説明

酸化染毛剤

【課題】十分な染毛力を発揮しつつ、毛髪の堅牢性を改善することのできる酸化染毛剤を提供する。
【解決手段】酸化染毛剤は、染毛主剤と染毛副剤とから構成される。染毛主剤は、酸化染料及びアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とを備えている。この第1剤と第2剤とは、酸化染毛剤の使用直前において混合される。すなわち、染毛主剤は酸化染料、アルカリ剤及び酸化剤の各成分が混合した状態で使用される。染毛副剤には、キレート剤が3質量%以上含まれる。この染毛副剤は、酸化染毛剤の使用直前において染毛主剤と接触されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化染毛剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化染毛剤による毛髪の染色処理に関して、キレート剤の使用が試みられている(特許文献1及び2参照)。特許文献1では、金属イオンが捕捉されたキレート剤によって毛髪を前処理した後に、染色処理することにより、染色性を向上させることが提案されている。特許文献2の技術では、毛髪の前処理剤又は染毛剤に対して多量のキレート剤を配合している。この技術では、酸化剤の分解を抑えることにより、毛髪蛋白質の酸化分解を防ぐことで、毛髪の損傷を低減させている。
【特許文献1】特開平5−124940号公報
【特許文献2】国際公開第2002/074273号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、酸化染毛剤には毛髪を染色する染毛力に加えて、毛髪の堅牢性を改善することが要求されている。特に、白髪染めとして使用される酸化染毛剤では、白髪が目立たない状態に維持するといった観点から、堅牢性の改善に対する要求が高まっている。この堅牢性の改善については、ポリペプチド、アミノ酸、アミノ変性シリコーン等によって損傷毛を修復することによって、毛髪からの染料の流出を抑制することが一般的である。こうした堅牢性の対策によっても、ある程度の改善効果が認められる。ところが、その対策は染め上がった毛髪の表面状態を整えることによって染料の流出を抑制するものであり、堅牢性についての根本的な対策は未だ提案されていない。すなわち、従来の染色処理では、酸化剤による酸化染料の重合反応が毛髪の表面や表面付近において進行することになる。従って、染色処理後の毛髪においても、毛髪の表面や表面付近において大部分の染料が留まっており、そのような染料自体は流出し易い状態にある。
【0004】
一方、上記特許文献1及び2では、毛髪の染色処理に関してキレート剤の使用が試みられている。しかしながら、特許文献1の技術は、金属イオンが捕捉されたキレート剤を毛髪に適用することにより、染色性を向上させる技術である。この技術では、色が均一に染め上がったとしても、酸化染料の重合体は毛髪の表面付近に留まってしまうため、毛髪の堅牢性は改善されない。
【0005】
また、特許文献2に記載のように、キレート剤を配合した前処理剤を毛髪に適用した場合には、キレート剤によって毛髪が覆われることになる。ところで、通常、染毛剤にはアルカリ剤が含有され、このアルカリ剤によって毛髪が膨潤されることにより、酸化染料及び酸化剤の毛髪への浸透が促進される。こうした染色過程において、特許文献2の前処理剤によって処理された毛髪では、毛髪表面を覆うキレート剤によって、毛髪に対するアルカリ剤の膨潤作用が十分に発揮されにくくなる。このため、酸化染料及び酸化剤の毛髪内部への浸透が十分に促進されない結果、酸化染料の重合体が毛髪の表面付近に留まってしまうため、毛髪の堅牢性は改善されない。また、染毛剤自体にキレート剤を配合した場合では、染毛剤を使用するまでにキレート剤のキレート能力が低下してしまうため、その染毛剤を毛髪に適用する時点においては、染毛剤に含有するキレート剤は、十分なキレート能力を有していない。このため、この染毛剤を適用した場合においても、酸化染料の重合体は毛髪の表面付近に留まってしまう。このように従来技術では、酸化染料の重合反応は毛髪の表面や表面付近を主体として進行することになるため、染色処理が施された毛髪において染毛力が得られたとしても、毛髪の堅牢性は劣ることになる。
【0006】
本発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、十分な染毛力を発揮しつつ、毛髪の堅牢性を改善することのできる酸化染毛剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の酸化染毛剤では、酸化染料、アルカリ剤及び酸化剤の各成分が混合した状態で使用される染毛主剤と、キレート剤が3質量%以上含まれる染毛副剤と、から構成され、該染毛副剤は使用直前において前記染毛主剤と接触されることを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記染毛副剤がカプセルに包含されるとともに、該カプセルが前記使用直前において崩壊される皮膜より形成され、そのカプセルは前記染毛主剤に配合されていることを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記染毛副剤を、前記染毛主剤と非接触の状態で保存されるとともに前記使用直前において前記染毛主剤と混合される別剤として構成したことを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明では、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記染毛主剤が、前記酸化染料及び前記アルカリ剤を含有する第1剤と、前記酸化剤を含有するとともに前記第1剤と前記使用直前において混合される第2剤と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な染毛力を発揮しつつ、毛髪の堅牢性を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の酸化染毛剤は、染毛主剤と染毛副剤とから構成される。染毛主剤は、酸化染料及びアルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤とを備えている。この第1剤と第2剤とは、酸化染毛剤の使用直前において混合される。すなわち、染毛主剤は酸化染料、アルカリ剤及び酸化剤の各成分が混合した状態で使用される剤である。染毛副剤には、キレート剤が3質量%以上含まれる。この染毛副剤は、酸化染毛剤の使用直前において染毛主剤と接触される剤である。すなわち、この酸化染毛剤は染毛主剤に対して染毛副剤が接触した状態で混合されている塗布用組成物として毛髪に適用される。本明細書における「使用直前」とは、酸化染毛剤を毛髪に適用する直前を意味し、通常の酸化染毛剤における第1剤と第2剤とを混合する混合時に相当する。
<染毛主剤>
(第1剤)
染毛主剤の第1剤には、酸化染料及びアルカリ剤が含有されるとともに、その他の成分として通常の酸化染毛剤における第1剤に用いられる成分が含有される。
【0013】
酸化染料は、第2剤に含有される酸化剤によって発色可能な化合物を示し、具体的には、主要中間体及びカプラーに分類される。酸化染料は、酸化重合することによって多核化合物を生成する。すなわち、この多核化合物によって毛髪は染色されることになる。多核化合物は、単一種の酸化染料による単独重合体、及び複数種の酸化染料による共重合体である。
【0014】
主要中間体としては、フェニレンジアミン類(但し、m−フェニレンジアミンを除く。)、アミノフェノール類(但し、m−アミノフェノール及び2,4−ジアミノフェノールを除く。)、トルイレンジアミン類とその塩類、ジフェニルアミン類、ジアミノフェニルアミン類、N−フェニルフェニレンジアミン類、ジアミノピリジン類等の化合物及びその化合物の塩類が挙げられる。塩類としては塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。これらの主要中間体は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。具体的には、p−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N−エチル−p−フェニレンジアミン、2−(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、p−アミノフェノール等の化合物及びその化合物の塩類等が挙げられる。
【0015】
カプラーとしては、レゾルシン、ピロガロール、カテコール、m−アミノフェノール、m−フェニレンジアミン、o−アミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、1,2,4−ベンゼントリオール、トルエン−3,4−ジアミン、トルエン−2,4−ジアミン、ハイドロキノン、α−ナフトール、2,6−ジアミノピリジン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、5−アミノ−o−クレゾール、ジフェニルアミン、p−メチルアミノフェノール、フロログルシン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、没食子酸、タンニン酸、没食子酸エチル、没食子酸メチル、没食子酸プロピル、五倍子、1−メトキシ−2−アミノ−4−(2−ヒドロキシエチル)アミノベンゼン、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、それらの塩類等が挙げられる。これらのカプラーは単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0016】
こうした酸化染料は、様々な色調に変化させることができることから、主要中間体から選ばれる少なくとも一種及びカプラーから選ばれる少なくとも一種から構成されることが好ましい。酸化染料の含有量は、第1剤中において好ましくは0.02〜30質量%、より好ましくは0.2〜20質量%である。この含有量が0.02質量%未満であると、十分な染色性が得られないおそれがある。一方、30質量%を超えて配合しても、染色性は向上せず経済的ではない。
【0017】
主要中間体の含有量は、第1剤中において好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。この含有量が0.01質量%未満であると、十分な染色性が得られないおそれがある。一方、15質量%を超えて配合しても、染色性は向上せず経済的ではない。
【0018】
カプラーの含有量は、第1剤中において好ましくは0.01〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%である。この含有量が0.01質量%未満であると、十分な染色性が得られないおそれがある。一方、15質量%を超えて配合しても、染色性は向上せず経済的ではない。
【0019】
その他、「医薬部外品原料規格」(1991年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料及び酸化染料以外の染料として直接染料等を適宜、配合することもできる。
アルカリ剤は、毛髪を膨潤させることにより、毛髪に対する酸化染料の浸透性を向上させ、染色性を向上させるために配合される。アルカリ剤の具体例としては、アンモニア、アルカノールアミン類、有機アミン類、無機アルカリ、塩基性アミノ酸、それらの塩類等が挙げられる。これらのアルカリ剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらのアルカリ剤の中でも、毛髪に対する酸化染料の浸透性を向上させ易いことから、好ましくはアンモニア及びアルカノールアミン類から選ばれる少なくとも一種である。
【0020】
このアルカリ剤の配合量は、第1剤のpHが8〜12の範囲となる量に設定することが好ましい。第1剤のpHが8未満では、塗布用組成物中において酸化剤の作用を十分に促進することができない場合がある。一方、pHが12を超えると、塗布用組成物を毛髪に施した際に毛髪の損傷等の不具合が発生し易くなるおそれがある。
【0021】
第1剤には、上記の成分以外の成分をその他の成分として配合することができる。その他の成分としては、例えば例えば油性成分、炭化水素、界面活性剤、pH調整剤、アルコール類等が挙げられる。
【0022】
油性成分としては、高級アルコール、多価アルコール、油脂類、ロウ類、高級脂肪酸、エステル類、シリコーン類等が挙げられる。
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0023】
多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0024】
油脂としては、オリーブ油、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、茶実油、サザンカ油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、牛脂、カカオ脂、トウモロコシ油、落花生油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、小麦胚芽油、ハトムギ油、ブドウ種子油、アボカド油、カロット油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、アマニ油、ヤシ油、ミンク油、卵黄油等が挙げられる。
【0025】
ロウ類としては、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0026】
エステル類としては、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジ−2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、パルミチン酸オクチル、乳酸ラウリル、乳酸オクチルドデシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ジオクタン酸エチレングリコール、カプリル酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、オレイン酸オレイル、コハク酸ジエトキシエチル、コハク酸ジオクチル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等が挙げられる。
【0027】
シリコーン類としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、平均重合度が650〜10000の高重合シリコーン、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
【0028】
炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0029】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレン(以下、POEという)アルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレン(以下、POPという)アルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。POEアルキルエーテル類の具体例としては、POEラウリルエーテル、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0030】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、ベヘニルイミダゾリニウムメトサルフェート、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン等が挙げられる。
【0031】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、POEラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のPOEアルキル硫酸塩、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸エステル塩、ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、POEラウリルエーテルリン酸及びその塩等が挙げられる。
【0032】
両性界面活性剤の具体例としては、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、ココアミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0033】
pH調整剤としては、クエン酸、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。アルコール類としては、エタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール等が挙げられる。
【0034】
さらに、その他の成分としてソルビトール、マルトース等の糖類、バチルアルコール、キミルアルコール等のアルキルグリセリルエーテル、アラビアガム、カラヤガム、トラガントガム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、セルロース誘導体、架橋ポリアクリル酸、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジウム等の水溶性高分子化合物、パラベン等の防腐剤、フェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等の安定剤、亜硫酸ナトリウム等の酸化防止剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、香料、紫外線吸収剤、抗菌剤等が挙げられる。さらに、保存時の安定性を確保することを目的として、第1剤にEDTA・2Na等のキレート剤を配合してもよい。なお、保存時の安定性を確保することを目的として配合されるキレート剤は、第1剤に含まれる金属を捕捉することで、第1剤の安定性を確保する成分であるため、染毛副剤に含有されるキレート剤の効果とは全く異なるとともに、染毛副剤の効果を阻害することもない。
【0035】
第1剤には、さらに所定量の水が配合されることで、第1剤は乳化物、溶液、分散液等として調製される。水の含有量は、第1剤中において好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%である。この配合量が50質量%未満又は99質量%を超える場合、安定した剤が得られにくくなる。また、第1剤の剤型は、流動性を有した形態であれば特に限定されず、例えば液状、フォーム状、クリーム状、ゲル状等が挙げられる。第1剤は、優れた染毛力が得られ易いという観点から、水中油滴型乳化物であることが好ましい。なお、第1剤は、油性成分及び界面活性剤を適宜配合するとともに、ホモミキサー等の攪拌装置を用いる常法に従って水中油滴型乳化物にすることができる。
【0036】
(第2剤)
染毛主剤の第2剤に含有される酸化剤は、第1剤に含有される酸化染料を酸化重合させるとともに、毛髪に含まれるメラニンを脱色させる成分である。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。これらの酸化剤の中でも、メラニンの脱色力に優れることから、好ましくは過酸化水素である。
【0037】
酸化剤の含有量は、第2剤中において好ましくは0.1〜10.0質量%、より好ましくは0.5〜8.0質量%、さらに好ましくは1.0〜6.0質量%である。この含有量が0.1質量%未満であると、メラニンの脱色力及び酸化染料の酸化力が十分に発揮されないおそれがある。
【0038】
この第2剤には、上記第1剤に記載のその他の成分を配合することができる。第2剤には、さらに所定量の水が配合されることで、第2剤は乳化物、溶液、分散液等として調製される。水の含有量は、第2剤中において好ましくは50〜99質量%、より好ましくは60〜95質量%である。この配合量が50質量%未満又は99質量%を超える場合、安定した剤が得られにくくなる。第2剤のpHは、酸化剤の保存安定性を確保するといった観点から、好ましくは2〜6、より好ましくは3〜5である。また、第2剤の剤型は、流動性を有した形態であれば特に限定されず、例えば液状、フォーム状、クリーム状、ゲル状等が挙げられる。第2剤は、優れた染毛力が得られ易いという観点から、上記第1剤と同じく、水中油滴型乳化物であることが好ましい。
【0039】
(混合)
酸化染毛剤を使用する際に、第1剤と第2剤とを所定の割合で混合調製することによって、混合物は得られる。第1剤と第2剤との混合割合は、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、第1剤と第2剤は質量比において好ましくは1:3〜2:1、より好ましくは1:1〜1:2である。この混合物の剤型は、流動性を有した形態であれば特に限定されず、例えば液状、フォーム状、クリーム状、ゲル状等が挙げられる。混合物は、優れた染毛力が得られ易いという観点から、水中油滴型乳化物であることが好ましい。
<染毛副剤>
染毛副剤に含有されるキレート剤は、毛髪の内部に酸化染料及び酸化剤を効率よく浸透させるための助剤として機能する成分である。キレート剤としては、金属イオンに配位して、その金属イオンを捕捉する機能を有していれば特に限定されないが、pHが7よりも高いアルカリ性の領域において、鉄(II)イオンに対するキレート安定度定数が5〜30であるキレート剤が好ましい。
【0040】
キレート剤の具体例としてはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸(DHEDDA)、1,3-プロパンジアミン四酢酸(1,3PDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIMDA)、L−アスパラギン酸−N,N−二酢酸(ASDA)、アミノトリメチレンホスホン酸(NTMP)、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、グルコン酸、トリポリリン酸、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マレイン酸等の化合物、その化合物の塩、その化合物の誘導体、及びその誘導体の塩が挙げられる。これらのキレート剤の中でも、毛髪の表面に付着した金属種のイオン(特に鉄(II)イオン)を捕捉する能力に優れるという観点から、EDTA、HEDTA、DHEDDA及びDTPAから選ばれる少なくとも一種が好ましい。なお、EDTAやHEDTA等は水和物として配合してもよい。
【0041】
染毛副剤中のキレート剤の含有量は、3質量%以上、好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、最も好ましくは染毛副剤の全量をキレート剤とすることである。染毛副剤中のキレート剤の含有量が3質量%未満であると、染毛主剤に接触させた時点において、キレート剤が即時に希薄化されてしまうため、酸化染料及び酸化剤を浸透させる助剤としての機能が発揮されない。すなわち、染毛副剤中のキレート剤の含有量を3質量%以上にすれば、染毛主剤と接触させた時点において、塗布用組成物中におけるキレート剤の濃度が確保されるため、酸化染料及び酸化剤を浸透させる助剤としての機能が効果的に発揮される。
【0042】
この染毛副剤は、固体状であってもよいし、液状であってもよい。また、この染毛副剤には、第1剤に記載のその他の成分を必要に応じて配合することができる。
酸化染毛剤の使用直前において、この染毛副剤が染毛主剤と接触される態様としては、次に示す(a)及び(b)の態様が挙げられる。
【0043】
(a)カプセルの利用
染毛副剤をカプセルに包含させるとともに、その染毛副剤を包含したカプセルを、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に配合する。そのカプセルは、第1剤と第2剤との混合に伴って加わる外力によって崩壊する皮膜や、pH変化に伴って可溶化することによって崩壊する皮膜から形成する。例えば、酸化染毛剤の使用直前において、カプセルに外力を与えて崩壊させつつ、第1剤と第2剤とを混合することによって、染毛副剤は使用直前において染毛主剤に接触される。
【0044】
このカプセルの製造方法は、特に限定されず周知の製造方法を利用することができる。カプセルの製造方法の具体例としては、相分離法、滴下法、打抜き法等が挙げられる。相分離法は、皮膜の成分である水溶性高分子と染毛副剤とを電解質によって相分離させる方法である。滴下法は、皮膜の成分溶液と溶液状態の染毛副剤とを流下させつつ、皮膜の成分溶液を凝固させる方法である。打抜き法は、皮膜の間に染毛副剤を挟持させた後に、その皮膜を染毛副剤とともに打ち抜く方法である。
【0045】
カプセルを構成する皮膜としては、カプセルが配合される剤(第1剤及び第2剤の少なくとも一方)に溶解しないものであって、第1剤と第2剤との混合に伴って加わる外力によって崩壊するものであれば、特に限定されない。その皮膜の成分としては、例えばアルギン酸塩、寒天、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子、ポリエチレン等から適宜選択される。
【0046】
このように構成された酸化染毛剤では、使用直前において第1剤と第2剤とをトレイ上で刷毛等の塗布具により混合する際に、カプセルが崩壊するように混合することにより、染毛副剤が染毛主剤と接触される。また、第1剤と第2剤とを混合容器内に密封して、その混合容器を振とうする。このように容器内の空気を巻き込みながら、第1剤と第2剤とを強制的に混合することで、カプセルが崩壊される結果、染毛副剤が染毛主剤と接触される。
【0047】
さらに、皮膜を形成する成分として、アルカリ性の条件下にて溶解するアルギン酸塩を利用すれば、染毛主剤の液性を利用してカプセルを崩壊させることも可能である。すなわち、そのアルギン酸塩より形成されるカプセルを、第2剤に配合する。酸化剤を含有する第2剤は、酸性であるため、そのカプセルは第2剤には溶解しない。そして、酸化染毛剤の使用直前において、第1剤と第2剤とを混合して得られる混合物は、アルカリ性を示すため、そうした混合に伴って被膜の成分が溶け出して、カプセルが崩壊する結果、染毛副剤が染毛主剤に接触される。
【0048】
アルカリ性の条件下にて溶解するアルギン酸塩としては、例えばアルギン酸カルシウムを利用することができる。アルギン酸カルシウムは、水溶性アルギン酸塩と、水溶性カルシウム塩とを接触させることにより得ることができる。水溶性アルギン酸塩としては、例えばアルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸アルカリ金属塩、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸アミン塩等が挙げられる。水溶性カルシウム塩としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム等が挙げられる。
【0049】
カプセルの大きさは、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.2〜8mm、さらに好ましくは0.3〜6mmである。このカプセルの大きさが0.1〜10mmの範囲の場合、第1剤又は第2剤への配合の容易性、及び第1剤と第2剤との混合の容易性を十分に確保することができる。
【0050】
(b)別剤として構成
上記染毛主剤とは別剤として染毛副剤を構成する。この染毛副剤は、酸化染毛剤の保存時において、第1剤及び第2剤とは非接触の状態で保存される。すなわち、この染毛副剤は、酸化染毛剤の保存時において、例えば第1剤及び第2剤とは別の容器や袋に封入される等の形態を採用することによって、第1剤及び第2剤とは隔離されている。そして、酸化染毛剤の使用直前において、染毛副剤を染毛主剤と混合する。この酸化染毛剤では、染毛主剤と染毛副剤との混合順序は限定されず、第1剤、第2剤及び染毛副剤を順次混合してもよいし、第1剤、第2剤及び染毛副剤を同時に混合してもよい。
【0051】
上記(a)及び(b)の態様は、それぞれ単独で採用してもよいし、組み合わせて採用してもよい。すなわち、使用する染毛副剤の一部についてはカプセルを利用する一方で、使用する染毛副剤の残部については別剤として構成してもよい。
【0052】
この酸化染毛剤を毛髪に適用するには、使用直前において、染毛主剤に対して染毛副剤が接触した状態で混合されている塗布用組成物を調製する。この塗布用組成物中のキレート剤の含有量は特に限定されず、塗布用組成物中における酸化染料、酸化剤等の含有量を考慮して適宜設定すればよい。染毛用組成物中におけるキレート剤の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%、最も好ましくは0.1〜1.5質量%である。この塗布用組成物中のキレート剤の含有量が0.1質量%未満の場合、酸化染料に対するキレート剤の量が過少となるため、毛髪の堅牢性について優れた改善効果が得られにくくなるおそれがある。一方、キレート剤の含有量が10質量%を超えると、優れた染毛力が得られにくくなるおそれがある。
【0053】
この塗布用組成物が毛髪に塗布されると、毛髪の表面に付着している金属イオンに対して、キレート剤が直接作用することで、その金属イオンは、キレート剤によって捕捉されるため、捕捉された金属イオンは酸化染料の酸化重合に対する触媒として機能することがない。このため、毛髪の表面における酸化染料の酸化重合が抑制される結果、酸化染料はアルカリ剤によって膨潤した毛髪に好適に浸透する。
【0054】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1) 染毛副剤は、使用直前において染毛主剤と接触されるため、酸化染毛剤の保存時において染毛主剤に含まれる金属イオンを捕捉することがない。さらに、染毛副剤には3質量%以上のキレート剤を含んでいるため、キレート剤のキレート能力は使用時まで確保される。また、染毛主剤に対して染毛副剤が接触した状態で混合されている塗布用組成物では、酸化染料の近傍において、十分なキレート能力を有するキレート剤が存在している。こうした塗布用組成物を毛髪に適用した際には、毛髪表面における酸化染料の重合反応が抑制される。その一方で、アルカリ剤によって毛髪は十分に膨潤され、その膨潤した毛髪に対して、重合反応が抑制された状態の酸化染料が効率的に浸透する。この結果、毛髪の内部における重合反応が優先される。すなわち毛髪の内部において、より多くの酸化染料が重合されることにより、酸化染料の二量体や三量体に代表される多核化合物がより多く形成される。このように、毛髪の内部において形成された多核化合物は、重合前の酸化染料よりも分子量が増大しているため、毛髪から流出しにくい。例えば、染色処理が施された毛髪を洗浄するに際して、毛髪の表面付近に付着している多核化合物は、洗い流され易いが、毛髪の内部において形成された多核化合物は、洗い流されにくい。このようにして、毛髪の表面における酸化染料の重合反応を抑制しつつ、毛髪の内部における酸化染料の重合反応が促進されるため、毛髪の堅牢性を根本的に改善することができる。さらにキレート剤は、酸化剤による酸化染料の酸化反応自体や、酸化剤による毛髪の脱色反応自体を阻害する成分ではないため、この酸化染毛剤は十分な染毛力を発揮する。
【0055】
(2) この酸化染毛剤として、カプセルに包含された染毛副剤を、第1剤及び第2剤の少なくとも一方に配合する構成を採用することができる。このカプセルは、使用直前において崩壊される皮膜より形成される。この酸化染毛剤によれば、使用直前において、染毛副剤を染毛主剤に接触させることが容易となる。さらに、カプセルの皮膜の成分として、アルカリ性の条件下にて溶解するアルギン酸塩を利用して、そのカプセルを第2剤に配合することにより、酸化染毛剤の使用直前において、染毛副剤を染毛主剤に接触させることが一層容易となる。
【0056】
(3) この酸化染毛剤として、染毛副剤を染毛主剤と非接触の状態で保存される別剤として構成することもできる。この酸化染毛剤によれば、染毛副剤の保存安定性を確保することが容易である。このため、酸化染毛剤の使用時において、毛髪の表面に対するキレート作用を強めることが可能となる結果、毛髪の堅牢性を一層改善することができる。
【0057】
(4) 染毛主剤が水中油滴型乳化物である場合、染毛主剤に対する染毛副剤の接触に伴って、キレート剤を水相に分散させることができる。そして、水相に分散したキレート剤は連続相である水相とともに、親水性の毛髪表面に対して好適に馴染むようになる。これにより、キレート剤は毛髪表面に付着している金属イオンを好適に捕捉する。このため、毛髪の表面における酸化染料の重合反応が一層抑制される結果、毛髪の堅牢性を一層改善することができる。
【0058】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 染毛主剤を、第1剤、第2剤及び第3剤より構成してもよい。例えば、染毛主剤は酸化染料を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤と、アルカリ剤を含有する第3剤とから構成することもできる。但し、酸化染毛剤の利便性が高いことから、前記実施形態のように、染毛主剤は第1剤と、その第1剤と使用直前において混合される第2剤とから構成することが好ましい。
【0059】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記染毛主剤が水中油滴型乳化物である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の酸化染毛剤。この構成によれば、毛髪の堅牢性を一層改善することができる。
【実施例】
【0060】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜5)
表1に示す各成分を混合することにより、染毛主剤となる第1剤及び第2剤、並びに染毛副剤を調製した。但し、表1中の第1剤及び第2剤におけるベースの配合は、表2に示している。また、表1及び表2の配合量を示す数値の単位は、質量%である。
(実施例6、7)
表1に示す各成分を混合することにより、染毛主剤となる第1剤及び第2剤を調製した。実施例6の第1剤及び実施例7の第2剤には、カプセルが配合されている。これらのカプセルに包含させる染毛副剤は、EDTA・4Naと流動パラフィンとを混合することにより調製した。続いて、滴下法によって、カプセルを形成するとともにこのカプセルに染毛副剤を内包させた。染毛副剤の組成、及びカプセルの皮膜組成を以下に示す。
【0061】
染毛副剤:EDTA・4Na 50質量%
流動パラフィン 47質量%
被膜 :寒天 3質量%
合計100質量%
(比較例1〜9)
表1に示す各成分を混合することにより、第1剤及び第2剤を調製した。なお、比較例9では、キレート剤の含有量が3質量%未満である染毛副剤を調製した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

続いて、各例における第1剤、第2剤及び染毛副剤を表1に示される質量比で混合して、塗布用組成物を調製した直後に、その塗布用組成物の所定量を白髪混じりの人毛毛束に塗布した。これらの人毛毛束を30分間放置後、水洗することにより人毛毛束の染色処理を完了した。染色処理が施された人毛毛束について、以下の評価を行った。
<染毛力>
10名のパネラーが人毛毛束の染色の程度を目視にて観察し、非常によく染まっている(4点)、よく染まっている(3点)、やや染まり具合が悪い(2点)及び染まり具合が悪い(1点)の4段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が3.6点以上を「優れる:◎」、2.6点以上3.5点以下を「良好:○」、1.6点以上2.5点以下を「やや不良:△」及び1点以上1.5点以下を「不良:×」とし、評価結果とした。
<堅牢性>
染色処理が施された人毛毛束のL値を分光測色計(ミノルタ株式会社製、型番:CM−508d)を用いて測定した。次いで、染色処理が施された人毛毛束について、50℃の温水に15分間浸漬した後に乾燥させることにより、温水浸漬処理を行った。この温水浸漬処理が施された人毛毛束についても、上記同様にL値を測定した。温水浸漬処理後のL値から温水浸漬処理前のL値を差し引いた値であるΔL値によって堅牢性の評価を行った。なお、このLは、L表色系(JIS Z 8729−1994に記載)のLであって、ΔL値が小さいほど退色が少なく、堅牢性に優れることを意味する。
<第1剤及び第2剤の乳化安定性>
各例の第1剤及び第2剤を室温(20℃)で1週間保存した後に、各剤の状態について、10名のパネラーが変化なし(4点)、若干粘度が低下している(3点)、粘度が低下している(2点)及び分離している(1点)の4段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が3.6点以上を「優れる:◎」、2.6点以上3.5点以下を「良好:○」、1.6点以上2.5点以下を「やや不良:△」及び1点以上1.5点以下を「不良:×」とし、評価結果とした。
<結果の考察>
表1に示すように染毛力については、各例において優れる結果となった。実施例1及び2では、染毛副剤を別剤として、その染毛副剤を使用直前に染毛主剤と接触させている。一方、比較例1及び2、並びに比較例6及び7では、塗布用組成物中におけるキレート剤の濃度がそれぞれ実施例1及び2と同じ濃度になるように、あらかじめ第1剤又は第2剤にキレート剤を配合している。実施例1及び2のΔL値は、比較例1、2、6及び7のΔL値よりも低い結果が得られたことから、実施例1及び2では、堅牢性が改善されていることがわかる。なお実施例3は、第1剤と第2剤との混合割合を変更した実施例である。また、実施例4及び5、並びに比較例3及び4の結果からも、堅牢性について同様の効果が得られることがわかる。さらに、各例において、塗布用組成物に含有するキレート剤の濃度(質量%)と、ΔL値の結果とを比較すると、ΔL値の結果は塗布用組成物に含有するキレート剤の濃度に依存せず、堅牢性の改善効果は、染毛副剤に含まれるキレート剤の濃度に依存することがわかる。また、比較例9では染毛副剤中におけるキレート剤の含有量が3質量%未満であるため、堅牢性の改善効果が得られていない。この比較例9では、塗布用組成物に含有するキレート剤の濃度が比較例5と同じであるとともに、比較例9のΔL値は、比較例5のΔL値と同等である。すなわち、比較例5に対する比較例9の結果から、染毛主剤に対し染毛副剤を使用直前に接触させるだけでは堅牢性の改善効果が全く得られず、染毛副剤中のキレート剤の含有量を3質量%以上にすることで、はじめて堅牢性の改善効果が得られることがわかる。さらに、各実施例では第1剤及び第2剤のいずれも乳化安定性に優れることから、各実施例の酸化染毛剤は十分な実用性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化染料、アルカリ剤及び酸化剤の各成分が混合した状態で使用される染毛主剤と、
キレート剤が3質量%以上含まれる染毛副剤と、
から構成され、該染毛副剤は使用直前において前記染毛主剤と接触されることを特徴とする酸化染毛剤。
【請求項2】
前記染毛副剤がカプセルに包含されるとともに、該カプセルが前記使用直前において崩壊される皮膜より形成され、そのカプセルは前記染毛主剤に配合されている請求項1に記載の酸化染毛剤。
【請求項3】
前記染毛副剤を、前記染毛主剤と非接触の状態で保存されるとともに前記使用直前において前記染毛主剤と混合される別剤として構成した請求項1に記載の酸化染毛剤。
【請求項4】
前記染毛主剤が、前記酸化染料及び前記アルカリ剤を含有する第1剤と、前記酸化剤を含有するとともに前記第1剤と前記使用直前において混合される第2剤と、を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の酸化染毛剤。

【公開番号】特開2007−137828(P2007−137828A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−334832(P2005−334832)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】