素化マグネシウム粉末が生成される。
【0016】
本発明にあっては、発電所の電力を用いて熱プラズマを生成する。従って、例えば、原子力発電所、水力発電所等の余剰電力エネルギー特に、夜間電力をマグネシウム粉末又は水素化マグネシウム粉末として貯蓄することが可能になる。
【0017】
本発明にあっては、プラズマ反応炉の上部に設けられた筒状のトーチ電極を通じて酸化マグネシウム粉末を供給し、トーチ電極を囲繞するトーチノズルを通じてメタン及び/又は水素を供給する。従って、酸化マグネシウム粉末と、メタン及び/又は水素は略同一箇所からプラズマ反応炉に供給され、プラズマ還元される。プラズマ還元にて得られたマグネシウム粉末は、トーチ電極に対向した下部電極に蓄積する。
同様に、トーチ電極を通じてメタン及び/又は水素を供給し、トーチノズルを通じて酸化マグネシウム粉末を供給しても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、酸化マグネシウム粉末をプラズマ還元することによって、マグネシウム粉末又は水素化マグネシウム粉末を生成することができ、水酸化マグネシウム粉末から水素化マグネシウム粉末へのリサイクルが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】水酸化マグネシウム粉末及び酸化マグネシウム粉末の還元方法を概念的に示す説明図である。
【図2】酸化マグネシウム粉末及びメタンの混合ガスのプラズマ組成を示す図表である。
【図3】酸化マグネシウム還元方法を実施するためのプラズマ反応装置を概念的に示す説明図である。
【図4】酸化マグネシウム粉末の還元手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施の形態に係る酸化マグネシウム還元方法は、水素の吸蔵性及び放出性に優れた水素化マグネシウムMgH2 粒子を、安全で、経済的なクリーンエネルギーキャリアとして機能させることを可能にするものである。即ち、本発明は、エネルギーを放出した水酸化マグネシウムMg(OH)2 粉末から、エネルギーを蓄積した水素化マグネシウムMgH2 粉末へのリサイクルを可能にする技術である。
【0021】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、水酸化マグネシウム粉末及び酸化マグネシウム粉末の還元方法を概念的に示す説明図である。まず、還元対象の水酸化マグネシウムMg(OH)2 粉末、還元剤であるメタンCH4 、及びアルゴンArと、プラズマ反応装置(例えば、図3参照)とを用意する。水酸化マグネシウムMg(OH)2 粉末は、水素化マグネシウムMgH2 粉末を水素源とする発電装置から回収される。そして、回収された水酸化マグネシウムMg(OH)2 粉末を加熱脱水することによって、酸化マグネシウムMgO粉末を生成する。
【0022】
次いで、還元剤であるメタンCH4 及びアルゴンArの混合ガスをプラズマ反応炉1に供給し、原子力発電又は水力発電にて得られた電力をプラズマ反応炉1に供給することによって、還元雰囲気の熱プラズマを生成する。また、アルゴンArガスにて酸化マグネシウムMgO粉末をプラズマ反応炉中の還元雰囲気の熱プラズマに供給することによって、酸化マグネシウムMgO粉末をマグネシウムMgにプラズマ還元する。還元剤としてメタンCH4 ガスを用いた酸化マグネシウムMgO粉末のプラズマ還元反応は、下記化学式(1)で表される。
MgO+CH4 =Mg(g)+2H2 +CO…(1)
【0023】
図2は、酸化マグネシウムMgO粉末及びメタンCH4 の混合ガスのプラズマ組成を示す図表である。図表は、酸化マグネシウム1(mol)及びメタン1(mol)の混合ガスを1(atm)、約2000(K)でプラズマ化した場合における、プラズマの組成及び物質量を示した数値計算結果である。図表から分かるように、プラズマの主成分は、水素H2 、一酸化炭素CO及びマグネシウムMgである。また、マグネシウムの酸化を引き起こす水は、0.55899×10-4(mol)しか存在しておらず、マグネシウムMgの酸化はほとんど進行しないと考えられる。
【0024】
なお、還元剤である水素H2 を用いて、水酸化マグネシウムMg(OH)2 粉末を直接プラズマ還元することも考えられるが、下記式(2)に示すように、水が発生し、熱プラズマの温度が低下した場合、マグネシウムMgが再酸化してしまう。
Mg(OH)2 +H2 =Mg+2H2 O…(2)
【0025】
また、還元剤である水素H2 を用いて、酸化マグネシウムMgO粉末をプラズマ還元することも考えられるが、下記式(3)に示すように、やはり水が発生し、熱プラズマの温度が低下した場合、マグネシウムMgが再酸化してしまう。
MgO+H2 =Mg+H2 O…(3)
【0026】
次いで、図1に示すように、プラズマ還元にて発生したプラズマガスの温度を低下させることによって、核凝縮した固体のマグネシウムMg粉末を得る。固体のマグネシウムMg粉末が生成された後、水素H2 をプラズマ反応炉に供給することによって、マグネシウムMg粉末と、水素H2 とを接触させ、水素化マグネシウムMgH2 粉末を生成する。なお、マグネシウムMgは、粉末状であるため、マグネシウムMgは所定の温度条件下で直ちに水素化する。マグネシウムMg粉末の水素化は、下記式(4)で表される。
Mg+H2 =MgH2 …(4)
【0027】
図3は、酸化マグネシウム還元方法を実施するためのプラズマ反応装置を概念的に示す説明図である。
【0028】
プラズマ反応装置は、中空円柱状のプラズマ反応炉1と、プラズマ反応炉1の上部に設けられたトーチ電極21及びトーチノズル22から構成されたプラズマトーチ2と、プラズマ反応炉1の下部に設けられた下部電極3と、トーチ電極21及び下部電極3間に電力を供給する電源4と、プラズマ反応炉1に各種原料物質を供給する原料供給部5と、原料供給部5の動作を制御する制御部6と、操作部7とを備える。
【0029】
プラズマ反応炉1は、円板状の底部と、底部の周縁から略垂直に形成された周壁と、周壁の上端部に形成された円板状の天板部で構成されている。プラズマ反応炉1の上部、即ち天板部の略中央部には、上下が開放した筒状のトーチ電極21が設けられており、プラズマ反応炉1は、トーチ電極21を通じて、外部からプラズマ反応炉1内部にメタンCH4 及びアルゴンArの混合ガスを供給できるように連通している。また、トーチ電極21の外側には、トーチ電極21を囲繞するようにトーチノズル22が設けられている。トーチノズル22は、下方が狭まった円筒状をなし、プラズマ反応炉1は、トーチノズル22を通じて、外部からプラズマ反応炉1内部に酸化マグネシウムMgO粉末、アルゴンAr、水素H2 を供給できるように連通している。なお、プラズマ反応炉1の上部の適当箇所には、熱プラズマとプラズマ反応炉1との間を熱絶縁するための旋回ガスを供給する送気孔が設けられている。
【0030】
プラズマ反応炉1の下部、即ち底部の略中央部には、中央部が凹状に湾曲した椀状をなした下部電極3がトーチ電極21に対向するように設けられている。下部電極3は、トーチ電極21との間で熱プラズマを発生させる電極であると共に、熱プラズマを冷却することによって、マグネシウムMg粉末を堆積させる容器としての機能を兼ねている。
【0031】
トーチ電極21と下部電極3との間には、熱プラズマを発生させるための電源4が接続されている。電源4は、原子力発電又は水力発電等にて得られた交流電力を直流電力に変換し、トーチ電極21と、下部電極3との間に直流電圧を印加する直流電源回路である。直流電圧の極性は、トーチ電極21側が正極性、下部電極3側が負極性である。なお、トーチ電極21側を負極性、下部電極3側を正極性としても良い。この場合、トーチ電極21の経年変化を抑えることができる。また、トーチ電極21及び下部電極3間に交流電圧を印加しても良い。
【0032】
原料供給部5は、メタンガスボンベ51aからトーチ電極21を通じてプラズマ反応炉1へメタンCH4 を供給するメタン供給管54a、アルゴンガスボンベ51bからトーチ電極21及びトーチノズル22を通じてプラズマ反応炉1へアルゴンArガスを供給するアルゴン供給管54b,54c、水素ガスボンベ51cからトーチノズル22を通じてプラズマ反応炉1へ水素H2 ガスを供給する水素供給管54dとを備える。各供給管54a,54b,54c,54dの適宜箇所には、メタンCH4 、アルゴンAr、水素H2 のガス供給量を制御するガス流量制御部52a,52b,52c,52d、開閉弁53a,53b,53c,53dが設けられている。
また、原料供給部5は、酸化マグネシウムMgO粉末を収容し、酸化マグネシウム搬送路56及びトーチノズル22を通じて酸化マグネシウムMgO粉末を供給する酸化マグネシウム供給部(MgO供給部)55を備える。酸化マグネシウム搬送路56は、例えばスクリューコンベアである。酸化マグネシウム供給部55は、酸化マグネシウム搬送路56と連通した容器であり、例えば酸化マグネシウムMgO粉末が投入される投入口を有する。該投入口には、該容器を密閉状態に閉鎖する扉体が設けられている。酸化マグネシウム搬送路56が駆動し、アルゴン供給用の開閉弁53cが開状態になった場合、酸化マグネシウムMgO粉末がトーチノズル22へ搬送され、アルゴンArと共に、プラズマ反応炉1へ供給される。
【0033】
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)を備えたマイクロコンピュータである。CPUには、バスを介してROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等が接続されている。ROMは、CPUの動作に必要な制御プログラムを記憶したマスクROM、EEPROM等の不揮発性メモリである。RAMは、CPUの演算処理を実行する際に生ずる各種データを一時記憶するDRAM、SRAM等の揮発性メモリである。また、バスには入出力ポートを介して、操作部7、図示しない表示部等が接続されている。操作部7は、各開閉弁53a,53b,53c,53dの開閉動作、ガス流量制御部52a,52b,52c,52dの流量制御、各種指示を受け付けるためのボタン、ダイヤル、タッチパネル等で構成されている。表示部は、プラズマ反応装置の操業状態を表示する液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、CRTディスプレイなどである。CPUは、操作部7の操作状態を常時監視し、操作部7の操作内容に応じて、ガス流量制御部52a,52b,52c,52d、開閉弁53a,53b,53c,53dの開閉動作を制御するように構成されている。
【0034】
図4は、酸化マグネシウム粉末の還元手順を示すフローチャートである。制御部6は、操作部7を通じて酸化マグネシウムMgO粉末の還元指示を受け付けた場合、電源4を投入し(ステップS11)、開閉弁53a,53bを開状態にすることで、プラズマ反応炉1にメタンCH4 及びアルゴンArの混合ガスを供給する(ステップS12)。
電源4が投入された状態で、メタンCH4 及びアルゴンArがプラズマ反応炉1に供給された場合、還元雰囲気の熱プラズマが生成される。
【0035】
次いで、制御部6は、酸化マグネシウム搬送路56を駆動し、開閉弁53cを開状態に制御することで、アルゴンArガスと共に酸化マグネシウムMgO粉末をプラズマ反応炉1に供給する(ステップS13)。
酸化マグネシウムMgO粉末及びアルゴンArがプラズマ反応炉1に供給された場合、酸化マグネシウムMgO粉末は、上記化学式(1)で示すように、熱プラズマによって、マグネシウムMgにプラズマ還元される。下部電極3に到達した熱プラズマは、下部電極3によって冷却され、気体のマグネシウムMgは核凝縮し、固体となったマグネシウムMg粉末は下部電極3に堆積する。
【0036】
そして、制御部6は、電源4投入後、設定された所定時間経過した場合、開閉弁53cを閉鎖すると共に酸化マグネシウム搬送路56を停止することによって、酸化マグネシウムMgO粉末の供給を停止する(ステップS14)。
【0037】
次いで、制御部6は、開閉弁53a,53bを閉鎖することによってメタンCH4 及びアルゴンArの供給を停止し(ステップS15)、電源4を切る(ステップS16)。
【0038】
そして、制御部6は、開閉弁53dを所定時間開状態にすることで、水素H2 をプラズマ反応炉1に供給する(ステップS17)。水素H2 がプラズマ反応炉1に供給された場合、マグネシウムMg粉末は上記化学式(4)で示すように水素化し、水素化マグネシウムMgH2 粉末が生成される。
【0039】
次いで、制御部6は、ガスパージ、例えば図示しない窒素ガスをプラズマ反応炉1に供給し(ステップS18)、処理を終える。
【0040】
本実施の形態によれば、酸化マグネシウムMgO粉末をプラズマ還元することによって、マグネシウムMg粉末を生成することができる。この時、還元ガスとしてCH4 及びH2 の混合ガスを使用することにより、マグネシウムMg粉末及び水素化マグネシウムMgH2 粉末の混合物を得る事も可能である。このプロセスを採用する事により、次の工程であるMgの水素化工程を短縮することが可能となり、安全性、経済性が改善される。また、還元ガスとして水素H2 のみをプラズマ反応炉1に供給するようにしても良い。この場合、マグネシウムMgの一部が酸化されるおそれがあるが、実用上、問題が無い分量の水素化マグネシウムMgH2を得ることができれば、マグネシウムMgの一部が酸化されても問題は無い。一方、マグネシウムMg粉末の生成後、水素H2 をプラズマ反応炉1に供給することによって、水素化マグネシウムMgH2 粉末を生成することができる。従って、水酸化マグネシウムMg(OH)2 粉末から水素化マグネシウムMgH2 粉末へのリサイクルが可能になり、エネルギーを蓄積した水素化マグネシウムMgH2 粉末と、エネルギーを放出した水酸化マグネシウムMg(OH)2 粉末との間を循環させることが可能になる。
【0041】
原子力発電又は水力発電等にて得た電力は保管ができず、需要地に輸送するとしても多大な送電ロスが発生するところ、本願発明によれば、余剰電力エネルギーを、クリーンエネルギーキャリアである水素化マグネシウムMgH2 として蓄積することができ、必要に応じて蓄積されたエネルギーを水素H2 として取り出すことができる。水素化マグネシウムMgH2 の循環系によれば、全系でみればエネルギー的には必ずしもプラスではないが、余剰電力を効果的に使用することが可能になり、二酸化炭素CO2 の発生を抑制することができる。
【0042】
なお、実施の形態では、トーチ電極及び下部電極間のアーク放電を利用して熱プラズマを生成する例を説明したが、高周波電磁場にてメタン及びアルゴンを誘導加熱することで熱プラズマを生成しても良い。また、マイクロ波をプラズマ反応炉に供給することで熱プラズマを生成しても良い。
【0043】
また、酸化マグネシウムMgO粉末を直接的にプラズマ反応炉に供給する例を説明したが、酸化マグネシウムMgO粉末を液体中に懸濁し、プラズマ反応炉に供給するようにしても良い。
【0044】
更に、不活性ガスとしてアルゴンArを用いた例を説明したが、言うまでもなく、ヘリウム、その他の不活性ガスを利用しても良い。
【0045】
更にまた、トーチ電極からメタンCH4 及びアルゴンArを供給し、トーチノズルから酸化マグネシウムMgO粉末及びアルゴンArを供給しているが、逆にトーチ電極から酸化マグネシウムMgO粉末及びアルゴンArを供給し、トーチノズルからメタンCH4 及びアルゴンArを供給するように構成しても良い。また、水素H2 をトーチ電極から供給するように構成しても良い。
【0046】
更にまた、プラズマ反応炉に水素H2 を供給して、マグネシウムMg粉末を水素化する例を説明したが、マグネシウムMg粉末をプラズマ反応炉の外へ取り出し、別途水素化するように構成しても良い。
【0047】
プラズマ反応炉に水素H2 を供給して、マグネシウムMg粉末を水素化する例を説明したが、上記式(1)で示すように、還元反応で発生した水素H2 で、十分な量の水素化マグネシウムMgH2 が生成される場合、水素H2 を別途供給しないように構成しても良い。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 プラズマ反応炉
2 プラズマトーチ
3 下部電極
4 電源
5 原料供給部
6 制御部
7 操作部
21 トーチ電極
22 トーチノズル
51a メタンガスボンベ
51b アルゴンガスボンベ
51c 水素ガスボンベ
54a メタン供給管
54b,54c アルゴン供給管
54d 水素供給管
55 酸化マグネシウム供給部
56 酸化マグネシウム搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスの熱プラズマを生成するプラズマ反応炉に酸化マグネシウム粉末と、メタン及び/又は水素とを供給し、
不活性ガス、メタン及び/又は水素にて生成された還元雰囲気の熱プラズマにて酸化マグネシウム粉末をマグネシウムに還元し、
還元された気体のマグネシウムを凝縮させることによって、マグネシウム粉末及び/又は水素化マグネシウム粉末を生成する
ことを特徴とする酸化マグネシウム還元方法。
【請求項2】
プラズマ還元にてマグネシウム粉末を生成した場合、水素を前記プラズマ反応炉に供給して、該プラズマ反応炉中のマグネシウム粉末と、水素とを接触させることにより、水素化マグネシウム粉末を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の酸化マグネシウム還元方法。
【請求項3】
発電所の電力を用いて前記熱プラズマを生成する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の酸化マグネシウム還元方法。
【請求項4】
前記プラズマ反応炉の上部に設けられた筒状のトーチ電極と、該トーチ電極を囲繞するトーチノズルと、前記トーチ電極に対向した下部電極とを準備し、前記トーチ電極を通じて酸化マグネシウム粉末(又はメタン及び/又は水素)を供給し、前記トーチノズルを通じてメタン及び/又は水素(又は酸化マグネシウム粉末)を供給する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の酸化マグネシウム還元方法。
【請求項5】
プラズマ反応炉と、
該プラズマ反応炉の上部に設けられた筒状のトーチ電極と、
該トーチ電極を囲繞するトーチノズルと、
前記トーチ電極に対向するように、前記プラズマ反応炉の下部に設けられた下部電極と、
前記トーチ電極及び下部電極に電力を供給する電源と、
前記トーチ電極を通じて酸化マグネシウム粉末(又はメタン及び/又は水素)を供給する第1供給路と、
前記トーチノズルを通じてメタン及び/又は水素(又は酸化マグネシウム粉末)を供給する第2供給路と
を備えることを特徴とする反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−32131(P2011−32131A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179739(P2009−179739)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(506074015)バイオコーク技研株式会社 (23)
【Fターム(参考)】